(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20220325BHJP
H02K 33/14 20060101ALI20220325BHJP
H01F 7/122 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K33/14
H01F7/122 B
(21)【出願番号】P 2019530566
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2018026911
(87)【国際公開番号】W WO2019017387
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2017140787
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝
(72)【発明者】
【氏名】一橋 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】進士 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 範栄
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-245484(JP,A)
【文献】特開2005-268608(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093597(WO,A1)
【文献】特表2017-502646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 33/14
H01F 7/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極面がN極である複数の第1の磁石と、磁極面がS極である複数の第2の磁石とを含む磁石構造体と、
第1及び第2の配線を含み、ギャップを介して前記第1及び第2の磁石の磁極面と対向する回路基板と、を備え、
前記磁石構造体は、第1及び第2の領域を含み、
前記第1の配線の一端から他端に電流を流すと、前記第1の領域に位置する前記第1の磁石上を電流が一方向に少なくとも部分的に周回するとともに、前記第1の領域に位置する前記第2の磁石上を電流が逆方向に少なくとも部分的に周回するよう構成され、
前記第2の配線の一端から他端に電流を流すと、前記第2の領域に位置する前記第1の磁石上を電流が前記逆方向に少なくとも部分的に周回するとともに、前記第2の領域に位置する前記第2の磁石上を電流が前記一方向に少なくとも部分的に周回するよう構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記磁石構造体は、第1の方向及び前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第1の平面に、前記複数の第1の磁石の磁極面と前記複数の第2の磁石の磁極面が前記第1及び第2の方向に交互に配列された構造を有していることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1の領域と前記第2の領域は前記第2の方向に配列されており、前記第1の配線の前記一端から前記他端に電流を流すとともに、前記第2の配線の前記一端から前記他端に電流を流すことによって、前記第1の方向を軸として前記磁石構造体と前記回路基板を相対的に傾けることが可能な請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1の配線の前記一端から前記他端に電流を流すとともに、前記第2の配線の前記他端から前記一端に電流を流すことによって、前記ギャップの距離を変化させることが可能な請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記回路基板は、第3及び第4の配線をさらに含み、
前記磁石構造体は、前記第2の方向に配列された第3及び第4の領域を含み、
前記第1及び第3の領域は前記第1の方向に配列され、
前記第2及び第4の領域は前記第1の方向に配列され、
前記第3の配線の一端から他端に電流を流すと、前記第1及び第2の領域に位置する前記第1の磁石上を電流が一方向に少なくとも部分的に周回するとともに、前記第1及び第2の領域に位置する前記第2の磁石上を電流が逆方向に少なくとも部分的に周回するよう構成され、
前記第4の配線の一端から他端に電流を流すと、前記第3及び第4の領域に位置する前記第1の磁石上を電流が前記逆方向に少なくとも部分的に周回するとともに、前記第3及び第4の領域に位置する前記第2の磁石上を電流が前記一方向に少なくとも部分的に周回するよう構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1及び第2の配線は、前記第1の平面と平行な第2の平面に設けられ、
前記第3及び第4の配線は、前記第1の平面と平行であり前記第2の平面とは異なる第3の平面に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1乃至第4の配線は、前記第1の平面と平行な第3の平面に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記回路基板は、第5及び第6の配線をさらに含み、
前記磁石構造体は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第1の方向に交互に配列された第1の配列部分と、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第2の方向に交互に配列された第2の配列部分とを含み、
前記第5の配線は、前記第1の配列部分に含まれる前記第1及び第2の磁石の少なくとも一部を前記第2の方向に横断し、
前記第6の配線は、前記第2の配列部分に含まれる前記第1及び第2の磁石の少なくとも一部を前記第1の方向に横断することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記第5の配線は、前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第1の配線部分と、前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第2の配線部分とを含み、
前記第6の配線は、前記第1の磁石を前記第1の方向に横断する第3の配線部分と、前記第2の磁石を前記第1の方向に横断する第4の配線部分とを含み、
前記第1の配線部分と前記第2の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、
前記第3の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成されていることを特徴とする請求項8に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記第5の配線は、前記第1の平面と平行な第4の平面に設けられ、
前記第6の配線は、前記第1の平面と平行であり前記第4の平面とは異なる第5の平面に設けられていることを特徴とする請求項9に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記第5の配線は、前記第1及び第3の領域を覆う第1の部分と、前記第2及び第4の領域を覆う第2の部分とを含み、
前記第1の部分と前記第2の部分は、個別に電流を流せるよう構成されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記回路基板は、第7の配線をさらに含み、
前記第7の配線は、前記第1乃至第4の領域に位置する前記第1の磁石上を少なくとも部分的に周回する第5の配線部分と、前記第1乃至第4の領域に位置する前記第2の磁石上を少なくとも部分的に周回する第6の配線部分をさらに含み、
前記第5の配線部分と前記第6の配線部分には、互いに逆方向に周回する電流が流れるよう構成されていることを特徴とする請求項2乃至11のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記回路基板は、第8の配線をさらに含み、
前記第8の配線は、前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第7の配線部分と、前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第8の配線部分とを含み、
前記第1及び第3の領域を覆う部分においては、前記第7の配線部分と前記第8の配線部分に互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、
前記第2及び第4の領域を覆う部分においては、前記第7の配線部分と前記第8の配線部分に互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、
前記第7の配線部分のうち、前記第1及び第3の領域を覆う部分と、前記第2及び第4の領域を覆う部分には、互いに逆方向に電流を流すことができ、
前記第8の配線部分のうち、前記第1及び第3の領域を覆う部分と、前記第2及び第4の領域を覆う部分には、互いに逆方向に電流を流すことができるよう構成されていることを特徴とする請求項2乃至12のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
磁極面がN極である複数の第1の磁石と、磁極面がS極である複数の第2の磁石とを含む磁石構造体と、
