(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】ギヤ切削機械の機械ジオメトリを測定する方法並びにギヤ切削機械、測定デバイスおよびソフトウェアモジュールを備えた装置
(51)【国際特許分類】
B23F 23/12 20060101AFI20220325BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20220325BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
B23F23/12
B23Q17/20 A
B23Q17/00 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017073685
(22)【出願日】2017-04-03
【審査請求日】2020-02-21
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596043494
【氏名又は名称】クリンゲルンベルク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Klingelnberg AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート・ミューラー
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-131819(JP,A)
【文献】特開平10-235538(JP,A)
【文献】特開2013-136106(JP,A)
【文献】実開昭58-008524(JP,U)
【文献】特開昭55-152412(JP,A)
【文献】特開昭58-051017(JP,A)
【文献】特開平02-116416(JP,A)
【文献】特開平05-116056(JP,A)
【文献】特開平07-136845(JP,A)
【文献】特開2006-062026(JP,A)
【文献】特開2006-326825(JP,A)
【文献】特表2008-543582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0215342(US,A1)
【文献】特開昭50-031488(JP,A)
【文献】特開昭64-082203(JP,A)
【文献】特開平06-106455(JP,A)
【文献】特開平07-124849(JP,A)
【文献】特開平09-026811(JP,A)
【文献】特開2011-003126(JP,A)
【文献】米国特許第4481589(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12
B23Q 17/00-23/00
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのギヤ切削機械(10)の機械ジオメトリを測定するための方法であって、
a)実データを決定するために測定デバイス(20)内のワークピース(1)を測定するステップ(S1、S3)であって、ワークピース(1)は、仕様データ(VD、ΔVD、MD、ΔMD)に基づいて、機械(10)の中で前もって機械加工されたものに関するものであるステップ(S1、S3)と、
b)実データと仕様データ(VD、ΔVD、MD、ΔMD)との相関を取ることによって、機械(10)の少なくとも1つの軸(X)の幾何学的設定の偏差(X
*)を決定するステップと、
c)幾何学的設定の偏差(X
*)を記憶するステップと、
d)機械(10)の中で更なるワークピース(1)を機械加工した後に、ステップa)~c)を繰り返すステップと、
e)いくつかの記憶された偏差の統計的評価を実行し、所定の条件および/またはルールを考慮することによって機械(10)の軸(X)の幾何学的変化を決定するステップ(S4、S5)と、を有
し、
ステップe)の範囲内で、m個の数のワークピース(1)の統計的長期評価(S4)およびn個の数のワークピース(1)の統計的短期評価(S5)が実行され、ここでn<mが当てはまることを特徴とする、方法。
【請求項2】
軸(X)の参照寸法の変化は、規則的または不規則な間隔で決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
時間に関してより古い参照寸法と比較して、参照寸法の明確な変化があった場合
、
-音による警告を発するステップ、
-ディスプレイ(12、33)上の通知としての、可視的な警告を発するステップ、
-メッセージを投稿するステップ、および
-電子メールメッセージを発信するステップ、
のうちの少なくとも1つを含む動作(S7)が開始されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
明確な変化の存在を定義する条件またはルールが満たされたか否かを決定するために、統計的長期評価(S4)が、統計的短期評価(S5)に関連付けられる(S6)ことを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのギヤ切削機械(10)の機械ジオメトリを測定するための方法であって、
a)実データを決定するために測定デバイス(20)内のワークピース(1)を測定するステップ(S1、S3)であって、ワークピース(1)は、仕様データ(VD、ΔVD、MD、ΔMD)に基づいて、機械(10)の中で前もって機械加工されたものに関するものであるステップ(S1、S3)と、
b)実データと仕様データ(VD、ΔVD、MD、ΔMD)との相関を取ることによって、機械(10)の少なくとも1つの軸(X)の幾何学的設定の偏差(X
*
)を決定するステップと、
c)幾何学的設定の偏差(X
*
)を記憶するステップと、
d)機械(10)の中で更なるワークピース(1)を機械加工した後に、ステップa)~c)を繰り返すステップと、
e)いくつかの記憶された偏差の統計的評価を実行し、所定の条件および/またはルールを考慮することによって機械(10)の軸(X)の幾何学的変化を決定するステップ(S4、S5)と、を有し、
-統計的な主最大値(μ)に加えて統計的な第2最大値(μ
1)があり、かつ統計的な主最大値(μ)が統計的な第2最大値(μ
1)と等しくないこと、
-統計的な主最大値(μ)に加えて統計的な第2最大値(μ
