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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】小型時計機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/25 20060101AFI20220325BHJP
   G04B 19/02 20060101ALI20220325BHJP
   G04B 19/26 20060101ALI20220325BHJP
   G04B 27/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G04B19/25 Z
G04B19/02 A
G04B19/26 A
G04B27/02 A
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017197343
(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公開番号】P2018109604
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】16196170.1
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライユ, マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ルダズ, デニス
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/155814(WO,A1)
【文献】実開昭53-151959(JP,U)
【文献】特開2013-200309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0124388(US,A1)
【文献】独国特許発明第102006008700(DE,B3)
【文献】欧州特許出願公開第01286233(EP,A1)
【文献】特開2003-114286(JP,A)
【文献】実開平5-075693(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/25,19/253
G04B 19/02,19/00
G04B 19/26
G04B 27/00-27/08
G04B 13/00,13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻の表示用要素(H)と、時刻から派生する第1時計情報の表示用第1要素(Q)と、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素(PDL)とを含む、小型時計機構(100)であって、前記機構は、
時刻の表示、第1時計情報の表示、及び第2時計情報の表示を同時に修正するための、第1運動学的連鎖(CC1)と、
第2時計情報の表示とは独立して時刻の表示を修正するための第2運動学的連鎖(CC2)と、
時刻の表示と第1時計情報の表示とは独立して第2時計情報の表示を修正するための第3運動学的連鎖であって、遊星歯車列(TE)を含む、第3運動学的連鎖(CC3)と、
を含み、
前記遊星歯車列(TE)は、切欠き歯車(MC)によって、前記時刻の表示用要素(H)に運動学的に連結され、前記第1及び第2運動学的連鎖は前記切欠き歯車(MC)を含む、小型時計機構。
【請求項2】
前記切欠き歯車(MC)は日ノ裏車を構成する、
請求項1に記載の小型時計機構。
【請求項3】
前記切欠き歯車(MC)は、筒車(RH)と噛み合う第1歯車(12)と、筒かな(CH)と噛み合う第2歯車(11、13)とを含み、前記第1及び第2歯車は、第2歯車に対する第1歯車の割出要素(R3、13)により接続される、
請求項1または2に記載の小型時計機構。
【請求項4】
前記割出要素は、前記第2歯車(11、13)に搭載されるばね(R3)と、前記第1歯車上に搭載されるカム(14)とを含み、前記ばね及び前記カムは、接触により互いに相互作用するよう配置される、
請求項3に記載の小型時計機構。
【請求項5】
前記カム(14)は、前記第1歯車上に固定される
請求項4に記載の小型時計機構。
【請求項6】
前記遊星歯車列(TE)は、前記切欠き歯車(MC)と永続運動学的接続する遊星ギヤキャリア(1)と、前記第2時計情報の表示用第2要素の修正用要素(7)と永続運動学的接続する第1遊星ピニオン(4)と、前記第2時計情報の表示用要素(PDL)の歯車と永続運動学的接続する第2遊星ピニオン(6)と、前記遊星ギヤキャリア上で旋回する少なくとも1つの遊星ギヤ(2、3)とを含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の小型時計機構。
