(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】工具の少なくとも1つの内部パイプの完全な閉塞および部分的な閉塞を検知するシステム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/34 20060101AFI20220325BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G01F1/34 A
B23Q11/10 D
(21)【出願番号】P 2017553457
(86)(22)【出願日】2016-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2016050026
(87)【国際公開番号】W WO2016110465
(87)【国際公開日】2016-07-14
【審査請求日】2018-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-15
(32)【優先日】2015-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517237137
【氏名又は名称】ソシエテ ドゥ コンストリュクシオン デキプマン ドゥ メカニザシオン エ ドゥ マシーン エスセウエムエム
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ファヴェルジョン, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ユルヴィル, シリル
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】清水 靖記
【審判官】中塚 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-137528(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2995099(FR,A1)
【文献】特開平8-17093(JP,A)
【文献】特開昭62-108123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/34 - 1/50
B23F 11/10
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(12)の少なくとも1つの内部流体パイプ(11)の完全
な閉塞および部分的な閉塞を検知するシステム(10)であって、
前記工具(12)の前記内部流体パイプ(11)の上流に接続される
ニューマティックシステム(13)と、
ソレノイドバルブ(17)を介して前記
ニューマティックシステム(13)に接続される圧力源(16)と、
前記
ニューマティックシステム(13)の圧力を受ける圧力スイッチ(20)と、
前記圧力スイッチ(20)からデータを受信する制御ユニット(22)であって、
最初に、前記ソレノイドバルブ(17)を開けて、前記
ニューマティックシステム(13)を前記圧力源(16)に接続することによって、加圧して、前記
ニューマティックシステム(13)の圧力を前記圧力源(16)の圧力(PS)にほぼ等しく設定する第1処理と、
次に、前記ソレノイドバルブ(17)を閉めて、前記
ニューマティックシステム(13)を前記圧力源(16)から切り離す第2処理であって、切り離し後、前記
ニューマティックシステム(13)は前記内部流体パイプ(11)を介して空になっていく第2処理と、
次に、前記ソレノイドバルブ(17)を閉じた後の前記
ニューマティックシステム(13)における圧力の変化を、前記圧力スイッチ(20)を用いて経時的に解析することによって、前記内部流体パイプ(11)の閉塞状態を検知する第3処理と
を実施するように構成された制御ユニット(22)と
を備え
る、
システム(10)。
【請求項2】
前記圧力の変化を経時的に解析することが、前記ソレノイドバルブ(17)を閉じた後に前記
ニューマティックシステム(13)が周囲圧力(Pa)に戻るのに要する時間(T1~T3)を測定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧力の変化を経時的に解析することが、前記ソレノイドバルブ(17)を閉じた時の圧力と、前記ソレノイドバルブ(17)を閉じた時から始まる期間(T秒)の終りでの圧力との圧力差(ΔP1~ΔP3)を測定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記圧力の変化を経時的に解析することが、前記ソレノイドバルブ(17)閉鎖後に前記
