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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】基板搬送ロボット及び自動教示方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020563262
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050403
(87)【国際公開番号】W WO2020137991
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】16/233,314
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中原 一
(72)【発明者】
【氏名】タン マーク ユィンシン
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-284728(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145082(WO,A1)
【文献】国際公開第03/022543(WO,A1)
【文献】特開2005-260176(JP,A)
【文献】特開2005-277175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水平の2軸方向に自由度を有するアームと、
前記アームの先端部に連結される基端部、および、前記基端部から二股に延びる第1先端部および第2先端部を有し、その上面側で基板を保持できるように構成されたハンドと、
各々が前記第1先端部および前記第2先端部の間の空間に検出光を射出し、平面視で互いの前記検出光の光軸が当該空間内で交差するように配置された第1および第2センサと、
前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、
平面視において、前記光軸の平面視交点が、前記ハンドで前記基板を保持した場合における前記基板の所定位置上に位置するように、前記第1および第2センサが前記ハンドに設けられ、
前記制御装置は、
前記アームを動作させ、教示位置に設置されたターゲットを前記第1および第2センサで走査し、平面視において、前記光軸の平面視交点が前記ターゲットに位置するまで前記ハンドを移動させ、
平面視において、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記教示位置を取得するように構成されている、基板搬送ロボット。
【請求項2】
前記第1および第2センサの各々は、水平方向に検出光を射出する発光素子、および該検出光を受光する受光素子を備え、
前記制御装置は、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、前記第2センサの受光素子が検出光を受光できないときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと判断するように構成されている、請求項1に記載の基板搬送ロボット。
【請求項3】
前記第1センサは、水平方向に検出光を射出する発光素子、および該検出光を受光する受光素子を備え、前記第2センサの発光素子と受光素子とが、前記第1先端部および前記第2先端部に分かれて配置され、前記第2センサの発光素子は鉛直上向き成分を有する斜め方向に検出光を射出し、
前記ターゲットは、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記第2センサの検出光を前記第2センサの受光素子に向けて反射する反射器を備え、
前記制御装置は、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、前記第2センサの受光素子が検出光を受光したときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと判断するように構成されている、請求項1に記載の基板搬送ロボット。
【請求項4】
前記基板の前記所定位置が、前記基板の中心位置である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項5】
基板搬送ロボットに教示位置を自動教示するための方法であって、
前記基板搬送ロボットに前記基板搬送ロボットのアームを動作させ、前記アームの先端のハンドを移動させることで、前記ハンドに配置された第1および第2センサで、教示位置に配置されたターゲットを走査するステップと、
平面視において、前記ターゲットが、前記第1および第2センサによって射出される検出光の光軸が平面視で交差する点である平面視交点に位置するまで前記ハンドを移動させ、平面視において前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに、前記教示位置を取得するステップと、を備え、
平面視において、前記光軸の平面視交点は、前記ハンドで基板を保持した場合における前記基板の所定位置上に位置する、自動教示方法。
【請求項6】