【請求項7】
前記第1及び第2遊星ピニオンは、前記第1及び第2遊星ピニオンの外歯経由で前記少なくとも1つの遊星ギヤと噛合する
請求項6に記載の小型時計機構。
【請求項8】
前記遊星ギヤキャリア(1)は、外歯を含む
請求項6または7に記載の小型時計機構。
【請求項9】
前記第2遊星ピニオン(6)のピッチ円半径は、前記第1遊星ピニオン(4)と前記少なくとも1つの遊星ギヤ(2、3)とで構成される伝動装置の軸方向距離よりも小さく、または前記第2遊星ピニオン(6)の前記ピッチ円半径は、前記第1遊星ピニオン(4)の前記ピッチ円半径と実質的に同一であり、または前記第2遊星ピニオン(6)の前記ピッチ円半径は、前記第1遊星ピニオン(4)の前記ピッチ円半径よりも小さい
請求項から8のいずれか一項に記載の小型時計機構。
【請求項10】
前記修正要素(7)は、制御手段(OC)により稼働されるように配置される修正星形車(8)を含む修正車である
請求項から9のいずれか一項に記載の小型時計機構。
【請求項11】
前記修正星形車(8)は、レバー(BC)を介して前記制御手段(OC)により稼働されるように配置される
請求項10に記載の小型時計機構。
【請求項12】
前記第1及び第2運動学的修正連鎖(CC1)、(CC2)は、真(T)と噛み合い可能に配置される
請求項1から11のいずれか一項に記載の小型時計機構。
【請求項13】
前記時刻から派生する第1時計情報は、カレンダー情報である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の小型時計機構
【請求項14】
前記カレンダー情報は、日付情報である、
請求項13に記載の小型時計機構
【請求項15】
前記時刻から派生する第2時計情報は、月相情報である、
請求項1から14のいずれか一項に記載の小型時計機構。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の機構(100)を含む、小型時計ムーブメント(200)。
【請求項17】
請求項16に記載の小型時計ムーブメント(200)、または請求項1から15のいずれか一項に記載の機構(100)を含む、時計(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計情報または時刻から派生する情報の複数の表示を有する、小型時計機構に関する。本発明は更に、当該小型時計機構を含む小型時計ムーブメントに関する。本発明は最後に、当該小型時計機構または当該小型時計ムーブメントを含む時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、遊星歯車列を用いて実施される、日付の表示と調整のための機構を開示し、ここで遊星歯車列の出力は、カレンダー駆動ディスクと噛み合い可能なカレンダー駆動爪が設けられるクラウン歯車の形状を取る。時計の従来の動作において、遊星ギヤキャリアは、筒車と噛み合うカレンダー駆動用の運動学的連鎖により噛み合う。当該構成において、太陽歯車は、ばねにより割り出される修正車を用いて固定される。このため、遊星ギヤは、ピニオンに対して移動し、クラウン歯車の内歯を用いてクラウン歯車を回転駆動する。遊星ギヤキャリアは、筒車と直接噛み合うため、時針の回転はクラウン歯車の回転を必ず伴う。このため、遊星歯車列がその一部を形成する調整装置に作用することなく時刻を設定することは不可能であった。更に、遊星歯車列のこのような構造は、内歯と外歯とを兼ね備える特に複雑なクラウン歯車を必要とすることから、最適ではない。案内部分の許容範囲は、半径方向及び長手方向運動を削減するため、そして異なる歯間のぶつかりの危険性を最小限にするため、可能な限り最小化する必要がある。クラウン歯車は同様に、適切な旋回を可能にする案内部分と内歯を兼ね備えるために十分に厚みを有さなければならない。
【0003】
