(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】草刈剪定機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/83 20060101AFI20220325BHJP
A01D 34/86 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A01D34/83
A01D34/86
(21)【出願番号】P 2016194930
(22)【出願日】2016-09-30
【審査請求日】2019-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】516295880
【氏名又は名称】株式会社石禮工業
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】石村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岡上 憲一
(72)【発明者】
【氏名】根本 喜弘
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-336323(JP,A)
【文献】特開2006-141289(JP,A)
【文献】特開平09-028153(JP,A)
【文献】特開2010-004786(JP,A)
【文献】米国特許第05644904(US,A)
【文献】米国特許第02793487(US,A)
【文献】特開2007-043962(JP,A)
【文献】実開昭60-081711(JP,U)
【文献】特開平08-242652(JP,A)
【文献】特開2000-032826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/42 - 34/90
A01G 3/00 - 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ショベル等の重機のアーム先端に取り付けられる草刈剪定機であって、
ベースプレートと、
前記ベースプレートの一端側に配設された駆動スプロケットと、
前記ベースプレートの他端側に配設された従動スプロケットと、
前記ベースプレートの周縁に沿って配設された複数の固定刃と、
前記駆動スプロケットと、前記従動スプロケットに巻き掛けられたローラーチェーンと、
前記ローラーチェーンの外周に沿って所定間隔で配設された複数の回転刃と、
回転駆動される前記回転刃の浮き上がりを抑える抑制手段と
を含んで成り、
前記ベースプレートにおける前記複数の固定刃の配設位置に、前記固定刃を補助する、前記固定刃と略同様の形状をなす補助プレートが突設され
、
前記補助プレートの先端部が、前記固定刃の先端部及び前記回転刃の先端部より外側に位置していることを特徴とする草刈剪定機。
【請求項2】
前記回転刃が三角形状をなし、前記固定刃と接触した状態で回転駆動されることを特徴とする請求項1に記載の草刈剪定機。
【請求項3】
前記回転刃が鎌形状をなし、前記固定刃と接触した状態、又は所定の隙間を空けた状態で回転駆動されることを特徴とする請求項1に記載の草刈剪定機。
【請求項4】
前記固定刃と前記回転刃との間に潤滑油を供給する潤滑油供給手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の草刈剪定機。
【請求項5】
前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットとの間隔を調節するための間隔調節手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の草刈剪定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路脇や土手、河川敷といった広範囲な場所に生えている雑草の刈り取りや樹枝剪定に好適な草刈剪定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路脇や土手、河川敷といった広範囲な場所に生えている雑草を刈り取るための草刈機が種々開示されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。特許文献1には、原動機により刈払装置が駆動される刈払機において、左右方向に並設した複数のスプロケットに巻回されるチェーンを一定方向へ回転駆動可能とし、該チェーンの外周部に複数の刈刃を取り付け、刈払装置の前部に位置する刈刃の上方に、鋸状に形成した固定刃を近接して設けて刈払装置を構成したことを特徴とする刈払機が開示されている。従来の刈払機における作業時の労力負担を軽減すると共に、刈払範囲の広範囲化が図られている。
【0003】
