(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20220325BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A41D13/00 107
A62B35/00 A
(21)【出願番号】P 2017191292
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516264059
【氏名又は名称】株式会社オーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】松井 友香
(72)【発明者】
【氏名】南野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】西村 康治
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0163156(US,A1)
【文献】特表2005-520063(JP,A)
【文献】特開2015-140505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着衣者が着用する衣服本体と、着衣者の墜落を防止するために前記衣服本体に取り付けられた安全帯部と、を備える衣服であって、
前記衣服本体は、着衣者の上半身に着用される上側着用部と、該上側着用部とは分離しており着衣者の下半身に着用される下側着用部と、を有し、
前記安全帯部は、
前記上側着用部に取り付けられ、前記上側着用部が着用された際に着衣者の背部から腹部へ回り込むように着衣者の肩に掛けられる上側ベルト部と、
前記下側着用部に取り付けられ、前記下側着用部が着用された際に着衣者の大腿部を包む下側ベルト部と、
着衣者が前記上側着用部及び前記下側着用部を着用した状態にあるときに前記上側ベルト部と前記下側ベルト部とを連結させるための連結部と、を有
し、
前記連結部は、前記上側ベルト部から延出した延出部分と、該延出部分の先端部に設けられた係合部と、前記下側着用部に設けられた被係合部と、を有し、前記係合部が前記被係合部に係合することで前記上側ベルト部と前記下側ベルト部とを連結し、
前記延出部分は、前記上側ベルト部の前側から下方へ延出し、
前記係合部は、前記上側ベルト部の前側から下方へ露出するように配置され、
前記被係合部は、前記下側着用部の前側表面に配置され、
前記下側着用部の前側の内側表面のうち、前記被係合部が取り付けられている部分の裏側に位置する部分には、上下に延出し、前記下側ベルト部に一部重ねられた状態にある補強ベルトが設けられていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記衣服は、前記上側着用部に取り付けられ、前記着衣者によって用いられる道具を保持しておくための保持リングを有し、
前記保持リングは、前記上側着用部の前側表面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記上側着用部は、袖を有し、該袖に着衣者の腕を通すことで着衣者の上半身に着用され、
前記下側着用部は、股部を有し、該股部に着衣者の脚を通すことで着衣者の下半身に着用され、
前記上側ベルト部は、前記上側着用部の内側に取り付けられており、
前記下側ベルト部は、前記下側着用部の内側に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
前記安全帯部は、着衣者の墜落を防止するために設けられた掛留部が引っ掛けられる環状部を有し、
該環状部は、前記上側着用部の後見頃に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の衣服。
【請求項5】
前記上側ベルト部は、一対設けられており、
前記安全帯部は、一対の前記上側ベルト部間を連絡する連絡ベルト部を有し、
該連絡ベルト部は、該連絡ベルト部が有する二つのベルト端部を連結するバックル部を備え、該バックル部による連結状態を解除することで前記二つのベルト端部が分離するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服に係り、特に、着衣者が着用する衣服本体に安全帯を取り付けることで構成された衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
