(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20220324BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
H05K7/20 H
H05K7/20 R
H05K7/20 B
(21)【出願番号】P 2021004220
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0334842(US,A1)
【文献】中国実用新案第203708744(CN,U)
【文献】特開2009-059801(JP,A)
【文献】特開2008-060385(JP,A)
【文献】特開2011-119757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する第1の冷却系及び第2の冷却系と、
を備え、
前記第1の冷却系は、
冷却フィンと、
前記冷却フィンに送風する送風ファンと、
密閉空間に作動流体が封入され、前記発熱体と前記冷却フィンとの間を熱伝達可能に接続する熱輸送装置と、
を有し、
前記第2の冷却系は、
前記発熱体の熱を吸熱することで液相の作動流体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で生成された気相の作動流体を凝縮させる凝縮器と、
前記蒸発器から前記凝縮器へと前記気相の作動流体を流通させる蒸気管と、
前記凝縮器から前記蒸発器へと前記液相の作動流体を流通させる液菅と、
を有するループヒートパイプで構成され、
前記筐体内では、前記発熱体と、前記第1の冷却系の前記熱輸送装置と、前記第2の冷却系の前記蒸発器とが、この順で該筐体の厚み方向にオーバーラップして
おり、
前記蒸発器は、
前記液菅から供給された前記液相の作動流体が貯留されるリザーバと、
前記リザーバから供給される前記液相の作動流体を前記発熱体の熱で蒸発させる蒸発部と、
を有し、
前記蒸発部は、前記厚み方向で前記発熱体とオーバーラップする位置に配置され、
前記リザーバは、前記厚み方向で前記発熱体とオーバーラップしない位置に配置されており、
さらに、前記筐体内に設けられた第2の発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する第3の冷却系と、
を備え、
前記第3の冷却系は、
第2の冷却フィンと、
前記第2の冷却フィンに送風する第2の送風ファンと、
密閉空間に作動流体が封入され、前記第2の発熱体と前記第2の冷却フィンとの間を熱伝達可能に接続する第2の熱輸送装置と、
を有し、
前記リザーバは、前記厚み方向で前記第2の発熱体とオーバーラップしない位置に配置されており、
さらに、前記筐体の後端部にヒンジを用いて相対的に回動可能に接続された第2の筐体と、
前記第2の筐体に設けられたディスプレイと、
前記筐体内でその前端部に沿って配置されたバッテリ装置と、
を備え、
前記送風ファンと前記第2の送風ファンとは、相互間に前記発熱体及び前記第2の発熱体を挟むように、左右に離間して配置され、
前記冷却フィンは、前記送風ファンの後方で前記後端部に面して配置され、
前記第2の冷却フィンは、前記第2の送風ファンの後方で前記後端部に面して配置され、
前前凝縮器は、前記筐体の前後方向で、前記送風ファン及び前記第2の送風ファンと、前記バッテリ装置との間に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子機器であって、
前記凝縮器は、
前記蒸気管と前記液菅との間を連通する配管と、
前記配管の外面に接続され、前記配管を通過する作動流体の熱を吸熱して拡散する熱拡散装置と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の電子機器であって、
前記筐体は、前記厚み方向で重ね合わされて互いに着脱可能に連結される第1のカバー部材及び第2のカバー部材を有し、
前記発熱体が実装された基板、前記第1の冷却系、及び前記第2の冷却系は、前記第1のカバー部材に対して支持され、
前記厚み方向にオーバーラップしている前記発熱体、前記熱輸送装置、及び前記蒸発器では、前記発熱体が前記第1のカバー部材側に配置され、前記蒸発器が前記第2のカバー部材側に配置され、前記熱輸送装置が前記発熱体と前記蒸発器との間に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器には、CPU等の発熱体を冷却するための冷却装置が搭載されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷却装置としては、例えばCPU等が発生する熱を吸熱するベーパーチャンバのような熱輸送装置と、熱輸送装置で輸送された熱を筐体外に排出する冷却フィン及び送風ファンと、を備えた構成がある。
【0005】