1)があり、かつ統計的な主最大値(μ)と統計的な第2最大値(μ
1)との間に少なくとも20%の偏差があること、
-統計的長期正規分布に対する分散(σ)があり、かつ統計的な第2最大値(μ
1)が次の式で定義されるウインドウ(F)の外側にあること、
μ-σ<F<μ+σ
-第1主最大値(μ)を有する統計的長期正規分布に加えて第2主最大値(μ
1)を有する統計的短期正規分布があり、第1主最大値(μ)が第2主最大値(μ
1)と異なる符号を有すること、
-統計的長期正規分布に対する分散(σ)があり、この分散(σ)が傾向を示すこと、
-いかなる正規分布も許容しない統計的短期評価があること、
-絶対的または相対的な閾値を超える統計的短期評価があること、
という条件のうちの1つまたはいくつかが満たされているか否かを決定することを特徴とす
る方法。
【請求項6】
少なくとも1つのギヤ切削機械(10)の機械ジオメトリを測定するための方法であって、
a)実データを決定するために測定デバイス(20)内のワークピース(1)を測定するステップ(S1、S3)であって、ワークピース(1)は、仕様データ(VD、ΔVD、MD、ΔMD)に基づいて、機械(10)の中で前もって機械加工されたものに関するものであるステップ(S1、S3)と、
b)実データと仕様データ(VD、ΔVD、MD、ΔMD)との相関を取ることによって、機械(10)の少なくとも1つの軸(X)の幾何学的設定の偏差(X
*
)を決定するステップと、
c)幾何学的設定の偏差(X
*
)を記憶するステップと、
d)機械(10)の中で更なるワークピース(1)を機械加工した後に、ステップa)~c)を繰り返すステップと、
e)いくつかの記憶された偏差の統計的評価を実行し、所定の条件および/またはルールを考慮することによって機械(10)の軸(X)の幾何学的変化を決定するステップ(S4、S5)と、を有し、
-時間ウインドウ内で突発的な変化を示す少なくとも2つの時間曲線(W1、W2、W3およびW4)があること、
-変化の高さが時間図の中で統計的長期評価の平均値から少なくとも20%逸脱している、突発的な変化を示す少なくとも2つの時間曲線(W1、W2、W3およびW4)があること、
-ゼロを通過する少なくとも2つの時間曲線(W1、W2、W3およびW4)があること、
というルールのうちの1つまたはいくつかが満たされているか否かを決定することを特徴とす
る方法。
【請求項7】
明確な変化の存在を定義する条件またはルールが満たされた場合
、
-音による警告を発するステップ、
-ディスプレイ(12、33)上の通知としての、可視的な警告を発するステップ、
-メッセージを投稿するステップ、および
-電子メールメッセージを発信するステップ、
のうちの少なくとも1つを含む動作(S7)が開始されることを特徴とする請求項
4~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ギヤ切削機械(10)および測定デバイス(20)のうちの少なくとも1つを有する装置(100)であって、解析モジュール(SM)を含み、または解析モジュール(SM)に接続されるように設計され、解析モジュール(SM)は、少なくとも、
-機械(10)によりあらかじめ処理されたワークピース(1)について、測定デバイス(20)によって実行されたm個の測定に基づいて決定された機械(10)の幾何学的なデータの統計的長期評価を実行するステップ(S4)と、
-機械(10)によりあらかじめ処理されたワークピース(1)について、測定デバイス(20)によって実行されたn個の測定に基づいて決定された機械(10)の幾何学的なデータの統計的短期評価を実行するステップであって、n<mであるステップ(S5)と、
-機械(10)の少なくとも1つの軸(X)の幾何学的な変化を決定するために、統計的長期評価(S4)と統計的短期評価(S5)を関連付けるステップ(S6)と、
を実行するように、またはこれらの動作を開始するように形成されていることを特徴とする装置(100)。
【請求項9】
解析モジュール(SM)は、幾何学的な変化が生じたか否かを、少なくとも1つの所定の条件および/または所定のルールの考慮の下で決定するように形成されていることを特徴とする請求項
8に記載の装置(100)。
【請求項10】
解析モジュール(SM)は、幾何学的な変化が決定された場合、
-音による警告の出力、
-ディスプレイ(12、33)上の通知としての、可視的な警告の出力、
-メッセージ(N)の投稿、および/または、
-電子メールメッセージの発信、
の動作(S7)のうちの1つを開始させるように形成されていることを特徴とする請求項
8または請求項
9に記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤ切削機械の機械ジオメトリを測定する方法と、ギヤ切削機械、測定デバイスおよびソフトウェアモジュールを備え、機械ジオメトリを測定するために形成された装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術のギヤ切削機械10(例えば、ギヤカッターまたはギヤ研削機)および(ここでは分離した測定装置の形態で設けられた)従来技術の測定デバイス20(例えば、座標測定デバイス)の概略的な図を示している。ギヤ製造機10および測定デバイス20は、両方向の矢印13によって示されているように、互いに結合可能である。結合(coupling)という用語は、機械10および測定デバイス20が少なくとも通信に関して(すなわち、データ交換のために)結合されていることを示すために使用される。通信による結合(ネットワーク形成としても知られている)は、機械10および測定デバイス20が同一のまたは互換性のある通信プロトコルを理解すること、および双方がデータ交換に関する特定の規則に従うことを必要とする。
【0003】
結合という用語は、機械10と測定デバイス20とがネットワーク接続されているだけでなく、機械的に相互に接続されまたは完全に一体化されていることをも意味することができる。
【発明の概要】
【0004】
機械10および測定デバイス20は、閉じた機械加工および通信の回路(閉ループとして知られている)を形成することもできる。
【0005】