特許文献2は、月の相表示用装置の調整を可能とするために設けられる、遊星歯車列の特定のデザインを開示する。遊星ギヤセットの第1入力は、クラウン歯車からなり、該クラウン歯車はその外歯が基本ムーブメントの時方輪列と、具体的には筒車を用いて噛み合い、その内歯が月の相表示用歯車と噛み合う遊星ギヤキャリア上に旋回可能に搭載される少なくとも1つの遊星ギヤと噛み合う。遊星ギヤセットの第2入力は、月の相修正星形車からなり、該修正星形車の角度位置はジャンパにより係止されるよう設けられ、その稼働は修正ロッカーバーにより制御される。星形車は同様に、遊星ギヤと一体の歯車を用いて、遊星ギヤと噛み合う。時計の従来の動作において、表示歯車は、遊星ギヤキャリアとその遊星ギヤであって修正歯車に対して旋回する遊星ギヤの介在により、筒車によって稼働される。修正段階において、表示歯車は、遊星ギヤキャリアとその遊星ギヤであって、クラウン歯車に対して旋回する遊星ギヤの介在により、歯車によって稼働される。遊星ギヤセットの第1入力は筒車と直接噛み合うため、時刻の表示用要素の回転は、表示歯車の回転を必ず伴う。このため、遊星歯車列がその一部を担う調整装置と独立して時刻を設定することは不可能である。更に、遊星歯車列のこのような構造は、単一の高さに配置される第1内歯と第2外歯を備えるクラウン歯車を必要とすることから、最適ではない。クラウン歯車は、遊星ギヤキャリアと修正星形車と同一軸上で十分に旋回することができない。案内部分の許容範囲は、半径方向及び長手方向運動を削減するため、そして異なる歯間の、具体的には内歯及び外歯と噛み合う遊星ギヤの歯のぶつかりの危険性を最小限にするため、可能な限り最小化する必要がある。
【0004】
同様に、特許文献3は月の相表示及び修正用装置を開示する。当該装置は、異なる輪列の特定のデザインを採用する。第1入力は、ばねがその上に搭載されるカレンダーシステムの24時間車と噛み合う車により構成される。当該ばねは、遊星ギヤセットの第2入力を構成する運動学的修正輪列の歯車と一体の、修正星形車と相互作用することが意図される。修正星形車は同様に、月相表示の表示用要素と関連する遊星ギヤセットの出力を構成する遊星ギヤキャリアの遊星ギヤと継続的に噛み合うピニオンと一体である。時計の従来の動作において、歯車は、修正星形車と弾性係合するばねを用いてピニオンを駆動する。このためピニオンは、ムーブメントの枠と一体の内歯と噛み合う遊星ギヤと噛合する。このため、遊星ギヤの噛合は、遊星ギヤキャリアの回転を引き起こす。調整段階において、修正歯車の稼働は、ばねに対する星形車の回転を引き起こし、その後歯車により角度的に割り出される。
【0005】
当該デザインは、修正歯車が継続的に回転すると仮定すると、調整機構の制御と修正歯車との間に連結装置を必要とすることから、最適ではない。更に、駆動歯車は、カレンダーシステムの24時間歯車と直接噛み合うため、月の相表示と独立してカレンダーを修正することは不可能である。最後に、装置が機能するためには異なる輪列が、枠に固定され、各遊星ギヤと噛み合わねばならない内歯を必要とするため、時計内の装置の組立という意味で最適ではない。更に、案内部分の許容範囲は、この場合であっても、半径方向及び長手方向運動を削減するため、異なる歯同士がぶつかる恐れを最小限にするため、可能な限り小型化する必要がある。
【0006】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3が開示する小型時計デザインは、複雑なだけでなく、1つの小型時計表示の修正を、他の小型時計表示の修正と独立して行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】フランス特許出願公開第2541005号
【文献】欧州特許出願公開第2615506号
【文献】欧州特許出願公開第2950164号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の欠点に取り組むことを可能とし、先行技術から既知の小型時計機構の改善を可能とする、小型時計機構を提供することである。具体的に、本発明は、異なる時計情報を独立して調節することを可能とする小型時計機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる小型時計機構は、請求項1に定義される。
【0010】
本発明にかかる小型時計機構の異なる実施形態は、請求項2から15に定義される。
【0011】
本発明にかかる小型時計ムーブメントは、請求項16に定義される。
【0012】
本発明にかかる時計は、請求項17に定義される。
【0013】
添付の図面は、本発明にかかる小型時計機構の実施形態を含む時計の実施形態を、例として図示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明にかかる時計の実施形態の模式図である。
図2図2は、本発明にかかる時計の実施形態の別の模式図である。
図3図3は、本発明にかかる時計の実施形態の図であって、2つの時計情報の表示用要素の駆動のための運動学的連鎖を強調した図である。
