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特許7045726N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤
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  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図1A
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図1B
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図2
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図3
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図4A
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図4B
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  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図6
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図7
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図8
  • 特許-N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドおよびその塩の医薬品製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20220325BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220325BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220325BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/46
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019569270
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 US2018037744
(87)【国際公開番号】W WO2018232235
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-03-03
(31)【優先権主張番号】62/521,007
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517024618
【氏名又は名称】ベータ ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グレコ,マイケル,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コスタンゾ,マイケル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,マイケル,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ペン,ジロン
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド,ビクトリア,リン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ドン
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】カナダ国特許出願公開第02966376(CA,A1)
【文献】特開2017-039754(JP,A)
【文献】特開2016-138124(JP,A)
【文献】特表2009-513623(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104961731(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104910049(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/506
A61K 47/02
A61K 47/12
A61K 47/20
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/38
A61K 47/42
A61K 47/46
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】
で表される化合物のメタンスルホン酸塩と、微結晶セルロースと、を含み、
前記メタンスルホン酸塩は、10重量%~30重量%で含有され、
前記微結晶セルロースは、20重量%~50重量%で含有され、
前記メタンスルホン酸塩は、式1で表される化合物およびメタンスルホン酸を1:0.9~1:1.1のモル比で含む、医薬製剤。
【請求項2】
前記メタンスルホン酸塩は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値:12.6°±0.2°、15.5°±0.2°、17.9°±0.2°、22.1°±0.2°、および25.2°±0.2°を含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態2Aである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記結晶形態2Aは、以下の1つ以上によってさらに特徴付けられる、請求項2に記載の医薬製剤:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値のうちの2つ以上をさらに含むX線粉末回折パターン:11.1°±0.2°、13.8°±0.2°、14.7°±0.2°、16.7°±0.2°、19.3°±0.2℃、20.9°±0.2°、23.2°±0.2°、および25.8°±0.2°;
(b)示差走査熱量測定で測定される融点の開始温度が233.3℃、および/またはピーク温度が238.1℃である結晶形態;
(c)図1に示されるX線粉末回折パターン;
(d)図2に示されるような示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム;および/または
(e)図3に示されるような熱重量分析(TGA)サーモグラム。
【請求項4】
