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特許7045674照明光調整システム、照明光調整方法、及び、照明光調整プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】照明光調整システム、照明光調整方法、及び、照明光調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/155 20200101AFI20220325BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20220325BHJP
   H05B 45/20 20200101ALI20220325BHJP
   H05B 47/19 20200101ALI20220325BHJP
   H05B 47/18 20200101ALI20220325BHJP
   A61B 3/06 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/105
H05B45/20
H05B47/19
H05B47/18
A61B3/06
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020525276
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013580
(87)【国際公開番号】W WO2019244431
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2018115719
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515109779
【氏名又は名称】イリスコミュニケーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519078857
【氏名又は名称】株式会社NiCO
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅文
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-181874(JP,A)
【文献】特表2017-527087(JP,A)
【文献】特開2013-041718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/155
H05B 47/105
H05B 45/20
H05B 47/19
H05B 47/18
A61B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の色覚特性を記録する色覚特性記録部と、
前記色覚特性記録部に記録されている前記色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する波長特性変更部と、
を備え
前記色覚特性記録部は、前記色覚特性として、前記利用者の色覚異常の種類と度合いを示す情報を記録す
照明光調整システム。
【請求項2】
利用者の色覚特性を記録する色覚特性記録部と、
前記色覚特性記録部に記録されている前記色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する波長特性変更部と、
を備え、
前記色覚特性記録部は、前記色覚特性として、前記利用者の特定の色の光に対する視覚感度を記録する、
照明光調整システム。
【請求項3】
利用者の色覚特性を記録する色覚特性記録部と、
前記色覚特性記録部に記録されている前記色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する波長特性変更部と、
を備え、
前記色覚特性記録部は、前記色覚特性として、前記利用者の互いに異なる複数の色の光に対する視覚感度の比又は差を記録する、
照明光調整システム。
【請求項4】
前記利用者を特定する利用者特定手段と、
前記利用者特定手段によって特定された利用者の色覚特性を前記色覚特性記録部から抽出する色覚特性抽出部と、
を更に備え、
前記波長特性変更部は、前記色覚特性抽出部によって抽出された色覚特性に基づいて、前記照明光の波長特性を変更する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の照明光調整システム。
【請求項5】
前記利用者を識別する識別情報を記録し、前記利用者特定手段と通信可能な携帯端末機器を備え、
前記利用者特定手段は、前記携帯端末機器から受信した前記識別情報に基づいて、前記利用者を特定する、
請求項に記載の照明光調整システム。
【請求項6】
前記利用者特定手段は、
前記利用者を撮影して撮影画像を生成する撮影部と、
前記撮影画像内の前記利用者の顔を認識して、該利用者を特定する顔認識部と、
を有する、
請求項に記載の照明光調整システム。
【請求項7】
前記利用者による情報の入力を受け付ける情報入力部と、
を更に備え、
前記利用者特定手段は、前記情報入力部に入力された情報に基づいて、前記利用者を特定する、
請求項に記載の照明光調整システム。
【請求項8】
前記波長特性変更部は、前記色覚特性に基づいて、前記照明光のうち、前記特定の色の光の強度を変更する、
請求項に記載の照明光調整システム。
【請求項9】
前記波長特性変更部は、前記色覚特性に基づいて、前記照明光のうち、前記複数の色の少なくとも一つの色の光の強度を変更する、
請求項に記載の照明光調整システム。
【請求項10】
前記波長特性変更部は、
透過する光又は反射する光の波長特性を変更可能な光学フィルタ部と、
前記色覚特性に基づいて前記光学フィルタ部の動作を制御する制御部と、
を有する、
請求項1から請求項の何れか一項に記載の照明光調整システム。
【請求項11】
前記波長特性変更部は、照明光を放射する光源部を有する、
請求項1から請求項10の何れか一項に記載の照明光調整システム。
【請求項12】
前記光源部は、互いに発光波長の異なる複数の光源を有し、
前記波長特性変更部は、前記複数の光源を個別に制御することによって前記照明光の波長特性を変更する、
請求項11に記載の照明光調整システム。
【請求項13】
利用者の色覚特性を記録する工程と、
前記記録された色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する工程と、
前記色覚特性として、前記利用者の色覚異常の種類と度合いを示す情報を記録する工程と、
を含む照明光調整方法。
【請求項14】
利用者の色覚特性を記録する工程と、
前記記録された色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する工程と、
前記色覚特性として、前記利用者の特定の色の光に対する視覚感度を記録する工程と、
を含む照明光調整方法。
【請求項15】
利用者の色覚特性を記録する工程と、
前記記録された色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する工程と、
前記色覚特性として、前記利用者の互いに異なる複数の色の光に対する視覚感度の比又は差を記録する工程と、
を含む照明光調整方法。
【請求項16】
前記利用者を特定する工程と、
前記特定された利用者の色覚特性を抽出する工程と、
を含み、
前記抽出された色覚特性に基づいて、前記照明光の波長特性を変更する、
請求項13から請求項15の何れか一項に記載の照明光調整方法。
【請求項17】
前記利用者を識別する識別情報を記録した携帯端末機器と通信を確立する工程を含み、
前記携帯端末機器から受信した前記識別情報に基づいて、前記利用者を特定する、
請求項16に記載の照明光調整方法。
【請求項18】
前記利用者を撮影して撮影画像を生成する工程と、
前記撮影画像内の前記利用者の顔を認識して、該利用者を特定する工程と、
を含む、
請求項16に記載の照明光調整方法。
【請求項19】
前記利用者による情報の入力を受け付ける工程を含み、
前記入力された情報に基づいて、前記利用者を特定する、
請求項16に記載の照明光調整方法。
【請求項20】
前記色覚特性に基づいて、前記照明光のうち、前記特定の色の光の強度を変更する工程を含む、
請求項14に記載の照明光調整方法。
【請求項21】
前記色覚特性に基づいて、前記照明光のうち、前記複数の色の少なくとも一つの色の光の強度を変更する工程を含む、
請求項15に記載の照明光調整方法。
【請求項22】
