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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】開閉検知センサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20220325BHJP
   G01V 8/16 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G01D5/353 C
G01V8/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020517069
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019018000
(87)【国際公開番号】W WO2019212048
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018088974
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513303898
【氏名又は名称】株式会社シミウス
(74)【代理人】
【識別番号】100167807
【弁理士】
【氏名又は名称】笠松 信夫
(72)【発明者】
【氏名】若原 正人
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107390287(CN,A)
【文献】国際公開第2017/150476(WO,A1)
【文献】特開2003-322805(JP,A)
【文献】特開2006-214844(JP,A)
【文献】特開2001-107615(JP,A)
【文献】特開2000-111319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0214068(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/353
G01V 8/16
G01B 11/00 - 11/30
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを利用した開閉検知センサであって、
第1のベース部材と、
前記第1のベース部材に対して移動可能に配置される第2のベース部材と、
前記第1のベース部材と前記第2のベース部材との間隔に応じてブラッグ波長が変動するFBG(Fiber Bragg Grating)部を備える光ファイバと、
検知対象物の開閉に伴って、前記検知対象物の開状態及び閉状態の一方の状態に対応する第1の位置と、他方の状態に対応する第2の位置とにわたって移動する移動部材と、
前記移動部材に設けられ、前記第1の位置と前記第2の位置の間に位置する第3の位置と前記第2の位置との間において前記第2のベース部材と当接して前記第2のベース部材を前記移動部材とともに移動させ、前記第2のベース部材を前記第1のベース部材から離れる方向に移動させる係止部と、
を備える開閉検知センサ。
【請求項2】
前記光ファイバの前記FBG部を含む部分が直線状に配置され、前記第2のベース部材及び前記移動部材が当該直線状に配置された光ファイバの軸方向に沿って移動する請求項1記載の開閉検知センサ。
【請求項3】
前記移動部材に対して、前記第1の位置から前記第2の位置へ向かう方向に付勢力を付与する付勢部材をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の開閉検知センサ。
【請求項4】
前記移動部材が前記検知対象物に当接する当接部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の開閉検知センサ。
【請求項5】
前記移動部材が中空部材により構成され、前記第1のベース部材、第2のベース部材及び光ファイバが、前記移動部材の内部に配置される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の開閉検知センサ。
【請求項6】
前記第1のベース部材と前記第2のベース部材とが接触している状況下において、前記FBG部に前記光ファイバの軸方向に沿う圧縮力が付与された状態で、前記光ファイバが前記第1のベース部材及び第2のベース部材に固定される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の開閉検知センサ。
【請求項7】
前記第1のベース部材上に温度補償用のFBG部をさらに備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の開閉検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール蓋や扉等の開閉状態を検知するセンサに関し、特に、FBG(Fiber Bragg Grating)を備える光ファイバを利用する開閉検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セキュリティー強化の観点で、マンホール蓋や扉等に、開閉状態を検知するためセンサが設置されている。この種の開閉検知センサとして、近年、光ファイバセンサが使用されている(例えば、特許文献1から特許文献4等。)。光ファイバセンサを利用した開閉検知センサでは、複数の検知対象物のそれぞれに配置されたセンサを直列に接続することで、複数の検知対象物の開閉状態を同時に監視することができる。また、各センサへの給電が不要であるため、各センサに給電用の配線を配置する必要もない。そのため、都市部に設けられた下水管路のマンホール蓋や、データセンタにおいてサーバを格納するサーバラックの扉等、多数の検知対象物の開閉状態を比較的容易に同時監視することができる。このような開閉検知センサでは、蓋や扉の開閉状態の変更に応じて光ファイバが変形するように構成され、光ファイバ中を伝送される光の反射状態や散乱状態が光ファイバの変形に応じて変化することを利用して検知対象物の開閉状態を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-322805号公報
