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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】光学装置および内視鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220324BHJP
   G03B 35/10 20210101ALI20220324BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220324BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20220324BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220324BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220324BHJP
   G03B 15/00 20210101ALN20220324BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B35/10
G03B17/02
G02B7/04 D
G02B23/26 C
G02B23/24 B
A61B1/00 735
A61B1/00 522
G03B15/00 L
G03B15/00 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020562046
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048144
(87)【国際公開番号】W WO2020136802
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 京右
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094126(WO,A1)
【文献】特開2014-197112(JP,A)
【文献】特開2006-288821(JP,A)
【文献】特開2005-352233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
A61B 1/00
G02B 23/24
G03B 15/00
G03B 17/02
G03B 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学像を形成する光学系と、
上記光学系の少なくとも一部を保持する移動枠と、
上記移動枠を内包すると共に上記光学像の光軸方向へ摺動自在に保持する固定枠と、
上記移動枠を上記光軸に沿って駆動する磁界を発生するコイルと、
上記移動枠を磁力により上記光軸に平行な軸回りに所定のモーメントの回転力を生じさせる位置に配設された磁石と、
し、
上記磁石は、複数であって、第1の磁石と第2の磁石は、上記光軸に直交する断面において、それぞれの中心を結ぶ線の中点が上記移動枠の断面領域内に入るように配設されていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
上記移動枠が磁性材から形成され、
上記磁石が非磁性材から形成された上記固定枠に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
上記第1の磁石と上記第2の磁石は、上記断面における上記移動枠の中心点を通る直交した2つの軸によって4分割された斜め方向の象限に配設されていることを特徴とする請求項に記載の光学装置。
【請求項4】
上記光学系は上記光学像を2つ形成する2つの上記光学系であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
上記光学系が形成する上記光学像は、高アスペクト比を有する上記光学像を形成することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
光学像を形成する光学系と、
上記光学系の少なくとも一部を保持する移動枠と、
上記移動枠を内包すると共に光軸方向へ摺動自在に保持する固定枠と、
上記移動枠を上記光軸に沿って駆動する磁界を発生するコイルと、
上記移動枠を磁力により上記光軸に平行な軸回りに所定のモーメントの回転力を生じさせる位置に配設された磁石と、
を有し、
上記磁石は、複数であって、第1の磁石と第2の磁石は、上記光軸に直交する断面において、それぞれの中心を結ぶ線の中点が上記移動枠の断面領域内に入るように配設されている光学装置と、
上記光学装置が搭載された先端部を有する挿入部と、
を具備することを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に光学系を有する移動枠を磁力によって前後に移動して光学的焦点位置を可変する光学装置および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に光学系を備えた移動枠を光学系の光軸方向の前後に移動させて、焦点位置を切り替えることができる光学装置が周知である。この光学装置を備えた撮像ユニットは、カメラの他、カメラ付き通信端末、内視鏡などに設けられている。