作業着に安全帯を縫い付ける等して安全帯と作業着とを一体化させることは、既に知られている。その一例としては、特許文献1に記載の衣服が挙げられる。特許文献1に記載の衣服は、背部において交差させて両肩に掛ける肩当て帯と、脚を挿入する環状の脚帯と、臀部に係止する臀掛け帯と、を一体に形成した安全帯に対し、作業服の上着表面であって着衣者の背上部及び背部の中下部等に対応する所要箇所に、肩掛け帯を挿通、離脱させるため面ファスナ等により開閉自在に形成した略ベルト通し状乃至は環状の支持部材を取り付けたものである。このような構成によれば、肩当て帯と脚帯と臀掛け帯とが一体化された安全帯(すなわち、フルハーネス型の安全帯)を効率的に着用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の衣服は、安全帯が取り付けられた上着であり、安全帯を装着するためには、環状の脚帯に足を挿入して臀掛け帯を臀部に係止させてから、上着を着る形になる。かかる手順にて着用しなければならない特許文献1に記載の衣服は、当該衣服を着慣れていない場合には着用に手間が掛かるものとなる。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、着用することにより、着衣者の上半身及び下半身のそれぞれに装着される部分を有する安全帯をより簡単に装着することが可能な衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の衣服によれば、着衣者が着用する衣服本体と、着衣者の墜落を防止するために前記衣服本体に取り付けられた安全帯部と、を備える衣服であって、前記衣服本体は、着衣者の上半身に着用される上側着用部と、該上側着用部とは分離しており着衣者の下半身に着用される下側着用部と、を有し、前記安全帯部は、前記上側着用部に取り付けられ、前記上側着用部が着用された際に着衣者の背部から腹部へ回り込むように着衣者の肩に掛けられる上側ベルト部と、前記下側着用部に取り付けられ、前記下側着用部が着用された際に着衣者の大腿部を包む下側ベルト部と、着衣者が前記上側着用部及び前記下側着用部を着用した状態にあるときに前記上側ベルト部と前記下側ベルト部とを連結させるための連結部と、を有し、前記連結部は、前記上側ベルト部から延出した延出部分と、該延出部分の先端部に設けられた係合部と、前記下側着用部に設けられた被係合部と、を有し、前記係合部が前記被係合部に係合することで前記上側ベルト部と前記下側ベルト部とを連結し、前記延出部分は、前記上側ベルト部の前側から下方へ延出し、前記係合部は、前記上側ベルト部の前側から下方へ露出するように配置され、前記被係合部は、前記下側着用部の前側表面に配置され、前記下側着用部の前側の内側表面のうち、前記被係合部が取り付けられている部分の裏側に位置する部分には、上下に延出し、前記下側ベルト部に一部重ねられた状態にある補強ベルトが設けられていることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の衣服では、互いに分離した上側着用部及び下側着用部を着用することにより、上側ベルト部及び下側ベルト部を装着することが可能となる。つまり、本発明の衣服では、上側ベルト部及び下側ベルト部の各々を個別に装着することが可能であり、各ベルト部の装着が容易になる。また、本発明の衣服では、着衣者が上側着用部及び下側着用部を着用した状態にあるときに、上側ベルト部と下側ベルト部とを連結部によって連結させる。これにより、上側ベルト部と下側ベルト部とを連結してフルハーネス型の安全帯を構成することが可能となる。以上のように本発明の衣服であれば、着用することにより、フルハーネス型の安全帯を簡単に装着することが可能となる。
また上記の構成では、上側ベルト部から延出した延出部分の先端部にある係合部を、下側着用部に設けられた被係合部に係合することで、上側ベルト部と下側ベルト部とが連結する。このような構成であれば、上側ベルト部及び下側ベルト部を容易に連結することが可能となる。この結果、フルハーネス型の安全帯をより簡単に装着することが可能となる。
【0008】