例えばワークステーションのような高い処理能力を有する電子機器では、上記した従来構成の冷却装置では冷却能力が不足する場合がある。特に、ノート型PCと同様の筐体構造を持つワークステーション(モバイルワークステーション)は、高い冷却能力を持つ冷却モジュールの設置スペースを限られた筐体内に確保しなければならない。また、この種の電子機器は、基本構造は共通化しつつ、CPUやGPUの能力が異なる複数仕様をラインナップすることが多い。従って、冷却手段は、各仕様に応じた必要十分な能力のものを柔軟に選択できることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、高い冷却能力と汎用性とを両立可能な冷却システムを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する第1の冷却系及び第2の冷却系と、を備え、前記第1の冷却系は、冷却フィンと、前記冷却フィンに送風する送風ファンと、密閉空間に作動流体が封入され、前記発熱体と前記冷却フィンとの間を熱伝達可能に接続する熱輸送装置と、を有し、前記第2の冷却系は、前記発熱体の熱を吸熱することで液相の作動流体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で生成された気相の作動流体を凝縮させる凝縮器と、前記蒸発器から前記凝縮器へと前記気相の作動流体を流通させる蒸気管と、前記凝縮器から前記蒸発器へと前記液相の作動流体を流通させる液菅と、を有するループヒートパイプで構成され、前記筐体内では、前記発熱体と、前記第1の冷却系の前記熱輸送装置と、前記第2の冷却系の前記蒸発器とが、この順で該筐体の厚み方向にオーバーラップしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、高い冷却能力と汎用性とを両立可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
【
図3】
図3は、冷却システムの模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCであり、いわゆるモバイルワークステーションとして使用される。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えば平板型のタブレット型PC、携帯電話、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体12,14間を
図1に示すように開き、キーボード20を操作しながらディスプレイ18を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0014】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14aと、下面を形成するカバー部材14bとで構成されている。上側のカバー部材14aは、下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側のカバー部材14bは、略平板形状を有し、カバー部材14aの下面開口を閉じる蓋体となる。カバー部材14a,14bは、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結され、内側に内部空間14eを形成する(
図2及び
図4参照)。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14は、後端部14cがヒンジ16を用いてディスプレイ筐体12と連結されている。
【0015】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す底面図である。
図2は、カバー部材14bを取り外してカバー部材14aの内面側から筐体14内を見た図である。
【0016】
図2に示すように、筐体14の内部空間14eには、冷却システム22と、マザーボード24と、バッテリ装置26とが設けられている。内部空間14eには、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に亘って延在している。マザーボード24は、GPU(Graphics Processing Unit)30、CPU(Central Processing Unit)31、メモリ32等が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され(
図4参照)、キーボード20の裏面やカバー部材14aの内面にねじ止めされている。マザーボード24は、上面がカバー部材14aに対する取付面となり、下面がGPU30やCPU31等の電子部品の実装面となる。
【0018】
GPU30は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う。CPU31は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。本実施形態の電子機器10の場合、GPU30は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。CPU31は、GPU30に次ぐ発熱量の発熱体である。
【0019】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部14dに沿って左右に延在している。バッテリ装置26は、平面視略矩形状に形成され、内部空間14eの前側部分で大きな領域を占めている。
【0020】
マザーボード24は、バッテリ装置26と後端部14cとの間に配置され、左右方向に延在している。GPU30及びCPU31は、マザーボード24の左右略中央で左右に並んでおり、後述する送風ファン35,45の間に挟まれるように設置されている。マザーボード24は、送風ファン35,45によって複数に分割された構成でもよい。
【0021】
