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特許7045749ソフトウェア、健康状態判定装置及び健康状態判定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】ソフトウェア、健康状態判定装置及び健康状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220325BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20220325BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/00 ZDM
A61B5/00 102A
A61B5/00 102C
A61B5/01
A61B5/02
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021553145
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2020032219
【審査請求日】2021-09-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516031152
【氏名又は名称】芙蓉開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊輔
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特許第6719799(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/098304(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/098175(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/185808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定されたバイタルサインの値であるバイタル情報に基づいて、個体の健康状態を判定するソフトウェアであって、
情報処理機器を、
同一個体から測定された正規分布に従うバイタル情報及び測定日時の情報の入力を受け付ける情報入力手段と、
入力された前記バイタル情報及び測定日時の情報を記録させる情報記録手段と、
記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出する基準算出手段と、
前記平均μ及び前記標準偏差σから選択される少なくとも1つに基づいて設定された所定の数値範囲を基準にして、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定する判定手段と、
を含む手段として機能させるためのソフトウェアであり、
前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、
前記所定の数値範囲は、前記情報記録手段に記録された単一の種類のバイタル情報における少なくとも4個分の前記バイタル情報から、単一の種類のバイタル情報ごとに作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にし、
前記所定の数値範囲が、単一の種類のバイタル情報における5個以上であるX個分の前記バイタル情報から作成される場合には、
前記所定の数値範囲には、前記X個分のうち最初の4個分のデータ群に基づく個人の個体内変動が反映されると共に、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群について、一元配置分散分析で検定を行うと、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群は有意差がない
ソフトウェア。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【請求項2】
前記基準算出手段は、前記情報記録手段に記録された、1日に2回以上測定され、かつ、少なくとも2日分以上の前記バイタル情報から前記平均μ及び前記標準偏差σを算出する
請求項1に記載のソフトウェア。
【請求項3】
前記基準算出手段は、前記情報記録手段に記録された少なくとも4日分以上の前記バイタル情報から前記平均μ及び前記標準偏差σを算出する
請求項1に記載のソフトウェア。
【請求項4】
前記所定の数値範囲は、前記判定手段が異常な値と判定した前記バイタル情報を含んで設定される
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項5】
前記所定の数値範囲は、前記判定手段が異常な値と判定した前記バイタル情報を除いて設定される
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項6】
前記所定の数値範囲は、入力された所定のバイタル情報を除いて設定される
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項7】
前記所定の数値範囲は、入力された所定のバイタル情報を含めて設定される
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項8】
前記所定の数値範囲は、所定の状態にある対象者から測定された前記バイタル情報を除いて設定される
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項9】
前記情報入力手段は、前記判定手段が入力された所定のバイタル情報を異常な値と判定した後に、再度測定した同一個体の再測定バイタル情報及び測定日時の入力を受け付け、
前記判定手段は、前記再測定バイタル情報が異常な値か否かを判定する
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項10】
測定されたバイタルサインの値であるバイタル情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定装置であって、
同一個体から測定された正規分布に従うバイタル情報及び測定日時の情報の入力を受け付ける情報入力手段と、
入力された前記バイタル情報及び測定日時の情報を記録させる情報記録手段と、
記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出する基準算出手段と、
前記平均μ及び前記標準偏差σから選択される少なくとも1つに基づいて設定された所定の数値範囲を基準にして、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した判定結果を表示可能な表示手段とを備え、
前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、
前記所定の数値範囲は、前記情報記録手段に記録された単一の種類のバイタル情報における少なくとも4個分の前記バイタル情報から、単一の種類のバイタル情報ごとに作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にし、
前記所定の数値範囲が、単一の種類のバイタル情報における5個以上であるX個分の前記バイタル情報から作成される場合には、
前記所定の数値範囲には、前記X個分のうち最初の4個分のデータ群に基づく個人の個体内変動が反映されると共に、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群について、一元配置分散分析で検定を行うと、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群は有意差がない
健康状態判定装置。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【請求項11】
コンピュータが実行する方法であり、測定されたバイタルサインの値であるバイタル情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定方法であって、
同一個体から測定された正規分布に従うバイタル情報のうち、一定個数以上のバイタル情報の平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出する基準算出工程と、
前記平均μ及び前記標準偏差σから選択される少なくとも1つに基づいて設定された所定の数値範囲を基準にして、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定する判定工程とを備え、
前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、
前記所定の数値範囲は、単一の種類のバイタル情報における少なくとも4個分の前記バイタル情報から、単一の種類のバイタル情報ごとに作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にし、
前記所定の数値範囲が、単一の種類のバイタル情報における5個以上であるX個分の前記バイタル情報から作成される場合には、
前記所定の数値範囲には、前記X個分のうち最初の4個分のデータ群に基づく個人の個体内変動が反映されると共に、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群について、一元配置分散分析で検定を行うと、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群は有意差がない
健康状態判定方法。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【請求項12】
取得されたバイタルサインに関する情報であるバイタル情報をスコアリングして、得られたスコア結果情報に基づいて、個体の健康状態を判定するソフトウェアであって、
情報処理機器を、
同一個体から取得されると共に、正規分布に従うバイタル情報及び取得日時の入力を受け付ける情報入力手段と、
入力された前記バイタル情報及び取得日時の情報を記録させる情報記録手段と、
記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σを算出する基準算出手段と、
所定のスコアリング条件を基準に、入力された所定のバイタル情報をスコアリングして、スコアの値であるスコア結果情報を算出するスコアリング処理手段と、
所定のスコア判定条件を基準にして、前記スコア結果情報が異常な値か否かを判定するスコア判定手段と、
を含む手段として機能させるためのソフトウェアであり、
前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、
前記所定のスコアリング条件は、体温、脈拍、血圧及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、
単一の種類のバイタル情報における少なくとも4個分の前記バイタル情報から、単一の種類のバイタル情報ごとに作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にし、
前記所定のスコアリング条件が、単一の種類のバイタル情報における5個以上であるX個分の前記バイタル情報から作成される場合には、
前記所定のスコアリング条件には、前記X個分のうち最初の4個分のデータ群に基づく個人の個体内変動が反映されると共に、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群について、一元配置分散分析で検定を行うと、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群は有意差がない
ソフトウェア。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【請求項13】
前記基準算出手段は、前記情報記録手段に記録された、1日に2回以上測定され、かつ、少なくとも2日分以上の前記バイタル情報から前記平均μ及び前記標準偏差σを算出する
請求項12に記載のソフトウェア。
【請求項14】
前記基準算出手段は、前記情報記録手段に記録された少なくとも4日分以上の前記バイタル情報から前記平均μ及び前記標準偏差σを算出する
請求項12に記載のソフトウェア。
【請求項15】
前記バイタル情報は、
体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値と、
酸素飽和度の測定値と、
意識レベルを観察して取得された意識レベル評価結果とを有し、
前記スコアリング条件は、
酸素飽和度の測定値に対しては、予め設定した所定の数値範囲であり、
意識レベル評価結果に対しては、意識レベルの程度を示す所定の観察状態である
請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項16】
前記スコア判定手段は、少なくとも、複数の種類の前記バイタル情報をスコアリングした前記スコア結果情報の合計点に対して、異常な値か否かを判定する
請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項17】
前記所定のスコアリング条件は、前記スコア判定手段が異常な値と判定した前記スコア結果情報の算出根拠となった前記バイタル情報を含んで設定される
請求項12乃至請求項16のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項18】
前記所定のスコアリング条件は、前記スコア判定手段が異常な値と判定した前記スコア結果情報の算出根拠となった前記バイタル情報を除いて設定される
請求項12乃至請求項16のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項19】
前記所定のスコアリング条件は、入力された所定のバイタル情報を除いて設定される
請求項12乃至請求項18のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項20】
前記所定のスコアリング条件は、入力された所定のバイタル情報を含めて設定される
請求項12乃至請求項18のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項21】
前記所定のスコアリング条件は、所定の状態にある対象者から測定された前記バイタル情報を除いて設定される
請求項12乃至請求項20のいずれか1項に記載のソフトウェア。
【請求項22】
取得されたバイタルサインに関する情報であるバイタル情報をスコアリングして、得られたスコア結果情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定装置であって、
同一個体から取得されると共に、正規分布に従うバイタル情報及び取得日時の入力を受け付ける情報入力手段と、
入力された前記バイタル情報及び取得日時の情報を記録させる情報記録手段と、
記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σを算出する基準算出手段と、
所定のスコアリング条件を基準に、入力された所定のバイタル情報をスコアリングして、スコアの値であるスコア結果情報を算出するスコアリング処理手段と、
所定のスコア判定条件を基準にして、前記スコア結果情報が異常な値か否かを判定するスコア判定手段と、
前記スコア判定手段が判定した判定結果を表示可能な表示手段とを備え、
前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、
前記所定のスコアリング条件は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、
単一の種類のバイタル情報における少なくとも4個分の前記バイタル情報から、単一の種類のバイタル情報ごとに作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にし、
前記所定のスコアリング条件が、単一の種類のバイタル情報における5個以上であるX個分の前記バイタル情報から作成される場合には、
前記所定のスコアリング条件には、前記X個分のうち最初の4個分のデータ群に基づく個人の個体内変動が反映されると共に、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群について、一元配置分散分析で検定を行うと、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群は有意差がない
健康状態判定装置。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【請求項23】
コンピュータが実行する方法であり、取得されたバイタルサインに関する情報であるバイタル情報をスコアリングして、得られたスコア結果情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定方法であって、
同一個体から取得されると共に、正規分布に従うバイタル情報の入力を受け付けて記録する情報記録工程と、
記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σを算出する基準算出工程と、
所定のスコアリング条件を基準に、入力された所定のバイタル情報をスコアリングして、スコアの値であるスコア結果情報を算出するスコアリング処理工程と、
所定のスコア判定条件を基準にして、前記スコア結果情報が異常な値か否かを判定するスコア判定工程とを備え、
前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、
前記所定のスコアリング条件は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、
単一の種類のバイタル情報における少なくとも4個分の前記バイタル情報から、単一の種類のバイタル情報ごとに作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にし、
前記所定のスコアリング条件が、単一の種類のバイタル情報における5個以上であるX個分の前記バイタル情報から作成される場合には、
前記所定のスコアリング条件には、前記X個分のうち最初の4個分のデータ群に基づく個人の個体内変動が反映されると共に、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群について、一元配置分散分析で検定を行うと、前記最初の4個分のデータ群と、前記X個分のデータ群は有意差がない
健康状態判定方法。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソフトウェア、健康状態判定装置及び健康状態判定方法に関する。詳しくは、対象者の個人差を考慮したバイタルサインや日々の体調を反映して、対象者ごとに異なる個体内変動を、より迅速に、かつ、精度高く捉えることが可能であり、対象者の健康管理や、一人ひとりの個性にかなった医療の提供に寄与するソフトウェア、健康状態判定装置及び健康状態判定方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において「個別化医療(personalized medicine)」の重要性が高まっている。個別化医療とは、一般的に、テーラーメード医療(tailor-made medicine)といわれる「一人ひとりの個性にかなった医療を行うこと」をさしている。
【0003】
これまでの医療は、疾患を中心とした考え方に基づき行われるものであり、疾患の原因を探索したり、その治療法を開発したりすることが主な目的とされている。この一方で、疾患の状態は一人ひとりで千差万別であり、同じ病気であっても同じ治療法を適用することが必ずしも正しくないことは以前より知られてきている。
【0004】
しかしながら、従来の医療において、治療効果の個人差は、治療とその効果を観察しなければ分からないものとされ、一人ひとりに最適な治療計画を行うことは難しい状況にある。
【0005】
ここで、個別化医療の実現には、個人ごとに異なる「バイオマーカー」を捉えることが重要とされている。一般的には、バイオマーカーは、特定の病状や生命体の状態の指標であり、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)の研究グループは、1998年に、バイオマーカーについて「通常の生物学的過程、病理学的過程、もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価される特性」と定義づけている。また、過去においては、バイオマーカーは主として、血圧や心拍数など生理学的指標のことを意味していた。
【0006】
このバイタルサインをバイオマーカーにできる理由は、体温、血圧、脈拍、呼吸数等のバイタルサインに、一人ひとり異なる「個体内変動」があるためである。即ち、対象者によって、バイタルサインの変化の仕方が異なっており、この変化の仕方を適切に捉えて、解析することで、対象者の健康管理や診断等に寄与する技術が開発できると、本発明者は考えたのである。
【0007】
また、生命兆候であるバイタルサインは、健康状態を簡便に把握できる指標として、病院・介護施設・在宅医療などの現場で幅広く、健康管理に日常的に用いられている。しかし、本来、バイタルサインをバイオマーカーとして用いる場合、個々人のバイタルデータより、テーラーメードに分析する必要がある。
【0008】
それは一人ひとりに個体差、即ちその人固有の個体内変動があり、また高齢者は加齢の影響で体温低下、血圧上昇、脈拍低下など一般成人とは異なる特性を持つため、絶対値基準で判定するには問題があるからである。
