IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図1
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図2
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図3
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図4
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図5
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図6
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図7
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図8
  • 特許-積層体の製造方法及び積層体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/15 20060101AFI20220324BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220324BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220324BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20220324BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220324BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220324BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B32B37/15
B05D1/36 B
B32B27/00 C
B32B27/08
C09J7/30
C09J11/06
C09J201/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021109050
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020194926
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岡部 将和
(72)【発明者】
【氏名】熊野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
(72)【発明者】
【氏名】道平 創
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-170690(JP,A)
【文献】特開2017-177703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 37/00 - 37/30
B32B 27/00 - 27/42
B05D 1/36
C09J 7/30
C09J 11/00 - 11/08
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリマー層と該第1ポリマー層に積層された第2ポリマー層とを備える積層体の製造方法であって、
前記第1ポリマー層を形成する第1塗工液と、前記第2ポリマー層を形成する第2塗工液とを用い、前記第2塗工液が直接的に前記第1塗工液上に塗工された塗工液層を基材上に形成する塗工工程を備え、
前記第1塗工液は、架橋可能な第1ポリマーを含み、
前記第2塗工液は、架橋可能な第2ポリマーを含み、
前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なり、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比が1.5以上であり、
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーのそれぞれを架橋させて前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層を形成する、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記積層体は、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間に、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーを含む中間層を有し、
前記中間層の厚みが、0.5~4.2μmである、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記積層体が、粘着シートである、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーは、アクリル系ポリマー又はウレタン系ポリマーである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1塗工液及び前記第2塗工液の少なくとも一方が、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの両方を架橋可能な架橋剤を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの分子量が、30,000以上である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記塗工液層は、前記第1塗工液によって形成された第1液層と、前記第2塗工液によって形成された第2液層とを有し、
前記第1液層及び前記第2液層それぞれの乾燥前の厚みが、0.1~1,000μmである、請求項1乃至のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
互いに硬度の異なる前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層を形成する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機能の異なる複数のポリマー層を備える積層体が知られている。例えば、各種の画像表示装置の画像表示部には偏光フィルムが適用されるが、通常、偏光フィルムは、粘着シートを介して前記画像表示部に適用される。この種の粘着シートは、偏光フィルムに対する投錨力の他、画像表示部に対する密着力や、画像表示部に適用されるための適度な屈折率や色相等、複数の機能を備えている必要がある。このため、該粘着シートは、機能の異なる複数のポリマー層を備えた積層体であることが好ましい。
【0003】
このような積層体の製造方法として、ウェットオンドライ法が知られている。ウェットオンドライ法では、第1塗工液を基材上に塗工した後これを乾燥固化させて第1ポリマー層を形成する。続いて、前記第1ポリマー層上に第2塗工液を塗工した後これを乾燥固化させて第2ポリマー層を形成する。ウェットオンドライ法によれば、各ポリマー層を逐次に形成するため、各ポリマー層に意図した機能を付与し易い。一方、ウェットオンドライ法で製造された積層体は、各ポリマー層がこれらの境界面において剥離し易いという問題点がある。また、設備が大型化するという問題点もある。
【0004】
また、ドライラミネート法も知られている。ドライラミネート法では、基材上に形成した第1ポリマー層上に第2ポリマー層を形成すべく、第1ポリマー層と第2ポリマー層とを別々に作製して貼り合わせることによって積層体を製造する。しかし、このドライラミネート法で製造された積層体も、ウェットオンドライ法と同様に、各ポリマー層がこれらの境界面において剥離し易いという問題点がある。
【0005】
そこで、別の方法として、ウェットオンウェット法と呼ばれる方法によって積層体を製造することが試みられている。例えば、特許文献1では、重合可能なモノマーと光重合開始剤とを含む第1塗工液及び第2塗工液を用い、該第1塗工液上に該第2塗工液を直接的に塗工する塗工工程と、塗工された各塗工液に活性エネルギー線を照射する工程とを備える積層体の製造方法が提案されている。かかる製造方法によれば、第1塗工液上に第2塗工液を直接的に塗工することによって、各ポリマー層の間にはっきりとした境界面が形成されないため、上記のような剥離が抑制される。また、塗工された各塗工液に活性エネルギー線を照射することによって、モノマーの一部を重合させ、各塗工液をゲル化させる。これによって、各塗工液間の成分の移行が抑制され、各ポリマー層が意図した機能を発揮し易いとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-185482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の製造方法では、上記のように、比較的分子量の小さいモノマーを用いて各ポリマー層を形成するべく、各塗工液間における成分移行が生じないように活性エネルギー線を照射させてモノマーの一部を重合させる。このため、塗工後から活性エネルギー線照射までの間に各塗工液間においてモノマーの移行が生じる。よって、各ポリマー層に意図した機能を十分に発揮させることが困難となる。
