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  • 特許-吸湿不織布およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】吸湿不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20220324BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20220324BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20220324BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20220324BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220324BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/007
A61F13/511 300
A61F13/511 200
A61F13/514 120
A61F13/53 100
D01F1/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020540786
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 KR2019001155
(87)【国際公開番号】W WO2019147091
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0009890
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520080171
【氏名又は名称】東レ尖端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INC.
【住所又は居所原語表記】(Imsu-dong)300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ギュ チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム デ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヤン イル
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュ ヒ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014216(JP,A)
【文献】特開2017-179110(JP,A)
【文献】国際公開第2005/045114(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/024147(WO,A1)
【文献】特開2009-144275(JP,A)
【文献】特開2010-150674(JP,A)
【文献】特開2011-063911(JP,A)
【文献】特表2012-522141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
D04H1/00-18/04
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン基材のポリマーを紡糸して連続するベルト上にウェブを形成し、熱接着ボンディングした長繊維スパンボンド不織布において、
前記不織布は、当該不織布の対重量比1~20%の吸湿剤マスターバッチおよび前記ポリオレフィン基材のポリマーを含み、
前記吸湿剤マスターバッチは、示差走査熱量計(DSC)で常温で分当たり10℃ずつ300℃まで昇温して溶融温度(MeltingTemperature)の測定時、合計3個のピークを有し、前記合計3個のピークは、40~80℃、100~140℃および141~180℃の3個の温度範囲それぞれで1個のピークを有し、
前記吸湿剤マスターバッチは、ポリプロピレンを含み、前記ポリプロピレンを除いた成分の含量が10~50重量%であり、
前記ポリプロピレンを除いた成分は、アルキル系(C 2n+1 )界面活性剤およびステアリンを含み、
前記アルキル系(C 2n+1 )界面活性剤は、アルキルアルコール(alkyl alcohol)、アルキルステアレート(alkyl stearate)およびアルキルパルミテート(alkyl palmitate)よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする吸湿不織布。
【請求項2】
前記吸湿剤マスターバッチは、前記ポリプロピレンを除いた吸湿剤マスターバッチの残りの成分、前記不織布の全体重量を基準として1,000ppm~100,000ppmの含量で含まれたものであることを特徴とする請求項1に記載の吸湿不織布。
【請求項3】
前記ポリオレフィン基材のポリマーは、ポリプロピレンおよびポリエチレンよりなる群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸湿不織布。
【請求項4】
前記不織布は、前記吸湿剤マスターバッチを使用した不織布が単層を構成するか、または2~6層の多層を構成することを特徴とする請求項1に記載の吸湿不織布。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の吸湿不織布を用いた物品。
【請求項6】