水平方向に検出光を射出する発光素子および該検出光を受光する受光素子を備える前記第1センサにおいて、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、かつ、水平方向に検出光を射出する発光素子および該検出光を受光する受光素子を備える前記第2センサにおいて、前記第2センサの受光素子が検出光を受光できないときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと決定するステップをさらに備える、請求項5に記載の自動教示方法。
【請求項7】
水平方向に検出光を射出する発光素子および該検出光を受光する受光素子を備える前記第1センサにおいて、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、かつ、鉛直上向き成分を有する斜め方向に検出光を射出する発光素子および前記ターゲットに配置された反射器で反射された該検出光を受光する受光素子を備える前記第2センサにおいて、前記第2センサの受光素子が検出光を受光したときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと決定するステップをさらに備え、
前記反射器は、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記第2センサの検出光を前記第2センサの受光素子に向けて反射するように構成される、請求項5に記載の自動教示方法。
【請求項8】
前記基板の前記所定位置が、前記基板の中心位置である、請求項5~7のいずれか一項に記載の自動教示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板搬送ロボット、および、基板搬送ロボットに教示位置を自動教示する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されるように、基板の位置を基板搬送ロボットに自動で教示する際、ハンドに設けられたセンサで、教示位置に配置された治具が走査される。
【0003】
教示位置が取得されると、その教示位置にハンドが移動され、そこで基板を載置する作業が行われる。基板の載置を確実にするために教示位置の位置精度の向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0158935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本開示は、教示位置の位置精度の改善する基板搬送ロボット及び自動教示方法を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一形態に係る基板搬送ロボットは、少なくとも水平の2軸方向に自由度を有するアームと、前記アームの先端部に連結される基端部、および、前記基端部から二股に延びる第1先端部および第2先端部を有し、その上面側で基板を保持できるように構成されたハンドと、各々が前記第1先端部および前記第2先端部の間の空間に検出光を射出し、平面視で互いの前記検出光の光軸が当該空間内で交差するように配置された第1および第2センサと、前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、平面視において、前記光軸の平面視交点が、前記ハンドで前記基板を保持した場合における前記基板の所定位置上に位置するように、前記第1および第2センサが前記ハンドに設けられ、前記制御装置は、前記アームを動作させ、教示位置に設置されたターゲットを前記第1および第2センサで走査し、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記教示位置を取得するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、教示位置の位置精度の改善が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るロボットを示す概念図である。
図2図2は、実施形態に係るハンドを示す平面図である。
図3図3は、実施形態に係るロボットの制御系を示すブロック図である。
図4A図4Aは、第1実施形態に係る治具を示す図である。
図4B図4Bは、第1実施形態に係る治具を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る自動教示の手順を示すフローチャートである。
図6A図6Aは、第1実施形態に係る自動教示の説明図である。
図6B図6Bは、第1実施形態に係る自動教示の説明図である。
図6C図6Cは、第1実施形態に係る自動教示の説明図である。
図7図7は、第2実施形態に係る第2センサを示す図である。
図8A図8Aは、第2実施形態に係る治具を示す図である。
図8B図8Bは、第2実施形態に係る治具を示す図である。
図9図9は、第2実施形態に係る自動教示の手順を示すフローチャートである。
図10A図10Aは、第2実施形態に係る自動教示の説明図である。
図10B図10Bは、第2実施形態に係る自動教示の説明図である。
図10C図10Cは、第2実施形態に係る自動教示の説明図である。