第1及び第2の配線を含み、ギャップを介して前記第1及び第2の磁石の磁極面と対向する回路基板と、を備え、
前記磁石構造体は、第1及び第2の領域を含み、
前記第1の領域は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が第1の方向に交互に配列された第1の配列部分を含み、
前記第2の領域は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第1の方向に交互に配列された第2の配列部分を含み、
前記第1の領域と前記第2の領域は、前記第1の方向と直交する第2の方向に配列されており、
前記第1の配線は、前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第1の配線部分と、前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第2の配線部分とを含み、
前記第2の配線は、前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第3の配線部分と、前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第4の配線部分とを含み、
前記第1の配線部分と前記第2の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、
前記第3の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、
前記第1の配線部分と前記第3の配線部分には、互いに逆方向の電流を流すことが可能であり、且つ、前記第2の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに逆方向の電流を流すことが可能なように構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項15】
前記第1及び第2の配線部分と前記第3及び第4の配線部分は、個別に電流を流せるよう互いに分離されていることを特徴とする請求項14に記載のアクチュエータ。
【請求項16】
前記第1の配線部分と前記第3の配線部分には、互いに同方向の電流を流すことが可能であり、且つ、前記第2の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに同方向の電流を流すことが可能なように構成されていることを特徴とする請求項14又は15に記載のアクチュエータ。
【請求項17】
前記第1及び第2の方向における前記第1及び第2の磁石の大きさは、1mm以下であることを特徴とする請求項2乃至16のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項18】
前記第1及び第2の方向と直交する第3の方向における前記磁石構造体の厚みは、1mm以下であることを特徴とする請求項2乃至17のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項19】
前記磁石構造体を支持する支持基板をさらに備え、
前記支持基板の熱拡散率は、前記磁石構造体の熱拡散率よりも低いことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項20】
前記回路基板及び前記磁石構造体のいずれか一方にイメージセンサが固定されていることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータに関し、特に、回転動作が可能なアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁力を用いたアクチュエータとしては、1軸方向に往復運動可能なものが一般的であるが、特許文献1には、磁石をマトリクス状に配列することによって2次元的な動作を可能としたアクチュエータが記載されている。特許文献1に記載されたアクチュエータは、1個の磁石に対して4個のコイルを割り当て、これらのコイルに流す電流の向きを制御することによって2次元的な動作を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】薄膜ネオジム磁石の交番着磁とそれを用いたMEMSリニアモータの試作(精密工学会誌, Vol. 79, No8, 2013, p773-p778)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたアクチュエータは、1個の磁石に対して4個のコイルを割り当てていることから、小型化することが困難であるという問題がある。特に、駆動平面に対して垂直な厚さ方向におけるサイズを縮小することは困難であり、携帯型デバイスのように低背化が求められる用途には不向きである。また、2次元的な動作は可能であるものの、回転動作を行うことはできない。
【0006】
低背化が可能なアクチュエータとしては、非特許文献1に記載されたリニアモータが知られている。しかしながら、非特許文献1に記載されたリニアモータは、1軸方向に往復運動するだけであり、2次元的な動作や回転動作を行うことはできない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、回転動作が可能な低背型のアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によるアクチュエータは、磁極面がN極である複数の第1の磁石と、磁極面がS極である複数の第2の磁石とを含む磁石構造体と、第1及び第2の配線を含み、ギャップを介して前記第1及び第2の磁石の磁極面と対向する回路基板と、を備え、前記磁石構造体は、第1及び第2の領域を含み、前記第1の配線の一端から他端に電流を流すと、前記第1の領域に位置する前記第1の磁石上を電流が一方向に少なくとも部分的に周回するとともに、前記第1の領域に位置する前記第2の磁石上を電流が逆方向に少なくとも部分的に周回するよう構成され、前記第2の配線の一端から他端に電流を流すと、前記第2の領域に位置する前記第1の磁石上を電流が前記逆方向に少なくとも部分的に周回するとともに、前記第2の領域に位置する前記第2の磁石上を電流が前記一方向に少なくとも部分的に周回するよう構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1及び第2の配線に電流を流すことにより、磁極面と平行な所定軸(例えばx軸)を中心とした回転動作を実現することが可能となる。
【0010】
本発明において、磁石構造体は、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向に延在する第1の平面に、複数の第1の磁石の磁極面と複数の第2の磁石の磁極面が第1及び第2の方向に交互に配列された構造を有していても構わない。これによれば、より大きな駆動力を得ることが可能となる。
【0011】
本発明において、第1の領域と第2の領域は第2の方向に配列されており、第1の配線の一端から他端に電流を流すとともに、第2の配線の一端から他端に電流を流すことによって、第1の方向を軸として磁石構造体と回路基板を相対的に傾けることが可能であっても構わない。これによれば、第1の方向を軸とした回転動作を行うことができる。
【0012】
本発明において、第1の配線の一端から前記他端に電流を流すとともに、第2の配線の他端から一端に電流を流すことによって、ギャップの距離を変化させることが可能であっても構わない。これによれば、磁極面に対して垂直な方向に駆動することが可能となる。
【0013】
本発明において、回路基板は第3及び第4の配線をさらに含み、磁石構造体は第2の方向に配列された第3及び第4の領域を含み、第1及び第3の領域は第1の方向に配列され、第2及び第4の領域は第1の方向に配列され、第3の配線の一端から他端に電流を流すと、第1及び第2の領域に位置する第1の磁石上を電流が一方向に少なくとも部分的に周回するとともに、第1及び第2の領域に位置する第2の磁石上を電流が逆方向に少なくとも部分的に周回するよう構成され、第4の配線の一端から他端に電流を流すと、第3及び第4の領域に位置する第1の磁石上を電流が逆方向に少なくとも部分的に周回するとともに、第3及び第4の領域に位置する第2の磁石上を電流が一方向に少なくとも部分的に周回するよう構成されていても構わない。これによれば、第3及び第4の配線に電流を流すことにより、第2の方向に延在する軸(例えばy軸)を中心とした回転動作を実現することが可能となる。
【0014】
本発明において、第1及び第2の配線は第1の平面と平行な第2の平面に設けられ、第3及び第4の配線は第1の平面と平行であり第2の平面とは異なる第3の平面に設けられていても構わない。これによれば、回路基板上に設けられた2層の配線層を用いて回転動作を実現することが可能となる。或いは、第1乃至第4の配線は、第1の平面と平行な第3の平面に設けられていても構わない。これによれば、回路基板上に設けられた1層の配線層を用いて回転動作を実現することが可能となる。
【0015】
本発明において、回路基板は第5及び第6の配線をさらに含み、磁石構造体は、第1の磁石と第2の磁石が第1の方向に交互に配列された第1の配列部分と、第1の磁石と第2の磁石が第2の方向に交互に配列された第2の配列部分とを含み、第5の配線は、第1の配列部分に含まれる第1及び第2の磁石の少なくとも一部を第2の方向に横断し、第6の配線は、第2の配列部分に含まれる第1及び第2の磁石の少なくとも一部を第1の方向に横断するものであっても構わない。これによれば、第5及び第6の配線に電流を流すことにより、2次元的な動作を実現することが可能となる。
【0016】