【文献】特開2007-024527号公報
【文献】特開平01-110217号公報
【文献】特開2010-140501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のように、光ファイバは、周囲温度が変動した場合、膨張や収縮によって変形したり、屈折率が変動したりする。したがって、光ファイバ中を伝送される光の反射状態や散乱状態、すなわち、センサ出力値も周囲温度に応じて変動することになる。温度変動に起因するセンサ出力値の変動は、光ファイバの変形等が温度変動に伴って発生するため比較的長い時間を要することになる。そのため、従来は、センサ出力値の時間変化率があらかじめ指定された閾値より小さいものは、温度変動に起因するセンサ出力値の変動であると識別して、検知対象物の開閉状態は変化していないと判定していた。
【0005】
しかしながら、検知対象物の開閉状態が極めてゆっくりと変更された場合、センサ出力値もゆっくりと変動することになる。すなわち、センサ出力値の時間変化率が上述の閾値よりも小さくなる状態で検知対象物の開閉状態が変更された場合、当該開閉状態の変更は温度変動に起因するセンサ出力値の変動と判定され、検知できないことになる。
【0006】
また、検知対象物の開閉状態の変更頻度が極めて少ない場合、光ファイバの形状が長期間維持される形状に固定される可能性もある。例えば、マンホール蓋の開閉を検知する場合において、閉状態にあるときに光ファイバに外力が付与され、開状態にあるときに当該外力が開放される構成であるとする。この場合、マンホール蓋は閉状態で長期間維持されるため光ファイバは外力により変形した状態で長期間維持される。このような状況下においてマンホール蓋が開状態になり、光ファイバに付与された外力が開放されたとしても、閉状態が極めて長期間にわたって継続していると、光ファイバの形状が閉状態の形状に固定化される結果、光ファイバが元の形状に戻り難くなることがある。このような状況が発生すると、開閉状態の変動を正確に検知することができず、検知感度が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであって、検知対象物の開閉状態が極めてゆっくりと変更された場合や開閉状態の変更頻度が極めて少ない状況下でも、当該開閉状態の変更を確実に検知することができる開閉検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、光ファイバを利用した開閉検知センサを前提としている。そして、本発明に係る開閉検知センサは、第1のベース部材、第2のベース部材、光ファイバ、及び移動部材を備える。第2のベース部材は、第1のベース部材に対して移動可能に配置される。光ファイバは、第1のベース部材と第2のベース部材との間隔に応じてブラッグ波長が変動するFBG(Fiber Bragg Grating)部を備える。移動部材は、検知対象物の開閉に伴って、検知対象物の開状態及び閉状態の一方の状態に対応する第1の位置と、他方の状態に対応する第2の位置とにわたって移動する。また、当該移動部材は係止部を備える。係止部は、第1の位置と第2の位置の間に位置する第3の位置と第2の位置との間において第2のベース部材と当接して第2のベース部材を移動部材とともに移動させ、第2のベース部材を第1のベース部材から離れる方向に移動させる。
【0009】
本発明の開閉検知センサによれば、検知対象物の開閉に伴って移動部材が移動し、当該移動部材が特定位置(第3の位置)に到達したときに、瞬間的にFBG部に張力が付与される、あるいは、FBG部に付与されていた張力が瞬間的に開放される。そのため、検知対象物の開閉状態が極めてゆっくりと変更された場合でも、当該開閉状態の変更をブラッグ波長のシフトとして確実に検知することができる。
【0010】
この開閉検知センサにおいて、例えば、光ファイバのFBG部を含む部分が直線状に配置され、第2のベース部材及び移動部材が当該直線状に配置された光ファイバの軸方向に沿って移動する構成を採用することができる。
【0011】
また、移動部材に対して、第1の位置から第2の位置へ向かう方向に付勢力を付与する付勢部材をさらに備える構成を採用することもできる。さらに、移動部材が検知対象物に当接する当接部を備える構成を採用することもできる。以上の構成において、移動部材が中空部材により構成され、第1のベース部材、第2のベース部材及び光ファイバが、移動部材の内部に配置される構成を採用することもできる。加えて、第1のベース部材と第2のベース部材とが接触している状況下において、FBG部に光ファイバの軸方向に沿う圧縮力が付与された状態で、光ファイバが第1のベース部材と第2のベース部材とに固定される構成を採用することもできる。なお、第1のベース部材上に温度補償用のFBG部をさらに備える構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検知対象物の開閉状態が極めてゆっくりと変更された場合や開閉状態の変更頻度が極めて少ない状況下でも、当該開閉状態の変更を確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)及び図1(b)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサの構造の一例を示す図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサが備えるセンサ部の構造の一例を示す図である。