上記の構成において、前記衣服は、前記上側着用部に取り付けられ、前記着衣者によって用いられる道具を保持しておくための保持リングを有し、前記保持リングは、前記上側着用部の前側表面に配置されていると、好適である。
【0009】
上記の構成において、前記上側着用部は、袖を有し、該袖に着衣者の腕を通すことで着衣者の上半身に着用され、前記下側着用部は、股部を有し、該股部に着衣者の脚を通すことで着衣者の下半身に着用され、前記上側ベルト部は、前記上側着用部の内側に取り付けられており、前記下側ベルト部は、前記下側着用部の内側に取り付けられていると、より好適である。
上記の構成では、上側ベルト部及び下側ベルト部の各々が衣服本体の内側に取り付けられている。したがって、衣服本体の外観は、通常の衣服の外観を呈するようになり、本発明の衣服の意匠(見た目)が向上する。
【0010】
上記の構成において、前記安全帯部は、着衣者の墜落を防止するために設けられた掛留部が引っ掛けられる環状部を有し、該環状部は、前記上側着用部の後見頃に取り付けられていると、さらに好適である。
上記の構成では、上側着用部の後見頃に環状部が取り付けられているため、環状部に墜落防止用の掛留部(例えば、ランヤードのフック)を引っ掛け易くなる。
【0011】
上記の構成において、前記上側ベルト部は、一対設けられており、前記安全帯部は、一対の前記上側ベルト部間を連絡する連絡ベルト部を有し、該連絡ベルト部は、該連絡ベルト部が有する二つのベルト端部を連結するバックル部を備え、該バックル部による連結状態を解除することで前記二つのベルト端部が分離すると、より一層好適である。
上記の構成では、一対の上側ベルト部と、その間を連絡する連絡ベルト部とによって着衣者の上半身を良好に保持することが可能となる。また、連絡ベルト部にはバックル部が設けられており、バックル部によって、連絡ベルト部が有する二つのベルト端部が連結されている。そして、上側着用部を着用する際にバックル部を操作して上記二つのベルト端部を分離させれば、連絡ベルト部によって上側着用部の着用が妨げられるのを回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の衣服によれば、着用することにより、着衣者の上半身及び下半身のそれぞれに装着される部分を有する安全帯(フルハーネス型の安全帯)をより簡単に装着することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る衣服を示す図である。
【
図2】衣服の環状部に掛留部を引っ掛けた状態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る衣服本体の上側着用部を前側から見た図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る衣服本体の上側着用部を後側から見た図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る上側着用部の前身頃の内側を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る上側着用部の後見頃の内側を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る衣服本体の下側着用部を前側から見た図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る下側着用部の前身頃の内側を示す図である。
【
図9】連結部によって上側ベルト部と下側ベルト部とが連結された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る衣服について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、当然ながら、本発明にはその等価物が含まれ得る。
【0015】
また、以下において衣服各部の位置や状態、配向方向を説明する際には、着衣者が衣服を着用したケースを想定して説明することとする。また、以下の説明中、「左右方向」とは、衣服を着用した着衣者を正面から見たときの左右方向のことであり、「前後方向」とは、衣服を着用した着衣者にとっての前後方向のことである。また、「外側」とは、衣服において外に露出する側を意味しており、「内側」とは、衣服が着衣者に着用された際に着衣者の身体と向かい合う側を意味している。