図10D図10Dは、第2実施形態に係る自動教示の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本開示の態様例を説明する。本開示の一態様に係る基板搬送ロボットは、少なくとも水平の2軸方向に自由度を有するアームと、前記アームの先端部に連結される基端部、および、前記基端部から二股に延びる第1先端部および第2先端部を有し、その上面側で基板を保持できるように構成されたハンドと、各々が前記第1先端部および前記第2先端部の間の空間に検出光を射出し、平面視で互いの前記検出光の光軸が当該空間内で交差するように配置された第1および第2センサと、前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、平面視において、前記光軸の平面視交点が、前記ハンドで前記基板を保持した場合における前記基板の所定位置上に位置するように、前記第1および第2センサが前記ハンドに設けられ、前記制御装置は、前記アームを動作させ、教示位置に設置されたターゲットを前記第1および第2センサで走査し、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記教示位置を取得するように構成されている。
【0010】
上記態様によると、2系統の検出光を交差させることにより、ハンドで基板を保持した場合における基板の位置を教示位置として設定容易である。よって、教示位置の位置精度の改善が可能である。さらに、上記教示位置を利用した基板の載置を確実に行える。
【0011】
本開示の一態様に係る基板搬送ロボットにおいて、前記第1および第2センサの各々は、水平方向に検出光を射出する発光素子、および該検出光を受光する受光素子を備え、前記制御装置は、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、前記第2センサの受光素子が検出光を受光できないときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと判断するように構成されてもよい。
【0012】
本開示の一態様に係る基板搬送ロボットにおいて、前記第1センサは、水平方向に検出光を射出する発光素子、および該検出光を受光する受光素子を備え、前記第2センサの発光素子と受光素子とが、前記第1先端部および前記第2先端部に分かれて配置され、前記第2センサの発光素子は鉛直上向き成分を有する斜め方向に検出光を射出し、前記ターゲットは、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記第2センサの検出光を前記第2センサの受光素子に向けて反射する反射器を備え、前記制御装置は、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、前記第2センサの受光素子が検出光を受光したときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと判断するように構成されてもよい。
【0013】
本開示の一態様に係る基板搬送ロボットにおいて、前記基板の前記所定位置が、前記基板の中心位置であってもよい。
【0014】
本開示の一態様に係る自動教示方法は、基板搬送ロボットに教示位置を自動教示するための方法であって、前記基板搬送ロボットが、少なくとも水平の2軸方向に自由度を有するアームと、前記アームの先端部に連結される基端部、および、前記基端部から二股に延びる第1先端部および第2先端部を有し、その上面側で基板を保持できるように構成されたハンドと、各々が前記第1先端部および前記第2先端部の間の空間に検出光を射出し、平面視で互いの前記検出光の光軸が当該空間内で交差するように配置された第1および第2センサと、前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、平面視において、前記光軸の平面視交点が、前記ハンドで前記基板を保持した場合における前記基板の所定位置上に位置するように、前記第1および第2センサが前記ハンドに設けられ、前記方法が、前記アームを動作させ、教示位置に設置されたターゲットを前記第1および第2センサで走査するステップと、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記教示位置を取得するステップと、を備える。上記態様によると、本開示の一態様に係る基板搬送ロボット同様の効果が得られる。
【0015】
本開示の一態様に係る自動教示方法は、基板搬送ロボットに教示位置を自動教示するための方法であって、前記基板搬送ロボットに前記基板搬送ロボットのアームを動作させ、前記アームの先端のハンドを移動させることで、前記ハンドに配置された第1および第2センサで、教示位置に配置されたターゲットを走査するステップと、前記ターゲットが、前記第1および第2センサによって射出される検出光の光軸が平面視で交差する点である平面視交点に位置したときに、前記教示位置を取得するステップと、を備え、平面視において、前記光軸の平面視交点は、前記ハンドで基板を保持した場合における前記基板の所定位置上に位置する。上記態様によると、本開示の一態様に係る基板搬送ロボット同様の効果が得られる。
