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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】液体容器
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20060101AFI20220325BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C02F1/50 531E
C02F1/50 510A
C02F1/50 520B
C02F1/50 531F
C02F1/50 540D
C02F1/50 540F
C02F1/50 550B
B65D65/42 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021529858
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045254
【審査請求日】2021-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509119197
【氏名又は名称】株式会社エイエムジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宏紀
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0029408(US,A1)
【文献】特開平08-253221(JP,A)
【文献】特開2004-037273(JP,A)
【文献】特開平06-165992(JP,A)
【文献】国際公開第2005/019116(WO,A1)
【文献】特開2008-161423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0364886(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
A61L 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を格納する容器本体を有する液体容器であって、
前記容器本体は、
樹脂に、銀を担持した担持体と、陽イオンを放出する陽イオン放出体とが分散されて構成されており、前記担持体と前記陽イオン放出体は互いに密着した構成ではなく、前記陽イオン放出体は前記担持体に担持されておらず、
前記容器本体に前記液体が格納されたときに、前記容器本体は溶解することなく、前記担持体に担持された前記銀から前記液体中に銀イオンが放出され、
前記陽イオン放出体は、放出する前記陽イオンによって、前記銀から前記液体中への前記銀イオンの放出を制限する第一の制限手段として機能するように構成されており、
前記容器本体において、前記容器本体の全体における前記銀の含有量と、前記陽イオン放出体の含有量は、前記液体容器に前記液体を格納したときに、前記液体中に前記銀イオンが放出されて生成される銀イオン水における前記銀イオンの含有量が予め規定した範囲の所定含有量になるように規定され、
前記銀イオン水における前記銀イオンの前記所定含有量は0.02ppm以上0.50ppm以下であり、前記容器本体における前記銀の含有量は0.11重量%以上0.25重量%以下であり、前記容器本体における前記陽イオン放出体の含有量は0.30重量%以上3.00重量%以下である、液体容器。
【請求項2】
液体を格納する容器本体を有する液体容器であって、
前記容器本体は、
樹脂に、銀を担持した担持体と、陽イオンを放出する陽イオン放出体とが分散されて構成されており、前記担持体と前記陽イオン放出体は互いに密着した構成ではなく、前記陽イオン放出体は前記担持体に担持されておらず、
前記容器本体に前記液体が格納されたときに、前記容器本体は溶解することなく、前記担持体に担持された前記銀から前記液体中に銀イオンが放出され、
前記陽イオン放出体は、放出する前記陽イオンによって、前記銀から前記液体中への前記銀イオンの放出を制限する第一の制限手段として機能するように構成されており、
前記容器本体は、さらに、前記樹脂に多孔体が分散して構成されており、
前記多孔体は、前記銀から放出された前記銀イオンを捕捉することによって、前記銀から前記液体中への前記銀イオンの放出を制限する第二の制限手段として機能するように構成されており、