図3図3(a)から図3(c)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサが備える移動部材と移動ベースとの関係を示す図である。
図4図4(a)から図4(c)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサが備える移動部材と移動ベースとの関係を示す図である。
図5図5(a)から図5(d)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサの反射光スペクトルの一例を示す図である。
図6図6(a)から図6(d)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサの反射光スペクトルの一例を示す図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサの動作状態と反射光スペクトルの変動との関係を示す図である。
図8図8(a)から図8(d)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサの適用例を示す図である。
図9図9(a)から図9(d)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサの適用例を示す図である。
図10図10は、本発明の一実施形態における開閉検知センサが備えるセンサ部の構造の他の例を示す図である。
図11図11(a)から図11(d)は、本発明の一実施形態における開閉検知センサの反射光スペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。図1(a)及び図1(b)は、本実施形態における開閉検知センサの構造の一例を示す図である。図1(a)は、本実施形態における開閉検知センサ1の外観を示す概略図である。図1(b)は、本実施形態における開閉検知センサ1の内部構造を示す概略図である。
【0015】
図1(a)及び図1(b)に示すように、開閉検知センサ1は、一方側の開放端が閉塞された円筒状のケース10内にセンサ部20と移動部材30とが配置された構造を有する。ケース10の閉塞側端部10a(以下、基端部10aという。)には断面L字状の取付具11が固定されている。開閉検知センサ1は、取付具11が備える貫通溝11aに挿入されるネジ等により所望の対象物に固定される。この例では、貫通溝11aはケース10の軸方向に沿って設けられており、開閉検知センサ1を対象物に固定する際に、当該軸方向に沿う位置の調整が可能になっている。なお、特に限定されないが、本実施形態では、ケース10の外径は30mm程度であり、軸方向の全長は80mm程度である。
【0016】
ケース10の先端部10bには、移動部材30が出入自在に配置されている。移動部材30は円筒状部材で構成されており、ケース10の先端部10bに対して出入する部分は、先端部10bの内径に整合する外径を有している。ケース10の外部に露出する側の移動部材30の開放端はゴム等の樹脂製の蓋部材で閉塞されており、当該蓋部材が検知対象物に当接する当接部30aを構成している。
【0017】
また、移動部材30は、基端部10aから先端部10bに向かう方向に、ケース10の軸に沿って付勢されている。後述の図3(b)、図4(b)に示すように、本実施形態の移動部材30では、ケース10の内側に収容される部分の外径は、ケース10の先端部10bを出入りする部分の外径より小さくなっている。また、ケース10において、移動部材30の外径が小さくなっている部分と対向する部位の内径は、先端部10bの内径よりも大きくなっている。このような構成により、ケース10の内部では、移動部材30の外周面とケース10の内周面との間にリング状の空間が形成されている。本実施形態では、当該空間に、付勢部材として、ケース10の軸と同軸につる巻きバネ12が配置されている。つる巻きバネ12は、一方端がケース10の基端部10aに当接し、他方端が移動部材30の外周面に設けられた段差30bに当接している。
【0018】
例えば、検知対象物がマンホール蓋である場合、本実施形態の開閉検知センサ1は、閉状態にあるマンホール蓋の裏面(マンホール側の面)に対してケース10の軸が垂直となる状態で配置される。このとき、当接部30aはマンホール蓋裏面に接触しており、移動部材30はつる巻きバネ12による付勢力に抗してケース10の内部に押し込まれた状態にある。この場合、マンホール蓋が閉状態から開状態に変化すると、移動部材30がつる巻きバネ12の付勢力によりケース10の先端部10bから軸方向外側に突出する状態になる。開閉検知センサ1は、このような移動部材30の移動を検知することで検知対象物の開閉状態を検知する。なお、ケース10の軸方向に沿う移動部材30の長さは、移動部材30がケース10の内部に押し込まれた際に、ケース10の基端部10aと干渉することのない長さに設定される(図3(b)、図4(b)参照。)。
【0019】
図1(b)に示すように、センサ部20は、半円柱部21aの軸方向の両側に円柱部21b、21cが接続された形状のベース部材21、半円柱部21aに固定されたセンサベース24、及びセンサベース24に固定された光ファイバ25を備える。特に限定されないが、本実施形態では、ベース部材21は、ステンレスからなる円柱状部材の中央部分を切削加工等により半円柱状に加工することで形成されている。
【0020】