【0003】
例えば、日本国特開2017-90504号公報には、観察部位、或いは、観察の目的等によって観察対象部に対する焦点深度、結像倍率、視野角などの光学特性を変更自在な光学ユニット(以下、光学装置という)が挿入部の先端部に設けられた内視鏡が開示されている。
【0004】
ところで、医療機器に用いられる光学装置は、小型化、高精度、高画素化などに伴い、フォーカス機構の高精度化が要求されている。
【0005】
しかしながら、このような小型で高精度、高画素などが要求される光学装置は、フォーカス機構に設けられる移動レンズ枠などの摺動部の部品クリアランスなどにより、移動レンズ枠の摺動動作および停止位置の再現性が困難で、焦点調整の際の光学性能が安定せず、片ボケ、ケラレなどの不具合が発生するという課題があった。
【0006】
なお、日本国特開2017-90504号公報に記載される従来の光学装置は、摺動部である移動レンズ枠を磁力により片寄せする技術が開示されているが、外径方向の一方側のみに寄せられる移動レンズ枠の初動が不均一となったり、固定保持枠とのクリアランスによって移動レンズが傾いてしまい、引っ掛かったりして停止する虞があり、移動レンズ枠のスムーズな摺動動作が得られないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたものあり、移動レンズ枠の摺動をスムーズに行え、小型で高画素化に対応して高精度に光学性能をより安定させることができる光学装置および内視鏡を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様における光学装置は、光学像を形成する光学系と、上記光学系の少なくとも一部を保持する移動枠と、上記移動枠を内包すると共に上記光学像の光軸方向へ摺動自在に保持する固定枠と、上記移動枠を上記光軸に沿って駆動する磁界を発生するコイルと、上記移動枠を磁力により上記光軸に平行な軸回りに所定のモーメントの回転力を生じさせる位置に配設された磁石と、有し、上記磁石は、複数であって、第1の磁石と第2の磁石は、上記光軸に直交する断面において、それぞれの中心を結ぶ線の中点が上記移動枠の断面領域内に入るように配設されている
【0009】
本発明の一態様における内視鏡は、光学像を形成する光学系と、上記光学系の少なくとも一部を保持する移動枠と、上記移動枠を内包すると共に光軸方向へ摺動自在に保持する固定枠と、上記移動枠を光軸に沿って駆動する磁界を発生するコイルと、上記移動枠を磁力により上記光軸に平行な軸回りに所定のモーメントの回転力を生じさせる位置に配設された磁石と、を有し、上記磁石は、複数であって、第1の磁石と第2の磁石は、上記光軸に直交する断面において、それぞれの中心を結ぶ線の中点が上記移動枠の断面領域内に入るように配設されている光学装置と、上記光学装置が搭載された先端部を有する挿入部と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動レンズ枠の摺動をスムーズに行え、小型で高画素化に対応して高精度に光学性能をより安定させることができる光学装置および内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】同、本発明の一態様の光学装置を具備する内視鏡の外観を示す図
図2】同、光学装置の構成を示す斜視図
図3】同、光学装置の構成を示す上面図
図4】同、光学装置の構成を示す側面図
図5】同、図4の矢印V方向の光学装置の構成を示す正面図
図6】同、図5のVI-VI断面図
図7】同、図6のVII-VII断面図
図8】同、第1の変形例の光学装置の構成を示す断面図
図9】同、第2の変形例の光学装置の構成を示す断面図
図10】同、第3の変形例の光学装置の構成を示す断面図
図11】同、第4の変形例の光学装置の構成を示す断面図
図12】同、第5の変形例の光学装置の構成を示す断面図
図13】同、第6の変形例の光学装置の構成を示す断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここでは、本発明である光学装置を備えた内視鏡を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
また、以下の構成説明における光学装置を備えた内視鏡は、生体の上部または下部の消化器官に挿入するため挿入部が可撓性のある所謂軟性鏡を例に挙げて説明するが、これに限定されることなく、外科用に用いられる挿入部が硬質な所謂硬性鏡にも適用できる技術である。
【0013】
さらに、光学装置は、内視鏡などの医療機器に設けられるものに限定されることなく、小型となるため、例えば、カメラ付き携帯電話にも採用することができるものである。
【0014】
以下、本発明の一態様の光学装置および内視鏡について、図面に基づいて説明する。
先ず、図1を参照して、本発明に係る光学装置1を具備する内視鏡101の構成の一例を説明する。
本実施形態の内視鏡101は、人体などの被検体内に導入可能であって被検体内の所定の観察部位を光学的に撮像する構成を有している。
【0015】
なお、内視鏡101が導入される被検体は、人体に限らず、他の生体であっても良いし、機械、建造物などの人工物であっても良い。
【0016】