前記容器本体において、前記容器本体の全体における前記銀の含有量と、前記陽イオン放出体の含有量と、前記多孔体の含有量は、前記液体容器に前記液体を格納したときに、前記液体中に前記銀イオンが放出されて生成される銀イオン水における前記銀イオンの含有量が予め規定した範囲の所定含有量になるように規定され、
前記銀イオン水における前記銀イオンの前記所定含有量は0.02ppm以上0.50ppm以下であり、前記容器本体における前記銀の含有量は0.11重量%以上0.25重量%以下であり、前記容器本体における前記陽イオン放出体の含有量は0.30重量%以上3.00重量%以下であり、前記容器本体における前記多孔体の含有量は0.50重量%以上35.00重量パーセント以下である、液体容器。
【請求項3】
前記容器本体の外面は、光の透過を遮断する遮断層として構成されており、
前記遮断層は、前記光の透過を遮断することによって、前記液体に放出された前記銀イオンの消滅を防止する防止手段として構成されている、
請求項1または請求項2に記載の液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀イオンなどの金属イオンが滅菌や殺菌に有効であることが知られている。
【0003】
そして、銀を内側の被膜として有する容器を用いて、銀イオンを含む水を生成する容器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-99919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銀イオンを含む水(以下、「銀イオン水」と呼ぶ。)を安全に使用するためには、銀イオン水中の銀イオンの含有量が所定範囲である必要がある。銀イオンの含有量が少なすぎると、殺菌効果が弱く、細菌を効果的に低減することができない。一方、銀イオンの含有量が多すぎると、人の健康に悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明は、上記を踏まえて、銀イオン水中の銀イオンの含有量を所定範囲内に調整することができる液体容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、液体を格納する容器本体を有する液体容器であって、前記容器本体は、樹脂に、銀を担持した担持体と、陽イオンを放出する陽イオン放出体とが分散されて構成されており、前記容器本体に前記液体が格納されたときに、前記担持体に担持された前記銀から前記液体中に銀イオンが放出され、前記陽イオン放出体は、放出する前記陽イオンによって、前記銀から前記液体中への前記銀イオンの放出を制限する第一の制限手段として機能するように構成されている、液体容器である。
【0008】
本発明の発明者は、樹脂で構成した容器に銀を含有させ、さらに、陽イオン放出体(例えば、銅)を含有させることによって、容器本体に液体を格納したときに、液体中の銀イオンの含有量を適切な所定範囲に調整することができることを見出した。「所定範囲」は、有効な殺菌効果または滅菌効果を奏し、かつ、人の健康を損なわない範囲の銀イオンの含有量の範囲として規定される。第一の発明の構成によれば、容器本体に含有される担持体に担持されている銀から、容器本体に格納された液体中に銀イオンが放出される。そして、銀からの銀イオンの放出は、陽イオン放出体から放出される陽イオンによって制限され、液体中の銀イオンの含有量は所定範囲内に調整される。
【0009】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記容器本体は、さらに、前記樹脂に多孔体が分散して構成されており、前記多孔体は、前記銀から放出された前記銀イオンを捕捉することによって、前記銀から前記液体中への前記銀イオンの放出を制限する第二の制限手段として機能するように構成されている、請求項1に記載の液体容器である。
【0010】
本発明の発明者は、液体中の銀イオンの含有量を調整するために、容器本体を構成する樹脂に陽イオン放出体を分散させることに加えて、多孔体を分散させることが有効であることを見出した。液体中の銀イオンの含有量を所定範囲内において、相対的に低い範囲に調整するために、陽イオン放出体の含有量を大きくし過ぎると、銀イオンの放出の制限効果が大きくなり過ぎ、銀イオン水の銀イオンの含有量を当該範囲内にすることができない。これに対して、陽イオン放出体を所定量含有させたうえで、陽イオン放出体の含有量をさらに増やすのではなく、多孔体を含有させることによって、銀イオンの放出を適切に制限し、銀イオンの含有量が所定範囲内において相対的に低い範囲である銀イオン水を生成することができる。この点、第二の発明の構成によれば、容器本体は第二の制限手段として機能する多孔体を含むから、銀イオンの放出を適切に制限し、銀イオンの含有量が所定範囲内である銀イオン水を生成することができる。
