(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】型枠固定具
(51)【国際特許分類】
E04G 17/14 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
E04G17/14 Z
(21)【出願番号】P 2019116438
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】509199007
【氏名又は名称】株式会社川金コアテック
(73)【特許権者】
【識別番号】519229079
【氏名又は名称】有限会社牧山組
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】柳田 正洋
(72)【発明者】
【氏名】川井 一敏
(72)【発明者】
【氏名】牧山 守
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246883(JP,A)
【文献】実開昭63-023338(JP,U)
【文献】特開2007-002635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の開口部にフランジが前記開口部内周面と平行となるように設置されるH形鋼からなる補強フレームと前記開口部内周面との間の空隙に、硬化材を充填するために両者間に配置され、端部が前記補強フレームの外側フランジの幅方向端面上に載るように配置される1対の型枠の固定具であって、
後端部に前記補強フレームの内側フランジが係合する係合溝が設けられ、前端部が前記型枠の前記端部に当接する押圧部を形成する本体と、
この本体の前記係合溝よりも後方部分に、軸線が該本体の前後方向を向くように設けられた雌ねじ部材と、
前記雌ねじ部材に装着され、前記補強フレームの内側フランジを押圧する押圧ボルトとを備えてなることを特徴とする型枠固定具。
【請求項2】
前記本体の前記押圧部には、前記外側フランジの前記幅方向端面に沿って延びる棒部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の型枠固定具。
【請求項3】
前記雌ねじ部材は前記内側フランジの幅方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の型枠固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、型枠固定具に関し、より詳細には既設構造物を耐震補強する際に、開口部に設置される補強フレームと開口部内周面との間に硬化材を充填するために、両者間に配置される型枠を固定するための固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
既設構造物の耐震補強工法として、構造物の開口部に筋交いやオイルダンパーなどの制振部材を設置する工法が知られている。これら制振部材は方形枠状の補強フレームの内方に取り付けられ、この補強フレームを介して開口部に設置される。
【0003】
補強フレームは一般にH形鋼を方形枠状に加工して製作され、補強フレームと開口部内周面との間に型枠を配置し、空隙にモルタル等の硬化材を充填して固定される。従来、補強フレームは、H形鋼のウェブが開口部内周面と平行となるように製作されて開口部に配置される。すなわち、従来の補強フレームは弱軸方向配置のフレームであり、硬化材を充填するために配置される型枠の固定具も、そのフレーム配置形状に応じたものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
H形鋼のフランジが開口部内周面と平行となるように補強フレームを製作して開口部に配置すれば、すなわちH形鋼のウェブが開口部内周面と直角をなす強軸方向配置のフレームとすれば、補強フレームの耐震強度を高めることができる。しかしながら、このような強軸方向配置のフレームとした場合の型枠の固定具は、提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-257781号公報
【文献】特開2011-21394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、既設構造物の開口部に設置されるH形鋼からなる補強フレームを、フランジが開口部内周面と平行となるように製作して設置する場合に好適で、かつ確実に固定することができる型枠の固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、既設構造物の開口部にフランジが前記開口部内周面と平行となるように設置されるH形鋼からなる補強フレームと前記開口部内周面との間の空隙に、硬化材を充填するために両者間に配置され、端部が前記補強フレームの外側フランジの幅方向端面上に載るように配置される1対の型枠の固定具であって、
後端部に前記補強フレームの内側フランジが係合する係合溝が設けられ、前端部が前記型枠の前記端部に当接する押圧部を形成する本体と、
この本体の前記係合溝よりも後方部分に、軸線が該本体の前後方向を向くように設けられた雌ねじ部材と、
前記雌ねじ部材に装着され、前記補強フレームの内側フランジを押圧する押圧ボルトとを備えてなることを特徴とする型枠固定具にある。
【0008】
上記型枠固定具において、前記本体の前記押圧部には、前記外側フランジの前記幅方向端面に沿って延びる棒部材が設けられている構成を採用することができる。
【0009】
また、前記雌ねじ部材は前記内側フランジの幅方向に沿って複数設けられている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、既設構造物の開口部に設置されるH形鋼からなる補強フレームを、フランジが開口部内周面と平行となるように製作して設置する場合に、型枠を確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明による型枠固定具の実施形態を示す平面図である。
【
図3】型枠固定具による型枠の固定状態を示し、
図4のA-A線矢視断面図である。
