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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】電気負荷システムの電源線異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220325BHJP
【FI】
H02M7/48 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019027231
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020137241
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】396001201
【氏名又は名称】ダイマック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081466
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 研一
(72)【発明者】
【氏名】小川 欣一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-087881(JP,U)
【文献】米国特許第05235488(US,A)
【文献】特開平11-225429(JP,A)
【文献】特開2007-317409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各位相が120度ずれた三相交流電源からの三相交流電力により駆動される複数台の三相交流電気負荷機器を並列接続し、各三相交流電気負荷機器に対して三相交流電力を同期給電して並列運転させる三相交流電気負荷システムにおいて、
三相交流電気負荷機器に並列接続される電源線の電流による磁界に基づいて電源線全体の電流を検知する電源線異常検出手段は、中空部を有したコアに電流検出手段が設けられ、該コアの中空部内に対し、各三相交流電気負荷機器の電源線を互い違いの電流方向で、かつ各三相交流電気負荷機器における1相の電源線が他の2相の電源線と電流方向が反対方向になるように挿通し、
電源線異常検出手段により検知される検知電流値が、基準電流値以下の場合には各電源線が正常導通と判断して各三相交流電気負荷機器に対する三相交流電力の同期給電を継続して並列運転させる一方、上記検知電流値が基準電流値以上の場合には、各電源線のいずれかが導通異常と判断して各三相交流電気負荷機器に対する三相交流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させる三相交流電気負荷システムの電源線異常検出方法。
【請求項2】
各位相が180度ずれた単相交流電源に、単相交流電力により駆動される複数台の単相交流電気負荷機器を並列接続し、各単相交流電気負荷機器に対して単相交流電力を同期給電して並列運転させる単相交流電気負荷システムにおいて、
各単相交流電気負荷機器に並列接続される電源線の電流による磁界に基づいて電源線全体の電流を検知する電源線異常検出手段は、中空部を有したコアに電流検出手段が設けられ、該コアの中空部内に対し、各単相交流電気負荷機器の電源線を互い違いの電流方向で、かつ各単相交流電気負荷機器における一方の電源線が他方の電源線と電流方向が反対方向になるように挿通し、
電源線異常検出手段により検知される検知電流値が、基準電流値以下の場合には各電源線が正常導通と判断して各単相交流電気負荷機器に対する単相交流電力の同期給電を継続して並列運転させる一方、上記検知電流値が基準電流値以上の場合には、各電源線のいずれかが導通異常と判断して各単相交流電気負荷機器に対する単相交流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させる単相交流電気負荷システムの電源線異常検出方法。
【請求項3】
直流電源に、直流電力により駆動される複数台の直流電気負荷機器を並列接続し、各直流電気負荷機器に対して直流電力を同期給電して並列運転させる直流電気負荷システムにおいて、
各直流電気負荷機器に並列接続される電源線の電流による磁界に基づいて電源線全体の電流を検知する電源線異常検出手段は、中空部を有したコアに電流検出手段が設けられ、該コアの中空部内に対し、各直流電気負荷機器の電源線を互い違いの電流方向で、かつ各直流電気負荷機器における一方の電源線が他方の電源線と電流方向が反対方向になるように挿通し、
電源線異常検出手段により検知される検知電流値が、基準電流値以下の場合には各電源線が正常導通と判断して各直流電気負荷機器に対する直流電力の同期給電を継続して並列運転させる一方、上記検知電流値が基準電流値以上の場合には、各電源線のいずれかが導通異常と判断して各直流電気負荷機器に対する直流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させる直流電気負荷システムの電源線異常検出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
