(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】無機繊維用サイジング剤及び無機繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/224 20060101AFI20220325BHJP
D06M 13/11 20060101ALI20220325BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20220325BHJP
D06M 101/40 20060101ALN20220325BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/11
D06M15/53
D06M101:40
(21)【出願番号】P 2021136159
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2021-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓一郎
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146024(WO,A1)
【文献】特開昭63-105174(JP,A)
【文献】特開昭63-059477(JP,A)
【文献】特開2011-021281(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017246(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、及び脂肪酸エステル(C)を含有
し、
前記脂肪酸エステル(C)は、アルコールと脂肪酸とのエステル化合物であって、前記アルコールは、炭素数3以上10以下の1価アルコールであることを特徴とする無機繊維用サイジング剤。
【請求項2】
前記脂肪
酸が、炭素数4以上26以下の1価脂肪
酸である請求項1に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項3】
前記脂肪酸エステル(C)が、炭素数3以上10以下の1価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸とのエステル化合物である請求項1又は2に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項4】
前記ビニルエステル化合物(A)、前記界面活性剤(B)、及び前記脂肪酸エステル(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸エステル(C)の含有割合が2質量部以上30質量部以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項5】
更に、エポキシ化合物(D)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項6】
前記エポキシ化合物(D)が、モノエポキシ化合物である請求項5に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項7】
前記ビニルエステル化合物(A)、前記界面活性剤(B)、前記脂肪酸エステル(C)、及び前記エポキシ化合物(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記ビニルエステル化合物(A)の含有割合が10質量部以上80質量部以下、前記界面活性剤(B)の含有割合が5質量部以上60質量部以下、前記脂肪酸エステル(C)の含有割合が2質量部以上30質量部以下、及び前記エポキシ化合物(D)の含有割合が3質量部以上70質量部以下である請求項5又は6に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項8】
前記無機繊維が、炭素繊維又はガラス繊維である請求項1~7のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤が付着していることを特徴とする無機繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛羽を低減させた無機繊維用サイジング剤及び無機繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維等の無機繊維及び母材として熱硬化性樹脂等のマトリックス樹脂を含む材料として繊維強化樹脂複合材料が知られ、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。炭素繊維等の無機繊維及び熱硬化性樹脂等の母材との界面の接着性を向上させるためにサイジング剤を無機繊維に付着させる処理が行われている。
【0003】
従来より、例えば特許文献1に開示のマトリックス樹脂を補強するために用いられる無機繊維用サイジング剤が知られている。特許文献1は、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体から選ばれる少なくとも1種に対し、所定量の不飽和カルボン酸及びその酸無水物から選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合してなる酸変性ポリオレフィン樹脂、ビニルエステル化合物、及び水を含有する強化繊維用サイジング剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のサイジング剤は、毛羽の低減効果が不十分であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、ビニルエステル化合物、界面活性剤、及び脂肪酸エステルを含有する無機繊維用サイジング剤が正しく好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の無機繊維用サイジング剤では、ビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、及び脂肪酸エステル(C)を含有し、前記脂肪酸エステル(C)は、アルコールと脂肪酸とのエステル化合物であって、前記アルコールは、炭素数3以上10以下の1価アルコールであることを要旨とする。
【0008】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記脂肪酸が、炭素数4以上26以下の1価脂肪酸であってもよい。