前記メタンスルホン酸塩は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値:12.8°±0.2°、15.7°±0.2°、18.2°±0.2°、20.3°±0.2°を含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態2Bである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記結晶形態2Bは、以下の少なくとも1つによってさらに特徴付けられる、請求項4に記載の医薬製剤:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の1つ以上の2θ値を含むX線粉末回折パターン:9.7°±0.2°、25.1°±0.2°、25.6°±0.2°、および26.8°±0.2°;
(b)図4に示されるX線粉末回折パターン;および/または
(c)図6に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム。
【請求項6】
前記メタンスルホン酸塩は、式1で表される化合物およびメタンスルホン酸を1:1のモル比で含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
クトース一水和物、無水ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、二水和物または無水リン酸二カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群より独立して選択される1つ以上の薬学的に許容される1以上の賦形剤さらに含み、
前記薬学的に許容される1以上の賦形剤のそれぞれは、製剤の15重量%から50重量%を占める、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
ンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウム、クロスポビドン、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される1つ以上の崩壊剤をさらに含み、
前記崩壊剤のそれぞれは、製剤の1重量%から10重量%を占める、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
テアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク(「タルカムパウダー」)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、および二酸化ケイ素からなる群から選択される1つ以上の潤滑剤をさらに含み、
前記潤滑剤のそれぞれは、製剤の1重量%から10重量%を占める、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
カシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、トラガカント、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、マグネシウム-ケイ酸アルミニウム、ポリエチレングリコール(PEG)、およびベントナイトからなる群から選択される1つ以上の結合剤をさらに含み、
前記結合剤のそれぞれは、製剤の5重量%から30重量%を占める、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
EGFR活性に関連する疾患または障害の治療に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記疾患または障害は、L858R活性化変異体L858R、delE746-A750、G719S;エクソン19欠失活性化変異体;およびT790M耐性変異体からなる群より選択されるEGFRの1つ以上の変異体に関連する、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記疾患または障害は、脳癌、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、リンパ腫、甲状腺腫瘍、およびそれらの合併症からなる群から選択される癌である、請求項11または12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
EGFR活性に関連する疾患または障害を治療するための製剤の製造における、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、35 U.S.C. §109(e)の下、2017年6月16日に出願された米国仮出願第62/521,007号の優先権を主張するものであり、その全体の内容が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド、特にそのメタンスルホン酸塩の医薬製剤、および癌の治療または予防のための製剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
上皮成長因子受容体(EGFR、Herl、ErbBl)は、Her2(Neu、ErbB2)、Her3(ErbB3)、およびHer4(ErbB4)の他のメンバーと共に構造的に関連する4つの細胞表面受容体のErbBファミリーのうちの主要メンバーである。EGFRは、その固有の触媒性チロシンプロテインキナーゼ活性により、その主要な細胞機能を発揮する。受容体は、上皮成長因子(EGF)やトランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-a)などの成長因子リガンドと結合することで活性化され、触媒的に不活性なEGFRモノマーを触媒的に活性なホモおよびヘテロ二量体に変換する。これらの触媒的に活性な二量体は、細胞内チロシンキナーゼ活性を開始し、特定のEGFRチロシン残基の自己リン酸化を引き起こし、シグナル伝達タンパク質の下流の活性化を誘発する。その後、シグナル伝達タンパク質は複数のシグナル伝達カスケード(MAPK、Akt、およびJNK)を開始し、最終的に細胞の成長、増殖、運動性、および生存に不可欠な生物学的プロセスを仲介する。
【0004】