【0016】
また、以下では、衣服(厳密には、衣服本体)において着衣者の背部、腹部、胸部及び大腿部と対向する部分を、それぞれ、便宜的に「背部」、「腹部」、「胸部」及び「大腿部」と呼ぶこととする。
【0017】
本実施形態の衣服(以下、衣服X)は、作業着として用いられ、高所作業を実施する着衣者(作業者)によって着用される。衣服Xは、
図1に示すように、上下一組の着用部からなる衣服本体1に、フルハーネス型の安全帯に準拠した構造の安全帯部10を一体化することで構成されている。
図1は、衣服Xを示す図であり、衣服Xを着用した着衣者を正面から見た図である。
【0018】
衣服Xは、着衣者が衣服本体1を着用することにより、フルハーネス型の安全帯と同様の構造の安全帯部10を着衣者の身体に装着させることが可能な構造となっている。つまり、着衣者は、衣服本体1を着用すると同時に安全帯部10を装着することが可能である。
【0019】
また、衣服Xを着用した着衣者は、高所作業を実施するにあたり、
図2に示すように衣服Xの背部に設けられた環状部17に、ランヤードRのフック部Ra(掛留部に相当)を引っ掛ける。ランヤードRの末端部(フック部Raとは反対側の端部)は、不図示の足場や親綱に締結されている。これにより、衣服Xの着衣者が高所作業中に墜落するのを防止することが可能となる。なお、
図2は、衣服Xの環状部17にランヤードRのフック部Raを引っ掛けた状態を示す図である。
【0020】
衣服X各部の構成について既出の
図1及び
図3~
図9を参照しながら説明する。
図3は、衣服本体1の上側着用部2を前側から見た図であり、
図4は、上側着用部2を後側から見た図である。
図5は、上側着用部2の前身頃2bの内側を示す図であり、
図6は、上側着用部2の後見頃2cの内側を示す図である。
図7は、衣服本体1の下側着用部5を前側から見た図である。
図8は、下側着用部5の前身頃5bの内側を示す図である。
図9は、連結部20によって上側ベルト部11と下側ベルト部16とが連結された状態を示す図である。なお、
図9では、安全帯部10を実線にて図示し、それ以外(具体的には衣服本体1)を破線にて図示している。
【0021】
衣服本体1は、着衣者が着用する部分であり、ジャケット型の上側着用部2と、ズボン型の下側着用部5とを有する。上側着用部2は、
図3及び
図4に示すよう左右一対の袖2aを備え、それぞれの袖2aに着衣者の腕を通すことで着衣者の上半身に着用される。本実施形態の上側着用部2は、前身頃2bの左右中央部に設けられたファスナを開閉することで前開き状態(展開状態)と前閉じ状態(使用状態)との間で状態を切り替えることが可能である。
【0022】
上側着用部2の前身頃2bの外側には、
図3に示すように、胸部及び腹部の各々に保持リング4が左右対称に設けられている。保持リング4は、着衣者が所持する道具(例えば、ランヤードR、ヘルメット及び工具入れ袋)を上側着用部2に吊るした状態で保持しておくための環状の金具である。なお、本実施形態において、各保持リング4は、上側着用部2の前身頃2bに縫い付けられた袋状の帯体に通されることで上側着用部2に取り付けられている。
【0023】
また、上側着用部2の後見頃2cの外側には、
図4に示すように、前述の環状部17が取り付けられている。環状部17は、着衣者の墜落を防止するために設けられたランヤードRのフック部Ra(掛留部)が引っ掛けられる金具である。なお、本実施形態において、環状部17は、上側着用部2の後見頃2cの背部に縫い付けられた布体に筒状部分を設け、当該筒状部分に通されることで上側着用部2に取り付けられている。
【0024】
下側着用部5は、
図7に示すように股部5aを備え、股部5aに着衣者の脚を通すことで(すなわち、穿くことで)着衣者の下半身に着用される。また、下側着用部5は、上側着用部2とは分離している。したがって、衣服本体1を着用する際には、上側着用部2及び下側着用部5を別々に着用することになる。
【0025】
また、下側着用部5の前身頃5bの外側には、後述する連結部20の被係合部23が左右一対の各々の大腿部に取り付けられている。この被係合部23は、環状(厳密には、D字状)の金具であり、下側着用部5の前身頃5bに縫い付けられた袋状の帯体に通されることで下側着用部5に取り付けられている。
【0026】