図4図4は、本発明にかかる時計の実施形態の図であって、3つの時計情報の表示用要素の修正のための運動学的連鎖を強調した図である。
図5図5は、本発明にかかる時計の実施形態で用いられた遊星歯車列の断面図である。
図6図6は、本発明にかかる機構の実施形態の、図3における面A-Aの部分断面図である。
図7図7は、本発明にかかる時計の実施形態で用いられる切欠き歯車の、図3における面B-Bの断面図である。
図8図8は、本発明にかかる時計の実施形態で用いられる切欠き歯車の一例の詳細図である。
図9図9は、本発明にかかる時計の実施形態の図であって、3つの時計情報の表示用要素を同時修正するための第1運動学的連鎖を強調した図である。
図10図10は、本発明にかかる時計の実施形態の図であって、2つの時計情報の表示要素を同時修正するための第2運動学的連鎖を強調した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる時計300の実施形態を、図1から9を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計であり、具体的には腕時計である。時計は、本発明にかかる小型時計ムーブメント200の、具体的には機械式ムーブメントの実施形態を含む。ムーブメントは、例えば、月の相を表示することを意図するカレンダーシステムを示すものである。更に具体的には、説明されるムーブメントの実施形態は、時刻の迅速な、更に具体的には日付の迅速な調節さらには時間帯の調整を可能にするために設けられる、修正用装置と関連する、月の相表示及び修正用装置を含む。
【0016】
小型時計ムーブメント200は、本発明にかかる機構100の実施形態を含む。
【0017】
小型時計機構100は、時刻の表示用要素Hと、時刻から派生する第1時計情報の表示用第1要素Qと、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLとを含む。機構は、
- 時刻の表示、第1時計情報の表示、及び第2時計情報の表示を同時に修正するための、第1運動学的連鎖CC1、
- 第2時計情報の表示とは独立して時刻の表示を修正するための第2運動学的連鎖CC2、及び
- 時刻の表示と第1時計情報の表示とは独立して第2時計情報の表示を修正するための第3運動学的連鎖であって、遊星歯車列TEを含む、第3運動学的連鎖、
とを含み、第1及び第2運動学的修正連鎖は、切欠き歯車MCを含む。
【0018】
好ましくは、遊星歯車列は切欠き歯車によって、時刻の表示用要素Hに運動学的に連結されている。更に好ましくは、切欠き歯車は、第1及び第2運動学的修正連鎖に共通の歯車である。
【0019】
図示の実施形態において、時刻から派生する第1時計情報は、カレンダー情報、更に具体的には日付情報である。時刻から派生する第1時計情報の表示用第1要素は、このため、例えばカレンダー情報を保持し、現在の日付情報を表示するように、文字盤に設けられた開口と相互作用するディスクまたはリングQを含む。
【0020】
図示の実施形態において、時刻から派生する第2時計情報は、月相情報である。時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素は、このため、例えば、ディスクの中心に対して互いに180度に位置する月の2つの表示を帯び、現在の月相情報を表示するように、文字盤に設けられた開口と相互作用するディスクPDLを含む。
【0021】
機構は、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDL用の駆動歯車TEを実装する。駆動歯車TEは、時計の調整中に、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLの迅速な修正用歯車としての機能を果たすという特定の特徴を示す。このため駆動歯車は、構造が特に単純で、小型かつ頑丈な、遊星歯車列TEである。当該遊星歯車列は更に、時刻表示要素と、この場合は時計の主針、例えば時針と、分針と、切欠き歯車で構成される対応する結合機構を用いて噛み合うという特定の特徴を示す。当該結合機構は、時刻から派生する第1時計情報の表示用第1要素Qの調整を、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLの調整と独立して可能にすることを意図する。
【0022】