EGFRは、多くの種類の癌細胞の表面に異常に高いレベルで見られ、EGFRのレベルの増加は、進行性疾患、癌の広がり、および臨床的予後不良と関連している。EGFRの変異は、受容体の過剰発現、永続的な活性化、または持続的な活動亢進を引き起こし、制御されない細胞成長、つまり癌を引き起こす可能性がある。その結果、EGFR変異は、転移性肺癌、頭頸部癌、結腸直腸癌、膵臓癌など、いくつかの種類の悪性腫瘍で特定されている。肺癌では、突然変異は主にキナーゼドメインのアデノシン三リン酸(ATP)結合ポケットをエンコードするエクソン18~21で発生する。最も臨床的に重要な製剤感受性EGFR変異は、共通アミノ酸モチーフ(LREA)を除去するエクソン19の欠失と、位置858(L858R)のロイシンをアルギニンに置換するエクソン21の点変異である。合わせて、これら2つの活性化変異は、肺癌で観察されるEGFR変異のほぼ85%を占めている。両方の突然変異は、永続的なチロシンキナーゼ活性を有し、その結果、発癌性がある。 現在の治療に最初に反応する患者の少なくとも50%において、疾患の進行が、二次変異、EGFRのエクソン20のT790M(ゲートキーパー変異と呼ばれる)の発生に関連している。癌治療のための新しい効果的で安定した製剤の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、薬学的に許容される賦形剤とともに含有される、N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド(化合物1)、またはその薬学的に許容される塩の医薬製剤、およびさまざまな癌などの上皮成長因子受容体(EGFR)の変異型を介した疾患または病状の治療または予防のための製剤の使用方法を提供する。
【0006】
【化1】
【0007】
一態様では、本発明は、活性成分として、化合物1の遊離塩基、または好ましい実施形態では化合物1のメシル酸塩(1・MeSOH、化合物2)と、1以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、化合物1は、形態2Aと称されるメシル酸塩の結晶形態であり、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値を含むX線粉末回折パターンを有する:11.1°±0.2°、12.6°±0.2°、13.8°±0.2°、14.7°±0.2°、15.5°±0.2°、16.7°±0.2°、17.9°±0.2°、19.3°±0.2°、20.9°±0.2°、22.1°±0.2°、23.2°±0.2°、25.2°±0.2°、および25.8°±0.2°。
【0009】
いくつかの実施形態では、化合物1は、形態2Bと称されるメシル酸塩(化合物2)の結晶形態であり、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンにおいて、以下の2θ値を含むX線粉末回折パターンを有する:9.7℃±0.2°、12.8℃±0.2°、15.7℃±0.2℃、18.2℃±0.2℃、20.3℃±0.2°、25.1°±0.2°、25.6°±0.2°、および26.8°±0.2°。
【0010】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、ラクトース一水和物、無水ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、二水和物または無水リン酸二カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される1つ以上の充填剤を含み、前記充填剤のそれぞれは、製剤の約15重量%~約50重量%である。
【0011】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、デンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウム、クロスポビドン、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1つ以上の崩壊剤を含み、前記崩壊剤のそれぞれは、製剤の約1重量%~約10重量%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク(「タルカムパウダー」)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、および二酸化ケイ素からなる群から選択される1つ以上の潤滑剤を含み、前記潤滑剤のそれぞれは、製剤の約1重量%~約10重量%である。
【0013】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、アカシア、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、トラガカント、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)およびベントナイトからなる群から選択される1つ以上の結合剤を含み、前記結合剤のそれぞれは、製剤の約5重量%~約30重量%である。
【0014】
本発明の別の態様は、治療有効量の本明細書に記載の製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、EGFR活性に関連する疾患または障害を治療する方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、EGFRの1つ以上の変異体に関連している。いくつかの実施形態では、EGFRの1つ以上の変異体は、L858R活性化変異体L858R、delE746-A750、G719S;エクソン19欠失活性化変異体;およびT790M耐性変異体から選択される。いくつかの実施形態では、疾患または障害は癌である。
【0016】
本発明の他の態様は、EGFRの1つ以上の変異体に関連する疾患または症状、特に様々な癌の治療のための製剤の製造における、化合物1のメタンスルホン酸塩を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0017】
本発明の他の態様または利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲を考慮するとよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】結晶形態2Aにおける1・MeSOH(化合物2)のXRPDパターンを示している。
図1B】結晶形態2における1・MeSOH(化合物2)のXRPDデータを示している。
図2】化合物2(形態2A)のDSCサーモグラムを示している。
図3】化合物2(形態2A)のTGAサーモグラムを示している。
図4A】結晶形態2Bにおける化合物2のXRPDパターンを示している。
図4B】結晶形態2Bにおける化合物2のXRPDデータを示している。
図5】化合物2(形態2A)のTGA-MSサーモグラムを示している。
図6】化合物2(形態2B)のDSCサーモグラムを示している。
図7】50℃での製剤1の安定性試験におけるコントロールとして化合物2のHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示している。
図8】50℃での製剤1の安定性試験のHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示している。
図9】相対湿度75%、40℃での製剤1の安定性試験のHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