ベース部材21は、ケース10に固定された固定ベース22(第1のベース部材)と、固定ベース22に対して移動可能な移動ベース23(第2のベース部材)を備える。本実施形態では、半円柱部21aにおいてケース10の軸に垂直な面に沿って、ベース部材21が、固定ベース22と移動ベース23とに分割されている。なお、本実施形態では、基端部10a側が固定ベース22であり、先端部10b側が移動ベース23である。また、固定ベース22の円柱部21bには、光ファイバ25をケース10の外部に引き出すための貫通孔29が設けられている。
【0021】
図2(a)及び図2(b)は、本実施形態における開閉検知センサ1のセンサ部20の構造の一例を示す図である。図2(a)は、移動ベース23が固定ベース22と接触している状態を示す模式図である。また、図2(b)は、移動ベース23が固定ベース22と離間している状態を示す図である。なお、移動ベース23と固定ベース22との間の間隔は数十マイクロメートル程度であるが、図2(b)では、説明のために比較的大きな隙間を描いている。
【0022】
図1(b)、図2(a)、図2(b)に示すように、センサベース24は、FBG(Fiber Bragg Grating)部26を備える光ファイバ25を固定支持する。センサベース24及び光ファイバ25は歪みゲージを構成しており、移動ベース23が固定ベース22に対して移動した場合に、その移動がブラッグ波長の変動として出力される。なお、ブラッグ波長の変動は、光ファイバ25の端部に接続された計測器を使用して従来の手法により取得することができる。
【0023】
特に限定されないが、本実施形態では、センサベース24は、ケース10の軸方向に沿って対向して配置された2つの板状部31、32の幅方向の両端をメアンダ状の2つの弾性部33で連結した構造を有している。板状部31、32には、ケース10の軸方向に沿う溝部34が設けられており、当該溝部34に光ファイバ25が収容される。このとき、FBG部26は板状部31と板状部32との間に配置された状態で、FBG部26の両側の光ファイバ25が板状部31と板状部32とのそれぞれに接着剤等の固定材35により固定される。なお、センサベース24の材質は特に限定されない。例えば、樹脂であってもよく、金属であってもよい。ここでは、センサベース24はステンレスにより構成されている。
【0024】
FBG部26はブラッグ波長により規定される波長の光を反射する。FBG部26は光ファイバ25のコアに所定の間隔で配置された複数の回折格子により構成され、ブラッグ波長は光ファイバの屈折率と回折格子の配置間隔との積に比例する。したがって、FBG部26が引っ張られ回折格子の間隔が拡がると、FBG部26により反射される光の波長は大きくなる。すなわち、FBG部26により反射される光の波長は、移動ベース23と固定ベース22との間隔に応じて変動し、移動ベース23が固定ベース22と接触している状態(図2(a)の状態)よりも、移動ベース23が固定ベース22と離間している状態(図2(b)の状態)の方が、FBG部26により反射される光の波長は大きくなる。なお、図中では、FBG部26を、便宜上、白黒の縞模様で表現している。
【0025】
固定ベース22及び移動ベース23へのセンサベース24の固定には、接着剤やスポット溶接等、公知の任意の手法を採用することができる。本実施形態では、固定ベース22、移動ベース23、及びセンサベース24はステンレスで構成されているため、スポット溶接により、センサベース24を固定ベース22及び移動ベース23に固定している。図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施形態では、板状部31、32は、スポット溶接用の凹部36を備えている。凹部36は、上述の溝部34の両側に配置されており、凹部36の底部がスポット溶接用の肉薄部を構成している。
【0026】
図3(a)から図3(c)及び図4(a)から図4(c)は、本実施形態における開閉検知センサ1の移動部材30と移動ベース23との関係を示す図である。図3(a)は、開閉検知センサ1の移動部材30がケース10内に押し込まれた状態を示す図である。図3(b)は、図3(a)に示すA-A線に沿う断面図である。図3(c)は、図3(b)に示す矢指部Pの近傍を拡大して示す図である。図4(a)は、開閉検知センサ1の移動部材30がケース10から突出した状態を示す図である。図4(b)は、図4(a)に示すB-B線に沿う断面図である。図4(c)は、図4(b)に示す矢指部Qの近傍を拡大して示す図である。なお、上述のように、移動ベース23と固定ベース22との間の間隔は数十マイクロメートルであるため、図2(b)とは異なり、図4(b)では隙間を描いていない。
【0027】
本実施形態の開閉検知センサ1は、検知対象物の開状態と閉状態との一方が図3(a)から図3(c)に示す状態に対応し、他方が図4(a)から図4(c)に示す状態に対応する状態で設置される。検知対象物がマンホール蓋である上述の例の場合、図3(a)から図3(c)が閉状態に対応し、図4(a)から図4(c)が開状態に対応する。以下では、説明の便宜上、図3(a)から図3(c)に示す開閉検知センサ1の状態をオン状態といい、図4(a)から図4(c)に示す開閉検知センサ1の状態をオフ状態という。
【0028】
図3(b)及び図4(b)に示すように、移動ベース23の円柱部21cの移動部材30側端部には周方向全体にわたってフランジ23aが設けられている。一方、移動部材30の内周面には、フランジ23aに係合する係止部30cが設けられている。本実施形態では、係止部30cは、周方向全体にわたって形成されている。また、移動部材30の外周面には、段差30bと当接部30aとの間に、抜け止めとして機能する段差30dが設けられている。本実施形態では、図3(b)及び図4(b)に示すように、段差30b及び段差30dは、移動部材30の外周面の周方向全体にわたって設けられた凸部の両端になっている。段差30dは、ケース10の内周面に形成された段差10cに当接することで、移動部材30がケース10の先端部10bから離脱するのを防止する。なお、特に限定されないが、本実施形態では、ケース10の軸方向において、段差30dと係止部30cとは同じ位置にある。また、段差10cは、ケース10の軸方向において、オン状態からオフ状態に移行する過程でフランジ23aと係止部30cとが初めて当接する位置よりも距離xだけ当接部30a側に位置している。