次に、冷却システム22の構成を説明する。
【0022】
図3は、冷却システム22の模式的な平面図である。
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う模式的な側面断面図であり、一部要素は断面ではなく側面形状で図示している。なお、
図1では、冷却システム22を矩形の破線によって模式的に図示している。
【0023】
本実施形態の冷却システム22は、GPU30を冷却するための第1の冷却系22A及び第2の冷却系22Bと、CPU31を冷却するための第3の冷却系22Cとを備える複合的なシステムである。これら冷却系22A~22Cは、マザーボード24の下面(実装面)を覆うように配置され、マザーボード24やカバー部材14aに対して固定されている。
【0024】
先ず、第1の冷却系22Aは、GPU30が発生する熱を吸熱して輸送し、筐体14外へと排出する装置である。第1の冷却系22Aは、GPU30のメインの冷却系である。
図2~
図4に示すように、第1の冷却系22Aは、冷却フィン34と、送風ファン35と、ヒートパイプ36と、を有する。
【0025】
冷却フィン34は、筐体14の後端部14cに形成された排気口に面して配置される。冷却フィン34は、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属のブロックに筐体14の内外方向(前後方向)に貫通する複数のスリットを形成したものである。
【0026】
送風ファン35は、排気口が冷却フィン34に面して配置される。送風ファン35は、上下面の開口から吸い込んだ筐体14内の空気を冷却フィン34のスリットを通して筐体14外へと後方排気する。
【0027】
ヒートパイプ36は、パイプ型の熱輸送装置である。本実施形態のヒートパイプ36は2本1組で並列して用いているが、1本や3本以上で用いてもよい。ヒートパイプ36は、薄く扁平な金属パイプ内に形成された密閉空間36aに作動流体を封入したものである。金属パイプは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような高い熱伝導率の金属で形成されている。密閉空間36aは、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間36a内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ウイックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。
【0028】
ヒートパイプ36は、第1端部36bがGPU30の頂面に取り付けられた受熱板30aに接合され、第2端部36cが冷却フィン34に接合される。本実施形態のヒートパイプ36は、第2端部36cが冷却フィン34の上面に接合され、この第2端部36cの上面が送風ファン35のカバープレート35aによって閉じられている(
図4参照)。受熱板30aは、銅やアルミニウム等の高い熱伝導率の金属板である。受熱板30aは省略してもよい。これにより、ヒートパイプ36は、GPU30と冷却フィン34との間を高効率な熱輸送が可能な状態で熱的に接続する。ヒートパイプ36に代えてプレート型の熱輸送装置(ベーパーチャンバ)等を用いてもよく、後述するヒートパイプ46についても同様である。
【0029】
従って、第1の冷却系22Aは、GPU30の熱をヒートパイプ36で吸熱及び輸送し、冷却フィン34及び送風ファン35を介して筐体14外に排出できる。
図4中に1点鎖線で示す矢印は、熱の移動を模式的に示したものである。
【0030】
次に、第2の冷却系22Bは、GPU30が発生する熱を吸熱して輸送し、内部空間14eの比較的低温な領域に排出する装置である。第2の冷却系22Bは、GPU30のサブの冷却系である。
図2~
図4に示すように、第2の冷却系22Bは、蒸発器(Evaporator)38と、蒸気管39と、凝縮器(Condenser)40と、液菅41とを有する。
【0031】
第2の冷却系22Bは、蒸発器38と凝縮器40を蒸気管39及び液菅41で連通させることでループ状の密閉流路を形成し、作動流体が相変化しながら一方向に循環する、いわゆるループヒートパイプである。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。
【0032】
蒸発器38は、GPU30の熱を吸熱し、液菅41から流入する液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体を生成する。蒸発器38は、2枚の金属プレート間に流路を形成したプレート型の熱交換器である。金属プレートは、例えば銅やアルミニウム等の高い熱伝導率を有する金属で形成される。
【0033】
蒸発器38の内部空間には、リザーバ38aと、蒸発部38bとが設けられている。リザーバ38aは、一般にCC(Compensation Chamber)と呼ばれる部分である。リザーバ38aは、液菅41から供給された液相の作動流体(
図2~
図4中の矢印FL参照)を一時的に貯留する。蒸発部38bは、GPU30の熱を吸熱する部分である。蒸発部38bの外面は、GPU30(受熱板30a)に接合されたヒートパイプ36の第1端部36bの下面に接合されている。これにより蒸発部38bは、GPU30と熱的に接続されている。蒸発部38bは、リザーバ38aに貯留された液相の作動流体がバイオネット管38cを介して供給されると、これをGPU30からの熱で蒸発させる。蒸発部38b内には多孔質体のウィックが配設されている。