【0009】
この問題は、新型コロナウイルスに対する発熱に対し、日本の厚生労働省が37.5℃という絶対値基準を撤回し、「人それぞれの平熱からの高体温」とテーラーメードの異常判定に変更したことで多くの人が知ることになった。
【0010】
(1)日本人の平均体温は36.9℃であり、1日に1℃の日内変動をする。(2)体温分布は個人により様々で、37.5℃が平均体温である人も少なからずいる。(3)高齢者は加齢の影響で年々体温が低下していく。以上より、37.5℃という絶対値基準で一律に発熱を判定するには問題がある。
【0011】
しかし、「人それぞれの平熱からの高体温」では、数値的な基準が明確でないため、2020年7月に、日本医師会COVID-19有識者会議から、本発明者の日本慢性期医療協会誌での論文(個々人の体温の「平均値±2σ=95%の信用区間)を正常域とする)を根拠に、「熱の正規分布中央値より2σプラス0.5度)を発熱(ここでは注意すべき重い発熱の意味)と考えるべきである」と提言された。
【0012】
本発明者は、個々人の体温、血圧、脈拍、脈圧のバイタルサインが、特殊な疾患を除き、必ず正規分布する性質を検証したうえで、その人固有の個体内変動を含んで分布する特性に着目し、一定数のデータを取得し、そのデータの平均値(μ)及び標準偏差(σ)に基づく判定基準(基準域)を設けて、対象者のバイタルの異常判定(例えば、特許文献1参照)及びスコアリング判定(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)を行う「バイタル異常値検知」技術を発明し、厚生労働科学研究において、肺炎入院に対するバイタルスコアリングの特異度が93%であった事より立証し、論文に発表してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】第6350959号明細書
【文献】第6512648号明細書
【文献】第6551959号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】"早期警戒スコア(Early warning score)"、[online]、ウィキペディアフリー百科事典(Wikipedia, the free encyclopedia)、[平成29年10月16日検索]、インターネット<URL:https://en.wikipedia.org/wiki/Early_warning_score>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この「バイタル異常値検知」の発明は、テーラーメードの発熱検知によりコロナ疑いにアラートを出すアプリの他、電子カルテ・介護ソフト・ベッドセンサー・健康住宅と活用されているが、基準域(バイタル異常の判定基準)を作成するのに、1日1回の測定で30日以上かかるという点が課題とされてきた。
【0016】
そこで個々人の体温、血圧、脈拍、脈圧のバイタルサインが、特殊な疾患を除き、必ず正規分布する性質を鑑み、更に、少ないデータ数、又は、短期間で、迅速な判定を可能にするために、精度を保ちながら測定点を減らす検討を行った。
【0017】
ここで本発明者は、1日1回測定したバイタルサインの値について、156人に及ぶ分散が少ないバイタルデータを分析し、4日分のデータ群が、30日分のデータ群との間で、統計的仮説検定を行い、4日分のデータ群が、30日分のデータ群と比較しても有意差がなく(P>0.05)、かつ差が無い(Pが1に近い)検証を行い、4日分と30日分のデータでの検知精度に差が無いことを立証した。なお、詳細については後述する。
【0018】
これにより「バイタル異常値検知」を行うために必要な基準域(判定基準)の作成には、4日分のデータがあれば良いことが立証された。これにより短期間のバイタルデータにより、テーラーメードでのバイタル異常値検知が可能となる。なお、分布に用いるデータは4日分以降も蓄積していくため、30日(30回)分のデータが集積された時点で、従前の30日以上のデータを用いる技術結果と同じになる。
【0019】
この「バイタル異常値検知」技術は、これにより求められていた異常値等をスコア分布表に配点し、その合計点より医療リスクを算出する「バイタルスコアリング」技術にも用いることができる。
【0020】
また、医療分野において、対象者の病気の程度を迅速に評価する手法として、早期警戒スコア(Early warning score以下、「EWS」と称する)と呼ばれるスコアリング法が利用されている。
【0021】
EWSは、対象者の6つの主要なバイタルサインである呼吸数(rpm)、SpO2(酸素飽和度)(%)、体温(℃)、血圧(mmHg)、心拍数(bpm)、意識レベルの評価(AVPU応答、A:alart(正常)、V:voice(声に反応がある)、P:pain(痛みに反応がある)U:unresponsive(反応なし)に基づき、バイタルサインの測定結果や評価結果に応じたスコアを算出して、スコアの合計点数によって、病気の程度を判断する手法である(例えば、非特許文献1を参照)。
【0022】
このEWSは、複数の生理学的測定値の変化及び単一変数内の大きな変化を介して臨床的劣化が見られるという原則に基づいている。また、各バイタルサインの測定値からスコアを算出する際には、集団(複数の対象者)の測定値の結果に基づいて決定された数値が採用されている。
【0023】
例えば、表1に示すように、体温であれば測定値の中心範囲として「36.0~37.9℃」が設定され、同範囲では0点のスコアとなる。また、その上下側の値については、「35.0~35.9℃」又は「38.0~38.9℃」であれば1点のスコア、「34.0~34.9℃」又は「38.9℃超える値」であれば2点のスコア、「34℃未満」であれば3点のスコアとなるように、体温の測定値とスコアリングの点数が設定されている。また、その他のバイタルサインについても表1に示すように設定されている。
【0024】
【表1】
【0025】
ここで表1に示す内容では、集団のバイタルサインの測定値から設定された「正常な範囲」、「異常な範囲」が基準として採用されている。ここで設定された範囲は、地域や年齢等を考慮して範囲を変動させることはあるが、基本的に大多数の人数から得られたバイタルサインの測定値に基づき、基準となる範囲が決められている。この基準の設定は、呼吸数、酸素飽和度、血圧及び心拍数においても同様である。
【0026】
また、EWSでは、6つの主要なバイタルサイン以外のパラメータとして、尿出力、酸素投与流量、疼痛スコア等の、他のパラメータにスコアを割り当てることもある。
【0027】
従前のスコアリング法は、集団のバイタルサインの測定値から設定された「正常な範囲」、「異常な範囲」が基準となっている。そのため、対象者の個体内変動を考慮した検知とは言い難いものであった。
【0028】
即ち、集団のバイタルサインの測定値から設定された基準では、バイタルサインにおける個人ごとの特性に対応することができない。例えば、青年と高齢者では、平穏な状態の体温や、1日の体温の変動が大きく異なっている。また、高血圧等の病態の有無によっても、対象差ごとにバイタルサインの値は大きく異なるものとなる。
【0029】
つまり、対象者の年齢や病態の有無等を考慮した場合、集団のバイタルサインの測定値から設定された「正常な範囲」や「異常な範囲」は、適切な基準とならないことが考えられた。従って、本発明における「バイタル異常値検知」技術を「バイタルスコアリング」技術に応用することの検討も行った
【0030】
以上の内容から、本発明者は、バイタルの異常判定、及び、スコアリング判定について、個々人の体温、血圧、脈拍、脈圧のバイタルサインが、特殊な疾患を除き、必ず正規分布する性質を鑑み、更に、少ないデータ数、又は、短期間で、迅速な判定を可能にするために、判定の精度を保ちながら、判定に必要な測定点を減らす検討を行った。
【0031】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、対象者の個人差を考慮したバイタルサインや日々の体調を反映して、対象者ごとに異なる個体内変動を、より迅速に、かつ、精度高く捉えることが可能であり、対象者の健康管理や、一人ひとりの個性にかなった医療の提供に寄与するソフトウェア、健康状態判定装置及び健康状態判定方法に係るものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記の目的を達成するために、本発明のソフトウェアは、測定されたバイタルサインの値であるバイタル情報に基づいて、個体の健康状態を判定するためのソフトウェアであって、情報処理機器を、同一個体から測定された正規分布に従うバイタル情報及び測定日時の情報の入力を受け付ける情報入力手段と、入力された前記バイタル情報及び測定日時の情報を記録させる情報記録手段と、記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出する基準算出手段と、前記平均μ及び前記標準偏差σから選択される少なくとも1つに基づいて設定された所定の数値範囲を基準にして、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定する判定手段と、を含む手段として機能させるためのソフトウェアであり、前記所定の数値範囲は、前記情報記録手段に記録された少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にするように構成されている。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
なお、本明細書において、ソフトウェアとは、コンピュータの動作に関するプログラムのことである。また、プログラムとは、コンピュータによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものをいう。
【0033】
ここで、情報入力手段が、同一個体から測定された正規分布に従うバイタル情報を受け付け、情報記録手段に、入力されたバイタル情報を記録させることによって、同一個体のバイタル情報を蓄積することができる。なお、ここでいう同一個体とは、測定したバイタルサインの値が異常な値か否かを判定する判定対象を指すものである。
【0034】
また、ここでいう「正規分布に従うバイタル情報」とは、一定のデータ数(例えば、特許文献3に開示された30点のデータ)が揃った場合に、データが正規分布する性質を意味するものである。従って、後述する「少なくとも4個分のバイタル情報」のみで、そのデータが正規分布すること(正規性を示すこと)を意味する用語ではない。
【0035】
また、ここでいう「個体」とは、単独の生物(ヒト又は動物)のことである。なお、本発明は、単一のソフトウェアで、単独の同一個体のバイタル情報を記録する態様と、複数の同一個体のバイタル情報を同一個体ごとに記録する態様を含んでいる。同一個体とは、例えばヒトであれば、同一人物のことをいう。
【0036】
また、ここでいう「同一個体から測定されたバイタル情報」とは、情報入力手段での入力の段階で個体の区別が可能であることを意味している。例えば、1人の対象者が自分だけのバイタル情報を入力する態様や、複数の対象者の情報を取り扱う際に、特定の個人用の入力画面が表示されてバイタル情報を入力する態様等、入力するための形式を異ならせて、個体を区別することが考えられる。
【0037】
また、情報入力手段が、同一個体から測定されたバイタル情報及び測定日時の情報の入力を受け付け、情報記録手段に、入力されたバイタル情報及び測定日時の情報を記録させることによって、同一個体のバイタル情報が測定した日時の情報と共に蓄積されるものとなる。即ち、同一個体の複数のバイタル情報を測定日時の情報と紐付けて取扱うことが可能となる。また、異なるバイタル情報を比較する際に、比較するバイタル情報の間での変位の状況や、変位量を確認可能となる。なお、ここでいう測定日時の情報は、情報入力手段にバイタル情報を入力する際に、入力者が測定日時の情報を入力する態様や、バイタル情報を入力する際の時間が情報入力手段に自動的に入力される態様が含まれるものである。
【0038】
また、基準算出手段が、記録された複数のバイタル情報の全部又は一部の平均μを算出することによって、同一個体の個体内変動が反映されたバイタル情報の平均値の情報を利用可能となる。なお、ここでいう平均μとは、「各バイタル値の総和」から「バイタル値のデータ数」を割った値を意味するものである。また、ここでいう「記録された複数のバイタル情報の平均μ」は、記録されたバイタル情報の全データから算出するものだけでなく、全データのうちの一部から算出されるものを含んでいる。更に、平均μの算出根拠となるバイタル情報は連続的なデータ、例えば、毎秒、毎分、毎時間、毎日等継続的に測定したデータだけでなく、秒、分、時間、日数等の間隔を開けて抽出したデータから算出されるものであってもよい。
【0039】
また、基準算出手段が、記録された複数のバイタル情報の全部又は一部の標準偏差σを算出することによって、同一個体の個体内変動が反映されたバイタル情報の標準偏差の情報を利用可能となる。なお、ここでいう標準偏差σとは、所定の期間のバイタル情報の「偏差の二乗平均」である。更に言えば、「偏差」とは、所定の期間のバイタル情報の「各バイタル値」から「所定の期間のバイタル値の平均値」を引いた値である。また、ここでいう「記録された複数のバイタル情報の標準偏差σ」は、記録されたバイタル情報の全データから算出するものだけでなく、全データのうちの一部から算出されるものを含んでいる。更に、標準偏差σの算出根拠となるバイタル情報は連続的なデータ、例えば、毎秒、毎分、毎時間、毎日等継続的に測定したデータだけでなく、秒、分、時間、日数等の間隔を開けて抽出したデータから算出されるものであってもよい。
【0040】
また、基準算出手段が、記録された複数のバイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出することによって、平均μ及び標準偏差σのいずれか1つが算出可能となる。また、平均μ及び標準偏差σの両方を算出することも可能である。
【0041】
また、判定手段が、平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つに基づいて設定された所定の数値範囲を基準にして、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定することによって、同一個体の個体内変動が反映された基準をもって、同一個体のバイタル情報について異常な値か否かを判定可能となる。即ち、判定基準となる所定の数値範囲は、同一個体について取得したバイタル情報から算出された平均値や標準偏差を利用して設定されるため、その同一個体に固有で、かつ、バイタル情報の平均値や平均値からの散らばりが反映された基準をもって異常か否かを判定できる。なお、ここでいう「入力された所定のバイタル情報」とは、判定の対象となるバイタル情報を意味している。また、ここでいう「所定の数値範囲」は、入力された所定のバイタル情報、即ち、判定の対象となる所定のバイタル情報を含まずに、それ以前の過去のバイタル情報から設定された数値範囲と、判定の対象となる所定のバイタル情報を含んで設定された数値範囲と、の両方を含むものである。また、「所定の数値範囲」は、基準となる値、例えば、上限値を設定した際に、判定の対象となる数値が上限値以上となる際に「異常」とする態様と、上限値を超えた際に「異常」とする態様の両方を含むものである。入力された所定のバイタル情報は、直近に入力されたバイタル情報であることができる。また、入力された所定のバイタル情報は、以前に入力されたバイタル情報のうちの一つまたは複数のバイタル情報であることができる。
【0042】
また、所定の数値範囲が、情報記録手段に記録された少なくとも4個分のバイタル情報から作成されると共に、平均μ、標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にすることによって、平均μから負の方向にnσの値分離れた数値を下限値、平均μからmσの値分離れた数値を上限値とした基準として、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定することが可能となる。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
即ち、平均μからnσを引いた値が下限値、平均μにmσ足した値を上限値として、これらの少なくとも一方を基準に、同一個体から測定したバイタルサインの測定値に対して、その値が異常な値か否かを判定することができる。また、少なくとも4個分のバイタル情報で基準が作成できることから、迅速な判定が可能となる。なお、n及びmの値は上述したように0より大きい数であればよく、このn及びmの値は、基準の厳密さや、バイタルサインの種類、対象者の既往歴等の種々の条件を考慮して適宜設定することができるものである。また、「下限値及び上限値の少なくとも一方」であるので、下限値のみ又は上限値のみ基準として設定する態様だけでなく、下限値と上限値の両方を基準として採用する態様も含むものである。
【0043】
ここで本発明において「4個分のバイタル情報(測定データ)」が、異常判定(又はスコアリング判定)に利用しうることについて詳細を説明する。より詳細には、体温、脈拍、血圧、及び脈圧のバイタルサインについて、少なくとも4個分の測定データを取得すれば、対象者の個体内変動を反映した判定が可能となる点について説明する。
【0044】
まず、前提として、本発明者は、これまでの検討により、同一個体から取得したバイタルデータについて、少なくとも30個分の測定データが取得できれば、その測定データが、対象者ごとの個体内変動を反映して正規分布することを確認している(特許文献3参照)。
【0045】
例えば、図15図22に示すように、脈拍を各条件で測定した場合、30個分の測定データが揃えば、その測定したデータに基づき、対象者ごとに異なる正規分布曲線が得られる結果となった。図15図17図19及び図21は、同一対象者(ここではAさんと称する)から取得した脈拍の結果であり、図16図18図20及び図22は、別の同一対象者(ここではBさんと称する)から取得した脈拍の結果である。なお、図15図22において、30個分の測定データを示し、曲線上の丸印は1つの測定データに対応しているが、平均値を中心に重なっているデータが複数存在するため、図面上では、30個分の丸印が表れていない。
【0046】
より詳細には、図15及び図16では、1分ごとに脈拍を測定して、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づくグラフである。いずれも平均値を頂点とした正規分布の形を示す結果が得られた。また、AさんとBさんでは、頂点となる平均値が異なり、かつ、曲線の両端に位置する値(最小値及び最大値)も異なっている。従って、個体なりの正規分布が得られることが明らかである。なお、この点は、図17図22において、同様の傾向が確認された。
【0047】
また、図17及び図18は、7分ごとに脈拍を測定して、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づくグラフである。このように、測定する時間間隔を変えた際にも、各対象者の平均値を頂点とした正規分布の形が得られた。
【0048】
また、図19及び図20は、1日の中で、不規則な時間で、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づくグラフである。更に、図21は、30時間の中で、不規則な時間で、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づくグラフであり、図22は、30日の中で、不規則な時間で、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づくグラフである。ここで示すように、一定間隔で規則的に取得されたデータでなくても、30個分の測定データを取得すれば、そのデータが、各対象者の平均値を頂点として正規分布の形を取ることが確認された。
【0049】
また、例えば、図23及び図24に示すように、体温についても、30個分の測定データが揃えば、その測定したデータに基づき、対象者ごとに異なる正規分布曲線が得られる結果となった。図23及び図24は、2分ごとに体温を測定して、30個分の体温の測定データを取得した結果に基づくグラフである。また、図23図24では、体温を測定した対象者が異なっている。このように、体温でも、30個分の測定データを取得すれば、そのデータが、各対象者の平均値を頂点として正規分布の形を取ることが確認された。
【0050】
30個分の測定データから、個体なりの正規分布が得られる点は、脈拍と体温だけでなく、血圧(収縮期血圧及び拡張期血圧)、脈圧についても確認された。
【0051】
従って、本発明者は、時間の長さや測定間隔の規則性の有無に関わらず、バイタルサインについて、少なくとも30個分の測定データを取得すれば、対象者の個体内変動を反映した正規分布を得ることができ、これをバイオマーカーとして利用しうることを確認していた。
【0052】
ここで、本発明者は、1日1回測定したバイタルサインの値について、4日分のデータ群と、30日分のデータ群との間で、統計的仮説検定を行い、4日分のデータ群が、30日分のデータ群と比較しても有意差がなく(P>0.05)、かつ、差が無い(Pが1に近い)検証を行い、4日分のデータ群と30日分のデータ群での検知精度に差が無いことを立証した。
【0053】