【0008】
一方で、積層体の各ポリマー層の機能を異ならせようとすると、上記のように、一方のポリマー層からの他方のポリマー層の剥離が生じ易くなる。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、複数のポリマー層を備え且つ各ポリマー層で異なる機能を発揮し易い積層体の製造方法、及び、各ポリマー層が異なる機能を発揮し且つ剥離が抑制された積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る積層体の製造方法は、
第1ポリマー層と該第1ポリマー層に積層された第2ポリマー層とを備える積層体の製造方法であって、
前記第1ポリマー層を形成する第1塗工液と、前記第2ポリマー層を形成する第2塗工液とを用い、前記第2塗工液が直接的に前記第1塗工液上に塗工された塗工液層を基材上に形成する塗工工程を備え、
前記第1塗工液は、架橋可能な第1ポリマーを含み、
前記第2塗工液は、架橋可能な第2ポリマーを含み、
前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なり、
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーのそれぞれを架橋させて前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層を形成する。
【0011】
斯かる構成によれば、第1ポリマーと第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なるため、塗工液層を形成する各層において架橋剤の移行が生じたとしても、これらが架橋されて形成される第1ポリマー層及び第2ポリマー層は異なる機能を有するものとなる。
【0012】
また、本発明に係る積層体の製造方法は、好ましくは、
前記第1塗工液及び前記第2塗工液の少なくとも一方が、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの両方を架橋可能な架橋剤を含む。
【0013】
斯かる構成によれば、各塗工液の少なくとも一方が第1ポリマー及び第2ポリマーの両方を架橋可能な架橋剤を含むことによって、第1ポリマー及び第2ポリマーのそれぞれを架橋させて第1ポリマー層及び第2ポリマー層を形成することができる。
【0014】
また、本発明に係る積層体の製造方法は、好ましくは、
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの分子量が、30,000以上である。
【0015】
斯かる構成によれば、各ポリマー層を構成するポリマーの分子量が30,000以上に設定されることで、塗工液層を形成する各層の分離状態が維持され易くなり、第1ポリマー層及び第2ポリマー層に異なる機能を発揮させ易くなる。
【0016】
また、本発明に係る積層体の製造方法は、好ましくは、
前記塗工液層は、前記第1塗工液によって形成された第1液層と、前記第2塗工液によって形成された第2液層とを有し、
前記第1液層及び前記第2液層それぞれの乾燥前の厚みが、0.1~1,000μmである。
【0017】
斯かる構成によれば、第1液層及び第2液層それぞれの乾燥前の厚みが、0.1~1,000μmであることによって、各ポリマー層が異なる機能をさらに発揮し易くなる。
【0018】
また、本発明に係る積層体の製造方法は、好ましくは、
互いに硬度の異なる前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層を形成する。
【0019】
斯かる構成によれば、各ポリマー層の硬度が異なることによって、光学フィルム、特に偏光フィルムに好適な粘着シートを製造することができる。
【0020】
本発明に係る積層体は、
第1ポリマー層と、該第1ポリマー層に積層された第2ポリマー層とを備え、
前記第1ポリマー層は、架橋点を有する第1ポリマーを含み、
前記第2ポリマー層は、架橋点を有する第2ポリマーを含み、
前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なり、
前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間には、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーを含む中間層が形成されており、
前記中間層の厚みが、0.5μm以上である。
【0021】
斯かる構成によれば、第1ポリマーと第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なるため、各ポリマー層が異なる機能を発揮し易くなる。また、第1ポリマー層と第2ポリマー層との間の中間層の厚みが0.5μm以上であることによって、第2ポリマー層からの第1ポリマー層の剥離(言い換えれば、第1ポリマー層からの第2ポリマー層の剥離)が抑制されたものとなる。
【0022】
また、本発明に係る積層体は、好ましくは、
前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比が、1.5以上である。
【0023】
斯かる構成によれば、第2ポリマーの架橋点の数に対する第1ポリマーの架橋点の数の比が1.5以上であることによって、各ポリマー層が異なる機能をより発揮し易くなる。
【0024】
また、本発明に係る積層体は、好ましくは、
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーは、極性基含有モノマーを含み、
前記第1ポリマーの方が前記第2ポリマーよりも前記極性基含有モノマーの含有量が多く、
前記第1ポリマーの総質量に対する前記極性基含有モノマーの質量割合が、0.05~30%であり、
前記第2ポリマーの総質量に対する前記極性基含有モノマーの質量割合が、0.01~10%である。
【0025】
斯かる構成によれば、第1ポリマーの方が第2ポリマーよりも極性基含有モノマーの含有量が多く、さらに、第1ポリマーに含まれる極性基含有モノマーの質量割合が0.05~30%であり、且つ、第2ポリマーに含まれる極性基含有モノマーの質量割合が0.01~10%であることによって、各ポリマー層が異なる機能をさらに発揮し易くなる。
【0026】
また、本発明に係る積層体は、好ましくは、
前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層が過酸化物系架橋剤により形成された架橋構造を有する。
【0027】
斯かる構成によれば、第1ポリマー層及び第2ポリマー層のそれぞれが過酸化物系架橋剤により形成された架橋構造を有することによって、各ポリマー層が異なる機能をより一層発揮し易くなる。
【0028】
また、本発明に係る積層体は、好ましくは、
前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層が前記過酸化物系架橋剤及びイソシアネート系架橋剤により形成された架橋構造を有する。
【0029】
斯かる構成によれば、第1ポリマー層及び第2ポリマー層のそれぞれが過酸化物系架橋剤及びイソシアネート系架橋剤により形成された架橋構造を有することによって、各ポリマー層が異なる機能をとりわけ発揮し易くなる。
【発明の効果】
【0030】
以上の通り、本発明によれば、複数のポリマー層を備え且つ各ポリマー層で異なる機能を発揮し易い積層体の製造方法、及び、各ポリマー層が異なる機能を発揮し且つ剥離が抑制された積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、一実施形態に係る積層体の適用例を示す概略側面図である。
図2図2は、一実施形態に係る積層体の製造方法に用いられる塗工装置における塗工部の概略図である。
図3図3は、図2の塗工部の変更例を示す図である。
図4図4は、別の実施形態に係る積層体の製造方法に用いられる塗工装置における塗工部の概略図である。
図5図5は、図4の塗工部の変更例を示す図である。
図6図6は、原子間力顕微鏡による分析で得られた積層体断面の周波数分布図を示す。
図7図7は、積層体の中間層の厚みを求める方法を説明するための図であり、図6の周波数分布図の数値に基づいてプロファイルを作成し、該プロファイルにおいて近似式を求めるための範囲を指定する方法を説明する図である。
図8図8は、図7のプロファイルの指定範囲から近似式を求め、さらに、該近似式に基づいて中間層の厚みを求める方法を説明するための図である。