【0011】
第三の発明は、第一の発明の構成において、前記容器本体において、前記容器本体の全体における前記銀の含有量と、前記陽イオン放出体の含有量は、前記液体容器に前記液体を格納したときに、前記液体中に前記銀イオンが放出されて生成される銀イオン水における前記銀イオンの含有量が予め規定した範囲の所定含有量になるように規定される、液体容器である。
【0012】
第四の発明は、第二の発明の構成において、前記容器本体において、前記容器本体の全体における前記銀の含有量と、前記陽イオン放出体の含有量と、前記多孔体の含有量は、前記液体容器に前記液体を格納したときに、前記液体中に前記銀イオンが放出されて生成される銀イオン水における前記銀イオンの含有量が予め規定した範囲の所定含有量になるように規定される、液体容器である。
【0013】
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかの構成において、前記容器本体の外面は、光の透過を遮断する遮断層として構成されており、前記遮断層は、前記光の透過を遮断することによって、前記液体に放出された前記銀イオンの消滅を防止する防止手段として構成されている、液体容器である。
【0014】
本発明の発明者は、液体中に放出された銀イオンが、光の作用によって、消滅することを見出した。これにより、容器本体において液体を格納する部分への光の透過を遮断する技術思想に想到した。この点、第五の発明の構成によれば、液体容器は光の透過を遮断する遮断層を有するから、液体中の銀イオンの含有量を所定含有量に維持することができる。
【0015】
第六の発明は、第三の発明の構成において、前記銀イオン水における前記銀イオンの前記所定含有量は0.02ppm以上0.50ppm以下であり、前記容器本体における前記銀の含有量は0.04重量%以上0.50重量%以下であり、前記容器本体における前記陽イオン放出体の含有量は0.10重量%以上9.00重量%以下である、液体容器である。
【0016】
第七の発明は、第四の発明の構成において、前記銀イオン水における前記銀イオンの前記所定含有量は0.02ppm以上0.50ppm以下であり、前記容器本体における前記銀の含有量は0.04重量%以上0.50重量%以下であり、前記容器本体における前記陽イオン放出体の含有量は0.10重量%以上9.00重量%以下であり、前記容器本体における前記多孔体の含有量は0.50重量%以上35.00重量パーセント以下である、液体容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる液体容器によれば、銀イオン水中の銀イオンの含有量を所定範囲内に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態に係る液体容器の概略図である。
図2】容器本体の概略断面図である。
図3】容器本体の周壁の拡大概念図である。
図4】容器本体に液体を格納した状態を示す概念図である。
図5】容器本体に液体を格納した状態における作用を示す概念図である。
図6】実験結果を示す図である。
図7】液体容器の用途の一例を示す図である。
図8】本発明の第二の実施形態に係る容器本体の周壁の拡大概念図である。
図9】実験結果を示す図である。
図10】比較例に係る実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0020】
<第一の実施形態>
本発明の実施形態について以下図面を参照して説明する。なお本明細書で「上下方向」の表現は、図1における上下を基準として「上下方向」とする。具体的には、容器本体2とポンプ部材10とを結ぶ方向が上下方向である。ポンプ部材10が位置する方向を上方、容器本体2が位置する方向を下方と呼ぶ。そして、上下方向と垂直な方向を「水平方向」と呼ぶ。含有量は、重量%を意味するものとする。
【0021】
図1は本発明の第一の実施形態にかかる容器100の側面図である。容器100は、容器本体2とポンプ部材10から構成される。容器本体2の上端部は開口しており、その上端部にポンプ部材10が配置される。容器本体2に水が格納される。容器本体2は、底部が閉鎖された円筒状の部材である。容器本体2の内部に吸引チューブ6が配置される。吸引チューブ6は底部と上部が開口した円筒状の部材である。吸引チューブ6はポンプ部材10に接続されている。容器100は、ポンプ部材10の作用によって、吸引チューブ6を介して、容器本体2に格納した水を吸い上げて、外部に噴出することができるように構成されている。容器100は液体容器の一例である。容器本体2は液体を格納する容器本体の一例である。水は、液体の一例である。