より詳細には、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、脈拍、体温の各バイタルサインについて、1日1回の測定を行い、4日分のデータ群(4日データ群)、10日分のデータ群(10日データ群)、14日分のデータ群(14日データ群)、及び、30日分のデータ群(30日データ群)につき、それぞれのデータ群の「平均値」と、「標準偏差」を算出した。また、データ数は156人分(n=156)に基づくものである。
【0054】
そして、4日データ群、10日のデータ群、14日データ群、及び、30日データ群のデータ群を比較するために、分散分析(analysis of variance、略称:ANOVA)の1種である一元配置分散分析に基づき、各バイタルサインのP値を算出した。また、P値は、帰無仮説を棄却するための証拠を測定する有意確率であり、本検証では、P値の値が1に近い程、各データ群に有意差がないものと推定できるものとした。データ群の平均値、標準偏差、及び、P値の結果を表2に示す。
【0055】
なお、一元配置分散分析は、既知の方法で計算可能であるため、詳細な説明は省略するが、各データ群について、郡内平方和、群間平方和、自由度、F値及びP値を段階的に求めることで算出することができる。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すように、4日データ群、10日のデータ群、14日データ群、及び、30日データ群の4つのデータ群についてのP値は、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、脈拍、体温の各バイタルサインにおいて、0.960~0.999となり、1に近い値となったことから、各データ群に有意差がないものと推定できる結果を示した。また、各データ群の平均値及び標準偏差を比較しても、データ群間での平均値の差、及び、標準偏差の差は、非常に小さな値となった。
【0058】
以上の結果から、各バイタルサインについて、4個分(4日分)のデータ群の平均値及び標準偏差は、30個分(30日分)のデータ群の平均値及び標準偏差と比較して、有意差がなく(P>0.05)、かつ差が無いものと推定できることが確認された。
【0059】
そして、これにより、対象者個人のバイタルの異常判定又はスコアリング判定を行う際に、判定基準(所定の数値範囲)の算出根拠として、4個分のバイタル情報に基づく、平均値(μ)及び標準偏差(σ)が採用できると考え、本発明に至った。
【0060】
即ち、4個分のバイタル情報に基づく、平均値(μ)及び標準偏差(σ)から設定された判定基準にも、対象者個人の個体内変動が反映されており、これを判定に用いることで、迅速な判定を行うことが可能となる。
【0061】
また、基準算出手段が、情報記録手段に記録された、1日に2回以上測定され、かつ、少なくとも2日分以上のバイタル情報から平均μ及び標準偏差σを算出する場合には、最低2日分のバイタル情報に基づき、同一個体の個体内変動が反映された平均値及び標準偏差を算出可能となる。なお、ここでいう1日に2回以上測定され、かつ、少なくとも2日分以上のバイタル情報とは、連続した日付だけでなく、日数に隔たりがある情報について、合計して、1日2回の測定で、2日分以上になるバイタル情報も含むものである。また、1日2回の測定とは、例えば、午前中に1回、午後に1回測定した情報を意味する。
【0062】
また、基準算出手段が、情報記録手段に記録された少なくとも4日分以上のバイタル情報から平均μ及び標準偏差σを算出する場合には、最低4日分のバイタル情報に基づき、同一個体の個体内変動が反映された平均値及び標準偏差を算出可能となる。この結果、異常な値か否かを判定する基準の精度を高めることができる。なお、ここでいう4日分以上のバイタルとは、連続した日付だけでなく、日数に隔たりがある情報について、合計して4日分以上になるバイタル情報も含むものである。また、4日分以上のバイタル情報とは、例えば、1日1回測定したバイタル情報が、4日分以上揃った情報を意味する。
【0063】
また、バイタル情報が、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含む場合には、体温、脈拍、血圧、及び脈圧について、個体内変動が反映された判定基準をもって、バイタル情報が異常か否かを判定可能となる。
【0064】
また、所定の数値範囲が、判定手段が異常な値と判定したバイタル情報を含んで設定される場合には、対象者におけるバイタルサインの値に、異常が生じている状態を含めて、個体内変動を捉えて、バイタル異常の判定を行うことが可能となる。
【0065】
また、所定の数値範囲が、判定手段が異常な値と判定したバイタル情報を除いて設定される場合には、以下のような特殊な状況下での、安定しないバイタル情報が、判定基準の算出根拠に含まれなくなり、判定の精度を高めることができる。ここでいう特殊な状況下での安定しないバイタル情報とは、例えば、対象者への医療介入の際、即ち、医者の診断(指示)により対象者が入院した直後に測定されたバイタルサインの値を意味する。このような状況下で測定されたバイタルサインの値は、対象者のバイタルの個体内変動から見て、安定していない値となりやすいため、かかる値を、判定基準の算出根拠から除外する態様である。
【0066】
また、所定の数値範囲が、入力された所定のバイタル情報を除いて設定される場合には、判定対象となるバイタルサインの値を含まずに、バイタル異常の判定基準が設けられるものとなる。このことによれば、判定対象となるバイタルサインの値が、対象者のバイタルの変動から見て、異常とみなされるような数値になった場合(例えば、体温が高熱になる)、その異常とみなされる数値が、判定基準の算出根拠から除外され、バイタル異常の有無の判定の精度を高めることができる。
【0067】
また、所定の数値範囲が、入力された所定のバイタル情報を含めて設定される場合には、判定対象となるバイタルサインの値を含めて、バイタル異常の判定基準が設けられるものとなる。このことによれば、バイタル異常の判定基準の根拠となるデータ数が増え、対象者の個体内変動の傾向をより反映した判定基準を設けることが可能となる。
【0068】
また、所定の数値範囲が、所定の状態にある対象者から測定されたバイタル情報を除いて設定される場合には、対象者のバイタルが安定していない特殊な状態下で測定したバイタルサインの値を除いて、バイタル異常の判定基準が設けられるものとなる。即ち、例えば、対象者が解熱剤を服用して、体温が安定していない(本来の変動傾向を示さない)状態で測定した体温の値を、判定基準の算出根拠から除外する態様である。これにより、短期間でのバイタル異常の判定の精度を高めることができる。なお、ここでいう所定の状態とは、対象者のバイタルが安定していない特殊な状態を意味するものであり、その内容は、解熱剤の服用時の体温に限定されるものではない。例えば、血圧や脈拍に作用する薬の服用時や、その他、バイタルサインの変動に作用する処方や処置が、対象者になされた状態を含んでいる。
【0069】
また、基準算出手段が、更に、情報記録手段に記録されたバイタル情報から直近4日間のバイタルサインの値の平均値である直近バイタル平均値と、直近30日間のバイタルサインの値の平均値である対照バイタル平均値を算出し、ソフトウェアが、更に、情報処理機器を、第2判定手段として機能させるためのソフトウェアを含み、第2判定手段が、直近バイタル平均値と対照バイタル平均値との差が、所定の範囲を超えている場合に、体調悪化傾向の値と判定する場合には、バイタル情報の平均値の変化を根拠に、同一個体の健康状態が悪化することを予測した情報を提供可能となる。即ち、直近4日間と、直近1か月におけるバイタル平均値のゆらぎを根拠にして、バイタル平均値自体が大きく変化する現象を、対象となる同一個体の健康状態の大きな変化と捉え、異常をきたす予測情報として利用する。なお、ここでの「直近」には、判定の対象となるバイタル情報を含む態様と、含まない態様の両方が採用可能である。
【0070】
また、情報入力手段が、判定手段が入力された所定のバイタル情報を異常な値と判定した後に、再度測定した同一個体の再測定バイタル情報及び測定日時の入力を受け付ける場合には、判定の根拠となったバイタル情報に加えて、更に、再度の測定を行った同一個体のバイタル情報が記録可能となる。例えば、判定の根拠となったバイタル情報の値が、測定の仕方が悪い等、何等かの理由で誤った数値となり、その測定値をもって異常な値と判定されるケースにおいて、再度、判定結果が正確か否かを確認するためのバイタル情報の入力及び記録が可能となる。
【0071】
また、判定手段が、再測定バイタル情報が異常な値か否かを判定する場合には、再度測定したバイタル情報に対して、異常な値か否かの判定を行うことが可能となる。即ち、例えば、上述したように、異常な値であるとの1回目の判定の根拠となったバイタル情報の値が何等かの理由で誤った数値であった際に、再度、異常の有無を判定可能となる。更に、この場合には、再測定バイタル情報をもって、次回の判定に用いる平均値、標準偏差及びこれらに基づき設定される判定基準が作成される態様とすることもできる。
【0072】
また、情報記録手段が、個体を識別可能な個体識別情報をバイタル情報と紐付けて記録可能な場合には、各バイタル情報を個体ごとに識別して取扱い可能となる。即ち、例えば、1つのソフトウェアで複数人の対象者のバイタル情報を管理して、複数人の対象者のバイタル情報について判定が可能となる。
【0073】
また、バイタルサインは、ヒト及び動物の少なくとも一方から測定されたバイタルサインである場合には、判定の対象者を、人間や動物として設定可能となる。なお、ここでいう動物とは、特に種類が限定されるものではなく、バイタルサインの値が測定可能な動物であれば、異常の判定の対象と成り得るものである。
【0074】
また、上記の目的を達成するために、本発明の健康状態判定装置は、測定されたバイタルサインの値であるバイタル情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定装置であって、同一個体から測定された正規分布に従うバイタル情報及び測定日時の情報の入力を受け付ける情報入力手段と、入力された前記バイタル情報及び測定日時の情報を記録させる情報記録手段と、記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出する基準算出手段と、前記平均μ及び前記標準偏差σから選択される少なくとも1つに基づいて設定された所定の数値範囲を基準にして、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定する判定手段と、前記判定手段が判定した判定結果を表示可能な表示手段とを備え、前記所定の数値範囲は、前記情報記録手段に記録された少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にするように構成されている。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【0075】
ここで、所定の数値範囲が、情報記録手段に記録された少なくとも4個分のバイタル情報から作成されると共に、平均μ、標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にする場合には、平均μから負の方向にnσの値分離れた数値を下限値、平均μからmσの値分離れた数値を上限値とした基準として、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定することが可能となる。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
即ち、平均μからnσを引いた値が下限値、平均μにmσ足した値を上限値として、これらの少なくとも一方を基準に、同一個体から測定したバイタルサインの測定値に対して、その値が異常な値か否かを判定することができる。また、少なくとも4個分のバイタル情報で基準が作成できることから、迅速な判定が可能となる。
【0076】
また、判定手段が判定した判定結果を表示可能な表示手段によって、判定結果を表示して確認可能となる。
【0077】
また、上記の目的を達成するために、本発明の健康状態判定方法は、コンピュータが実行する方法であり、測定されたバイタルサインの値であるバイタル情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定方法であって、同一個体から測定された正規分布に従うバイタル情報のうち、一定個数以上のバイタル情報の平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出する基準算出工程と、前記平均μ及び前記標準偏差σから選択される少なくとも1つに基づいて設定された所定の数値範囲を基準にして、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定する判定工程とを備え、前記所定の数値範囲は、少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にするように構成されている。
【0078】
ここで、基準算出工程で、同一個体から測定されたバイタル情報のうち、一定個数以上のバイタル情報の平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出することによって、同一個体の個体内変動が反映されたバイタル情報の平均及び標準偏差の情報を利用可能となる。
【0079】
また、所定の数値範囲が、情報記録手段に記録された少なくとも4個分のバイタル情報から作成されると共に、平均μ、標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にする場合には、平均μから負の方向にnσの値分離れた数値を下限値、平均μからmσの値分離れた数値を上限値とした基準として、入力された所定のバイタル情報が異常な値か否かを判定することが可能となる。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
即ち、平均μからnσを引いた値が下限値、平均μにmσ足した値を上限値として、これらの少なくとも一方を基準に、同一個体から測定したバイタルサインの測定値に対して、その値が異常な値か否かを判定することができる。また、少なくとも4個分のバイタル情報で基準が作成できることから、迅速な判定が可能となる。
【0080】
また、上記の目的を達成するために、本発明のソフトウェアは、取得されたバイタルサインに関する情報であるバイタル情報をスコアリングして、得られたスコア結果情報に基づいて、個体の健康状態を判定するためのソフトウェアであって、情報処理機器を、同一個体から取得されると共に、正規分布に従うバイタル情報及び取得日時の入力を受け付ける情報入力手段と、入力された前記バイタル情報及び取得日時の情報を記録させる情報記録手段と、記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σを算出する基準算出手段と、所定のスコアリング条件を基準に、入力された所定のバイタル情報をスコアリングして、スコアの値であるスコア結果情報を算出するスコアリング処理手段と、所定のスコア判定条件を基準にして、前記スコア結果情報が異常な値か否かを判定するスコア判定手段と、を含む手段として機能させるためのソフトウェアであり、前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、前記所定のスコアリング条件は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にするように構成されている。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
なお、本明細書において、ソフトウェアとは、コンピュータの動作に関するプログラムのことである。また、プログラムとは、コンピュータによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものをいう。
【0081】
ここで、情報入力手段が、同一個体から取得されると共に、正規分布に従うバイタル情報の入力を受け付け、情報記録手段に、入力されたバイタル情報を記録させることによって、同一個体のバイタル情報を蓄積することができる。なお、ここでいう同一個体とは、測定したバイタルサインの値に基づき、スコアリングを行う判定対象を指すものである。
【0082】
また、ここでいう「正規分布に従うバイタル情報」とは、一定のデータ数(例えば、特許文献3に開示された30点のデータ)が揃った場合に、データが正規分布する性質を意味するものである。従って、後述する「少なくとも4個分のバイタル情報」のみで、そのデータが正規分布すること(正規性を示すこと)を意味する用語ではない。
【0083】
また、情報入力手段が、同一個体から取得されたバイタル情報及び取得日時の情報の入力を受け付け、情報記録手段に、入力されたバイタル情報及び取得日時の情報を記録させることによって、同一個体のバイタル情報が取得された日時の情報と共に蓄積されるものとなる。即ち、同一個体の複数のバイタル情報を取得日時の情報と紐付けて取扱うことが可能となる。また、異なるバイタル情報を比較する際に、比較するバイタル情報の間での変位の状況や、変位量を確認可能となる。なお、ここでいう取得日時の情報は、情報入力手段にバイタル情報を入力する際に、入力者が取得日時の情報を入力する態様や、バイタル情報を入力する際の時間が情報入力手段に自動的に入力される態様が含まれるものである。また、取得日時の情報とは、バイタルサインを測定した日時や、バイタルサインの評価(例えば、意識レベル)を行った日時を含むものである。
【0084】
また、基準算出手段が、記録された複数のバイタル情報の全部又は一部の平均μを算出することによって、同一個体の個体内変動が反映されたバイタル情報の平均値の情報を利用可能となる。なお、ここでいう平均μとは、「各バイタルサインの測定値の総和」から「バイタルの測定値のデータ数」を割った値を意味するものである。また、ここでいう「記録された複数のバイタル情報の平均μ」は、記録されたバイタル情報の全データから算出するものだけでなく、全データのうちの一部から算出されるものを含んでいる。更に、平均μの算出根拠となるバイタル情報は連続的なデータ、例えば、毎秒、毎分、毎時間、毎日等継続的に測定したデータだけでなく、秒、分、時間、日数等の間隔を開けて抽出したデータから算出されるものであってもよい。
【0085】
また、基準算出手段が、記録された複数のバイタル情報の全部又は一部の標準偏差σを算出することによって、同一個体の個体内変動が反映されたバイタル情報の標準偏差の情報を利用可能となる。なお、ここでいう標準偏差σとは、所定の条件のバイタル情報の「偏差の二乗平均」である。更に言えば、「偏差」とは、所定の条件のバイタル情報の「各バイタルサインの測定値」から「所定の条件のバイタルサインの測定値の平均値」を引いた値である。また、ここでいう「記録された複数のバイタル情報の標準偏差σ」は、記録されたバイタル情報の全データから算出するものだけでなく、全データのうちの一部から算出されるものを含んでいる。更に、標準偏差σの算出根拠となるバイタル情報は連続的なデータ、例えば、毎秒、毎分、毎時間、毎日等継続的に測定したデータだけでなく、秒、分、時間、日数等の間隔を開けて抽出したデータから算出されるものであってもよい。
【0086】
また、スコアリング処理手段が、所定のスコアリング条件を基準に、入力された所定のバイタル情報をスコアリングして、スコアの値であるスコア結果情報を算出することによって、入力されたバイタル情報を、その内容に応じたスコア結果情報(点数)に変換することができる。なお、ここでいう「入力された所定のバイタル情報」とは、スコアリングの対象となるバイタル情報を意味している。
【0087】
また、スコア判定手段が、所定のスコア判定条件を基準にして、スコア結果情報が異常な値か否かを判定することによって、同一個体から取得されたバイタル情報の内容から得られたスコア結果情報の値について異常な値か否かを判定可能となる。なお、ここでの所定のスコア判定条件を基準とした判定は、1つのバイタルサインから得られたスコア結果情報に対して異常な値か否かを判定する態様や、複数のスコア結果情報の合計点に対して判定する態様、更には、2つ以上のスコア結果情報の組み合わせに対して判定する態様とすることができる。
【0088】
また、所定のスコアリング条件が、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にすることによって、平均μから負の方向にnσの値分離れた数値を下限値、平均μからmσの値分離れた数値を上限値とした基準として、その内容に応じたスコア結果情報を得ることが可能となる。また、この基準は、同一個体の個体内変動が反映された基準であり、個体内変動を反映した形で、同一個体のバイタル情報を点数化することが可能となる。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
即ち、平均μからnσを引いた値が下限値、平均μにmσ足した値を上限値として、これらの少なくとも一方を基準に、同一個体から測定したバイタルサインの測定値に対して、スコア結果情報を得ることができる。また、少なくとも4個分のバイタル情報で基準が作成できることから、迅速な判定が可能となる。なお、n及びmの値は上述したように0より大きい数であればよく、このn及びmの値は、基準の厳密さや、バイタルサインの種類、対象者の既往歴等の種々の条件を考慮して適宜設定することができるものである。
【0089】