図9図9は、実施例で作製した各粘着シートの剥離抑制を評価するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1~3を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、図1に示されるように、積層体10として、液晶画面等の表示画面に用いられるガラス部材Gに光学フィルムとしての偏光フィルムFを適用するための粘着シートを例示するが、積層体10はこの用途に限定されるものではない。
【0033】
前記粘着シートを介してガラス部材Gに偏光フィルムFを適用する際には、通常、それぞれを貼り合わせて加熱処理したときに、前記粘着シートの品質を維持することが求められる。具体的には、前記粘着シートが、硬度が低く変形し易いものであると、前記加熱処理において、該粘着シートとガラス部材Gとの間に発泡が生じ易くなり、視認性(外観)が悪くなる。また、前記加熱処理においては偏光フィルムFに収縮が生じ得るため、前記粘着フィルムが、硬度が高く変形しにくいものであると、偏光フィルムFの前記収縮に応じた変形ができず、ガラス部材Gから剥離し易くなる。
【0034】
上記のように、加熱処理の際に粘着シートに生じる発泡の抑制と、ガラス部材Gからの粘着シートの剥離の抑制とは背反する(トレードオフの)課題である。粘着シートを設計では、発泡の抑制と剥離の抑制とが両立するように粘着シートの硬度が調整されるが、加熱処理の温度が高い場合や、偏光フィルムFの収縮応力が大きい場合には、これらの両立が困難になる場合がある。
【0035】
そこで、本実施形態の積層体では、第1ポリマー層とこれに積層された第2ポリマー層とが備えられており、該第1ポリマー層及び該第2ポリマー層の架橋点の数を異ならせることで、第1ポリマー層よりも第2ポリマー層が高硬度に調節されている。これによって、高硬度の第2ポリマー層とガラス部材Gとの間に生じ得る発泡が抑制されることに加えて、低硬度の第1ポリマー層の変形により偏光フィルムFの収縮応力が緩和されることによって、第2ポリマー層とガラス部材Gとの間に生じ得る剥離が抑制される。よって、本実施形態の積層体は、互いに異なる硬度を有する少なくとも2層を備える粘着シートであることが好ましい。
【0036】
より具体的には、前記粘着シートは、所定の硬度を有する第1ポリマー層11と、第1ポリマー層11に積層され且つ第1ポリマー層11よりも硬度の高い第2ポリマー層12とを備えている。前記粘着シートがガラス部材Gと偏光フィルムFとを接着する際には、低硬度の第1ポリマー層11は偏光フィルムFの表面に接する層となり、高硬度の第2ポリマー層12はガラス部材Gの表面に接する層となる。すなわち、接着時には、第1ポリマー層11は、光学フィルムFの表面に接する第1接着面111を有するものとなる。また、第2ポリマー層12は、ガラス部材Gの表面に接する第2接着面121を有するものとなる。さらに、前記粘着シートは、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12との間に、これらの層のポリマーが相溶することによって形成された中間層13を有する。そして、前記粘着シートは、第1ポリマー層11の方が第2ポリマー層12よりも硬度が低いことによって、上記加熱処理において、第1ポリマー層11が第2ポリマー層12又は中間層13に対して収縮するため、第1接着面111の端縁が第2ポリマー層12又は中間層13の端縁に対して内側に位置ずれするようになっている。この位置ずれは、糊ずれとも呼ばれ、糊ずれ量dとして評価される。前記粘着シートは、所定量の糊ずれを形成するように構成されることが好ましい。これによって、上記加熱処理における偏光フィルムFの収縮応力を前記粘着シートが緩和することで、前記粘着シートの偏光フィルムFからの剥離が抑制される。
【0037】
また、中間層13は、所定値以上の厚みを有するように形成されている。これによって、前記加熱処理において、第1ポリマー層11の収縮により中間層13やその周辺の部分に応力が加わった場合に、第2ポリマー層12からの第1ポリマー層11の剥離(言い換えれば、第1ポリマー層11からの第2ポリマー層12の剥離)が抑制される。
【0038】
本実施形態に係る積層体10の製造方法は、第1ポリマー層11を形成する第1塗工液21及び第2ポリマー層12を形成する第2塗工液22を準備する準備工程と、第1ポリマー層11を形成する第1塗工液21を基材上(例えば、セパレータと呼ばれるPETフィルムなどの剥離シート上)に塗工し且つ第2ポリマー層12を形成する第2塗工液22を直接的に第1塗工液21上に塗工し(すなわちウェットオンウェット法を採用)、これによって、第1塗工液21と第2塗工液22とが塗り重ねられた塗工液層20を形成する塗工工程と、塗工液層20を形成している各塗工液を乾燥固化させる乾燥工程と、を備える。
【0039】
前記準備工程では、架橋されることによって第1ポリマー層11を形成する第1ポリマーを含む第1塗工液21と、架橋されることによって第2ポリマー層12を形成する第2ポリマーを含む第2塗工液22とを調製する。また、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なるように、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーを選択することが重要である。これによって、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12とで機能(具体的には硬度)の異なる積層体10を製造することができる。
【0040】
第1塗工液21及び第2塗工液22の粘度は、0.0005~1,000Pa・sであることが好ましい。これによって、前記塗工工程にて形成される塗工液層20の分離状態が維持され易くなる。前記粘度の調節には、各塗工液と混合し得る溶媒を用いることができる。前記溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、これらの混合溶媒が好ましい。なお、前記粘度は、レオメータ(HAAKE社製)により測定されるものとする。また、測定条件は、せん断速度1[1/s]、温度20℃とする。
【0041】
前記架橋点とは、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーのそれぞれが有する架橋反応に寄与する官能基を意味する。また、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なるとは、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの官能基のモル数(mol/g)が異なることを意味する。言い換えれば、前記官能基が1molとなる質量(g/mol)が、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで異なることを意味する。なお、前記官能基のモル数は、NMR装置を用いて測定することができる。
【0042】
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーは、架橋されることによって、それぞれが第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12を形成するポリマーであればよい。このようなポリマーとしては、例えば、架橋剤とともに100℃以上に加熱されることによって架橋される熱硬化性ポリマーであってもよく、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって架橋される光硬化性ポリマーであってもよい。前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーは、一方が前記熱硬化性ポリマーであり且つ他方が前記光硬化性ポリマーであってもよく、両方が前記熱硬化性ポリマーであるか又は前記光硬化性ポリマーであってもよい。
【0043】
第1塗工液21及び第2塗工液22は、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの分子量が30,000以上となるように調製されることが好ましい。各ポリマーの分子量の下限値は、50万以上がより好ましく、100万以上がさらに好ましく、150万以上が特に好ましい。各ポリマーの分子量の上限値は、300万以下が好ましく、250万以下がさらに好ましい。分子量の下限値が上記のような値であることによって、粘着シートの凝集力が十分なものとなり、粘着シートをガラス部材Gのような被着体から引き剥がす際に、被着体に粘着物質が残ることによる被着体の汚染が抑制される。一方で、分子量の上限値が上記のような値であることによって、第1塗工液21又は第2塗工液22が高粘度となることによる塗工性の悪化が抑制される。なお、前記分子量は、重量平均分子量を意味する。また、該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。より具体的には、前記重量平均分子量は、GPC装置として、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を用い、標準ポリスチレンの測定値から換算することにより測定することができる。
【0044】