内視鏡101は、被検体の内部に導入される挿入部102と、この挿入部102の基端に位置する操作部103と、この操作部103の側部から延出するユニバーサルコード104とで主に構成されている。
【0017】
挿入部102は、先端に配設される先端部110、この先端部110の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部109およびこの湾曲部109の基端側に配設され操作部103の先端側に接続される可撓性を有する可撓管部108が連設されて構成されている。
【0018】
詳しくは後述するが、先端部110には、光学装置1が設けられている。また、操作部103には、湾曲部109の湾曲を操作するためのアングル操作ノブ106が設けられている。
【0019】
ユニバーサルコード104の基端部には、外部装置120に接続される内視鏡コネクタ105が設けられている。内視鏡コネクタ105が接続される外部装置120は、モニタなどの画像表示部121にケーブルを介して接続されている。
【0020】
また、内視鏡101は、ユニバーサルコード104、操作部103および挿入部102内に挿通された複合ケーブル115および外部装置120に設けられた光源部からの照明光を伝送する光ファイバ束(不図示)を有している。
【0021】
複合ケーブル115は、内視鏡コネクタ105と光学装置1とを電気的に接続するように構成されている。内視鏡コネクタ105が外部装置120に接続されることによって、光学装置1は、複合ケーブル115を介して外部装置120に電気的に接続される。
【0022】
この複合ケーブル115を介して、外部装置120から光学装置1への電力の供給および外部装置120と光学装置1との間の通信が行われる。
【0023】
外部装置120には、画像処理部が設けられている。この画像処理部は、光学装置1から出力された撮像素子出力信号に基づいて映像信号を生成し、画像表示部121に出力する。即ち、本実施形態では、光学装置1により撮像された光学像(内視鏡像)が、映像として画像表示部121に表示される。
【0024】
なお、内視鏡101は、外部装置120または画像表示部121に接続する構成に限定されず、例えば、画像処理部またはモニタの一部または全部を有する構成であっても良い。
【0025】
また、光ファイバ束である後述するライトガイド(不図示)は、外部装置120の光源部から発せられた光を、先端部110の照明光出射部としての照明窓まで伝送するように構成されている。さらに、光源部は、内視鏡101の操作部103または先端部110に配設される構成であってもよい。
【0026】
ここで、内視鏡101の挿入部102の先端部110に搭載される光学装置1の構成について、以下に詳しく説明する。
図2から図5に示す、本実施の形態の光学装置1は、2つの光学像を形成するステレオ光学系が設けられた立体視(3D)画像を取得できる3Dカメラである。なお、2つの光学像を形成する2つの光学系を有する光学装置1は、3Dカメラに限定されることなく、一方の光学系が通常光観察、他方の光学系がNBI(Narrow band imaging)などの特殊光観察が行えるものとしてもよい。
【0027】
光学装置1は、先端側に2つの観察光学系である対物レンズ12,13を保持する樹脂などの非磁性材、ステンレスなどの非磁性金属材などから形成された第1の固定枠である外形断面が長円形(Oval)状のレンズ保持枠11を有している。なお、対物レンズ12,13が内視鏡101の先端部110で露出する観察窓を構成する場合もある。
【0028】
対物レンズ12には、光軸O1を有する撮影光が入射される。一方、対物レンズ13には、光軸O2を有する撮影光が入射される。これら2つの撮影光の視差により、3D画像が生成されるものである。
【0029】
レンズ保持枠11は、先端側の外形断面が長円形筒状であって非磁性樹脂材、非磁性金属材などの非磁性材から形成された第2の固定枠であるガイド枠14に嵌合されている。このガイド枠14の基端には、断面円形の2つの筒状部14a,14bを有し、これら2つの筒状部14a,14bに略有底筒体の樹脂などの非磁性樹脂材、非磁性金属材などの非磁性材から形成された第3の固定枠である2つの撮像素子保持枠15が嵌合されている。
【0030】
ガイド枠14の外周部には、銅などの金属細線が巻回されて構成されるコイル31が設けられている。また、ガイド枠14の外周部上には、コイル31を挟むように前後に一対の第1の磁石21,22および一対の第2の磁石23,24が異なる略直線状の縁辺部に設けられている。
【0031】
2つの撮像素子保持枠15は、基端部分に矩形ブロック状の配線接続部15aを有し、この配線接続部15aの表面に露出するように複数の端子部15bが設けられている。これら複数の端子部15bには、撮像ケーブル16,17の複数の配線18,19の導体18a,19aが半田などにより接続される。
【0032】
図6に示すように、ガイド枠14は、鉄、ニッケル、コバルトなどの磁性材から形成された断面長円形状の摺動部材である移動レンズ枠41が内部で所定の範囲において光軸O1,O2に沿って摺動自在となるように内包して収容されている。この移動レンズ枠41は、光軸O1(O2)に直交する方向に2つの移動レンズ42を保持している。
【0033】