また、ここでいう「所定のスコアリング条件」は、入力された所定のバイタル情報、即ち、スコアリングの対象となる所定のバイタル情報を含まずに、それ以前の過去のバイタル情報から設定されたものと、スコアリングの対象となる所定のバイタル情報を含んで設定されるものの両方を含むものである。また、入力された所定のバイタル情報は、直近に入力されたバイタル情報であることができる。また、入力された所定のバイタル情報は、以前に入力されたバイタル情報のうちの一つまたは複数のバイタル情報であることができる。また、ここでいう「所定のスコアリング条件」は、基準となる値、例えば、一定値を設定した際に、スコアリングの対象となる数値が一定値以上で2点となり、一定値未満で1点となる態様と、スコアリングの対象となる数値が一定値を超えると2点となり、一定値以下で1点となる態様の両方を含むものである。また、「下限値及び上限値の少なくとも一方」であるので、下限値のみ又は上限値のみ基準として設定する態様だけでなく、下限値と上限値の両方を基準として採用する態様も含むものである。
【0090】
また、基準算出手段が、情報記録手段に記録された、1日に2回以上測定され、かつ、少なくとも2日分以上のバイタル情報から平均μ及び標準偏差σを算出する場合には、最低2日分のバイタル情報に基づき、同一個体の個体内変動が反映された平均値及び標準偏差を算出可能となる。なお、ここでいう1日に2回以上測定され、かつ、少なくとも2日分以上のバイタル情報とは、連続した日付だけでなく、日数に隔たりがある情報について、合計して、1日2回の測定で、2日分以上になるバイタル情報も含むものである。また、1日2回の測定とは、例えば、午前中に1回、午後に1回測定した情報を意味する。
【0091】
また、基準算出手段が、情報記録手段に記録された少なくとも4日分以上のバイタル情報から平均μ及び標準偏差σを算出する場合には、最低4日分のバイタル情報に基づき、同一個体の個体内変動が反映された平均値及び標準偏差を算出可能となる。この結果、スコア結果情報を算出する基準の精度を高めることができる。なお、ここでいう4日分以上のバイタルとは、連続した日付だけでなく、日数に隔たりがある情報について、合計して4日分以上になるバイタル情報も含むものである。また、4日分以上のバイタル情報とは、例えば、1日1回測定したバイタル情報が、4日分以上揃った情報を意味する。
【0092】
また、バイタル情報が酸素飽和度の測定値を有する場合には、同一個体から測定された酸素飽和度について、スコア結果情報を得て、異常な値か否かを判定することが可能となる。
【0093】
また、スコアリング条件が、酸素飽和度の測定値に対しては、予め設定した所定の数値範囲である場合には、同一個体から取得された酸素飽和度の測定値がバイタル情報として入力された際に、予め設定した所定の数値範囲を基準により、その内容に応じたスコア結果情報を得ることができる。なお、ここでいう「予め設定した所定の数値範囲」は、集団のバイタルサインの測定値から設定された数値範囲を採用することができる。また、ここでいう「所定の数値範囲」は、基準となる値、例えば、一定値を設定した際に、スコアリングの対象となる数値が一定値以上で2点となり、一定値未満で1点となる態様と、スコアリングの対象となる数値が一定値を超えると2点となり、一定値以下で1点となる態様の両方を含むものである。
【0094】
また、バイタル情報が、意識レベルを観察して取得された意識レベル評価結果を有する場合には、同一個体から取得された意識レベル評価結果について、スコア結果情報を得て、異常な値か否かを判定することが可能となる。
【0095】
また、スコアリング条件が、意識レベル評価結果に対しては、意識レベルの程度を示す所定の観察状態である場合には、同一個体から取得された意識レベル評価結果を、所定の観察状態の内容に当て嵌め、その内容に応じたスコア結果情報を得ることが可能となる。なお、所定の観察状態の内容とは、例えば、意識レベルの評価に利用するAVPU応答の内容や、混乱の状態を示す内容である。
【0096】
また、スコア判定手段が、スコア結果情報が異常な値と判定する際に、異常を少なくとも2つの段階に分けて判定する場合には、スコア結果情報の判定後の取扱いを多様なものにできる。例えば、異常を示す状態であっても、スコア結果情報の数値が小さなものであれば「注意」として通知し、スコア結果情報の数値が大きなものについては「警告」として通知することで、全ての異常を画一的に処理しなくてよいものとなる。この結果、判定を行った際に、すぐに医師のチェックが必要か否かといった判定後の対処を効率よく処理できるものとなる。
【0097】
また、所定のスコアリング条件が、スコア判定手段が異常な値と判定したスコア結果情報の算出根拠となったバイタル情報を含んで設定される場合には、対象者におけるバイタルサインの値に、異常が生じている状態を含めて、個体内変動を捉えて、バイタル異常の判定を行うことが可能となる。
【0098】
また、所定のスコアリング条件が、スコア判定手段が異常な値と判定したスコア結果情報の算出根拠となったバイタル情報を除いて設定される場合には、以下のような特殊な状況下での、安定しないバイタル情報が、判定基準の算出根拠に含まれなくなり、判定の精度を高めることができる。ここでいう特殊な状況下での安定しないバイタル情報とは、例えば、対象者への医療介入の際、即ち、医者の診断(指示)により対象者が入院した直後に測定されたバイタルサインの値を意味する。このような状況下で測定されたバイタルサインの値は、対象者のバイタルの個体内変動から見て、安定していない値となりやすいため、かかる値を、判定基準の算出根拠から除外する態様である。
【0099】
また、所定のスコアリング条件が、入力された所定のバイタル情報を除いて設定される場合には、判定対象となるバイタルサインの値を含まずに、スコアリング条件が設けられるものとなる。このことによれば、判定対象となるバイタルサインの値が、対象者のバイタルの変動から見て、異常とみなされるような数値になった場合(例えば、体温が高熱になる)、その異常とみなされる数値が、スコアリング条件の算出根拠から除外され、スコアリングの精度、及び、スコアリングに基づく異常の有無の判定の精度を高めることができる。
【0100】
また、所定のスコアリング条件が、入力された所定のバイタル情報を含めて設定される場合には、判定対象となるバイタルサインの値を含めて、スコアリング条件が設けられるものとなる。このことによれば、スコアリング条件の根拠となるデータ数が増え、対象者の個体内変動の傾向をより反映したスコアリングの基準を設けることが可能となる。
【0101】
また、所定のスコアリング条件が、所定の状態にある対象者から測定されたバイタル情報を除いて設定される場合には、対象者のバイタルが安定していない特殊な状態下で測定したバイタルサインの値を除いて、スコアリング条件が設けられるものとなる。即ち、例えば、対象者が解熱剤を服用して、体温が安定していない(本来の変動傾向を示さない)状態で測定した体温の値を、スコアリング条件の算出根拠から除外する態様である。これにより、短期間でのスコアリングに基づく異常の判定の精度を高めることができる。なお、ここでいう所定の状態とは、対象者のバイタルが安定していない特殊な状態を意味するものであり、その内容は、解熱剤の服用時の体温に限定されるものではない。例えば、血圧や脈拍に作用する薬の服用時や、その他、バイタルサインの変動に作用する処方や処置が、対象者になされた状態を含んでいる。
【0102】
また、上記の目的を達成するために、本発明の健康状態判定装置は、取得されたバイタルサインに関する情報であるバイタル情報をスコアリングして、得られたスコア結果情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定装置であって、
同一個体から取得されると共に、正規分布に従うバイタル情報及び取得日時の入力を受け付ける情報入力手段と、入力された前記バイタル情報及び取得日時の情報を記録させる情報記録手段と、記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σを算出する基準算出手段と、所定のスコアリング条件を基準に、入力された所定のバイタル情報をスコアリングして、スコアの値であるスコア結果情報を算出するスコアリング処理手段と、所定のスコア判定条件を基準にして、前記スコア結果情報が異常な値か否かを判定するスコア判定手段と、前記スコア判定手段が判定した判定結果を表示可能な表示手段とを備え、前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、前記所定のスコアリング条件は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にするように構成されている。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
【0103】
ここで、所定のスコアリング条件が、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にすることによって、平均μから負の方向にnσの値分離れた数値を下限値、平均μからmσの値分離れた数値を上限値とした基準として、その内容に応じたスコア結果情報を得ることが可能となる。また、この基準は、同一個体の個体内変動が反映された基準であり、個体内変動を反映した形で、同一個体のバイタル情報を点数化することが可能となる。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
即ち、平均μからnσを引いた値が下限値、平均μにmσ足した値を上限値として、これらの少なくとも一方を基準に、同一個体から測定したバイタルサインの測定値に対して、スコア結果情報を得ることができる。また、少なくとも4個分のバイタル情報で基準が作成できることから、迅速な判定が可能となる。
【0104】
また、スコア判定手段が判定した判定結果を表示可能な表示手段によって、判定結果を表示して確認可能となる。
【0105】
また、上記の目的を達成するために、本発明の健康状態判定方法は、コンピュータが実行する方法であり、取得されたバイタルサインに関する情報であるバイタル情報をスコアリングして、得られたスコア結果情報に基づいて、個体の健康状態を判定するための健康状態判定方法であって、同一個体から取得されると共に、正規分布に従うバイタル情報の入力を受け付けて記録する情報記録工程と、記録された複数の前記バイタル情報の全部又は一部の、平均μ及び標準偏差σを算出する基準算出工程と、所定のスコアリング条件を基準に、入力された所定のバイタル情報をスコアリングして、スコアの値であるスコア結果情報を算出するスコアリング処理工程と、所定のスコア判定条件を基準にして、前記スコア結果情報が異常な値か否かを判定するスコア判定工程とを備え、前記バイタル情報は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値を含み、前記所定のスコアリング条件は、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にするように構成されている。
【0106】
ここで、基準算出工程で、同一個体から測定されたバイタル情報のうち、一定個数以上のバイタル情報の平均μ及び標準偏差σから選択される少なくとも1つを算出することによって、同一個体の個体内変動が反映されたバイタル情報の平均及び標準偏差の情報を利用可能となる。
【0107】
また、所定のスコアリング条件が、体温、脈拍、血圧、及び脈圧から選択される少なくとも1つの測定値に対しては、少なくとも4個分の前記バイタル情報から作成されると共に、前記平均μ、前記標準偏差σ、0より大きい数であるn及びmを用いて表された下記の式(1)の値を下限値及び式(2)の値を上限値とし、下限値及び上限値の少なくとも一方を基準にすることによって、平均μから負の方向にnσの値分離れた数値を下限値、平均μからmσの値分離れた数値を上限値とした基準として、その内容に応じたスコア結果情報を得ることが可能となる。また、この基準は、同一個体の個体内変動が反映された基準であり、個体内変動を反映した形で、同一個体のバイタル情報を点数化することが可能となる。
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
即ち、平均μからnσを引いた値が下限値、平均μにmσ足した値を上限値として、これらの少なくとも一方を基準に、同一個体から測定したバイタルサインの測定値に対して、スコア結果情報を得ることができる。また、少なくとも4個分のバイタル情報で基準が作成できることから、迅速な判定が可能となる。
【発明の効果】
【0108】
本発明に係るソフトウェア、健康状態判定装置及び健康状態判定方法は、対象者の個人差を考慮したバイタルサインや日々の体調を反映して、対象者ごとに異なる個体内変動を、より迅速に、かつ、精度高く捉えることが可能であり、対象者の健康管理や、一人ひとりの個性にかなった医療の提供に寄与するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1】本発明を適用したソフトウェアを導入したタブレット端末の概略構成を示す図である(第1のシステム構成)。
図2】本発明を適用したソフトウェアを有する第2のシステム構成を示す概略図である。
図3】本発明を適用したソフトウェアを有する第3のシステム構成を示す概略図である。
図4】演算部、情報送受信部及び情報記録部の構成を示すブロック図である。
図5】バイタル情報の抽出の事例を示した概略図である。
図6】(a)は、本発明を適用したソフトウェアを機能させる際に使用する装置の一例を示す概略図、(b)は、装置の他の例を示す概略図である。
図7】バイタルサインの値の入力画面の一例を示す概略図である。
図8】バイタルサインの値の入力画面の他の例を示す概略図である。
図9】(a)は、複数の対象者のバイタル情報を元に作成された正規分布曲線のグラフであり、(b)は、同一の対象者のバイタル情報を元に作成された正規分布曲線のグラフである。
図10】熱型表の例を示す概略図である。
図11】電子カルテでスコアリングの結果を示した画像の例を示す概略図である。
図12】スマートフォン端末で利用するアプリケーションソフトウェアでスコアリングの結果を示した画像の例を示す概略図である。
図13】バイタル情報の入力から異常の判定、結果の情報の表示までの情報処理の流れを示すフロー図である。
図14】バイタル情報の入力からスコア値情報における異常の判定、結果の情報の表示までの情報処理の流れを示すフロー図である。
図15】1分ごとに脈拍を測定して、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図16】1分ごとに脈拍を測定して、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図17】7分ごとに脈拍を測定して、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図18】7分ごとに脈拍を測定して、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図19】1日の中で、不規則な時間で、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図20】1日の中で、不規則な時間で、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図21】30時間の中で、不規則な時間で、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図22】30日の中で、不規則な時間で、30個分の脈拍の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図23】2分ごとに体温を測定して、30個分の体温の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図24】2分ごとに体温を測定して、30個分の体温の測定データを取得した結果に基づく正規分布曲線である。
図25】体温において、4日分のバイタル情報又は5日分のバイタル情報に基づき、バイタル異常の判定を行い、異常と判定される結果を示す概略図である。
図26】体温において、4日分のバイタル情報又は5日分のバイタル情報に基づき、バイタル異常の判定を行い、正常(異常なし)と判定される結果を示す概略図である。
図27】脈拍において、4日分のバイタル情報又は5日分のバイタル情報に基づき、バイタル異常の判定を行い、異常と判定される結果を示す概略図である。
図28】脈拍において、4日分のバイタル情報又は5日分のバイタル情報に基づき、バイタル異常の判定を行い、正常(異常なし)と判定される結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用したソフトウェアを導入したタブレット端末の概略構成を示す図である。なお、以下に示す構造は本発明の一例であり、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
【0111】
[1.全体の装置構成について]
本発明を適用したソフトウェアは、汎用の情報処理機器に導入可能であり、組み込まれた情報処理機器に対して本発明の実施するために必要な各情報処理機能を付与する。この結果、タブレット端末3において、また、対象者のバイタル情報を入力して、対象者のバイタルサインの値の個体内変動を反映した健康状態の判定を行うことができる。また、対象者のバイタル情報を入力して、その内容に応じたスコアリングを行い、得られたスコア結果情報(以下、「スコア値情報」と称する)が異常な値か否かの判定を行うことができる。
【0112】
なお、情報処理機器とは、CPUなどの演算部と、RAMやROMなどの記憶部と、液晶画面等の表示画面や、キーボード等の入力部、インターネット等との通信を制御する通信部等を備えたものである。例えば、汎用のパーソナルコンピュータやタブレット端末、スマートフォン等である。また、情報処理機器としては、例えば、各種のヘルスケア機器や、病院や施設等に設置された医療システムや介護システムも対象となり、本発明を適用したソフトウェアがこれらに組み込まれて使用されるものでもよい。
【0113】
本発明を適用したソフトウェアは、アプリケーションソフトウェアとしてタブレット端末3にダウンロードされて組み込まれており、健康状態の判定機能を備えたタブレット端末を健康状態判定装置1とする。本発明を適用した健康状態判定装置の一例である健康状態判定装置1は、4回の測定値といった短期の個別のバイタルサインを分析し、健康状態の異常を判定する装置である。
なお、以下では、健康状態判定装置1の使用者、即ち、健康状態が判定される人物を「対象者」と呼ぶものとする。
【0114】
図1に示すように、健康状態判定装置1(タブレット端末3)は、演算部2を備えている。演算部2は、健康状態判定装置1の有する各情報処理機能を実行する処理部である。即ち、本発明を適用したソフトウェアでは、タブレット端末3の演算部2を情報入力手段23、情報記録手段24、基準算出手段5、スコアリング処理手段100、判定処理手段6等として機能させる。この各手段の処理機能により、情報の送受信、情報の記録、バイタルサインの値における異常の判定、バイタルサインの値に関する異常の判定基準の設定、バイタルサインの値に関する異常の判定結果の通知、バイタル情報の内容に基づくスコアリング、スコアリング条件(スコアリング基準情報)の設定、スコア値情報における異常の判定、スコア値に関する異常の判定基準の設定、スコア値に関する判定結果の通知、表示情報の作成や表示等を行う。
【0115】
なお、タブレット端末3は、インターネットを介して、外部のサーバ、端末等にアクセス可能であり、外部のサーバや端末等との間で情報の送受信を行うことも可能である。情報記録手段24、基準算出手段5、スコアリング処理手段100、判定処理手段6は、それぞれ本願請求項の「情報記録手段」、「基準算出手段」、「スコアリング処理手段」及び「判定手段(またはスコア判定手段)」の一例である。
【0116】
タブレット端末3は、情報記録部4と、情報送受信部3cと、入力部3aと、表示画面3bを有している。
【0117】
情報送受信部3cは、演算部2、情報記録部4、入力部3a及び表示画面3b等の間での情報の送受信を担う部分である。また。タブレット端末3と、外部端末との間で情報の送受信可能に構成されるものであってもよい。
【0118】
ここで、以下、本発明を適用したソフトウェアが取り扱う各情報が、必ずしも、タブレット端末3の情報記録部4に記録される必要はない。例えば、タブレット端末3の情報送受信部3cを介して、外部サーバや外部端末に各種情報を送信して記録させ、判定等の際に、外部サーバ等から必要な情報を受信する態様であってもよい。
【0119】
更に言えば、タブレット端末3に、健康状態判定装置1の主要な構成が全てダウンロードされる必要はない。例えば、タブレット端末3では、判定結果の情報や、正規分布曲線、熱型表等の表示情報の表示のみを行い、各種情報の記録及び判定処理等は外部サーバ等で行う態様であってもよい。
【0120】
本発明を適用したソフトウェアは、システム上の構成において、複数のバリエーションが存在しうる。以下、幾つかのバリエーションの事例を説明する。
【0121】
(第1のシステム構成)
図1に示したタブレット端末3の概略構成は、本発明を適用したソフトウェアを端末に導入して、端末単体で、バイタル情報の入力、記録、判定、判定結果の表示、判定算出基準の設定が可能となっている。即ち、装置単体で本発明の機能を実行しうるものである。図1に示す概略構成は、インターネット環境と接続されていない「スタンドアローン形式」の装置における、本発明を適用したソフトウェアの利用を示している。インターネット環境と接続されない情報処理機器、例えば、各種のヘルスケア機器や、病院等の医療システム・介護システムに本発明のソフトウェアを導入して、専用機器として利用することができる。なお、ここではタブレット端末3を情報処理機器の一例として挙げたため、インターネット環境との接続が可能となるが、図1に示す構成であれば、タブレット端末3の内部機能のみで、健康状態の判定を行うことができる。