前記色覚特性に基づいて、透過する光又は反射する光の波長特性を変更可能な光学フィルタ部の動作を制御する工程を含む、
請求項13から請求項21の何れか一項に記載の照明光調整方法。
【請求項23】
互いに発光波長の異なる複数の光源を個別に制御することによって前記照明光の波長特性を変更する工程を含む、
請求項13から請求項22の何れか一項に記載の照明光調整方法。
【請求項24】
請求項13から23の何れか一項に記載の照明光調整方法をコンピュータに実行させるための照明光調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光調整システム、照明光調整方法、及び、照明光調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の視覚に関する障害として、色覚異常が知られている。色覚異常には、例えば、特定の波長帯域の光に対する感度が低い色盲や色弱、光をまぶしく感じる光過敏症が含まれる。これらの色覚異常は、患者の網膜上の3つの錐体細胞(S錐体細胞、M錐体細胞、L錐体細胞)の感度が、健常者と比較して高い又は低いことによって発生する。S錐体細胞、M錐体細胞、L錐体細胞はそれぞれ、青色、緑色、赤色の光に対して反応する細胞である。色覚異常を矯正する方法として、光の透過特性が患者に合わせて調整された光学素子(カラーレンズ)を使用する方法が知られている。患者は、特性が調整されたカラーレンズを有する眼鏡をかけることにより、色覚異常を矯正することができる。また、屋内に照明光の波長特性を変更可能な照明装置を設置し、利用者が自分の色覚特性や好みに応じて照明光の波長特性を変更することにより、利用者に適した照明環境を得ることができる。
【0003】
照明光の波長特性を変更可能な照明システムとして、例えば、特開2010-262806号公報(以下、「特許文献1」と記す。)に記載の照明システムがある。特許文献1に記載の照明システムは、駆動電流に応じて輝度を変更可能な光源と、駆動電圧に応じて透過光の波長を変更可能な光学素子を備えている。利用者は、駆動電流と駆動電圧を変更することにより、光源から放射され、光学素子を透過した照明光の明るさや波長特性を、好みに応じて変更可能である。
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に記載の照明システムでは、照明光の波長特性を変更するために、利用者が、光源の駆動電流と光学素子の駆動電圧を任意に指定している。そのため、利用者が色盲や色弱を有している場合、この利用者の好みの照明光の波長特性と、色覚特性に適した照明光の波長特性とが一致していない可能性がある。この場合、任意に指定された照明光の波長特性が利用者の視覚特性に適したものになっておらず、利用者が色の違いを認識できなくなる可能性がある。また、特許文献1に記載の照明システムでは、利用者が手動で波長特性を変更するため、照明光の波長特性を変更可能な環境が複数ある場合、例えば、リビング、寝室、ダイニングなどの照明光や、テレビやパソコンのモニタ等の波長特性が変更可能である場合、全ての照明光の波長特性を一致させることが難しかった。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、利用者の視覚特性に適した照明環境が得られる照明光調整システム、照明光調整方法、及び、照明光調整プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る照明光調整システムは、利用者の色覚特性を記録する色覚特性記録部と、色覚特性記録部に記録されている色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する波長特性変更部と、を備える。
【0007】
本発明の一実施形態に係る照明光調整方法は、利用者の色覚特性を記録する工程と、前記記録された色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する工程と、を含む。
【0008】
本発明の一実施形態に係る照明光調整プログラムは、利用者の色覚特性を記録する工程と、記録された色覚特性に基づいて、照明光の波長特性を変更する工程と、を含む方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、利用者の視覚特性に適した照明環境が得られる照明光調整システム、照明光調整方法、及び、照明光調整プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る照明光調整システムの概略図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る色覚特性の測定方法のフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る利用者の青色の光に対する色覚の検査方法のフローチャートである。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る比較画像を示す図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る利用者の赤色及び緑色の光に対する色覚の検査方法のフローチャートである。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る検査画像を示す図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係る検査画像の赤色成分の変更範囲を示す図である。
図8図8は、本発明の第1実施形態に係る検査画像を示す図である。
図9図9は、本発明の第1実施形態に係る検査画像の緑色成分の変更範囲を示す図である。
図10図10は、本発明の第1実施形態の変形例に係る照明光調整システムの概略図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係る照明光調整システムの概略図である。
図12図12は、本発明の第3実施形態に係る照明光調整システムの概略図である。
図13図13は、本発明の第4実施形態に係る照明光調整システムの概略図である。
図14図14は、本発明の第4実施形態に係る照明装置の外観図及び可変フィルタユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態における照明光調整システム1の概略図を示す。照明光調整システム1は、情報処理装置100、携帯端末装置200、照明装置300を備える。
【0013】
情報処理装置100は、例えば、パソコンやサーバ等の汎用の情報処理装置、或いは、照明光調整システム1のための専用の装置である。情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM103(Read Only Memory)、プログラム104、ストレージ105、第1通信インタフェース106及び第2通信インタフェース107を備えている。CPU101は、ROM103に記憶されるプログラム104を実行する。RAM102は、CPU101がプログラム104を実行する際に、一時的なデータの記憶領域として使用される。プログラム104は、情報処理装置100を制御するためのアプリケーションや、OS(Operating System)等を含んでいる。ストレージ105は、後述するスペクトル情報などの様々なデータを保存する。ストレージ105は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、或いは、情報処理装置100に着脱可能な可搬記録媒体である。第1通信インタフェース106は、携帯端末装置200との無線又は有線による通信に使用される。第2通信インタフェース107は、照明装置300との無線又は有線による通信に使用される。なお、情報処理装置100は、一つの通信インタフェースを使用して、携帯端末装置200と照明装置300の両方との通信を行ってもよい。
【0014】