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーは、(メタ)アクリル系ポリマー又はウレタン系ポリマーであることが好ましい。前記粘着シートを構成する上では、より透明性に優れるポリマー層を形成可能な前記(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。また、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーは、シリコーン系ポリマーやゴム系ポリマーであってもよい。
【0045】
第1塗工液21又は第2塗工液22の総質量に対する前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーの質量割合は、0.1%以上であることが好ましい。
【0046】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0047】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数1~18のものが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。前記アルキル(メタ)アクリレートは単独で又は複数種を組み合わせて使用することができる。前記アルキル基の平均炭素数は、3~9であることが好ましい。
【0048】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーとしては、前記アルキル(メタ)アクリレート以外にも、芳香環含有(メタ)アクリレート、アミド基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーからなる群より選ばれる1つ以上の共重合モノマーが挙げられる。前記共重合モノマーは単独で又は複数種を組み合わせて使用できる。
【0049】
前記芳香環含有(メタ)アクリレートは、その構造中に芳香環構造を含み、且つ、(メタ)アクリロイル基を含む化合物である。前記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等が挙げられる。前記芳香環含有(メタ)アクリレートは、光学フィルムFの収縮により、前記粘着シートに応力が掛かった際に発生する位相差を調整する効果があり、光学フィルムFの収縮により発生する光漏れを抑制することができる。
【0050】
前記芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、前記粘着シートの粘着特性や耐久性を向上させる観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0051】
前記アミド基含有モノマーは、その構造中にアミド基を含み、且つ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。前記アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系モノマー等が挙げられる。
【0052】
前記カルボキシル基含有モノマーは、その構造中にカルボキシル基を含み、且つ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。前記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中でも、前記粘着シートの粘着特性を向上させる観点から、アクリル酸が好ましい。
【0053】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、且つ、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。前記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、前記粘着シートの耐久性を向上させる観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0054】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを用いる場合、これを構成するモノマーのうちヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基等の架橋反応の活性化基を有するモノマー(極性基含有モノマー)の質量割合を適宜調節することによって、前記架橋点の数を変更することができる。また、前記架橋点の数が前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで異なるように、前記モノマーの質量割合を適宜変更することが好ましい。より具体的には、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比が、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、4.0以上であることがより一層好ましい。また、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、6.0以下であることがさらに好ましい。これによって、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12が互いに異なる機能を発揮し易くなる。より具体的には、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比が上記の値以上であることによって、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12との硬度の差が十分なものとなり、第2ポリマー層12とガラス部材Gとの間に生じ得る発泡が抑制され、延いては、第2ポリマー層12とガラス部材Gとの間での剥離が抑制される。また、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比が上記の値以下であることによって、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12との硬度の差が大きくなりすぎず、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12との層間に生じ得る発泡が抑制され、また、第2ポリマー層12とガラス部材Gとの間での剥離が抑制される。
【0055】
また、上記のような比に設定するとともに、前記第1ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.05~30%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.01~10%とすることが好ましい。また、前記粘着シートを製造する際には、前記第1ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.2~20%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.05~5%とすることが好ましく、前記第1ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.3~10%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.1~2%とすることがより好ましい。
【0056】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、30,000以上であることが好ましい。これによって、塗工液層20の塗工液どうしの分離状態を維持し易くなる。
【0057】
前記ウレタン系ポリマーとしては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物であるウレタンプレポリマーを用いることが好ましい。
【0058】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。
【0059】
前記ポリエステルポリオールは、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
【0060】
前記ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0061】
前記酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物等が挙げられる。
【0062】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0063】
前記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレーロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオール等が挙げられる。