前記物品は、使い捨ておむつの表面シート(Top Sheet)、バックシート(back Sheet)、コアシート(Core sheet)または農業用および生活用資材であることを特徴とする請求項に記載の物品。
【請求項7】
ポリオレフィン基材のポリマーを紡糸して連続するベルト上にウェブを形成し、熱接着ボンディングして、長繊維スパンボンド不織布を製造する方法において、
前記ポリマーに吸湿剤マスターバッチを不織布の重量の1~20%投入した後、溶融混練して紡糸し、
前記吸湿剤マスターバッチは、示差走査熱量計(DSC)で常温で分当たり10℃ずつ300℃まで昇温して溶融温度(MeltingTemperature)の測定時、合計3個のピークを有し、前記合計3個のピークは、40~80℃、100~140℃および141~180℃の3個の温度範囲それぞれで1個のピークを有し、
前記吸湿剤マスターバッチは、ポリプロピレンを含み、前記ポリプロピレンを除いた成分の含量が10~50重量%であり、
前記ポリプロピレンを除いた成分は、アルキル系(C 2n+1 )界面活性剤およびステアリンを含み、
前記アルキル系(C 2n+1 )界面活性剤は、アルキルアルコール(alkyl alcohol)、アルキルステアレート(alkyl stearate)およびアルキルパルミテート(alkyl palmitate)よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする吸湿不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、親水特性に優れた吸湿不織布およびその製造方法に関し、より詳細には、特定の化合物を用いて安価で製造可能な親水性能のマスターバッチを用いて親水特性に優れ、生産性も良好になる吸湿不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、不織布は、紡織用繊維を一定の方向に並んで配置させたり、または、ランダムに配列し接着させたシートまたはウェブであって、これら繊維の原料は、天然または人造のものである。これら繊維は、ステープル繊維または人造フィラメントからなり、このような不織布の製造工程および方法は、多様に公知となっているが、これらの製造過程は、大きく、ウェブ形成、接着および完成加工に大別され得る。このような不織布のうちポリプロピレンで製造されたスパンボンド不織布は、経済性、軽量性、成形性、耐薬品性、美しい外観などの優れた特性を有しており、これによって、衛生資材、家電製品、OA機器包装材料、自動車内蔵材料、使い捨て作業服など雑貨に広く用いられており、特に、おむつのような衛生用品に広範囲に使用されている。
【0004】
ところが、上記のように優れた特性を有するポリプロピレンスパンボンド不織布は、ポリプロピレン繊維が一般的に強い疎水性を有するので、これによって、おむつのような親水性を要求する産業用不織布および衛生用品としての適用用途が非常に制限的であるという問題がある。
【0005】
したがって、上記したポリプロピレンスパンボンド不織布の問題点を解決するために、界面活性剤を不織布に塗布する方法が提案されているが、このような方法により製造された不織布は、水を数回投入したとき、界面活性剤が洗い流されてしまい、親水性が劣る傾向を示す問題がある。また、界面活性剤を塗布すると、不織布層の全体に塗布されるので、親水/疎水の不織布層を別に具現しにくいという問題点があった。
【0006】
これより、上記した親水性不織布の耐久性の問題を解決するための提案があったが、例えば韓国特許公開第2001-0019669号公報(特許文献1)には、耐久親水性が向上した複合繊維という名称として、「融点の差異が20℃以上である低融点ポリマー成分と高融点ポリマー成分が複合され、低融点ポリマー成分が繊維表面の少なくとも一部分を占有する複合繊維において、低融点ポリマー成分に耐久親水性の付与成分として分子量が600~20,000のポリエチレングリコールが、低融点ポリマー成分対比1~15重量、全体繊維量対比1.5~5重量の含量でブレンドされていることを特徴とする耐久親水性が向上した複合繊維」を開示しており、日本国特許公開第2003-201670号(特許文献2)公報は、「親水性の長繊維不織布、複合化不織布およびこれらを用いた吸収性物品」という名称として、親水化油剤が長繊維不織布の重量に対して、0.1~2.0重量%付着した不織布を開示している。しかしながら、前記特許文献1で提示された方法のように低融点ポリマー成分にポリエチレングリコールだけを添加した場合、親水固形分のマイグレーション(Migration)現象によって親水性能を発現するのに1週間以上の時間がかかるという問題点があり、特許文献2は、単に親水化油剤を長繊維不織布に一定の比率で付加することを開示しているだけである。したがって、前記特許文献に開示された発明の問題点を解決するために、本出願人は、韓国特許公開第2013-0005478号(特許文献3)公報には、外部気候の変化に対する優れた耐久性を有して親水性能が低下する現象を減らす親水不織布を提供するためのものとして、「溶融紡糸および熱圧着工程を経た長繊維ポリプロピレンスパンボンド不織布の表面に非イオン性親水界面活性剤を塗布して得られたことを特徴とする外部気候の変化に対する耐久性に優れた親水不織布」を開示した。ところが、前記特許文献3の非イオン性親水界面活性剤を塗布する場合には、温度が40℃以上の高温の環境に1年以上保管した場合、親水性能が低下する問題点が依然として発生して、これに対する解決策が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、前述のような従来ポリプロピレンで製造された不織布の諸問題点に対する背景を基礎としてこれらの不織布に対する問題点を解決することをその主要目的とするものであって、詳細には、特定のマスターバッチ型親水剤を不織布に適用して、耐久吸収性に優れた吸湿不織布を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、上記した特性を有する吸湿不織布をスパンボンド設備の煙が発生することなく、優れた生産性にてより容易に製造できる方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、上記した明確な目的以外に、このような目的および本明細書の全般的な技術からこの分野における通常の者により容易に導き出されることができる他の目的を達成することをその目的とすることができる。