【0122】
(第2のシステム構成)
図2では、第2のシステム構成として、本発明を適用したソフトウェア1aの機能を外部サーバに持たせた構成も採用しうる。ここでは、ユーザ端末50aや、外部端末50bが、インターネット30aを介して、情報管理サーバ32aにアクセス可能となっている。情報管理サーバ32aは、例えば、クラウド形式で提供される外部サーバであり、情報管理サーバ32a上で本発明を適用したソフトウェア1aの機能が利用しうる。
【0123】
情報管理サーバ2aは、情報記録部4a、情報送受信部3c、演算部2aを有している。また、演算部2aは、基準算出手段5a、判定処理手段6aを有している。バイタル情報の入力は、ユーザ端末50aや、外部端末50bを介して行い、各端末から入力された情報が情報管理サーバ32aに送信され、情報管理サーバ32a側で情報の記録、健康状態の判定がなされる。判定結果や、記録された情報は、ユーザ端末50aや、外部端末50bに送信され、各端末で確認することができる。このように、外部サーバ上にソフトウェア1aの機能を付与するシステム構成も採用しうる。
【0124】
(第3のシステム構成)
図3では、第3のシステム構成として、本発明を適用したソフトウェア32bの機能以外に、複数のソフトウェア32c、32d等を有するモジュールAを備える管理端末70bの構成を示している。本発明を適用したソフトウェア32bは、これとは異なる各種機能を管理端末70bに実行させる他のソフトウェアと共に、1つのモジュールAを構成している。即ち、予め複数のソフトウェア32c、32d等が導入された管理端末70bのモジュールAに、ソフトウェア32bを組み込んで機能させることが可能である。例えば、電子カルテ等の医療システムの管理端末が備えるモジュールに本発明を適用したソフトウェアを組み込むこともできる。
【0125】
このような第3のシステム構成では、管理端末70bにバイタル情報を入力して、健康状態の判定を行い、結果の情報を管理端末70b上で確認可能である。また、ユーザ端末60aや、外部端末60bと、管理端末70bを接続させて、ユーザ端末60aや、外部端末60bからバイタル情報を入力して管理端末70bに送信し、管理端末70bで健康状態の判定を行い、結果の情報をユーザ端末60aや、外部端末60bで受信して確認することもできる。このように、本発明を適用したソフトウェアは、複数のソフトウェアで構成されたモジュールの一部として機能させる構成も採用しうる。
【0126】
以上のように、本発明を適用したソフトウェア(又は健康状態判定装置)のシステム上の構成は複数のバリエーションが存在する。なお、上記では、3つの例を中心に説明したが、本発明を適用したソフトウェア(又は健康状態判定装置)の構成はこれに限定されるものではない。例えば、情報記録部をユーザ端末に設けて、基準算出手段及び判定処理手段は外部サーバに持たせて、必要な機能の所在を端末とサーバに分ける構成であってもよい。即ち、対象者のバイタル情報が記録され、個体内変動を反映した判定基準が設定され、健康状態の判定が可能であれば、種々の構成が採用しうる。
【0127】
図1に示したタブレット端末3の使用態様を用いて、以下、詳細な構成の説明を続ける。
【0128】
[2.情報記録部]
図4に示すように、情報記録部4には、各種情報が記録されている。
情報記録部4は、対象者の個人情報や、各種のバイタル計測器で測定されたバイタルサインの値、及び、対象者の介護者等が観察して得られた意識レベルの評価結果から構成されたバイタル情報を、測定日時又は取得日時の情報と共に記録する部分である。情報記録部4に記録された各種の情報はタブレット端末3が有する入力部3a、情報送受信部3c及び情報入力手段24(図示せず)を介して入力や情報の修正が可能となっている。また、情報記録部4に記録された各種の情報はタブレット端末3が有する表示部3b及び情報送受信部3cを介して、その内容を確認可能となっている。
【0129】
情報記録部4は、対象者の個人情報7、各バイタル計測器で計測したバイタルサインの測定値と、対象者に対する観察から得られた意識レベルの評価結果、及びその測定日時又は取得日時の情報を含むバイタル情報8が記録されている。また、個人情報7及びバイタル情報8は、個別の対象者を識別可能な識別情報と紐付けられて記録可能に構成されている。これにより、複数の対象者が識別可能となり、複数の対象者が1つの健康状態判定装置1を使用可能となっている。
【0130】
バイタル情報8には、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数の測定値が含まれている。また、バイタル情報8には、酸素飽和度の測定値が含まれている。更に、バイタル情報には、上述した意識レベルの評価結果が含まれている。
【0131】
また、バイタル情報8に含まれる測定日時又は取得日時とは、対象者がバイタル計測を行った日時や、意識レベルの確認を行った日時であり、例えば、対象者が自身でバイタル計測を行った際に確認した時間や、介護者等が対象者を観察した時間を入力するものである。また、バイタル計測器が、対象者の身体に装着可能なウェアラブル型の計測装置である場合、連続的に取得されるバイタルサインの取得日時であってもよい。
【0132】
ここで、必ずしも、バイタル情報8の種類が、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数の測定値と、酸素飽和度の測定値と、意識レベルの評価結果に限定される必要はなく、その他のバイタルサイン(例えば、尿量等)を含み、判定に利用してもよい。
【0133】
また、バイタル情報を計測するバイタル測定器は、特に限定されるものではなく、各バイタルサインが測定可能であれば充分である。例えば、家庭用のバイタル測定器を使用してバイタルが計測されるものでもよい。更に言えば、バイタル情報が取得可能であれば、バイタル測定器を使用することは必須ではない。例えば、時計で時間を測定しながら、1分間あたりの脈拍数や呼吸数を測定して、これをバイタル情報として利用することも可能である。但し、バイタル情報の個体内変動を正確に捉える観点からは、バイタル情報は同一の手法で取得されることが好ましい。日々の測定において、バイタル測定器の種類を頻繁に変更したり、バイタル計測機による測定と、バイタル計測機を用いない測定が混在したりすることで、バイタル情報の取得方法によるバイアスがかかってしまう。そのため、なるべく、同一の手法又は同一のバイタル測定器でバイタル情報を取得することが好ましい。
【0134】
また、バイタル情報8は、幅広くは1秒ごとのバイタル情報8を記録可能に構成されている。また、バイタル情報8は、例えば、1分ごと、1時間ごと等、異なる時間間隔で記録するように設定することもできる。
【0135】
また、バイタル情報8は、一定間隔ごとの測定ではなく、不規則な時間で測定した測定値を記録する構成も採用しうる。また、この不規則な測定の場合、例えば、1分間に複数のバイタル情報8を取得する、30分間に複数のバイタル情報8を取得する、1時間に複数のバイタル情報8を取得する、数時間に複数のバイタル情報8を取得する、1日に複数のバイタル情報8を取得する、数日中に複数のバイタル情報8を取得する、1週間に複数のバイタル情報8を取得する、数週間中に複数のバイタル情報8を取得する、1か月中に複数のバイタル情報8を取得する等、一定の期間で、複数のバイタル情報8を記録する構成としてもよい。
【0136】
更に、バイタル情報8は、一定間隔、又は、不規則な間隔に関わらず、蓄積したバイタル情報の中から、複数のデータを抽出して、複数の測定データのバイタル情報8として記録することもできる。
【0137】
このように、バイタル情報8は、時間の長さや測定間隔の規則性の有無に関わらず、複数の測定データを記録可能に構成されている。
【0138】
また、バイタル情報8は、例えば、1日2回、朝と夕方の時間帯に測定したバイタル情報が記録可能に構成されている。
【0139】
また、情報記録部4には、対象者がバイタル測定を行う目安となる時刻の情報である目安時刻情報9が記録可能となっている。目安時刻情報9は、例えば、朝の8時30分、夕方の18時のように、対象者がバイタルの測定を行う目安の時刻が記録される。目安時刻情報9は、対象者が自由に設定及び修正することができる。
【0140】
情報記録部4には、各バイタルサインを計測する際の正しい姿勢の情報である姿勢情報10が記録されている。姿勢情報10とは、例えば、以下のようなものである。
(1)体温
例えば、体温を脇下で測定する体温計で体温を測定する場合、「体温計の測定部が脇の中心に位置しているか」、「脇と体温計が密着しているか」、「毎回同じ姿勢となっているか」等の姿勢の情報である。
(2)脈拍
例えば、手首で電子脈拍計又は指を当てて脈拍数を測定する場合、「安静な状態であるか」、「リラックスした楽な姿勢であるか」、「毎回同じ姿勢となっているか」等の姿勢の情報である。
(3)収縮期血圧、拡張期血圧
例えば、血管の振動で測るオシロメトリック法で測定する場合、「安静な状態であるか」、「腕帯を巻き付けた腕や手首が心臓の高さに位置しているか」、「毎回同じ姿勢となっているか」等の姿勢の情報である。
【0141】
ここで、必ずしも、バイタル情報8は、1日2回、朝と夕方の時間帯に測定したバイタル情報が記録可能に構成される必要はなく、例えば、1日1回の測定でもよい。また、後述するが、基準算出部による判定基準の算出や、この判定基準の算出に利用するバイタル平均値、バイタル標準偏差の算出の処理において利用する一定のデータ数が記録されていれば、1日のバイタル情報の記録回数は限定されるものではない。また、バイタル情報が毎日記録される必要はなく、バイタル情報が記録されない日が存在してもよい。ここで、同一個体の個体内変動を適切に捉える観点から、幅広くは1秒ごとのバイタル情報を記録する態様がよく、1日に1回~24回のバイタル情報が記録されることが好ましい。更に、手動でのバイタル測定でも情報が記録しやすく、同一の日付においてのバイタルサインの値の変動が確認でき、別の日との比較がしやすい観点から、1日2回、朝と夕方の時間帯に測定したバイタル情報が記録可能とされることが更に好ましい。
【0142】
また、必ずしも、情報記録部4に目安時刻情報9が記録される必要はない。但し、後述するように、目安時刻情報9を記録することで、対象者が目安時刻情報9に記録された時刻から大きく外れて測定したバイタル情報について、バイタル平均値等の算出根拠から除外して判定が可能となり、判定の精度を高めることができる点から、情報記録部4に目安時刻情報9が記録されることが好ましい。
【0143】
また、必ずしも、情報記録部4に姿勢情報10が記録される必要はない。但し、後述するように、姿勢情報10を記録することで、対象者のバイタル情報について異常な値であると判定がなされた際に、タブレット端末3の表示画面3bに、判定の根拠となったバイタルサインの姿勢情報10を表示しながら、「正しい姿勢で測定を行いましたか」と表示して、バイタル測定時の姿勢に関する注意や再度のバイタル測定を促すことが可能となる。これにより、バイタル測定の精度や判定の信頼性を高めることができる。よって、情報記録部4に姿勢情報10が記録されることが好ましい。
【0144】
また、各バイタルサインの測定方法や姿勢情報10の内容は上述したものに限定されるものではなく、バイタル測定方法や、これに適した姿勢情報10の内容は、適宜変更することができる。
【0145】
情報記録部4には、バイタル測定を行った場所の気温情報11が記録可能となっている。気温情報11は、バイタル情報8の各測定時の記録と紐付けて記録される。気温情報11は、例えば、対象者が測定場所の気温を確認して入力する情報が採用される。
【0146】
ここで、必ずしも、情報記録部4に、バイタル測定を行った場所の気温情報11が記録可能とされる必要はない。但し、判定日の気温情報と、判定日の前日のバイタル計測時の気温情報とを比較して、2つの気温情報の変位量が、設定した範囲を超えていた場合に、判定日のバイタル情報を、その後のバイタル平均値やバイタル標準偏差の算出根拠から除外することも可能となる。この結果、バイタル情報の変動に対する気温の影響を低減して判定の精度を高めることが可能となる。よって、情報記録部4に、バイタル測定を行った場所の気温情報11が記録可能とされることが好ましい。
【0147】
また、図4に示すように、情報記録部4には、入力されたバイタルサインの値を判定処理手段6で、その値が異常な値か否かを判定する際の基準となるバイタル判定基準情報102aが記録されている。
【0148】
バイタル判定基準情報102aは、タブレット端末3の入力部3a、情報送受信部3c及び演算部2の情報入力手段24を介して情報の追加や修正が可能となっている。
【0149】
情報記録部4には、判定処理手段6がバイタルサインの値について、異常な値か否かと判定した判定結果の情報であるバイタル判定結果情報12aが記録されている。タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。
【0150】
また、情報記録部4では、バイタル情報8として、バイタル情報の測定及び取得に関して、再度の測定等を行った際のバイタル情報及び測定時の日付の情報である再測定バイタル情報13が記録可能となっている。再測定バイタル情報13とは、例えば、バイタル情報について得られたスコア値に関して、判定処理手段6が異常な値と判定した際に、バイタル情報の正確性を確認するために行った再度の計測のバイタル情報である。
【0151】
本発明では、バイタル判定基準情報や、スコアリング基準情報を算出する際の根拠として、再測定バイタル情報13を算出根拠に採用することができる。
【0152】
また、各バイタル情報をタブレット端末3の表示部3bに表示する際には、再測定をせずに記録された通常のバイタル情報と、再測定の対象となったバイタル情報と、再測定した後のバイタル情報について、3つのパターンのバイタル情報を示す文字の色を異ならせて表示可能に構成されている。
【0153】
図4に示すように、情報記録部4には、入力される各バイタル情報をスコアリング処理手段100でスコアリングする際の基準となるスコアリング基準情報102が記録されている。また、情報記録部4には、スコアリング基準情報102に基づきスコアリングされた結果の数値の情報であるスコア値情報103が記録されている。
【0154】
また、情報記録部4には、入力されたバイタル情報の内容から得られたスコア値情報を判定処理手段6で、その値が異常な値か否かを判定する際の基準となるスコア判定基準情報18が記録されている。
【0155】
後述するスコアリング基準情報102及びスコア判定基準情報18は、タブレット端末3の入力部3a、情報送受信部3c及び演算部2の情報入力手段24を介して情報の追加や修正が可能となっている。また、各スコアリング基準情報102はタブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。なお、スコアリング基準設定手段101における各基準の詳細な内容は後述する。
【0156】
情報記録部4には、判定処理手段6がスコア値情報103について、異常な値か否かと判定した判定結果の情報であるスコア判定結果情報12が記録されている。タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。また、スコア判定結果情報12は、異常又は正常に関する表示だけでなく、点数に応じた色分けで判定結果を示すことができる。例えば、3点以上は赤色、2点は黄色、1点以下は色なし等、色分けした表示が可能である。
【0157】
また、スコア判定結果情報12は、個々のスコア値情報103に対して判定した結果だけでなく、複数(例えば、全部又は一部)のスコア値情報103を足し合わせた合計点に対して判定した結果であってもよい。この場合、複数のスコア値情報103を足し合わせた合計点に対して、異常又は正常といった判定や、点数に応じた色分けで判定結果を示すことができる。
【0158】
例えば、ある判定日におけるスコア判定結果情報12は、その日に測定されたバイタルサインの値に基づく、スコアリング処理のスコア値情報の合計点に対して、異常か否かのスコアリングに基づく異常判定を行うことができる。
【0159】
ここで、必ずしも、情報記録部4に、スコア判定結果情報12及びバイタル判定結果情報12aが記録可能とされる必要はない。但し、過去のバイタル情報の判定結果を確認可能となり、また、判定精度を高めるための参考情報として利用できる点、医師の診断結果との照合や、医療システムとの連動にも利用しうる情報となる点から、情報記録部4に、スコア判定結果情報12及びバイタル判定結果情報12aが記録可能とされることが好ましい。
【0160】
また、必ずしも、情報記録部4において、再測定バイタル情報13が記録可能とされる必要はない。但し、再測定バイタル情報13を用いて、バイタル測定が正確であったか否かを検証可能となる点、及び、測定の仕方が悪く、測定精度の悪いバイタルサインの値が判定基準の根拠に含まれにくくなり、判定の精度が高めやすくなる点から、情報記録部4において、再測定バイタル情報13が記録可能とされることが好ましい。
【0161】
[3.基準算出手段]
基準算出手段5について説明する。基準算出手段5は、本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能の1つであり、情報記録部4に記録されるバイタル情報(入力されるバイタル情報)について、バイタルサインの値について、異常な値か否かを判定するためのバイタル判定基準情報102aとなるバイタル判定用数値範囲の算出や、このバイタル判定基準情報102aとなるバイタル判定用数値範囲の算出に利用するバイタル平均値、バイタル標準偏差の算出の処理を行う。健康状態判定装置1においては、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、及び呼吸数の測定値について、基準算出手段5によってバイタル判定基準情報102aとなるバイタル判定用数値範囲が算出され、これがバイタルサインの値について、異常な値か否かを判定する際の基準となる。
【0162】
また、基準算出手段5は、情報記録部4に記録されるバイタル情報(入力されるバイタル情報)についてスコア値情報103を算出するためのスコアリング基準情報102となる数値範囲の算出や、このスコアリング基準情報102となる数値範囲の算出に利用するバイタル平均値、バイタル標準偏差の算出の処理を行う。健康状態判定装置1においては、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、及び呼吸数の測定値について、基準算出手段5によってスコアリング基準情報102となる数値範囲が算出され、これがスコアリングの際の基準となる。
【0163】
演算部2を基準算出手段5として機能させて算出又は記録された各種の情報は、タブレット端末3の入力部3a、情報送受信部3c及び演算部2の情報入力手段24を介して情報の追加や修正が可能となっている。また、演算部2を基準算出手段5として機能させて算出又は記録された各種の情報はタブレット端末3の表示画面3bを介して、その内容を確認可能となっている。
【0164】
図4には本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能を記載している。演算部2は、基準算出手段5を構成する平均値算出手段14、標準偏差算出手段15、正規分布算出手段16、スコアリング基準設定手段101、バイタル判定基準設定手段101aとして機能する。
【0165】
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、情報記録部4に記録されたバイタル情報8(体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数の測定値)及びその再測定バイタル情報13に基づき、所定の条件下の記録情報から、同条件下の「バイタル情報の平均値」と、同条件下のバイタル情報を統計した分布における「バイタル情報の標準偏差」を、それぞれ算出する。なお、以下では、特別な算出を行う種類の平均値や標準偏差の名称を指す場合以外には、バイタル情報の平均値を「バイタル情報平均値」と呼び、また、バイタル情報の標準偏差を「バイタル情報標準偏差」と呼ぶものとする。なお、所定の条件については後述する。
【0166】
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、情報記録部4に記録されたバイタル情報8について、(1)入力された判定時点のバイタルサインの値が、バイタル判定基準情報102aに基づき、異常な値であると判定された際のバイタルサインの値も含めて、バイタル情報平均値及びバイタル情報標準偏差の算出を行うパターンと、(2)入力された判定時点のバイタルサインの値が、バイタル判定基準情報102aに基づき、異常な値であると判定された際のバイタルサインの値を除外して、バイタル情報平均値及びバイタル情報標準偏差の算出を行うパターンの両方を行うことが可能である。
【0167】
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、情報記録部4に記録されたバイタル情報8について、(1)スコア値情報103が、スコア判定基準情報18に基づき、スコア値情報103が異常な値であると判定された際のバイタルサインの値も含めて、バイタル情報平均値及びバイタル情報標準偏差の算出を行うパターンと、(2)スコア値情報103が、スコア判定基準情報18に基づき、スコア値情報103が異常な値であると判定された際のバイタルサインの値を除外して、バイタル情報平均値及びバイタル情報標準偏差の算出を行うパターンの、2つのパターンを使い分けることが可能である。
【0168】