【0064】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;前記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;前記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;前記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;前記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;前記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;前記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;前記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;前記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
【0065】
前記ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と前記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0066】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0067】
前記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0068】
前記脂環族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0069】
前記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソソアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
前記ウレタンプレポリマーを用いる場合、これを構成するモノマーのうちイソシアネート基(架橋反応の活性化基)を有するモノマー(極性基含有モノマー)の質量割合を適宜調節することによって、前記架橋点の数を変更することができる。また、前記架橋点の数が前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで異なるように、前記モノマーの質量割合を適宜変更することが好ましい。より具体的には、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比が、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、4.0以上であることがより一層好ましい。また、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、6.0以下であることがさらに好ましい。これによって、前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層が互いに異なる機能を発揮し易くなる。
【0071】
また、上記のような比に設定するとともに、前記第1ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.05~30%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.01~10%とすることが好ましい。また、前記粘着シートを製造する際には、前記第1ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.2~20%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.05~5%とすることが好ましく、前記第1ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.3~10%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.1~2%とすることがより好ましい。
【0072】
前記ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、30,000以上であることが好ましい。これによって、塗工液層20の塗工液どうしの分離状態を維持し易くなる。
【0073】
前記架橋剤としては、有機系架橋剤、多官能性金属キレート等を用いることができる。前記有機系架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。前記多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものである。前記多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。前記架橋剤は単独で又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0074】
前記架橋剤としては、前記イソシアネート系架橋剤及び前記過酸化物系架橋剤の少なくとも一方を使用することが好ましく、前記イソシアネート系架橋剤及び前記過酸化物系架橋剤を併用することがより好ましい。
【0075】
前記イソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤又は数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を少なくとも2つ有する化合物を用いることができる。例えば、一般にウレタン化反応に用いられる公知の前記脂肪族系ポリイソシアネート、前記脂環族系ポリイソシアネート、前記芳香族系ポリイソシアネート等が用いられる。
【0076】
前記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0077】
前記脂環族系ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0078】
前記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソソアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0079】
また、前記イソシアネート系架橋剤としては、上記ジイソシアネートの多量体(2量体、3量体、5量体等)、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させたウレタン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、アルファネート変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等も使用することができる。
【0080】
前記イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、東ソー(株)製の、商品名「ミリオネートMT」、「ミリオネートMTL」、「ミリオネートMR-200」、「ミリオネートMR-400」、「コロネートL」、「コロネートHL」、「コロネートHX」、三井化学(株)製の、商品名「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートD-140N」、「タケネートD-160N」、「タケネートD-165N」、「タケネートD-170HN」、「タケネートD-178N」、「タケネート500」、「タケネート600」等が挙げられる。
【0081】
前記イソシアネート系架橋剤としては、芳香族系ポリイソシアネート及びその変性体である芳香族系ポリイソシアネート系化合物、脂肪族系ポリイソシアネート及びその変性体である脂肪族系ポリイソシアネート系化合物が好ましい。前記芳香族系ポリイソシアネート系化合物は、架橋速度とポットライフのバランスがよく好適に用いられる。前記芳香族系ポリイソシアネート系化合物としては、特に、トリレンジイソソアネート及びその変性体が好ましい。
【0082】
前記過酸化物としては、加熱又は光照射によりラジカル活性種を発生して前記(メタ)アクリル系ポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃~160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃~140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0083】
前記過酸化物系架橋剤としては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)等が挙げられる。なかでも、架橋反応効率が優れることから、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)等が好ましい。
【0084】