遊星歯車列TEは、図5に図示するように、切欠き歯車MCと永続運動学的接続する遊星ギヤキャリア1と、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLの修正用要素7と永続運動学的接続する第1遊星ピニオン4と、時刻から派生する第2時計情報の表示用要素PDLの歯車と永続運動学的接続する第2遊星ピニオン6と、遊星ギヤキャリア上で旋回する少なくとも1つの遊星ギヤ2、3とを含む。好ましくは、遊星歯車列TEは、非常に簡単な構造を有する。説明する実施形態において、遊星歯車列TEの時方輪列は、例えば、外歯のみが設けられているものではない。遊星歯車列TEの時方輪列は、例えばムーブメントの枠と一体のネジ足P1の形態を取る、単一の旋回手段によってのみ旋回されるように構成される。当該構成は、外歯の伝動装置のみを必要とする、非常に簡単且つ小型の遊星歯車列の実施を可能にする。好ましくは、第2遊星ピニオン6のピッチ円半径は、第1遊星ピニオン4と遊星ギヤ2との伝動装置の軸方向距離よりも小さく、または第1遊星ピニオン4のピッチ円半径と実質的に同一であり、または第1遊星ピニオン4のピッチ円半径よりも小さい。これは、非常に頑丈なデザインを保証する。
【0023】
有利には、第1及び第2遊星ピニオン4、6は、このように、第1及び第2遊星ピニオンの外歯を介して、少なくとも1つの遊星ギヤと噛合する。
【0024】
図3図4に図示するように、小型時計機構は、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLを駆動するための第1運動学的連鎖C1を含む。第1運動学的連鎖C1は、筒車RHにより回転駆動され、筒車RHは筒かなCHを用いて基本ムーブメントに接続される。筒車RHは、切欠き歯車MCと歯車9の形状を有する結合機構を用いて遊星歯車列TEを回転駆動する。遊星歯車列TEからの出力は、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素と、ここでは(図3、4に図示されない)月の相表示用第2要素PDLと噛み合う。
【0025】
小型時計機構はまた、時刻から派生する第1時計情報の表示用第1要素Qを駆動するための、第2運動学的連鎖C2を含む。第2運動学的連鎖C2は同様に、筒車RHにより回転駆動され、筒車RHは筒かなCHを用いて基本ムーブメントに接続される。筒車RHは、日付駆動歯車MQを駆動し当該歯車を回転させる。日付駆動歯車MQは、時刻から派生する第1時計情報の表示用第1要素を、ここでは(図1、2には図示されるが、図3、4には図示されない)日付の表示用第1要素Qを作動する目的のために設けられる。
【0026】
同様に、小型時計機構は、時刻の表示用要素Hを駆動するための第3運動学的連鎖を含む。第3運動学的連鎖は、筒かなCHにより回転駆動され、筒かなCHは基本ムーブメントに運動学的に接続される。ここで説明する実施形態において、筒かなCHは切欠き歯車MCを回転駆動し、切欠き歯車MCは次に筒車RHを駆動する。このようにして、切欠き歯車MCは筒かなCHを筒車RHと接続する日ノ裏車を構成し、筒かなCH上には分を表示するための要素が、具体的には分針が、搭載または固定され、筒車RHの上には、(図3に模式的に図示される)時刻の表示用要素Hが、具体的には時針が、搭載または固定される。このように、本実施形態において、分の表示用要素は、筒かなCHと回転するよう運動学的に連接され、時の表示用要素は、歯車RHと回転するよう運動学的に連接される。
【0027】
第1運動学的修正連鎖CC1は、時と分、日付、それに月相の同時調節を可能にする。図9に図示するように、第1運動学的修正連鎖CC1は、フェースギヤを有するピニオン91と、第1中間車92、第2中間車93、切欠き歯車MC、筒車RH、歯車10、日付駆動歯車MQ、歯車9、及び遊星歯車列TEを備える、真Tを含む。
【0028】
時刻の迅速な修正用の第2運動学的連鎖CC2は、分の表示とは独立して、時の迅速な調節を可能にする。当該運動学的連鎖は、具体的には、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLに影響することなく、時刻から派生する第1時計情報の表示用第1要素Qの迅速な修正を可能にする。図10に図示するように、第2運動学的修正連鎖CC2は、フェースギヤを有するピニオン91と、第3中間車94、第4中間車95、第5中間車96、第6中間車97、第7中間車98、切欠き歯車MCのピニオン12、筒車RH、歯車10、及び日付駆動歯車MQを備える、真Tを含む。
【0029】
運動学的修正連鎖CC1、CC2は、切替機構COMを用いて稼働されてもよい。このように、第1及び第2運動学的修正連鎖は、切替機構COMを用いて真Tと噛み合い可能に配置される。図示の実施形態において、切替機構COMは真Tにより、具体的には真の軸位置により、制御される。切替機構COMは、おしどりを含んでもよい。同様に、切替機構COMは、このタイプの真上の切替機構を構成する全ての従来の要素を含んでもよい。