本発明において、第5の配線は、第1の磁石を第2の方向に横断する第1の配線部分と、第2の磁石を第2の方向に横断する第2の配線部分とを含み、第6の配線は、第1の磁石を第1の方向に横断する第3の配線部分と、第2の磁石を第1の方向に横断する第4の配線部分とを含み、第1の配線部分と第2の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、第3の配線部分と第4の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成されていても構わない。これによれば、より大きな駆動力を得ることが可能となる。
【0017】
本発明において、第5の配線は、第1の平面と平行な第4の平面に設けられ、第6の配線は、第1の平面と平行であり第4の平面とは異なる第5の平面に設けられていても構わない。これによれば、回路基板上に2層の配線層を追加することによって2次元的な動作を実現することが可能となる。
【0018】
本発明において、第5の配線は、第1及び第3の領域を覆う第1の部分と、第2及び第4の領域を覆う第2の部分とを含み、第1の部分と第2の部分は、個別に電流を流せるよう構成されていても構わない。これによれば、第1の部分と第2の部分に逆方向の電流を流すことによって、磁極面に対して垂直な所定軸(例えばz軸)を中心とした回転動作を実現することが可能となる。
【0019】
本発明において、回路基板は第7の配線をさらに含み、第7の配線は、第1乃至第4の領域に位置する第1の磁石上を少なくとも部分的に周回する第5の配線部分と、第1乃至第4の領域に位置する第2の磁石上を少なくとも部分的に周回する第6の配線部分をさらに含み、第5の配線部分と第6の配線部分には、互いに逆方向に周回する電流が流れるよう構成されていても構わない。これによれば、磁極面に対して垂直な方向への動作と磁極面と平行な所定軸(例えばx軸)を中心とした回転動作を個別に制御することが可能となる。
【0020】
本発明において、回路基板は第8の配線をさらに含み、第8の配線は、第1の磁石を第2の方向に横断する第7の配線部分と、第2の磁石を第2の方向に横断する第8の配線部分とを含み、第1及び第3の領域を覆う部分においては、第7の配線部分と第8の配線部分に互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、第2及び第4の領域を覆う部分においては、第7の配線部分と第8の配線部分に互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、第7の配線部分のうち、第1及び第3の領域を覆う部分と、第2及び第4の領域を覆う部分には、互いに逆方向に電流を流すことができ、第8の配線部分のうち、第1及び第3の領域を覆う部分と、第2及び第4の領域を覆う部分には、互いに逆方向に電流を流すことができるよう構成されていても構わない。これによれば、磁極面に対して水平な方向への動作と磁極面に対して垂直な所定軸(例えばz軸)を中心とした回転動作を個別に制御することが可能となる。
【0021】
本発明の他の側面によるアクチュエータは、磁極面がN極である複数の第1の磁石と、磁極面がS極である複数の第2の磁石とを含む磁石構造体と、第1及び第2の配線を含み、ギャップを介して前記第1及び第2の磁石の磁極面と対向する回路基板と、を備え、前記磁石構造体は、第1及び第2の領域を含み、前記第1の領域は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が第1の方向に交互に配列された第1の配列部分を含み、前記第2の領域は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第1の方向に交互に配列された第2の配列部分を含み、前記第1の領域と前記第2の領域は、前記第1の方向と直交する第2の方向に配列されており、前記第1の配線は、前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第1の配線部分と、前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第2の配線部分とを含み、前記第2の配線は、前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第3の配線部分と、前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第4の配線部分とを含み、前記第1の配線部分と前記第2の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、前記第3の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、前記第1の配線部分と前記第3の配線部分には、互いに逆方向の電流を流すことが可能であり、且つ、前記第2の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに逆方向の電流を流すことが可能なように構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、第1及び第2の配線に電流を流すことにより、磁極面に対して垂直な所定軸(例えばz軸)を中心とした回転動作を実現することが可能となる。
【0023】
本発明において、第1及び第2の配線部分と第3及び第4の配線部分は、個別に電流を流せるよう互いに分離されていても構わない。これによれば、磁石構造体の第1の部分と第2の部分を個別に駆動することが可能となる。
【0024】
本発明において、第1の配線部分と第3の配線部分には、互いに同方向の電流を流すことが可能であり、且つ、第2の配線部分と第4の配線部分には、互いに同方向の電流を流すことが可能なように構成されていても構わない。これによれば、回転動作に加えて、磁極面と平行な所定軸(例えばx軸)に沿ったシフト動作を実現することが可能となる。
【0025】
本発明において、第1及び第2の方向における第1及び第2の磁石の大きさは、1mm以下であっても構わない。また、第1及び第2の方向と直交する第3の方向における磁石構造体の厚みは、1mm以下であっても構わない。これによれば、非常に小型、且つ、低背型のアクチュエータを提供することが可能となる。
【0026】
本発明によるアクチュエータは、磁石構造体を支持する支持基板をさらに備え、支持基板の熱拡散率は磁石構造体の熱拡散率よりも低くても構わない。これによれば、小型で薄い磁石構造体の作製が容易となる。
【0027】
本発明において、回路基板及び磁石構造体のいずれか一方にイメージセンサが固定されていても構わない。これによれば、カメラの手ぶれ補正用のアクチュエータとして用いることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本発明によれば、回転動作が可能な低背型のアクチュエータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるアクチュエータ10Aの主要部の構成を示す略平面図である。
【
図3】
図3は、磁石構造体20に含まれる第1~第4の領域31~34の位置関係を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、第1の配線110及び第2の配線120を抜き出して示す平面図である。
【
図5】
図5は、第3の配線130及び第4の配線140を抜き出して示す平面図である。
【
図6】
図6は、第5の配線150を抜き出して示す平面図である。
【
図7】
図7は、第6の配線160を抜き出して示す平面図である。
【
図8】
図8は、第1の配線110に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1の配線110と第2の配線120に電流を流すことによって生じる効果を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、第3の配線130と第4の配線140に電流を流すことによって生じる効果を説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、第5の配線150に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第6の配線160に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【
図13】
図13は、磁石構造体20の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、第1の変形例による第1及び第2の配線110,120の構成を示す平面図である。
【
図15】
図15は、第2の変形例による第1及び第2の配線110,120の構成を示す平面図である。
【
図16】
図16は、第3の変形例による第5の配線150の構成を示す平面図である。
【
図17】
図17は、第5の配線150の第1の部分150Aと第2の部分150Bに電流を流すことによって生じる効果を説明するための模式図である。
【
図18】
図18は、本発明の第2の実施形態によるアクチュエータ10Bの主要部の構成を示す略断面図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態による第5の配線150の構成を示す平面図である。
【
図20】
図20は、第1~第4の配線210,220,230,240の構成を示す平面図である。
【
図21】
図21は、本発明の第3の実施形態によるアクチュエータ10Cの主要部の構成を示す略断面図である。
【
図22】
図22は、第7の配線170の構成を示す平面図である。