【0009】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記脂肪酸エステル(C)が、炭素数3以上10以下の1価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸とのエステル化合物であってもよい。
【0010】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記ビニルエステル化合物(A)、前記界面活性剤(B)、及び前記脂肪酸エステル(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸エステル(C)の含有割合が2質量部以上30質量部以下であってもよい。
【0011】
前記無機繊維用サイジング剤において、更に、エポキシ化合物(D)を含有してもよい。
前記無機繊維用サイジング剤において、前記エポキシ化合物(D)が、モノエポキシ化合物であってもよい。
【0012】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記ビニルエステル化合物(A)、前記界面活性剤(B)、前記脂肪酸エステル(C)、及び前記エポキシ化合物(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記ビニルエステル化合物(A)の含有割合が10質量部以上80質量部以下、前記界面活性剤(B)の含有割合が5質量部以上60質量部以下、前記脂肪酸エステル(C)の含有割合が2質量部以上30質量部以下、及び前記エポキシ化合物(D)の含有割合が3質量部以上70質量部以下であってもよい。
【0013】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記無機繊維が、炭素繊維又はガラス繊維であってもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の無機繊維では、前記無機繊維用サイジング剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると毛羽を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例欄における接着性評価のための複合材界面特性評価装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
先ず、本発明に係る無機繊維用サイジング剤(以下、サイジング剤ともいう)を具体化した第1実施形態について説明する。サイジング剤は、ビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、及び脂肪酸エステル(C)を含有する。
【0017】
(ビニルエステル化合物(A))
ビニルエステル化合物(A)は、無機繊維と母材との接着性を向上させる。ビニルエステル化合物(A)は、化合物主鎖の末端にビニル基、アクリレート基、メタクリレート基等の高反応性二重結合をもつ化合物である。ビニルエステル化合物(A)は、芳香族系の化合物、脂肪族系の化合物のいずれであってもよい。
【0018】
ビニルエステル化合物(A)の具体例としては、例えばアルキル(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ベンジル(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、2-ヒドロキシ-3フェノキシプロパノール(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールノニルフェニルエーテル(メタ)アクリル酸エステル、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。これらのビニルエステル化合物(A)は、1種のビニルエステル化合物を単独で使用してもよく、2種以上のビニルエステル化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
サイジング剤中におけるビニルエステル化合物(A)の含有割合の下限は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。かかる含有割合が10質量%以上の場合、母材との接着性をより向上できる。ビニルエステル化合物(A)の含有割合の上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。かかる含有割合が80質量%以下の場合、毛羽をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0020】
(界面活性剤(B))
界面活性剤(B)は、サイジング剤の製剤安定性を向上させる。界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種の界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
非イオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。なお、アルキレンオキサイドを付加したポリオキシアルキン構造を有する化合物は、脂肪酸エステル構造を有する化合物であっても、界面活性剤(B)に含まれるものとする。また、ポリオキシアルキン構造を含まない脂肪酸エステル構造を有する化合物は、界面活性作用を有するものであっても脂肪酸エステル(C)に含まれるものとする。
【0022】
非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2-ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2-エチル-1-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレート、ポリオキシアルキレンヤシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノアート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤、(5)ポリオキシエチレンとジメチルフタラートとラウリルアルコールの共重合物等のエーテル・エステル化合物等が挙げられる。
【0023】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ニ級アルキルスルホン酸(C13~15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0024】
カチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2-ジメチルイミダゾール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0025】