【0022】
図2は、容器本体2を上下方向に切断した概略断面図である。容器本体2の内面2aによって空間S1が画され、空間S1に水が格納される。なお、「水」は日本国における平均的な性質を有する水道水でよい。
【0023】
吸引チューブ6(図1参照)は中空の部材であり、内側の空間を水が通過する。吸引チューブ6は、容器本体2の内面と接触しない位置に配置されている。
【0024】
ポンプ部材10は、公知の手動式のポンプ機構で構成する。ポンプ部材10の部品は、例えば、ポリプロピレン(PP)等の樹脂を射出成形することにより構成する。公知のポンプ機構は、例えば、二つの逆止弁もしくは逆止弁に類似の機構を上下に並べ、ポンプの頭部分を押圧することで、両弁の間の水を吐出した後、ポンプの頭部分が元の位置に戻ることで内部の水を両弁の間に吸い上げる構成である。
【0025】
本実施形態では使用者がポンプ部材10の頭部分を上から押圧することで、吐出口から一定量ずつ水を外部へ吐出し、ポンプ部材10の内部に備えた付勢部材で頭部分がもとの位置に戻るときに、吸引チューブ6から容器本体2内の水を一定量ずつ吸引する。
【0026】
図3は、容器本体2の周壁の拡大概念図である。具体的には、図3は、図2の容器本体2の周壁の領域A1の拡大概念図である。容器本体2の周壁は厚さW1に構成されている。容器本体2の外面2bの外側には、外層2cが形成されている。外層2cは、光の透過を遮断する塗料で形成されている。すなわち、外層2cは、外面2bに光不透過性の塗料が塗布されることによって形成されている。外層2cは遮断層の一例である。
【0027】
容器本体2は、銀を担持した担持体30と、銅紛40が樹脂4に分散することによって形成される。樹脂4は樹脂の一例である。担持体30は、銀を担持した担持体の一例である。銅紛40は、陽イオンを放出する陽イオン放出体の一例である。なお、陽イオン放出体を構成する金属は、銅に限らず、銀よりもイオン化傾向が大きい金属であればよい。
【0028】
容器本体2は、担持体30、銅紛40及び樹脂4を混合し、シランカップリング材など適宜のカップリング材、その他、必要に応じて添加剤を加えて成形することによって形成されている。担持体30は粉体として準備する。担持体30及び銅紛40を樹脂4に分散させる方法は、例えば、樹脂4の粉末に所定量の担持体30及び銅紛40を分散させた混合粉を準備し、その混合粉を溶融及び成形することによって実施する。成形方法は、例えば、ブロー成形である。なお、成形方法はブロー成形に限定されず、例えば、射出成形を採用してもよい。
【0029】
容器本体2を構成する樹脂4の種類は、例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系の樹脂を使用することができる。樹脂4は、顔料などの着色料を含まないものを使用する。本発明の発明者は、顔料などの着色料が、銀からの銀イオンの放出を抑制することを見出し、さらに、その抑制の程度の制御が困難であることを見出した。このため、樹脂4を顔料などの着色料を含まないものに限定した。そのうえで、容器本体2の内部に光が入り込むことを防止するために、上述のように、外層2cを形成する構成とした。
【0030】
担持体30は、例えば、ゼオライトに銀を担持させた銀系無機抗菌剤を使用する。銀系無機抗菌剤としては、例えば、株式会社シナネンゼオミック(愛知県名古屋市港区中川本町1-1)製のZeomic(ゼオミック)(登録商標)を使用する。
【0031】
銅紛40として、例えば、福田金属箔粉工業株式会社(京都市山科区西野山中臣町20番地)の製造に係る「銅ナノ粒子SFCPシリーズ」の銅粒子を使用することができる。あるいは、銅紛40として、古河ケミカルズ株式会社(大阪府大阪市西淀川区大野三丁目7番196号)の製造に係る亜酸化銅粒子を使用してもよい。
【0032】