機械10の様々な軸および/または測定デバイス20の様々な軸は、例えば、共通のNC制御ユニット40によって制御することができる。NC制御ユニット40によって制御される軸は、数値制御軸に関係する。このような配置によって、個々の軸の動きを、NC制御ユニット40によって数値制御することができる。機械10の軸および/または測定デバイス20の軸の個々の移動シーケンスが、協調的な方法で行われることが重要である。この協調は、NC制御ユニット40によって実行される。
【0006】
また、機械10および測定デバイス20の両方に別個のNC制御ユニットをそれぞれ設けることも可能である。この場合、例えば、NC制御ユニット間のデータ交換のためにネットワーク形成を確立することができる。
【0007】
ギヤホイールの設定から製造までの典型的な手順およびその後の測定は、
図2を参照して説明される。それは、ブロック表現の非常に概略的な図に関する。同様の結果をもたらす他のアプローチもある。
【0008】
適切なソフトウェアSWを用いて(例えば、ドイツのKlingelnberg GmbH社の設定ソフトウェアKiMoS(商標)を用いて)、ギヤホイールまたはギヤホイールのペア(本明細書の中で一般的にワークピース1と呼ばれる)が構成される。ソフトウェアSWは、例えば、設定プロセスの終了時点のワークピース1のデータを提供することができる。これらのデータは、例えば、連続して生産されるワークピース1の形状と、この目的に必要な機械運動学を定義する。機械運動学は、例えば、使用される機械10の(データ)モデルに基づいて計算することができる。
【0009】
製造されまたは機械加工されるワークピース1のジオメトリをあらかじめ決定するための他の手法もあるので、以下では、各データについて仕様データVDの総称が使用される。仕様データVDは、少なくとも製造されるワークピース1のジオメトリ(マクロジオメトリ)を記述するように定義される。仕様データVDは、更に、例えば数学的な歯の接触解析に基づいて決定されたミクロジオメトリをも記述することができる。仕様データVDは、機械運動学を更に記述することができ(そこではギヤ製造方法と機械10の設定値との運動学的関係は、例えば、使用される機械10のモデルに基づいて決定される)、または機械運動学は、追加的な(別個の)データ記録の形で提供される。仕様データVDは、ミクロジオメトリの代わりに、機械運動学を単に記述することもできる。
【0010】
図2に示されているように、仕様データVDは、例えばプロセスP(例えば、ドイツのKlingelnberg GmbH社のソフトウェアCOP(商標))に転送される。プロセスPは、例えばソフトウェアモジュールとして実現されるが、示されている例では、仕様データVDを機械データMD(部分的には機械コードまたはプロセスデータとも呼ばれる)に変換し、機械データMDは、機械10のNC制御ユニットによって協調動作シーケンスに変換される。
【0011】
具体例によると、
図2に示されているように、選択的な経路14を通って、機械運動学と共に適切な機械10に直接的に仕様データVDを伝達することもできる。
【0012】
ここで機械10は、機械データMDに基づいてあらかじめ定められたように、ワークピース1を処理する。一旦この機械加工(ここではギヤ切削とも呼ばれる)が完了すると、ワークピース1は、(直接的または間接的に)測定デバイス20に移される。所定の測定シーケンスは、測定デバイス20の中で実行され、ワークピース1の現在の値(ここでは実データと呼ばれる)のうちの1つまたはいくつかがデフォルト設定値(この場合は仕様データVD)と一致するか否かを確認する。理想的には、ワークピース1は、設定と完全に一致する。すなわち、実データは、仕様データVDに一致する。この場合、純粋に理論に適合するが、例えば、機械データMDを格納して、更に同一のワークピース1のギヤリングを(例えば連続して)製造することができる。
【0013】
しかし実際には、実データと仕様データVDとの間の偏差(ここではΔVDで指定される)は、測定中に決定される。例えば測定デバイス20によって、これらの偏差ΔVDをプロセスPに供給することができる(この場合、
図2の中に経路15によって示されるように、仕様データVDも測定デバイス20に転送されなければならない)。具体例によると、プロセスPは、例えば機械10の制御のための修正値ΔMDを決定し、それらを機械10に転送することができる。しかし、プロセスPは、測定デバイス20によって提供される測定値からの偏差ΔVDを決定することもできる。
【0014】
機械10は、以前に歯を付けられて測定されたワークピース1を(修正値を考慮することによって)再加工することができ、または修正値ΔMDは、次のワークピース1の機械加工から考慮される。
【0015】
このようなネットワーク機械加工環境100において実行されるシーケンスは、現在のところ、非常に精密でありかつ安定している。複雑なギヤの歯は、現在のところ、迅速、正確かつ費用対効果の高い方法で製造することができる。
【0016】
前述の偏差ΔVDは、機械10の幾何学的設定を数学的に調整するために使用することができる。これが可能なのは、記載された手法では、幾何学的設定を運動学的な値から分離することができるからである。3つのNC制御された直線軸X、Y、ZおよびNC制御された旋回軸Cを備えた機械10の場合、仕様データVDを、例えば直接的に軸X、Y、ZおよびCの幾何学的設定に変換することができる。ここで偏差ΔVDが存在する場合、そのような偏差ΔVDは、修正された軸の幾何学的設定に変換できる。これらの修正された軸の幾何学的設定は、本明細書ではX*、Y*、Z*およびC*と指定される。
【0017】
これは、実質的に、次のように参照寸法(reference dimensions)を変更する。
ΔXref=X*-X
ΔYref=Y*-Y
ΔZref=Z*-Z
ΔCref=C*-C
【0018】
説明された閉ループ手法だけでなく、他の同様にネットワーク接続された解決策も、機械10の参照寸法の漸進的な最適化を可能にする。
【0019】
目的は、機械または機械加工環境の変化を確実かつ適時に判断するための技術的な手法を提供することである。
【0020】
この目的は、請求項1に記載の方法によって本発明により達成される。本発明の有利な具体例は、従属請求項の主題を形成する。この目的はまた、(機械加工環境と呼ばれる)請求項10に記載の装置によって本発明により達成される。
【0021】