前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーは、前記架橋剤とともに加熱されることによって架橋される前記熱硬化性ポリマーであることが好ましい。この場合、前記第1塗工液及び前記第2塗工液のいずれか一方のみに、前記架橋剤を含ませてもよい。本実施形態では、上記のように、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの前記架橋点の数が異なるが、前記塗工工程では前記ウェットオンウェット法を採用して各塗工液を塗工するため、前記塗工工程から前記乾燥工程では、塗工液層20の各層において前記架橋剤の移行が生じ得る。よって、第1塗工液21及び第2塗工液22のいずれか一方のみに前記架橋剤を含ませれば、各ポリマーの架橋反応が十分に進行し得る。また、第1塗工液21及び第2塗工液22のいずれか一方のみに前記架橋剤を含ませることによって、前記架橋剤の濃度勾配が大きくなり、その移行量も多くなる。さらに前記架橋点の数の差も含めて調整することによって、各ポリマー層の特性をより一層制御することができる。
【0085】
また、第1塗工液21及び第2塗工液22の両方に前記架橋剤を含ませてもよい。この場合、前記架橋点のより少ない方の塗工液により多くの前記架橋剤を含ませ、前記架橋点のより多い方の塗工液により少なく前記架橋剤を含ませてもよく、又は、前記架橋点のより少ない方の塗工液により少なく前記架橋剤を含ませ、前記架橋剤のより多い方の塗工液により多くの前記架橋剤を含ませてもよい。
【0086】
前記架橋剤の含有量は、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとでモノマーの成分が同じ場合には、各ポリマーの合計質量100質量部に対して0.01~30質量部であることが好ましい。また、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとでモノマーの成分が異なることによって異なる種の前記架橋剤が必要な場合には、各架橋剤の含有量は、これらと反応し得るポリマーの質量100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることがさらに好ましい。
【0087】
また、第1塗工液21及び第2塗工液22の少なくとも一方に、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーと前記架橋剤との反応を促進する触媒を含ませてもよい。前記触媒としては、例えば、有機金属触媒が挙げられる。
【0088】
前記塗工工程では、図2~3に示されるようなダイコータと呼ばれる塗工部を備える塗工装置を用いることが好ましい。本実施形態のダイコータAは、塗工液を吐出するためのスロットが形成された複数のダイaを備えている。ダイaは、ローラ部材bに支持されたPETフィルムPであって前記スロットの開口に近接するように走行するPETフィルムPに、前記スロットから吐出させた塗工液を塗工して、PETフィルムPの表面に塗工膜を形成するように構成されている。ダイコータAは、PETフィルムPに第1塗工液21を塗工する第1のダイa1と、第1塗工液21上に直接的に第2塗工液22を塗工する第2のダイa2とを備えている。第1のダイa1及び第2のダイa2は、ローラ部材bの周方向に沿って互いに間隔を空けて配されることで、第1塗工液21が塗工された後、一定時間経過後に第2塗工液22が塗工されるように構成されていてもよい(図2)。また、第1のダイa1及び第2のダイa2は、それぞれが塗工する塗工液を同時にPETフィルムPに塗工するように構成されていてもよい(図3)。なお、ダイaの向きは、図2~3に記載の態様に限定されず、例えば、水平方向に対して傾斜するように配置してもよい。また、ダイコータ以外に、バーコータやグラビアコータ、テンションウェブコータ等を組み合わせてもよい。
【0089】
前記塗工工程では、第1塗工液21と第2塗工液22とが互いに分離した塗工液層20を形成するように各塗工液を塗工する。
【0090】
各ポリマー層に異なる機能を付与する上では、塗工液層20において前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーが互いに分離した状態であればよく、はっきりとした境界面が形成されなくてもよい。各塗工液に含まれ得る前記架橋剤や前記溶媒等の分子量の比較的低い成分は各層に相互に拡散させてもよい。
【0091】
ダイaから吐出される塗工液の流量は、塗工液層20が維持され易くなるように設定されることが好ましい。例えば、塗工液層20を構成する、第1塗工液21によって形成された第1液層、及び、第2塗工液22によって形成された第2液層の、各層の乾燥前の厚みが0.1~1,000μmとなるように、前記流量を調節することが好ましい。また、各ポリマー層の厚みが均一になるように、前記流量は一定であることが好ましい。なお、塗工液の流量が一定とは、定常運転時において、[最大流量-最小流量]/平均流量で算出される値が、0.2以下、好ましくは0.1以下であることを意味する。また、前記流量は、質量流量を意味するものとする。
【0092】
なお、前記第1液層及び前記第2液層の厚みは、平均厚みを意味するものとする。該平均厚みは、塗工液層20の側端面における任意50箇所の各液層の厚みを測定し、それらを算術平均することにより求めることができる。
【0093】
前記乾燥工程では、前記塗工部の下流側に設置された乾燥部によって、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーを架橋させる。前記乾燥工程では、各塗工液に含まれるポリマーの種類に応じて、前記架橋剤によって各ポリマーを架橋させてもよく、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって各ポリマーを架橋させてもよい。言い換えれば、前記乾燥部は、前記熱硬化性ポリマーを架橋させる加熱部を有していてもよく、前記光硬化性ポリマーを架橋させる光照射部を有していてもよい。前記加熱部の温度は、通常、50~160℃に設定される。
【0094】
前記架橋剤を用いる場合、前記ウェットオンウェット法を採用することによる塗工液層20における各層への相互の成分移行を積極的に利用してもよい。例えば、第1塗工液21及び第2塗工液22のいずれか一方の塗工液に前記架橋剤を過剰に含ませ、架橋反応中に、他方の塗工液に該架橋剤を移行させてもよい。これについて、前記粘着シートの製造を例示して説明する。この場合、第1塗工液21の方が第2塗工液22よりも単位質量あたりの前記架橋点の数が大きくなるように設定されるが、これに加えて、第1塗工液21のみに前記架橋剤を含ませると(又は、前記架橋剤の含有量が、第1塗工液21の方が第2塗工液22よりも大きくなるようにすると)、塗工液層20の層間において前記架橋剤の濃度勾配が生じる。すなわち、架橋剤濃度の相対的に高い高濃度層(第1塗工液21により形成された前記第1液層)と、架橋剤濃度の相対的に低い低濃度層(第2塗工液22により形成された前記第2液層)とが形成される。これによって、前記高濃度層、すなわち架橋点数が多い層(言い換えれば第1ポリマー層11となる層)の架橋が早く進むとともに、前記架橋剤が前記高濃度層から前記低濃度層へ移行した後、前記低濃度層(言い換えれば第2ポリマー層12となる層)の架橋が完了して第2ポリマー層12が形成されることとなる。このように、より架橋点の多い第1ポリマー層11の形成後に、より架橋点の少ない第2ポリマー層12が形成されるため、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12との硬度により一層差を持たせることが出来るという利点がある。すなわち、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12それぞれの機能を大きく異ならせることが可能となる。
【0095】
前記乾燥工程では、各ポリマーの架橋と同時に、又は、各ポリマーを架橋した後に、前記溶媒を除去するための乾燥を行ってもよい。
【0096】
次に、上記の製造方法によって製造された一実施形態に係る積層体10について、より詳しく説明する。
【0097】
図1に示されるように、本実施形態に係る積層体10は、前記第1ポリマー含む第1ポリマー層11と、第1ポリマー層11に積層され前記第2ポリマーを含む第2ポリマー層12とを備えている。言い換えれば、第1ポリマー層11は、前記架橋剤で架橋された前記第1ポリマーによって形成されている。また、第2ポリマー層12は、前記架橋剤で架橋された前記第2ポリマーによって形成されている。
【0098】
積層体10の厚みは、通常、3~1000μmである。なお、積層体10の厚みは、平均厚みを意味するものとする。該平均厚みは、積層体10の長さ方向(MD)における任意50箇所の厚みを測定し、それらを算術平均することにより求めることができる。
【0099】