【0016】
本開示の一態様に係る自動教示方法は、水平方向に検出光を射出する発光素子および該検出光を受光する受光素子を備える前記第1センサにおいて、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、かつ、水平方向に検出光を射出する発光素子および該検出光を受光する受光素子を備える前記第2センサにおいて、前記第2センサの受光素子が検出光を受光できないときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと決定するステップをさらに備えてもよい。
【0017】
本開示の一態様に係る自動教示方法は、水平方向に検出光を射出する発光素子および該検出光を受光する受光素子を備える前記第1センサにおいて、前記第1センサの受光素子が検出光を受光できず、かつ、鉛直上向き成分を有する斜め方向に検出光を射出する発光素子および前記ターゲットに配置された反射器で反射された該検出光を受光する受光素子を備える前記第2センサにおいて、前記第2センサの受光素子が検出光を受光したときに、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したと決定するステップをさらに備え、前記反射器は、前記ターゲットが前記光軸の平面視交点に位置したときに前記第2センサの検出光を前記第2センサの受光素子に向けて反射するように構成されてもよい。
【0018】
本開示の一態様に係る自動教示方法において、前記基板の前記所定位置が、前記基板の中心位置であってもよい。
【0019】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。全図を通じて同一または対応の要素には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態を説明する。図1はロボット1を示す。図1に示すように、ロボット1は、半導体素子を製造する半導体処理設備において、基板Sを搬送するために利用され得る。基板Sは、ウェハと呼ばれる半導体素子の材料であり、円盤状に形成されている。半導体処理設備には、熱処理、不純物導入処理、薄膜形成処理、リソグラフィー処理、洗浄処理、あるいは平坦化処理といった様々な処理を基板Sに施すために、複数の処理装置が設置されている。
【0021】
ロボット1は、例えば、カセット2に収納された基板Sを処理装置へ搬送する。カセット2は、例えばFOUP(正面開口式一体型ポッド:Front Opening Unify Pod)である。なお、単一のカセット2が図示されているが、半導体処理設備には、複数(例えば、2又は3)のカセット2を集約的に備えたEFEM(Equipment Front End Module)が設置されていてもよい。この場合、好ましくは、ロボット1は、走行装置なしで各カセット2内にアクセス可能に構成される。
【0022】
ロボット1は、基台10、アーム12、ハンド14、第1センサ20、第2センサ30、および制御装置40を備えている。
【0023】
基台10は、半導体処理設備の適所(例えば、水平な床面)に固定される(あるいは、走行装置を介して設備床面に支持されてもよい)。以降では、基台10が水平な床面に適正に設置されているものとして、方向を説明する。
【0024】
アーム12は、昇降軸11を介して基台10に連結されている。昇降軸11は基台10に対して上下方向(Z方向)に動作でき、それによりアーム12およびハンド14を上下方向に移動させる。アーム12は、2以上のリンクを連結することによって構成されている。ハンド14は、アーム12に連結される。ロボット1あるいはアーム12は、いわゆる水平多関節型であるが、アーム12は少なくとも水平の2軸方向(X方向およびY方向)の自由度を有するアームであってよい。ロボット1には、複数の回転軸A1,A2,…が、複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定されている。いずれの回転軸A1,A2,…も上下方向に向けられる。「複数の連結部」には、基台10とアーム12との連結部、アーム12を構成するリンクのうち隣接する2リンク同士の連結部、および、アーム12とハンド14との連結部が含まれる。例えば、本実施形態では、アーム12が第1リンク13aおよび第2リンク13bの2リンクを有し、ロボット1に3つの連結部および3つの回転軸が設定されている。
【0025】
第1リンク13aの基端部は、基台10に回転軸A1周りに回転可能に連結されている。第2リンク13bの基端部は、第1リンク13aの先端部に回転軸A2周りに回転可能に連結されている。ハンド14は、第2リンク13bの先端部に回転軸A3周りに回転可能に連結されている。リンク13a,13bおよびハンド14は、水平面(XY平面)内で揺動できる。ハンド14は、アーム12の姿勢(各回転軸A1~A3周りの回転角)に応じて水平面内で任意の軌跡(直線及び曲線を含む)に沿って移動できる。
【0026】