【
図23】
図23は、本発明の第4の実施形態によるアクチュエータ10Dの主要部の構成を示す略断面図である。
【
図24】
図24は、第8の配線180の構成を示す平面図である。
【
図25】
図25は、本発明の第5の実施形態によるアクチュエータ10Eの主要部の構成を示す略断面図である。
【
図26】
図26は、アクチュエータ10の使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるアクチュエータ10Aの主要部の構成を示す略平面図である。また、
図2は、
図1に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0032】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Aは、x方向及びy方向にマトリクス状に配列された複数の第1及び第2の磁石21,22からなる磁石構造体20と、磁石構造体20に対してz方向に重なり、第1~第6の配線110,120,130,140,150,160が形成された回路基板100とを備える。
【0033】
磁石構造体20は、ガラスなどからなる支持基板23上に設けられており、xy方向に延在する第1の平面S1に磁極面が位置している。尚、図面の見やすさを考慮して、
図1においては支持基板23が図示されていない。磁石構造体20を構成する磁石21,22のうち、第1の磁石21は第1の平面S1に位置する磁極面がN極であり、逆に、第2の磁石22は第1の平面S1に位置する磁極面がS極である。そして、これら第1の磁石21と第2の磁石22が市松模様にマトリクス配列されている。つまり、x方向に延在する各行は、第1の磁石21と第2の磁石がx方向に交互に配列された第1の配列部分Lxを構成し、y方向に延在する各列は、第1の磁石21と第2の磁石がy方向に交互に配列された第2の配列部分Lyを構成する。
【0034】
図1及び
図2に示す例では、第1の配列部分Lxが6個の磁石21,22によって構成され、第2の配列部分Lyが6個の磁石21,22によって構成されているが、本発明において、第1及び第2の磁石21,22の数がこれに限定されるものではない。また、本実施形態においては、
図3に示すように、磁石構造体20が4つの領域31~33に分類される。第1の領域31は
図3に示す右下部分に位置し、第2の領域32は
図3に示す右上部分に位置し、第3の領域33は
図3に示す左下部分に位置し、第4の領域34は
図3に示す左上部分に位置する。したがって、第1の領域31と第2の領域32はy方向に配列され、第3の領域33と第4の領域34はy方向に配列され、第1の領域31と第3の領域33はx方向に配列され、第2の領域32と第4の領域34はx方向に配列されている。特に限定されるものではないが、本実施形態においては、いずれの領域も3×3個の磁石21,22によって構成される。
【0035】
図2に示すように、本実施形態においては、隣接する第1の磁石21と第2の磁石22がスリットSLを介して分離しており、かかるスリットSLは支持基板23の表層に達している。本発明においてこのようなスリットSLを設けることは必須でないが、後述するように、磁石構造体20の製造工程においてこのようなスリットSLを形成することが有利である。
【0036】
第1~第6の配線110,120,130,140,150,160は、回路基板100上に積層されている。回路基板100の主面は、第1の平面S1と平行な第2の平面S2を構成しており、第1及び第2の配線110,120は回路基板100の主面上、つまり第2の平面S2に形成されている。第1及び第2の配線110,120は絶縁膜101によって覆われている。絶縁膜101の表面は、第1の平面S1と平行な第3の平面S3を構成しており、第3及び第4の配線130,140は絶縁膜101の表面上、つまり第3の平面S3に形成されている。第3及び第4の配線130,140は絶縁膜102によって覆われている。絶縁膜102の表面は、第1の平面S1と平行な第4の平面S4を構成しており、第5の配線150は絶縁膜102の表面上、つまり第4の平面S4に形成されている。第5の配線150は絶縁膜103によって覆われている。絶縁膜103の表面は、第1の平面S1と平行な第5の平面S5を構成しており、第6の配線160は絶縁膜103の表面上、つまり第5の平面S5に形成されている。第6の配線160は絶縁膜104によって覆われている。このように、第1~第6の配線110,120,130,140,150,160は4層構造を有し、互いにz方向に重なるよう、回路基板100上に積層されている。
【0037】
【0038】
図4に示すように、第1の配線110は、磁石構造体20の第1及び第3の領域31,33を覆う一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第1の配線110は、平面視で第1の磁石21の周囲の一部を周回する配線部分111と、平面視で第2の磁石22の周囲の一部を周回する配線部分112とを含んでいる。尚、第1の配線110はミアンダ状であることから、平面視で第1の磁石21や第2の磁石22の全周囲を周回することは困難であり、
図4に示すように、2辺に沿って1/2周するケースや、3辺に沿って3/4周するケースが多数となる。この点は、後述する第2~第4の配線120~140についても同様である。
【0039】
そして、第1の配線110に電流を流すと、配線部分111と配線部分112には、互いに逆方向に周回する電流が流れる。
図4に示す例では、第1の配線110の一端113から他端114に向かって電流を流すと、配線部分111には右回り(時計回り)に電流が流れ、配線部分112には左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。逆に、第1の配線110の他端114から一端113に向かって電流を流すと、配線部分111には左回り(反時計回り)に電流が流れ、配線部分112には右回り(時計回り)に電流が流れることになる。
【0040】
図4に示すように、第2の配線120は、磁石構造体20の第2及び第4の領域32,34を覆う一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第2の配線120は、平面視で第1の磁石21の周囲の一部を周回する配線部分121と、平面視で第2の磁石22の周囲の一部を周回する配線部分122とを含んでいる。
【0041】
そして、第2の配線120に電流を流すと、配線部分121と配線部分122には、互いに逆方向に周回する電流が流れる。
図4に示す例では、第2の配線120の一端123から他端124に向かって電流を流すと、配線部分121には左回り(反時計回り)に電流が流れ、配線部分122には右回り(時計回り)に電流が流れることになる。逆に、第2の配線120の他端124から一端123に向かって電流を流すと、配線部分121には右回り(時計回り)に電流が流れ、配線部分122には左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。
【0042】
図5は、第3の配線130及び第4の配線140を抜き出して示す平面図である。
【0043】
図5に示すように、第3の配線130は、磁石構造体20の第1及び第2の領域31,32を覆う一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第3の配線130は、平面視で第1の磁石21の周囲の一部を周回する配線部分131と、平面視で第2の磁石22の周囲の一部を周回する配線部分132とを含んでいる。
【0044】
そして、第3の配線130に電流を流すと、配線部分131と配線部分132には、互いに逆方向に周回する電流が流れる。
図5に示す例では、第3の配線130の一端133から他端134に向かって電流を流すと、配線部分131には右回り(時計回り)に電流が流れ、配線部分112には左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。逆に、第3の配線130の他端134から一端133に向かって電流を流すと、配線部分131には左回り(反時計回り)に電流が流れ、配線部分132には右回り(時計回り)に電流が流れることになる。
【0045】
図5に示すように、第4の配線140は、磁石構造体20の第3及び第4の領域33,34を覆う一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第4の配線140は、平面視で第1の磁石21の周囲の一部を周回する配線部分141と、平面視で第2の磁石22の周囲の一部を周回する配線部分142とを含んでいる。
【0046】
そして、第4の配線140に電流を流すと、配線部分141と配線部分142には、互いに逆方向に周回する電流が流れる。
図5に示す例では、第4の配線140の一端143から他端144に向かって電流を流すと、配線部分141には左回り(反計回り)に電流が流れ、配線部分142には右回り(時計回り)に電流が流れることになる。逆に、第4の配線140の他端144から一端143に向かって電流を流すと、配線部分141には右回り(時計回り)に電流が流れ、配線部分142には左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。
【0047】
図6は、第5の配線150を抜き出して示す平面図である。
【0048】
図6に示すように、第5の配線150は、磁石構造体20の第1~第4の領域31~34を覆う一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第5の配線150は、第1の磁石21をy方向に横断する配線部分151と、第2の磁石22をy方向に横断する配線部分152と、両者を接続するようx方向に延在する接続部分153とを含んでいる。