化合物1は、活性化変異に加えてT790M二重変異体のキナーゼドメインを効果的に阻害し、したがって、現在使用されている可逆的阻害剤の治療で観察された耐性を克服する。非小細胞肺癌(NSCLC)におけるEGFRの役割は十分に確立されているため、化合物1は非小細胞癌の治療のための新規治療薬である。
【0020】
【化2】
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物1の薬学的に許容される塩、および化合物1またはその薬学的に許容される塩の製剤を提供する。この製剤は、望ましい薬物動態プロファイルを保証するだけでなく、長期間にわたって優れた安定性を示す。
【0022】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤または担体」という用語は、それ自体は治療薬ではない任意の物質であるが、治療薬を患者に送達するための担体、希釈剤、アジュバント、結合剤、潤滑剤、崩壊剤および/またはビヒクルとして使用されるか、または医薬組成物に加えて、その取り扱いまたは貯蔵特性を改善するか、投与のための化合物または医薬組成物の単位剤形への形成を可能または促進するあらゆる物質を指す。薬学的に許容される賦形剤は、製薬分野で知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版(Lippincott Williams&Wilkins、メリーランド州ボルチモア、2005年)および医薬品添加物ハンドブック、米国医薬品協会、ワシントンDC、(たとえば、第1、第2、第3版、1986、1994、2000年)に開示されている。当業者に知られているように、薬学的に許容される賦形剤は、様々な機能を提供することができ、湿潤剤、緩衝剤、懸濁剤、潤滑剤、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、防腐剤、界面活性剤、着色剤、香味料および甘味料などとして説明することができる。
【0023】
本明細書で使用される「対象」または「患者」という用語は、ヒトを含むがこれに限定されず、哺乳類を意味する。したがって、本明細書に開示される方法は、人間の治療および獣医学の用途に有用であり得る。一実施形態では、患者は哺乳類である。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。いくつかの実施形態では、患者は犬、猫、馬などの哺乳類である。
【0024】
本明細書で使用される冠詞「a」および「an」は、特に明記しない限り、「1つ以上」または「少なくとも1つ」を指す。すなわち、不定冠詞「a」または「an」による本発明の任意の要素または構成要素への言及は、複数の要素または構成要素が存在する可能性を排除しない。
【0025】
本明細書で使用される「約」という用語は、材料量のモル比および温度の範囲などの特定の好ましい動作範囲が固定的に決定されないことを示すために使用される。通常のスキルを有する者の経験からのガイダンスが不足している場合、文脈からのガイダンスが不足している場合、より具体的なルールが以下に列挙されていない場合、「約」の範囲は終了点の絶対値の10%以下か、または記載されている範囲の10%以下のいずれか小さい方でなければならない。
【0026】
「治療する」または「治療」という用語は、(i)疾患、障害、または症状を阻害する、すなわち、その進行を停止すること、または(ii)疾患、障害、または症状を緩和する、すなわち、疾患、障害、および/または症状の退行を引き起こすことを意味する。したがって、一実施形態では、「治療する」または「治療」は、治療される対象によって識別されないかもしれないが、1つ以上の身体的パラメータを改善することを含む疾患または障害を改善することを意味する。別の実施形態において、「治療する」または「治療」とは、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)または生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)またはその両方の疾患または障害を調節することを含む。
【0027】
医薬製剤
本発明の一態様は、化合物1またはその薬学的に許容される塩と、1以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬製剤を提供する。いくつかの実施形態において、活性成分化合物1は、製剤中において遊離塩基形態である。いくつかの実施形態において、有効成分は、化合物1の薬学的に許容される塩である。塩を形成するのに適した酸の非限定的な例には、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸、およびクエン酸が含まれる。とりわけこれらの塩、およびそれぞれの結晶形態は、本出願人による国際出願番号PCT/US2017/037872に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
製剤中の化合物1またはその薬学的に許容される塩の量は、標的治療、投与計画、および実際の賦形剤などの要因に依存する。しかし、製剤中の化合物1またはその薬学的に許容される塩の例示的な範囲は、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約30重量%、約15重量%~約35%、約15重量%~約30重量%、および約15重量%~約25重量%である。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、製剤中の活性成分は、化合物1のメシル酸塩(すなわち、化合物2)である。
【0030】
【化3】
【0031】
一実施形態では、本発明は、CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンが以下の2θ値:12.6°±0.2°、15.5°±0.2°、17.9°±0.2°、22.1°±0.2°、および25.2°±0.2°を含む、形態2Aと称されるメシル酸塩の結晶形態を含む医薬製剤を提供する。結晶形態2Aは、1つ以上の以下の特性を有する:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンが、以下の2θ値を2つ以上さらに含む:11.1°±0.2°、13.8°±0.2°、14.7°±0.2°、16.7°±0.2°、19.3°±0.2°、20.9°±0.2°、23.2°±0.2°、および25.8°±0.2°
(b)示差走査熱量測定で測定される融点の開始温度が約233.3℃、および/またはピーク温度が約238.1℃である;
(c)実質的に図1に示されるX線粉末回折パターン;
(d)実質的に図2に示される示差走査熱量測定サーモグラム;および/または
(e)実質的に図3に示される熱重量分析サーモグラム。
【0032】
他の実施形態において、本発明は、以下の特性の1つ以上を有することを特徴とする形態2Bと呼ばれるメシル酸塩の結晶形態を含む医薬製剤を提供する:
(a)CuKα放射線を使用して測定されるX線粉末回折パターンが以下の2θ値を3つ以上含む:9.7°±0.2°、12.8°±0.2°、15.7°±0.2°、18.2°±0.2°、20.3°±0.2°、25.1°±0.2°、25.6°±0.2°、および26.8°±0.2°;
(b)実質的に図4A図4Bとに示されるX線粉末回折パターン;
(c)実質的に図6に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム;および/または
(d)実質的に図5に示される熱重量分析サーモグラムを有する。
【0033】
本発明の製剤は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。賦形剤の非限定的な例には、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、pH調整剤、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、賦形剤は、充填剤、結合剤、崩壊剤、および潤滑剤から選択される1つ以上を含む。製剤中の賦形剤の量は、すべての部分範囲を含めて、で約10重量%~約98重量%の範囲である。賦形剤の量の例は、約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約30重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、および約95重量%である。
【0034】
適切な充填剤としては、これらに限定されないが、ラクトース一水和物、無水ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、セルロース(特に微結晶セルロース)、二水和物または無水リン酸二カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムが含まれる。各充填剤は、製剤の約15重量%~約70重量%、約15重量%~約60重量%、約15重量%~約50重量%、約20重量%~約60重量%、または約20重量%~約50重量%を占める。いくつかの実施形態では、充填剤は、第1の充填剤として微結晶セルロースと、一水和物ラクトース、無水ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、二水和物または無水リン酸二カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される第2の充填剤と、を含む。
【0035】
適切な結合剤としては、これらに限定されないが、アカシア、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、トラガカント、キサンタン樹脂、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)、ベントナイトが含まれる。各結合剤は、製剤の約1重量%~約50重量%、約5重量%~約50重量%、約10重量%~約50重量%、約5重量%~約30重量%、または約5重量%~約20重量%を占める。
【0036】
適切な崩壊剤には、これらに限定されないが、デンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウム、クロスポビドン、および低置換ヒドロキシプロピルセルロースが含まれる。各崩壊剤は、製剤の約1重量%~約10重量%、約1重量%~約7重量%、約1重量%~約5重量%、または約2重量%~約4重量%を占める。いくつかの実施形態において、崩壊剤は、デンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ケイ酸アルミニウム、クロスポビドン、および低置換ヒドロキシプロピルセルロースから選択される1、2、3、または4つからなる。
【0037】
適切な潤滑剤としては、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク(「タルカムパウダー」)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素が含まれる。各潤滑剤は、製剤の約1重量%~約10重量%、約1重量%~約7重量%、約1重量%~約5重量%、または約2重量%~約4重量%を占める。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク(「タルカムパウダー」)、ポリエチレングリコール(「PEG」)、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素から選択される1、2、3、または4つからなる。いくつかの実施形態では、製剤はラウリル硫酸ナトリウムを実質的に含まない。
【0038】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを含むことが場合によっては好ましい。
【0039】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから実質的になることが場合によっては好ましい。このタイプの製剤の特定の例は、実施例3および表1に実質的に記載されている製剤1である。
【0040】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを含むことが場合によっては好ましい。
【0041】
一実施形態では、製剤中の薬学的に許容される賦形剤は、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから実質的になることが場合によっては好ましい。このタイプの製剤の特定の例は、実施例4および表2に実質的に記載されている製剤2である。
【0042】
本発明の剤形の例には、カプセル、錠剤、サシェ、または顆粒粉末が含まれる。単位剤形は、例えば、約1mgから約1000mgの化合物1またはその薬学的に許容される塩を含む。単位剤形中の化合物1またはその薬学的に許容される塩の量の非限定的な例には、約1mg、約5mg、約7.5mg、約10mg、約25mg、約35mg、約40mg、または約50mgが含まれる。剤形は、1つ以上の単位剤形を含んでもよい。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「メタンスルホン酸塩(methanesulfonic acid salt)」、「メタンスルホン酸塩(methanesulfonate salt)」、「メシル酸塩(mesylate salt)」などは互換的に使用される。それらは、一般式1・MeSOH、すなわち化合物2を有する酸付加塩を意味する。好ましくは、塩は、化合物1およびメタンスルホン酸を1:1のモル比で、または実質的に1:1のモル比で含む。しかし、当業者が理解するように、比率は正確に1:1であってもなくてもよい。したがって、1:0.8から1:1.2の範囲の1とMeSOHとの間の比を有するこのタイプの付加塩は、好ましくは1:0.9から1:1.1の範囲内、より好ましくは1:0.95から1:1.05の範囲内で制御される1とMeSOHとの塩とみなされるべきである。当業者が理解するように、任意の比率での化合物1とメタンスルホン酸との共存はメシル酸塩、すなわち化合物2を形成する可能性が高いが、比率に応じて、化合物1または酸のいずれかがそれぞれ遊離塩基または遊離酸として部分的に存在してもよい。