携帯端末装置200は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パソコンなどの利用者が携帯可能な端末装置である。携帯端末装置200は、CPU201、RAM202、ROM203、プログラム204、ストレージ205、ディスプレイ206、ユーザインタフェース207及び通信インタフェース208を備えている。CPU201は、ROM203に記憶されるプログラム204を実行する。RAM202は、CPU201がプログラム204を実行する際に、一時的なデータの記憶領域として使用される。プログラム204は、携帯端末機器200を制御するためのアプリケーションや、OS(Operating System)等を含んでいる。ストレージ205は、後述する色覚情報などの様々なデータを保存する。ストレージ205は、例えば、HDDやSSD、或いは、携帯端末装置200に着脱可能な可搬記録媒体である。ディスプレイ206は、実行されたプログラム204に応じた各種情報を表示する。ユーザインタフェース207は、利用者からの入力操作を受け付ける。通信インタフェース208は、情報処理装置100との無線又は有線による通信に使用される。
【0015】
携帯端末装置200のストレージ205には、携帯端末装置200の利用者の色覚特性を示す色覚情報が記録されている。色覚特性は、携帯端末装置200或いは他の測定機器を用いて測定されたものである。色覚情報は、例えば、色盲や色弱、アーレンシンドロームなどの色覚異常の種類とその度合いを示す情報である。具体的には、色覚情報は、特定の色の光に対する視覚感度を示す情報、又は、互いに異なる複数の色の光に対する視覚感度の比又は差を示す情報である。なお、ストレージ205に記録されている色覚情報は、これらの全ての情報を含んでいる必要はなく、これらの情報のうちの少なくとも一つを含んでいればよい。
【0016】
照明装置300は、例えば、照明器具、液晶ディスプレイ又はCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなど表示装置、或いは、投射型の表示装置である。照明装置300は、コントローラ301、光源ユニット302、スペクトル調整ユニット303及び通信インタフェース304を備えている。光源ユニット302は、例えば、LED、有機EL、白熱灯、蛍光灯などの発光機器を有する。照明装置300が液晶ディスプレイである場合、光源ユニット302は、例えば、光源と光源から放射された照明光を導光する導光板、或いは、照明光を拡散する拡散板を備えている。スペクトル調整ユニット303は、光源ユニット302から放射された照明光のスペクトル(波長特性)を変更する。通信インタフェース304は、情報処理装置100との無線又は有線による通信に使用される。コントローラ301は、光源ユニット302及びスペクトル調整ユニット303の動作を制御することによって、照明光の明るさやスペクトルを変更する。
【0017】
照明装置300のスペクトル調整ユニット303は、透過又は反射する照明光の波長帯域を変更可能である。スペクトル調整ユニット303は、例えば、透過型或いは反射型の空間光変調素子と、特定の波長帯域の光を透過させるカラーフィルタを有する。空間光変調素子は、例えば、液晶パネルやDMD(Digital Mirror Device)である。スペクトル調整ユニット303は、複数種類のカラーフィルタを照明光の光路上に挿抜することによって、照明光のスペクトルを変更するものであってもよい。
【0018】
光源ユニット302は、スペクトル調整ユニット303を兼ねていてもよい。例えば、光源ユニット302が、互いに発光波長が異なる複数の光源を有している場合、各光源の光強度を個別に制御することにより、照明光のスペクトルを変更可能である。
【0019】
次に、利用者の色覚特性の測定方法の一例について説明する。色覚特性は、携帯端末機器200を用いて測定される。図2は、本実施形態における色覚特性の測定方法のフローチャートを示す。図2のフローチャートに示される色調整方法は、CPU201がプログラム204を実行することによって開始される。
【0020】
処理ステップS100では、主に利用者の青色の光に対する色覚特性が測定される。処理ステップS200では、利用者の赤色と緑色の光に対する色覚特性が測定される。以下では、各処理ステップS100、S200について詳細に説明する。
【0021】
(処理ステップS100)
図3は、処理ステップS100の詳細を示すフローチャートである。人の色覚には個人差があり、波長帯域によって光に対する感度にバラつきがある。特定の波長帯域(特に青色)の光に対する感度が高い症状は、光過敏症、或いは、アーレンシンドロームと呼ばれる。アーレンシンドロームは、青色の光に対するS錐体細胞の感度が異常に高いことが原因と考えられている。処理ステップS100では、利用者の青色の光に対する色覚、及び、青色の光に対する色覚と青以外の色の光に対する色覚の比(或いは、差)が検査される。
【0022】
図3の処理ステップS101)
処理ステップS101では、2つの比較画像10A、10Bがディスプレイ206に表示される。各比較画像10A、10Bは互いに異なる色を有している。図4は、ディスプレイ206に表示される比較画像10A及び10Bの一例を示す図である。この例では、矩形状の比較画像10B内に、円形状の比較画像10Aが表示される。なお、比較画像10A、10Bは、2つの画像を同時に視認できるように近接して表示されていればよく、その大きさや形状は、図4に示す例に限定されない。例えば、比較画像10Aは、矩形状の図形、或いは、数字やアルファベット等の文字であってもよい。或いは、比較画像10A、10Bは何れも矩形状を有しており、並んで表示されていてもよい。
【0023】
各比較画像10A、10Bの色をRGB色空間における色成分(R、G、B)で表すと、比較画像10Aの色成分は(R1、0、B1)、比較画像10Bの色成分は(0、G1、B1)である。すなわち、比較画像10Aと比較画像10Bは、青色成分の大きさ(スペクトル強度)が同じである。また、比較画像10Aの赤色成分R1と、比較画像10Bの緑色成分G1は、同じ大きさであることが望ましい。
【0024】
また、各比較画像10A、10Bの各色成分の大きさは、個別に変更可能である。例えば、各比較画像の各色成分が8ビット(256階調)のR画像信号、G画像信号、B画像信号で表されている場合、各比較画像の各色成分の大きさは0から255の間で変更可能である。
【0025】
図3の処理ステップS102)
処理ステップS102では、処理ステップS101で表示された比較画像10A、10Bを用いて、利用者にとって最適な青色成分の大きさが検査される。詳しくは、利用者は、ディスプレイ206に表示されている比較画像10A、10Bを見ながら、比較画像10Aの青色成分B1と比較画像10Bの青色成分B1を、等しい大きさに維持したまま同時に変更する。この時、比較画像10Aの赤色成分R1及び比較画像10Bの緑色成分G1は、例えば、設定可能な値の中央値(8ビットの場合、128付近)に固定されている。利用者は、青色成分B1を変更しながら、比較画像10Aと比較画像10Bの色の違いを最も明瞭に認識(視認)可能な青色成分B1を決定する。この決定された青色成分B1は、測定値Bmとしてストレージに記録される。
【0026】
利用者の色覚の特性や、利用者による明瞭さの判断基準によっては、比較画像10Aと比較画像10Bの色の違いを最も明瞭に認識できる条件(青色成分の測定値Bm)が複数存在する場合がある。この場合、例えば、利用者が最も明瞭であると認識した複数の青色成分B1の平均値或いは中央値を測定値Bmとしてもよい。或いは、利用者が比較画像10Aと比較画像10Bの色の違いを明瞭に識別できる複数の青色成分B1のうち、利用者の好み(色の好み、見易さ等)に基づき何れか一つの青色成分B1が測定値Bmとして選択されてもよい。
【0027】
利用者がアーレンシンドロームを有している場合、比較画像10A、10Bの青色成分B1が大きいと、利用者は比較画像10A、10Bを眩しいと感じて、比較画像10Aと比較画像10Bの色の違いを識別し難くなる。この場合、測定値Bmは、設定可能な青色成分の最大値Bmax(8ビットの場合、255)よりも小さい値となる。一方、利用者がアーレンシンドロームを有していない場合、比較画像10Aと比較画像10Bの青色成分B1が大きくても、利用者は眩しいとは感じ難い。また、青色成分B1が大きくなると、利用者は、各比較画像を明るいと感じ、比較画像10Aと比較画像10Bの色の違いを識別し易くなる場合もある。そのため、アーレンシンドロームを有していない利用者の測定値Bmは、通常、アーレンシンドロームを有している利用者の測定値Bmよりも大きくなる。
【0028】
図3の処理ステップS103)
処理ステップS103では、比較画像10A、10Bを用いて、利用者にとって最適な青色成分と赤色成分及び緑色成分の比Fが検査される。詳しくは、利用者は、ディスプレイ206に表示されている比較画像10A、10Bを見ている状態で、比較画像10Aの赤色成分R1の大きさと比較画像10Bの緑色成分G1の大きさを、略同じ値を維持したまま同時に変更する。この時、比較画像10A及び比較画像10Bの青色成分B1は、測定値Bmに固定されている。なお、比較画像10Aの赤色成分R1の大きさと比較画像10Bの緑色成分G1の大きさは、厳密に同じ値である必要はない。