本発明は、統計的長期評価および統計的短期評価を提供すること、およびこれらの2つの評価を相関関係の中に置くことに基づく。ルールおよび/または条件は、相関を取る際に適用され、定義に従って明確な偏差があるか否かを判断する。
【0022】
統計的長期評価および統計的短期評価並びにこれらの2つの評価の相関関係の提供は、すべての具体例の中で解析モジュールによって実行される。
【0023】
解析モジュールという用語は、ここでは、機能グループを記述するために使用され、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せとして実現される。すべての具体例において、ソフトウェアモジュールの形態の解析モジュールが使用されることが好ましいが、そのモジュールは、適切なコンピュータにインストールされるように構成され、本発明による方法のステップを実行し、および/またはそれらの動作を制御する。上記のコンピュータおよび解析モジュールは、すべての具体例において、機械および/または測定デバイスの一部であってもよい。
【0024】
好適には、統計的短期評価は、スライド統計的評価(sliding statistical evaluation)に関するが、これは所定の数の新しい測定値または所定の時間フレーム内の最新の測定値のみを考慮するものである。
【0025】
本発明の機械および測定デバイスは、好適にはすべての具体例において、解析モジュールにネットワーク接続されるか、またはネットワーク接続され得る。
【0026】
本発明の機械および測定デバイスは、ネットワーク接続されるだけでなく、機械的にまたは完全に一体化して互いに接続されることもできる。
【0027】
機械および測定デバイスは、閉じた機械加工および通信の回路(閉ループとして知られている)を形成することもでき、解析モジュールは、通信目的のために、機械加工および通信の回路に接続できる。
【0028】
本発明はまた、ギヤの歯の設計から製造および検査までのシーケンスを最適化すること、および早期にかつ安全な方法で不良を認識可能にすることにも関する。
【0029】
本発明は、特に、ネットワーク接続された製造プロセス(ネットワーク機械加工環境としても知られている)の中で使用することができ、どんな時にも、適切かつ時宜を得た方法で、変化に反応することを可能にする。
【0030】
この事例の中で使用されるデータは、すべての具体例において、関係している構成要素(例えば、ギヤ切削機械および測定デバイス)の間で直接的に交換することができ、またはそれらは、例えば、ネットワークの中の開発データベース内または製造データベース内に提供することができ、必要に応じてそこから読み出すことができる。
【0031】
参照番号のリストは、本開示の構成要素である。
【0032】
図面は、文脈の中で、かつ包括的に記載される。図面を参照することにより、本発明の具体例をより詳細に以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】通信手段によって互いに接続された従来のギヤ切削機械および測定デバイスの概略図を示す。
【
図2】示されている具体例ではギヤ切削機械、測定デバイス、ソフトウェアおよびプロセスを含んでいる、従来技術の機械加工環境の概略的なブロック図を示す。
【
図3】参照寸法の変化の頻度および機械の正規分布の各曲線が記入された概略図を示す。
【
図4】一方では
図3の図の詳細が記入され、他方では突発的な変化の詳細が記入された概略図を示す。
【
図5A】示されている例では測定デバイス、ソフトウェア、プロセスおよび解析モデル(ここではポータブルコンピュータの中にある)を含んでいる、本発明の例示的なネットワーク機械加工環境の概略的なブロック図を示す。
【
図5B】第1(据置型)コンピュータおよび第2(ポータブル)コンピュータ上の解析モジュールの例示的な実装の概略的なブロック図を示す。
【
図6A】一方では参照寸法の変化の頻度および機械のX軸の正規分布のそれぞれの曲線が記入され、他方では突発的な変化の詳細が記入された概略図を示す。
【
図6B】一方では参照寸法の変化の頻度および機械のY軸の正規分布のそれぞれの曲線が記入され、他方では突発的な変化の詳細が記入された概略図を示す。
【
図6C】一方では参照寸法の変化の頻度および機械のZ軸の正規分布のそれぞれの曲線が記入され、他方では突発的な変化の詳細が記入された概略図を示す。
【
図6D】一方では参照寸法の変化の頻度および機械のC軸の正規分布のそれぞれの曲線が記入され、他方では突発的な変化の詳細が記入された概略図を示す。
【
図8】
図7A~
図7Dの時間図を示し、およびメッセージを表示するポータブルコンピュータの概略的なブロック図を示す。
【
図9】本発明の更なる具体例の概略的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
関連する刊行物および特許の中でも使用されている用語は、本説明に関連して使用される。しかし、これらの用語の使用は、より良い理解のためにのみ提供される。特許請求の範囲の発明概念および保護の範囲は、用語の特定の選択による解釈に限定されるものではない。本発明は、他の概念および/または専門分野のシステムに容易に移行することができる。これらの用語は、他の専門分野の中で同様に適用される。
【0035】
前述の参照寸法の変化(すなわち、機械10の設定の幾何学的な変化)は、時間tの間中考慮され、例えば統計的方法を使用することによって評価される。これは、簡単な例を参照することによって以下に説明される。
【0036】
例えば、偏差ΔVDが1つの偏差のみを示し、例えば機械10のX軸の変位(例えば、温度の影響による膨張)を示すものであると仮定すると、この特別な場合には、参照寸法の変更に次の式が適用される。
ΔXref=X*-X≠0
ΔYref=0
ΔZref=0
ΔCref=0
【0037】
図3では、より長時間にわたるX軸の参照寸法の変化を伴う各機械10の統計的評価が、一例として概略図で示されている。X軸の参照寸法の変化kは、図の水平軸上にミリメートル単位で記入され、統計的頻度f(k)は、垂直軸上に示されている。この例では、一種の正規分布が得られ、これは曲線Gとして示されている。曲線Gは、およそμ=-0.007mmに最大値を有する。すなわち、m(mは0より大きい自然数)個の製造プロセスにわたって平均すると、機械10のX軸は、実際よりも0.007mmだけ短い。
図3はまた、分散σを示している。統計的計算のために例として使用された式は次の通りである。