【0049】
かかる構成により、第5の配線150に電流を流すと、配線部分151と配線部分152には、互いに逆方向の電流が流れる。
図6に示す例では、第5の配線150の一端154から他端155に向かって電流を流すと、配線部分151には下方向(-y方向)に電流が流れ、配線部分152には上方向(+y方向)に電流が流れることになる。逆に、第5の配線150の他端155から一端154に向かって電流を流すと、配線部分151には上方向(+y方向)に電流が流れ、配線部分152には下方向(-y方向)に電流が流れることになる。
【0050】
図7は、第6の配線160を抜き出して示す平面図である。
【0051】
図7に示すように、第6の配線160は、磁石構造体20の第1~第4の領域31~34を覆う一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第6の配線160は、第1の磁石21をx方向に横断する配線部分161と、第2の磁石22をx方向に横断する配線部分162と、両者を接続するようy方向に延在する接続部分163とを含んでいる。
【0052】
かかる構成により、第6の配線160に電流を流すと、配線部分161と配線部分162には、互いに逆方向の電流が流れる。
図7に示す例では、第6の配線160の一端164から他端165に向かって電流を流すと、配線部分161には右方向(+x方向)に電流が流れ、配線部分162には左方向(-x方向)に電流が流れることになる。逆に、第6の配線160の他端165から一端164に向かって電流を流すと、配線部分161には左方向(-x方向)に電流が流れ、配線部分162には右方向(+x方向)に電流が流れることになる。
【0053】
図8は、第1の配線110に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【0054】
第1の配線110に電流I1又はI2が流れると、配線部分111と配線部分112に囲まれた領域をz方向に貫通する磁束が発生する。
【0055】
具体的には、第1の配線110に電流I1が流れた場合、配線部分111に囲まれた領域においては-z方向に磁束が発生し、配線部分112に囲まれた領域においては+z方向に磁束が発生する。そして、配線部分111は平面視で第1の磁石21を周回する位置に設けられていることから、第1の磁石21に吸引され、第1の配線110には上方向(+z方向)の吸引力F1が作用する。一方、配線部分112は平面視で第2の磁石22を周回する位置に設けられていることから、第2の磁石22に吸引され、第1の配線110には上方向(+z方向)の吸引力F1が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第1の配線110には上方向(+z方向)の吸引力F1が作用することになる。
【0056】
逆に、第1の配線110に電流I2が流れた場合、配線部分111に囲まれた領域においては+z方向に磁束が発生し、配線部分112に囲まれた領域においては-z方向に磁束が発生する。そして、配線部分111は平面視で第1の磁石21を周回する位置に設けられていることから、第1の磁石21からの磁束と反発し、第1の配線110には下方向(-z方向)の反発力F2が作用する。一方、配線部分112は平面視で第2の磁石22を周回する位置に設けられていることから、第2の磁石22からの磁束と反発し、第1の配線110には下方向(-z方向)の反発力F2が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第1の配線110には下方向(-z方向)の反発力F2が作用することになる。
【0057】
ここで、第1の配線110は、磁石構造体20の第1及び第3の領域31,33と重なる位置に設けられていることから、電流I1又はI2を流すことにより、磁石構造体20の第1及び第3の領域31,33と第1の配線110とのz方向における相対的な位置関係を変化させることができる。変化の速度は、電流I1又はI2の大きさによって制御することができる。
【0058】
図示しないが、第2の配線120に流れる電流が磁石構造体20に与える影響も同様であり、第2の配線120に流す電流の方向及び大きさによって、磁石構造体20の第2及び第4の領域32,34と第2の配線120とのz方向における相対的な位置関係を変化させることができる。本実施形態においては、個別に電流を流せるよう、第1の配線110と第2の配線120が互いに分離されていることから、第1の配線110に流す電流の方向及び大きさと、第2の配線120に流す電流の方向及び大きさを任意に設定することができる。
【0059】
図9は、第1の配線110と第2の配線120に電流を流すことによって生じる効果を説明するための模式図であり、磁石構造体20を透過して回路基板100を平面視した場合における、回路基板100の動きを示している。
【0060】
まず、第1の配線110に吸引力F1が作用する方向に電流を流し、第2の配線120に反発力F2が作用する方向に電流を流した場合、
図9(a)に示すように、x方向に延在する軸AXを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に一方向に回転させる(傾ける)ことができる。このような動作を実現するためには、
図4に示す第1の配線110の一端113から他端114に向かって電流を流すとともに、第2の配線120の一端123から他端124に向かって電流を流せばよい。
【0061】
一方、第1の配線110に反発力F2が作用する方向に電流を流し、第2の配線120に吸引力F1が作用する方向に電流を流した場合、
図9(b)に示すように、x方向に延在する軸AXを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に逆方向に回転させる(傾ける)ことができる。このような動作を実現するためには、
図4に示す第1の配線110の他端114から一端113に向かって電流を流すとともに、第2の配線120の他端124から一端123に向かって電流を流せばよい。
【0062】
図示しないが、第3及び第4の配線130,140に流れる電流が磁石構造体20に与える影響も同様である。つまり、第3の配線130に流す電流の方向及び大きさによって、磁石構造体20の第1及び第2の領域31,32と第3の配線130とのz方向における相対的な位置関係を変化させることができ、第4の配線140に流す電流の方向及び大きさによって、磁石構造体20の第3及び第4の領域33,34と第4の配線140とのz方向における相対的な位置関係を変化させることができる。本実施形態においては、個別に電流を流せるよう、第3の配線130と第4の配線140が互いに分離されていることから、第3の配線130に流す電流の方向及び大きさと、第4の配線140に流す電流の方向及び大きさを任意に設定することができる。
【0063】
図10は、第3の配線130と第4の配線140に電流を流すことによって生じる効果を説明するための模式図であり、磁石構造体20を透過して回路基板100を平面視した場合における、回路基板100の動きを示している。
【0064】
まず、第3の配線130に吸引力F1が作用する方向に電流を流し、第4の配線140に反発力F2が作用する方向に電流を流した場合、
図10(a)に示すように、y方向に延在する軸AYを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に一方向に回転させる(傾ける)ことができる。このような動作を実現するためには、
図5に示す第3の配線130の一端133から他端134に向かって電流を流すとともに、第4の配線140の一端143から他端144に向かって電流を流せばよい。
【0065】
一方、第3の配線130に反発力F2が作用する方向に電流を流し、第4の配線140に吸引力F1が作用する方向に電流を流した場合、
図10(b)に示すように、y方向に延在する軸AYを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に逆方向に回転させる(傾ける)ことができる。このような動作を実現するためには、
図5に示す第3の配線130の他端134から一端133に向かって電流を流すとともに、第4の配線140の他端144から一端143に向かって電流を流せばよい。
【0066】
そして、第1~第4の配線110~140は、いずれも回路基板100に形成されていることから、第1~第4の配線110~140に流す電流の方向及び大きさを制御すれば、磁石構造体20と回路基板100を相対的に任意の方向に任意の角度で傾けることができる。例えば、回路基板100を所定の筐体などに固定すれば、磁石構造体20を任意の方向に任意の角度で傾けることができ、逆に、磁石構造体20を所定の筐体などに固定すれば、回路基板100を任意の方向に任意の角度で傾けることができる。
【0067】
さらに、第1及び第2の配線110,120の両方に吸引力F1又は反発力F2が作用する方向に電流を流せば、磁石構造体20と回路基板100のz方向におけるギャップを変化させることができる。この動作は、第3及び第4の配線130,140の両方に吸引力F1又は反発力F2が作用する方向に電流を流すことによっても実現できる。
【0068】
図11は、第5の配線150に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【0069】
図11に示すように、第5の配線150に電流I3又はI4が流れると、磁石構造体20と第5の配線150との間にはx方向のローレンツ力F3又はF4が働く。
【0070】