また、特許文献2に開示された草刈機の回転鎌は、円板体を有し、該円板体にチェーンを保定し、該チェーンには前記円板体が反時計方向又は時計方向のいずれの方向に回転されたときでも草を刈り取れるよう刃体を止着し、前記円板体を動力源の回転力により回転させて草を刈り取れるようにしたことを特徴とする。円板体を回転させると、それに伴ってチェーンが遠心方向に延びた状態で円板体の回転方向と同一方向に周回し、チェーンに止着された刃体の刃によって草が刈り取られ、石垣等の凸凹した硬い物にチェーンが当たるとチェーンは良く撓むため石垣等に傷が付き難く刃体も損傷し難い旨、記載されている。
【0004】
更に、特許文献3に開示された草刈装置は、屈伸自在の油圧駆動アームを有すると共に自走可能な作業機械の前記アーム先端に着脱可能に取り付けられる草刈装置において、前記油圧駆動アームの先端に取り付けられた際に軸受および回転駆動装置を介して回転動作可能に設け、かつ別途設けたモータからの回転動力を歯車伝導機構およびクランクアームに伝導し、このクランクアームから上下一対で摺動自在に重ね合された上櫛刃板または下櫛刃板に直線往復する動力を伝達してこれら櫛刃板同士の相対的な往復摺動により挟み切断を可能とする機構を設け、前記往復摺動する上櫛刃板または下櫛刃板と同じ重さのカウンタ錘を設けると共に前記歯車伝導機構に連動するクランクアームを別途設け、このクランクアームを介して前記カウンタ錘は前記往復摺動と逆位相で往復動作させて慣性振動を吸収する機構を設けたことを特徴とする。大型の土木作業用機械である重機のアーム先端に取り付けられる大型の草刈装置において、刃の高速スライド動作によって振動が生じにくいものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-32826号公報
【文献】特許第2684009号公報
【文献】特開2006-141289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された刈払機によると、比較的広範囲な場所の草刈りを行うことができ、作業者の負担軽減も図られるものと思料する。しかしながら、例えば高速道路脇の草刈り作業のように、草刈りが必要な範囲が何キロにもわたって続くような場所では、特許文献1に開示された刈払機のような構成では限界があり、更に広範囲な場所の草刈りを効率的に行い得る草刈機が求められていた。
【0007】
特許文献2に開示された草刈機の回転鎌や特許文献3に開示された草刈装置によると、特許文献1に開示された刈払機に比べてより広範囲な場所の草刈りが行えるものと思料する。また、何れも重機のアーム先端に取り付けて使用できるため、作業者の負担が大幅に軽減されると共に、作業効率の大幅な向上が図られるものと思料する。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された草刈機の回転鎌では、草刈りの際に石や枝等を周囲に飛散させるおそれがあり、相当の注意を払う必要がある。また、特許文献3に開示された草刈装置は装置自体の構成が複雑になる。更に、基本的には一方向にしか草刈りができないため、例えば重機のアームを左右に動かして草刈りを行いたい場合には、その都度、草刈装置の向きを変えなければならず、非常に煩雑であると共に、作業効率の悪化を招くこととなる。
【0009】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、非常に広範囲な場所の草刈りや樹枝の剪定作業を効率的に行うことができると共に、装置構成が単純でメンテナンス性に優れた草刈剪定機を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、油圧ショベル等の重機のアーム先端に取り付けられる草刈剪定機であって、ベースプレートと、前記ベースプレートの一端側に配設された駆動スプロケットと、前記ベースプレートの他端側に配設された従動スプロケットと、前記ベースプレートの周縁に沿って配設された複数の固定刃と、前記駆動スプロケットと、前記従動スプロケットに巻き掛けられたローラーチェーンと、前記ローラーチェーンの外周に沿って所定間隔で配設された複数の回転刃と、回転駆動される前記回転刃の浮き上がりを抑える抑制手段とを含んで成ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の草刈剪定機において、前記ベースプレートにおける前記複数の固定刃の配設位置に、前記固定刃を補助する補助プレートが突設されていることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の草刈剪定機において、前記回転刃が三角形状をなし、前記固定刃と接触した状態で回転駆動されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の草刈剪定機において、前記回転刃が鎌形状をなし、前記固定刃と接触した状態、又は所定の隙間を空けた状態で回転駆動されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の草刈剪定機において、前記固定刃と前記回転刃との間に潤滑油を供給する潤滑油供給手段を備えることを特徴とする。
【0015】