【0038】
本発明は、主に標準からの偏差の決定に関する。
図4の図は、m個の製造プロセスのより長時間にわたるX軸の参照寸法の変化を伴う機械10の統計的評価を再び示している。
図4の曲線Gは、
図3の曲線Gに一致する。
【0039】
偏差の離散値は、それぞれ
図3、
図4および
図6A~6Dの中に記入されている。図示の柱の高さは、例えば、(例えば、ミリメートル単位の)特定の偏差が発生した製造プロセスの数に一致する。図示の柱が一定の幅を有する(量子化としても知られている)という事実は、(例えば、ミリメートル単位の)幾何学的偏差が離散的なステップで決定されることを示す。
【0040】
柱を含むそのような図の代わりに、すべての具体例において、他の統計的評価および/または表現方法も使用することができる。
【0041】
最後のn個の製造プロセスの統計的評価(ここでは短期評価と呼ばれる)は、ここで突発的に、参照寸法の明確な変化を示している(nは0より大きい自然数であり、nはmより小さい)。各値は、
図4に、ハッチングが掛けられたボックスによって示されており、および異なる正規分布は、曲線G1として示されているが、これらのn個の製造プロセスについて示されているものである。曲線G1は、およそμ
1=+0.014mmに最大値を有する。すなわち、n個の製造プロセスについて平均すると、機械10のX軸は、実際よりも0.014mmだけ長い。曲線G1に関連する分散σ1も、
図4に示されている。
【0042】
統計的長期値μと統計的短期値μ
1との比較が、(例えば、
図5Aに示されているように、ポータブルコンピュータ30上のソフトウェアアプリケーションとしての、または
図5Bに示されているように、ポータブルコンピュータ30および据置型コンピュータ34のソフトウェアアプリケーションとしての)本発明に係る解析モジュールSMを使用することによって実行される場合、例として
図4に示されているような偏差は、自動的に認識できる。ここに記載された統計的平均値μとμ
1との比較は、統計的評価の例として理解されるべきである。解析モジュールSMによる他の統計的評価も、すべての具体例において実行することができる。
【0043】
本発明の各具体例は、
図5Aに示されている。
図5Aは、
図2に基づくものである。したがって、
図2の説明も参照される。
【0044】
図5Aは、ポータブルコンピュータ30(例えば、携帯電話またはPDA)を有するネットワーク機械加工環境100を示している。コンピュータ30は、機械加工環境100にネットワーク接続されている。このネットワーク接続は、
図5Aにクラウド31によって示されている。
【0045】
解析モジュールSMは、本発明のすべての具体例の中で使用され、このモジュールは、(
図4に例として示されているように)少なくとも1つの機械10の統計値を処理するように設計されており、偏差を自動的に認識する。
【0046】
解析モジュールSMは、すべての具体例においてソフトウェアモジュールとして実現することができ、または、異なるソフトウェアの中の(例えば、ソフトウェアSWの中および/またはプロセスPの中の)すべての具体例の中に統合することができ、または、解析モジュールSMは、ソフトウェアパッケージのモジュールとして提供されることができる。
【0047】
解析モジュールSMは、好適には、少なくとも1つの(ハードウェアおよび/またはソフトウェア)インターフェース32を含むすべての具体例の中で使用されるが、このインターフェースは、機械10および/または測定デバイス20および/または別のソフトウェアSWおよび/またはプロセスPからデータを受け取るように設計されている。
【0048】
機械10、測定デバイス20、他のソフトウェアSWまたはプロセスPは、データを解析モジュールSM(ハードウェアおよび/またはソフトウェア)にそれぞれ転送するインターフェースを含むことができ(プッシュアプローチとして知られている)、または解析モジュールSMが、機械10から、または測定デバイス20から、または他のソフトウェアSWから、またはプロセスPから、データを収集するように設計される(プルアプローチとして知られている)。プッシュおよびプルアプローチの組合せは、すべての具体例において使用可能である。
【0049】
ネットワーク機械加工環境100は、以下の方法を実行するように形成され、少なくとも1つのギヤ切削機械10のジオメトリを測定する。以下のステップが実行される。
a)仕様データ(例えば、VD、ΔVD、MD、ΔMD)に基づいて、機械10上のワークピース1の歯を機械加工するステップ、
b)実データを決定するために、(機械10の一部であり、または機械10に接続可能である)測定デバイス20内のワークピース1を測定するステップ、
c)実データと仕様データ(例えば、VD、ΔVD、MD、ΔMD)との相関を取ることによって、機械10の少なくとも1つの軸Xの幾何学的設定の偏差を決定するステップ、
d)幾何学的設定の偏差を記憶するステップ、
e)m個の更なるワークピース1のギヤの歯の機械加工の間、ステップa)~d)を繰り返すステップ、
f)いくつかの記憶された偏差(例えば、m個の偏差すべて)の統計的評価を実行し、それらから機械10の軸Xについての統計的参照寸法(例えば、統計的長期平均値μ)の偏差を決定するステップ。
【0050】
ソフトウェアSWおよびプロセスPは、例えばワークピース1の最初のおよび/または1つの機械加工のために、ステップa)の範囲内で上記のように相互作用し、仕様データとして機械データMDを機械10に提供することができる。
【0051】
既に前述したように、最初に機械加工されたワークピース1を測定デバイス20の中で測定することによって、最初に処理されたワークピース1を修正することができ、または更なる同一のワークピース1の後続の一連の製品について修正データを得ることができる。
【0052】
ワークピース1の一連の製品の範囲内では、例えば、修正データ(例えば、機械データMDとその偏差ΔMD、または仕様データVDとその偏差ΔVD)は、ステップa)の中でメモリからロードすることができる。
【0053】
ワークピース1の一連の製品の範囲内では、最初のワークピース1および例えば100個ごとのワークピース1を測定デバイス20の中で測定することによって、時々、参照寸法および/または参照寸法の変化をそれぞれ決定することができる。
【0054】