ここで、正常と判定された根拠となるバイタルサインの値だけでなく、異常と判定された根拠となるバイタルサインの値も含めてバイタル平均値やバイタル標準偏差を算出することで、対象者の個体内変動を反映した平均値や標準偏差にすることができる。また、これらの平均値や標準偏差を用いることで、スコアリング基準情報102や、バイタル判定基準情報102aの設定の際に、対象者の個体内変動を反映した基準を作成することができる。
【0169】
また、異常と判定された根拠となるバイタルサインの値も除外して、バイタル平均値やバイタル標準偏差を算出するパターンを有することで、例えば、特殊な状況下での、安定しないバイタル情報が、判定基準の算出根拠に含まれなくなり、判定の精度を高めることができる。ここでいう特殊な状況下での安定しないバイタル情報とは、例えば、対象者への医療介入の際、即ち、医者の診断(指示)により対象者が入院した直後に測定されたバイタルサインの値を意味する。このような状況下で測定されたバイタルサインの値は、対象者のバイタルの個体内変動から見て、安定していない値となりやすいため、かかる値を、判定基準の算出根拠から除外する態様である。
【0170】
また、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15は、情報記録部4に記録されたバイタル情報8について、所定の状態にある対象者から測定されたバイタルサインの値を除いて、バイタル情報平均値及びバイタル情報標準偏差の算出を行うパターンを設定することができる。これに伴い、バイタル判定基準情報102a、及び、スコアリング基準情報102の算出根拠から、所定の状態にある対象者から測定されたバイタルサインの値が除外される。この所定の状態とは、対象者のバイタルが安定していない特殊な状態である。例えば、対象者が解熱剤を服用して、体温が安定していない(本来の変動傾向を示さない)状態で測定した体温の値を、判定基準の算出根拠から除外する。これにより、短期間でのバイタル異常の判定の精度を高めることができる。
【0171】
平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15の算出の際に採用される「所定の条件」は、通常、判定時点を起点にn個分のバイタル情報(体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数の測定値)を利用する方法が採用されている。この期間のバイタル情報とは、(1)判定時点(判定対象となる)の測定データを含めずに、過去のn個分のバイタル情報8及び再測定バイタル情報13を用いるパターンと、(2)判定時点(判定対象となる)の測定データを含めて、過去のn個分のバイタル情報8及び再測定バイタル情報13を用いるパターンの、2つのパターンを使い分けることが可能である。
【0172】
ここで、n個分のバイタル情報として、(1)1日1回のバイタルサインの測定を行い、4日分以上のバイタル情報(n=4個以上)から、バイタル判定基準情報102a、及び、スコアリング基準情報102を生成して、バイタル異常判定、及び、スコアリングに基づく異常判定を行うことができる。また、n個分のバイタル情報として、(2)1日2回以上のバイタルサインの測定を行い、2日分以上のバイタル情報(n=4個以上)から、バイタル判定基準情報102a、及び、スコアリング基準情報102を生成して、バイタル異常判定、及び、スコアリングに基づく異常判定を行うことができる。
【0173】
また、n個分のバイタル情報は、バイタル情報を取得する日数を増やして、バイタル判定基準情報102a、及び、スコアリング基準情報102を生成することができる。例えば、4日分以後、1日ずつデータ数を増やし、例えば、10日分、14日分、30日分、60日分、90日分、120日分、365日分等のように、バイタル情報を取得する日数を増やして、この日数分のバイタル情報に基づき、バイタル判定基準情報102a、及び、スコアリング基準情報102を生成することができる。
【0174】
また、n個分の設定は、上述したように、幅広くは1秒ごとに測定したバイタル情報のデータであり、この他にも、1分ごと、数分ごと、1時間ごと、1日ごと、1か月ごとに測定したバイタル情報のデータのように、時間の長さが異なるものが採用しうる。また、不規則に取得されたデータを、複数個分抽出するようにしてもよい。この際、単純に、取得された順番を遡るように複数個分抽出する方法でもよい。また、不規則に取得されたデータに対して、何等かの抽出条件を設定して複数個分抽出する方法でもよい。抽出条件は、例えば、所定の1時間の範囲内から複数個分抽出するとの条件や、バイタル情報同士の取得時間の間隔が、一定の条件を満たす(間隔が最低5分以上ある、又は、間隔が1時間以内である等)条件も考えられる。更に、一定間隔で規則的に測定したバイタル情報8に対して、ランダムに、複数個分抽出のバイタル情報8を選択して抽出する方法であってもよい。複数個分抽出の抽出条件は、必要に応じて、適宜設定可能である。
【0175】
また、上述したように、バイタル情報8として、幅広くは1秒ごとのバイタル情報8を記録可能に構成されている。また、バイタル情報8は、例えば、1分ごと、1時間ごと等、異なる時間間隔で記録するように設定することもできる。更に、不規則に、1日に複数回測定したバイタル情報が記録可能に構成されている。演算部2が平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15として機能して、バイタル平均値、及び、バイタル標準偏差を算出する際には、適宜、設定した条件で、バイタル平均値、及び、バイタル標準偏差を算出することができる。
【0176】
また、平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15は、入力された対象者のバイタル情報に基づく、バイタルサインの値の判定、又は、スコア値情報103の判定時点において、都度、その判定時点より前に記録されたバイタル情報8及び再測定バイタル情報13を参照して、その判定時点のバイタル情報平均値、及び、バイタル情報標準偏差の算出を行う。これにより、判定処理手段6(又はスコア処理手段100)が利用する基準が、判定時点ごとに改められるものとなり、バイタルサインの値が異常な値であるか否かの判定、及び、バイタル情報に基づくスコア値情報103が異常な値であるか否かの判定に、対象者のバイタル情報の個体内変動を反映しやすいものとなる。
【0177】
また、バイタル情報8を利用する個数が更に多い数、例えば、10個、14個、30個、又は、90個以上等、より多くの数のバイタル情報8を利用する構成であってもよい。バイタル情報8の数を増やすことで、バイタル情報8の正規性が得られやすくなる。また、対象者の個体内変動を捉えるための最低の個数として、4個分以上のデータ数となることが好ましい。
【0178】
また、平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15の算出の際に採用される「所定の条件」は、必ずしも連続した日付(個数)で計測されたバイタル情報である必要はない。例えば、対象者がバイタル測定を行っていない日(タイミング)があり、バイタル情報の記録がない日(タイミング)が存在するケースでは、所定の条件の日数(個数)が「合計で4日(4個分)」となるものであってもよい。
【0179】
例えば、図5の符号A(黒丸の図形)で示すように、毎日継続して、1日に午前と午後の2回バイタル情報を記録して、全ての情報を平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15の算出に利用している。
【0180】
ここで、本発明では、設定した個数分のバイタル情報のデータ数が揃うのであれば、必ずしも、毎秒、毎分、毎時、毎日等、連続的に取得されたバイタル情報である必要はない。図5の符号B(バツの図形)や、符号C(白抜き三角)で示すバイタル情報のように、バイタル情報を取得した日(タイミング)が非連続的であり、数日(数回)に1回取得される態様であってもよい。更には、連続的なバイタル情報の記録が存在した状態で、設定した条件に基づいて部分的に抽出する態様であってもよい。設定した条件とは、例えば、毎週月曜日のバイタル情報のみ抽出する、午前中に取得したバイタル情報のみ抽出する、指定した日付のみ抽出するといったような内容である。
【0181】
また、正規分布算出手段16は、所定の条件におけるバイタル情報の平均値及び標準偏差から正規分布を算出する部分である。対象者の各判定時点における正規分布を算出可能であり、算出した正規分布は、その確立密度関数をグラフ化した正規分布曲線が作成され、この正規分布曲線がタブレット端末3の表示部3bに表示される構成となっている。
【0182】
また、バイタル判定基準設定手段101aは、平均値算出手段14、標準偏差算出手段15と連動して、各算出部から算出されたバイタル平均値、バイタル標準偏差に基づき、判定処理手段6がバイタルサインの値の判定に用いるバイタル判定基準情報102aを作成する。作成されたバイタル判定基準情報102aは情報記録部4に記録される。
【0183】
より詳細には、バイタル判定基準設定手段101aは、平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15と連動して、対象者から測定された体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数の測定値に対して、各算出手段から算出されたバイタル平均値及びバイタル標準偏差に基づき、バイタルサインの値の判定に用いるバイタル判定基準情報102aを作成する。
【0184】
また、スコアリング基準設定手段101は、平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15と連動して、各算出部から算出されたバイタル平均値、バイタル標準偏差及び最頻値に基づき、スコアリング処理手段100がスコアリングに用いるスコアリング基準情報102を作成する。作成されたスコアリング基準情報102は情報記録部4に記録される。
【0185】
より詳細には、スコアリング基準設定手段101は、平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15と連動して、対象者から測定された体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、及び呼吸数の測定値に対して、各算出手段から算出されたバイタル平均値及びバイタル標準偏差に基づき、スコアリングに用いるスコアリング基準情報102を作成する。
【0186】
また、スコアリング基準情報102には、各算出手段の算出結果だけでなく、酸素飽和度の測定値に対してスコアリングする際に用いる、予め設定しておく一定の数値範囲の情報や、意識レベルの程度を区別可能な所定の観察状態の内容の情報も含まれている。
【0187】
より詳細には、対象者から測定された酸素飽和度の測定値に対しては、タブレット端末3の入力部3aから所定の数値範囲を入力しておき、スコアリング基準情報102として設定することができる。設定されたスコアリング基準情報102は情報記録部4に記録される。
【0188】
また、対象者から取得された意識レベルの評価結果に対しては、意識レベルの程度を区別可能な所定の観察状態の内容を入力しておき、スコアリング基準情報102として設定することができる。設定されたスコアリング基準情報102は情報記録部4に記録される。なお、バイタル平均値、バイタル標準偏差、最頻値及びスコアリング基準情報102の算出の詳細や、複数の項目から構成されるスコアリング基準情報102の設定については、後述する。
【0189】
[4.スコアリング処理手段]
スコアリング処理手段100について説明する。スコアリング処理手段100は、本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能の1つであり、タブレット端末3の入力部3aを介して入力された判定時点のバイタル情報について、平均値算出手段14、及び、標準偏差算出手段15の処理情報や、予め設定した基準を含むスコアリング基準情報102に基づき、バイタル情報の内容に応じたスコア値情報103(点数の情報)を算出する処理を行う。
【0190】
スコアリング処理手段100にて算出されたスコア値情報103は、上述したように、情報記録部4に記録される。その際、スコア値情報103は、個体を識別可能な識別情報や、スコア値の算出基準となった情報に紐付けられて記録される。スコアリング処理手段100は、情報記録部4及び基準算出手段5と連動して、スコア値情報103を出す構成となっている。
【0191】
また、スコア値情報103は、タブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。また、スコア値情報103は、タブレット端末3の表示部3bだけでなく、タブレット端末3の情報送受信部3cを介して外部のサーバや、外部の端末にスコア判定結果情報12を送信して、これらの画面等でも確認することもできる。スコア値情報103の内容は、個別の数値や、同一個体の判定時点における複数のスコア値の合計点として表示することができる。
【0192】
[5.判定処理手段]
判定処理手段6について説明する。また、判定処理手段6は、本発明を適用したソフトウェアが演算部2に実行させる機能の1つであり、入力された判定時点のバイタルサインの値についてバイタル判定基準情報102aに基づき、バイタルサインの値が異常な値であるか否かについて判定の処理を行う。
【0193】
また、判定処理手段6は、タブレット端末3の入力部3aを介して入力された判定時点のバイタル情報がスコアリング処理手段100によってスコアリングされたスコア値情報103についてスコア判定基準情報18に基づき、スコア値情報103が異常な値であるか否かについて判定の処理を行う。
【0194】
判定処理手段6にて判定された判定結果である、バイタル判定結果情報12a及びスコア判定結果情報12は、上述したように、情報記録部4に記録される。また、バイタル判定結果情報12a及びスコア判定結果情報12はタブレット端末3の表示部3bを介して、その内容を確認可能となっている。また、バイタル判定結果情報12a及びスコア判定結果情報12は、タブレット端末3の表示部3bだけでなく、タブレット端末3の情報送受信部3cを介して外部のサーバや、外部の端末にバイタル判定結果情報12a及びスコア判定結果情報12を送信して、これらの画面等でも確認することもできる。
【0195】
また、バイタル判定結果情報12a及びスコア判定結果情報12は、タブレット端末3の表示部3b上への表示を行うだけでなく、バイタル判定結果情報12a及びスコア判定結果情報12が出されたことを通知する通知音やメールメッセージで、対象者に通知する構成とすることもできる。通知音でバイタル判定結果情報12a及びスコア判定結果情報12を通知する際には、例えば、異常な値との内容であった場合と、そうでない場合の通知音の種類を変える構成とすることもできる。
【0196】
[6.バイタルの再測定]
バイタル情報が異常な値であると判定された際に、タブレット端末3の表示画面3bに「再度の測定を行いますか?」という内容のメッセージを表示して、バイタル計測の再測定を促すことができる。また、併せて、上述したように、情報記録部4に記録された姿勢情報10を表示して、「バイタル計測が正しい姿勢で行いましたか?」という内容のメッセージを表示する。更に、「バイタル測定は一定の計測時刻で測定しましたか?」という内容のメッセージを表示することもできる。
【0197】
このように、バイタル情報を入力した対象者に、注意喚起を促し、対象者自身がバイタル情報の再測定を行う旨の回答を、タブレット端末3の入力部3aを介して行うことで、バイタル情報を再度測定して、その結果の情報を情報記録部4に記録することができる。これが、再計測バイタル情報13となる。
【0198】
再計測バイタル情報13は、その後のバイタル平均値、バイタル標準偏差、バイタル判定基準情報102a、及び、スコアリング基準情報102の算出根拠として利用することができる。また、各バイタル情報をタブレット端末3の表示画面3bに表示する際には、再測定をせずに記録された通常のバイタル情報と、再測定の対象となったバイタル情報と、再測定したバイタル情報について、3つのパターンバイタル情報を示す文字の色を異ならせて表示を行う。
【0199】
また、判定処理手段6によるその他の判定の方法として、バイタル平均値が所定の条件に合致する際に「異常にむかうおそれあり」と判定する方法について説明する。
ここでは、情報記録部4に記録されたバイタル情報を用いて、直近7日間のバイタル平均値と、直近30日間のバイタル平均値を比較して、2つのバイタル平均値の差が所定の範囲を超えている場合に、判定処理手段6が「異常に向かうおそれあり」と判定するものである。
【0200】
ここで、2つの平均値の差における所定の変位とは、例えば、その判定日におけるバイタル標準偏差σに基づき、0.5σ以上の値として設定することが考えられる。判定日の直近7日間と、判定日の直近30日間のバイタル平均値は、対象者のバイタル情報の個体内変動があったとしても、通常であれば、同程度の値となることが予想される。しかし、2つのバイタル平均値の間の差が、0.5σ以上の値である場合には、バイタル平均値に大きなゆらぎが生じており、この現象をもって、対象者が「異常な値」とまでは言えないものの、「異常に向かうおそれあり」と判定して、今後、体調が悪化する可能性があることの指標とすることが考えられる。
【0201】
このように、一定期間の範囲で、2つのバイタル平均値の差を比較して、判定処理手段6に「異常に向かうおそれあり」とする体調の悪化を示唆する判定を行い、対象者に注意喚起をしたり、予防医学につなげたりする態様にできる。なお、直近7日間及び直近30日の日数は必ずしもこれに限定されるものではない。また、判定日のバイタル情報はバイタル平均値の算出根拠に含める態様と、含めない態様が想定される。
【0202】
続いて、本発明を適用したソフトウェアを機能させる際に使用する装置や、入力画面の具体的な内容について説明する。
【0203】
例えば、図6(a)に示すように、バイタル情報の取得は、ウェアラブル型のバイタル測定器21aや、体温計21b等で行い、これらで計測した測定値を、測定した時間の情報と共に、タブレット端末3の表示画面3bに表示された画面を介して入力する。表示画面3b上には、タッチパネル形式の入力部3aが表示され、ここにバイタル情報を入力する。本発明を適用したソフトウェアが導入されたタブレット端末3(第1のシステム構成)であれば、端末単体で、情報の記録、健康状態の判定、判定結果の表示が可能となる。
【0204】
また、図6(b)では、バイタル情報をスマートフォン端末22aや、パーソナルコンピュータ端末22b(以下、「PC端末22」と称する)から、上述の第2のシステム構成で述べた外部サーバである情報管理サーバ32aにアクセスして、スマートフォン端末22aやPC端末22bからバイタル情報の入力を行うこともできる。各端末から送信されたバイタル情報に基づき、情報管理サーバ32aで健康状態の判定がなされ、その結果の情報が各端末に送信され、各端末の画面で結果の情報が表示される。
【0205】
また、タブレット端末3、スマートフォン端末22a及びPC端末22bの入力画面として、図7及び図8に示す画面を示す。図7及び図8は、病院の患者や、介護施設等の入居者を健康状態の判定対象とする際に利用する入力画面の例である。図7では、一人分の対象者の入力項目と、数字を表示したテンキー領域が表示される。対象者及び担当スタッフの氏名表示欄と、体温、血圧(上下)、脈拍、酸素濃度、体重、呼吸における計測データの入力欄設けられている。各バイタルサインの値は、テンキー領域をタッチパネルや、画面上でのカーソル操作で入力しうる。
【0206】
また、図7の画面表示では、食事、排尿、排便、観察・問診の項目が設けられ、バイタルサインの値以外に、対象者の健康状態を確認する複数の項目が設けられている。これらの健康状態を確認する複数の項目は、対象者の日々の健康状態の記録が残せるだけでなく、後述するバイタル情報の判定基準の算出の際にも利用可能な情報となる。入力された情報は、送信ボタンをタッチ又はクリックすることで、装置内部のバイタル情報に記録される、又は、外部の情報管理サーバ32aに送信される。
【0207】
図8に示す入力画面では、画面右側に複数のバイタルサインの計測データの入力欄と、対象者が自身で判断した体調の正常又は異常の選択項目が設けられている。また、自覚症状、他覚症状、熱型表を選択して、更なる体調の情報の入力や、対象者のバイタルの継時的な変化が確認できる構成となっている。また、図8の画面では、複数の対象者の氏名が表示され、名前の欄を選択することで、選択された対象者の画面が表示可能となる。また、バイタルサインの値の入力時の時間の情報が、同時に入力される。更には、バイタルサインの値の入力画面以外に、情報の登録に関する項目や、排泄、食事等の提供する介護の項目についての情報の記録や表示が可能となっている。
【0208】
このように、本発明のソフトウェアを利用する際の入力画面は、病院の患者や、介護施設等の入居者を対象者として、関連する項目と合せて、入力や情報の表示が可能なものにできる。また、入力画面の表示は、介護者等に関連付けられた内容に限定されるものではなく、例えば、健康管理のアプリケーションソフトウェアとして、各バイタルサインの値の入力や記録と、体重等の情報の管理とを組み合わせた画面構成でもよい。即ち、健康な対象者が、日常的な健康管理に使用する態様とすることもできる。
【0209】
続いて、バイタル情報に基づく具体的な判定の方法について説明する。
【0210】
[7.バイタル平均値等の算出、バイタル異常判定、スコアリングに基づく異常の判定について]
[7-1.体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧の測定値について]