更にまた、本発明の草刈剪定機において、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットとの間隔を調節するための間隔調節手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の草刈剪定機によると、非常に広範囲な場所の草刈りや樹枝の剪定作業を効率的に行うことができる。特に、高速道路脇等の何キロにもわたって草刈りや剪定をしなければならない場所であっても、作業者は重機を操縦するのみで、簡単且つ高効率で草刈り作業や剪定作業を行うことができる。
【0017】
また、本発明の草刈剪定機は、装置構成が非常に単純であるため、メンテナンス性に優れている。草刈り作業等によって固定刃や回転刃の一部が欠けたり割れたりした場合であっても、不具合のある刃のみ交換することができるため、メンテナンスコストの低減も図られる。
【0018】
更に、本発明の草刈剪定機は、草刈剪定機自体のサイズを適宜、変更することによって、草刈りや剪定が必要な場所を選ぶことなく、あらゆる場所に適用することができる。即ち、大型の重機が使用可能な広範囲な場所であれば、草刈剪定機自体を大型化することによって、更に高効率で草刈り作業等を行うことができ、狭小な場所であれば、草刈剪定機自体を小型化すると共に小型の重機を使用することによって対応可能となる。
【0019】
また、本発明の草刈剪定機に係るベースプレートの複数の固定刃の配設位置に、固定刃を補助する補助プレートを突設することによって、固定刃を補強することができるため、茎の硬い草木等を刈る場合でも、固定刃の割れを防止することができ、固定刃の長寿命化を図ることができる。また、補助プレートによる補強によって固定刃を薄く形成しても十分な強度が確保でき、固定刃自体の製造コストを削減することができ、メンテナンスコストの軽減も図られる。
【0020】
更に、本発明の草刈剪定機に係る回転刃が三角形状をなし、この三角形状をなす回転刃を固定刃と接触した状態で回転駆動することによって、特に笹や葦といった比較的硬くて束になっているような草木を容易に刈ることができる。また、三角形状をなす回転刃は、その二辺に刃部を備えているため、回転刃を正回転させた場合はもちろん、逆回転させた場合でも草刈りや剪定を行うことができる。
【0021】
また、本発明の草刈剪定機に係る回転刃が鎌形状をなし、この鎌形状をなす回転刃を固定刃と接触した状態、又は所定の隙間を空けた状態で回転駆動することによって、特に茅や葛といった比較的柔らかい草木を容易に刈ることができる。更に、鎌形状をなす回転刃は、固定刃との間に所定の隙間を空けた状態で回転駆動しても草木を刈ることができるため、固定刃及び回転刃の長寿命化、作業時間の長時間化が図られる。
【0022】
また、本発明の草刈剪定機に係る固定刃と回転刃との間に潤滑油を供給する潤滑油供給手段を備えることによっても、固定刃と回転刃との摩擦熱低減による作業時間の長時間化および固定刃及び回転刃の長寿命化が図られる。
【0023】
更にまた、本発明の草刈剪定機において、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間隔を調節するための間隔調節手段を配設することによって、ローラーチェーンに常に一定のテンションを付与することができる。つまり、ローラーチェーンのたるみによって生じる回転刃の揺動を抑制することができるため、固定刃や回転刃の破損防止、ひいては草刈剪定機自体の安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る草刈剪定機の使用状態を示す説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る草刈剪定機の平面図である。
【
図3】
図2に示した本発明の一実施形態に係る草刈剪定機の内部構造を示す平面図である。
【
図4】
図2に示した本発明の一実施形態に係る草刈剪定機の側面図である。
【
図5】
図2に示した本発明の一実施形態に係る草刈剪定機の内部構造を示す側面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る草刈剪定機の平面図である。
【
図7】
図6に示した本発明の他の実施形態に係る草刈剪定機の内部構造を示す平面図である。
【
図8】
図6に示した本発明の他の実施形態に係る草刈剪定機の側面図である。
【
図9】
図6に示した本発明の他の実施形態に係る草刈剪定機の内部構造を示す側面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る草刈剪定機の平面図である。
【
図11】(a)は本発明の草刈剪定機に係る回転刃の一実施形態を示す平面図、(b)は本発明の草刈剪定機に係る固定刃の一実施形態を示す平面図である。
【
図12】(a)は本発明の草刈剪定機に係る回転刃の他の実施形態を示す平面図、(b)は本発明の草刈剪定機に係る固定刃の他の実施形態を示す平面図である。
【
図13】本発明の草刈剪定機に係る回転刃の他の実施形態を示す平面図である。
【