しかしながら、具体例によると、一連の製品のm個のワークピースのいずれも、機械加工環境100内の測定デバイス20の中で測定することができる。参照寸法および/または参照寸法の変化は、m個のワークピースそれぞれについて得られる。m個のワークピース1のこのような一連の測定の結果は、
図4の中に例として示されている(曲線G参照)。
【0055】
これは、具体例次第で、機械10の少なくとも1つの機械軸(例えばX軸)の参照寸法の変化が規則的または不規則な間隔で決定され得ることを意味する。
【0056】
それぞれ最新の測定結果のスライド統計的評価は、好適には、ネットワーク機械加工環境100によって実行される。スライド統計的評価は、機械加工環境100の1つの要素によって(例えば、解析モジュールSMによって)および/または機械加工環境100のいくつかの要素によって(例えば、プロセスPおよび前述の解析モジュールSMによって)、すべての具体例において実行することができる。
【0057】
すべての具体例において、解析モジュールSMはまた、例えば機械10の制御ユニット40の中で、または据置型コンピュータ34(
図5B参照)の中で動作するマスタモジュールと、例えばポータブルコンピュータ30の中で実行されるクライアントモジュールとを含むこともできる。
【0058】
このスライド統計的評価は、主に、時間に関してより古い参照寸法と比較して、参照寸法の「明確な」変化を認識するために使用される。このような統計的評価が、参照寸法の以前のすべての変化について累積的に実行された場合、突発的な偏差は、ほとんど認識されない。
【0059】
これは主に、参照寸法の「明確な」変化の累積の認識についてのものである。このような累積は、
図4の中に曲線G1によって示されている。示されている具体例では、第2最大値(n個のワークピース1の平均値)が平均値μ
1において得られている。この第2最大値は、主最大値μ(m個のワークピース1の平均値)から明らかに逸脱するものである。
【0060】
偏差は、本発明の好適な具体例では、平均値μの少なくとも20%である参照寸法の「明確な」変化として指定される。これは、μ1がμより20%大きいかまたは20%小さい場合、定義によって明確な偏差が存在することを意味する。「明確な」変化を認識するために使用される基準は、相対的な基準に関係する。相対的な閾値は、この事例では20%に決定されている。
【0061】
参照寸法の「明確な」変化は、平均値μ
1がウインドウF(
図4参照)の外側にある特に好適な具体例における偏差である。ウインドウFは、次のように、長期平均μの分散σによって定義される。
μ-σ<F<μ+σ
【0062】
これは、これらの特に好適な具体例の中で、μ1がμ-σより小さい場合またはμ1がμ+σより大きい場合、定義によって明確な偏差が存在することを意味する。これはまた、相対的な基準にも関係するが、それはなぜなら、この事例の中で「明確な」変化を認識するために使用される基準が、ウインドウFに対して定義されるからである。ウインドウFは、この事例では、相対的な閾値として決定されている。
【0063】
すべての具体例において、偏差は、平均値μと異なる符号を有する参照寸法の「明確な」変化として指定されることもできる。これは、これらの具体例の中で、(
図4に示されているように)平均値μが例えばゼロより小さくかつμ
1がゼロより大きい場合、またはその逆の場合、定義によって明確な偏差が存在することを意味する。符号の変化は、ここでは閾値として決定されている。
【0064】
すべての具体例において、偏差は、長期平均μの分散σが傾向を示すことから得られる参照寸法の「明確な」変化として指定されることもできる。傾向は、例えば上で定義されたウインドウFが大きくなるかまたは小さくなるような方法で認識できる。
【0065】
統計的短期評価の範囲内で、例えばnの数=10の製造プロセスの正規分布を決定することが不可能である場合、すべての具体例において、参照寸法の「明確な」変化は、与えられたものと仮定することもできる。参照寸法の最後の変化が正規分布によって記述することができないという事実は、反応を開始させることによってユーザに注意を促すべき特別な事例が存在することを示している。
【0066】
具体例によると、例えば相対的および/または絶対的な閾値をあらかじめ決定することによって、ユーザが参照寸法の変化を明確な変化として定義することができるような方法で、解析モジュールSMを形成することもできる。
【0067】
機械加工環境100は、好適には、すべての具体例の中で、「明確な」変化が存在する場合に動作が開始されるように形成される。解析モジュールSMは、好適には、動作を開始させ、または動作自体を実行する目的で、すべての具体例の中で形成される。
【0068】
動作の開始(
図9のステップS7)は、すべての具体例において、例えば以下のステップのうちの1つまたはいくつかを含む。
-音による警告の出力、
-好適にはディスプレイ12(
図1)またはディスプレイ33(
図5A)上の通知としての、可視的な警告の出力、
-メッセージNを投稿するステップ(例えばSMSによって)、
-電子メールメッセージを発信するステップ。
【0069】
機械加工環境100の中では、例として理解されるべきであるが、参照寸法の「明確な」変化は、例えばX軸が衝突によって損傷したなど、例えば機械10の不適切な取扱いによって生じ得る。
【0070】
本発明の更なる具体例は、
図6A~
図6Dを参照して説明される。ギヤ切削機械10および測定デバイス20を含む機械加工環境100に再び関する。機械10は、3つのNC制御された直線軸X、Y、ZおよびNC制御された旋回軸Cを再び含む。この事例では、X軸の参照寸法の変化だけでなく、3つの更なる軸Y、ZおよびCのすべての参照寸法の変化も統計的に評価される。
図6A~
図6Dのそれぞれは、それぞれの統計的長期評価(例えば、m個の機械加工サイクルにわたる評価)およびスライド統計的短期評価(例えば、n個の機械加工サイクルにわたる評価)を示している。X軸の統計的長期評価の結果(
図6A参照)は、正規曲線GXによって表され、統計的短期評価の結果は、正規曲線GX1によって表される。Y軸の統計的長期評価の結果(
図6B参照)は、正規曲線GYによって表され、統計的短期評価の結果は、正規曲線GY1によって表される。Z軸の統計的長期評価の結果(