【0029】
図3(b)に示すように、オン状態では、移動部材30がケース10内に押し込まれた状態にある。このとき、係止部30cは、フランジ23aに接触しない位置(第1の位置)にあり、移動ベース23は、例えば、センサベース24の弾性部33の弾性力により、固定ベース22と接触した状態に保持される。なお、本実施形態では、図3(b)に示すように、移動ベース23を固定ベース22に向けて付勢する付勢部材をさらに備える。図3(b)に示すように、移動ベース23の移動方向を規制する円柱状のレール41が固定ベース22に固定されており、移動ベース23は当該レール41に嵌合する貫通孔42を備える。当該貫通孔42の先端部は内径が広くなっており、レール41との間に隙間が設けられている。当該隙間に付勢部材であるつる巻きバネ43が配置される。また、レール41の移動ベース23側の端部には抜け止めのボルト44が螺合されており、つる巻きバネ43の一端が当該ボルト44に当接している。なお、つる巻きバネ43の付勢力は、つる巻きバネ12の付勢力よりも小さいため、移動部材30がオン状態からオフ状態に変化するときに、移動部材30の移動を妨害することもない。
【0030】
図4(b)に示すように、オフ状態では、移動部材30がケース10の軸方向外方に突出した状態にある。オン状態からオフ状態へ変化する過程では、移動部材30の移動に伴って、係止部30cはフランジ23aに当接する(第3の位置)。そして、移動部材30は、外周面の段差30dが、ケース10の内周面の段差10cと当接する位置(第2の位置)までさらに移動する。このとき、移動ベース23は、係止部30cがフランジ23aに当接した後、段差30dが段差10cに当接するまでの間、移動部材30の移動に伴って移動する。すなわち、移動部材30は移動に伴って、移動ベース23を固定ベース22から離れる方向に移動させることになる。本実施形態では、上述のように、段差10cは、ケース10の軸方向において、フランジ23aと係止部30cとが初めて当接する位置よりも距離xだけ当接部30a側に位置しているため、移動部材30がオフ状態になると、移動ベース23は固定ベース22から距離xだけ離れることになる。例えば、FBG部26のブラック波長を、十分に検知可能な大きさである1nm変動させる移動ベース23の移動量は20マイクロメートル程度である。したがって、距離xは、数十マイクロメートルに設定することができる。なお、移動部材30が移動を開始してから係止部30cがフランジ23aに当接するまでの間は、移動部材30が移動しても移動ベース23は移動しない。
【0031】
続いて、開閉検知センサ1による開閉検知について説明する。図5(a)から図5(d)は、開閉検知センサ1がオン状態からオフ状態に変化する過程で、FBG部26のブラッグ波長を含む広帯域幅の光を光ファイバ25に入射した場合の反射光のスペクトル(以下、反射光スペクトルという。)を示す図である。図5(a)はオン状態に対応する。図5(b)はオフ状態への変化を開始してから係止部30cがフランジ23aに当接するまでの間に対応する。図5(c)は係止部30cがフランジ23aに当接してからオフ状態になるまでの間に対応する。図5(d)はオフ状態に対応する。図5(a)から図5(d)の反射光スペクトルを示す図において、横軸は反射光の波長に対応し、縦軸は反射光の強度に対応する。なお、図5(a)から図5(d)には、各状態に対応するセンサ部20の状態を模式的に示す図を併記している。また、図5(d)では、図2(b)と同様、説明のため移動ベース23の移動量を大きく描いている。
【0032】
オン状態にある場合、図5(a)に示すように、反射光スペクトルは、FBG部26のブラッグ波長である波長λ1にピークを有する。オフ状態への変化を開始してから係止部30cがフランジ23aに当接するまでの間は、上述のとおり、移動ベース23は移動しない。そのため、図5(b)に示すように、反射光スペクトルは、FBG部26のブラッグ波長λ1にピークを有する。係止部30cがフランジ23aに当接してからオフ状態になるまでの間では、移動部材30の移動に伴って移動ベース23も固定ベース22から離れる方向に移動する。そのため、FBG部26のブラッグ波長は、図5(c)に示すように、移動部材30の移動に伴って、波長が大きくなる方向にシフトする。そして、オフ状態になると、図5(d)に示すように、反射光スペクトルは、固定ベース22と移動ベース23との間の距離xに対応するFBG部26のブラッグ波長である波長λ2にピークを有する状態になる。なお、図5(c)、図5(d)では、変動前のピーク位置を破線で示している。
【0033】
また、図6(a)から図6(d)は、開閉検知センサ1がオフ状態からオン状態に変化する過程で、FBG部26のブラッグ波長を含む広帯域幅の光を光ファイバ25に入射した場合の反射光スペクトルを示す図である。図6(a)はオフ状態に対応する。図6(b)はオン状態への変化を開始してから係止部30cがフランジ23aより離脱するまでの間に対応する。図6(c)は係止部30cがフランジ23aより離脱してからオン状態になるまでの間に対応する。図6(d)はオン状態に対応する。図6(a)から図6(d)の反射光スペクトルを示す図において、横軸は反射光の波長に対応し、縦軸は反射光の強度に対応する。なお、図6(a)から図6(d)には、各状態に対応するセンサ部20の状態を模式的に示す図を併記している。また、図6(a)では、図2(b)及び図5(d)と同様、説明のため、移動ベース23の移動量を大きく描いている。