【0029】
処理ステップS103では、利用者が比較画像10Aと比較画像10Bの色の違いを最も明瞭に識別できる比較画像10Aの赤色成分Rc及び比較画像10Bの緑色成分Gcが測定される。赤色成分Rc及び緑色成分Gcが測定されると、測定値Id及び比Fが、次の式1によって計算され、ストレージ205に記録される。
(式1)
Id=(Rc+Gc)/2
F=Id/Bm
ここで、測定値Idは、赤色成分Rcと緑色成分Gcの平均値である。なお、本処理ステップS103において、赤色成分Rcと緑色成分Gcは略同じ値に維持されているため、赤色成分Rcと緑色成分Gcの何れか一方を測定値Idとしてもよい。比Fは、赤色成分Rc及び緑色成分Gcと青色成分の測定値Bmとの比である。
【0030】
利用者がアーレンシンドロームを有している場合、利用者の赤色や緑色の光に対する感度は、通常、青色の光に対する感度に比べて低い。この場合、測定値Idは、測定値Bmよりも大きくなり、比Fは1よりも大きくなる。
【0031】
(処理ステップS200)
次に、処理ステップS200について詳細に説明する。図5は、処理ステップS200の詳細を示すフローチャートである。処理ステップS200では、利用者の赤色と緑色の光に対する色覚が検査される。
【0032】
図5の処理ステップS201)
処理ステップS201では、2つの検査画像20A、20Bがディスプレイ206に表示される。図6は、ディスプレイ206に表示される検査画像20A及び20Bの一例を示す図である。この例では、矩形状の検査画像20B内に、円環状の検査画像20Aが表示される。なお、検査画像20A、20Bは、2つの画像を同時に視認できるように近接して表示されていればよく、その大きさや形状は、図6に示す例に限定されない。例えば、検査画像20Aは、矩形状を有してもよく、或いは、数字やアルファベット等の文字を表してもよい。或いは、検査画像20A、20Bは何れも矩形状を有しており、並んで表示されてもよい。
【0033】
検査画像20Aの色成分は(Rv、G2、B2)、検査画像20Bの色成分は(R2、G2、B2)である。すなわち、検査画像20Aと検査画像20Bは、同じ大きさの緑色成分G2、及び、同じ大きさの青色成分B2を有している。また、赤色成分R2及び緑色成分G2は同じ大きさである。赤色成分R2及び緑色成分G2は、例えば、設定可能な値の中央値(8ビットの場合、128付近)、或いは、処理ステップS103で測定されたRc及びGcである。また、青色成分B2は、処理ステップS102で測定された測定値Bm、或いは、ゼロである。なお、各色成分R2、G2、B2は、上記の値に限定されない。利用者が見やすいように上記の値から適宜変更されてもよい。
【0034】
図5の処理ステップS202)
処理ステップS202では、処理ステップS201で表示された検査画像20A、20Bを用いて、利用者の赤色の光に対する色覚が検査される。詳しくは、利用者は、ディスプレイ206に表示されている検査画像20A、20Bを見ている状態で、検査画像20Aの赤色成分Rvの大きさを変更する。なお、検査画像20Aの赤色成分Rvの初期値は、R2に設定されている。そのため、利用者が赤色成分Rvの大きさを変える前は、検査画像20Aと検査画像20Bは同一の色を有している。そして、利用者が検査画像20Aと検査画像20Bの色の違いを識別可能となる検査画像20Aの赤色成分Rvの大きさRs1が測定される。このRs1とR2に基づいて、差分ΔRが、次の式2によって計算されてストレージ205に記録される。
(式2)
ΔR=|R2-Rs1|
【0035】
なお、処理ステップS202では、赤色成分Rvは、初期値R2よりも大きくなるように変更されてもよく、初期値R2よりも小さくなるように変更されてもよい。また、差分ΔRは、赤色成分Rvが初期値R2よりも大きくなるように変更された場合と、赤色成分Rvが初期値R2よりも小さくなるように変更された場合の両方において測定され、その平均値が差分ΔRとして記録されてもよい。
【0036】
更に、処理ステップS202では、赤色成分Rvと共に、赤色成分R2及び緑色成分G2が等しい値を維持した状態で変更されてもよい。この場合、赤色成分R2(緑色成分G2)毎に、利用者が検査画像20Aと検査画像20Bの色の違いを識別可能となる検査画像20Aの赤色成分Rvの大きさRs1が測定される。また、各赤色成分Rs1に対して、差分ΔRが計算される。この複数の差分ΔRの代表値(平均値、中央値又は最頻値)が、差分ΔRとして記録されてもよい。
【0037】
図7は、検査画像20Aの赤色成分Rvと、検査画像20Bの赤色成分R2が変更される範囲を示す図である。図7の横軸は検査画像20Aの赤色成分Rvを表し、縦軸は検査画像20Bの赤色成分R2を表す。なお、処理ステップS202では、赤色成分R2と検査画像20A及び検査画像20Bの緑色成分G2は等しい値が維持されるため、図7の縦軸は、緑色成分G2をも表す。また、図7では、各色成分が8ビット(256階調)で表されている。
【0038】
図7において、R2=Rvの直線上では、検査画像20Aと検査画像20Bは何れも、色成分(R2、G2、B2)を有する。そのため、R2=Rvのとき、利用者は、その色覚特性に拘わらず、検査画像20Aと検査画像20Bの色の違いを識別することはできない。
【0039】
処理ステップS202において、検査画像20Aの赤色成分Rvが変更されると、図7における座標は、R2=Rvの直線上から左右に(横軸に沿って)移動する。このとき、検査画像20Aの赤色成分は変化するが、検査画像20Bは何れの色成分も変化しない。利用者が検査画像20Aと検査画像20Bの色の違いを識別可能となったときの、赤色成分Rvの変化量が差分ΔRである。差分ΔRは、図7に示すように、各赤色成分R2(緑色成分G2)に対して、R2=Rvの直線の左右それぞれに、差分ΔR1、ΔR2として測定される。この2つの差分ΔR1、ΔR2の何れか一方が差分ΔRとして記録されてもよく、2つの差分ΔR1、ΔR2の平均値が差分ΔRとして記録されてもよい。
【0040】
また、処理ステップS202では赤色成分R2(及び緑色成分G2)も変更されてもよい。この場合、赤色成分R2毎に差分ΔR(R2)が測定される。ここで、差分ΔR(R2)は、例えば、R2=Rvの直線の左右に表れる差分ΔR1(R2)、ΔR2(R2)の平均値である。この場合、複数の差分ΔR(R2)の代表値が差分ΔRとして記録される。
【0041】
なお、処理ステップS202において、赤色成分Rv及び赤色成分R2(緑色成分G2)は、1階調毎に変更される必要はない。例えば、5階調毎や10階調毎に変更されてもよい。また、赤色成分R2は、変更可能な全ての範囲(8ビットの場合、0から255の範囲)で変更される必要はない。例えば、赤色成分R2の値が小さくなると、検査画像20A及び検査画像20Bが明度の低い画像となり、差分ΔRを正確に測定できなくなる虞がある。そのため、赤色成分R2は、例えば、初期値(8ビットの場合、128付近、或いは、Rc)以上の範囲でのみ変更されてもよい。或いは、処理ステップS202において、赤色成分R2は、変更されずに、初期値のまま固定されていてもよい。
【0042】
図5の処理ステップS203)
処理ステップS203では、2つの検査画像20C、20Dがディスプレイ206に表示される。図8は、ディスプレイ206に表示される検査画像20C及び20Dの一例を示す図である。この例では、矩形状の検査画像20D内に、円環状の検査画像20Cが表示される。なお、検査画像20C、20Dは、2つの画像を同時に視認できるように近接して表示されていればよく、その大きさや形状は、図8に示す例に限定されない。例えば、検査画像20Cは、矩形状を有してもよく、或いは、数字やアルファベット等の文字を表してもよい。或いは、検査画像20C、20Dは何れも矩形状を有しており、並んで表示されてもよい。
【0043】
検査画像20Cの色成分は(R2、Gv、B2)、検査画像20Dの色成分は(R2、G2、B2)である。すなわち、検査画像20Cと検査画像20Dは、同じ大きさの赤色成分R2、及び、同じ大きさの青色成分B2を有している。また、赤色成分R2及び緑色成分G2は同じ大きさである。赤色成分R2及び緑色成分G2は、例えば、設定可能な値の中央値(8ビットの場合、128付近)、或いは、処理ステップS103で測定されたRc及びGcである。また、青色成分B2は、処理ステップS102で測定された測定値Bm、或いは、ゼロである。なお、各色成分R2、G2、B2は、上記の値に限定されない。利用者が見やすいように上記の値から適宜変更されてもよい。