検知電流値が基準電流値以上で、各電気負荷機器に対する電力の同期給電を遮断した際には、報知手段を作動して電源線異常を報知可能にした電気負荷機器の電源線異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源(直流電源,単相交流電源及び三相交流電源を含む。また,電気負荷機器がサーボモータの場合には,電源としては,主回路部及び制御回路部から構成される直流又は交流サーボアンプの主回路部から電力を給電する形式を含む。)と複数の電気負荷機器を並列接続した電気負荷システムにおける電源線の断線や接続不良等の電源線異常を検出する電源線異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電源としての三相交流電源に接続された各種電気負荷機器としての交流電動機器にあっては,特許文献1に示すように位相が異なる3つの相(R相,S相,T相)で構成される三相交流電力を給電する3本の電源線(配電線)の末端にそれぞれ接続され,無効電力を発生する無効電力発生部に流れる電流を検出する電流検出部及び各電流検出部により検出される電流値に基づいて配電線が断線しているか否かを判定する断線判定部を備えた断線検出装置をそれぞれ設け,各電流検出部により検出される電流値が予め定める基準電流値未満の場合には,対応する配電線が断線していると判定して交流電動機器が異常電流による過熱により焼損したり,トルク異常により動作不良になったりするのを防止している。
【0003】
そして高負荷の装置(設備)を駆動する際に,例えば三相交流電源に対し,高出力の三相交流電動機器の代わりに低出力で定格が等しい複数台の三相交流電動機器を並列接続して三相交流電力を同期給電して並列運転する電気負荷システムを構成する場合がある。このような電気負荷システムにおいては,各三相交流電動機器に接続される各相の電源線の断線や接続不良を検知するには,三相交流電動機器毎に,各相の電源線に各特許文献1の断線検出装置を取り付け,各三相交流電動機器における各相の電源線の断線や接続不良等の電源線異常を検出可能にしている。
【0004】
しかし,上記した三相交流の電気負荷システムにおいて電源線の異常を検出するには,三相交流電動機器毎に各相分の断線検出装置を設けなければならず,電気負荷システム全体では(三相交流電動機器の設置台数×3)台の断線検出装置を必要とするため,電気負荷システムの構成が複雑化すると共にシステム自体が高コスト化する問題を有している。
【0005】
なお,電気負荷システムの電源を直流電源や単相交流電源,また電気負荷機器を直流電気負荷機器や単相交流電気負荷機器とする場合においても,上記と同様な問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-27306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、電源に対して複数台の電気負荷機器を並列接続して電力を同期給電して並列運転する電気負荷システムにおいて電源線の断線や接続不良等の電源線異常を検出するには,電気負荷機器毎に各電線に断線検出装置を設ける必要があり,断線検出装置の設置台数が増大して電気負荷システムが複雑化すると共に高コスト化する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、各位相が120度ずれた三相交流電源からの三相交流電力により駆動される複数台の三相交流電気負荷機器を並列接続し、各三相交流電気負荷機器に対して三相交流電力を同期給電して並列運転させる三相交流電気負荷システムにおいて、各三相交流電気負荷機器に並列接続される電源線の電流による磁界に基づいて電源線全体の電流を検知する電源線異常検出手段は、中空部を有したコアに電流検出手段が設けられ、該コアの中空部内に対し、各三相交流電気負荷機器の電源線を互い違いの電流方向で、かつ各三相交流電気負荷機器における1相の電源線が他の2相の電源線と電流方向が反対方向になるように挿通し、電源線異常検出手段により検知される検知電流値が、基準電流値以下の場合には各電源線が正常導通と判断して各三相交流電気負荷機器に対する三相交流電力の同期給電を継続して並列運転させる一方、上記検知電流値が基準電流値以上の場合には、各電源線のいずれかが導通異常と判断して各三相交流電気負荷機器に対する三相交流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させることを最も主要な特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様は、各位相が180度ずれた単相交流電源に、単相交流電力により駆動される複数台の単相交流電気負荷機器を並列接続し、各単相交流電気負荷機器に対して単相交流電力を同期給電して並列運転させる単相交流電気負荷システムにおいて、各単相交流電気負荷機器に並列接続される電源線の電流による磁界に基づいて電源線全体の電流を検知する電源線異常検出手段は、中空部を有したコアに電流検出手段が設けられ、該コアの中空部内に対し、各単相交流電気負荷機器の電源線を互い違いの電流方向で、かつ各単相交流電気負荷機器における一方の電源線が他方の電源線と電流方向が反対方向になるように挿通し、電源線異常検出手段により検知される検知電流値が、基準電流値以下の場合には各電源線が正常導通と判断して各単相交流電気負荷機器に対する単相交流電力の同期給電を継続して並列運転させる一方、上記検知電流値が基準電流値以上の場合には、各電源線のいずれかが導通異常と判断して各単相交流電気負荷機器に対する単相交流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させることを最も主要な特徴とする。