【0044】
化合物1のメシル酸塩は、結晶形態およびそれが生成される溶媒に応じて、水(水和物)、メタノール、THFなどのさまざまな量の溶媒分子を含む溶媒和物の形であってもよい。これらの塩形態または溶媒和物形態のすべては、本明細書に開示された方法を実質的に使用して製剤化することができ、それらはすべて本発明に含まれる。
【0045】
製剤の治療的使用
他の態様において、本発明は、本明細書に開示される任意の実施形態による化合物1のメタンスルホン酸塩を含む医薬製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、EGFR活性に関連する疾患または障害を治療する方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、EGFRの1つ以上の変異体に関連している。
【0047】
いくつかの実施形態では、EGFRの1つ以上の変異体は、L858R活性化変異体L858R、delE746-A750、G719S;エクソン19欠失活性化変異体;およびT790M耐性変異体から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は癌である。
【0049】
いくつかの実施形態では、癌は、脳癌、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、リンパ腫、甲状腺腫瘍、またはそれらの合併症から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、癌は脳癌または肺癌である。
【0051】
いくつかの実施形態では、癌は転移性脳癌である。
【0052】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願番号PCT/US2017/032066に開示されているように、化合物1は、転移性脳癌を含む脳癌の治療に使用することができる。したがって、本発明の製剤は、これらの症状の患者の治療に特に有用である。これらの治療用途に特に有用な製剤には、本明細書に開示されている製剤1および製剤2が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、疾患または障害を治療する方法の任意の実施形態は、患者への第2の治療薬の投与と組み合わせて使用される。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は化学療法薬である。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2の治療薬は異なるEGFRモジュレーターである。
【0056】
他の態様において、本発明は、患者の生体試料を本明細書に開示される任意の実施形態による製剤と接触させることを含む、対象におけるEGFRの変異体を阻害する方法を提供する。
【0057】
他の態様において、本発明は、EGFR活性に関連する疾患または障害の治療のための医薬品の製造における、本明細書に開示された任意の実施形態による製剤の使用を提供する。
【0058】
この態様のいくつかの実施形態において、疾患または障害は、脳癌、肺癌、腎臓癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、黒色腫、皮膚癌、副腎癌、子宮頸癌、リンパ腫、甲状腺腫瘍およびそれらの合併症からなる群より選択される癌である。
【0059】
この態様のいくつかの実施形態において、疾患または障害は脳癌または肺癌である。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、疾患または障害の発症を遅らせるため、または疾患、障害、および/または症状の素因があるが、まだ診断されていない対象に疾患、障害または症状が生じるのを防ぐために使用することができる。
【0061】
本発明の他の態様は、実質的に説明および図示されているように、本明細書に開示されている任意の実施形態にしたがって製剤を調製する方法プロセスを提供する。
【0062】
医薬製剤は、単位用量あたり所定量の活性成分を含む単位用量形態で提供されてもよい。典型的には、本開示の医薬製剤は、1日あたり約1~約5回、あるいは連続注入として投与される。そのような投与は、慢性または急性療法として使用できる。単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される状態、状態の重篤度、投与回数、投与経路、使用された化合物の排泄率、治療期間、患者の年齢、性別、体重、状態によって変わる。好ましい単位用量製剤は、本明細書で上記に列挙したように、活性成分の1日用量またはサブ用量、またはその適切な量を含むものである。一般に、治療は化合物の最適用量よりも実質的に少ない量で開始される。その後、状況下で最適な効果が得られるまで、投与量を少しずつ増やす。一般に、化合物は、実質的に有害または有害な副作用を引き起こすことなく一般に効果的な結果をもたらす濃度レベルで投与することが最も望ましい。
【0063】
本開示の製剤が化合物1またはその薬学的に許容される塩の結晶形態と、1つ以上、好ましくは1つまたは2つの追加の治療薬または予防薬との組み合わせを含む場合、化合物1および追加薬の両方は、単独療法レジメンで通常投与される用量の約10~150%、より好ましくは約10~80%の用量レベルで通常存在する。
【0064】
医薬製剤は、任意の適切な経路、例えば、経口(口腔または舌下を含む)、直腸、鼻、局所(口腔、舌下、または経皮を含む)、膣、または非経口(皮下、皮内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、静脈内、もしくは皮内注射または注入を含む)経路で投与される。
【0065】
そのような製剤は、薬学の分野で知られている任意の方法、例えば、活性成分を担体または賦形剤と結合させることにより調製することができる。経口投与または注射による投与が好ましい。
【0066】
経口投与に適した医薬製剤は、カプセルや錠剤;粉末または顆粒;水性または非水性液体の溶液または懸濁液;食用フォームまたはホイップ;または水中油型液体エマルジョンまたは油中水型エマルジョンなどの個別のユニットとして存在し得る。
【0067】