両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
サイジング剤中における界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。かかる含有割合が5質量%以上の場合、製剤安定性をより向上できる。界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。かかる含有割合が60質量%以下の場合、毛羽の低減及び接着性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0026】
(脂肪酸エステル(C))
脂肪酸エステル(C)は、毛羽を低減させる。脂肪酸エステル(C)としては、例えばアルコールと脂肪酸とのエステル化合物が挙げられる。本発明においては、脂肪酸エステル(C)は、アルコールと脂肪酸とのエステル化合物が用いられる。脂肪酸エステル(C)の原料となるアルコールとしては、直鎖状又は分岐鎖を有する脂肪族系のアルコール、芳香族系のアルコールが例示される。また、飽和炭化水素基を有するアルコール、不飽和炭化水素基を有するアルコールが例示される。また、一価アルコール、二価以上の多価アルコールが例示される。本発明においてアルコールは、炭素数3以上10以下の1価アルコールが用いられる。なお、以下アルコールの具体例を例示するが、炭素数3以上10以下の1価アルコール以外は、参考例とする。
【0027】
1価アルコールの具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、2-デシルテトラデカノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、オレイルアルコール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0028】
多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0029】
脂肪酸エステル(C)の原料となる脂肪酸としては、直鎖状又は分岐鎖を有する脂肪族系の脂肪酸、芳香族系の脂肪酸であってもよい。また、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、一価脂肪酸であっても、二価以上の多塩基酸であってもよい。
【0030】
1価の飽和脂肪酸の具体例としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸等が挙げられる。1価の不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0031】
多塩基酸の具体例としては、例えば(1)コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸、(2)アコニット酸等の三塩基酸、(3)安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、(4)トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸、(5)ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0032】
脂肪酸エステル(C)としては、炭素数3以上24以下の1価アルコールと炭素数4以上26以下の1価脂肪酸とのエステル化合物であることが好ましい。なお、炭素数3以上10以下の1価アルコール以外のエステル化合物は参考例とする。かかる化合物により、毛羽の低減効果をより向上させる。
【0033】
脂肪酸エステル(C)が、炭素数3以上10以下の1価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸とのエステル化合物であることがより好ましい。かかる化合物により、毛羽の低減効果をさらに向上させる。
【0034】
サイジング剤において、ビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、及び脂肪酸エステル(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸エステル(C)の含有割合の上限は、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。かかる脂肪酸エステル(C)の含有割合の下限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。かかる範囲に規定されることにより毛羽をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0035】
(エポキシ化合物(D))
サイジング剤において、更にエポキシ化合物(D)を含有してもよい。エポキシ化合物(D)を含有することにより、母材に対する接着性を向上できる。エポキシ化合物としては、分子中にエポキシ基を1つ有するモノエポキシ化合物又は2以上有する多官能エポキシ化合物のいずれであってもよい。エポキシ化合物(D)は、母材に対する接着性をより向上できる観点からモノエポキシ化合物が好ましい。
【0036】
エポキシ化合物(D)の具体例としては、例えばポリオキシアルキレン付加p-tert-ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加フェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルアミン、テトラグリシジルアミン等の重合体等のアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。ポリオキシアルキレン付加アルキルグリシジルエーテルの具体例としては、例えばポリオキシエチレン付加ラウリルアルコールモノグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0037】
エポキシ化合物(D)のエポキシ当量は、特に制限されないが、例えば50~1000であることが好ましい。
サイジング剤において、ビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、脂肪酸エステル(C)、及びエポキシ化合物(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、好ましくはビニルエステル化合物(A)の含有割合が10質量部以上80質量部以下、界面活性剤(B)の含有割合が5質量部以上60質量部以下、脂肪酸エステル(C)の含有割合が2質量部以上30質量部以下、及びエポキシ化合物(D)の含有割合が3質量部以上70質量部以下である。かかる範囲に規定されることにより、毛羽を低減しながら母材に対する接着性をより向上できる。