ニューマティックシステム(13)が一定の目標圧力(Pc)に到達するのに要する時間(T1’~T3’)を測定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記一定の目標圧力(Pc)が、周囲圧力(Pa)より高く、前記圧力源(16)の圧力(Ps)より低い、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記圧力の変化を経時的に解析することが、前記
ニューマティックシステム(13)の圧力変化曲線(C1~C3)のドリフト傾き(ΔP/dt(C1)~ΔP/dt(C3))を、前記ソレノイドバルブ(17)閉鎖後の時間の関数として決定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
管理が必要な内部流体パイプ(11)を有する前記工具(12)を自動的に識別する電子チップリーダ(29)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2015年1月5日に出願した仏国出願第1550022号の優先権を主張するものであり、同出願の内容(本文、図面および請求項)は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、工具の少なくとも1つの内部流体パイプの完全な閉塞および部分的な閉塞を検知するシステムに関する。本発明は、オイル、オイルエマルジョン、空気およびオイルから成るミストなどの液体または気体の潤滑剤または冷却剤を工具の機能素子に供給するために使用する、1つまたは複数の内部パイプを有する加工工具の管理に特に有利に適用可能である、しかしそれに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
文献EP2320199には、流量計を使用した導管内の粒子のかたまりを検知する方法の実装形態が教示されている。このシステムは、流れの急激な変化を判定し、流量が想定の範囲から逸脱している場合は警報信号を提供する。同様に、文献FR2851819には、静電気式流量計を使用した二相流における凝集粒子の量の測定が記述されている。検知素子は管状の検知素子内に配置される。
【0004】
しかし、狭い断面を有する内部パイプを備える工具の場合には、上記のシステムはパイプの全閉塞を検知することは可能であるが、部分的な閉塞は検知できない。なぜなら、流出量が少なすぎて検知されないからである。これは、標準的な流量計の測定精度の限界によるものである。従って、狭い断面を伴う内部パイプの部分的な閉塞を検知できないリスクがあり、このような部分的な閉塞は工具の働きを低下させ、従って製造チェーンの性能を低下させる可能性がある。
【0005】
さらに、文献DE102006052602、DE102007016326およびFR2972982には、測定した圧力を基準とする圧力曲線と比較することにより、工具の内部パイプの閉塞を検知可能とする方法が記述されている。しかし、これらの方法は、特定の構成でなされる圧力測定に基づいており、この構成では、狭い断面を有するパイプの部分的な閉塞を検知するための十分な測定精度を得ることは、不可能である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、工具の少なくとも1つの内部流体パイプの完全な閉塞および部分的な閉塞を検知するシステムを提案することにより、上記の欠点を効果的に解決することである。前記システムは、
前記工具の前記内部パイプの上流に(upstream)接続されるように意図されるニューマティックシステムと、
ソレノイドバルブを介して前記ニューマティックシステムに接続される圧力源と、
制御ユニットであって、前記ニューマティックシステムを加圧するために前記ソレノイドバルブを開け、
次に、前記内部パイプを介して自由に前記ニューマティックシステムを空にさせるために、前記ソレノイドバルブを閉めるように構成され、
前記ソレノイドバルブを閉じた後の前記ニューマティックシステムにおける圧力の変化を経時的に解析することに応じて、前記内部パイプの閉塞状態を検知するように構成される制御ユニットと
を備えることを特徴としている。
【0007】
このようにして、検知すべき圧力損失(阻害)に比例する、ニューマティックシステムにおける圧力の経時的解析をとおして、本発明により、工具の狭い断面を有する内部パイプが適合性を保証することが可能になる。このことは、潤滑剤を送るパイプに閉塞がないことが、対応するデバイスを有効に動作させるための条件である、微量潤滑工具またはオイル微噴霧化工具またはMQL(Minimum Quantity Lubrication:最小量潤滑)工具にとって、特に重要である。