【0034】
ところで、このようなループヒートパイプでは、作動流体が円滑にループするためには、リザーバ38aと蒸発部38bとの間に十分な温度差が形成されている必要がある。つまりリザーバ38aは低温である必要があり、蒸発部38bは高温である必要がある。そこで、
図2~
図4に示すように、蒸発器38では、上下方向でリザーバ38aがGPU30とオーバーラップしない位置に配置され、蒸発部38bがGPU30とオーバーラップする位置に配置されている。具体的には、リザーバ38aは、GPU30とCPU31との谷間となる位置に配置している。
【0035】
蒸気管39は、蒸発器38で生成された気相の作動流体(
図2~
図4中の矢印FV参照)を凝縮器40に供給する配管である。
【0036】
凝縮器40は、蒸気管39から供給された気相の作動流体を冷却し、凝縮させて液相の作動流体を生成する。本実施形態の凝縮器40は、配管40aと、一対のベーパーチャンバ40b,40cとを有する。
【0037】
配管40aは、蒸気管39及び液菅41と一体に形成されており、例えば銅菅である。すなわち第2の冷却系22Bは、1本の銅管のうち、蒸発器38と凝縮器40との間で気相の作動流体が流通する部分を蒸気管39と呼び、気相の作動流体が放熱して凝縮する部分を配管40aと呼び、凝縮器40と蒸発器38との間で液相の作動流体が流通する部分を液菅41と呼んで区別している。
【0038】
ベーパーチャンバ40b,40cは、ヒートパイプの一種類であるプレート型の熱輸送装置であり、その表面に配管40aが接合されている。ベーパーチャンバ40b,40cは、銅やアルミニウム等で形成された2枚の薄い金属プレート間に密閉空間を形成し、この密閉空間に水等の作動流体を封入したものである。密閉空間内では、多孔質体のウィックが形成され、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する。本実施形態では、マザーボード24の固定用のねじ24aを避ける都合上、左右のベーパーチャンバ40b,40cに分割した構成としているが、ベーパーチャンバ40b,40cは一体に構成されてもよい。ベーパーチャンバ40b,40cに代えて、銅やアルミニウム等の金属プレート等を用いてもよい。
【0039】
凝縮器40は、配管40aを流れる作動流体を冷却する必要がある。このため、凝縮器40は、筐体14の内部空間14eで可能な限り温度の低い領域に設置されることが望ましい。そこで、本実施形態では、筐体14の前後方向で、送風ファン35,45と、バッテリ装置26との間に形成される比較的低温の領域に凝縮器40を配置している。
【0040】
従って、第2の冷却系22Bは、作動流体が蒸発器38でGPU30の熱を吸熱して蒸発し、凝縮器40で冷却されて凝縮して蒸発器38に戻る閉ループを繰り返すことでGPU30の熱を筐体14内の低温領域に排出できる。
【0041】
次に、第3の冷却系22Cは、CPU31が発生する熱を吸熱して輸送し、筐体14外へと排出する装置である。
図2~
図4に示すように、第3の冷却系22Cは、冷却フィン44と、送風ファン45と、ヒートパイプ46と、を有する。
【0042】
冷却フィン44、送風ファン45、及びヒートパイプ46は、それぞれ第1の冷却系22Aの冷却フィン34、送風ファン35、及びヒートパイプ36と同一又は同様な構成でよいため、詳細な説明は省略する。
【0043】
すなわち、ヒートパイプ46についても、密閉空間46aに作動流体を封入したものである。なお、ヒートパイプ46は、第1端部46bがCPU31の頂面に取り付けられた受熱板31aに接合され、第2端部46cが冷却フィン44に接合される。ヒートパイプ46は、第2端部46cが冷却フィン44の上面に接合され、この第2端部46cの上面が送風ファン45のカバープレート45aによって閉じられている(
図4参照)。受熱板31aは、銅やアルミニウム等の高い熱伝導率の金属板である。受熱板31aは省略してもよい。これにより、ヒートパイプ46は、CPU31と冷却フィン44との間を高効率な熱輸送が可能な状態で熱的に接続する。
【0044】
従って、第3の冷却系22Cは、CPU31の熱をヒートパイプ46で吸熱及び輸送し、冷却フィン44及び送風ファン45を介して筐体14外に排出できる。
図4中に1点鎖線で示す矢印は、熱の移動を模式的に示したものである。
【0045】
次に、冷却システム22における各冷却系22A~22Cの位置関係及び作用効果を説明する。
【0046】
上記した通り、第1及び第2の冷却系22A,22Bは、いずれもGPU30の冷却に用いられる。ところが、GPU30は、マザーボード24の下面に実装されており、ヒートパイプ36と蒸発器38とでサンドイッチ状に挟み込むことはできない。このため、GPU30(本実施形態では受熱板30a)に対するヒートパイプ36及び蒸発器38の積層順が問題となる。
【0047】
この点、本実施形態に係る電子機器10は、GPU30と、第1の冷却系22Aのヒートパイプ36と、第2の冷却系22Bの蒸発器38とを、この順で上下方向にオーバーラップさせている(
図4参照)。すなわち、冷却システム22は、GPU30(受熱板30a)の下面にヒートパイプ36の第1端部36bが接続され、この第1端部36bの下面に蒸発器38の蒸発部38bが接続されている。これらの接続は、例えばはんだ付け等による溶接や、熱伝導率が高い接着剤や両面テープ等による接着でよい。