図14】(a)は本発明の草刈剪定機に係る固定刃の他の実施形態を示す平面図、(b)は(a)に示した固定刃の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の草刈剪定機の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る草刈剪定機10の使用状態を示す説明図であり、
図2は本実施形態に係る草刈剪定機10の平面図、
図3は本実施形態に係る草刈剪定機10の内部構造を示した平面図、
図4は本実施形態に係る草刈剪定機10の側面図、
図5は本実施形態に係る草刈剪定機10の内部構造を示した側面図である。これら
図1~
図5に示すように、本実施形態の草刈剪定機10は、油圧ショベル等の重機XのアームYの先端に取り付けられる草刈剪定機であって、ベースプレート12と、ベースプレート12の一端側に配設された駆動スプロケット14と、ベースプレート12の他端側に配設された従動スプロケット16と、ベースプレート12の周縁に沿って配設された複数の固定刃18と、駆動スプロケット14と従動スプロケット16に巻き掛けられたローラーチェーン20と、ローラーチェーン20の外周に沿って所定間隔で配設された複数の回転刃22と、回転駆動される回転刃22の浮き上がりを抑える抑制手段24とを含んで構成されている。
【0026】
より具体的には、ベースプレート12の一端側(草刈剪定機10における後端側)には駆動スプロケット14が配設される。駆動スプロケット14の駆動軸15は、駆動スプロケット14の上方に配設された油圧モータ26に接続されている。なお、この油圧モータ26と、重機XのアームYに備える油圧配管(不図示)とが油圧ホースHによって接続され、重機Xの操縦者による油圧操作によって、駆動スプロケット14を駆動することができる。
【0027】
一方、ベースプレート12の他端側(草刈剪定機10における先端側)には従動スプロケット16が配設される。従動スプロケット16の回転軸17は、ベースプレート12と、草刈剪定機10の長手方向に、その上方を覆って配設されるカバープレート28とによって軸支されている。
【0028】
そして、駆動スプロケット14と従動スプロケット16とにローラーチェーン20が巻き掛けられている。ローラーチェーン20には、その外周に沿って所定間隔で複数の回転刃22が取り付けられている。
【0029】
ここで、本実施形態の草刈剪定機10に係る回転刃22の形状は特に限定されないが、例えば
図11(a)に示すように、略三角形状をなすものであってもよい。回転刃22に係る底辺部分にはローラーチェーン20への取付穴30を備え、残る2辺に刃部32を備える。従って、ローラーチェーン20を時計回り、反時計回りの何れの方向に回転させても草刈りや剪定を行うことができる。
【0030】
また、ベースプレート12には、その周縁に沿って複数の固定刃18が配設されている。本実施形態の草刈剪定機10に係る固定刃18の形状も特に限定されないが、例えば
図11(b)に示すように、全体形状が略三角形状をなし、2辺に刃部32を備え、底辺部分が両側に突出した形状をなし、この両側に突出した底辺部分にベースプレート12への取付穴30を備えるものであってもよい。このような形状をなす固定刃18同士を隣接させてベースプレート12に取り付けると、突出した底辺部分によって、一の固定刃18に係る刃部32と、これに隣接する他の固定刃18の刃部32との間に所定の間隔を容易に確保することができる。なお、ベースプレート12の先端側には、ベースプレート12に配設された固定刃18との水平方向の高さを合わせるための先端部プレート19aが配設され、ベースプレート12の後端側には、同じく固定刃18との水平方向の高さを合わせるための後端部プレート19bが配設されている。これら先端部プレート19a及び後端部プレート19bの形状は特に限定されず、ベースプレート12の形状によって固定刃18との水平方向の高さを合わせることが可能であれば、先端部プレート19a及び後端部プレート19bを必ずしも配設する必要はない。
【0031】
そして、駆動スプロケット14によって回転駆動される回転刃22の回転時における浮き上がりを抑える抑制手段24を備える。この抑制手段24は、草刈剪定機10の長手方向に沿って配設される一対の案内板34、34と、この一対の案内板34、34を連結する連結部材35と、カバープレート28上に立設され、連結部材35を貫通して上方に突出したバネ装着ネジ36と、カバープレート28と連結部材35との間に位置するバネ装着ネジ36に装着されるバネ37と、連結部材35の上方に突出したバネ装着ネジ36に螺合されるナット38とを含んで構成される。
【0032】
つまり、
図2、
図4及び
図5に示すように、一対の案内板34、34を連結する連結部材35と、カバープレート28との間にバネ37を介在させた状態で、バネ装着ネジ36に螺合されたナット38を螺入することによって、案内板34、34で回転刃22の回転時の浮き上がりを抑制することができ、回転刃22をスムーズに回転させることができる。特に、回転刃22の形状が
図11(a)に示したような三角形状をなす場合、抑制手段24に係る一対の案内板34、34によって回転刃22を固定刃18と接触した状態で回転させるように上方から押さえることで、笹や葦といった比較的硬くて束になっているような草木を容易に刈ることができる。