【0044】
図6の処理ステップS204)
処理ステップS204では、処理ステップS203で表示された検査画像20C、20Dを用いて、利用者の緑色の光に対する色覚が検査される。詳しくは、利用者は、ディスプレイ206に表示されている検査画像20C、20Dを見ている状態で、検査画像20Cの緑色成分Gvの大きさを変更する。なお、検査画像20Cの緑色成分Gvの初期値は、G2に設定されている。そのため、利用者が緑色成分Gvの大きさを変える前は、検査画像20Cと検査画像20Dは同一の色を有している。そして、利用者が検査画像20Cと検査画像20Dの色の違いを識別可能となる検査画像20Cの緑色成分Gvの大きさGs1が測定される。このGs1とG2に基づいて、差分ΔGが、次の式3によって計算されてストレージ205に記録される。
(式3)
ΔG=|G2-Gs1|
【0045】
なお、処理ステップS204では、緑色成分Gvは、初期値G2よりも大きくなるように変更されてもよく、初期値G2よりも小さくなるように変更されてもよい。また、差分ΔGは、緑色成分Gvが初期値G2よりも大きくなるように変更された場合と、緑色成分Gvが初期値G2よりも小さくなるように変更された場合の両方において計算され、その平均値が差分ΔGとして記録されてもよい。
【0046】
更に、処理ステップS204では、緑色成分Gvと共に、赤色成分R2及び緑色成分G2が等しい値を維持した状態で変更されてもよい。この場合、緑色成分G2(赤色成分R2)毎に、利用者が検査画像20Cと検査画像20Dの色の違いを識別可能となる検査画像20Cの緑色成分Gvの大きさGs1が測定される。また、各緑色成分Gs1に対して、差分ΔGが計算される。この複数の差分ΔGの代表値(平均値、中央値又は最頻値)が、差分ΔGとして記録されてもよい。
【0047】
図9は、検査画像20Cの緑色成分Gvと、検査画像20Dの緑色成分G2が変更される範囲を示す図である。図9の縦軸は検査画像20Cの緑色成分Gvを表し、縦軸は検査画像20Dの緑色成分G2を表す。なお、処理ステップS204では、緑色成分G2と検査画像20C及び検査画像20Dの赤色成分R2は等しい値が維持されるため、図9の横軸は、赤色成分R2をも表す。また、図9では、各色成分が8ビット(256階調)で表されている。
【0048】
図9において、G2=Gvの直線上では、検査画像20Cと検査画像20Dは何れも、色成分(R2、G2、B2)を有する。そのため、G2=Gvのとき、利用者は、その色覚特性に拘わらず、検査画像20Cと検査画像20Dの色の違いを識別することはできない。
【0049】
処理ステップS204において、検査画像20Cの緑色成分Gvが変更されると、図9における座標は、G2=Gvの直線上から上下に(縦軸に沿って)移動する。このとき、検査画像20Cの緑色成分は変化するが、検査画像20Dは何れの色成分も変化しない。利用者が検査画像20Cと検査画像20Dの色の違いを識別可能となったときの、緑色成分Gvの変化量が差分ΔGである。差分ΔGは、図9に示すように、各緑色成分G2(赤色成分R2)に対して、G2=Gvの直線の上下それぞれに、差分ΔG1、ΔG2として測定される。この2つの差分ΔG1、ΔG2の何れか一方が差分ΔGとして記録されてもよく、2つの差分ΔG1、ΔG2の平均値が差分ΔGとして記録されてもよい。
【0050】
また、処理ステップS204では緑色成分G2(及び赤色成分R2)も変更されてもよい。この場合、緑色成分G2毎に差分ΔG(G2)が測定される。ここで、差分ΔG(G2)は、例えば、G2=Gvの直線の上下に表れる差分ΔG1(G2)、ΔG2(G2)の平均値である。この場合、複数の差分ΔG(G2)の代表値が差分ΔGとして記録される。
【0051】
なお、処理ステップS204において、緑色成分Gv及び緑色成分G2(赤色成分R2)は、1階調毎に変更される必要はない。例えば、5階調毎や10階調毎に変更されてもよい。また、緑色成分G2は、変更可能な全ての範囲(8ビットの場合、0から255の範囲)で変更される必要はない。例えば、緑色成分G2は、例えば、初期値(8ビットの場合、128付近、或いは、Gc)以上の範囲でのみ変更されてもよい。或いは、処理ステップS204において、緑色成分G2は、変更されずに、初期値のまま固定されていてもよい。
【0052】
図6の処理ステップS205)
処理ステップS205では、差分ΔR及び差分ΔGに基づいて、測定値Rm、Gmが計算される。詳しくは、測定値Rm及び測定値Gmは、次の式4によって計算される。
(式4)
Rm=ΔR/max(ΔR,ΔG)
Gm=ΔG/max(ΔR,ΔG)
ここで、「max(ΔR,ΔG)」は、ΔRとΔGのうち、大きい方の値を意味する。計算された測定値Rm、Gmは所定の記録領域に記録される。
【0053】
処理ステップS202、S204で測定される差分ΔR及びΔGはそれぞれ、利用者の赤色の光に対する感度及び緑色の光に対する感度に対応する。例えば、処理ステップS202では、検査画像20Aと20Bが同じ色の状態(検査画像20Aの色成分が(R2、G2、B2)である状態)から、検査画像20Aの赤色成分のみが変更される。利用者の赤色の光に対する感度が比較的高い場合、検査画像20Aの赤色成分を大きく変更させなくても、検査画像20Aと検査画像20Bの違いを識別することができる。これに対し、利用者の赤色の光に対する感度が比較的低い場合、利用者は検査画像20Aの赤色成分の変化を認識し難くい。そのため、検査画像20Aと検査画像20Bの違いを識別可能となるまでに、検査画像20Aの赤色成分を大きく変更する必要がある。従って、差分ΔR(測定値Rm)は、利用者の赤色の光に対する感度が高いほど小さくなり、赤色の光に対する感度が低いほど大きくなる。
【0054】
差分ΔR(測定値Rm)と同様に、差分ΔG(測定値Gm)は、利用者の緑色の光に対する感度が高いほど小さくなり、緑色の光に対する感度が低いほど大きくなる。そのため、差分ΔRと差分ΔGの比(測定値Rmと測定値Gmの比)は、利用者の赤色の光に対する感度と緑色の光に対する感度の比に対応する。
【0055】
以上の測定方法により、利用者の赤色、緑色、青色の光に対する感度に対応する色覚特性(測定値Rm、測定値Gm、比F)が測定され、携帯端末装置200のストレージ205に色覚情報として記録される。なお、上記の利用者の色覚特性の測定方法は、一例である。利用者の色覚特性は、他の装置又は他の方法によって測定され、携帯端末装置200に記録されてもよい。また、携帯端末装置200に記録される利用者の色覚特性は、測定値Rm、測定値Gm、比Fに限定されない。これらの色覚特性のうち、いずれか1つ以上が記録されてもよい。或いは、携帯端末装置200に記録される色覚情報は、利用者の色覚特性を示すものであればよく、測定値Rm、測定値Gm、比F以外の情報であってもよい。
【0056】
次に、本実施形態の照明光調整システム1による照明光の調整方法の一例について説明する。以下では、一例として、情報処理装置100と照明装置300が設置された室内に、携帯端末装置200を有する利用者が入室した場合について説明する。
【0057】
携帯端末装置200を有する利用者が、情報処理装置100及び照明装置300が設置された室内に入ると、携帯端末装置200と情報処理装置100の間で通信が確立する。携帯端末装置200と情報処理装置100との間の通信は、例えば、無線LANによる通信やBluetooth(登録商標)による通信である。携帯端末装置200と情報処理装置100の間で通信が確立すると、携帯端末装置200は、ストレージ205に記録されている利用者の色覚特性を示す色覚情報(例えば、測定値Rm、測定値Gm、比F)を読み出す。読み出された色覚情報は、通信インタフェース208を介して情報処理装置100に送信される。
【0058】
情報処理装置100のストレージ105には、照明光のスペクトルの調整に使用されるスペクトル情報が記録されている。スペクトル情報は、利用者の色覚特性に適した照明光のスペクトルを示している。スペクトル情報は、例えば、赤色、緑色、青色の各波長帯域における照明光の強度、或いは、各波長帯域の間の光強度の比又は差である。スペクトル情報は、例えば、様々な色覚特性と、各色覚特性に応じたスペクトル情報を含むテーブルであってもよい。或いは、情報処理装置100は、携帯端末装置200から受信した色覚情報に基づいてスペクトル情報を計算するための計算プログラムを有していてもよい。