バイタル平均値及びバイタル標準偏差は情報記録部4に記録されたバイタル情報8及び再測定バイタル情報13に基づき、演算部2が基準算出手段5の平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15として機能して算出される。また、バイタル平均値及びバイタル標準偏差に基づき、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数の測定値に対するスコアリング基準情報102及びバイタル判定基準情報102aが設定される。
【0211】
なお、本発明で採用される複数のパターンの判定基準の設定と判定の内容は、判定基準設定手段17で設定を変更することで、適宜、使用する判定方法の選択や、複数のパターンを組み合わせた方法を選択することが可能となっている。
【0212】
バイタル平均値、バイタル標準偏差及びこれらに基づくバイタル判定基準情報102a及びスコアリング基準情報102の設定方法として、情報記録部4に記録されたバイタル情報8及び再測定バイタル情報13をバイタル平均値等の算出に利用する方法が挙げられる。本方法では、バイタル平均値とバイタル情報の分布に基づく標準偏差は、平均値算出手段14及び標準偏差算出手段15において、以下の式(3)及び式(4)を用いて算出される。
【0213】
μ=(1/N)×ΣSi・・・式(3)
σ=√((1/N)×Σ(Si-μ))・・・式(4)
ここでμはバイタル情報の平均値、Siは各バイタル情報の計測値、Nは全バイタル情報のデータ数であり、σは標準偏差である。ΣSiは、全バイタル情報の計測値の合計を示す。また、各バイタル情報の計測値とは、上述したように、設定した所定の抽出条件で取得したバイタル情報の値である。なお、ここでいう全バイタル情報の内容は、上述したように、情報記録部4に記録された情報の一部を抽出するものであってよい。また、ここでのバイタル情報とは、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数の測定値である。
【0214】
ある判定時点において、対象者のバイタル情報を判定する際には、判定時点の前日、または、判定時点、を起点に、情報記録部4に記録された同一の対象者のデータから、上記の式(3)、式(4)を用いて、バイタル平均値μ、バイタル標準偏差σが算出される。即ち、判定時点に測定した判定の対象となるバイタルサインの値を含めないパターン、または、判定時点に測定した判定の対象となるバイタルサインの値を含めるパターンにより、バイタル判定基準情報102a及びスコアリング基準情報102が算出される。
【0215】
また、バイタル判定基準設定手段101a及びスコアリング基準設定手段101が、以下の式(1)又は式(2)で表される値を、バイタル判定基準情報102a及びスコアリング基準情報102として利用する。
【0216】
μ-nσ・・・式(1)
μ+mσ・・・式(2)
ここでn、mは0より大きい数である。
【0217】
また、スコアリング基準情報102では、上記の式(1)及び式(2)で表された値と、所定のスコア値、即ち、0点~3点の点数の情報が組み合わされている。この組み合わせは、例えば、下記の表3に示す通りである。
【0218】
【表3】
【0219】
なお、表3及び下記の表4において、「-3σ」は、式(1)に基づく「μ-3σ」の値であり、「-2.5σ」は、式(1)に基づく「μ-2.5σ」の値であり、「-2σ」は、式(1)に基づく「μ-2σ」の値であり、「+3σ」は、式(2)に基づく「μ+3σ」の値であり、「+2.5σ」は、式(2)に基づく「μ+2.5σ」の値であり、「+2σ」は、式(2)に基づく「μ+2σ」の値を意味している。また、μ及びσは、所定の条件(例えば4個分のバイタル情報)で測定された各バイタルサインの測定値から算出される値である。
【0220】
表3に示すように、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧の測定値について、その内容に基づいて、0~3点の各スコア値にスコアリングする際には、上記の式(1)及び式(2)に基づき算出された「μ±2σ、μ±2.5σ、及びμ±3σ」の値が利用されている。
【0221】
より詳細には、入力されたバイタルサインの測定値が、その判定時点において算出されたバイタル平均値及びバイタル標準偏差において、「μ±2σ以内」の範囲に収まる値であれば0点のスコア、「μ-2.5σ(以上)~μ-2σ(未満)」の範囲、又は、「μ+2σ(以上)~μ+2.5σ(未満)」の範囲に収まる値であれば1点のスコア、「μ-3σ(以上)~μ-2.5σ(未満)」の範囲、又は、「μ+2.5σ(超)~μ+3σ(以内)」の範囲に収まる値であれば2点のスコア、「μ-3σ(未満)」、又は、「μ+3σ(超)」の範囲に収まる値であれば3点のスコアとなる。
【0222】
また、表3とは別に、下記の表4のような内容で、スコアリング基準情報102として、上記の式(1)及び式(2)で表された値と、所定のスコア値、即ち、0点~2点の点数の情報が組み合わされていてもよい。
【0223】
【表4】
【0224】
なお、表3及び表4に示す内容は、スコアリング基準情報102の一例であり、上記の式(1)及び式(2)で表された値と、所定のスコア値の組み合わせの内容は、表3及び表4の内容に限定されず、その他の設定を行うことも可能である。
【0225】
入力されたバイタルサインの測定値に対するスコアリングは、判定時点において算出されたバイタル平均値、バイタル標準偏差により、判定時点ごとの基準が設定される。また、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、及び、呼吸数の測定値は、正規分布に従うバイタルサインであり、上記式(1)又は式(2)の基づき算出されたスコアリング基準情報102は、対象者の個体内変動が反映された基準となる。そのため、対象者の体調の変動を正確に捉えることが可能な指標となる。
【0226】
また、判定処理手段6は、例えば、バイタルサインの値(それぞれのバイタルサインの測定値)について、「μ±2σ以上」の値となったものを「(バイタルサインの値の)異常」と判定する。即ち、本事例では、バイタル判定基準情報102aとして、「μ±2σ以上」の値が、異常の有無の判定基準となる。
【0227】
また、判定処理手段6は、スコア値情報103について、1点が算出された際には「注意」と判定し、2点以上が算出された際には「警告」と判定する。スコア値情報103が0点の場合には、「注意」や「警告」の判定結果が出されず、「正常」な状態と見なすことができる。即ち、1つずつのバイタルサインの測定値に対して、1点以上の値となる判定がなされた際に、「注意」と「警告」の2段階に分けた異常と判定可能となっている。この内容がスコア判定基準情報18である。
【0228】
また、各バイタルサインの値から算出されたスコア値情報103と、この値に対する注意等のスコア判定結果情報12及びバイタル判定結果情報12aは、対象者に紐付けて情報記録部4に記録される。
【0229】
また、判定処理手段6がスコア値情報103についての「警告」の判定や、バイタルサインの値についての「警告」の判定を行った際には、情報送受信部3cを介して、健康状態管理装置1で警告音を発したり、外部端末等に「警告」の判定がなされた旨のメールを送信したりする構成とすることができる。これにより、対象者の体調に異常が生じていることを介護者等に通知可能となる。また、ここでは、スコア値情報103の判定を主として、スコア値情報103についての「警告」の判定についてのみ、「警告の判定」を行った際に、警告音を発したり、外部端末等にメールを送信したりする構成としてもよい。
【0230】
ここで、上述した式(1)又は式(2)におけるnは0より大きい数であることは述べたが、n及びmとなる数値は、上述した内容のように「2、2.5及び3」に限定されるものではなく、適宜、その数値を変更して、バイタル判定基準情報102a、又は、スコアリング基準情報102とすることができる。
【0231】
また、必ずしも、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、及び呼吸数の測定値において、式(1)又は式(2)におけるn及びmとなる数値が同一である必要はない。バイタルサインの種類によって、設定するn及びmとなる数値を異なるものとすることもできる。
【0232】
また、表3に示すスコアリング基準情報102では、例えば、1点のスコア値情報と、2点のスコア値情報を区別する範囲として、「μ±2σ以内」と「μ+2σ(以上)~μ+2.5σ(未満)」の範囲が設定されている。即ち、μ+2σの数値の前後で、μ+2σ以内が0点、μ+2σを超えると1点となるが、必ずしも、範囲の設定がこの内容に限定される必要はない。例えば、μ+2σ未満が0点、μ+2σ以上が1点する内容とすることも可能である。また、その他の数値についても同様である。
【0233】
また、表3に示すスコアリング基準情報102では、スコア値情報103は0点から3点の範囲で設定されている(表4では0点~2点が設定)が、必ずしもこの範囲に限定される必要はない。例えば、スコア値情報を0点、1点、及び2点の範囲でスコアリングする設定に変更することも可能である。更には、3点より大きな数値を採用することも可能である。スコア値情報103を変更する場合、これに合わせてスコアリング基準情報102を適宜設定可能であることは言うまでもない。また、この点は後述する酸素飽和度及び意識レベルのスコアリングにおいても同様である。
【0234】
また、判定処理手段6がスコア値情報103について、異常と判定する数値が1点以上に限定されるものではない。例えば、2点以上で異常とする判定が採用されてもよい。また、必ずしも、異常の判定を「注意」と「警告」の2段階で判定する必要はない。例えば、判定を3段階以上に分ける設定や、単に「異常」の1段階で判定する態様であってもよい。但し、異常の判定を「注意」と「警告」の2段階で判定することで、スコア値情報103の異常の程度を区別することが可能となり、「注意」や「警告」の程度に応じたその後の対処が設定しやすくなることから、異常の判定を2段階で分けることが好ましい。また、この点は後述する酸素飽和度及び意識レベルのスコアリングにおいても同様である。
【0235】
また、判定処理手段6が、1つずつのバイタルサインの測定値に基づくスコア値情報103に対して、異常な値か否かの判定を行う設定となっているが、必ずしもこのように設定される必要はない。例えば、複数の種類のバイタルサインに基づくスコア値情報103の「合計点」に対して、異常な値か否かの判定を行う態様とすることもできる。
【0236】
例えば、全ての種類のバイタルサインのスコア値情報103の「合計点」に対して、異常か否かの判定を行うスコア判定基準情報18を設定して、各スコア値情報103の「合計点」に対して、異常な値か否かの判定を行う態様とすることもできる。また、特定の種類のバイタルサイン(例えば、体温と脈拍)を組み合わせて、その組み合わせたバイタルサインに基づくスコア値情報103の「合計点」に対して、異常な値か否かの判定を行う態様とすることもできる。
【0237】
また、例えば、複数の種類のバイタルサインに基づくスコア値情報103の「合計点」に対して、点数に応じて、「注意」や「警告」を設定しておき、この「注意」や「警告」を表示部3bに表示したり、アラートを鳴らす態様にしたりすることもできる。
【0238】
また、表3及び表4に示すスコアリング基準情報102では、スコアリングされる対象(マーカー)として、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、脈拍、体温、呼吸数、酸素飽和度、意識レベルが挙げられているが、これは一例に過ぎない。また、スコアリング基準情報102での点数を区別する閾値も一例に過ぎない。
【0239】
即ち、マーカーの種類や点数を区別する閾値は、対象者が有する疾患の種類や、対象者の性質によって異ならせて設定することが可能である。例えば、心不全を有する対象者と、尿路感染を有する対象者では、マーカーの種類や点数を区別する閾値を異ならせて設定する。また、マーカーとして、血圧において、収縮期血圧のみを採用する場合や、収縮期血圧と拡張期血圧の両方を採用する場合もある。また、例えば、健常者である対象者と、持病を有する高齢者である対象者では、やはり、マーカーの種類や点数を区別する閾値を異ならせて設定する。
【0240】
また、スコアリング基準情報102には、マーカーとして、対象者の既往歴や、対象者の家族や近親者における病的状態である家族歴、生活習慣等の種類を含めて、スコアリングする態様もある。
【0241】
この場合、例えば、心臓病の既往歴の対象者や、家族に心臓病を患った人がいる対象者に対して、心不全の程度を判断するためにスコアリングを行う際には、既往歴または家族歴のマーカーに点数が付与され、スコア値情報103の合計点に加点される。また、例えば、喫煙の生活習慣がある対象者には、生活習慣のマーカーに点数が付与され、スコア値情報103の合計点に加点される。
【0242】
ここで、複数の対象者のバイタル情報を利用して、異なる個体の情報に基づくバイタル情報の分布を作成した場合と、同一の対象者のバイタル情報を利用して、同一個体のバイタル情報の分布を作成した場合との違いについて、説明する。
【0243】
図9(a)及び図9(b)は、いずれも体温の情報を元に作成された正規分布曲線のグラフである。図9(a)及び図9(b)において、横軸は体温の確率変数、縦軸は確率密度である。(a)は多数の対象者で作成し、(b)は、同一の対象者のみで作成されている。図9(a)では、様々な平熱や、体温の変動をする人が含まれており、平均値μは多数の対象者の平均値である37.0℃となり、μ+2σの値は37.7℃、μ-2σの値は36.0℃となっている。
【0244】
しかしながら、図9(b)では、同一個体のバイタル情報を記録したものであり、その人特有の平熱や、体温の変動となるため、平均値μは35.6℃、μ+2σの値は37.0℃、μ-2σの値は35.2℃となる。
【0245】
即ち、仮に、各分布を用いて、スコアリングをする際の、あるスコア値に安定される基準値をμ+2σに設定すると、図9(a)の方では、37.0℃の体温はμの位置(図9(a)中の黒い丸)に該当する。一方、図9(b)の方では、37.℃の体温は、上限値であるμ+2σの位置(図9(b)中の黒い丸)になる。
【0246】
つまり、図9(a)に示す分布と、図9(b)に示す分布では、分布上における同じμ+2σの数値が全く違う値になる。そのため、バイタル判定基準情報102a、スコアリング基準情報102、及び、スコア値情報103も変わり、判定結果も異なるものとなる。
【0247】
換言すれば、図9(b)の対象者の判定を行う上では、多数の対象者のバイタル情報に基づくバイタル判定基準情報102aや、スコアリング基準情報102、及び、スコア値情報103は、「異常な値」を捉えるために使用できないものといえる。多数の人数のバイタル情報を基準に用いることは、従来行われていた「個体間変動」での判定に他ならず、対象者に特有のバイタル情報の変動をみるためには、「個体内変動」が有効であることを示している。
【0248】
なお、図9(b)に示す体温の平均値や変動を行う対象者は、特殊な事例にあたるものではない。また、体温に限って起こる現象ではなく、その他のバイタルサインである収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍数、呼吸数でも、対象者に固有の変動が生じ、これらは正規分布に従うものとなる。上記の体温の例でいえば、図9(b)に示す温度域で体温が変化する高齢者は多く、このような高齢者の健康状態の判定をバイタルサインで行う際には、「個体内変動」が有効である。
【0249】
[7-2.酸素飽和度の測定値について]
対象者から測定された酸素飽和度の測定値に対するスコアリング基準情報102の設定方法として、一定の数値範囲の情報を基準として設定する。表3に示す内容では、酸素飽和度の測定値について、0~3点の各スコア値にスコアリングする際には、「93~100(%)」が0点のスコア、「90~92(%)」が1点のスコア、「85~89(%)」が2点のスコア、及び、「84(%)以下」が3点のスコアとなるように設定されている。
【0250】
入力された酸素飽和度の測定値に対して、表3に示すスコアリング基準情報102に基づき、0~3点のスコア値情報103が算出される。また、スコア値情報103に対する判定処理手段6による異常な値か否かの判断は上述したとおりである。
【0251】
また、酸素飽和度の測定値から算出されたスコア値情報103と、この値に対する注意等のスコア判定結果情報12は、対象者に紐付けて情報記録部4に記録される。
【0252】
ここで、表3及び表4に示す酸素飽和度に対するスコアリング基準情報102の内容はこれに限定されるものではない。0~3点のスコア値情報を分ける数値範囲は、適宜設定を変更して、スコアリング基準情報102とすることができる。
【0253】
[7-3.呼吸数の測定値について]
【0254】
対象者から測定された呼吸数の測定値に対するスコアリング基準情報102の設定方法として、表4に示すように、「μ±nσ」の値を利用する態様がある。
【0255】
また、別の態様として、対象者から測定された呼吸数の測定値に対するスコアリング基準情報102の設定方法として、情報記録部4に記録されたバイタル情報8及び再測定バイタル情報13を最頻値の算出に利用する方法が挙げられる。本方法では、最頻値算出手段(符号省略)が、所定の条件(例えば30個分)における呼吸数の測定値に対して、その最頻値を算出する。また、呼吸数の測定値とは、設定した条件で測定した呼吸数の値が採用しうる。なお、ここでいう全バイタル情報の内容は、上述したように、情報記録部4に記録された情報の一部を抽出するものであってよい。
【0256】
ある判定時点において、対象者の呼吸数を判定する際には、判定時点を起点に、情報記録部4に記録された同一の対象者のデータから、最頻値が算出される。即ち、判定時点に、スコアリング基準情報102が算出される。スコアリング基準設定手段101は、表3に示す内容となるように最頻値からスコアリング基準情報102を設定する。
【0257】
入力された呼吸数の測定値に対して最頻値が算出され、この最頻値に基づき、表3に示すスコアリング基準情報102となり、0~3点のスコア値情報103が算出される。また、スコア値情報103に対する判定処理手段6による異常な値か否かの判断は上述したとおりである。
【0258】
[7-4.意識レベルについて]
対象者に対して、介護者等が意識レベルを確認して、取得された結果について、スコアリング基準情報102として設定された所定の観察情報に当てはめる作業を行う。意識レベルの確認は、既知のAVPU評価を利用しうる。
【0259】
AVPU評価では、正常(覚醒して見当識あり、A:alert)、異常(言葉により反応するが、見当識なし、V:verbal)、痛みに反応(痛みにのみ反応、P:Pain)、無意識(言葉にも痛みにも反応しない、U:Unresponsive)が所定の観察状態として設定されている。介護者等が対象者を観察して、その意識レベルがAVPU評価のどの項目に該当するかを判断して、その結果を、入力部3a等を介して入力する。
【0260】
意識レベルに対するスコアリング基準情報102は、例えば、表3に示す内容で設定されている。表3では、正常が0点のスコア、異常が1点のスコア、痛みに無反応が2点のスコア、及び、無意識が3点のスコアとなるように設定されている。介護者等が入力した情報により、スコアリング処理手段100がスコア値情報103を算出する。また、スコア値情報103に対する判定処理手段6による異常な値か否かの判断は上述したとおりである。
【0261】
ここで、表3(又は表4)に示す対象者の意識レベルの評価結果に対するスコアリング基準情報102の内容はこれに限定されるものではない。AVPU評価以外の意識レベルの評価手法が採用されてもよい。また、0~3点のスコア値情報を分ける観察状態は、適宜設定を変更して、スコアリング基準情報102とすることができる。
【0262】
以上の内容では、対象者のバイタルサインのうち、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、呼吸数、酸素飽和度の測定値と、意識レベルの評価結果を用いてスコアリングを行い、算出されたスコア値情報103が異常な値か否かを判定している。ここで、必ずしも、対象者のバイタルサインがこれらの内容に限定される必要はない。例えば、スコアリングを行う対象として、対象者から得られた尿量、体重、痛み(痛みの有無や程度)、その他の病状異常をバイタルサインの情報として採用することも考えられる。
【0263】
また、上述した内容では、「バイタルサインの値についての異常判定」を行う構成と、「バイタルサインの値からスコアリングを行い、スコアリングしたスコア値についての異常判定」を行う構成の両方が含まれていたが、本発明では、必ずしも、2つの構成が組み合わされる必要はない。即ち、本発明の態様としては、「バイタルサインの値についての異常判定」を行う構成のみの発明と、「バイタルサインの値からスコアリングを行い、スコアリングしたスコア値についての異常判定」を行う構成のみの発明が別々に存在するものであってもよい。
【0264】
[8.表示情報の作成]
本発明を適用した健康状態判定装置1では、対象者のバイタル情報について、その内容を正規分布曲線として表示することが可能である。また、対象者のバイタル情報を熱型表として表示することも可能である。
【0265】
熱型表の一例として、図10を示す。図10には、ある対象者に関する判定時点のバイタル情報と、バイタル情報の内容に基づくスコア値情報の値が異常な値であったか否かの情報(警告、注意、正常の情報)、対象者の観察や問診結果による異常の有無の情報、スコア値情報の合計点の情報が表示されている。