具体的には、第5の配線150に電流I3が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が下方向(-y方向)であることから、第5の配線150には右方向(+x方向)のローレンツ力F3が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が上方向(+y方向)であることから、第5の配線150には右方向(+x方向)のローレンツ力F3が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第5の配線150には右方向(+x方向)のローレンツ力F3が作用することになる。
【0071】
逆に、第5の配線150に電流I4が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が上方向(+y方向)であることから、第5の配線150には左方向(-x方向)のローレンツ力F4が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が下方向(-y方向)であることから、第5の配線150には左方向(-x方向)のローレンツ力F4が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第5の配線150には左方向(-x方向)のローレンツ力F4が作用することになる。
【0072】
したがって、電流I3又はI4を流すことにより、磁石構造体20と第5の配線150とのx方向における相対的な位置関係を変化させることができる。変化の速度は、電流I3又はI4の大きさによって制御することができる。
【0073】
図12は、第6の配線160に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【0074】
図12に示すように、第6の配線160に電流I5又はI6が流れると、磁石構造体20と第6の配線160との間にはy方向のローレンツ力F5又はF6が働く。
【0075】
具体的には、第6の配線160に電流I5が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が右方向(+x方向)であることから、第6の配線160には上方向(+y方向)のローレンツ力F5が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が左方向(-x方向)であることから、第6の配線160には上方向(+y方向)のローレンツ力F5が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第6の配線160には上方向(+y方向)のローレンツ力F5が作用することになる。
【0076】
逆に、第6の配線160に電流I6が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が左方向(-x方向)であることから、第6の配線160には下方向(-y方向)のローレンツ力F6が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が右方向(+x方向)であることから、第6の配線160には下方向(-y方向)のローレンツ力F6が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第6の配線160には下方向(-y方向)のローレンツ力F6が作用することになる。
【0077】
したがって、電流I5又はI6を流すことにより、磁石構造体20と第6の配線160とのy方向における相対的な位置関係を変化させることができる。変化の速度は、電流I5又はI6の大きさによって制御することができる。
【0078】
そして、第5の配線150と第6の配線160は、いずれも回路基板100に形成されていることから、電流I3~I6によって磁石構造体20と回路基板100の平面的な位置関係を変化させることができる。したがって、回路基板100を所定の筐体などに固定すれば、電流I3~I6によって磁石構造体20をXY平面に沿って駆動することができる。逆に、磁石構造体20を所定の筐体などに固定すれば、電流I3~I6によって回路基板100をXY平面に沿って駆動することができる。
【0079】
特に限定されるものではないが、本実施形態によるアクチュエータ10Aは、スマートフォンに組み込まれるカメラの手ぶれ補正用のアクチュエータとして使用することができる。この場合、磁石構造体20及び回路基板100のいずれか一方をスマートフォンの筐体に固定し、他方をカメラの光学レンズ又はイメージセンサに固定するとともに、スマートフォンに内蔵された加速度センサなどによって得られる手ぶれ信号を電流I1~I6に変換すれば、手ぶれの方向、角度及び大きさに応じて、これを相殺する方向に光学レンズ又はイメージセンサを駆動することができる。また、第1及び第2の配線110,120の両方(或いは、第3及び第4の配線130,140の両方)に吸引力F1又は反発力F2が作用する方向に電流を流すよう制御すれば、カメラのオートフォーカス機能を実現することも可能となる。
【0080】
図13は、磁石構造体20の製造方法を説明するための工程図である。
【0081】
まず、
図13(a)に示すように、ガラスなどからなる支持基板23上に磁石20aを形成する。磁石20aは、スパッタ法などにて作製した薄膜でもよく、めっき法や電析法などにて作製した厚膜でもよく、焼結磁石やボンド磁石などのバルク状磁石を接着したものでもよい。特に限定されるものではないが、磁石20aとしては磁気特性の観点から異方性ネオジム磁石を用いることが好ましい。磁化容易軸は厚み方向(z方向)である。磁石20aの厚さは、本実施形態によるアクチュエータ10Aが組み込まれる機器によって制限される。例えば、スマートフォンに組み込まれるカメラの手ぶれ補正用に光学レンズを駆動する用途においては、非常に薄型であることが求められるため、必然的に薄い磁石20aを使用する必要がある。このような用途においては、磁石20aの厚みは1mm以下、例えば500μm程度に制限される。磁石20aは酸化や加工歪などによって表面が劣化し、磁気特性が低下する可能性があるため、磁石の厚みを小さくする場合には、磁石表面に保護層を設けるなどの手段により、磁石の劣化を抑制する必要がある。
【0082】
次に、
図13(b)に示すように、磁石20aにスリットSLを形成することによって、それぞれ第1及び第2の磁石21,22となる複数のブロック21a,22aに分割する。スリットSLの目的は後述のレーザビームによる局所加熱を利用した交番着磁において、レーザビームによる熱の所望でない隣接した領域への拡散を抑制することであり、磁石20aの厚みが小さく支持基板への熱拡散が支配的であるなどによって、所望でない隣接した領域への熱拡散が生じない場合には、スリットSLは不要である。すなわち、スリットSLは支持基板に焼結磁石を接着した場合に有用である。スリットSLの形成方法としては、ダイシング法やワイヤ放電加工法などを用いることができる。スリットSLを形成する場合には、スリットSLの深さとしては、ブロック21aとブロック22aが完全に分離するよう、支持基板23の表層に達する深さとすることが好ましい。スリットSLを形成しない場合でも、後述のレーザビームによる局所加熱を利用した交番着磁において形成される磁化方向が反平行であるそれぞれの領域をブロック21a、ブロック21bと呼ぶことにする。ブロック21a,22aのサイズについては特に限定されないが、反磁界の影響を低減することによってより強い磁力を得るためには、できる限り小さいことが好ましい。しかしながら、上述の通り、磁石20aの表層部分は保磁力が低いため、磁石20aをスリットSLによってあまりにも細かく分割すると、逆に保磁力が低下してしまう。このような点を考慮すれば、ブロック21a,22aのサイズは磁石20aの厚みと同程度とすることが好ましい。つまり、アスペクト比を0.1~10程度とすることが好ましく、1程度とすることがより好ましい。例えば、磁石20aの厚みが500μm程度である場合、x方向及びy方向のサイズについても500μm程度とすればよい。これにより、磁石20aは500μm角の立方体であるブロック21a,22aに分割される。
【0083】
次に、
図13(c)に示すように、複数のブロック21a,22aをz方向に着磁する。着磁は、パルス磁場印加によってブロック21a,22aが磁気飽和するまで行うことが好ましい。
【0084】
次に、
図13(d)に示すように、第2の磁石22となるブロック22aに対して選択的にレーザビーム24を照射することによって局所的に加熱し、当該ブロック22aの保磁力を低下させる。レーザビーム24により与えられる熱は、第1の磁石21となるブロック21aにもある程度伝導するが、平面方向についてはスリットSLで分離されているため熱の伝導は少ない。また、支持基板23の材料として、ガラスのように焼結磁石よりも熱拡散率の低い材料を用いることにより、支持基板23を介した熱伝導についても最小限に抑えることができる。これにより、ブロック21aの保磁力を維持しつつ、ブロック22aの保磁力を選択的に低下させることができる。
【0085】
その後自然冷却させると、
図13(e)に示すように、ブロック21aからの漏洩磁束がブロック22aを通過し、この漏洩磁束によってブロック22aが逆方向に磁化される。これにより交番着磁が達成され、
図13(f)に示すように第1及び第2の磁石21,22が交互に配列された磁石構造体20を得ることができる。
【0086】
そして、作製した磁石構造体20の第1の平面S1が回路基板100の第2~第5の平面S2~S5と向かい合うよう、両者を揺動自在、且つ、平面方向に滑動自在に支持すれば、本実施形態によるアクチュエータ10Aが完成する。