【0059】
情報処理装置100は、携帯端末装置200から受信した色覚情報に基づいて、利用者の色覚特性に適したスペクトル情報を特定する。特定されたスペクトル情報は、第2通信インタフェース107を介して照明装置300に送信される。
【0060】
照明装置300のコントローラ301は、情報処理装置100から受信したスペクトル情報に基づき、光源ユニット302及びスペクトル調整ユニット303を制御する。以下では、一例として、照明装置300が、照明光に含まれる赤色、緑色、青色の光の輝度を個別に調整可能である場合について説明する。スペクトルを調整する前の照明光の赤色、緑色、青色の光の輝度がそれぞれRd、Gd、Bdであり、スペクトルの調整後の赤色、緑色、青色の光の輝度がそれぞれRa、Ga、Baとすると、輝度Ra、Ga、Baが次の式5を満たすように照明光のスペクトルが調整される。
(式5)
Ra=Rd×F×Rm
Ga=Gd×F×Gm
Ba=Bd×Bm/Bmax
【0061】
式5で表されるスペクトルの調整処理では、スペクトルの調整前の照明光の輝度Bdに、青色成分の測定値Bmと最大値Bmaxの比が乗ぜられる。例えば、利用者が青色の光に対して高い感度を有している場合(言い換えると、アーレンシンドロームを有している場合)、青色の光の輝度を、輝度Bdから輝度Baに変更することにより、青色の光の輝度が小さくなる。これにより、利用者が照明光に対して感じる眩しさを低減することができる。
【0062】
また、式5で表されるスペクトルの調整処理では、スペクトルの調整前の照明光の輝度Rdに、比Fと測定値Rmが乗ぜられ、スペクトルの調整前の照明光の輝度Gdに、比Fと測定値Gmが乗ぜられる。比Fは、利用者の赤色及び緑色の光に対する感度と、青色の光に対する感度の比を表している。また、測定値Rmと測定値Gmはそれぞれ、利用者の赤色光に対する感度と緑色の光に対する感度を表している。そのため、このスペクトルの調整処理により、照明光の色が、利用者の赤色、緑色、青色の光に対する感度のバラつきに応じて補正される。
【0063】
このように、本実施形態では、照明光のスペクトルが利用者の色覚特性に応じて調整されることにより、眩しいと感じることが無く、色を識別し易い照明光で照明された空間を利用者に提供可能となる。また、照明装置300がテレビやパソコン、タブレット端末などの表示装置である場合、表示装置に、利用者が眩しいと感じることなく、色を識別し易い画面を表示させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、携帯端末装置200と情報処理装置100とを、通信が自動で確立するように予め設定しておくことにより、利用者が照明装置300を操作することなく、照明光のスペクトルを利用者の色覚特性に適したスペクトルに調整可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、照明光のスペクトルは、予め測定された利用者の色覚特性に基づいて調整される。そのため、本実施形態では、利用者が手動で照明光のスペクトルを調整する場合に比べて、調整する毎に照明光のスペクトルが変化してしまうことが防止される。また、本実施形態に係る情報処理装置100と照明装置300が、複数の部屋のそれぞれに設置されている場合、各室内における照明光は、同じ色覚特性に基づいて調整される。そのため、複数の照明装置300において、照明光のスペクトルを利用者の色覚特性に適した値に揃えることができる。
【0066】
[第1実施形態の変形例1]
第1実施形態では、携帯端末装置200に利用者の色覚情報が記録されているが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。例えば、利用者の色覚情報は、情報処理装置100のストレージ105に、携帯端末装置200の利用者を識別する利用者情報と共に記録されていてもよい。この場合、携帯端末装置200から情報処理装置100に利用者を識別する利用者情報が送信される。情報処理装置100は、受信した利用者情報に基づいて、携帯端末装置200の利用者を特定し、その利用者の色覚情報をストレージ105から抽出する。次いで、情報処理装置100は、利用者の色覚情報に対応するスペクトル情報を特定して照明装置300に送信する。この構成によれば、携帯端末装置200に利用者の色覚情報を記憶しておく必要が無いため、例えば、利用者が、使用する携帯端末装置200を変更した場合においても、利用者の色覚特性に適した照明環境300を提供可能となる。
【0067】
また、第1実施形態では、利用者の色覚特性に応じたスペクトル情報は、情報処理装置100のストレージ105に記録されているが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。スペクトル情報は、携帯端末装置200のストレージ205に記録されていてもよい。この場合、携帯端末装置200から情報処理装置100にスペクトル情報が送信される。情報処理装置100は、情報処理装置100から受信したスペクトル情報を照明装置300に送信する。
【0068】
[第1実施形態の変形例2]
携帯端末装置200から情報処理装置100に送信される情報は、利用者の色覚特性を示す色覚情報に限定されない。例えば、利用者が色盲や色弱を有しており、且つ、この色盲や色弱を矯正するメガネやコンタクトレンズを装着している場合、情報処理装置100に対し、色覚情報と共に、メガネやコンタクトレンズの特性を示す情報が送信されてもよい。この場合、照明光のスペクトルは、スペクトル情報に加え、メガネやコンタクトレンズの特性も考慮して調整される。
【0069】
本変形例によれば、利用者の色覚特性がメガネやコンタクトレンズによって矯正されているにもかかわらず、更に、照明光のスペクトルが調整されてしまうこと(言い換えると、照明光が過剰に調整されてしまうこと)が防止される。また、利用者が、色覚特性を矯正するメガネやコンタクトレンズを装着している場合、利用者の目に入る照明光の強さは、通常、メガネやコンタクトレンズを装着していない場合よりも小さくなる。この場合、利用者は、照明光の輝度が小さく、室内を暗いと感じる場合がある。そのため、利用者がメガネやコンタクトレンズを装着している場合は、輝度が大きくなるように照明光が調整されることにより、利用者の色覚特性が矯正されると共に、利用者が暗さを感じることを低減することができる。また、利用者が色盲や色弱を矯正するメガネを装着している場合は、照明光のスペクトルの調整が行われなくてもよい。
【0070】
[第1実施形態の変形例3]
また、第1実施形態では、照明光調整システム1は1つの照明装置300を備えているが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。例えば、照明光調整システムは、複数の照明装置を備えていてもよい。
【0071】
図10は、第1実施形態の変形例3に係る照明光調整システム11の概略図を示す。本変形例の照明光調整システム11は、情報処理装置100、携帯端末装置200及び2つの照明装置1300、2300を有している。照明装置1300は、照明器具である。照明装置2300は、情報処理端末2310及び情報処理端末2310に接続されたディスプレイ装置2320を有する。
【0072】
情報処理装置100、携帯端末装置200及び照明装置1300の構成は、第1実施形態の情報処理装置100、携帯端末装置200及び照明装置300と同じである。本変形例では、照明装置1300は、通信インタフェース304を介して照明装置2300と通信可能である。
【0073】
照明装置2300の情報処理端末2310は、CPU2311、RAM2312、ROM2313、プログラム2314、ストレージ2315、通信インタフェース2316、インタフェース2317を備えている。照明装置2300のディスプレイ装置2320は、例えば、液晶ディスプレイである。ディスプレイ装置2320は、コントローラ2321、表示ユニット2322、インタフェース2323を備えている。表示ユニット2322は、光源ユニット2322a及びスペクトル調整ユニット2322bを有している。光源ユニット2322aは、光源と光源から放射された照明光を導光する導光板とを含む。スペクトル調整ユニット2322bは、光源ユニット2322aから放射された照明光を変調する空間光変調素子とカラーフィルタを含む。コントローラ2321は、パソコンからインタフェース2323を介して受信した映像信号に基づいて表示ユニット2322を制御し、表示ユニット2322に映像を表示させる。