【0038】
<第2実施形態>
次に本発明に係る無機繊維を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態と同様の構成が適用される。
【0039】
本実施形態の無機繊維は、第1実施形態のサイジング剤が表面に付着している。無機繊維の製造方法は、第1実施形態のサイジング剤を炭素繊維に付着させる工程を含んでいる。付着量(溶媒を含まない)については特に制限はないが、無機繊維にサイジング剤として0.01質量%以上10質量%以下となるよう付着させたものが好ましい。かかる数値範囲に規定することにより、無機繊維の集束性等の効果をより向上できる。
【0040】
(無機繊維)
本実施形態において適用される無機繊維の種類としては、特に限定されず、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点からガラス繊維、炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類としては、例えばアクリル繊維を原料として得られたPAN系炭素繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系炭素繊維、リサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維が挙げられる。
【0041】
第1実施形態のサイジング剤を無機繊維に付着させるには、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。例えば、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法等が挙げられる。サイジング剤を付着させた無機繊維は、続いて公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。
【0042】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る複合材料を具体化した第3実施形態について説明する。第3実施形態について、下記の記載以外は、第1,2実施形態と同様の構成が適用される。
【0043】
第2実施形態によりサイジング剤を付着させた無機繊維を、母材としてのマトリックス樹脂に含浸させることにより複合材料が得られる。複合材料を製造する際、無機繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態を採用できる。
【0044】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、複合材料の目的、用途等に応じて公知のものから適宜選択される。マトリックス樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂等が挙げられる。これらの中で、接着特性をより有効に発揮できる観点から熱硬化性樹脂が適用されることが好ましい。
【0045】
上記実施形態のサイジング剤、無機繊維、及び複合材料によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態のサイジング剤及び無機繊維では、繊維表面の毛羽を低減できる。それにより、繊維のローラーへの巻き付き等が低減され、繊維の製造効率を向上できる。
【0046】
(2)上記実施形態の複合材料では、無機繊維に第1実施形態のサイジング剤が付着している。したがって、無機繊維とマトリックス樹脂との優れた接着性により、特に機械特性等の各種特性に優れる繊維強化樹脂複合材料が得られる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態のサイジング剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、サイジング剤の性能を維持する観点、無機繊維に対する付与性向上等の観点から、その他の成分として、水又は有機溶媒、平滑剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合することを妨げるものではない。
【0048】
・上記実施形態のサイジング剤が適用される分野は、特に限定されない。例えばビニルエステル樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料(CFRP)の他、コンクリートの補強用繊維等に適用してもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0050】
試験区分1(脂肪酸エステルの調製)
・脂肪酸エステル(C-1)の合成
フラスコに脂肪酸としてパルミチン酸256g(1モル)及び1-ノナノール144g(1モル)を仕込み、窒素ガス下に75℃で溶融した後、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.6gを加え、120℃で2mmHgの減圧下で4時間反応させた。次いで窒素ガス下に105℃で常圧に戻し、吸着剤を添加して触媒を処理した。そして90℃で濾過し、脂肪酸エステル(C-1)を含む混合物を得た。
【0051】
・脂肪酸エステル(C-2)~(C-10)の合成
脂肪酸エステル(C-2)~(C-10)は、表1に示される各成分を使用し、脂肪酸エステル(C-1)と同様の方法にて調製した。
【0052】
脂肪酸エステルの原料であるアルコールの種類及び脂肪酸の種類を、表1の「アルコール」欄及び「カルボン酸」欄にそれぞれ示す。
試験区分2(サイジング剤の調製)
・実施例1のサイジング剤
実施例1のサイジング剤は、原料として表1に示されるビニルエステル化合物としてビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(A-1)40部(%)、界面活性剤としてトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド31モル付加プロピレンオキサイド4モル付加物(B-1)20部(%)、脂肪酸エステル(C-1)10部(%)、及びエポキシ化合物としてポリオキシエチレン30モル付加ラウリルアルコールモノグリシジルエーテル(D-1)30部(%)を混合することで、表2に示される含有割合からなる実施例1のサイジング剤を得た。
【0053】
・実施例2~16,21、参考例17~20,22,23、比較例1~4のサイジング剤