【0033】
また、本実施形態の草刈剪定機10では、ベースプレート12における複数の固定刃18の配設位置に、固定刃18を下方から補助する補助プレート40が突設されている。補助プレート40の形状も特に限定されないが、
図2に示すように、固定刃18と略同様の形状をなすことが好ましい。このように、補助プレート40をベースプレート12に突設することによって、固定刃18を補強することができるため、茎の硬い草木等を刈る場合でも、固定刃18の割れを防止することができ、固定刃18の長寿命化を図ることができる。また、補助プレート40による補強によって固定刃18を薄く形成しても十分な強度が確保でき、固定刃18自体の製造コストを削減することができ、メンテナンスコストの軽減も図られる。
【0034】
更に、本実施形態の草刈剪定機10では、固定刃18と回転刃22との間に潤滑油を供給する潤滑油供給手段42を備えている。潤滑油供給手段42は、草刈剪定機10の後端側に配設された潤滑油タンク43と、従動スプロケット16に設けられた潤滑油供給路44と、潤滑油タンク43から従動スプロケット16の潤滑油供給路44に潤滑油を送るための潤滑油パイプ45とを含んで構成されている。つまり、潤滑油タンク43から潤滑油パイプ45を介して潤滑油供給路44に潤滑油を供給することによって、潤滑油供給路44から従動スプロケット16に巻き掛けられたローラーチェーン20や固定刃18と回転刃22との間に潤滑油を供給することができる。従って、固定刃18と接触した状態で回転刃22を回転させても、固定刃18と回転刃22との摩擦熱低減による作業時間の長時間化および固定刃18及び回転刃22の長寿命化が図られる。
【0035】
また更に、本実施形態の草刈剪定機10では、駆動スプロケット14と従動スプロケット16との間隔を調節するための間隔調節手段50を備えている。間隔調整手段50は、従動スプロケット16の回転軸17を軸支した状態でベースプレート12上を前後方向に移動可能な従動スプロケット支持ブロック51と、この従動スプロケット支持ブロック51の後端から突出したピン52に外嵌されたバネ部材53と、バネ部材53を案内するバネ部材案内管54と、先端部にバネ部材53を押圧する押圧部55を備える押圧ボルト56とを含んで構成されている。そして、この押圧ボルト56が、ベースプレート12上に固着されたガイドプレート57に設けられたネジ穴に螺合されている。
【0036】
押圧ボルト56をベースプレート12の先端側(従動スプロケット16側)に向かって螺入すると、押圧ボルト56の先端部に備える押圧部55によってバネ部材53が押圧される。このバネ部材53が押圧されることによって、従動スプロケット支持ブロック51が先端側に押圧されるため、従動スプロケット支持ブロック51の先端側への移動に伴って、従動スプロケット支持ブロック51が軸支する従動スプロケット16が先端側へ移動することとなる。その結果、駆動スプロケット14と従動スプロケット16との間隔が調節され、ローラーチェーン20に常に一定のテンションを付与することができる。
【0037】
従って、駆動スプロケット14と従動スプロケット16とに巻き掛けられたローラーチェーン20にたるみが生じて回転刃22が揺動するような場合には、この間隔調節手段50によって駆動スプロケット14と従動スプロケット16との間隔を調節することにより、ローラーチェーン20のたるみを解消して回転刃22を安定的に回転駆動することができる。このように、ローラーチェーン20に常に一定のテンションを付与して回転刃22を安定的に回転駆動させることができるため、固定刃18や回転刃22の破損防止、ひいては草刈剪定機10自体の安全性の向上を図ることができる。更に、草刈り等の作業中において、ベースプレート12の先端側から後端側に向かって回転刃22に対して何らかの外力が作用した場合には、バネ部材53によって外力を吸収することができ、回転刃22の破損防止も図られる。
【0038】
以上のように、本発明の実施形態に係る草刈剪定機10によると、非常に広範囲な場所の草刈りや剪定を効率的に行うことができる。特に、高速道路脇等の何キロにもわたって草刈り等をしなければならない場所であっても、作業者は重機Xを操縦するのみで、簡単且つ高効率で草刈り作業等を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態の草刈剪定機10は、装置構成が非常に単純であるため、メンテナンス性に優れている。草刈り作業等によって固定刃18や回転刃22の一部が欠けたり割れたりした場合であっても、不具合のある刃のみ交換することができるため、メンテナンスコストの低減も図られる。
【0040】
以上、本発明の実施形態に係る草刈剪定機10について詳述したが、本発明の草刈剪定機は上記の実施形態に限定されるものではない。
図6~
図9に示した本実施形態に係る草刈剪定機11は、基本的な構成は上記の実施形態に係る草刈剪定機10と同様である。
【0041】