【0030】
最後に、第3運動学的修正連鎖CC3は、遊星歯車列TEと部分的に一体化される。第3運動学的修正連鎖CC3は、制御手段OCの稼働により月相の表示用要素を独立して修正することを可能にする。第3運動学的修正連鎖CC3は、制御手段OC、修正ロッカーバーBC、レバーLC、修正車7、及び遊星歯車列TEを含む。制御手段は、好ましくは一体に成形される。図示の実施形態において、制御手段は、押しボタンである。
【0031】
切欠き歯車MCは、月相表示用要素PDLの回転と独立した筒車RHの回転が可能になるよう、運動学的修正連鎖CC1、CC2の分離を可能にする。
【0032】
遊星歯車列の第1入力は、遊星ギヤキャリア1により構成される。遊星ギヤキャリア1は、切欠き歯車MCと歯車9とを用いて、筒車RHと噛み合う。遊星ギヤは、第1中間車2を含む歯車の形状を有し、第2中間車3は遊星ギヤキャリア1上で旋回する。2つの中間車2、3は一体であり、遊星ギヤキャリア1の円盤のいずれか一方の側に配置される。第1中間車2は、遊星歯車列の第2入力と噛み合う。遊星歯車列の第2入力は、ピニオン4により構成される。第2中間車3は、遊星歯車列の出力ピニオン6と噛み合う。出力ピニオン6は、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLと運動学的に接続する。
【0033】
小型時計機構の従来の動作中、遊星ギヤキャリア1は、筒車RHの影響下、切欠き歯車MCと歯車9とを用いて、回転駆動される。このように、中間車2、3は、第1遊星ピニオン4に対して回転駆動される。第1遊星ピニオン4は、第3運動学的修正連鎖CC3の一部である割出手段R1、8の影響下でその位置に留まる。このように、第2遊星ピニオン6で構成される遊星歯車列からの出力は、第2中間車3により回転駆動される。そして、時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLはピニオン6により駆動されるということになる。時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLの駆動速度は、第1運動学的連鎖C1の一部である歯車の数の分周により定義される。
【0034】
制御手段OCの影響下での、第3運動学的修正連鎖CC3の稼働中、第1遊星ピニオン4は、歯車5の回転の影響下で回転駆動される。歯車5は、第1遊星ピニオン4と一体であり、具体的には第1遊星ピニオン4上に固定される。当該構成において、遊星ギヤキャリア1は第1運動学的連鎖C1により、具体的には基本ムーブメントの時方輪列に摩擦的に搭載される筒かなCHにより、固定される。このように、第1遊星ピニオン4の回転は、中間車2を用いて中間車3の回転を駆動し、そして第2遊星ピニオン6の回転と時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLの運動を駆動する。
【0035】
第3運動学的修正連鎖CC3は、具体的には修正星形車8を含む修正車7を含む。修正星形車8は、図4に示すように、ばね片R1によりその位置に維持される。修正星形車8は、制御手段OCにより、具体的にはロッカーバーBCにより稼働されるように配置される。時計の従来の動作中、第1遊星ピニオン4は、要素7、8、5経由で、ばね片R1によりその位置に維持される。第3運動学的修正連鎖CC3は、軸P2周りに旋回する修正ロッカーバーBCを用いて、制御手段OCの影響下、回転駆動される。制御手段OCは、ロッカーバー上で軸P3周りに旋回する修正レバーLCを示す。ロッカーバーとレバーは、ロッカーバー/レバー組立体が、所定の角ピッチにより修正星形車8上で一方向に行動するよう、双方が単一のばね片R2によってその位置に付勢される。
【0036】
切欠き歯車MCは、図7及び8に図示するように、歯車9、筒かなCH及び筒車RHの接触面に配置される。このため、切欠き歯車MCは、筒車RHと筒かなCHとを結びつける日ノ裏車を構成する。更に有利には、切欠き歯車MCは、遊星ギヤキャリア1を用いて遊星歯車列TEを接続する。図7は、図3で図示する面B-Bの部分的断面図を示す。切欠き歯車MCは、筒車RHと噛み合う第1歯車12と、筒かなCHと噛み合う第2歯車11、13とを含み、第1及び第2歯車は、第2歯車11、13に対する第1歯車12の割出要素R3、14により接続される。第2歯車11、13は、歯車11を含む。第2歯車は、切欠き歯車の第1入力を構成する。歯車11は、筒かなCHと噛み合う。更に、第1歯車12は、切欠き歯車の第2入力を構成する。第1歯車は、筒車RHと噛み合うピニオン12を含む。歯車11及びピニオン12は、有利には、同軸で旋回する。歯車13は、歯車11と一体であり、歯車9と噛合する。切欠き歯車MCの第1及び第2入力は、歯車13上に搭載されるばねR3を用いて切り離し可能であるという特徴を有する。歯車13は、ピニオン12と一体のまたはピニオン12に固定されるカム14と相互作用するために設けられる。