【
図4】補強フレームの設置態様を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。まず、
図4を参照して、この発明の型枠固定具が対象としている型枠及び補強フレームの設置態様について説明する。
図4は補強フレームの設置態様を示す正面図である。
【0013】
既設構造物の開口部10には耐震補強のために、いずれも図示は省略するが、筋交いやオイルダンパーなどの制振部材が設置される。これら制振部材は矩形枠状の補強フレーム12の内方に取り付けられ、すなわち補強フレーム12を介して開口部10に設置される。
【0014】
補強フレーム12は外側フランジ12a、内側フランジ12b及びウェブ12cを有するH形鋼からなり、フランジ12a,12bが開口部内周面11と平行になるように矩形枠状に製作されて開口部10に設置される。
【0015】
補強フレーム12を開口部10に固定するために、補強フレーム12と開口部内周面11との間の空隙13にモルタル等の硬化材が充填され、この硬化材の充填のために、補強フレーム12と開口部内周面11との間に1対の型枠14(
図4には正面側の型枠のみを部分的に示す)が配置される。型枠14は端部が補強フレーム12の外側フランジ12aの幅方向端面に載るように配置され、複数配置されたこの発明による型枠固定具15によって固定される。
【0016】
図1~
図3は、この発明による型枠固定具15の実施形態を示し、
図1は平面図、
図2は立面図、
図3は固定具15による型枠の固定状態を示し、
図4のA-A線矢視断面図である。固定具15の本体16は、この実施形態では板状のものであり、鋼板で作られている。本体16は補強フレーム12の外側フランジ12a及び内側フランジ12b間の寸法よりも幾分か大きい長さ寸法を有している。
【0017】
本体16の後端部には下端側が開放する係合溝17が形成され、この係合溝17には補強フレーム12の内側フランジ12bが係合可能となっている。係合溝17の溝壁には内側フランジ12bのフランジ面に当接可能なパッド19が設けられている。
【0018】
本体16の前端部は型枠14の端部、すなわち前記したように外側フランジ12aの幅方向端面に載せられた型枠14の端部に当接してこれを押圧する押圧部18を形成している。この押圧部18の下端には外側フランジ12aの幅方向端面に沿って延びる棒部材20が、その中央部で固定されている。
【0019】
本体16の係合溝17よりも後方部分には雌ねじ部材である高ナット21が設けられている。高ナット21は本体16の下端に、軸線が本体16の前後方向を向くようにして溶接等により固定されている。高ナット21に延伸部22を溶接等により固定して、この延伸部22にさらに高ナット23が溶接等により固定されている。このように、この実施形態では、本体16に複数(2つ)の高ナット21、23が設けられている。これらの高ナット21、23には押圧ボルト24がそれぞれ装着される。
【0020】
次に
図3、
図4を参照して上記型枠固定具15による型枠14の固定方法について説明する。開口部10に配置された補強フレーム12は図示しない手段により仮固定される。なお、補強フレーム12を構成するH形鋼の外側フランジ12aのフランジ面には多数のスタッドボルト30が設けられ、また開口部10を形成している既設構造物の躯体には多数のアンカーボルト31が設けられている。これらのスタッドボルト30及びアンカーボルト31は開口部内周面11と補強フレーム12との間の空隙13に突出配置されることとなる。空隙13にはさらにスパイラル筋32が配置される。
【0021】
開口部10に補強フレーム12を配置した後、補強フレーム12と開口部内周面11との間に1対の型枠14を配置する。型枠14は前記したように、その端部が補強フレーム12の外側フランジ12aの幅方向端面に載るように配置される。そして、この型枠14を固定するために各型枠14ごとに複数の固定具15が適宜間隔を置いて補強フレーム12に取り付けられる。
【0022】
固定具15は、
図3に示すように、本体16の係合溝17に補強フレーム12の内側フランジ12bを係合させるとともに、前端部の押圧部18に設けた棒部材20が型枠14の端部に当接するようにして、補強フレーム12に取り付けられる。
【0023】
そして、高ナット21、23に装着された押圧ボルト24を締め込んで内側フランジ12bを押圧すると、高ナット21、23は補強フレーム12の内側フランジ12bのフランジ面から離間し、パッド19が内側フランジ12bに圧接する。このように押圧ボルト24の締め込みにより高ナット21、23には内側フランジ12bから離間する力が作用することから、本体16には
図3に矢印で示す方向のモーメントMが作用する。すなわち、本体16には高ナット21、23を力点、パッド19が内側フランジ12bに当接する部位を支点、棒部材20が型枠14に当接する部位を作用点とするモーメントMが作用する。これにより、棒部材20が型枠14の端部に圧接して、型枠14の端部は棒部材20と外側フランジ12aの端面との間に挟み込まれ、補強フレーム12に強固に固定されることとなる。
【0024】
型枠14の設置後、空隙13にモルタル等の硬化材が充填され、その硬化後に固定具15が取り外されて型枠14が脱型される。以上のように、この発明によれば、既設構造物の開口部10に設置されるH形鋼からなる補強フレーム12を、フランジ12a、12bが開口部内周面11と平行となるように製作して設置する場合に、型枠14を確実に固定することができる。
【0025】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施形態では雌ねじ部材を複数設けたが、単数であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10:開口部
11:開口部内周面
12:補強フレーム
12a:外側フランジ
12b:内側フランジ
12c:ウェブ
13:空隙
14:型枠
15:型枠固定具
16:本体
17:係合溝
18:押圧部
19:パッド
20:棒部材
21、23:雌ねじ部材(高ナット)
22:延伸部
24:押圧ボルト