【0034】
オフ状態にある場合、図6(a)に示すように、反射光スペクトルは、固定ベース22と移動ベース23との間の距離xに対応するFBG部26のブラッグ波長である波長λ2にピークを有する。オン状態への変化を開始してから係止部30cがフランジ23aより離脱するまでの間は、移動部材30の移動に伴って移動ベース23も固定ベース22に近づく方向に移動する。そのため、FBG部26のブラッグ波長は、図6(b)に示すように、移動部材30の移動に伴って、波長が小さくなる方向にシフトする。係止部30cがフランジ23aより離脱してからオン状態になるまでの間では、移動ベース23は固定ベース22に当接する状態になり、移動ベース23は移動しない。そのため、図6(c)に示すように、反射光スペクトルは、FBG部26のブラッグ波長λ1にピークを有する。そして、オン状態でも、移動ベース23は固定ベース22に当接する状態であるため、図6(d)に示すように、反射光スペクトルは、FBG部26のブラッグ波長λ1にピークを有する。なお、図6(b)から図6(d)では、変動前のピーク位置を破線で示している。
【0035】
図7(a)及び図7(b)は、以上で説明した開閉検知センサ1の動作状態と、反射光スペクトルにおけるピーク波長の変動との関係を示す図である。図7(a)は、オン状態からオフ状態に変化する際の反射光スペクトルにおけるピーク波長の変動を示す図であり、図7(b)は、オフ状態からオン状態に変化する際の反射光スペクトルにおけるピーク波長の変動を示す図である。図7(a)及び図7(b)において、横軸は動作状態の経時変化に対応し、縦軸はピーク波長に対応する。
【0036】
本実施形態の開閉検知センサ1によれば、オン状態からオフ状態に変化する際、あるいは、オフ状態からオン状態に変化する際に、移動部材30の移動全体ではなく、特定位置(係止部30cがフランジ23aと当接する位置)におけるわずかな移動によりFBG部26のブラッグ波長が変動する。上述のとおり、FBG部26のブラック波長を変動させる移動ベース23の移動量は数十マイクロメートルである。この移動ベース23の移動量は、移動部材30の移動量(例えば、10mm程度)に比べて極めて小さいため、ブラッグ波長の変動は極めて短時間で生じることになる。したがって、FBG部26のブラッグ波長は、図7(a)、図7(b)に示すように、移動部材30が特定位置を通過するタイミングで瞬間的(ステップ状)に変動することになる。
【0037】
以上のような構成を有する開閉検知センサ1によれば、検知対象物の開閉に伴って移動部材30が移動し、当該移動部材30が特定位置に到達したときに、瞬間的にFBG部26に張力が付与される、あるいは、FBG部26に付与されていた張力が瞬間的に開放される。そのため、検知対象物の開閉状態が極めてゆっくりと変更された場合でも、当該開閉状態の変更をブラッグ波長のステップ状のシフトとして確実に検知することができる。
【0038】
また、オン状態及びオフ状態のいずれの場合であっても、光ファイバ25に作用する外力は極めて小さいため、オン状態又はオフ状態が長期間にわたって持続する状況下であっても、光ファイバ25の形状が固定化されてしまい検知感度が低下することもない。
【0039】
なお、近年、FBG部を備える光ファイバを使用した歪みゲージでは、光ファイバの軸方向に沿う張力(プリテンション)がFBG部に付与された状態で、光ファイバがセンサベースに固定支持される構成が広く採用されている。このような、FBG部に張力が付与される構成では、歪みゲージは引張方向の応力だけでなく圧縮方向の応力も検出することが可能になる。本実施形態においても、移動ベース23が固定ベース22と接触している状況下において、FBG部26に光ファイバの軸方向に沿う張力が付与された状態で、光ファイバ25がセンサベース24に固定される構成を採用することができる。
【0040】
このような構成を採用した場合、移動部材30がケース10内を移動する際に発生する振動等に起因して移動ベース23に振動等が発生すると、FGB部26はこのような振動等も検知してしまう。その結果、オン状態からオフ状態に移行する際のブラッグ波長の変動や、オフ状態からオン状態に移行する際のブラッグ波長の変動にノイズが重畳する場合もある。
【0041】
このような状態でも、オン状態とオフ状態とを区別するための適切な閾値を設定することで開閉状態の検知は可能である。しかしながら、このようなノイズの重畳を回避する観点では、光ファイバ25は、移動ベース23が固定ベース22と接触している状況下において、FBG部26に光ファイバの軸方向に沿う圧縮力(回折格子の間隔が狭まる方向の力)が付与された状態、あるいは、FBG部26に実質的に張力が付与されていない状態で、光ファイバ25がセンサベース24に固定される構成を採用することが好ましい。このような構成を採用することで、ノイズの重畳のない、ブラッグ波長の変動データを取得することが可能になる。
【0042】
図8(a)から図8(d)は開閉検知センサ1をマンホール蓋の開閉検知に適用した事例を示す図である。図8(a)は閉状態にあるマンホール蓋を示す模式図である。図8(b)は閉状態から開状態への移行途中にあるマンホール蓋を示す模式図である。図8(c)は開状態にあるマンホール蓋を示す模式図である。また、図8(d)は、図8(a)から図8(c)への開閉状態の変更に伴うFBG部26のブラッグ波長の変動を示す模式図である。なお、図8(a)から図8(c)では、マンホール蓋及びマンホールは断面を描き、開閉検知センサ1は側面を描いている。
【0043】