【0010】
本発明の第3態様は、直流電源に、直流電力により駆動される複数台の直流電気負荷機器を並列接続し、各直流電気負荷機器に対して直流電力を同期給電して並列運転させる直流電気負荷システムにおいて、各直流電気負荷機器に並列接続される電源線の電流による磁界に基づいて電源線全体の電流を検知する電源線異常検出手段は、中空部を有したコアに電流検出手段が設けられ、該コアの中空部内に対し、各直流電気負荷機器の電源線を互い違いの電流方向で、かつ各直流電気負荷機器における一方の電源線が他方の電源線と電流方向が反対方向になるように挿通し、電源線異常検出手段により検知される検知電流値が、基準電流値以下の場合には各電源線が正常導通と判断して各直流電気負荷機器に対する直流電力の同期給電を継続して並列運転させる一方、上記検知電流値が基準電流値以上の場合には、各電源線のいずれかが導通異常と判断して各直流電気負荷機器に対する直流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、電源に対して複数台の電気負荷機器を並列接続して電力を同期給電して並列運転させる電気負荷システムにおいて,各電気負荷機器に接続される各電源線の断線や接続不良等の電源線異常を簡易かつ低コストで検出可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電気負荷システムを三相交流電気負荷システムとした場合の電源線異常検出方法の概略を示す説明図である。
図2】電源線異常検出手段を示す説明図である。
図3】(A)は電源線が正常状態の場合の検知電流値を示す説明図である。(B)は断信号の出力状態を示す説明図である。
図4】(A)は電源線が異常状態の場合の検知電流値を示す説明図である。(B)は断信号の出力状態を示す説明図である。
図5】実施例2に係る2線単相交流電気負荷システムの電源線異常検出方法の概略を示す説明図である。
図6】実施例3に係る直流電気負荷システムの電源線異常検出方法の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
各三相交流電気負荷機器に並列接続される電源線の電流による磁界に基づいて電源線全体の電流を検知する電源線異常検出手段は、中空部を有したコアに電流検出手段が設けられ、該コアの中空部内に対し、各三相交流電気負荷機器の電源線を互い違いの電流方向で、かつ各三相交流電気負荷機器における1相の電源線が他の2相の電源線と電流方向が反対方向になるように挿通し、電源線異常検出手段により検知される検知電流値が、基準電流値以下の場合には各電源線が正常導通と判断して各三相交流電気負荷機器に対する三相交流電力の同期給電を継続して並列運転させる一方、上記検知電流値が基準電流値以上の場合には、各電源線のいずれかが導通異常と判断して各三相交流電気負荷機器に対する三相交流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させることを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明を三相交流電気負荷システムに実施した実施例1を示す図に従って説明する。
図1に示すように電気負荷システムとしての三相交流電気負荷システム1は,電源としての三相交流電源3(電気負荷機器を三相交流サーボモータとする場合には,主回路部及び制御回路部から構成されるサーボアンプを三相交流電源とする。)に対し,低出力で定格が等しい交流電気負荷機器を構成する第1及び第2三相電動モータ5,7(本例は2台の三相電動モータとするが,本発明はこれに限定されることなく,3台以上であっても実施可能である。)を並列接続し,これら第1及び第2三相電動モータ5,7に対して三相交流電力を同期給電して並列運転させることによりシステム全体として高出力を得るように構成される。
【0023】
三相交流電気負荷システム1は,上記したように位相が120度ずれ,かつ各電圧ベクトルが調整されたR相,S相,T相の三相交流電源3と,三相交流電源3に対してスイッチング手段11を介して並列接続されて並列運転される2台の三相電動モータ5,7と,電源線異常検出手段13とから構成される。なお,三相交流電源3をサーボアンプとする場合にあっては,上記スイッチング手段11によるON-OFF制御は,サーボアンプの主回路部により実行される。
【0024】