【0048】
その結果、冷却システム22は、先ず、冷却フィン34及び送風ファン35による高い冷却能力を有する第1の冷却系22Aで直接的にGPU30の吸熱を行うことができ、高い冷却効率が得られる。他方、小型薄型化が要求される筐体14の内部空間12eのスペースの制約上、冷却フィン34及び送風ファン35も小型薄型化を達成したデバイスを使用する必要がある。このため、第1の冷却系22AだけではGPU30の発熱量に対して十分な冷却能力が得られない懸念もある。
【0049】
そこで、冷却システム22は、次に、第1の冷却系22Aで吸熱できなかったGPU30からの余剰の熱を第2の冷却系22Bで吸熱することができる。すなわち、第2の冷却系22Bは、蒸発器38でGPU30の余剰の熱を吸熱し、凝縮器40で放熱する。その結果、冷却システム22は、GPU30の発熱に対して十分な高い冷却能力を発揮することができる。
【0050】
ところで、当該電子機器10は、その要求仕様やコスト等との関係で、低能力で低発熱量のGPU30を搭載する構成も想定される。この点、当該電子機器10は、上記した冷却系22A,22Bの位置関係により、先ずGPU30を実装したマザーボード24を筐体14に取り付けた後、次にこれを覆うように第1の冷却系22A(及び第3の冷却系22C)を取り付ける。そして、最後に第2の冷却系22Bを筐体14に取り付ける構成となる。このため、第2の冷却系22Bは、例えば蒸発器38や凝縮器40(ベーパーチャンバ40b,40c)の大きさを変更した仕様を柔軟に且つ容易に適用することができ、場合によっては容易に省略することもできる。その結果、電子機器10及び冷却システム22は、高い汎用性が得られる。
【0051】
しかも当該電子機器10では、GPU30を実装したマザーボード24や冷却システム22が上側のカバー部材14aに支持され、下側のカバー部材14bはカバー部材14aに対する蓋体として着脱される。この際、GPU30が上側のカバー部材14a側に配置され、蒸発器38が下側のカバー部材14b側に配置され、ヒートパイプ36がGPU30と蒸発器38との間に配置されている。その結果、当該電子機器10は、製造時やメンテナンス時に蓋体であるカバー部材14bを取り外しておくだけで、容易に第2の冷却系22Bにアクセスすることができ、一層高い汎用性が得られる。
【0052】
上記した通り、第2の冷却系22Bの蒸発器38は、上下方向でリザーバ38aがGPU30とオーバーラップしない位置に配置され、蒸発部38bがGPU30とオーバーラップする位置に配置されている。このため、リザーバ38aがGPU30の熱で加熱されることを回避し、リザーバ38aと蒸発部38bとの間に必要な温度差を形成できる。このため、第2の冷却系22Bは、作動流体を円滑にループさせることができる。しかもリザーバ38aは、第3の冷却系22Cの冷却対象であるCPU31とも上下方向でオーバーラップしない位置にある(
図2~
図4参照)。このため、第2の冷却系22Bが一層安定して動作する。
【0053】
なお、
図2及び
図3では、リザーバ38aは、GPU30の受熱板30aとオーバーラップしているが、実際には上下方向に隙間があり、両者は接触していない(
図4参照)。同様に、リザーバ38aは、CPU31の受熱板31aともオーバーラップしているが、こちらとも接触していない(
図4参照)。
【0054】
第3の冷却系22Cは必須ではない。すなわち例えば電子機器10がGPU30を搭載せず、CPU31のみを搭載した構成等の場合、第1及び第2の冷却系22A,22BをCPU31の冷却に用い、第3の冷却系22Cを省略してもよい。
【0055】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0056】
上記では、上側のカバー部材14aでマザーボード24や冷却システム22を支持した構成を例示した。しかしながら、マザーボード24や冷却システム22は下側のカバー部材14bで支持した構成としてもよく、この場合、上側のカバー部材14b(及びキーボード20等)が蓋体として機能する。
【符号の説明】
【0057】
10 電子機器
12 ディスプレイ筐体
14 筐体
18 ディスプレイ
22 冷却システム
22A 第1の冷却系
22B 第2の冷却系
22C 第3の冷却系
24 マザーボード
26 バッテリ装置
30 GPU
31 CPU
34,44 冷却フィン
35,45 送風ファン
36,46 ヒートパイプ
38 蒸発器
39 蒸気管
40 凝縮器
41 液菅
【要約】
【課題】高い冷却能力と汎用性とを両立可能な冷却システムを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、筐体内に設けられた発熱体と、筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する第1の冷却系及び第2の冷却系と、を備える。第1の冷却系は、冷却フィンと、送風ファンと、発熱体と冷却フィンとの間を熱伝達可能に接続する熱輸送装置とを有する。第2の冷却系は、蒸発器と、凝縮器と、蒸気管と、液菅とを有するループヒートパイプで構成される。筐体内では、発熱体と、第1の冷却系の熱輸送装置と、第2の冷却系の蒸発器とが、この順で筐体の厚み方向にオーバーラップしている。
【選択図】
図2