積層体10は、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12との間に形成された中間層13を有する。中間層13は、前記第1ポリマーと、前記第2ポリマーとを含む。中間層13は、前記架橋剤で架橋された前記第1ポリマーと、前記架橋剤で架橋された前記第2ポリマーによって形成されている。なお、中間層13は、前記第1ポリマーどうしが架橋されたポリマー、前記第2ポリマーどうしが架橋されたポリマー、及び、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとが架橋されたポリマーを含んでいてもよい。
【0100】
中間層13の厚みは、0.5μm以上であることが重要である。これによって、中間層13では、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとが相互に絡み合い、及び/又は、相互に架橋されることにより、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との層間密着性を向上させると考えられる。これによって、第2ポリマー層12からの第1ポリマー層11の剥離(言い換えれば、第1ポリマー層11からの第2ポリマー層12の剥離)が抑制される。これに対して、中間層の厚みが0.5μm未満であると、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間で剥離が生じ易くなったり、前記第1ポリマー層と前記第2ポリマー層との間に発泡が生じ易くなったりする。なお、中間層13の厚みは、実施例に記載のように、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。
【0101】
中間層13の厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。これによって、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12のそれぞれが、異なる機能を発揮し易くなる。より具体的には、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12との硬度の差が顕著になる。この観点から、中間層13の厚みは、積層体10の厚みに対して、50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることがより一層好ましい。
【0102】
本実施形態の積層体10は、第2ポリマー層12の方が第1ポリマー層11よりも硬度が高くなっており、それによって、光学フィルムFとガラス部材Gとの接着に用いられた際に前記糊ずれを形成するように構成されている。また、比較的硬度の高い第2ポリマー層12がガラス部材Gの表面に接着されることによって、積層体10とガラス部材Gとの間に生じ得る発泡が抑制され、延いては外観の悪化が抑制される。
【0103】
積層体10は、第1ポリマー層11と第2ポリマー層12とで単位質量あたりの架橋点の数が異なっている。なお、第1ポリマー層11における架橋点は、前記第1ポリマーが有する架橋点を意味する。すなわち、第1ポリマー層11における架橋点は、前記架橋剤で架橋された前記第1ポリマーの架橋点と、架橋反応に寄与せずに残存した前記第1ポリマーの架橋点とを含む。同様に、第2ポリマー層12における架橋点は、前記第2ポリマーが有する架橋点を意味する。すなわち、第2ポリマー層12における架橋点は、架橋反応に寄与し架橋構造を形成した前記第2ポリマーの架橋点と、架橋反応に寄与せずに残存した前記第2ポリマーの架橋点とを含む。
【0104】
上記のように、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比は、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、4.0以上であることがより一層好ましい。また、前記第2ポリマーの架橋点の数に対する前記第1ポリマーの架橋点の数の比は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、6.0以下であることがさらに好ましい。これによって、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12が互いに異なる機能をさらに発揮し易くなる。
【0105】
また、前記第1ポリマーの前記極性基含有モノマーの含有量を前記第2ポリマーの前記極性基含有モノマーの含有量よりも多くすることが好ましい。その上で、前記第1ポリマーの総質量に対する前記極性基含有モノマーの質量割合を0.05~30%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記極性基含有モノマーの質量割合を0.01~10%とすることがより好ましく、前記第1ポリマーの総質量に対する前記極性基含有モノマーの質量割合を0.2~20%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記極性基含有モノマーの質量割合を0.05~5%とすることがさらに好ましく、前記第1ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.3~10%とし、前記第2ポリマーの総質量に対する前記モノマーの質量割合を0.1~2%とすることがより好ましい。これによって、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12が、上記のような互いに異なる機能をより発揮し易くなる。
【0106】
さらに、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12のそれぞれが、前記イソシアネート系架橋剤又は前記過酸化物系架橋剤のいずれか一方により形成された架橋構造を有することが好ましく、前記イソシアネート系架橋剤により形成された架橋構造及び前記過酸化物系架橋剤により形成された架橋構造の両方を含むことがより好ましい。これによって、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12が互いに異なる機能をより一層発揮し易くなる。
【0107】
前記イソシアネート系架橋剤により形成された架橋構造は、前記イソシアネート系架橋剤由来のイソシアネート基と、前記極性基含有モノマーの水酸基とが反応することによって形成されたウレタン結合を有する。また、前記過酸化物系架橋剤により形成された架橋構造は、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマーどうしが前記過酸化物系架橋剤によって架橋された炭素-炭素共有結合を有する。
【0108】
上記構成の積層体10によれば、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12のそれぞれの硬度(機能)がはっきりと異なったものとなるため、ガラス部材G及び偏光フィルムFからの剥離が抑制される。より具体的には、第1ポリマー層11が第2ポリマー層12よりも硬度が低いことによって、偏光フィルムFに接着後、前記加熱処理がなされる際に、第1ポリマー層11が偏光フィルムFとともに収縮可能であるため、積層体10の偏光フィルムFからの剥離が抑制される。また、第2ポリマー層12が第1ポリマー層11よりも硬度が高いことによって、ガラス部材Gに接着後、前記加熱処理がなされる際に、第2ポリマー層12とガラス部材Gの表面との間に発泡が生じにくくなり、それによって、積層体10のガラス部材Gからの剥離が抑制される。このように、上記構成の積層体10は、第1ポリマー層11及び第2ポリマー層12の層間剥離、及び、ガラス部材Gや偏光フィルムFといった他の部材からの剥離の両方が抑制されたものとなる。
【0109】
なお、本発明に係る積層体の製造方法及び積層体は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る積層体の製造方法及び積層体は、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る積層体の製造方法及び積層体は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0110】
例えば、上記実施形態では、2層のポリマー層を備える積層体10について例示したが、これに限定されず、本発明の積層体は、3層以上のポリマー層21、22、23を備えていてもよい。この場合、ポリマー層21からポリマー層23にかけて段階的に硬度が高くなるように(又は低くなるように)構成されることが好ましい。また、これに伴って、ダイコータAは、3つ以上のダイa1、a2、a3を有するものであってもよい(図4及び図5)。
【0111】
また、本発明の積層体は、偏光フィルムFとこれを保護する偏光子保護フィルム、又は、偏光フィルムF、位相差フィルム、表面処理フィルム、輝度向上フィルム等の他の光学フィルムどうしの接着に用いられてもよい。
【実施例
【0112】
以下、実施例を示すことにより、本発明をさらに説明する。
【0113】
本実施例では、各ポリマー層の硬度を種々変更した粘着シートを製造し、各粘着シートについて評価した。