図2はハンド14を示す。図2に示すように、ハンド14は、薄板状である。ハンド14は、アーム12の先端部から水平に延びている。ハンド14は、円盤状の基板Sをその上面側で保持できるように構成され、それにより基板Sはハンド14上で概ね水平な姿勢に保たれる。保持のための構成は、特に限定されず、エッジグリップ式あるいは吸引式を採用できる。ハンド14が基板Sを保持する状態でアーム12およびハンド14が昇降および/または揺動することにより、ロボット1は、X、Yおよび/またはZ方向に任意の軌跡に沿って基板Sを水平姿勢に保ちながら搬送できる。
【0027】
ハンド14は、平面視でU状に形成されている。ハンド14は、単一の基端部15、および、基端部15から二股状に分かれて延びる第1先端部16aおよび第2先端部16bを有する。ハンド14は、平面視で中心線Cに対して左右対称である。回転軸A3が中心線C上に位置するようにして、ハンド14の基端部15はアーム12に連結されている。
【0028】
第1および第2センサ20,30は、光学センサであり、ハンド14の第1先端部16aと第2先端部16bとの間の空間を伝播する第1および第2検出光L1,L2をそれぞれ形成する。検出光L1,L2はビーム状であり、空間内で直線的に形成される。第1および第2センサ20,30は、透過型である。第1センサ20は、第1発光素子21および第1受光素子22を備え、第2センサ30は、第2発光素子31および第2受光素子32を備える。制御装置40と素子21,22,31,32との間には光電変換のためのアンプ29が介在する。アンプ29は、ハーネスを介して制御装置40と電気信号を伝達可能に接続され、ハンド14に配設された光ファイバを介して素子21,22,31,32と光信号を伝達可能に接続されている。本実施形態では、単一のアンプ29が、第1および第2センサ20,30で共用される。制御装置40から出力された電気信号はアンプ29で光信号に変換され、その光信号は第1および第2発光素子21,31に導かれる。
【0029】
本実施形態では、第1受光素子22は、第1発光素子21から射出された第1検出光L1の光路上に配置される。第2受光素子32も、第2発光素子31から射出された第2検出光L2の光路上に配置されている(配置されない場合の一例を第2実施形態として説明する)。
【0030】
第1および第2検出光L1,L2は、少なくとも平面視において、互いに交差する。ただし、上下方向には、第1および第2検出光L1,L2の間にズレがあってもよい(ズレがある場合の一例を第2実施形態として説明する)。このように、実際には第1および第2検出光L1,L2が上下方向にズレていても、平面視において2つの検出光L1,L2の交点が存在するので、この点を便宜上「平面視交点LC」と呼ぶ。なお、検出光L1,L2の交点は、検出光L1,L2の光軸の交点を意味し得る。本実施形態では、第1および第2検出光L1,L2が上下方向において同位置にあるものとし、実際に交差するものとして説明する。
【0031】
平面視交点LCは、ハンド14の中心に位置付けられる。なお、平面視交点LCあるいはハンド14の中心は、第1先端部16aおよび第2先端部16bの間の空間内に存在する。別の言い方では、平面視交点LCは、ハンド14で円盤状の基板Sを保持した状態で当該保持された基板Sの所定位置が配置されるべき位置である。一例として、当該所定位置は、基板Sの中心位置である。
【0032】
第2発光素子31および第2受光素子32は、第1先端部16aおよび第2先端部16bに分かれて配置されている。第2発光素子31および第2受光素子32は、ハンド14の中心を挟んで中心線Cと直交する方向に対向配置されている。本実施形態では、第2発光素子31から射出された第2検出光L2は、これを遮るものが無ければ、第2受光素子32に入射されるようになっている。
【0033】
第1検出光L1は中心線Cに対して傾斜する方向に伝播し、それにより上記のように形成される第2検出光L2と平面視において交差する。本実施形態では、第1発光素子21と第1受光素子22との間の光路上に反射器23を介在させている。この場合の一例として、第1発光素子21は、第2発光素子31および第2受光素子32(あるいはハンド14の中心)よりも先端側において第1先端部16aに取り付けられている。第1発光素子21から射出された第1検出光L1は、中心線Cと直交する方向に進む。反射器23は、中心線Cと直交する方向において第1発光素子21と対向配置されており、第2先端部16bに取り付けられている。第1受光素子22は、第1発光素子21と同じように第1先端部16aに取り付けられる一方、第1発光素子21とは逆にハンド14の中心よりも基端側に配置されている。反射器23で反射された第1検出光L1は、平面視においてハンド14の中心を通過して第1受光素子22に入射するようになっている。この配置により、従来と同様、ハンド14の全体としての先端同士の間で中心線Cと直交する方向に進む検出光を形成したうえで、ハンド14の中心に2つの検出光L1,L2の平面視交点LCを形成できる。
【0034】
図3はロボット1の制御系を示している。図3に示すように、制御装置40は、アーム12およびハンド14の動作を制御する。制御装置40は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータ装置を備えたロボットコントローラであり、単一の装置とは限らず複数の装置で構成されていてもよい。
【0035】