安全帯部10は、衣服Xの着衣者の墜落を防止するために衣服本体1に取り付けられたものであり、前述したように、衣服本体1と一体化している。また、安全帯部10は、フルハーネス型の安全帯と同様の構成となっており、
図1に示すように、着衣者の上半身に装着される部分と、着衣者の下半身に装着される部分と、これらの部分を連結する連結部20と、を有する。
【0027】
安全帯部10のうち、着衣者の上半身に装着される部分は、
図5及び
図6に示すように、左右一対の上側ベルト部11と、上下一対の連絡ベルト部12とを有する。
左右一対の上側ベルト部11は、上側着用部2に取り付けられ、上側着用部2が着用された際(厳密には、上側着用部2の袖2aに着衣者の腕が通された際)に着衣者の背部から腹部へ回り込むように着衣者の肩に掛けられるベルト体である。
【0028】
より詳しく説明すると、上側ベルト部11は、左右方向において一対設けられている。各上側ベルト部11は、
図5及び
図6に示すように、上側着用部2の前身頃2bから後見頃2cに亘って上側着用部2の内側に縫い付けられている。上側ベルト部11のうち、上側着用部2の前身頃2bに縫い付けられている部分は、
図5に示すように、上側着用部2の上端(襟元)から下端まで略真っ直ぐ延出している。上側ベルト部11のうち、上側着用部2の後見頃2cに縫い付けられている部分は、
図6に示すように、上側着用部2の上端(肩部の上端)から下端に向かって斜めに延出して、襷掛け状に交差している。なお、上側着用部2の後見頃2cにおいて上側ベルト部11同士が交差している部分は、上側着用部2の背部中央部に取り付けられたベルト通し部材18に通されている。
【0029】
また、上側着用部2の後見頃2cに縫い付けられた上側ベルト部11の各々は、ベルト通し部材18よりも下方に延出し、その先端部(下端部)が下側の連絡ベルト部12に縫い付けられて固定されている。より厳密に説明すると、上側着用部2の後見頃2cに縫い付けられた各上側ベルト部11の下端部は、下側の連絡ベルト部12の後面に当接すると共に、
図6に示すように、下側の連絡ベルト部12の下端位置で折り曲げられ下側の連絡ベルト部12の前側に回り込んでいる。かかる状態で、上側着用部2の後見頃2cに縫い付けられた各上側ベルト部11の下端部が下側の連絡ベルト部12に縫合されている。
【0030】
また、上側着用部2の前身頃2bに縫い付けられた各上側ベルト部11の下端部には、
図5に示すように、上側ベルト部11の下端部から延出した延出部分21が縫い付けられている。この延出部分21は、上側ベルト部11と同じ材質のベルト体からなり、上側ベルト部11と同様、左右一対設けられている。なお、本実施形態において、延出部分21は、
図5及び
図6に示すように、延出部分21の先端部が上側着用部2の下端から十分に突出する程度に延出している。
【0031】
また、延出部分21の先端部(上側ベルト部11に縫い付けられている側とは反対側の端部)には、リング状の係合部22が取り付けられている。この係合部22は、カラビナ等の可動部付き金具からなり、通常時には環状をなしているが、可動部を動かすと可動部とそれ以外の部分が分離して隙間が形成されることで他の部材(具体的には、環状をなす他の部材)に引っ掛けることが可能である。なお、本実施形態において、係合部22は、延出部分21の先端部を袋状に折り曲げた状態で延出部分21の重なり部分を縫い合わせ、袋状となった延出部分21の先端部に通されることで延出部分21に取り付けられている。
【0032】
上下一対の連絡ベルト部12の各々は、着衣者の前方位置で、左右一対の上側ベルト部11の間を連絡するベルト体である。より上方の連絡ベルト部12(以下、上側の連絡ベルト部12)は、
図1に示すように、着衣者の胸部の前方位置で上側ベルト部11間を連結している。より下方の連絡ベルト部12(以下、上側の連絡ベルト部12)は、
図1に示すように、着衣者の腹部の前方位置で上側ベルト部11間を連絡している。
【0033】
上側の連絡ベルト部12は、左右一対の上側ベルト部11の間に位置している。具体的に説明すると、上側の連絡ベルト部12の一端が一方の上側ベルト部11に縫合されており、他端がもう一方の上側ベルト部11に縫合されている。また、上側の連絡ベルト部12の左右中央部分には、分割可能なバックル部15が設けられている。このバックル部15は、ワンタッチで分割可能な公知の差し込み式のプラスチックバックルであり、二つの断片(分割断片)によって構成されている。