【0074】
本変形例では、照明装置1300と照明装置2300は、同じ室内に設置されている。携帯端末装置200と情報処理装置100との通信が確立し、利用者の色覚情報が携帯端末装置200から情報処理装置100に送信されると、情報処理装置100は、受信した色覚情報に対応するスペクトル情報を照明装置2300に送信する。照明装置2300の情報処理端末2310は、スペクトル情報を受信すると、ディスプレイ装置2320が点灯しているか、又は、消灯しているかを判定する。
【0075】
ディスプレイ装置2320が点灯していると判定された場合、情報処理端末2310は、ディスプレイ装置2320に送信する映像信号をスペクトル情報に基づいて調整する。ディスプレイ装置2320に表示される映像(画像)は、映像信号に基づいて表示される。この映像信号は、ディスプレイ装置2320の仕様に応じて、RGB色空間における各色成分を表すRGB画像信号や、輝度信号Y及び色差信号Cb、Cr等が使用される。何れの種類の画像信号も、マトリクス変換処理を行うことにより、RGB画像信号に変換することができる。ディスプレイが点灯していると判定された場合、このRGB画像信号の調整が行われる。
【0076】
スペクトルを調整する前のディスプレイのRGB画像信号のレベルをそれぞれRs1、Gs1、Bs1とし、スペクトルを調整した後のRGB画像信号のレベルをそれぞれRs2、Gs2、Bs2とすると、画像信号Rs2、Gs2、Bs2はそれぞれ、次の式6で表される。
(式6)
Rs2=Rs1×F×Rm
Gs2=Gs1×F×Gm
Bs2=Bs1×Bm/Bmax
【0077】
式6に従ってRGB画像信号のレベルを調整することにより、利用者が眩しいと感じることが無く、色を識別し易い映像をディスプレイ装置2320に表示させることができる。
【0078】
なお、式6では、RGB画像信号Rs1、Gs1、Bs1が調整されるが、本実施形態の画像信号の調整処理はこれに限定されない。例えば、式6をマトリクス変換することにより、RGB画像信号ではなく、YCbCr画像信号の調整を行ってもよい。
【0079】
また、ディスプレイ装置2320が点灯していると判定された場合、情報処理端末2310は、照明装置1300に対し、照明装置1300が放射する照明光のスペクトルの調整が不要であることを示す信号を送信する。或いは、情報処理端末2310は、照明装置1300に対して信号を送信しない。これにより、照明装置1300では、照明光のスペクトルの調整が行われない。
【0080】
他方、ディスプレイ装置2320が消灯していると判定された場合、情報処理端末2310は、照明装置1300に対し、情報処理装置100から受信したスペクトル情報を送信する。照明装置1300は、受信したスペクトル情報に基づいて、照明光のスペクトルを調整する。
【0081】
一つの室内にスペクトルを調整可能な照明装置が複数ある場合、全ての照明装置の照明光のスペクトルが色覚情報に応じて調整されると、照明光のスペクトルが過剰に調整された状態となる。例えば、照明装置2300のディスプレイ装置2320に、照明装置1300の照明光が照射されている場合、両方の照明装置1300、2300の照明光のスペクトルが調整されると、ディスプレイ装置2320に表示される映像が利用者の色覚特性に適さなくなってしまう可能性がある。
【0082】
本変形例では、複数の照明装置のうちの一つについて、照明光のスペクトルが調整されている場合、他の照明装置の照明光のスペクトルは調整されない。そのため、照明光のスペクトルが過剰に調整されてしまうことが防止される。本変形例では、例えば、ディスプレイ装置2320の映像のスペクトルが調整されている場合は、照明装置1300の照明光のスペクトルは調整されない。これにより、利用者は、ディスプレイ装置2320上において、自分の色覚特性に適したスペクトルを有する映像を見ることができる。また、ディスプレイ装置2320が消灯されている場合、照明装置1300の照明光のスペクトルのみが調整される。これにより、照明装置1300が設置された室内が、利用者の色覚特性に適した照明環境となる。
【0083】
本変形例では、ディスプレイ装置2320が点灯している場合、情報処理端末2310が照明装置1300に対し、スペクトルの調整が不要であることを示す情報が送信されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。複数の照明装置のうち、何れの照明装置の照明光のスペクトルを調整するかは、情報処理装置100が各照明装置の動作状況に基づいて判断してもよい。例えば、情報処理装置100が、情報処理端末2310と通信を確立し、ディスプレイ装置2320が点灯又は消灯していることを示す状態情報を受信した場合、情報処理装置100は、状態情報に基づいて、何れの照明装置のスペクトルを調整するかを判断する。次いで、情報処理層装置100は、各照明装置に対して、スペクトルの調整を指示する信号、又は、スペクトルの調整が不要であることを示す信号を送信する。
【0084】
また、利用者が携帯端末装置200に対し、複数の照明装置のうち、何れの照明装置のスペクトルを調整するかを示す照明装置情報を入力してもよい。この場合、携帯端末装置200は、情報処理装置100に対し、入力された照明装置情報を送信する。情報処理装置100は、照明装置情報によって示される照明装置に対してのみ、スペクトル情報を送信する。
【0085】
また、本変形例3では、複数の照明装置のうち何れか1つのみについて、照明光のスペクトルが調整されるが、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、照明光調整システム11は、複数の照明装置について照明光のスペクトルを調整し、スペクトルが調整された複数の照明光を重ね合わせることにより、利用者の色覚特性に適したスペクトルの照明光を生成してもよい。
【0086】
[第2実施形態]
第1実施形態では、携帯端末装置200から情報処理装置100に対して、携帯端末装置200の利用者の色覚情報又は利用者を識別する利用者情報が送信されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。
【0087】
図11は、本発明の第2実施形態にかかる照明光調整システム21の概略図を示す。本実施形態の照明光調整システム21は、情報処理装置100、照明装置300、撮影装置400を備える。情報処理装置100及び照明装置300の構成は、第1実施形態の情報処理装置100及び照明装置300と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0088】
撮影装置400は、コントローラ401、撮影ユニット402、ストレージ403及び通信インタフェース404を備えている。撮影ユニット402は、コントーラ401によって制御され、利用者を撮影するために使用される。ストレージ403は、撮影ユニット402によって撮影された画像などの情報を保存する。通信インタフェース404は、情報処理装置100との無線又は有線による通信に使用される。
【0089】
撮影装置400は、情報処理装置100や照明装置300が設置された室内、或いは、その部屋の入口に設置されており、部屋を利用する利用者の顔認識に用いられる利用者が撮影装置400に自身の顔を撮影させると、撮影装置400は、撮影した利用者の顔の画像を用いて利用者を特定する。例えば、撮影装置400のストレージ403には、利用者の顔の特徴を示す顔情報が記録されている。撮影装置400は、撮影された画像内から人の顔を抽出し、抽出した顔の特徴が記録している利用者の顔の特徴(顔情報)と一致しているかを判定する。抽出した顔の特徴と記録している顔情報とが一致していると判定された場合、撮影装置400は、撮影された利用者が記録している顔情報に対応する利用者であると特定する。そして、撮影装置400は、特定した利用者を識別する利用者情報を情報処理装置100に送信する。
【0090】
情報処理装置100のストレージ105には、利用者の色覚情報が、利用者を識別する利用者情報と共に記録されている。情報処理装置100は、撮影装置400から利用者情報を受信すると、その利用者情報に基づいて撮影された利用者を特定し、その利用者の色覚情報をストレージ105から抽出する。次いで、情報処理装置100は、利用者の色覚情報に対応するスペクトル情報を特定して照明装置300に送信する。なお、情報処理装置100は、色覚情報は用いず、受信した利用者情報に基づいて、当該利用者の色覚特性に応じたスペクトル情報を特定してもよい。