【0087】
このように、本実施形態によるアクチュエータ10Aは、支持基板23に設けられた磁石構造体20と、回路基板100に設けられた平面的な第1~第6の配線110,120,130,140,150,160によって構成されていることから、非常に薄型でありながら、x軸及びy軸を中心とした回転並びに2次元的な動作が可能となる。
【0088】
図14は、第1の変形例による第1及び第2の配線110,120の構成を示す平面図である。
【0089】
図14に示す第1の変形例では、第1の配線110の他端114と第2の配線120の他端124が短絡されており、この部分に端子115が接続された構成を有している。これにより、第1の配線110の一端113及び第2の配線120の一端123から端子115へ電流を流せば、
図9(a)に示した動作を実現することができる。逆に、端子115から第1の配線110の一端113及び第2の配線120の一端123へ電流を流せば、
図9(b)に示した動作を実現することができる。さらに、端子115をオープン状態として第1及び第2の配線110,120に電流を流せば、磁石構造体20と回路基板100のz方向におけるギャップを変化させることができる。
【0090】
第1の変形例によれば、第1の配線110に流れる電流と第2の配線120に流れる電流を完全に独立制御することは難しくなるものの、端子数を削減することが可能となる。図示しないが、第3及び第4の配線130,140についても同様の変形が可能である。
【0091】
図15は、第2の変形例による第1及び第2の配線110,120の構成を示す平面図である。
【0092】
図15に示す第2の変形例では、第1の配線110の他端114と第2の配線120の他端124が短絡されているとともに、第2の配線120のミアンダ形状が
図4に示した形状に対してx方向に1ピッチずれた構成を有している。このため、第2の配線120に含まれる配線部分121は、
図4における配線部分121とは逆方向に第1の磁石21を周回し、第2の配線120に含まれる配線部分122は、
図4における配線部分122とは逆方向に第2の磁石22を周回する。尚、第1の変形例とは異なり、第1の配線110と第2の配線120の接続部分に端子は設けられていない。
【0093】
かかる構成により、第1の配線110の一端113から第2の配線120の一端123へ電流を流せば、
図9(a)に示した動作を実現することができる。逆に、第2の配線120の一端123から第1の配線110の一端113へ電流を流せば、
図9(b)に示した動作を実現することができる。第2の変形例によれば、磁石構造体20と回路基板100のz方向におけるギャップを変化させることはできないが、端子数をさらに削減することが可能となる。図示しないが、第3及び第4の配線130,140についても同様の変形が可能である。
【0094】
図16は、第3の変形例による第5の配線150の構成を示す平面図である。
【0095】
図16に示す第3の変形例では、第5の配線150が途中で切断されており、第1及び第3の領域31,33を覆う第1の部分150Aと、第2及び第4の領域32,34を覆う第2の部分150Bに分かれている。これにより、第1の部分150Aと第2の部分150Bには、個別に電流を流すことができる。
【0096】
そして、第1の部分150Aの一端154から他端156へ電流を流すとともに、第2の部分150Bの他端155から一端157へ電流を流せば、
図17(a)に示すように、磁石構造体20の第1及び第3の領域31,33に対しては右方向へのローレンツ力が作用し、磁石構造体20の第2及び第4の領域32,34に対しては左方向へのローレンツ力が作用する。このため、z方向に延在する軸AZを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に一方向に回転させることができる。
【0097】
一方、第1の部分150Aの他端156から一端154へ電流を流すとともに、第2の部分150Bの一端157から他端155へ電流を流せば、
図17(b)に示すように、磁石構造体20の第1及び第3の領域31,33に対しては左方向へのローレンツ力が作用し、磁石構造体20の第2及び第4の領域32,34に対しては右方向へのローレンツ力が作用する。このため、z方向に延在する軸AZを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に逆方向に回転させることができる。
【0098】
このように、第3の変形例によれば、z方向に延在する軸AZを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に回転させることが可能となる。もちろん、第1の部分150Aと第2の部分150Bに対して同方向に電流を流せば、磁石構造体20と回路基板100のx方向における相対的な位置関係を変化させることができる。図示しないが、第6の配線160についても同様の変形が可能である。
【0099】
<第2の実施形態>
図18は、本発明の第2の実施形態によるアクチュエータ10Bの主要部の構成を示す略断面図である。
【0100】
図18に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Bは、回路基板100上に設けられた配線層が3層構造を有している。具体的には、回路基板100の第2の平面S2には
図7に示した第6の配線160が形成され、第3の平面S3には
図19に示す第5の配線150が形成され、第4の平面S4には
図20に示す第1~第4の配線210,220,230,240が形成されている。その他の基本構成は第1の実施形態によるアクチュエータ10Aと同様であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0101】
図19に示すように、本実施形態においては、第5の配線150と同じ配線層に接続配線250が追加されている。接続配線250は、第5の配線150と干渉しない中央部分に設けられており、絶縁膜102を貫通して設けられたスルーホール導体251,252を介して上層に位置する第2及び第3の配線220,230に接続されている。
【0102】
図20は、第1~第4の配線210,220,230,240の構成を示す平面図である。
【0103】
図20に示すように、第1~第4の配線210,220,230,240は、それぞれ磁石構造体20の第1~第4の領域31~34を覆う位置に設けられている。第1~第4の配線210,220,230,240の一端211,221,231,241は、それぞれ端子を構成する。また、第1の配線210の他端212と第4の配線240の他端242は短絡されており、これにより一筆書き可能な1本の配線によって構成される。第2の配線220の他端222と第3の配線230の他端232は、スルーホール導体251、接続配線250及びスルーホール導体252を介して短絡されている。
【0104】
第1の配線210は、一端211から他端212に向かって電流を流すと、第1の磁石21上においては右回り(時計回り)に電流が流れ、第2の磁石22上においては左回り(反時計回り)に電流が流れるよう、第1の領域31を覆ってミアンダ状に形成されている。第2の配線220は、一端221から他端222に向かって電流を流すと、第1の磁石21上においては右回り(時計回り)に電流が流れ、第2の磁石22上においては左回り(反時計回り)に電流が流れるよう、第2の領域32を覆ってミアンダ状に形成されている。第3の配線230は、一端231から他端232に向かって電流を流すと、第1の磁石21上においては右回り(時計回り)に電流が流れ、第2の磁石22上においては左回り(反時計回り)に電流が流れるよう、第3の領域33を覆ってミアンダ状に形成されている。第4の配線240は、一端241から他端242に向かって電流を流すと、第1の磁石21上においては右回り(時計回り)に電流が流れ、第2の磁石22上においては左回り(反時計回り)に電流が流れるよう、第4の領域34を覆ってミアンダ状に形成されている。
【0105】
そして、第1の配線210の他端212と第4の配線240の他端242が短絡されていることから、第1の配線210の一端211から他端212に向かって電流を流すと、第4の配線240の他端242から一端241に向かって電流が流れることになる。このような電流を流すと、
図9(a)及び
図10(a)に示したように、第1の領域31に対しては吸引力F1が作用し、第4の領域34に対しては反発力F2が作用する。逆に、第4の配線240の一端241から第1の配線210の一端211に向かって電流を流すと、
図9(b)及び
図10(b)に示したように、第1の領域31に対しては反発力F2が作用し、第4の領域34に対しては吸引力F1が作用する。
【0106】
さらに、第2の配線220の他端222と第3の配線230の他端232は短絡されていることから、第2の配線220の一端221から他端222に向かって電流を流すと、第3の配線230の他端232から一端231に向かって電流が流れることになる。このような電流を流すと、
図9(b)及び
図10(a)に示したように、第2の領域32に対しては吸引力F1が作用し、第3の領域33に対しては反発力F2が作用する。逆に、第3の配線230の一端231から第2の配線220の一端221に向かって電流を流すと、
図9(a)及び
図10(b)に示したように、第2の領域32に対しては反発力F2が作用し、第3の領域33に対しては吸引力F1が作用する。
【0107】
したがって、第1~第4の配線210,220,230,240に流す電流の方向及び大きさに応じて、x方向に延在する軸AXを中心とした回転及びy方向に延在する軸AYを中心とした回転を自在に行うことが可能となる。つまり、回路基板100上に形成する配線層の層数を削減しつつ、第1の実施形態によるアクチュエータ10Aと同様の回転動作を実現することが可能となる。