【0034】
また、バックル部15には、上側の連絡ベルト部12が左右中央部に有する二つのベルト端部13,14(上側ベルト部11に縫合されている側とは反対側の端部)が取り付けられている。厳密には、バックル部15を構成する二つの分割断片のうちの一方に一つのベルト端部13が取り付けられており、他方にもう一つのベルト端部14が取り付けられている。
以上のように構成された上側の連絡ベルト部12において、バックル部15を分割すると、上記二つのベルト端部13,14の連結状態が解除され、ベルト端部13,14同士が互いに分離するようになる。反対に、分離したバックル部15の断片同士を結合させると、二つのベルト端部13,14が連結し、上側の連絡ベルト部12が上側ベルト部11の間を連絡するようになる。
【0035】
下側の連絡ベルト部12は、左右一対の上側ベルト部11の間を連絡すると共に、着衣者が上側着用部2を着用した際に着座者の腹部を包む。すなわち、下側の連絡ベルト部12は、連絡ベルト部12本来の機能と共に、胴ベルトとしての機能をも備えている。下側の連絡ベルト部12は、上側着用部2の前身頃2b及び後見頃2cの双方に縫合されている。より厳密に説明すると、下側の連絡ベルト部12が有する二つのベルト端部13,14が上側着用部2の前身頃2bの左右中央部に配置されており、ベルト端部13,14間に位置する部分は、前身頃2bから後見頃2cに回り込み、その後に後見頃2cから前身頃2bに再び戻るように周回している。
【0036】
また、下側の連絡ベルト部12の左右中央部には、バックル部15が設けられており、このバックル部15に、下側の連絡ベルト部12が有する二つのベルト端部13,14が取り付けられている。下側の連絡ベルト部12に設けられたバックル部15は、一般的なベルトバックルからなり、バックル本体と、バックル本体に差し込まれる差し込み部と、によって構成されている。そして、バックル本体に一つのベルト端部13が取り付けられており、差し込み部にもう一つのベルト端部14が取り付けられている。
以上のように構成された下側の連絡ベルト部12において、バックル本体から差し込み部を抜き出すと、バックル部15による連結状態が解除され、上記二つのベルト端部13,14が互いに分離するようになる。反対に、バックル本体に差し込み部が差し込まれた状態では、二つのベルト端部13,14が連結し、下側の連絡ベルト部12が上側ベルト部11の間を連絡するようになる。
【0037】
安全帯部10のうち、着衣者の下半身に装着される部分は、
図8に示すように、左右一対の下側ベルト部16を有する。左右一対の下側ベルト部16は、下側着用部5の股部5aに取り付けられ、下側着用部5が着用された際(具体的には、股部5aに着衣者の脚が通された際)に着衣者の大腿部を包み込む。より詳しく説明すると、下側ベルト部16は、左右方向において一対設けられている。各下側ベルト部16は、一本のベルト体からなり、下側着用部5の前身頃5bから後見頃5cに亘って下側着用部5の内側に縫い付けられている。つまり、下側ベルト部16は、下側着用部5の前身頃5bから後見頃5cに回り込み、その後に後見頃5cから前身頃5bに再び戻るように周回している。
なお、下側着用部5において、下側ベルト部16は、股部5aの股下部よりも若干下方位置に縫い付けられているのが望ましい。
【0038】
また、下側着用部5の前身頃5bの内側表面のうち、被係合部23が取り付けられている部分の裏側に位置する部分には、
図8に示すように、上下に幾分延出している補強ベルト19が縫い付けられている。この補強ベルト19は、下側着用部5のうち、被係合部23が取り付けられている部分の強度を向上させるために設けられており、下側ベルト部16と同じ材質のベルト体にて構成されている。また、補強ベルト19の下端部は、
図8に示すように下側ベルト部16に重ねられた状態で下側ベルト部16に縫い付けられている。これにより、被係合部23に掛かる力(厳密には、係合部22が被係合部23に係合した状態で被係合部23に掛かる力)を、補強ベルト19を通じて下側ベルト部16へ分散させることが可能となる。
【0039】
安全帯部10が有する連結部20について説明すると、連結部20は、着衣者が上側着用部2及び下側着用部5を着用した状態にあるときに上側ベルト部11と下側ベルト部16とを連結させるためのものである。連結部20は、