本実施形態の草刈剪定機11は、ベースプレート12と、ベースプレート12の一端側に配設された駆動スプロケット14と、ベースプレート12の他端側に配設された従動スプロケット16と、ベースプレート12の周縁に沿って配設された複数の固定刃18aと、駆動スプロケット14と従動スプロケット16に巻き掛けられたローラーチェーン20と、ローラーチェーン20の外周に沿って所定間隔で配設された複数の回転刃22aと、回転駆動される回転刃22aの浮き上がりを抑える抑制手段24とを含んで構成されている。
【0042】
また、ベースプレート12における複数の固定刃18aの配設位置には、固定刃18aを下方から補助する補助プレート40が突設されている。更に、本実施形態の草刈剪定機11においても、駆動スプロケット14と従動スプロケット16との間隔を調節するための間隔調節手段50を備えている。
【0043】
なお、本実施形態の草刈剪定機11に係る抑制手段24及び間隔調節手段50の構成は、上述した実施形態の草刈剪定機10に係る抑制手段24及び間隔調節手段50と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0044】
そして、本実施形態の草刈剪定機11に係る回転刃22aは鎌形状をなしている。具体的には、
図12(a)に示すように、回転刃22aの全体形状が鎌形状をなし、この回転刃22aに係る刃部32aには鋸刃が形成されると共に、鋸刃の各頂点を結んだ線が湾曲をなすように形成されている。
【0045】
一方、ベースプレート12の周縁に沿って配設される複数の固定刃18aの形状は、
図12(b)に示すように、上記実施形態の草刈剪定機10に係る固定刃18と同様に略三角形状をなしているが、2辺に備える刃部32bが鋸刃となっている。
【0046】
以上のように、鎌形状をなす回転刃22a及び固定刃18aを備える本実施形態の草刈剪定機11によると、特に茅や葛といった比較的柔らかい草木を容易に刈ることができる。また、回転刃22aに係る刃部32aには鋸刃が形成されると共に、鋸刃の各頂点を結んだ線が湾曲をなすように形成されているため、草刈り作業や剪定作業において、回転刃22aの刃部32aによって草木を内側(回転刃22aの取り付け側)に引き込むことができ、草刈り作業等の更なる効率化を図ることができる。
【0047】
また、上記の実施形態に係る草刈剪定機10では、抑制手段24に係る一対の案内板34、34によって回転刃22と固定刃18とを接触させた状態で回転駆動させているが、本実施形態の草刈剪定機11においては、回転刃22aを鎌形状とすることによって、固定刃18aとの間に所定の隙間を空けた状態で回転駆動しても草木を刈ることができる。従って、草刈剪定機10に係る潤滑油供給手段42を設けずとも作業時間の長時間化を図ることができると共に、固定刃18a及び回転刃22aの長寿命化を図ることができる。
【0048】
なお、回転刃22aと固定刃18aとの間に所定の隙間を設ける方法は特に限定されない。例えば、駆動スプロケット14の駆動軸15のベースプレート12側軸受け部及び従動スプロケット16の回転軸17のベースプレート12側軸受け部にスペーサー60を介在させて、駆動スプロケット14及び従動スプロケット16をベースプレート12から若干、浮かせることによって、駆動スプロケット14及び従動スプロケット16に巻き掛けられるローラーチェーン20もベースプレート20から若干、上方に位置することとなる。これに伴って、ローラーチェーン20の外周に沿って配設された回転刃22aもスペーサー60の高さ分だけ上方に位置することとなる。その結果、固定刃18aと回転刃22aとの間に所定の隙間が形成されることとなる。
【0049】
以上、本発明の草刈剪定機の実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。例えば、本発明に係る回転刃の態様は上記に示した実施形態に限定されず、
図13に示す回転刃22bのように、全体形状が鎌形状をなし、刃部32cがブレード状に形成されてもよい。
【0050】
また、本発明に係る固定刃の態様も上記の実施形態に限定されず、
図14に示す固定刃18bのように、全体形状が鎌形状をなし、この固定刃18bに係る刃部32dに鋸刃が形成されると共に、鋸刃の各頂点を結んだ線が湾曲をなすように形成されてもよい。そして、
図10に示す草刈剪定機11aのように、回転刃22aに係る刃部32aと、固定刃18bに係る刃部32dとが相対するように配設すると共に、刃部32aと刃部32dとで雑草を挟み込むように回転刃22aを回転駆動することによって、より強力で、高効率の草刈り作業を行うことができる。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0051】
10、11、11a:草刈剪定機
12:ベースプレート
14:駆動スプロケット
15:駆動軸
16:従動スプロケット
17:回転軸
18、18a、18b:固定刃
20:ローラーチェーン
22、22a、22b:回転刃
24:抑制手段
26:油圧モータ
28:カバープレート
30:取付穴
32、32a、32b、32c、32d:刃部
34:案内板
40:補助プレート
42:潤滑油供給手段
50:間隔調整手段
60:スペーサー
X:重機
Y:アーム
H:油圧ホース