実施例2~16,21、参考例17~20,22,23、比較例1~4のサイジング剤は、原料としてビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、表1の脂肪酸エステル(C)、必要によりエポキシ化合物(D)及びその他化合物(E)を使用した。各成分を表2に示した含有割合にて混合し、各例のサイジング剤を得た。
【0054】
ビニルエステル化合物(A)の種類と含有量、界面活性剤(B)の種類と含有量、脂肪酸エステル(C)の種類と含有量、エポキシ化合物(D)の種類と含有量、その他化合物(E)の種類と含有量を、表2の「ビニルエステル化合物(A)」欄、「界面活性剤(B)」欄、「脂肪酸エステル(C)」欄、「エポキシ化合物(D)」欄、「その他化合物(E)」欄にそれぞれ示す。
【0055】
【0056】
【表2】
表2に記載するビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、エポキシ化合物(D)、その他化合物(E)の詳細は以下のとおりである。
【0057】
(ビニルエステル化合物(A))
A-1:ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物
A-2:エチレンオキサイド2モル付加ビスフェノールAアクリル酸付加物
A-3:2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸
(界面活性剤(B))
B-1:トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド31モル付加プロピレンオキサイド4モル付加物
B-2:硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド60モル付加物
(エポキシ化合物(D))
D-1:ポリオキシエチレン30モル付加ラウリルアルコールモノグリシジルエーテル
D-2:ポリオキシエチレン20モル付加p-tert-ブチルフェノールモノグリシジルエーテル
D-3:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(エポキシ当量184~194)
(その他化合物(E))
E-1:酸変性ポリプロピレン樹脂(主鎖=ポリプロピレン樹脂、グラフト量=5質量%、MW=4500)
試験区分2(評価)
(毛羽)
上述したように調製した各例のサイジング剤を水希釈し、固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をストランド状の炭素繊維に固形分として2%付与されるように浸漬法にて給油することで各例のサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維を調製した。
【0058】
次に、直径2mmのクロムめっきされたステンレス棒を、その表面を得られた炭素繊維束が120°の接触角で接触しながら通過するように、ジグザクに15mm間隔で5本配置した。このステンレス棒間に炭素繊維束をジグザグにかけ、1kg重の張力をかけた。巻き取りロール直前で炭素繊維束を、1kg重の荷重をかけた10cm×10cmのウレタンフォーム2枚で挟み、1m/分の速度で5分間擦過させた。この間にスポンジに付着した毛羽の質量を測定して、以下の評価基準で評価した。結果を表2の「毛羽」欄に示す。
【0059】
・毛羽の評価基準
◎◎(優れる):0.10mg/m未満
◎(良好):0.10mg/m以上、0.15mg/m未満
○(可):0.15mg/m以上、0.20mg/m未満
×(不可):0.20mg/m以上
(接着性)
接着性は、市販の複合材界面特性評価装置を用いてマイクロドロップレット法によって測定される応力により評価した。
図1に複合材界面特性評価装置10の概略図を示す。
【0060】
前記評価のために調製した炭素繊維から1本の炭素繊維を取り出し、この炭素繊維12を板状の四角枠状のホルダー11に緊張した状態でその両端を接着剤14で固定した。次に、ビニルエステル樹脂(昭和電工社製の商品名リポキシR804)/硬化剤(日油社製の商品名パークミルD)=100/1.5(質量比)の割合で調合したマトリックス樹脂を、直径が約100μmの樹脂滴13となるように炭素繊維12に付着させ、150℃の雰囲気下で15分間加熱して固定した。
【0061】
図示しない装置本体には、一側面において垂直断面が先細状に成型された2枚の板状のブレード17,18が、その先端部17a及び18aが向かい合わせになる位置状態で取り付けられている。
【0062】
樹脂滴13が固定されている炭素繊維12を2枚のブレード17,18の先端部17a,18aで挟む位置にて、ホルダー11を装置本体に固定されている基板16に取り付けた。基板16にはロードセル15が接続され、基板16に負荷される応力が計測される。
【0063】
ホルダー11を5mm/分の速度で繊維軸方向に移動させた時に、ブレード17,18の先端部17a,18aによって樹脂滴13が炭素繊維12から剥離する際に生じる最大応力Fを、ロードセル15にて計測した。
【0064】
計測した値を用いて、下記の数1により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を求めた。平均値より以下の基準で接着性について評価を行った。結果を表2の「接着性」欄に示す。
【0065】
【数1】
数1において、
F:炭素繊維12から樹脂滴13が剥離する際に生じる最大応力(N)、
D:炭素繊維12の直径(m)、
L:樹脂滴13の引き抜き方向の直径(m)。
【0066】
・接着性の評価
◎◎(優れる):界面せん断強度が50MPa以上
◎(良好):界面せん断強度が45MPa以上50MPa未満
○(可):界面せん断強度が40MPa以上45MPa未満
×(不可):界面せん断強度が40MPa未満
以上表2の結果からも明らかなように、各実施例のサイジング剤は、毛羽及び接着性の評価がいずれも可以上であった。本発明によれば、毛羽及び接着性を向上できるという効果が生じる。なお、ガラス繊維についても炭素繊維の評価と同様に毛羽の低減及び接着性の向上効果を確認している。
【符号の説明】
【0067】
10…複合材界面特性評価装置
11…ホルダー
12…炭素繊維
13…樹脂滴
14…接着剤
15…ロードセル
16…基板
17,18…ブレード
【要約】
【課題】毛羽を低減できる無機繊維用サイジング剤及び無機繊維を提供する。
【解決手段】本発明の無機繊維用サイジング剤は、ビニルエステル化合物(A)、界面活性剤(B)、及び脂肪酸エステル(C)を含有することを特徴とする。また、本発明の無機繊維は、前記無機繊維用サイジング剤が付着していることを特徴とする。
【選択図】なし