【0266】
また、図10に示す熱型表では、対象者の健康状態のリスクファクターである既往歴の情報と、生活習慣に関する情報が表示されている。また、熱型表には、対象者の詳細な観察情報や、特記事項の情報が表示されている。熱型表に表示される情報は、入力部3a等を介して入力された情報を元に作成することができるものとなっている。
【0267】
また、図11には、病院等に設置した端末で利用する電子カルテにおいて、その電子カルテの表示情報の1つである熱型表の中に、バイタル情報の内容に基づくスコア値情報の値を示した画像を示している。例えば、複数のバイタル情報のスコア値を合計して、その日ごとのスコア値の合計値を表示するような態様が考えられる。この場合、入院患者の情報が記録された電子カルテの情報と併せて、スコアリングの結果に基づく情報を、対象者のリスク評価に利用することができる。
【0268】
更に、図12には、本発明のソフトウェアの機能を有するアプリケーションソフトウェアをスマートフォン端末等で利用する際に、その画面上にバイタル情報の内容に基づくスコア値情報の値を示した画像を示している。例えば、スマートフォン端末の使用者個人のバイタル情報の記録(体温)と、そのスコア値情報の値を示す態様がある。この場合、スマートフォンでの健康管理や、在宅医療での健康状態の評価に、スコアリングの結果に基づく情報を活用することができる。
【0269】
[9.正規分布の有無による測定精度の判定及び異常な値の判定]
本発明を適用した健康状態判定装置1では、測定したバイタル情報が正規分布に当て嵌まっているかを確認する手法として、Q-Qプロットが利用できる。例えば、横軸にバイタル標準偏差の値を、縦軸に標準偏差の累積確率に対応する標準正規分布のパーセント点の値をとり、対象者のバイタル標準偏差をプロットする。各プロットが直線上に位置していれば、取得したバイタル情報が正規分布していることが視覚的に確認可能となる。
【0270】
続いて、本発明を適用したソフトウェアにおける情報処理の一連の流れについて、図面を用いて説明する。
【0271】
[バイタルサインの異常判定]
図13には、バイタル情報の入力から異常の判定、結果の情報の表示までの情報処理の流れを示している。
まず、初めに、対象者のバイタルサインの値が各測定機器により測定され、計測値と測定日時の情報が入力される(S1)。入力された情報は、対象者のバイタル情報として、情報記録部4(DB)に記録される(S2)。
【0272】
情報記録部4に記録された判定の対象となるバイタル情報を含めて、演算部2が基準算出手段5として機能して判定基準の算出を行う(S3)。ここでは、バイタル平均値と、バイタル標準偏差が算出され、これらの値を元に、設定した条件での判定基準(例えば、上限値や下限値)が作成される。即ち、判定基準は、都度、判定の度に算出されるものとなる。
【0273】
次に、入力された判定の対象のバイタル情報について、判定基準に基づき異常な値であるか否かを判定する(S4)。判定の結果「異常な値である」と判定されないものについては、判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録され(S8)、判定結果の情報が表示画面3bに表示される(S10)。また、対象者のバイタル情報を元に、バイタルサインの値の経時的な変化をグラフ化した熱型表や、正規分布の確立密度関数(正規分布曲線のグラフ)が表示情報として作成され(S9)、これらの情報も表示画面3bにて確認可能となる。
【0274】
また、入力された判定の対象のバイタル情報について、判定基準に基づき異常な値であるか否かを判定する(S4)。判定の結果「異常な値である」と判定されたものについては、例えば、表示画面3bに「再測定を行いますか?」といった表示や、バイタルの取得時の姿勢の注意喚起を表示し、再測定バイタル情報の有無について対象者に確認する(S6)。
【0275】
ここで、対象者が「再測定バイタル情報なし」と選択すると、異常な判定との判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録され(S8)、判定結果の情報が表示画面3bに表示される(S10)。更に、熱型表や、正規分布の確立密度関数(正規分布曲線のグラフ)が表示情報として作成され(S9)、これらの情報も表示画面3bにて確認可能となる。
【0276】
また、対象者が「再測定バイタル情報あり」と選択すると、再測定したバイタルサインの値と測定日時の入力を促し、入力された再測定バイタル情報が入力された情報は、対象者の再測定バイタル情報として、情報記録部4(DB)に記録される(S2)。この後は、再度、判定基準の算出(S3)、異常判定(S4)がなされるものとなる。判定において、異常な値であるとの判定でなければ、判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録される(S8)。また、異常な値との判定であった際は、再測定バイタル情報の有無の確認(S6)のステップに進んでもよいし、2回目の判定結果であることから、そのまま判定結果情報の記録(S8)に進んでもよい。
【0277】
対象者が判定結果の情報を表示画面3bで確認したこことで、一連の情報処理が完了する。以上のような流れで、本発明を適用したソフトウェアはバイタル情報から健康状態の判定を行う。
【0278】
[バイタルのスコアリングに基づく異常判定]
図14には、バイタル情報の入力からスコア値情報における異常の判定、結果の情報の表示までの情報処理の流れを示している。
まず、初めに、対象者のバイタルサインの値(体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、酸素飽和度、呼吸数の測定値)が各測定機器により測定され、計測値と測定日時の情報が入力される(S1)。また、この際、対象者の意識レベルの評価結果から、バイタル基準情報102の観察情報の該当する情報が選択又は入力される。入力された情報は、対象者のバイタル情報として、情報記録部4(DB)に記録される(S2)。
【0279】
情報記録部4に記録された判定の対象となるバイタル情報を含めて、演算部2が基準算出手段5として機能してスコアリング基準情報102の算出(及びバイタル判定基準情報102aの算出)を行う(S3)。ここでは、バイタル平均値と、バイタル標準偏差が算出され、これらの値を元に、設定した条件でのスコアリング基準情報(所定の数値範囲等)が作成される。ここで、体温、脈拍、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧及び呼吸数に関する基準は、都度、スコアリングの度(及びバイタルサインの値の判定の度)に算出されるものとなる。
【0280】
次に、入力された判定の対象のバイタル情報について、スコアリング基準情報102に基づき、スコアリング処理手段100により、スコア値情報103がバイタル情報ごとに算出される(S4)。
【0281】
スコア値情報103が算出されると、判定処理手段6が、判定基準に基づき、スコア値情報が異常な値であるか否かを判定する(S5)。判定の結果「異常な値(注意又は警告)である」と判定されないものについては、判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録され(S9)、判定結果の情報が表示部3bに表示される(S11)。また、対象者のバイタル情報を元に、バイタルサインの値の経時的な変化をグラフ化した熱型表や、正規分布の確立密度関数(正規分布曲線のグラフ)が表示情報として作成され(S10)、これらの情報も表示部3bにて確認可能となる。
【0282】
また、入力された判定の対象のバイタル情報について、判定基準に基づき、スコア値情報が、判定の結果「異常な値(注意又は警告)である」と判定されたものについては、例えば、表示部3bに「再測定を行いますか?」といった表示や、バイタルの取得時の姿勢の注意喚起を表示し、再測定バイタル情報の有無について対象者に確認する(S7)。
【0283】
ここで、対象者や介護者等が「再測定バイタル情報なし」と選択すると、異常な判定との判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録され(S9)、判定結果の情報が表示部3bに表示される(S11)。更に、熱型表や、正規分布の確立密度関数(正規分布曲線のグラフ)が表示情報として作成され(S10)、これらの情報も表示部3bにて確認可能となる。
【0284】
また、対象者や介護者等が「再測定バイタル情報あり」と選択すると、再測定したバイタルサインの値と測定日時の入力を促し、入力された再測定バイタル情報が入力された情報は、対象者の再測定バイタル情報として、情報記録部4(DB)に記録される(S2)。この後は、再度、スコアリング基準情報の算出(S3)、再度のスコア値情報の異常判定(S4)がなされるものとなる。判定において、異常な値であるとの判定でなければ、判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録される(S9)。また、異常な値との判定であった際は、再測定バイタル情報の有無の確認(S6)のステップに進んでもよいし、2回目の判定結果であることから、そのまま判定結果情報の記録(S9)に進んでもよい。
【0285】
また、図14には詳細を示さないが、判定処理手段6が、バイタル判定基準情報102aに基づき、入力されたバイタルサインの値が異常な値であるか否かを判定する。判定の結果「異常な値(警告)である」と判定されないものについては、判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録され、判定結果の情報が表示部3bに表示される。
【0286】
また、入力された判定の対象のバイタル情報について、バイタル判定基準に基づき、バイタルサインの値が、判定の結果「異常な値(警告)である」と判定されたものについては、例えば、表示部3bに「再測定を行いますか?」といった表示や、バイタルの取得時の姿勢の注意喚起を表示し、再測定バイタル情報の有無について対象者に確認する。
【0287】
ここで、対象者や介護者等が「再測定バイタル情報なし」と選択すると、異常な判定との判定結果情報が、情報記録部4(DB)に記録され、判定結果の情報が表示部3bに表示される。
【0288】
また、情報記録部4は、異常な判定との判定結果となったバイタルサインの値を、バイタル情報8に含まれるように記録する。これにより、バイタル情報8には、スコア値情報が正常な値と判定されたバイタル情報と、スコア値情報が異常な値と判定されたバイタル情報の両方が蓄積されていく。即ち、上述したスコア値情報についての異常の有無だけでなく、バイタルサインの値の異常の有無についてのデータを蓄積することもできる。
【0289】
対象者が判定結果の情報を表示部3bで確認したこことで、一連の情報処理が完了する。以上のような流れで、本発明を適用したソフトウェアはバイタル情報から健康状態の判定を行う。
【0290】
次に、図面を用いて、バイタルサインの値に対する異常判定(バイタル異常判定)を行う事例を説明する。
【0291】
図25及び図26では、体温に対するバイタルの異常判定を、4日分又は5日分のバイタル情報に基づくバイタル基準情報で行った事例を示している。ここでは、8月2日から8月7日まで、1日1回測定した体温の値を折れ線グラフに示す。また、符号Aで示す領域は、8月6日の判定時(5日目)におけるバイタル基準情報と、8月7日の判定時(6日目)におけるバイタル基準情報を示す範囲である。
【0292】
図25に示す事例では、8月6日の判定時(5日目)におけるバイタル基準情報Aの範囲は、次のように設定される。ここでは、8月6日の判定時の体温(37.0℃)を含めずに、8月2日から8月5日までの4日分の体温を元に、バイタル平均値(μ)及びバイタル標準偏差(σ)を算出し、その「μ+2σ」を上限値、「μ-2σ」を下限値としたバイタル基準情報Aとなる。
【0293】
また、図25に示す事例では、8月7日の判定時(6日目)におけるバイタル基準情報Aの範囲は、次のように設定される。ここでは、8月7日の判定時の体温(37.2℃)を含めずに、8月2日から8月6日までの5日分の体温を元に、バイタル平均値(μ)及びバイタル標準偏差(σ)を算出し、その「μ+2σ」を上限値、「μ-2σ」を下限値としたバイタル基準情報Aとなる。
【0294】
そして、8月6日の判定時(5日目)では、その日の体温(37.0℃)は、バイタル基準情報Aの範囲を超えた結果となる。従って、8月6日の体温に対するバイタル異常の判定では、「異常あり」との判定結果が出される。
【0295】
また、8月7日の判定時(6日目)では、その日の体温(37.2℃)についても、バイタル基準情報Aの範囲を超えた結果となる。従って、8月7日の体温に対するバイタル異常の判定では、「異常あり」との判定結果が出される。
【0296】
また、図26に示す事例では、図25に示す事例と同様に、体温のバイタル基準情報Aの範囲が設定される。
【0297】
図26に示す例では、8月6日の判定時(5日目)では、その日の体温(35.5℃)は、バイタル基準情報Aの範囲内に位置する結果となる。従って、8月6日の体温に対するバイタル異常の判定では、「正常(異常なし)」との判定結果が出される。
【0298】
また、8月7日の判定時(6日目)では、その日の体温(36.6℃)についても、バイタル基準情報Aの範囲内に位置する結果となる。従って、8月7日の体温に対するバイタル異常の判定では、「正常(異常なし)」との判定結果がなされるものとなる。
【0299】
さらに、図27及び図28を用いて、脈拍に対するバイタル異常判定の事例を示す。図27及び図28に示す事例では、図25及び図26に示す事例と同様に、脈拍のバイタル基準情報Aの範囲が設定される。
【0300】
そして、図27に示す事例では、8月6日の判定時(5日目)では、その日の脈拍(75回/分)は、バイタル基準情報Aの範囲を超えた結果となる。従って、8月6日の脈拍に対するバイタル異常の判定では、「異常あり」との判定結果が出される。
【0301】
また、8月7日の判定時(6日目)では、その日の脈拍(76回/分)についても、バイタル基準情報Aの範囲を超えた結果となる。従って、8月7日の脈拍に対するバイタル異常の判定では、「異常あり」との判定結果が出される。
【0302】
一方、図28に示す例では、8月6日の判定時(5日目)では、その日の脈拍(69回/分)は、バイタル基準情報Aの範囲内に位置する結果となる。従って、8月6日の脈拍に対するバイタル異常の判定では、「正常(異常なし)」との判定結果が出される。
【0303】
また、8月7日の判定時(6日目)では、その日の脈拍(73回/分)についても、バイタル基準情報Aの範囲内に位置する結果となる。従って、8月7日の脈拍に対するバイタル異常の判定では、「正常(異常なし)」との判定結果がなされるものとなる。
【0304】
このように、本発明を用いたバイタル異常判定では、非常に短い期間のバイタル情報を取得して、対象者の個体内変動を反映したバイタル基準情報を生成し、バイタルサインの値が異常であるか否かを判定することができる。
【0305】
また、図25図28に示す事例では、判定時のバイタル情報を含めることなく、バイタル基準情報が設定される態様になっているが、本発明では、判定時のバイタル情報を含めて、バイタル基準情報が設定される態様を採用することもできる。
【0306】
また、本発明では、バイタル異常判定において、バイタルサインの値が「異常である」と判定されたバイタル情報を含めて、バイタル基準情報が設定される態様と、バイタル異常判定において、バイタルサインの値が「異常である」と判定されたバイタル情報を含めることなく、バイタル基準情報が設定される態様と、の両方を採用することができる。
【0307】
また、図25図28に示す事例では、8月6日の判定時(5日目)と、8月7日の判定時(6日目)の2点のみを示したが、本発明では、例えば、8月8日以降(7日目以降)もバイタル情報の記録を蓄積して、バイタル基準情報の生成と、バイタル異常判定を継続して行うことができる。
【0308】
また、バイタル情報が蓄積していった場合、情報記録部に記録されたバイタル情報の全部、又は、その一部を抽出して、バイタル基準情報の生成を行うことができる。
【0309】
例えば、所定の検定法に基づき、正規性が担保されない値と判定できるバイタルサインの測定値を、バイタルサインの値として異常とみなされるような値として除外し、正規性が担保されたクオリティデータのみを抽出して、バイタル異常の判定に用いる態様も考えられる。
【0310】
ここで、正規性を判定する手法として、例えば、シャピロ-ウィルク検定が採用できる。シャピロ-ウィルク検定は、バイタルサインの測定値の集合についてP値を求め、例えば、有意水準5%と設定した場合には、P<0.05の場合は「正規分布に従わない」、P≧0.05であった場合は「正規分布に従う」と判断する検定法である。なお、P値とは、帰無仮説を棄却するための証拠を測定する確率である。
【0311】
このシャピロ-ウィルク検定を用いて、バイタルサインの測定値の集合について、P<0.05の根拠となった「外れ値」となる測定値を抽出する。即ち、この外れ値を正規性が担保されないバイタルサインの測定値として除外し、正規性が担保されたクオリティデータのみを抽出して、バイタル異常の判定に用いることができる。
【0312】
また、図25図28に示す事例では、1日1回のバイタルサインの計測を行い、4日分のバイタル情報に基づき、バイタル基準情報が設定される態様を示したが、例えば、1日2回、午前と午後に1回ずつバイタルサインの計測を行い、これを2日分準備して、合計、4点のバイタル情報から、バイタル基準情報が設定される態様とすることもできる。
【0313】
また、バイタルサインの測定値としては、上述したように、一端、「異常あり」と判定されたバイタル情報に対して、再測定を促し、再測定を行ったバイタルサインの値である再測定バイタル情報に対して、バイタル異常の判定を行うこともできる。これにより、測定の仕方が悪い等の原因により、バイタル異常の判定が出された数値に対して、再度、精度の良いバイタル情報を用いた判定を行うことが可能となる。また、再測定バイタル情報を用いて、バイタル基準情報を設定することも可能である。
【0314】
図25図28に示す事例では、1日1回のバイタルサインの計測であったが、本発明におけるバイタル情報の取得では、例えば、対象者の身体に装着可能なウェアラブル型の計測装置を用いて取得した連続的なバイタル情報を採用することも可能である。
【0315】
以上のように、本発明のソフトウェアは、対象者の個人差を考慮したバイタルサインや日々の体調を反映して、対象者ごとに異なる個体内変動を、より迅速に、かつ、精度高く捉えることが可能であり、対象者の健康管理や、一人ひとりの個性にかなった医療の提供に寄与するものとなっている。
また、本発明の健康状態判定装置は、対象者の個人差を考慮したバイタルサインや日々の体調を反映して、対象者ごとに異なる個体内変動を、より迅速に、かつ、精度高く捉えることが可能であり、対象者の健康管理や、一人ひとりの個性にかなった医療の提供に寄与するものとなっている。
また、本発明の健康状態判定方法は、対象者の個人差を考慮したバイタルサインや日々の体調を反映して、対象者ごとに異なる個体内変動を、より迅速に、かつ、精度高く捉えることが可能であり、対象者の健康管理や、一人ひとりの個性にかなった医療の提供に寄与するものとなっている。
【符号の説明】
【0316】
1 健康状態判定装置
1a ソフトウェア
2 演算部
2a 演算部
3 タブレット端末
3a (タブレット端末の)入力部
3b (タブレット端末の)表示画面
3c (タブレット端末の)情報送受信部
4 情報記録部
4a 情報記録部
5 基準算出手段
5a 基準算出手段
6 判定処理手段
6a 判定処理手段
7 個人情報
8 バイタル情報
9 目安時刻情報
10 姿勢情報
11 気温情報
12 スコア判定結果情報
12a バイタル判定結果情報
13 再測定バイタル情報
14 平均値算出手段
15 標準偏差算出手段
16 正規分布算出手段
18 スコア判定基準情報
21a バイタル測定器
21b 体温計
22a スマートフォン端末
22b パーソナルコンピュータ端末(PC端末)
23 情報入力手段
24 情報記録手段
24a 情報記録手段
30a インターネット
32a 情報管理サーバ
32b ソフトウェア
32c ソフトウェア
32d ソフトウェア
50a ユーザ端末
50b 外部端末
60a ユーザ端末
60b 外部端末
70b 管理端末
100 スコアリング処理手段
100a スコアリング処理手段
101 スコアリング基準設定手段
102 スコアリング基準情報
102a バイタル判定基準情報
103 スコア値情報
【要約】
本発明を適用した健康状態判定装置の一例である健康状態判定装置1は、4回の測定値といった短期の個別のバイタルサインを分析し、健康状態の異常を判定する装置である。健康状態判定装置1は、演算部2を備えている。演算部2は、健康状態判定装置1の有する各情報処理機能を実行する処理部である。即ち、本発明を適用したソフトウェアでは、タブレット端末3の演算部2を情報入力手段23、情報記録手段24、基準算出手段5、判定処理手段6等として機能させる。この各手段の処理機能により、情報の送受信、情報の記録、バイタルサインの値における異常の判定、バイタルサインの値に関する異常の判定基準の設定、バイタルサインの値に関する異常の判定結果の通知、バイタル情報の内容に基づくスコアリング、スコアリング条件(スコアリング基準情報)の設定、スコア値情報における異常の判定、スコア値に関する異常の判定基準の設定、スコア値に関する判定結果の通知、表示情報の作成や表示等を行う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28