制御装置40は、記憶部41、演算部42およびサーボ制御部43を備える。記憶部41は、制御装置40の基本プログラム、ロボット1の動作プログラム、および、動作プログラムの実行中に取得されるデータ等の情報を記憶する。
【0036】
演算部42は、ロボット制御のための演算処理を実行し、ロボット1の制御指令を生成する。サーボ制御部43は、演算部42により生成された制御指令に基づいて、ロボット1の駆動装置46を制御するように構成されている。この駆動装置46は、例えば、昇降軸11を昇降させる昇降アクチュエータ47a(例えば、ボールスクリューを駆動する電気モータ)、回転軸A1~A3それぞれに対応する複数の回転アクチュエータ48a,48b,48c(例えば、電気モータ)を含む。駆動装置46は、制御装置40からの制御指令に従って、ハンド14を移動させる。以下の説明において、アーム12およびハンド14の姿勢あるいは位置の変化は、制御装置40により実行される制御を通じて実現される。
【0037】
記憶部41に記憶される動作プログラムは、ロボット1が半導体処理設備で実用されて基板Sの搬送作業を自動的に行うための作業プログラムだけでなく、その作業を行うために教示位置を自身に自動で教示するためのプログラムも含む。教示位置は、カセット2あるいは処理装置に設けられた基板載置用のステージである。
【0038】
この自動教示に際しては、治具50が用いられる。図4Aおよび図4Bに示すように、治具50は、円盤部51と、円盤部51の中心から立設されたターゲット52とを有する。円盤部51の形状は、ハンド14で搬送される基板Sを模した形状である。ターゲット52は、円盤部51の表面から垂直に延びる円柱状に形成されており、「ピン」と称される場合がある。教示位置は、上記のように典型的にはステージであるから、教示位置を取得したいステージに基板Sと同様にして円盤部51が載置される。そして、適宜、教示作業員が自動教示プログラムの実行を制御装置40に入力することで、自動教示が開始する。
【0039】
図5を参照して、自動教示の動作を説明する。まず、教示位置近傍の教示開始位置までハンド14を移動させる(S1,図6A参照)。この教示開始位置では、ハンド14は円盤部51の上方かつターゲット52の上端よりも下方に位置づけられる。次に、ターゲット52が第1先端部16aおよび第2先端部16bの間の空間内に入るようにハンド14を移動させ(S2,図6B参照)、第1および第2センサ20,30の検出光L1,L2でターゲットを走査し(S3,図6B参照)、ターゲット52が検出光L1,L2の平面視交点LCに位置したときに教示位置を取得する(S4,図6C参照)。
【0040】
走査の際のハンド14の動作方向は特に限定されない。一例として、まず、ハンド14を中心線Cの方向に移動させる。すると、第1検出光L1がターゲット52で遮られて第1受光素子22が受光できず、アンプ29から制御装置40にその旨示す電気信号(ON信号)が送られる。ターゲット52が中心線C上に位置していれば、そのままハンド14を進めることで、ターゲット52が平面視交点(ハンド14の中心)に達する。すると、第1検出光L1も第2検出光L2もターゲット52で遮られて第1受光素子22も第2受光素子32も受光できなくなる。ターゲット52が中心線Cから中心線Cと直交する方向にずれていると、第1検出光L1および第2検出光L2の1つが遮られる。ターゲット52が紙面上側にずれている場合は、第1検出光L1が遮られる。最初に遮られた位置から再び遮られた位置までの距離と、最初に遮られた位置からハンド14の中心までの距離との関係で、紙面上側にどれだけずれていたのかわかる。したがって、このずれ量に基づいて、ハンド14を紙面上側にも動かしつつ中心線C方向にも更に移動を進めることで、ターゲット52を平面視交点に位置づけることができる。逆に、ターゲット52が紙面下側にずれている場合は、第2検出光L2が遮られる。この場合、ハンド14を紙面下側に移動させることで、ターゲット52を平面視交点に位置づけることができる。
【0041】
図5に示すように、最後に、ハンド14を上方に移動させる(S5)。検出光L1,L2がターゲット52の上端を超えて上方に位置したところで、第1受光素子22も第2受光素子32も対応の検出光を受光でき、アンプ29から制御装置40にその旨示す電気信号(OFF信号)が出力される。このときのハンド14の上下位置に基づいて、上下方向に関する教示位置も取得される。
【0042】
このように本実施形態では、2本の検出光L1,L2が、ハンド14で基板Sを保持した場合における基板Sの所定位置を通過するように形成されており、当該検出光L1,L2の平面視交点が教示位置として取得される。基板の所定位置が直接的に教示位置として取得されるため、実際に基板Sを、教示位置とされたステージからハンド14に載置するとき、載置が確実に行われ得る。特に、本実施形態では、この所定位置が基板の中心位置とされている。また、ハンド14の中心が、基板保持時の基板の中心位置と一致する。このため、教示位置としてハンド14の中心あるいは基板中心が直接的に取得されるので、有益である。