図9に示すように、延出部分21と係合部22と被係合部23とを有する。延出部分21は、上側着用部2に縫い付けられた左右一対の上側ベルト部11の各々から延出している。係合部22は、延出部分21の先端部に設けられており、被係合部23に係合可能な環状金物である。被係合部23は、下側着用部5における左右一対の大腿部にそれぞれ設けられるように、下側着用部5の外側表面(具体的には、下側着用部5の前身頃5bの外側表面)に取り付けられている。
【0040】
以上のように構成された連結部20は、着衣者が上側着用部2及び下側着用部5を着用した後に操作されることで、左右一対の上側ベルト部11の各々と左右一対の下側ベルト部16の各々とを連結する。具体的に説明すると、
図9に示すように、各延出部分21の先端部に設けられた係合部22を左右一対の被係合部23のうち、対応する被係合部23(より近い方の被係合部23)に引っ掛けて係合する。これにより、連結部20が左右一対の上側ベルト部11の各々と左右一対の下側ベルト部16の各々とを連結するようになる。このように上側ベルト部11と下側ベルト部16が連結した結果、安全帯部10が、上下に分離された状態から一つの機器としてまとまった状態となり、フルハーネス型の安全帯と同様の機能を発揮するようになる。
【0041】
以上のように本実施形態では、ジャケット型の上側着用部2及びズボン型の下側着用部5をそれぞれ着用することで、着衣者は、上側ベルト部11及び下側ベルト部16を装着することが可能である。また、着衣者は、上側着用部2及び下側着用部5を着用した後、前述した手順により上側ベルト部11と下側ベルト部16とを連結部20によって連結させる。これにより、それまで分離していた上側ベルト部11及び下側ベルト部16が連結して一つの安全帯部10を構成し、フルハーネス型の安全帯と同様の機能を発揮するようになる。このような構成により、本実施形態の衣服Xによれば、従来のフルハーネス型の安全帯に比べ、それと同様の構造の安全帯部10をより簡単に装着することが可能となる。
【0042】
また、反対に、本実施形態の衣服Xによれば、従来のフルハーネス型の安全帯に比べ、それと同様の構造の安全帯部10をより簡単に取り外すことが可能である。具体的に説明すると、連結部20の係合部22を被係合部23から外して上側ベルト部11と下側ベルト部16との連結状態を解除した後、上側着用部2及び下側着用部5を脱ぐことにより、安全帯部10を取り外すことが可能となる。なお、このとき、上側着用部2及び下側着用部5のうちのいずれか一方を脱ぐことも可能である。すなわち、安全帯部10のうち、脱いだ着用部に取り付けられている部分のみを取り外すことが可能である。
【0043】
また、本実施形態において、安全帯部10のうち、衣服本体1に縫い付けられている部分(具体的には、上側ベルト部11、下側のバックル部15、及び下側ベルト部16)は、衣服本体1の内側に縫い付けられている。このため、衣服Xは、通常の作業着と同様の外観を呈しており、良好な見た目(意匠)をなしている。
【0044】
また、安全帯部10各部を構成するベルト体の材質については、特に制限されるものではないが、例えば、乗物等に使用されるシートベルトのウェビングと同様の材質(具体的には、引張り強度に優れたポリエステル繊維)を用いると良い。かかる材質のベルト体であれば、比較的に軽量で薄厚であり、しなやかで肌に馴染む一方で、十分な強度を有する。このため、上記材質のベルト体で安全帯部10を構成すれば、当該安全帯部10が安全帯としての機能を適切に発揮するようになる。
また、廃棄された乗物に搭載されたシートベルトのウェビングの端材を安全帯部10の材料として利用すれば、環境面でも好適である。
【符号の説明】
【0045】
1 衣服本体
2 上側着用部
2a 袖
2b 前身頃
2c 後見頃
3 スリット孔
4 保持リング
5 下側着用部
5a 股部
5b 前身頃
5c 後見頃
6 袋状部
10 安全帯部
11 上側ベルト部
12 連絡ベルト部
13,14 ベルト端部
15 バックル部
16 下側ベルト部
17 環状部
18 ベルト通し部材
19 補強ベルト
20 連結部
21 延出部分
22 係合部
23 被係合部
R ランヤード
Ra フック部(掛留部)
X 衣服