第1及び第2三相電動モータ5,7の給電部(U,V,W)には,三相交流電源3のR相,S相,T相からの各電源線15a-15c,17a-17cが並列接続され,上記スイッチング手段11のON―OFF制御により第1及び第2三相電動モータ5,7に三相交流電力が同期給電される。
【0025】
図2に示すように電源線異常検出手段13は,変流器としてのリング状又は馬蹄状で,貫通型のコア13a中空部内に挿通された電源線15a-15c,17a-17cに流れる電流により発生する磁界を,該コア13aに卷回された検出コイル13bにより検出して検知電流に変換する磁気検出器として構成される。
【0026】
上記検出コイル13bには,必要に応じて接続される増幅器13cを介して比較回路13dに接続され,該比較回路13dは,検知電流が予め設定された基準電流値Iref.以上になった際に,スイッチング手段11に断信号を出力して第1及び第2三相電動モータ5,7に対する三相交流電力の給電を遮断させると共に該断信号に基づいて警報手段,警告表示手段等の報知手段13eを作動して作業者に電源線異常を報知する。
【0027】
電源線異常検出手段13としては,上記のほかに貫通型コアにホール素子を設け,中空部内に挿通される電線周りに発生する磁界により電流を検出するホール素子電流検出手段等,従来公知の電流検出手段であってもよい。
【0028】
該基準電流値Iref.は,第1及び第2三相電動モータ5,7の定格が等しい場合であっても,実際には第1及び第2三相電動モータ5,7のインダクタンスや抵抗値(リアクタンス)に微小のばらつきがあるため,このばらつきを考慮した任意の電流値に設定される。
【0029】
上記電源線15a-15c,17a-17cは,コア13aの中空部内に対し,以下のように挿通され,電源線異常検出手段13により各電源線15a-15c,17a-17cを導通する電流が検出される。
【0030】
即ち,第1三相電動モータ5の給電部(U,V,W)に接続される電源線15a-15cと第2三相電動モータ7の給電部(U,V,W)に接続される電源線17a-17cは,コア13aの中空部に対して電流方向が互い違いになり,かつその内の電源線15b,17bが他の電源線15a・15c,17a・17cと反対の電流方向になるように挿通される。
【0031】
なお,交流電動機器を3台の三相電動モータで構成する場合にあっては,3台目の三相電動モータ給電部に接続される3本の電源線を,コア13aの中空部内に対して第1三相電動モータ5の電源線15a-15cと同様に挿通させる。また,交流電動機器を4台の三相電動モータで構成する場合にあっては,4台目の三相電動モータ給電部に接続される3本の電源線を,コア13aの中空部内に対して第2三相電動モータ7の電源線17a-17cと同様に挿通させる。
【0032】
なお,図1及び図2においてコア13aに対して破線で示す電源線15a-15c,17a-17cは,コア13aの中空部内を通過している状態を,またコア13aに対して実線で示す電源線15a-15c,17a-17cは,コア13aの中空部外(外周側)に位置している状態をそれぞれ示す。
【0033】
次に,上記三相交流電気負荷システム1における電源線異常検出方法を説明する。
先ず,電源線15a-15c,17a-17cのいずれもが非断線で,正常に導通している場合や,各三相電動モータ5,7,9の各給電部(U,V,W)に対して対応するそれぞれの電源線15a-15c,17a-17cが、電気的接続が正常な場合においては,コア13aの中空部内に挿通された各相の電源線15a-15c,17a-17cを流れる電流の位相がそれぞれ120度,ずれているため,各電源線15a-15c,17a-17cの周りに発生する磁界により励起される検出コイル13bからの検知電流値が原理的に“0”になる。
【0034】
但し,第1及び第2三相電動モータ5.7の定格が等しい場合であっても,インダクタンスや抵抗値(リアクタンス)に微小のばらつきがあり,検知電流値が必ずしも“0”ではなく,上記した基準電流値Iref.以下の微弱電流値になることがあるため,本発明においては,電源線15a-15c,17a-17cが正常に接続されている際の検知電流値を基準電流値Iref.以下の近似的“0”と表現する。
【0035】
この場合においては,電源線異常検出手段13により検出される検知電流値が基準電流値Iref.以下の近似的“0”であるため,比較回路13dは,スイッチング手段11に対して断信号がOFF(LOW)状態に維持されることにより第1及び第2三相電動モータ5,7に対する三相交流電力の同期給電を継続して並列運転させる。(図3(A),(B)参照)
【0036】
一方,電源線15a-15c,17a-17cのいずれかが断線して非導通の場合や,第1及び第2三相電動モータ5,7の各給電部(U,V,W)に対する電源線15a-15c,17a-17cの電気的接続が不良の場合においては,各電源線15a-15c,17a-17cのいずれかが欠相して非平衡状態になり,電源線異常検出手段13により検出される検知電流値が上記基準電流値Iref.以上に遷移する。
【0037】