容器本体2の全体における銀の含有量と、銅紛40の含有量は、容器100に水を格納して生成される銀イオン水中の銀イオンの含有量が予め規定した範囲の所定含有量になるように規定される。予め規定した範囲の水中の銀イオンの所定含有量は、殺菌または滅菌効果を有効に発揮し、かつ、人体に悪影響を与えない適切な範囲として規定される。予め規定した範囲の水中の銀イオンの所定含有量は、例えば、0.02ppm(mg/L)以上0.50ppm以下であり、望ましくは、0.10ppm以上0.42ppm以下であり、さらに望ましくは、0.10ppm以上0.25ppm以下であり、さらに望ましくは、0.18ppm以上0.25ppm以下であり、さらに望ましくは、0.20ppm以上0.25ppm以下である。銀イオン水中の銀イオンの濃度が低すぎると、殺菌または滅菌効果が不十分となる。一方、銀イオン水中の銀イオンの濃度が高すぎると、人体に悪影響を与える可能性がある。このため、銀イオン水中の銀イオンの濃度を、殺菌または滅菌効果を十分に発揮し、かつ、人体に悪影響を与えない適切な範囲に制御する必要がある。本実施形態の構成によって、銀イオン水中の銀イオンの含有量を適切な範囲に制御することができる。
【0033】
容器本体2の全体における銀の含有量は、0.04重量%以上0.50重量%以下の範囲において規定し、望ましくは銀の含有量は0.04重量%以上0.32重量%以下の範囲において規定し、さらに望ましくは、0.11重量%以上0.25重量%以下において規定し、さらに望ましくは、0.16重量%以上0.21重量%以下において規定する。銀は担持体30に担持されている。銀の含有量が少なすぎると、銀イオンの溶出量が過少となり、殺菌または滅菌効果が不十分となる。一方、銀の含有量が多すぎると、銀イオンの溶出量が過大となり、人体に悪影響を与える可能性がある。
【0034】
容器本体2の全体における陽イオン放出体(銅)の含有量は、0.10重量%以上9.00重量%以下の範囲において規定し、望ましくは0.20重量%以上5.00重量%以下であり、さらに望ましくは、0.30重量%以上3.00重量%以下である。例えば、銅紛40の含有量を0.10重量%以上4.00重量%以下の範囲において規定する。銅の含有量が少なすぎると、銀イオンの溶出を制限する効果が過少となり、銀イオンの過大な溶出を許容する。一方、銅の含有量が多すぎると、銀イオンの溶出を過大に制限してしまう。銅紛40から放出される銅イオンは、担持体30に担持された銀からの銀イオンの溶出を制限することによって、担持体30に担持された銀の減少量を低減し、銀イオン生成装置としての容器100の製品寿命を長期化するという効果もある。
【0035】
本実施形態においては、容器本体2の全体における担持体30の含有量は4.0重量パーセントとする。そして、担持体30における銀の含有量は4.0重量パーセントとする。これにより、容器本体2の全体における銀の含有量は0.16重量%となる。
【0036】
本実施形態において、容器本体2の全体における銅紛40の含有量は1.0重量%である。
【0037】
図4及び図5を参照して、容器本体2に水を格納することによって、容器本体2を構成する銀から銀イオンが放出され、所定含有量の銀イオンを含有する銀イオン水が水中に予め規定した範囲の量の銀イオン水が生成される様子を概念的に説明する。化学反応式の説明は省略する。図4及び図5において、ポンプ部材10の記載は省略し、容器本体2と吸引チューブ6を示している。
【0038】
図4に示すように、容器本体2に水60を格納すると、水60は容器本体2の内面2aと接する。
【0039】
そして、図5に示すように、容器本体2を構成する担持体30に担持される銀から銀イオン(Ag)が放出される。また、銅紛40から銅イオン(Cu2+)が放出され、担持体30からの銀イオンの放出が制限される。これにより、容器本体2から銀イオンが過大に放出されることなく、所定含有量の銀イオンを含有する銀イオン水62を生成することができる。そして、容器本体2の外面2bに形成された外層2cによって、光が容器本体2の内側に到達することが妨げられるから、銀イオン水62に含有される銀イオンは消滅せず、所定含有量が維持される。担持体30に担持された銀からの銀イオンが溶出するのであるが、その銀イオンの溶出の程度は、銅粉40から放出される銅イオンによって制限され、所定含有量の銀イオンを含有する銀イオン水62が生成され、外層2cによって光が容器本体2の内部に到達することが妨げられるから、銀イオン水62の銀イオンの含有量は維持される。また、外層2cによって、光が容器本体2の内部に到達することが妨げられるから、担持体30に担持された銀からの銀イオンの溶出と、銅紛40からの銅イオンの溶出が、光によって影響を受けないから、予定した含有量の銀イオンを含有する銀イオン水62を生成することができる。
【0040】