【0114】
[実施例1]
第1ポリマーとしてブチルアクリレート(BA)とヒドロキシブチルアクリレート(HBA)との共重合体(重量平均分子量700,000、HBAの質量割合5%)、第2ポリマーとしてブチルアクリレート(BA)とヒドロキシブチルアクリレート(HBA)との共重合体(重量平均分子量700,000、HBAの質量割合1%)、及び、イソシアネート系架橋剤(三井化学株式会社製タケネートD110N)を準備した。次に、第1ポリマー100質量部に対して架橋剤0.35質量部を混合することによって、第1塗工液を調製した(粘度6.3Pa・s)。また、第2ポリマー100質量部に対して架橋剤0.35質量部を混合することによって、第2塗工液を調製した(粘度6.3Pa・s)。調製した各塗工液と塗工部としてバーコータとを用い、ウェットオンウェット法(WoW)を採用して基材としてのセパレータ(PETフィルム)上に塗工液層を形成した。加熱装置を用いて、155℃の温度で3分間、塗工液層を乾燥・硬化させることによって第1ポリマー層及び第2ポリマー層を形成し、実施例1の粘着シートとした(表1に製造条件の詳細を示した)。
【0115】
【表1】
【0116】
[実施例2~6]
表2に示したように、第1ポリマー、第2ポリマー、及び架橋剤について種々変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~6の粘着シートを作製した。なお、表2において、実施例4~実施例6の作製に用いたACMOはN-アクリロイルモルホリン、AAはアクリル酸、PEAはフェノキシエチルアクリレート、NVPはN-ビニルピロリドンをそれぞれ意味する。
【0117】
[比較例1、2]
表2に示したように、実施例1における第2ポリマーのみを用いて単層の粘着シートを作製した。なお、その他の製造条件は実施例1と同様にした。
【0118】
[比較例3]
表2に示したように、製造方法にドライオンドライ法(DoD)を採用したこと以外は、実施例4と同様にして粘着シートを作製した。
【0119】
[比較例4]
表2に示したように、製造方法にウェットオンドライ法(WoD)を採用したこと以外は、実施例4と同様にして粘着シートを作製した。
【0120】
[中間層の厚みの測定]
実施例および比較例の粘着シートを、凍結ウルトラミクロトームにて厚み方向に切削し、粘着シートの超薄切片を作成した。該超薄切片をシリコンウェハ上に載せ、下記測定条件の原子間力顕微鏡(AFM)を用い、AM-FM粘弾性マッピング測定を行った。粘着シートの断面に探針を走査し、第1ポリマー層と第2ポリマー層との界面近傍における周波数の変化を測定した。一例として、図6に実施例2の周波数分布図を示した。周波数分布図において、横軸は粘着シートの厚み方向の位置を示し、縦軸は粘着シートの長さ方向(MD)の位置を示す。周波数分布図から、硬度の高い第2ポリマー層の断面では比較的小さい周波数シフトが観測され、硬度の低い第1ポリマー層の断面では比較的大きい周波数シフトが観測され、中間層の断面ではこれらの間の周波数シフトが観測されたことがわかる。
次に、周波数分布図から長さ方向(MD)の任意の位置のデータを抽出し、抽出したデータを、厚みを示す縦軸と周波数を示す横軸とを有するグラフにプロットすることによりプロファイルを得た。一例として、図7に実施例2のプロファイルを示した。
次に、図7に示すように、各グラフにおいて、横軸に平行で且つ最小周波数を通る第1直線と、横軸に平行で且つ最大周波数を通る第2直線とを描いた。また、最小周波数(第1直線の周波数)及び最大周波数(第2直線の周波数)の中央値を求めた。また、最大周波数と最小周波数との周波数差を求めた。続いて、プロファイルにおいて近似式を求める範囲を指定するために、中央値を基準として周波数差の-25%の位置において横軸に平行な第1指定直線を描き、且つ、中央値を基準として周波数差の+25%の位置において横軸に平行な第2指定直線を描いた。そして、第1指定直線及びプロファイルの交点のうち最も第1ポリマー層側に位置する交点と、第2指定直線及びプロファイルの交点のうち最も第2ポリマー層側に位置する交点との間のプロファイルを抽出し、抽出したプロファイルから最小二乗法により近似式を求めた。
次に、図8に示すように、近似式を示す直線をグラフに描いた。そして、近似式を示す直線と第1直線及び第2直線それぞれとの交点における厚みの値の差から、中間層の厚みを算出した。
なお、周波数分布図から長さ方向(MD)0.7μm間隔で10本のプロファイルを作成し、それぞれのプロファイルから中間層の厚みを求め、計10個の中間層の厚みデータの中央値を当該粘着シートの中間層の厚みとした。結果は、表2に示したとおりである。
(AFMの測定条件)
装置 :オックスフォード・インストゥルメンツ MFP-3D-SA
測定モード :AM-FM粘弾性マッピングモード
探針 :Si製(バネ定数3N/m相当品)
測定雰囲気 :大気下
測定温度 :25℃
測定範囲 :8μm四方スキャン
【0121】
【表2】
【0122】
[偏光フィルムの作製]
厚さ45μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ18μmの偏光子を得た。当該偏光子の片面に、けん化処理したHC付40μmTACフィルムを、もう片面に17μmシクロオレフィン系フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルムを作製した。
【0123】
[評価方法1:応力緩和性及び加熱耐久性に基づく剥離抑制]
上記で得られた粘着シートの両面に、上記で作成した偏光フィルムのシクロオレフィン系フィルムの面を貼合し、粘着層付き偏光フィルムを作成した。該粘着層付き偏光フィルムから試験片(大きさ100mm×100mm)を切り出し、セパレータを剥離した後、粘着層を無アルカリガラス(コーニング社製、イーグルXG)に貼合した。50℃5気圧の条件で15分間オートクレーブ処理を施した後、105℃×24時間の加熱処理に投入し、ガラス部材と粘着シートとの間の発泡の大きさを測定した。発泡サイズが100μm以下となった粘着シートを外観について良好と評価した。また、粘着シートのガラス部材又は偏光フィルムからの剥離の有無、及び、第1ポリマー層と第2ポリマー層との層間剥離の有無を観察した。さらに、第1ポリマー層の糊ずれ量を測定した。250μm以上の糊ずれ量を形成した粘着シートを良好なものと評価した。結果は、表2及び図9に示したとおりである。
【0124】
表2及び図9に示したように、実施例1~6の粘着シートは、比較的発泡が抑制され、且つ、十分な糊ずれを形成するものであった。また、実施例1~6の粘着シートを用いた場合、ガラス部材及び偏光フィルムの剥離が認められなかった。さらに、実施例1~6の粘着シートを用いた場合、第1ポリマー層及び第2ポリマー層の層間剥離も認められなかった。
【0125】
[評価方法2:架橋剤の移行]
実施例1の粘着シートについて、三菱精工アナリテック社製TN2100を用いた全窒素分析によって、第1ポリマー層及び第2ポリマー層のそれぞれに含まれる架橋剤の含有量を測定した。その結果、粘着シートを構成する全てのポリマー100質量部に対する架橋剤の含有量は、第1ポリマー層では0.74質量部、第2ポリマー層では0.15質量部であった。よって、塗工後~乾燥時に架橋剤の移行が生じていることが認められた。また、このような架橋剤の含有量であることから、第1ポリマー層の方が第2ポリマー層よりも硬度が高いことがわかる。
なお、比較例1及び2における架橋剤の含有量は、ともに0.3質量部であった。
【符号の説明】
【0126】
10:積層体、11:第1ポリマー層、111:第1接着面、12:第2ポリマー層、121:第2接着面、20:塗工液層、21:第1塗工液、22:第2塗工液、F:偏光フィルム、G:ガラス部材、d:糊ずれ量、a1:第1のダイ、a11:スロット、a2:第2のダイ、a21:スロット、a3:第3のダイ、b:ローラ部材、P:PETフィルム
【要約】
【課題】複数のポリマー層を備え且つ各ポリマー層で異なる機能を発揮し易い積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】第1ポリマー層と該第1ポリマー層に積層された第2ポリマー層とを備える積層体の製造方法であって、前記第1ポリマー層を形成する第1塗工液と、前記第2ポリマー層を形成する第2塗工液とを用い、前記第2塗工液が直接的に前記第1塗工液上に塗工された塗工液層を基材上に形成する塗工工程を備え、前記第1塗工液は架橋可能な第1ポリマーを含み、前記第2塗工液は架橋可能な第2ポリマーを含み、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとで単位質量あたりの架橋点の数が異なり、前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーのそれぞれを架橋させて前記第1ポリマー層及び前記第2ポリマー層を形成する、積層体の製造方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9