この場合においては,電源線異常検出手段13により検出される検知電流値が基準電流値Iref.以上であるため,比較回路13dからの断信号がON(HIGH)に遷移されることにより第1及び第2三相電動モータ5,7に対する三相交流電力の同期給電を遮断して並列運転を停止させると共に該断信号に基づいて報知手段13eを作動して作業者に電源線異常を報知させる。(図4(A),(B)参照)
【0038】
なお,電源線異常検出手段13により準電流値Iref.以上の検知電流が検出された際には,電源線15a-15c,17a-17cのいずれかが断線しているか,また第1及び第2三相電動モータ5,7の各給電部(U,V,W)に対する電源線15a-15c,17a-17cの接続不良がいずれかであるかを特定できないが,第1及び第2三相電動モータ5,7に対する三相交流電力の同期給電を遮断することにより第1及び第2三相電動モータ5,7における励磁コイルの焼損や出力異常を防止することができる。
【0039】
本実施例は,1台の電源線異常検出手段13により各電源線15a-15c,17a-17cを流れる電流による磁界を磁気検出し,その検知電流値に基づいて電源線15a-15c,17a-17cの断線や接続不良等の電源線異常を検出することができ,各相の電源線に断線検出装置を設けて電源線異常を検出する従来の電源線異常検出方法に比べて簡易,かつ低コストで電源線異常を検出することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例1は,交流電源として三相交流電源,交流電動機器を三相電動モータとする三相交流電気負荷システムにより説明したが,実施例2は,電源を単相交流電源,電気負荷機器を単相交流電動モータにより構成される単相交流電気負荷システムとして説明する。なお,実施例1と同一の部材に付いては,同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図5に示すように,単相交流電気負荷システム21は,電源としての単相交流電源23(交流電気負荷機器を単相交流サーボモータとする場合には,主回路部及び制御回路部から構成されるサーボアンプを交流電源とする。)に対し,低出力で定格が等しい電気負荷機器としての第1及び第2単相交流電動モータ25,27(本例は2台の単相交流電動モータとするが,本発明はこれに限定されることなく,3台以上であっても実施可能である。)を並列接続し,これら第1及び第2単相交流電動モータ25,27に対して単相交流電力を同期給電して並列運転させることによりシステム全体として高出力を得るように構成される。
【0042】
この場合にあっても,単相交流電源21と第1及び第2単相交流電動モータ25,27を並列接続する電源線29a・29b,31a・31bは,コア13aの中空部内に対し,以下のように挿通され,電源線異常検出手段13により各電源線29a・29b,31a・31bの電流が検出される。
【0043】
即ち,第1単相交流電動モータ25の給電部(A,B)に接続される電源線29a・29bは,コア13aの中空部に対して電流方向が互い違いになるようにそれぞれ挿通される。また,第2単相交流電動モータ27の給電部(A,B)に接続される電源線31a・31bは,コア13aの中空部に対して電源線31aが上記電源線29aの電流方向と反対方向に,また電源線31bが上記電源線29bの電流方向と反対方向に電流が流れるようにそれぞれ挿通される。
【0044】
なお,交流電気負荷機器を3台の単相交流電動モータで構成する場合にあっては,3台目の単相交流電動モータの給電部に接続される2本の電源線を,コア13aの中空部内に対して1台目の第1単相交流電動モータ25の電源線29a・29bと同様に挿通させる。また,交流電動機器を4台の単相交流電動モータで構成する場合にあっては,4台目の単相交流電動モータの給電部に接続される2本の電源線を,コア13aの中空部内に対して2台目の第2単相交流電動モータ27の電源線31a・31bと同様に挿通させる。
【0045】
交流電動機器を第1及び第2単相交流電動モータ25,27とする場合であっても,各電源線29a・29b,31a・31bに流れる電流がコア13aの中空部内を通る際に各相の位相がそれぞれ180度,ずれているため,各電源線29a・29b,31a・31bが非断線又は接続が正常の場合には,各電線29a・29b,31a・31bの電流により発生する磁界が平衡状態で,検出コイル13bに励起されて検出される検知電流値が基準電流値Iref.以下の近似的“0”になり,第1及び第2単相交流電動モータ25,27に対する交流電力の給電を継続して並列運転させる。
【0046】
反対に各電源線29a・29b,31a・31bが断線又は接続不良の場合には,各電線29a・29b,31a・31bの電流により発生する磁界が非平衡状態に遷移し,検出コイル13bに励起されて検出される検知電流値が基準電流値Iref.以上になり,比較回路13dからの断信号がON(HIGH)に遷移することにより第1及び第2単相交流電動モータ25,27に対する単相交流電力の同期給電を遮断すると共に該断信号に基づいて報知手段13eを作動して作業者に電源線異常を報知させる。
【実施例3】