図6C参照)は、正規曲線GZによって表され、統計的短期評価の結果は、正規曲線GZ1によって表される。C軸の統計的長期評価の結果(
図6D参照)は、正規曲線GCによって表され、統計的短期評価の結果は、正規曲線GC1によって表される。
【0071】
図6A~
図6Dに基づいて、4つの軸全てに明確な変化が生じていることが分かる。これらの変化の発生は、
図7A~
図7Dの中に概略的にかつ例示的に示されているように、時間図によって表すこともできる。
【0072】
【0073】
4つの軸X、Y、ZおよびCのそれぞれは、例えば時間図の曲線W1~W4に関連するが、これらの曲線はそれぞれ時間tに対する平均値μの進行を示している。
図7Aは、時間tに対するX軸の平均値μXの個別の時間経過を示している。平均値μXは、長い時間にわたって約-0.007mmであった。ここでt0で指定された特定の時点から、平均値はμ
1Xの値に変化し、約0.014mmに、正の範囲に明確に位置している。
図7Bは、時間tに対するY軸の平均値μYの個別の時間経過を示している。平均値μYは、長い時間にわたって約+0.003mmであった。およそ時点t0において、平均値は、約0.015mmの値μ
1Yに変化した。
図7Cは、時間tに対するZ軸の平均値μZの個別の時間経過を示している。平均値μZは、長い時間にわたって約+0.001mmであった。およそ時点t0において、平均値は、約+0.01mmの値μ
1Zに変化した。
図7Dは、時間tに対するC軸の平均値μCの個別の時間経過を示している。平均値μCは、長い時間にわたって正の範囲内でわずかにゼロを上回っていた。およそ時点t0において、平均値は、約-0.008mmの値μ
1Cに変化した。
図6A~
図7Dの図は、正確な縮尺ではなく、かつここに記載された数字は、例として理解されるべきである。
【0074】
統計的長期評価と統計的短期評価が関係するという事実の結果として、測定の個々の外れ値は、比較的わずかである。統計的評価は、何度か発生する値(変化)のみが効果を有する、一種のフィルタリングをもたらす。
【0075】
各(数学)フィルタは、統計的短期評価の中で使用することができるものであり、固定された閾値で動作することも、あらかじめ設定可能な閾値で動作することもできる。数qは、例えば一種の閾値として使用することができる(ここで、q>>0かつq<<m)。統計的短期評価の感度は、閾値qによってあらかじめ決定することができる。qが1に等しい場合、1回限りの測定外れ値があったなら、既に動作の開始につながっている。感度が高くなり過ぎないように、q>>0を適用する必要がある。
【0076】
すべての具体例において、閾値qは、存在すればであるが、絶対的な閾値(例えば、q=10)または相対的な閾値(例えば、q=m/10)として、あらかじめ決定することができる。
【0077】
好適には、偏差の初回の発生に基づいて動作を既に開始する過度に敏感な評価(例えば、q=1)と、遅すぎる時点におけるおよび時間遅れを伴う偏差の累積的な発生のみを示す評価との間で、妥協点を探すことが好ましい。
【0078】
すべての具体例において、測定値mの数は、オープンな期間(例えば、数日または数週間)にわたって更新されることができ、統計的長期評価の範囲内で評価できる。
【0079】
すべての具体例において、測定値mの数は、限られた期間にわたって(例えば、絶対的な数m=10によって、または時間ウインドウによって、例えば機械10が暖まった時点から、夕方の機械の遮断の時点までによって)更新されることもでき、統計的長期評価の範囲内で評価できる。
【0080】
次に、
図7A~
図7Dを参照して、本発明の更なる選択的な特徴について説明する。既に説明したように、様々な閾値および/またはフィルタパラメータは、あらかじめ決定され、数学的評価の挙動および反応の開始に影響を与えることができる。
【0081】
偏差が2つ以上の軸によって評価される具体例の場合、曲線W1、W2、W3およびW4の進行を互いに関連付けることができるルールのセットを使用することができる。
【0082】
すべての具体例において、
図6A~
図6Dの曲線を評価するため、およびそれらを互いに関連付けるために、ルールのセットを使用することができる。
【0083】
明確な変化の発生を定義する基準は、例えば以下のように決定することができる(以下の例はすべての具体例の中で使用することができる)。
-曲線W1、W2、W3およびW4のうちの少なくとも2つが時間ウインドウ(例えば10分、および/または例えばn=4個の製造プロセス)内で突発的な変化を示している場合、これを明確な変化と解釈することができ、および/または
-曲線W1、W2、W3およびW4のうちの少なくとも2つが突発的な変化を示し、その突発的な変化の高さが、時間図の中で統計的長期評価の平均値から少なくとも20%逸脱している場合、これを明確な変化と解釈することができ、および/または
-曲線W1、W2、W3およびW4のうちの少なくとも2つがゼロを通過する(例えば、曲線W1およびW4)場合、これを明確な変化と解釈することができる。
【0084】
これらの基準は、例として理解されるべきであり、更なる基準によって修正され、補足され、および組み合わされることができる。
【0085】
すべての具体例において、より複雑なルールのセットをあらかじめ決定しておくこともできる。
【0086】
【0087】
すべての具体例において、動作のうちの少なくとも1つは、例(ステップS7)として言及されるものであるが、好適には時点t0に達した時に開始される。
【0088】
いつでもユーザに特別な偏差の存在を知らせるために、解析モデルSMは、
図8に示すように、例えばディスプレイ33上にイラストレーションを示すことができる。例えばコンピュータ30として使用されるPDAのディスプレイ33上に示されたイラストレーションの中には、
図7A~
図7Dに示されているような曲線W1~W4のコピーを示し、またはこれらの曲線W1~W4の修正されまたは調整されたバージョンを示すことができる。コンピュータ30として使用されるPDAのディスプレイ33は、潜在的な動作(ステップS7)として次のメッセージNを示している。「警告:機械を確認してください」。
【0089】
本発明の更なる具体例は、
図9に示されている概略的なフローチャートを参照して説明される。
【0090】