図8(a)に示すように、開閉検知センサ1は、閉状態にあるマンホール蓋82の裏面(マンホール81側の面)に対してケース10の軸が垂直となる状態で配置される。このとき、当接部30aはマンホール蓋82の裏面に接触している。当該状態では、移動部材30はケース10の内部に押し込まれた状態にある。したがって、移動ベース23は固定ベース22と当接しており、FBG部26のブラッグ波長は当該状態に応じた波長λ1になっている。図8(b)に示すように、マンホール蓋82が閉状態から開状態への移行途中であっても、係止部30cがフランジ23aに当接するまでの間は、移動ベース23は固定ベース22と当接しているため、FBG部26のブラッグ波長は波長λ1のままである。そして、係止部30cがフランジ23aに当接すると、上述のように、移動ベース23は固定ベース22から距離xだけ引き離される結果、FBG部26のブラッグ波長は瞬間的に当該状態に応じた波長λ2になる。その後、図8(c)に示すように、マンホール蓋82が開状態になっても、移動ベース23と固定ベース22との間隔は距離xであるため、FBG部26のブラッグ波長は波長λ2のままである。
【0044】
図9(a)から図9(d)は開閉検知センサ1を開き戸の開閉検知に適用した事例を示す図である。閉状態から開状態への動作についての開閉検知は、図8(a)から図8(d)に示すマンホール蓋の事例と同様であるので、ここでは、開状態から閉状態への動作についての開閉検知を説明する。図9(a)は開状態にある開き戸を示す模式図である。図9(b)は開状態から閉状態への移行途中にある開き戸を示す模式図である。図9(c)は閉状態にある開き戸を示す模式図である。また、図9(d)は、図9(a)から図9(c)への開閉状態の変更に伴うFBG部26のブラッグ波長の変動を示す模式図である。なお、図9(a)から図9(c)では、サーバラックが備える開き戸を上方から見た図であり、天板及びサーバラックの内部構造の記載を省略している。また、開閉検知センサ1はサーバラックの底板上に設置されている。
【0045】
図9(c)に示すように、開閉検知センサ1は、閉状態にある開き戸92の裏面(サーバラック91において内側の面)に対してケース10の軸が垂直となる状態で配置される。このとき、当接部30aは開き戸92の裏面に接触する。一方、開き戸92が開状態にある場合、当接部30aは開き戸92の裏面から離れており、移動部材30はケース10の先端部10bから軸方向外側に突出している。このとき、移動ベース23は固定ベース22から距離xだけ引き離されているため、FBG部26のブラッグ波長は当該状態に応じた波長λ2になっている。図9(b)に示すように、開き戸92が開状態から閉状態への移行途中であっても、開き戸92が当接部30aに当接した後、移動部材30がケース10の内部に押し込まれて、係止部30cがフランジ23aから離脱するまでの間は、移動ベース23は固定ベース22と距離xをおいて離間しているため、FBG部26のブラッグ波長は波長λ2のままである。そして、係止部30cがフランジ23aから離脱すると、移動ベース23が固定ベース22と当接する結果、FBG部26のブラッグ波長は瞬間的に当該状態に応じた波長λ1になる。その後、図9(c)に示すように、開き戸92が閉状態になっても、移動ベース23と固定ベース22とは当接したままであるため、FBG部26のブラッグ波長は波長λ1のままである。
【0046】
なお、上述のように、ブラッグ波長は、光ファイバの屈折率と回折格子の格子間隔とによって定まる。そのため、温度が変化した場合の屈折率の変動や、光ファイバの膨張・収縮によってもブラッグ波長が変動することになる。そのため、仮に、短時間で急激な温度変化が発生した場合には、ブラッグ波長の変動が、移動ベース23の移動に起因して発生したものであるか、温度変化に起因して発生したものであるかを区別することができない可能性も否定できない。
【0047】
この対策として、温度補正用のFBG部を設けることができる。図10は、本実施形態における他の開閉検知センサ2が備えるセンサ部50の構造を示す図である。センサ部50は、温度補正用のFBG部27をさらに備える点で、開閉検知センサ1のセンサ部20の構成と異なる。他の構成はセンサ部20と同一であり、センサ部20と同様の作用効果を奏する構成要素には同一の符号を付している。
【0048】
図10に示すように、温度補正用のFBG部27は、固定ベース22に固定された板状部31上に固定することができる。図10の例では、FBG部26及びFBG部27は、同一の光ケーブル25に隣接して形成されている。ここでは、FBG部26のブラッグ波長とFBG部27のブラッグ波長を異ならせている。このような構成は、例えば、同一の光ファイバ25上に、同一のブラッグ波長を有するFBG部を隣接して形成し、光ファイバ25をセンサベース24に固定材35で固定する際に、FBG部26に付与されるプリテンションと、FBG部27に付与されるプリテンションとを異ならせることで実現可能である。
【0049】
図11(a)から図11(d)は、開閉検知センサ2において温度変化が生じた場合の、反射光スペクトルの変動の一例を示す模式図である。図11(a)は、オン状態の開閉検知センサ2に、FBG部26のブラッグ波長とFBG部27のブラッグ波長とを含む広帯域幅の光を入射した場合の反射光スペクトルを示す図である。図11(b)は、オン状態の開閉検知センサ2に、温度変化(温度上昇)のみが生じた場合の反射光スペクトルにおけるピーク波長の変動を示す模式図である。図11(c)は、温度が一定の状態で、オン状態の開閉検知センサ2に、オン状態からオフ状態への変化のみが生じた場合の反射光スペクトルにおけるピーク波長の変動を示す模式図である。図11(d)は、オン状態の開閉検知センサ2に、温度変化(温度上昇)及びオン状態からオフ状態への変化が生じた場合の反射光スペクトルにおけるピーク波長の変動を示す模式図である。図11(a)から図11(d)において、横軸は反射光の波長に対応し、縦軸は反射光の強度に対応する。なお、図11(b)から図11(d)では、変動前の反射光スペクトルを破線で示している。