【0010】
本発明者らは、上記した従来の問題点を認識し、これを解決するために、鋭意研究した結果、従来のキスロールタイプ(Kiss roll type)の親水処理方式を使用することなく、親水不織布を製造するに際して、特定の構成のマスターバッチ型親水剤を一定の方式で提供して不織布を製造するので、従来の製品対比耐久吸収性が向上した不織布を提供することができるようになり、また、農業用として親水耐久性に優れた不織布に対する顧客の要求を満足できる吸湿不織布およびその製造工程を知見して、上記した本発明の目的を達成することができた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するための本発明の吸湿不織布は、ポリオレフィン基材のポリマーを紡糸して連続するベルト上にウェブを形成し、熱接着ボンディングした長繊維スパンボンド不織布において、前記不織布は、示差走査熱量計(DSC)で常温で分当たり10℃ずつ300℃まで昇温して測定時に、溶融温度(Melting Temperature)が40~80℃、100~140℃および141~180℃の3個の温度範囲で全部ピークを有する吸湿剤マスターバッチを不織布の重量対比1~20%投入した後、溶融混練して製造されたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の構成によれば、前記吸湿剤マスターバッチは、カチオン、アニオン、または非イオン系界面活性剤よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の構成によれば、前記吸湿剤マスターバッチは、アルキル系(C2n+1)界面活性剤を含んでなるものであることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに他の構成によれば、前記吸湿剤マスターバッチ内ポリプロピレンを除いた成分の含量は、10~50重量%であることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の構成によれば、前記不織布の全体重量を基準として前記吸湿剤マスターバッチのポリプロピレンを除いた成分は、1,000ppm~100,000ppmの含量で含まれたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明のさらに他の構成によれば、前記ポリオレフィン系は、ポリプロピレンおよびポリエチレンよりなる群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに他の構成によれば、前記吸湿剤マスターバッチ内成分は、アルキル系(C2n+1)界面活性剤よりなる群から一つ以上を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明のさらに他の構成によれば、前記アルキル系(C2n+1)界面活性剤は、アルキルアルコール(alkyl alcohol)、アルキルステアレート(alkyl stearate)、アルキルパルミテート(alkyl palmitate)よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上を含み、選択的にステアリン(Stearin)をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の構成によれば、前記アルキルアルコール(Alkyl alcohol)の物質は、ジ(エチレングリコール)ノナデシルエーテル(di(ethylene glycol)nonadecyl ether)またはエチレングリコールヘネイコシルエステル(ethylene glycol heneicosyl ester)から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする。
【0020】
本発明のさらに他の構成によれば、前記不織布は、吸湿剤マスターバッチを使用した不織布が単層を構成するかまたは2~6層の多層を構成したものであることを特徴とする。
【0021】
上記した他の目的を達成するための本発明の不織布を用いた使い捨ておむつの表面シート(Top Sheet)、バックシート(back Sheet)、コアシート(Core sheet)、農業用および生活用資材と蓋体は、上記した本発明による吸湿性に優れた長繊維不織布を使用したものであることを特徴とする。
【0022】
上記したさらに他の目的を達成するための本発明の吸湿不織布の製造方法は、ポリオレフィン基材のポリマーを紡糸して連続するベルト上にウェブを形成し、熱接着ボンディングして、長繊維スパンボンド不織布を製造する方法において、前記ポリマーに吸湿剤マスターバッチを不織布重量の1~20%投入した後、溶融混練して紡糸することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