【0091】
照明装置300のコントローラ301は、情報処理装置100から受信したスペクトル情報に基づき、光源ユニット302及びスペクトル調整ユニット303を制御する。これにより、照明光のスペクトルが利用者の色覚特性に応じて調整される。
【0092】
本実施形態によれば、撮影装置400によって利用者が特定され、特定された利用者の色覚特性に応じて照明光のスペクトルが調整される。そのため、利用者は、自身を識別する利用者情報や自身の色覚情報を記録する携帯端末装置を有している必要が無い。
【0093】
[第2実施形態の変形例1]
第2実施形態では、撮影装置400によって撮影された画像を用いて利用者が特定されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。例えば、撮影装置400を用いて撮影された画像に基づいて、利用者と共に、その利用者が色覚特性を矯正するメガネを装着しているか否かが特定されてもよい。この場合、利用者の色覚特性及びメガネの特性に応じて、照明光のスペクトルや輝度が調整される。
【0094】
[第2実施形態の変形例2]
第2実施形態では、撮影装置400を用いて利用者が特定されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。例えば、情報処理装置100は、利用者による情報の入力を受け付けるユーザインタフェースを有していてもよい。この場合、情報処理装置100のストレージ105には、利用者を識別する識別情報が記録されている。情報処理装置100は、ユーザインタフェースを介して受け付けた情報を、ストレージ105に記録されている識別情報と比較することによって、利用者を特定する。
【0095】
また、情報処理装置100は、利用者の声や指紋等の生体情報を検出する装置を用いて利用者を特定してもよい。この場合、情報処理装置100のストレージ105には、利用者の生体情報を示す情報が記録されている。また、情報処理装置100は、撮影装置400の代わりに、利用者の生体情報を検出する検出装置を備えている。情報処理装置100は、検出装置によって検出された生体情報を、ストレージ105に記録されている生体情報と比較することによって利用者を特定する。
【0096】
[第3実施形態]
第1及び第2実施形態では、情報処理装置100から照明装置300に対して、スペクトル情報が送信されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。スペクトル情報は、携帯端末装置200から、情報処理装置100を介さずに照明装置300に送信されてもよい。
【0097】
図12は、本発明の第3実施形態にかかる照明光調整システム31の概略図を示す。本実施形態の照明光調整システムの構成は、情報処理装置100を備えていないこと以外は第1実施形態と同じである。携帯端末装置200と照明装置300は、通信インタフェース208及び通信インタフェース304を介して互いに通信可能である。
【0098】
本実施形態では、携帯端末装置200のストレージ205に、利用者の色覚特性に応じたスペクトル情報が記憶されている。携帯端末装置200を有する利用者が、照明装置300が設置された室内に入室すると、携帯端末装置200と照明装置300との間の通信が確立する。携帯端末装置200と照明装置300の間で通信が確立すると、携帯端末装置200は、ストレージ205に記録されている利用者の色覚特性に対応するスペクトル情報を読み出す。読み出されたスペクトル情報は、照明装置300に送信される。
【0099】
照明装置300のコントローラ301は、携帯端末装置200から受信したスペクトル情報に基づき、光源ユニット302及びスペクトル調整ユニット303を制御する。
【0100】
本実施形態によれば、スペクトル情報が、携帯端末装置200から照明装置300へ、情報処理装置を介さずに送信される。そのため、室内に情報処理装置を設置する必要がなくなり、照明光調整システム31の簡素化及び低コスト化が可能となる。
【0101】
なお、本実施形態において、携帯端末装置200から照明装置300に送信される情報は、スペクトル情報ではなく、利用者の色覚情報であってもよい。この場合、照明装置300は、受信した色覚情報に基づいて、照明光のスペクトルをどのように調整するかを決定する。
【0102】
[第4実施形態]
上述の実施形態では、照明装置が、照明器具やディスプレイなどの、照明光の光源を有する装置である場合について説明したが、本発明の実施形態はこの構成に限定されない。例えば、照明装置は、光源を有しておらず、透過する照明光のスペクトルを変更可能なものであってもよい。
【0103】
図13は、本発明の第4実施形態に係る照明光調整システム41を示す。本実施形態の照明光調整システム41は、携帯端末装置200と照明装置3300を備える。携帯端末装置200の構成は上述の実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0104】
照明装置3300は、コントローラ3301、可変フィルタユニット3302及び通信インタフェース3303を備える。可変フィルタユニット3302は、透過する照明光のスペクトルを変更可能である。コントローラ3301は、可変フィルタユニット3302の動作を制御する。通信インタフェース3303は、携帯端末装置200との有線又は無線による通信に使用される。本実施形態の照明装置3300は、光源を有しておらず、外部から入射された光のスペクトルを調整する。
【0105】
図14(a)は照明装置3300の外観図を示し、図14(b)は可変フィルタユニット3302の構造を説明するための概略図である。照明装置3300は、メガネやヘッドマウントディスプテイのような形状を有している。コントローラ3301や通信インタフェース3303は、メガネのアーム(テンプル、ツル)部分に内蔵されている。照明装置3300は、可変フィルタユニット3302が利用者の目を覆うように、利用者の顔に装着される。可変フィルタユニット3302は、複数の画素30に分割されており、各画素30が、偏光子31、液晶パネル32、カラーフィルタ33及び検光子34を有している。また、画素30毎に、液晶パネル32及びカラーフィルタ33が3つに分割されている。3つに分割されたカラーフィルタ33R、33G、33Bはそれぞれ、赤色、緑色、青色のみを透過させるカラーフィルタである。また、各カラーフィルタに対応する位置に、分割された液晶パネル32R、32G、32Bが配置されている。
【0106】
外部から照明装置3300に入射した照明光は、偏光子31により特定の偏光方向を有する偏光光となって液晶パネル32に入射する。液晶パネル32は、分割された領域毎に個別に駆動電圧を印加可能である。液晶パネル32は、例えば、TN配向の液晶層を有しており、駆動電圧が印加されていない状態では、透過する光の偏光方向を90度回転させる。また、液晶パネル32は、駆動電圧が印加されている状態では、透過する光の偏光方向を回転させない。液晶パネル32を透過した照明光は、検光子34に入射され、特定の偏光方向の照明光のみが検光子を透過する。照明装置3300は、各画素30液晶パネル32に印加する電圧を制御することにより、各カラーフィルタ33を透過した光の偏光方向を回転させるか否かを切り替えることができる。これにより、検光子34を透過する光のスペクトルを変更可能である。
【0107】
本実施形態では、携帯端末装置200のストレージ205に、利用者の色覚特性に応じたスペクトル情報が記憶されている。携帯端末装置200と照明装置3300との間の通信が確立すると、携帯端末装置200は、ストレージ205に記録されている利用者の色覚特性に対応するスペクトル情報を読み出す。読み出されたスペクトル情報は、照明装置3300に送信される。
【0108】
照明装置3300のコントローラは、携帯端末装置200から受信したスペクトル情報に基づき、可変フィルタユニット3302を制御する。これにより、照明装置3300を透過する外光(照明光)は、利用者の色覚特性に適したスペクトルに調整される。
【0109】
本実施形態によれば、照明装置3300が照明光の光源を有していない場合であっても、外光のスペクトルを調整することにより、利用者の色覚特性に適した照明環境を提供可能となる。
【0110】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本発明の実施形態に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14