【0043】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。素子21,22,31,32の平面視配置、それに伴う平面視での検出光L1,L2の光路は第1実施形態(図2参照)と同じである。しかし、図7に示すように、第2発光素子31は、鉛直上向き成分を有した斜め方向に第2検出光L2を射出する。基板Sがハンド14に載置されていなければ、第2検出光L2は第2先端部16bの上方を通過し、第2受光素子32は第2検出光L2を受光できない(点線矢印参照)。基板Sがハンド14に載置されている場合、第2検出光L2は基板Sの下面で反射する。それにより、第2受光素子32は第2検出光L2を受光する(二点鎖線矢印参照)。つまり、第2センサ30は、基板搬送作業中においてハンド14に基板Sがあるか否かを検出するセンサとしての役割を果たす。なお、基板Sがハンド14に載置された場合、第2発光素子31および第2受光素子32と基板Sの下面とのギャップGは、概ね一定値である。また、第2発光素子31と第2受光素子32とは中心線Cに関して対称に配置され、上下方向において同じ位置に配置されている。したがって、第2検出光L2は基板Sの下面の中心で反射して、第2受光素子32に入射する。
【0044】
図8Aおよび図8Bに示すように、このような第2センサ30を用いて上記同様にして自動教示を行えるようにするために、治具50のターゲット52の所定箇所(一例として、上端部)には、透光窓53と反射器54とが設けられている。
【0045】
本実施形態での自動教示に際しても、教示プログラムの実行に先立ち、教示位置を取得したいステージに治具50が設置される。その後は、ハンド14を治具50の近傍で動作させることになるが、この動作中のハンド14の中心線Cと直交する方向に透光窓53が開放されるようにして、治具50が予め設置される。
【0046】
図9を参照して、自動教示の動作を説明する。自動教示が開始すると、まず、教示位置近傍の教示開始位置までハンド14を移動させる(S21,図10A参照)。次に、ターゲット52が第1先端部16aおよび第2先端部16bの間の空間内に入るようにハンド14を移動させ、第1検出光L1がターゲット52で遮られた位置で移動を止める(S22,図10B参照)。第1検出光L1がターゲット52から上方へ脱するまでハンド14を上方に移動させる(S23,図10C参照)。これにより、ハンド14の治具50に対する上下方向の位置関係を特定できる。次に、ハンド14を下降させ、第2発光素子31を治具50の反射器54から所定距離だけ下に位置させる(S24,図10C参照)。この所定距離の値は、上記ギャップGに相当する値である。つまり、第2発光素子31から射出された第2検出光L2が、透光窓53を通って反射器54に達すると、第2受光素子32が第2検出光L2を受光可能である位置まで、ハンド14を下降させる。
【0047】
そして、第1および第2センサ20,30の検出光L1,L2でターゲットを走査し(S25)、ターゲット52が検出光L1,L2の平面視交点に位置したときに教示位置を取得する(S26,図10D参照)。ターゲット52が平面視交点に位置したとき、第1検出光L1はターゲット52で遮られるため、第1受光素子22は第1検出光L1を受光できず、アンプ29から制御装置40に第1センサ20に関してON信号が出力される。第2検出光L2は、反射器54で反射する(図8B参照)。そのため、第2受光素子32が第2検出光L2を受光し、アンプ29から制御装置40に第2センサ30に関してOFF信号が出力される。
【0048】
このように本実施形態では、第2発光素子31が鉛直上向きの成分を有する斜め方向に第2検出光L2を射出するので、第2センサ30はハンド14上の基板Sの有無を検出するセンサとしての役割を果たすことができる。基板Sの下面と同様にして、第2検出光L2を反射する反射器54がターゲット52に設けられているので、治具50に立設されたターゲット52を利用した自動教示も上記のとおり実行可能となる。そして、第1実施形態と同様、ハンド14の中心が直接的に教示位置として取得されるので、基板Sの載置が確実に行われ得る。
【0049】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は本開示の趣旨の範囲内で適宜追加、変更および/または削除可能である。
【0050】
上記実施形態では第1および第2センサ20,30を透過型の光学センサとしたが、反射型で構成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、平面視交点が、ハンド14の中心、あるいは、基板保持時の基板の中心位置に設定されたが、基板保持時の基板中心以外の基板の所定位置に設定されてもよい。
【0052】
また、本開示の技術は、上述したような基板搬送ロボットに教示位置を自動教示するための自動教示方法および制御方法であってもよい。このような自動教示方法および制御方法は、CPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)などの回路、ICカード又は単体のモジュール等によって、実現されてもよい。また、本開示の技術は、上記自動教示方法および制御方法を実行するためのプログラムであってもよく、上記プログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D