【0050】
図11(a)に示すように、特定温度でオン状態にある開閉検知センサ2の、反射光スペクトルは、FBG部26のブラッグ波長λ1とFBG部27のブラッグ波長λ3とのそれぞれにピークを有することになる。また、図11(b)に示すように、温度変化のみが生じた場合、FBG部26、温度補正用のFBG部27のいずれにも温度変化により屈折率変動及び膨張が生じる。そのため、いずれのFBG部26、27のブラッグ波長も大きくなる方向にシフトする。また、図11(c)に示すように、オン状態からオフ状態への変化のみが生じた場合、上述のように、状態変化に伴う移動ベース23の移動に応じてFBG部26のブラッグ波長は大きくなる方向にシフトする。このとき、温度補正用のFBG部27には何ら変化が生じないため、FBG部27のブラッグ波長は変動しない。
【0051】
温度変化とオン状態からオフ状態への変化とがともに生じた場合、以上の変動が組み合わさった状態になる。すなわち、図11(d)に示すように、FBG部26のブラッグ波長には温度変化に応じた波長シフトとオン状態からオフ状態への変化に応じた波長シフトとが重畳して発生し、FGB部27のブラッグ波長には温度変化に応じた波長シフトのみが発生することになる。
【0052】
例えば、図11(d)において、FBG部27のブラッグ波長のシフト量が0.3nmであり、FBG部26のブラッグ波長のシフト量が0.6nmであるとする。この場合、図11(b)における温度変化のみによる波長シフト量が、FBG部26とFBG部27とで同一であると仮定すると、0.6nm-0.3nm=0.3nmが図11(c)におけるオン状態からオフ状態への変化のみによるブラッグ波長のシフト量ということになる。このように、FBG部26のブラッグ波長のシフト量と、FBG部27のブラッグ波長のシフト量とを計測することで、温度補正を実現することが可能になる。
【0053】
以上で説明したように、本発明によれば、検知対象物の開閉状態が極めてゆっくりと変更された場合や開閉状態の変更頻度が極めて少ない状況下でも、当該開閉状態の変更を確実に検知することができる。
【0054】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、光ファイバ25のFBG部26を直線状に配置し、当該FBG部26の軸に沿って移動部材30が移動する構成としたが、移動ベースと固定ベースとの間隔に応じてブラッグ波長が変動する構成であればFBG部と移動部材の配置は任意である。また、上記実施形態では、係止部30cとして、移動ベース23に当接して移動ベース23を直接的に移動させる構成を説明したが、移動ベース23に直接当接することなく、間接的に移動ベース23を移動させる構成を採用することも可能である。加えて、係止部30cの形状も任意に変更可能である。同様に、ケース10や移動部材30の形状も円筒状に限定されず、例えば、角筒状等の他の中空形状を採用することもできる。
【0055】
また、上述の実施形態では、オフ状態における移動部材30の位置(第2の位置)を、ケース10の内周面に形成した段差10cにより規定したが、当接部30aと検知対象物とが離間したときに移動部材30の位置を規定できる構成であればその構造は任意である。例えば、移動ベース23の移動方向を規制するレール41の端部に螺合されたボルト44と移動ベース23とが当接する位置を、オフ状態における移動部材30の位置として規定することも可能である。
【0056】
さらに、上述の実施形態では、付勢部材としてつる巻きバネ12を例示したが、公知の任意の構造の付勢部材を使用することができる。また、移動部材30は検知対象物の開閉に伴ってオン状態とオフ状態とにわたって移動可能であればよく、付勢部材を用いることは必須ではない。例えば、付勢部材に代えて機械的な機構を採用することも可能である。
【0057】
加えて、上述の実施形態では、移動部材30の軸方向の長さを、センサ部20を内部に収容できる程度の長さとしたが、移動部材30によりセンサ部20を収容することは必須ではなく、移動部材30の軸方向の長さは任意である。
【0058】
また、上記実施形態では、移動部材30が検知対象物に当接する当接部30aを備える構成を開示したが、移動部材30は検知対象物の開閉に応じた移動が可能であればよく、検知対象物に直接接触することは必須ではない。例えば、図8(a)から図8(d)に示すマンホール蓋の開閉を検知する事例では、例えば、一方端にマンホール蓋82に当接する当接部を備え、他方端にマンホール蓋82の開閉に応じて水平方向に移動するアクチュエータを備えるリンク機構を配置するとともに、ケース10の軸を水平として開閉検知センサ1をアクチュエータに連結して配置する構成を採用すれることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、検知対象物の開閉状態が極めてゆっくりと変更された場合や開閉状態の変更頻度が極めて少ない状況下でも当該開閉状態の変更を確実に検知することができ、開閉検知センサとして有用である。
【符号の説明】
【0060】
1、2 開閉検知センサ
10 ケース
12 つる巻きバネ(付勢部材)
20、50 センサ部
21 ベース部材
22 固定ベース(第1のベース部材)
23 移動ベース(第2のベース部材)
24 センサベース
25 光ファイバ
26 FBG部
27 FBG部(温度補償用)
30 移動部材
30a 当接部
30c 係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11