例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合、活性薬物成分は、エタノール、グリセロール、水などの経口の無毒の薬学的に許容される不活性担体と組み合わせることができる。粉末は、化合物を適切な微細サイズに粉砕し、例えばデンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物などの同様に粉砕された医薬担体と混合することにより調製される。香料、防腐剤、分散剤、および着色剤も存在し得る。
【0068】
カプセルは、上記のように粉末混合物を調製し、形成されたゼラチン鞘に充填することにより作成される。コロイダルシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固体ポリエチレングリコールなどの流動促進剤および潤滑剤を、充填操作の前に粉末混合物に加えることができる。寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤も添加して、カプセルを摂取するときの製剤の有効性を改善することができる。
【0069】
錠剤は、例えば、粉末混合物の調製、造粒またはスラッギング、潤滑剤および崩壊剤の添加、および錠剤への圧縮によって製剤化される。粉末混合物は、例えば、適切に粉砕された化合物を、上記の希釈剤または基剤、および任意で、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、もしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなどの溶液遅延剤、四級塩などの吸収促進剤、および/またはベトナイト、カオリン、もしくはリン酸二カルシウムなどの吸収剤などと混合することにより調製される。粉末混合物は、シロップ、デンプンペースト、アカディア粘液、またはセルロースもしくはポリマー材料の溶液などの結合剤で湿らせ、スクリーンに押し込むことにより造粒することができる。造粒の代替として、粉末混合物を錠剤機に通すことができ、その結果、不完全に形成されたスラグが破壊され顆粒になる。顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱油の添加により、錠剤成形金型への粘着を防ぐために潤滑化されうる。潤滑化された混合物は、次に錠剤に圧縮される。本開示の化合物は、自由流動性不活性担体と組み合わせて、顆粒化またはスラッギングステップを経ることなく、直接錠剤に圧縮することもできる。シェラックのシーリングコート、砂糖または高分子材料のコーティング、およびワックスのつや出しコーティングからなる透明または不透明な保護コーティングが提供されうる。異なる単位用量を区別するために、染料がこれらのコーティングに追加されうる。
【0070】
適切な場合、経口投与用の投与単位製剤はマイクロカプセル化することができる。製剤は、例えば、粒子材料をポリマー、ワックスなどにコーティングまたは埋め込むことにより、放出を延長または持続するように調製することもできる。
【0071】
以下の非限定的な実施例は、本発明の特定の態様をさらに説明するものである。
【実施例
【0072】
(実施例)
実施例1
化合物1の調製
N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド(1)
【0073】
【化4】
【0074】
【化5】
【0075】
ステップ1。THF(550mL)および水(120mL)中、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-6-メトキシ-N-l-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ベンゼン-1,3ジアミンの溶液(A、国際出願番号PCT/US15/65286のように調製した;1当量、16.8g、26.2mmolモル)を0~5℃に冷却した。塩化アクリロイル(1.0当量、3.3mL)を30分かけて滴下した。2時間後、追加の塩化アクリロイル(0.4mL)を10分間かけて加え、混合物を1時間撹拌した。NaOH(2当量、2.8g、68.0mmol)を加え、混合物を30分間撹拌し、次いで部分的に濃縮してTHFを除去した。水相をジクロロメタン(900mL)で抽出し、有機相をNaSOで乾燥し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ジクロロメタン/MeOH、80:1~20:1勾配)で精製して化合物1(14.0g)を得て、必要に応じてステップ2にしたがってさらに精製した。
【0076】
ステップ2。850mLのTHF中のステップ1のように調製した化合物1(1当量、22.5g、46.3mmol)の溶液に、NaOH(203mLのHOに9g溶解)を5分かけて加えた。混合物を攪拌しながら50分間60℃に加熱し、その後10~20℃に冷却し、1N HCl(180mL)を20分かけて添加した。層を分離し、水相をジクロロメタン(2×400mL)で抽出した。有機相を合わせて、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ジクロロメタン/MeOH 20:1)で精製して固体を得て、これをジクロロメタン/ヘプタン(2:3)に溶解し、濃縮して、19.5gの化合物1を結晶性固体として得た。
【0077】
H NMR(400MHz,CDOD) δppm 2.42(s,6H)、2.80(br t,J=5.0Hz,2H)、3.98(s,3H)、3.92(s,3H)、4.21(br t,J=5.0Hz,2H)、5.79(dd,J=10.2,1.4Hz,1H)、6.39(dd,J=16.9,1.4Hz,1H)、6.64(dd,J=16.9,10.2Hz,1H)、6.83(s,1H)、7.15-7.30(m,3H)、7.46(d,J=7.6Hz,1H)、8.16-8.30(m,2H)、8.52(s,1H)、9.29(s,1H)。
【0078】
実施例2
メタンスルホン酸塩の調製(化合物2、結晶形2Aおよび2B)
N-(2-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドメタンスルホネート(1:1)(2)
【0079】
【化6】
【0080】
4mLのTHF中の100mgの化合物1(遊離塩基)の溶液に、0.164mLの水中の21.7mgのメタンスルホン酸の溶液を加え、溶液を室温で一晩撹拌した。8000rpmで5分間の遠心分離により沈殿物を単離した。真空下、30℃で一晩乾燥させた後、60mgのメタンスルホン酸塩、結晶形態2Aを得た。
【0081】
H NMR (400MHz,CDOD) δppm 2.73(s,3H)、3.06(s,6H)、3.65-3.72(m,2H)、3.94(s,3H)、4.00(s,3H)、4.54-4.60(m,2H)、5.86(br d,J=10.0Hz,1H)、6.40-6.48(m 1H)、6.56-6.66(m,1H)、6.98(s,1H)、7.20-7.34(m,3H)、7.50(d,J=8.0Hz,1H)、8.11(br d,J=6.0Hz,1H)、8.35(br d,J=7.8Hz,1H)、8.42(s,1H)、8.50(br s,1H).