第1ステップS1では、第1ワークピース1が、測定デバイス20内に搭載され、次に測定される。現在の測定値は、ステップS2の中で記憶され、偏差ΔVDおよび/またはΔMDが決定される。これらの偏差は、例えば測定デバイス20および/またはプロセスPおよび/または解析モジュールSMによって決定できる。少なくとも1つの値(例えば、機械10のX軸についての偏差ΔVD)がメモリ21の中に記憶される。後続のワークピース1がここで測定デバイス20内に搭載され、次に測定される。このプロセスは、
図9の中にループ22によって示されているように、複数回繰り返される。繰り返しWpまたはループ22の通過の数は、この事例では、例えば製造プロセスの数mに等しくてもよい。この事例では(すなわち、Wp=mの場合)、機械10によって処理されたm個のワークピース1のそれぞれは、測定デバイス20によって測定される。例えば1つおきのワークピース1のみが測定される場合、Wp=m/2が適用される。
【0091】
すべての具体例において、解析モジュールSMは、連続的にまたは時々、メモリ21から記憶された値を読み出し、それらに第1統計的評価(ステップS4)を行うことができる。例を参照して既に説明したように、例えば平均値μは、この第1統計的評価の範囲内で計算され、メモリ23の中に記憶できる。メモリ21は、メモリ23と同一であることができる。これは、ここで言及されるすべての更なるメモリにも当てはまる。
【0092】
同時に、または時々、解析モジュールSMは、メモリ21から記憶された値を読み出し、それらに第2統計的評価を行うことができる。具体例によると、解析モジュールSMは、例えば最後の1時間に記憶された値、または例えば最後のn個の記憶値のみを読み出して処理することのみをすることができる。第2統計的評価は、前述の統計的短期評価に関連する。これはここではスライド評価とも呼ばれる。統計的短期評価の範囲内で、それぞれ最新の値のサブセットのみがメモリ21から読み出され、統計的に評価されるという事実は、
図9の中に、メモリ21上の小さなウインドウ25によって示されている。例を参照して既に説明したように、平均値μ
1は、例えば第2統計的評価の範囲内で計算することができ、メモリ24の中に記憶できる。
【0093】
すべての具体例において、ステップS4およびS5は、同時に実行することもできる。
【0094】
平均値μおよびμ1の計算は、統計的評価の可能な例としてのみ理解されるべきである。この事例では、解析モジュールSMによって他の統計的評価も実行することができる。
【0095】
統計的短期評価および統計的長期評価の結果は、更なるステップS6の中で関連付けられ、「明確な」偏差の認識を可能にする。
図9に例として示されているように、メモリ23およびメモリ24からのそれぞれの結果は、解析モジュールSMによって、この目的のために比較される。
【0096】
「明確な」偏差を決定するために使用される定義および/またはルールのセット(多数の例が既に言及された)によると、相関関係は、様々な方法で提供される。
【0097】
最も単純な事例では、ステップS6の範囲内で、μ=μ
1が適用されるか否かが確認される。もしμがμ
1に等しいのであれば、明確な変化とみなすことができる変化はない。この事例において、μがμ
1に等しくない場合、定義によって明確な変化があり、動作(ステップS7)が開始される。この簡単な例が
図9の中に示されており、ステップS6の一部とみなされる比較プロセスは、ここでは部分ステップS6.1として示されている。μがμ
1に等しい場合、すなわち変化がない場合、この具体例の方法は、
図9の中にループ26によって示されているように、ステップS6に戻ることができる。
【0098】
図9の具体例では、ステップS4、S5、S6、S6.1およびS7は、解析モジュールSMによって実行されまたは制御される。
【0099】
しかし、これらの個々のステップが実行されることは、本発明にとっては無関係である。ステップS4および/またはステップS5は、例えば機械10の中で実行される一方で、残りのステップは、例えば機械加工環境100にネットワーク接続された(据置型)コンピュータ(例えばコンピュータ34)の中で実行できる。
【0100】
図5Bは、更なる具体例を概略的に示している。ステップS4、S5、S6およびS6.1は、例えば(据置型)コンピュータ34の中で実行され、ステップS7は、例えば機械加工環境のこのようなネットワーク接続された実装の中のアプリケーションに外部委託されることができるが、このアプリケーションは、(
図8に示されているように)ポータブルコンピュータ30上のディスプレイ33上にメッセージNおよび/または図を表示するのみである。コンピュータ30および34並びに選択的なネットワークメモリ35は、ネットワーク31によって互いに通信することができる。ネットワーク31は、機械加工環境100の通信インフラストラクチャの中に組み込まれることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 ワークピース
10 (ギヤ切削)機械
12 ディスプレイ
13 通信接続
14 経路
15 経路
20 測定デバイス/測定装置
21 メモリ
22 ループ
23 メモリ
24 メモリ
25 ウインドウ
26 ループ
30 コンピュータ
31 クラウド/ネットワーク
32 インターフェース
33 ディスプレイ
34 コンピュータ
35 (ネットワーク)メモリ
36 矢印
40 NC制御ユニット
100 機械加工環境/装置
C* 変更された幾何学的設定
C 旋回軸
ΔVD 偏差
ΔMD 偏差
ΔXref、ΔYref、ΔZref、ΔCref 参照寸法の変化
F ウインドウ
f(k) 頻度
G、G1、GX1、GY、GY1、GZ、GZ1、GC、GC1 曲線
k 変化
m 製造プロセスの数
MD 機械データ
n 製造プロセスの数
N メッセージ
μ、μX、μY、μZ、μC 平均値
μ1、μ1X、μ1Y、μ1Z、μ1C 平均値
P プロセス
q 閾値
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S6.1、S7 ステップ
SM 解析モジュール(ソフトウェアモジュール)
SW ソフトウェア
σ 分散
σ1 分散
t 時間
T0 時点
X、Y、Z (直線)軸
X*、Y*、Z* 変更された幾何学的設定
W1、W2、W3、W4 曲線
Wp 繰り返し
VD 仕様データ/デフォルトデータ(例えば、ターゲットデータ)