【0047】
実施例1及び2は,交流電源(三相交流電源及び単相交流電源),交流電気負荷機器(三相交流電動モータ及び単相交流電動モータ)により構成される電気負荷システムに基づいて説明したが,実施例3は,電源を直流電源,電気負荷機器を直流電動モータにより構成される直流電気負荷システムに基づいて説明する。なお,実施例1と同一の部材に付いては,同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図6に示すように,直流電気負荷システム41は,電源としての直流電源43(直流電気負荷機器を直流サーボモータとする場合には,主回路部及び制御回路部から構成されるサーボアンプを直流電源とする。)に対し,低出力で定格が等しい直流電気負荷機器としての第1及び第2直流電動モータ45・47(本例は2台の直流電動モータとするが,本発明はこれに限定されることなく,3台以上であっても実施可能である。)を並列接続し,これら第1及び第2直流電動モータ45・47に対して直流電力を同期給電して並列運転させることによりシステム全体として高出力を得るように構成される。
【0049】
この場合にあっても,直流電源43と第1及び第2直流電動モータ45・47を並列接続する電源線49a・49b,51a・51bは,コア13aの中空部内に対し,以下のように挿通され,電源線異常検出手段13により各電源線49a・49b,51a・51bを流れる電流が検出される。
【0050】
即ち,第1直流電動モータ45の給電部(A,B)に接続される電源線49a・49bは,コア13aの中空部に対して電流方向が互い違いになるようにそれぞれ挿通される。また,第2直流電動モータ47の給電部(A,B)に接続される電源線51a・51bは,コア13aの中空部に対して電源線51aが上記電源線49aの電流方向と反対方向に,また電源線51bが上記電源線49bの電流方向と反対方向に電流が流れるようにそれぞれ挿通される。
【0051】
なお,直流電気負荷機器を3台の直流電動モータで構成する場合にあっては,3台目の直流電動モータの給電部に接続される2本の電源線を,コア13aの中空部内に対して1台目の第1直流電動モータ45の電源線49a・49bと同様に挿通させる。また,直流電気負荷機器を4台の直流電動モータで構成する場合にあっては,4台目の直流電動モータの給電部に接続される2本の電源線を,コア13aの中空部内に対して2台目の第2直流電動モータ47の電源線51a・51bと同様に挿通させる。
【0052】
直流電気負荷機器を第1及び第2直流電動モータ45,47とする場合であっても,コア13aの中空部内に挿通された各電源線49a・49b,51a・51bの内,例えば電源線49a・51aが正(プラス),電源線49b・51bが負(マイナス)とすると,各電源線49a・49b,51a・51bが非断線又は接続が正常の場合には,各電線49a・49b,51a・51bの電流により発生する磁界が平衡状態で,検出コイル13bに励起されて検出される検知電流値が基準電流値Iref.以下の近似的“0”になり,第1及び第2直流電動モータ45,47に対する直流電力の給電を継続して並列運転させる。
【0053】
反対に各電源線49a・49b,51a・51bが断線又は接続不良の場合には,各電線49a・49b,51a・51bの電流により発生する磁界が非平衡状態に遷移して検出コイル13bに励起されて検出される検知電流値が基準電流値Iref.以上になり,比較回路13dからの断信号がON(HIGH)に遷移することにより第1及び第2直流電動モータ45,47に対する直流電力の同期給電を遮断すると共に該断信号に基づいて報知手段13eを作動して作業者に電源線異常を報知させる。
【0054】
実施例1乃至3においては,電気負荷機器として電動モータ(三相交流電動モータ,2線単相交流電動モータ,直流電動モータ)により説明したが,本発明の電気負荷機器としては,高出力の電気負荷機器の代わりに低出力で定格が等しい複数台の電気負荷機器を並列接続して並列運転させることにより所定の高出力を得るのに適した電磁石(電磁ソレノイド),電気ヒータ等のいずれであってもい。
【符号の説明】
【0055】
1 電気負荷システムとしての三相交流電気負荷システム
3 電源としての三相交流電源
5,7,9 電気負荷機器としての三相電動モータ
11 スイッチング手段
13 電源線異常検出手段
13a コア
13b 検出コイル
13c 増幅器
13d 比較回路
13e 報知手段
15a-15c,17a-17c 電源線
U,V,W 給電部
Iref. 基準電流値
21 電気負荷システムとしての単相交流電気負荷システム
23 電源としての2線単相交流電源
25,27 電気負荷機器としての第1及び第2単相交流電動モータ
29a・29b,31a・31b 電源線
41 電気負荷システムとしての直流電気負荷システム
43 電源としての直流電源
45・47 電気負荷機器としての第1及び第2直流電動モータ
49a・49b,51a・51b 電源線
A,B 給電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6