Anal. Calcd. for C2834S:C,57.72;H,5.88;N,14.42;O,16.47;S,5.50.
Found:C,57.76;H,5.85;N,14.45;O,16.34;S,5.60;C2730・1.0CHSOH。
【0082】
形態2Aはベージュ色の結晶性粉末である;そして、そのXRPDパターンは図1に示される。複屈折を示し、示差走査熱量測定(DSC)分析において、融点より前に-0.40%の重量損失を有し、かつ融点の開始温度が233.3℃である融点と(図2)、重量損失熱重量分析(TGA)において170℃から210℃で-0.035%の重量損失(図3)とを示している。
【0083】
多形スクリーニング研究は、スラリー、溶媒-熱加熱/冷却、逆溶媒沈殿、固体加熱-冷却、および粉砕方法により、形態2Aで実施された。室温で逆溶剤としてジオキサンを使用して水溶液から沈殿させることにより、1つの新しい結晶形態、形態2Bが得られた。形態2Bは、形態2Aの水和物形態であってもよく、形態2Aと比較して、より低い結晶化度、より低い融点およびより高い重量損失を示す。形態2BのXRPD、TGA-MS、およびDSC分析が図4,5および6にそれぞれ示されている。その明白な優れた安定性のために、限定することを意図するものではないが、結晶形態2Aは、この出願ではメタンスルホン酸塩(化合物2)の製剤を調製するために使用されている。
【0084】
実施例3
メタンスルホン酸塩の製剤1の調製(2)
微結晶セルロース(392.43mg)、リン酸二カルシウム(735.35mg)、デンプングリコール酸ナトリウム(45.09mg)、二酸化ケイ素(15.03mg)、およびステアリン酸マグネシウム(15.03mg)を組み合わせて、表1に示された量および割合で、ボルテックスミキサーでブレンドした。得られた混合物を#35メッシュふるいを通して濾過して、混合物Aを得た。混合物Aの20.05mg部分を結晶形態2Aの5.0mgの1・Ms(C2730・1.06CHSOH、純度=100%)と合わせ40mLガラスバイアルに入れ、ボルテックスミキサーで完全にブレンドして、表1で計算された理論的組成を持つ製剤1を得た。
【0085】
すべてのサンプルは、-20℃、50℃、40℃/75%相対湿度の温度で2週間および4週間、安定性チャンバー内で保管し、安定性を分析した。閉じた皿のサンプルに蓋をして、パラフィルムで密封した。開いた皿のサンプルは、ピンホールが開けられたアルミホイルで覆った。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例4
メタンスルホン酸塩の製剤2の調製(2)
上記と実質的に同様の手順により化合物2の製剤2を調製し、分析した。微結晶セルロース(545.23mg)、ラクトース一水和物(495.71mg)、ラウリル硫酸ナトリウム(7.51mg)、クロスカルメロースナトリウム(42.58mg)、二酸化ケイ素(14.19mg)、およびステアリン酸マグネシウム(14.19mg)を組み合わせて、表1に示す量と割合で、ボルテックスミキサーでブレンドした。この実施例では、結晶形態2Aをすべてのサンプルの調製に使用した。得られた混合物を#35メッシュふるいを通して濾過して混合物Bを得た。混合物Bの18.65mg部分を、結晶形2Aの5.0mLの1・Ms(C2730・1.06CHSOH、純度=100%)と合わせ40mLガラスバイアルに入れ、ボルテックスミキサーで完全にブレンドして、表2で計算した理論組成を持つ製剤1を得た。すべてのサンプルは、-20℃、50℃、40℃/75%相対湿度の温度で2週間および4週間、安定性チャンバー内に保管し、安定性を分析した。
【0088】
【表2】
【0089】
実施例5
メタンスルホン酸塩の製剤1の安定性試験
室温に達した後、各サンプルを10mLの希釈液(HO:MeCN=1:1v/v中の0.05%TFA)を含む40mLサンプルバイアルに加え、時々振とうしながら10分間超音波処理した。すべてのサンプルを14,000rpmで10分間遠心分離し、上清をHPLCで分析した。作業標準溶液(10mLの希釈液中に5mgの1・Ms)を参照として使用した。製剤1の結果を表3に示す。表3では、純度は全関連物質(TRS)に対するパーセント(%)として測定されている。表1と図7~9に示すように、製剤1は長期間安定だった。製剤中の化合物1の劣化は、50℃または40℃/75%相対湿度で4週間観察されなかった。
【0090】
【表3】
【0091】
当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく多数の様々な修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本明細書に記載の本発明の様々な実施例および実施形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9