なお、磁性材から形成された移動レンズ枠41は、コイル31の通電方向を切換えることで、コイル31から発生する磁界の向きに応じて前後に摺動されるものである。
【0034】
本実施の形態の光学装置1は、移動レンズ枠41に保持された移動レンズ42を前後に駆動することで、被写体の焦点位置を変更できる構成となっている。なお、移動レンズ42の駆動位置による光学特性は、内視鏡101における被検体に対する近点観察時と遠点観察時の焦点切り替えでもよいし、テレ/ワイドのズーム切り替えとしてもよい。
【0035】
ガイド枠14の2つの筒状部14a,14b内には、それぞれ2つの観察光学系である固定レンズ群43が保持されており、光軸O1(O2)に沿った方向のレンズ間にスペーサ44が設けられている。
【0036】
2つの撮像素子保持枠15内には、カバーガラス32が前面に設けられ、CCDまたはCMOSなどの固体撮像素子を備えたイメージセンサ33がそれぞれ配設されている。これらイメージセンサ33は、複数の端子部15bと電気的に接続されている。
【0037】
ここで、第1の磁石21,22および第2の磁石23,24によって、ガイド枠14内で光軸O1,O2に沿って摺動自在な移動レンズ枠41を片寄せる構成について以下に詳しく説明する。
【0038】
図7に示すように、第1の磁石21,22および第2の磁石23,24は、ガイド枠14の外周部における、光軸O1,O2に直交し、紙面に向かって見た左右(図中X軸に沿った)方向にずれた位置であって、紙面に向かって見た上下(図中Y軸に沿った)方向において移動レンズ枠41を挟んだ位置に配設されている。
【0039】
換言すると、光軸O1,O2に直交するガイド枠14および移動レンズ枠41の断面の中心点を通る長手方向に沿ったX軸と、このX軸に直交し、前記中心点を通る短手方向に沿ったY軸と、によって4つに区分けされる斜め方向の象限に第1の磁石21,22および第2の磁石23,24が位置するように主に配設されている。
【0040】
なお、ここでは、第1の磁石21,22がX軸およびY軸によって区分けされる第1象限の位置に主に配設され、第2の磁石23,24がX軸およびY軸によって区分けされる第3象限の位置に主に配設されている構成を例示している。勿論、第1の磁石21,22が第2象限に配設され、第2の磁石23,24が第4象限に配置された構成でもよい。
【0041】
ガイド枠14内の移動レンズ枠41は、第1の磁石21,22の磁力M1の引力を常に受け、この磁力M1に相反する方向の第2の磁石23,24の磁力M2の引力を常に受けた状態となる。
【0042】
この状態において、移動レンズ枠41は、光軸O1,O2に直交する断面において、第1の磁石21,22の中心C1と第2の磁石23,24の中心C2を結んだ直線Lの中点Cを通る光軸O1,O2に平行な軸回りの所定のモーメントMの回転力が発生する。
【0043】
そのため、移動レンズ枠41は、第1の磁石21,22に対向する外表面部分がガイド枠14の内面に当接し、第2の磁石23,24に対向する外表面部分がガイド枠14の内面に当接した状態が保たれる。
【0044】
このように、移動レンズ枠41は、第1の磁石21,22および第2の磁石23,24の引力による常に回転モーメントを受けて片寄られた状態となり、ガイド枠14とのクリアランスに対して光軸O1,O2に沿った摺動位置が安定する。
【0045】
なお、移動レンズ枠41に中点Cを通る光軸O1,O2に平行な軸回りの回転力が生じるように中点Cが移動レンズ枠41の断面領域内に入れば、第1の磁石21,22と第2の磁石23,24の配置は問わないが、移動レンズ枠41のより安定したスムーズな摺動性を得るには中点Cが移動レンズ枠41の断面中心と一致するように第1の磁石21,22と第2の磁石23,24を配置することが好ましい。
【0046】
即ち、光学装置1は、第1の磁石21,22と第2の磁石23,24が中点Cの点対称位置に設けられる構成が好適となる。さらに、第1の磁石21,22の磁力M1と第2の磁石23,24の磁力M2が同じ磁力(M1=M2)となるようにすることが好適である。
【0047】
このように構成された光学装置1は、小型化しても、摺動部である移動レンズ枠41の摺動動作および停止位置の再現性が安定する。その結果、光源装置1は、光学性能が安定し、片ボケ、ケラレなどの不具合を防止することができる。
【0048】
さらに、光学装置1は、第1の磁石21,22および第2の磁石23,24の磁力M1,M2により移動レンズ枠41に常に中点Cを通る光軸O1,O2に平行な軸回りの回転モーメントが生じている状態により、移動レンズ枠41の摺動時の初動も均一となる。
【0049】
また、移動レンズ枠41は、ガイド枠14とのクリアランスによって光軸O1,O2に対して傾くこともないため、引っ掛かったりして停止することもなく、スムーズな摺動動作が得られる。
【0050】
以上の説明から、本実施の形態の光学装置1は、移動レンズ枠41の摺動をスムーズに行え、小型で高画素化に対応して高精度に光学性能をより安定させることができる構成となる。
特に、立体視(3D)画像を取得する光学装置1においては、焦点調整(拡大動作)の際に生じる片ボケの発生と視差ズレの発生を防止することができる。
【0051】