【0008】
一実施形態によれば、圧力の変化を経時的に解析することが、前記ソレノイドバルブ閉じた後にニューマティックシステムが周囲圧力に戻るのに要する時間を測定することを含んでいる。
【0009】
一実施形態によれば、圧力の変化を経時的に解析することが、前記ソレノイドバルブを閉じた時の圧力と、前記ソレノイドバルブを閉じた時から始まる期間の終りでの圧力との圧力差を測定することを含んでいる。
【0010】
一実施形態によれば、圧力の変化を経時的に解析することが、前記ソレノイドバルブを閉じた後に前記ニューマティックシステムが一定の目標圧力に到達するのに要する継続時間を測定することを含んでいる。
【0011】
一実施形態によれば、前記一定の目標圧力は、周囲圧力より高く、前記圧力源の圧力より低い。
【0012】
一実施形態によれば、圧力の変化を経時的に解析することが、前記ニューマティックシステムの圧力変化曲線のドリフト傾き(drift slope)を、前記ソレノイドバルブを閉じた後の時間の関数として決定することを含んでいる。
【0013】
一実施形態によれば、前記システムはさらに、管理が必要な内部パイプを有する前記工具を自動的に識別する電子チップリーダを備えている。
【0014】
本発明は、以下の説明を読み、添付の図面を考察することにより、より良く理解されるであろう。これらの図面は、単に例示として示すものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による工具の内部パイプの完全
な閉塞および部分的な閉塞を検知するシステムの概略図である。
【
図2-1】
図2a~
図2bは、本発明による工具の内部パイプの完全
な閉塞および部分的な閉塞を検知するシステムで実施可能な、
ニューマティックシステムの圧力変化の経時的解析の様々なタイプを示す図である。
【
図2-2】
図2c~
図2dは、本発明による工具の内部パイプの完全
な閉塞および部分的な閉塞を検知するシステムで実施可能な、
ニューマティックシステムの圧力変化の経時的解析の様々なタイプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
同一の、同様のまたは類似の素子は、図面間で同じ参照記号が維持される。
【0017】
図1は、加工工具などの工具12の少なくとも1つの内部流体パイプ11の完全または部分的な閉塞を検知するシステム10を示す。管理対象の内部パイプ11は、例えば、オイル、オイルエマルジョン、または空気およびオイルから成るミストなどの潤滑剤を、工具の機能素子に供給するために使用することができる。システム10はまた、例えば窒素をベースとした冷却剤などの冷却剤が循環する内部パイプ11を少なくとも1つ備える低温の加工工具12を管理するためにも使用することができる。
【0018】
システム10は、工具12により行われる加工作業の外部で使用されることが好ましい、すなわち、工具12は、内部パイプ11を管理するためのシステム10に取り付けられるため、工具12を具備するデバイスから最初は取り外されている。言い換えれば、システム10は、製造に関連するステーションに具備される。しかし、その代わりに、システム10を工具12を備える加工装置に組み込むことも可能であろう。
【0019】
そのため、システム10は、工具12の内部パイプ11の上流に接続されたニューマティックシステム13を含む。圧力源16は、ソレノイドバルブ17を介してニューマティックシステム13に接続する。圧力スイッチ20により、ニューマティックシステム13内の流体圧力の値を提示することが可能になる。
【0020】
さらにシステム10は、ソレノイドバルブ17の制御に適した制御インタフェース25と通信し、ならびに圧力スイッチ20からのデータを受信するモジュール26とも通信する制御ユニット22を有する電気制御部21を備える。電気制御部21はまた管理が必要なパイプ11を有する工具12を自動的に識別する、例えば無線周波数識別(RFID:Radio Frequency Identification)型などの、電子チップリーダ29を含むことができる。制御ユニット22は、収集された圧力データを処理し、解析するマイクロコントローラ30などの手段、ならびに操作者がシステム10と対話することを可能にする、例えばモニタおよびキーボードまたはタッチスクリーンで構成される、マンマシンインタフェース31を含む。
【0021】
以下では、
図2aを参照しながら、工具12のパイプ11の完全または部分的な閉塞を検知するシステム10の動作に関して、より精密に説明する。
【0022】