図6は、容器本体2に水を入れて、所定時間経過したときの銀イオンの濃度を生成した実験結果を示す。容器本体2全体の重量に対して、銀0.16重量%、銅1.0重量%を分散させて容器本体2を構成し、室温(RT:摂氏25度)において、6時間経過後の銀イオン濃度を測定した。銀イオン濃度の測定は、日本イオン株式会社(東京都世田谷区宮坂3-2-24)の銀イオン測定器AGT-131を使用して行った。6時間経過後に銀イオン濃度を測定すると、容器本体2内の銀イオン水をすべて廃棄し、改めて、容器本体2に水を入れて、6時間経過後に銀イオン濃度を測定するという実験を繰り返した。1回目から4回目までは銀イオン濃度が低下していったが、5回目以降は、銀イオン濃度は安定した。図6の例では、1回目の銀イオン濃度は約0.18ppmであったが、2回目以降は次第に低下し、5回目以降は銀イオン濃度が約0.15ppmで安定した。
【0041】
本発明の発明者は、実験によって、容器本体2に水を入れた場合において、容器本体2における銀の含有量が0.16重量%のときに、銅をまったく配合しない場合と比べて、銅を1.0重量%配合することによって、容器100によって生成される銀イオン水の銀イオン濃度が約50%減少することを確認した。そして、同様の条件において、銅を5.0重量%配合すると、銅を1.0重量%配合したときに比べて、銀イオン水の銀イオン濃度が約50%減少することを確認した。さらに、同様の条件において、銅を0.1重量%配合すると、銅をまったく配合しないときに比べて、銀イオン水の銀イオン濃度は実質的に変わらないことを確認した。これは、銀の含有量が0.16重量%のときに、銅の配合量が0.1重量%よりも大きく、1.0重量%以下の範囲において、銀イオンの溶出を効果的に制限する特異な数値あるいは数値範囲が存在することを意味する。銀の含有量を0.16重量%に限定せずに、一般化すると、銀の含有量Xagに対する銅の含有量Xcuの比S1(Xcu/Xag)が、0.625<S1≦6.25の範囲において、特異な数値あるいは数値範囲が存在することが理解できる。
【0042】
図7は、容器100の使用例を示す図である。例えば、家屋200の出入り口に玄関マット202が配置されている。母親204が、容器100によって生成された銀イオン水62を玄関マット202に吹き付けてしみ込ませておく。外出から帰った子供206や犬208が、家屋200に入る前に玄関マット202を踏んで通過すると、玄関マット202にしみ込んだ銀イオン水62に含まれる銅イオンの効果によって、子供206の靴の底部や犬の足についた細菌を低減させることができる。
【0043】
<第二の実施形態>
第二の実施形態について、図8及び図9を参照し、第一の実施形態と異なる点を中心に説明する。第二の実施形態においては、容器本体2Aの構成として、容器本体2Aの全体における銀の含有量と、陽イオン放出体の含有量と、多孔体の含有量が、容器100に格納して生成される銀イオン水中の銀イオンの含有量が、予め規定した範囲の所定含有量になるように規定されている。多孔体は、第二の制限手段の一例である。
【0044】
具体的には、容器100に水を格納して生成する銀イオン水の銀イオンの所定含有量は、例えば、0.02ppm(mg/L)以上0.50ppm以下であり、望ましくは、0.10ppm以上0.42ppm以下であり、さらに望ましくは、0.10ppm以上0.25ppm以下であり、さらに望ましくは、0.18ppm以上0.25ppm以下であり、さらに望ましくは、0.20ppm以上0.25ppm以下である。
【0045】
容器本体2Aの全体において、銀の含有量は0.04重量%以上0.50重量%以下の範囲において規定し、望ましくは0.04重量%以上0.32重量%以下の範囲において規定し、さらに望ましくは0.11重量%以上0.25重量%以下の範囲において規定し、さらに望ましくは0.16重量%以上0.21重量%以下の範囲において規定する。銀はゼオライトに担持されている。
【0046】
容器本体2Aの全体において、陽イオン放出体(銅紛40)の含有量は0.10重量%以上9.00重量%以下の範囲において規定し、望ましくは0.20重量%以上5.00重量%以下である。例えば、銅紛40の含有量は0.10重量%以上4.00重量%以下の範囲において規定する。
【0047】
多孔体の含有量は0.50%以上35.00重量パーセント以下で規定する。多孔体は、粉体を使用し、例えば、セラミックの粉体であるセラミック紛50である(図8参照)。
【0048】
図8は、容器本体2Aの容器壁の拡大概念図である。容器本体2Aは、銀を担持した担持体30と、銅紛40と、セラミック紛50とが樹脂4に分散することによって形成される。