【0108】
<第3の実施形態>
図21は、本発明の第3の実施形態によるアクチュエータ10Cの主要部の構成を示す略断面図である。
【0109】
図21に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Cは、回路基板100上に設けられた配線層が5層構造を有している。具体的には、絶縁膜104の表面である第6の平面S6に第7の配線170が形成され、第7の配線170が絶縁膜105で覆われている。その他の基本構成は第1の実施形態によるアクチュエータ10Aと同様であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0110】
図22は、第7の配線170の構成を示す平面図である。
【0111】
図22に示すように、第7の配線170は、
図14に示した第1及び第2の配線110,120から端子115が除去された構成を有している。このため、第7の配線170に流れる電流の方向は、一端171から他端172に向かう方向と、他端172から一端171に向かう方向の2種類となる。そして、第7の配線170の一端171から他端172に向かって電流を流せば、第1~第4の領域31~34のすべてに対して吸引力F1が作用し、第7の配線170の他端172から一端171に向かって電流を流せば、第1~第4の領域31~34のすべてに対して反発力F2が作用する。
【0112】
したがって、第7の配線170に流す電流の方向及び大きさに応じて、磁石構造体20と回路基板100のz方向におけるギャップを変化させることができる。このように、本実施形態においては、z方向に駆動するための第7の配線170を別途備えていることから、第1~第4の配線110,120,130,140に対しては、x軸及びy軸を中心とした回転(傾き)の制御だけを行えば足りる。つまり、x軸及びy軸を中心とした回転制御とギャップの制御を別々の電流によって実現できることから、制御がより容易となる。
【0113】
<第4の実施形態>
図23は、本発明の第4の実施形態によるアクチュエータ10Dの主要部の構成を示す略断面図である。
【0114】
図23に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Dは、回路基板100上に設けられた配線層が6層構造を有している。具体的には、絶縁膜105の表面である第7の平面S7に第8の配線180が形成され、第8の配線180が絶縁膜106で覆われている。その他の基本構成は第3の実施形態によるアクチュエータ10Cと同様であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0115】
図24は、第8の配線180の構成を示す平面図である。
【0116】
図24に示すように、第8の配線180は、
図6に示した第5の配線150と類似の構成を有しているが、第2及び第4の領域32,34を覆う部分のミアンダ形状が
図6に示した形状に対してx方向に1ピッチずれた構成を有している。このため、第8の配線180の一端181から他端182に向かって電流を流すと、第1及び第3の領域31,33を覆う部分においては、第1の磁石21上を下方向(-y方向)に電流が流れ、第2の磁石22上を上方向(+y方向)に電流が流れる一方、第2及び第4の領域32,34を覆う部分においては、第1の磁石21上を上方向(+y方向)に電流が流れ、第2の磁石22上を下方向(-y方向)に電流が流れることになる。
【0117】
したがって、第8の配線180に流す電流の方向及び大きさに応じて、z方向に延在する軸AZを中心として、磁石構造体20と回路基板100を相対的に回転させることが可能となる。このように、本実施形態においては、軸AZを中心として回転させるための第8の配線180を別途備えていることから、第5又は第6の配線150,160に対しては、XY平面に沿った駆動制御だけを行えば足りる。つまり、z軸を中心とした回転制御と2次元的な動作制御を別々の電流によって実現できることから、制御がより容易となる。
【0118】
尚、第8の配線180の構造については、
図24に示した構造に限らず、
図16に示した第5の配線150と同様の構造を採用しても構わない。
【0119】
<第5の実施形態>
図25は、本発明の第5の実施形態によるアクチュエータ10Eの主要部の構成を示す略断面図である。
【0120】
図25に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Eは、回路基板100上に設けられた配線層が2層構造を有しており、
図2に示した第1~第4の配線110,120,130,140及び絶縁膜103,104が削除されている。その他の基本構成は第1の実施形態によるアクチュエータ10Aと同様であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0121】
本実施形態においては、第5の配線150が
図16に示した構造を有しており、第6の配線160が
図7に示した構造を有している。これにより、本実施形態によるアクチュエータ10Eは、2次元的な動作と、軸AZを中心とした回転動作を行うことが可能である。本実施形態が例示するように、本発明においてx軸又はy軸を中心とした回転動作を行うための構成は必須でない。
【0122】
<第6の実施形態>
図26は、アクチュエータ10の使用例を示す模式図である。ここで、アクチュエータ10とは本発明によるアクチュエータを指し、上述した実施形態によるアクチュエータ10A~10Eのいずれかであっても構わない。
【0123】
図26に示す使用例では、アクチュエータ10を構成する磁石構造体20にイメージセンサ310が固定されている。回路基板100については、筐体などの支持体Bに固定されており、回路基板100と磁石構造体20との間には、ギャップGが形成されている。磁石構造体20とイメージセンサ310は、支持体Bに対してフレキシブルに支持されている。
【0124】
イメージセンサ310の上方には光学レンズ320が配置されている。光学レンズ320は、外部から入射される光Lをイメージセンサ310の表面310aに形成された光電変換素子に集光する役割を果たす。そして、イメージセンサ310の出力信号や、図示しない加速度センサの出力信号に基づいて手ぶれの発生を検知した場合、これを相殺するための電流を回路基板100に供給すれば、イメージセンサ310の位置や角度を変化させることによって手ぶれの影響をキャンセルすることが可能となる。
【0125】
ここで、手ぶれがx軸又はy軸を中心とした傾き成分を有していれば、例えば第1~第4の配線110,120,130,140に所定の電流を流すことによって、x軸又はy軸を中心としてイメージセンサ310を傾けることにより、当該成分の影響をキャンセルすることができる。また、手ぶれがz軸を中心とした回転成分を有していれば、例えば第8の配線180に所定の電流を流すことによって、z軸を中心としてイメージセンサ310を回転させることにより、当該成分の影響をキャンセルすることができる。さらに、手ぶれがxy平面に沿ったシフト成分を有していれば、例えば第5及び第6の配線150,160に所定の電流を流すことによって、x方向及びy軸方向にイメージセンサ310を2次元的に駆動することにより、当該成分の影響をキャンセルすることができる。
【0126】
また、例えば第7の配線170に所定の電流を流すことによって、ギャップGの大きさを変化させることにより、オートフォーカス動作を行うことも可能である。
【0127】
このように、アクチュエータ10をイメージセンサ310に固定すれば、光Lの光路と干渉することなく、イメージセンサ310を任意の方向及び角度に駆動することが可能となる。尚、
図26に示す例とは逆に、磁石構造体20を支持体Bに固定し、回路基板100をイメージセンサ310に固定しても構わない。
【0128】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0129】
例えば、上記実施形態では、第1及び第2の磁石21,22の全てに各配線の一部が割り当てられているが、本発明においてこのような構成とすることは必須でない。
【符号の説明】
【0130】
10,10A~10E アクチュエータ
20 磁石構造体
20a バルク状の磁石
21 第1の磁石
22 第2の磁石
21a,22a ブロック
23 支持基板
24 レーザビーム
31 第1の領域
32 第2の領域
33 第3の領域
34 第4の領域
100 回路基板
101~106 絶縁膜
110,210 第1の配線
120,220 第2の配線
130,230 第3の配線
140,240 第4の配線
150 第5の配線
160 第6の配線
170 第7の配線
180 第8の配線
111,112,121,122,131,132,141,142,151,152,161,162 配線部分
113,123,133,143,154,156,164,171,181,211,221,231,241 一端
114,124,134,144,155,157,165,172,182,212,222,232,242 他端
115 端子
150A 第1の部分
150B 第2の部分
153 接続部分
163 接続部分
250 接続配線
251,252 スルーホール導体
310 イメージセンサ
310a イメージセンサの表面
320 光学レンズ
B 支持体
F1 吸引力
F2 反発力
F3~F6 ローレンツ力
G ギャップ
I1~I6 電流
L 光
Lx,Ly 配列部分
S1~S7 平面
SL スリット