時刻t0とt1との間で、制御ユニット22は、インタフェース25を介して、ソレノイドバルブ17を開くよう制御し、それによってニューマティックシステム13が加圧される。時刻t1とt2との間で、システム13の圧力は、圧力源16の圧力Psにほぼ等しい圧力で静定する。
【0023】
時刻t2を始点として、制御ユニット22は、インタフェース25を介して、ソレノイドバルブ17を閉めるよう制御し、それによってシステム13が管理対象のパイプ11を介して自由にそれ自体を空にさせる。
【0024】
次に、制御ユニット22は、ソレノイドバルブ17閉鎖後にシステム13が周囲圧力Paに戻るのに要した時間に基づき、パイプ11の閉塞状態を検知する。
【0025】
このようにして、閉塞のないパイプ11の場合は、曲線C1で示されるように、ニューマティックシステム13が周囲圧力Paに戻るのが早い(継続時間T1参照)。部分的に閉塞したパイプ11の場合は、曲線C2で示されるように、周囲圧力Paに戻るのがより長くなる(継続時間2参照)、なぜなら圧力損失によって流れが遅くなるからである。完全に閉塞したパイプ11の場合は、流れがないため、曲線C3で示されるように、システム13は加圧されたままとなる。従って、継続時間3は、流れがないため無限となる。この場合は、適用例に基づいて、具体的には管理対象のパイプ11の寸法に基づいて較正が可能である一定の基準継続時間の経過後に周囲圧力Paに到達していないことを検知するときに、制御ユニット22は内部パイプ11の完全な閉塞を検知する。
【0026】
図2bに示す代替の実施形態では、
ニューマティックシステム13における圧力静定後に、制御ユニット22は、ソレノイドバルブ17を閉じた時の圧力とソレノイドバルブ17を閉じた時から始まる期間T秒、例えば数秒後の圧力との圧力差ΔPを測定する。このようにして、閉塞のないパイプ11の場合は、曲線C1で示されるように、圧力差が著しい(差分ΔP1参照)ことを見ることができる。部分的に閉塞したパイプ11の場合は、曲線C2で示されるように、圧力差がより小さくなる(差分ΔP2参照)、なぜなら圧力損失によって流れが遅くなるからである。完全に閉塞したパイプ11の場合は、流れがないため、曲線C3で示されるように、圧力差はゼロである(差分ΔP3参照)。
【0027】
図2cに示す代替の実施形態では、
ニューマティックシステム13における圧力静定後に、制御ユニット22は、ソレノイドバルブ17閉鎖後に
ニューマティックシステム13が一定の目標圧力Pcに到達するのに要する継続時間を測定する。この目標圧力Pcは、周囲圧力Paより高く、圧力源16の圧力Psより低い。この実施形態の利点は、
図2aに示す実施形態より実行するのが早いことである。
【0028】
このようにして、閉塞のないパイプ11の場合は、曲線C1で示されるように、目標圧力Pcに到達するための継続時間は短い(継続時間1’参照)ことが分かる。部分的に閉塞したパイプ11の場合は、曲線C2で示されるように、この時間はより長くなる(継続時間2’参照)、なぜなら圧力損失によって流れが遅くなるからである。継続時間1’およびT2’は、同一の曲線C1およびC2に対して得られる継続時間1およびT2よりそれぞれ短いことに留意されたい。完全に閉塞したパイプ11の場合は、流れがないため、曲線C3で示されるように、継続時間は無限となる(継続時間3’参照)。この場合は、適用例に基づいて、具体的には管理対象のパイプ11の寸法に基づいて較正が可能である一定の基準時間経過後に目標圧力Pcに到達していないことを検知するときに、制御ユニット22は内部パイプ11の完全な閉塞を検知する。
【0029】
図2dに示す代替の実施形態では、
ニューマティックシステム13における圧力静定後に、制御ユニット22は、
ニューマティックシステム13の圧力変化曲線Ciのドリフト傾きΔP/dt(Ci)を、ソレノイドバルブ17閉鎖後の時間の関数として決定する。このようにして、閉塞のないパイプ11の場合は、曲線C1で示されるように、傾きは急勾配(傾きΔP/dt(C1)参照)であることが分かる。部分的に閉塞したパイプ11の場合は、曲線C2で示されるように、傾きはよりなだらか(傾きΔP/dt(C2)参照)になる、なぜなら圧力損失によって流れが遅くなるからである。完全に閉塞したパイプ11の場合は、流れがないため、曲線C3で示されるように、傾きはゼロ(傾きΔP/dt(C3)参照)になる。
【0030】
考慮したケースの全てにおいて、本発明は、検知すべき圧力損失(阻害)に比例する、ニューマティックシステム13における圧力の経時的解析に基づいている。このようにして、本発明により、工具12の内部パイプ11の適合性を保証することが可能になる。このことは、潤滑剤を送るパイプ11に閉塞がないことが、工具12を有効に動作させるための条件である、微量潤滑工具またはオイル微噴霧化工具またはMQL(最小量潤滑)工具にとってより一層重要である。