【0049】
容器本体2Aに水を格納すると、担持体30に担持された銀から銀イオンが溶出する。銀イオンの溶出は、銅紛40から溶出する銅イオンによって制限される。さらに、銀から溶出した銀イオンは、セラミック紛50によって捕捉され、水中に放出される量は制限される。容器本体2Aに水を入れて生成する銀イオン水の銀イオン濃度は、銅紛40からの銅イオンによって制限することができ、相対的に高い範囲の所定含有量を実現することができる。しかし、銀イオン水を相対的に低い範囲の所定含有量に調整するために、銅紛40の含有量を多くすると、銀イオンの溶出を過度に制限してしまう。これに対して、容器本体2Aにおいて銅紛40の含有量を多くするのではなく、セラミック紛50を含有させることによって、相対的に低い範囲の所定含有量における銀イオン水を生成することができる。本実施形態においては、銀イオン水における銀イオンの濃度を制御する原理が異なる複数の方法を用いて、銀イオン水における銀イオン濃度を有効に制御している。すなわち、銅紛40による制御原理は、銀とのイオン化傾向の相違によるものであり、銀からのイオンの溶出自体を制御するものである。これに対して、セラミック紛のような多孔体は、銀からのイオンの溶出自体を抑制するのではなく、銀から溶出したイオンを捕捉することによって、銀イオン水中の銀イオンの濃度を制御するものである。
【0050】
図9は、容器本体2Aに水を入れて、所定時間後の銀イオンの濃度を測定した実験結果である。容器本体2全体に対して、銀0.16重量%、銅1重量%、セラミック10重量%を分散させて容器本体2を構成し、室温(RT:摂氏25度)において、6時間後に銀イオン濃度を測定した。1回目から4回目までは銀イオン濃度が低下していったが、5回目以降は、約0.07ppmで安定した。
【0051】
第二の実施形態は、容器本体2Aに格納した水に溶出する銀イオンの含有量を制御するために、容器本体2Aに銅と多孔体を含有させることが特徴である。例えば、銅の含有量は第一の実施形態と同一にしておいて、多孔体を所定量含有させることによって、相対的に低い銀イオンの含有量の銀イオン水を生成することができる。例えば、銀イオン水の所定含有量を0.02ppm以上0.50ppm以下とすれば、0.02ppm以上0.10ppmが相対的に低い範囲の所定含有量であり、0.15ppm以上0.50pp以下が相対的に高い範囲の所定含有量である。上述の第一の実施形態によって、相対的に高い範囲の所定含有量の銀イオン水を生成し、第二の実施形態によって、相対的に低い範囲の所定含有量の銀イオン水を生成することができる。
【0052】
<比較例>
図10は、第二の実施形態とは異なり、容器本体2に、セラミックを加えるのではなく、銅の含有量を増やした場合の実験結果である。図10に示すように、容器本体2全体に対して、銀0.16重量%、銅10.0重量%を分散させて容器本体2を構成し、室温(摂氏25度)において、6時間後に銀イオン濃度を測定した。その結果、銀イオン濃度が4回目以降は急激に低下し、銀イオンが所定含有量未満になる。
【0053】
第二の実施形態と比較例から、銀イオン濃度を相対的に低い範囲の所定含有量に調整するときに、銅の含有量を増加するのではなく、銅の含有量は適切な含有量に維持しつつ、セラミックを加えることが有効であることがわかる。
【0054】
なお、本発明の液体容器は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。また、各上記実施形態は、技術的に矛盾を生じない限り、適宜、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
100 容器
2,2A 容器本体
6 吸引チューブ
10 ポンプ部材
30 担持体
40 銅粉
50 セラミック紛
60 水
62 銀イオン水
【要約】
本発明は、銀イオン水中の銀イオンの含有量を所定範囲内に調整することができる液体容器を提供するものである。本発明の液体容器の容器本体2は、樹脂4に、銀を担持した担持体30と、陽イオンを放出する陽イオン放出体40とが分散されて構成されており、液体容器100に液体が格納されたときに、担持体30に担持された銀から液体中に銀イオンが放出され、陽イオン放出体40は、陽イオンによって、担持体30から液体中への銀イオンの放出を制限する第一の制限手段として機能するように構成されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10