また、光学装置1をより小型化しても、光学性能を安定させることができるため、光学装置1を搭載する内視鏡101の挿入部102の先端部110も小型化できる。その結果、挿入部102の細径化も実現でき、内視鏡101は、挿入部102の被検体への挿入性も向上させることができる。
【0052】
(第1の変形例)
光学装置1は、所定のモーメントMが発生すればよく、図8に示すように、第2の磁石23,24を設けず、第1の磁石21,22のみの構成としてもよい。
【0053】
(第2の変形例)
光学装置1は、図9に示すように、第1の磁石21,22の磁力M1よりも小さい磁力M3を有する第3の磁石25,26を第2の磁石23,24に対してY軸に沿ったガイド枠14の外周部に設け、第2の磁石23,24の磁力M2よりも小さい磁力M4を有する第4の磁石27,28を第1の磁石21,22に対してY軸に沿ったガイド枠14の外周部に設けた構成としてもよい。
【0054】
即ち、光源装置1は、第3の磁石25,26が第1の磁石21,22に対してX軸に沿った第4象限に設けられ、第4の磁石27,28が第2の磁石23,24に対してX軸に沿った第2象限に設けられた構成となっている。
【0055】
このような構成としても、第1の磁石21,22および第2の磁石23,24のそれぞれの磁力M1,M2が第3の磁石25,26および第4の磁石27,28のそれぞれの磁力M3,M4よりも大きいため、移動レンズ枠41に回転モーメントを発生させることができる。
【0056】
また、第1の磁石21,22、第2の磁石23,24、第3の磁石25,26および第4の磁石27,28のそれぞれの磁力M1,M2,M3,M4を調整して、移動レンズ枠41がスムーズに摺動するように設定することもできる。
【0057】
(第3の変形例)
光学装置1は、図10に示すように、ガイド枠14を磁性材から形成し、移動レンズ枠41を非磁性材から形成して、移動レンズ枠41に所定のモーメントMの回転力が生じるように移動レンズ枠41側に複数、ここでは2つの磁石34,35を設けた構成としてもよい。
【0058】
なお、移動レンズ枠41には、2つの磁石34,35が直接、ガイド枠14に接触しないように2つの磁石34,35の配置する凹部41aが形成されている。これにより、磁石34,35が直接的にガイド枠14に吸着されず、移動レンズ枠41のスムーズな摺動動作ができるようになる。
【0059】
(第4の変形例)
光学装置1は、上記したような、光学系(対物レンズおよび移動レンズ)が視差を有するように2つ設けられた立体視(3D)画像を取得できる3Dカメラの構成でなくても、例えば、図11に示すように、光学系が1つの平面視(2D)画像を取得する構成としてもよい。
【0060】
なお、本変形例の光学装置1は、外形断面が長円形筒状のガイド枠14および外形断面が長円形の移動レンズ枠41が前提の構成である。
【0061】
(第5の変形例)
光学装置1は、図12に示すように、光学系の光軸に直交する断面形状が真円状でなく、上記光学系が形成する光学像は、例えばHDTVで利用される16:9以上の高アスペクト比に適合するように、長円形としてもよい。または、WSXGA+で利用される16:10以上の表示モニタにも適合するように16:10以上の高アスペクト比に適合する長円形としてもよい。
なお、長円形の光学系は、立体視(3D)画像を取得できる3Dカメラにも適用することができる。なお、本変形例のような長円形の光学系は、上述した長円形状のガイド枠14および移動レンズ枠41に適合する。
"上記実施形態では、断面形状が長円形の移動枠を開示したが、長円形状と類似した楕円形状或は方形形状の移動枠に対しても有効である"
【0062】
(第6の変形例)
光学装置1は、図13に示すように、外形断面が円形筒状のガイド枠14および外形断面が円形の移動レンズ枠41である場合、ガイド枠14に光軸に沿って凸部45が設けられ、移動レンズ枠41に凸部45が係合する凹部46を光軸に沿って設けられた構成となる。
【0063】
このような構成では、移動レンズ枠41に第1の磁石21,22および第2の磁石23,24の磁力M1,M2により中点Cを通る光軸O1に平行な軸回りの所定のモーメントMの回転力が生じても、凸部45と凹部46の係合により移動レンズ枠41の回転が規制される。
【0064】
なお、以上の実施の形態および変形例に記載した光学装置1は、光軸に沿って摺動する移動レンズ枠41のガイド枠14に対する摩擦抵抗を低減する構成とすることで低電力駆動させることができる。
【0065】
具体的には、移動レンズ枠41の外表面またはガイド枠14の内表面に切削により溝などのザグリ加工を施したり、表面テフロン(登録商標)加工を施したりすることが好適である。さらに、移動レンズ枠41を駆動する際のコイル31の通電制御によって低電力化もできる。
【0066】
なお、移動レンズ枠41を駆動するアクチュエータは、ボイスコイルモータ(VCM)などの構成としてもよい。
【0067】
以上の実施の形態および変形例に記載した発明は、それら実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態および変形例には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0068】
例えば、実施の形態および変形例に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13