上記のように構成される本発明の吸湿不織布およびその製造方法は、特定の吸湿剤マスターバッチを提供して不織布を製造するので、親水耐久性に優れ、親水性を付加しようとする部位に部分的に親水性を付加することができると共に、別途の設備増設などを行うことなく、従来の設備ラインにおいて親水設備がないラインでもスパンボンド設備の煙が発生することなく、吸湿不織布の製品生産が可能であり、将来疎水/親水(Hydrophobic+Hydrophilic)形態の半吸湿不織布の製品開発も可能な、産業的に有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施例による吸湿不織布の製造に使用された吸湿剤マスターバッチに対するDSCグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を好適な実施形態によりさらに詳しく説明するが、本発明が以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々に変形して実施できることはもちろんである。また、詳細な説明では、よく知られた構成要素、よく知られた動作およびよく知られた技術は、本発明が曖昧に解されることを避けるために具体的に説明されない。
【0026】
本明細書において使用された用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は、文章において特に言及しない限り、複数型をも含む。また、「含む(または具備する)」と言及された構成要素および動作は、一つ以上の他の構成要素および動作の存在または追加を排除しない。
【0027】
本発明において使用された「不織布」という用語は、編みまたは織り以外の手段により形成され、繊維またはフィラメントの一部または全部の間に結合を含有する繊維またはフィラメントのウェブを意味し、このような結合は、例えば縺れのような熱的、接着的または機械的手段により形成され得る。通常の不織は、スパンボンド、メルトブロー、カーディング、ウェットレイングおよびエアレイング工程により形成される。
【0028】
本発明において全般的に使用された用語として前記「スパンボンド」というのは、押出機で紡糸されたフィラメントを延伸させた後、コンベヤーに積層させ、積層されたウェブをカレンダーロールなどで結合して製作する方式を意味する。
【0029】
本発明において全般的に使用された用語として前記「マイグレーション」現象というのは、不織布の表面に塗布されている高分子物質が、外部媒介体やあるいは自体流動性により他の場所や繊維の内部に移動する現象を意味する。
【0030】
上記した目的を達成するための本発明の吸湿不織布およびその製造方法は、従来の親水不織布は、キスロールタイプで水溶性親水剤を水に入れた後、ロールにつけて不織布に親水剤を付与したが、本発明では、マスターバッチタイプの吸湿剤原料を溶融紡糸して、耐久親水性の改善および親水剤設備なしに親水不織布の生産が可能に改善したものである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態による吸湿不織布は、ポリオレフィン基材のポリマーを紡糸して連続するベルト上にウェブを形成し、熱接着ボンディングした長繊維スパンボンド不織布であって、前記不織布は、示差走査熱量計(DSC)で常温で分当たり10℃ずつ300℃まで昇温して測定時に、溶融温度(Melting Temperature)が40~80℃と100~140℃と141~180℃の3個の温度範囲で全部ピークを有する3個のピークから構成された吸湿剤マスターバッチを不織布の重量対比1~20%、好ましくは1~10%投入した後、溶融混練して製造されたものであることを特徴とし、これを通じて、本発明が目的を効果的に達成するのに有利である。仮に温度が異なる範囲でピークを有するか、3個のピークのうちいずれか一つでもない場合、原料の凝集現象が発生したり、工程中に多量の煙が発生することがあり、工程のエクストルーダー内圧力のハンティング発生または親水基の揮発による吸収速度が発現しにくいことがある。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記本発明による吸湿剤マスターバッチは、カチオン、アニオン、または非イオン系界面活性剤よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上を含むことができ、好ましくは、アルキルアルコール系界面活性剤を含んでなり得る。上記のように、本発明による吸湿剤マスターバッチを使用するので、耐久親水性に顕著に優れ、紡糸性と初期投入性などが良好であるので、製造工程上、生産性が向上し、トラブルの発生が除去された。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記吸湿剤マスターバッチ内ポリプロピレンを除いた成分の含量は、10~50重量%、より好ましくは30~50重量%、最も好ましくは40重量%でありうる。前記範囲を外れる場合、煙の発生や親水性能の低下を招いて、好ましくない。特に、吸湿剤マスターバッチ内ポリプロピレンを除いた成分の含量を40重量%にするとき、顕著に優れた耐久親水性と生産性を示した。
【0034】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、前記不織布の全体重量を基準として吸湿剤マスターバッチのポリプロピレンを除いた成分は、1,000ppm~100,000ppmの含量で含まれ得る。
【0035】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、前記ポリオレフィン系は、ポリプロピレンおよびポリエチレンよりなる群から選ばれたいずれか一つ以上でありうる。