【0037】
時計の従来の動作中、要素11、13、及び12は、一方では筒かなCHと筒車RHの接触面に配置される日ノ裏車を構成するように、また他方では第1運動学的連鎖C1の稼働を、すなわち遊星歯車列TEを用いて筒車RHによって時刻から派生する第2時計情報の表示用第2要素PDLの駆動を可能にするように、要素14及びR3を用いて接合される。
【0038】
切欠き歯車MCは同様に、運動学的修正連鎖CC1とCC2の不可欠な部分である。
【0039】
切欠き歯車MCは、第1運動学的修正連鎖CC1に含まれる。具体的には、切欠き歯車MCは、その第1入力11を用いて、真Tに接続される。このため、図9に図示するように、切替機構COMを用いて第1運動学的修正連鎖CC1が稼働されると、切欠き歯車の要素11、13、及び12が要素14及びR3を用いて接合されるため、真Tの回転が時、分、日付及び月相の調節を可能とする。
【0040】
切欠き歯車MCはまた、第2運動学的修正連鎖CC2に含まれる。具体的には、切欠き歯車MCは、その第2入力12を用いて、真Tに接続される。このため、図10に図示するように、切替機構COMを用いて第2運動学的修正連鎖CC2が稼働されると、真Tの回転が、所定の、具体的には要素14及びR3により定められる角ピッチにより、分及び月相の表示とは独立して、時または日付の調節を可能とする。要素11、13は、基本ムーブメントの時方輪列上に摩擦的に搭載される筒かなCHによりその位置に維持される。 切欠き歯車の軸の高さに戻されたときの基本ムーブメントの時方輪列上の筒かなの摩擦トルクは、要素14及びR3により切欠き歯車の軸周りに生成される抵抗トルクよりも大きい。このため、真経由で第1歯車12が作用されると、第2歯車11、13は、基本ムーブメントの時方輪列上の筒かなの摩擦トルクが原因で、不動に維持される。その結果、ばねR3はカム14の作用により変形し、第1歯車は第2歯車に対して1段階移動される。段階の大きさは、ここでは90°であるが、カム14の形状により定義される。このように、第2運動学的修正連鎖CC2は、時の表示用要素の迅速な調節を、具体的には歯車10及び歯車MQを経由して筒車RHと噛み合う日付の表示用要素の迅速な調節を、可能にする。
【0041】
このように、切欠き歯車MCは、切欠き歯車MCにより決定される角ピッチに応じて、運動学的修正連鎖CC1及びCC2内に、一方では第1小型時計表示または時刻から派生する表示及びその他の小型時計表示または時刻から派生する表示の、時と分の同時修正を可能にするように、そして他方では、時または日付、及びその他の付加的な小型時計表示または時刻から派生する表示の独立した修正を可能にするように、配置される。
【0042】
「歯車」「車」の表現は、少なくとも歯付き歯車及びまたは歯付きピニオンを含む、あらゆる小型時計組立体を意味することが意図される。
【0043】
「切欠き歯車」の表現は、好ましくは第1歯車と第2歯車を含み、第1歯車が第2歯車に対して変位可能であり、第1及び第2歯車は第2歯車に対する第1歯車の割出要素により接続される、アセンブリを意味することが意図される。第1及び第2歯車は、好ましくは同軸である。割出要素は、好ましくはカム及びばねを含む。
【0044】
「基本ムーブメント」の表現は、時間の計測を、具体的には分の計測を可能にする少なくとも1つの時方輪列を備えるあらゆる小型時計ムーブメントを意味することが意図される。
【0045】
「第2歯車」の表現における「第2」は、複数の歯車から特定の歯車を識別するために使用される、数字的な形容詞である。このため、「第2歯車」は、1分に1回転の速度で回転する歯車とは限らない。
【符号の説明】
【0046】
1 遊星ギヤキャリア
2 遊星ギヤ
3 遊星ギヤ
4 第1遊星ピニオン
6 第2遊星ピニオン
9 歯車
H 時刻の表示用要素
MC 切欠き歯車
PDL 第2時計情報の表示用要素
Q 第1時計情報の表示用要素
TE 遊星歯車列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10