【0036】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、前記吸湿剤マスターバッチ内成分である前記アルキル系(C2n+1)界面活性剤は、アルキルアルコール(alkyl alcohol)、アルキルステアレート(alkyl stearate)、アルキルパルミテート(alkyl palmitate)よりなる群から一つ以上を含み、選択的にステアリン(Stearin)をさらに含むことができる。
【0037】
また、前記アルキルアルコールは、ジ(エチレングリコール)ノナデシルエーテル(di(ethylene glycol)nonadecyl ether)またはエチレングリコールヘネイコシルエステル(ethylene glycol heneicosyl ester)から選ばれた一つ以上を使用することができる。
【0038】
本発明では、多様な目的で使用される不織布の特性によって前記本発明による吸湿剤マスターバッチを使用した不織布が、不織布層の単層を構成するか、または2~6層の多層を構成した不織布を提供することができる。
【0039】
本発明による上記した吸湿性に優れた長繊維不織布は、多様な用途に使用され得、特にこれに限定されるものではないが、例えば使い捨ておむつの表面シート(Top Sheet)、バックシート(back Sheet)、コアシート(Core sheet)、農業用および生活用資材と蓋体に使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を詳細に説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではないことはもちろんである。
【0041】
<実施例1>
不織布の製造方法においては、原料を計量するドージング(Dosing)システムを用いてポリプロピレンと吸湿剤マスターバッチを一定の割合でエクストルーダー(Extruder)に伝達して混合物を紡糸し、紡糸されたフィラメントは、蜂の巣形状のチャンバーを介して噴射される冷却空気により固化し、上部から吹き込む空気とコンベヤーベルトの下部で吸入する空気の圧力により延伸し、コンベヤーベルト上に一定の重量で積層してウェブを形成した後、熱的ボンディングをして、不織布を製造した。
【0042】
使用された吸湿剤マスターバッチは、ポリプロピレンを除いて40重量%の有効成分を含み、前記有効成分は、ジ(エチレングリコール)ノナデシルエーテルとステアリンから構成された。使用された吸湿剤マスターバッチは、図1のDSCグラフから確認できるように、60.33℃、119.70℃、157.30℃でそれぞれピークを有して、総3個のピークを有するものを使用した。
【0043】
また、吸湿剤マスターバッチを不織布の重量を基準として2.5重量部を投入した。生産された不織布の特性を測定して、その結果を下記の表1に示した。
【0044】
<実施例2>
下記の表1に示されたように、吸湿剤マスターバッチを不織布の重量を基準として3.5重量部としたことを除いて、実施例1と同じ手続を繰り返し、それによる不織布の特性を測定して、その結果を下記の表1に示した。
【0045】
<比較例1>
下記の表1に示されたように、吸湿剤マスターバッチを不織布の重量を基準として0.9重量部としたことを除いて、実施例1と同じ手続を繰り返し、それによる不織布の特性を測定して、その結果を下記の表1に示した。
【0046】
<比較例2>
下記の表1に示されたように、吸湿剤マスターバッチを不織布の重量を基準として22重量部としたことを除いて、実施例1と同じ手続きを繰り返し、それによる不織布の特性を測定して、その結果を下記の表1に提示した。
【0047】
<実験例>
1.吸収度(ストライクスルー、Strike through)
不織布から試料を採取し、適当なサイズに切断して、試料の吸収度を測定した。試料のサイズは、10cm×10cmであり、試料ごとに10回ずつ平均値を比較した。不織布試料を準備し、吸収紙の上に載置した後、0.9%NaCl溶液5mlを吸収する時間で評価した。EDANA 150.5-02を参考した。
【0048】
2.再濡れ性(リウェット、Re-wet)
不織布から試料を採取し、適当なサイズに切断して、試料の吸収度を測定した。試料のサイズは、10cm×10cmであり、試料ごとに10回ずつ平均値を比較した。不織布試料を吸収紙の上に載置した後、0.9%NaCl溶液20mlを入れ、5Kgの重さを加えた後、逆に再吸収される液体量で評価した。EDANA 151.3-02を参考した。
【0049】
3.初期投入性
スパンボンド設備の初期投入性の評価は、親水マスターバッチ(master batch)の原料投入性を肉眼で確認して、下記の基準によって判断した。
【0050】
○:初期投入性が優秀。マスターバッチ投入異常ない。
【0051】
×:初期投入性が不良。マスターバッチが原料投入部にくっつく。原料間に相互凝集現象が発生
4.煙の発生
スパンボンド設備における煙の発生の評価は、親水マスターバッチの原料投入時にダイ(die)でモノマー排出(Monomer exhaust)を肉眼で確認して、10点を基準として判断した。
【0052】
0点:煙の発生がなし。
【0053】
10点:煙が多量発生して、親水マスターバッチに適用不可能な水準。
【0054】
【表1】
【0055】
前記本発明の詳細な説明では、吸湿不織布およびその製造方法の好適な実施形態について記述したが、その内容は、前記実施形態に記述された内容にのみ限定されず、以下の特許請求範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する分野における通常の知識を有する者なら誰でも多様な変更実施が可能な範囲まで本発明の技術的精神があると言える。
図1