(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】ハニカム成形体のマスキング方法、ハニカム成形体の目封止部形成方法、及びハニカム焼成品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/02 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
B28B11/02
(21)【出願番号】P 2018060661
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤江 将啓
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 祐二
(72)【発明者】
【氏名】板津 研
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥弘
【審査官】武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-220298(JP,A)
【文献】特開2010-105324(JP,A)
【文献】特開2003-320517(JP,A)
【文献】特開昭58-037480(JP,A)
【文献】特開2015-178436(JP,A)
【文献】特開2004-261625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B11/00-19/00
B01D39/00-41/04
B01J21/00-38/74
F01N3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一底面から第二底面まで延びる複数のセルを備える四角柱状のハニカム成形体を用意する工程と、
一方の主表面に粘着面を有し、他方の主表面に非粘着面を有する少なくとも一枚のフィルムを用意する工程と、
該ハニカム成形体の第一底面及び第二底面の少なくとも一方の底面に、該粘着面が該少なくとも一方の底面と接触するようにして、該フィルムを貼り付ける工程とを含み、
前記フィルムを貼り付ける工程は、
前記少なくとも一方の底面の全面を被覆する底面被覆部と、
前記少なくとも一方の底面の外周形状を画定する四角形の一方の対辺に沿った一対の外縁部、及び、該四角形の他方の対辺からはみ出す一対のはみ出し部と、
を有するように該フィルムを貼り付けること、並びに、
前記一対のはみ出し部のそれぞれの少なくとも一部の粘着面を、該ハニカム成形体の対向する一対の側面に接触させ
、前記一対の外縁部を、該ハニカム成形体の対向する他方の一対の側面に接触させないようにして、貼り付けることを含む、
ハニカム成形体のマスキング方法。
【請求項2】
前記貼り付ける工程は、少なくとも一方のはみ出し部を折り返して、当該はみ出し部の少なくとも一部の粘着面同士を貼り合わせることを含む、請求項1に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
【請求項3】
少なくとも一方のはみ出し部について、当該はみ出し部の粘着面の面積のうち、30%以上が隠蔽されるように前記粘着面同士の貼り合わせが行われる、請求項2に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
【請求項4】
前記貼り付ける工程は、少なくとも一方のはみ出し部を、当該はみ出し部の境界を形成する前記四角形の一辺に平行に折り返すことを含む、請求項2又は3に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
【請求項5】
各はみ出し部において、前記粘着面が前記ハニカム成形体の側面に接触している面積が800mm
2以下である請求項1~4の何れか一項に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のハニカム成形体のマスキング方法を実施する工程と、
前記フィルムの底面被覆部に複数の孔を空けた後、当該複数の孔内に目封止用スラリーを圧入する工程と、
該スラリーを乾燥し、固化させる工程と、
前記フィルムに付着した固化後のスラリーを除去する工程と、
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程と、
を含むハニカム成形体の目封止部形成方法。
【請求項7】
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程が、
空気噴射装置からのエアブローにより前記フィルムの少なくとも一方のはみ出し部を起立させる工程と、
把持部を備えたフィルム剥離装置により、起立した少なくとも一方のはみ出し部を把持して、前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程と、
を含む請求項6に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
【請求項8】
前記フィルムの少なくとも一方のはみ出し部は、当該はみ出し部を折り返して、当該はみ出し部の少なくとも一部の粘着面同士を貼り合わせることにより形成される、両外面が非粘着面である部分を有しており、
前記フィルム剥離装置は、起立したはみ出し部のうち両外面が非粘着面である部分を把持する請求項7に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
【請求項9】
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程が、前記フィルムの底面被覆部をブラッシングすることを含む請求項
6に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
【請求項10】
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程が、回転軸を中心に回転可能な基体と、当該基体の表面に植え付けられた複数のブラシ毛とを備え、回転軸が前記セルの延びる方向に平行な少なくとも一つの回転ブラシを回転させながら、該複数のブラシ毛を前記フィルムの底面被覆部に接触させることを含む請求項9に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
【請求項11】
請求項
6~10の何れか一項に記載の目封止部形成方法を実施することで得られたハニカム成形体を焼成することを含むハニカム焼成品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム成形体のマスキング方法に関する。また、本発明はハニカム成形体の目封止部形成方法に関する。また、本発明はハニカム焼成品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、環境汚染の原因となる炭素を主成分とするパティキュレート(粒子状物質)が多量に含まれている。そのため、一般的にディーゼルエンジン等の排気系には、パティキュレートを捕集するためのフィルタが搭載されている。
【0003】
このようなフィルタとして、第一底面104から第二底面106まで延び、第一底面104が開口して第二底面106に目封止部103を有する複数の第1セル108aと、第一底面104から第二底面106まで延び、第一底面104に目封止部103を有し、第二底面106が開口する複数の第2セル108bとを備え、複数の第1セル108aと複数の第2セル108bは隔壁112を挟んで交互に隣接配置されている柱状ハニカム構造体100が知られている(
図10参照)。
【0004】
この種のフィルタにおいては、以下のようなメカニズムにより粒子状物質が捕集される。柱状のハニカム構造体100の上流側の第一底面104に粒子状物質を含む排ガスが供給されると、排ガスは第1セル108aに導入されて第1セル108a内を下流に向かって進む。第1セル108aは下流側の第二底面106が目封止されているため、排ガスは第1セル108aと第2セル108bを区画する多孔質の隔壁112を透過して第2セル108bに流入する。粒子状物質は隔壁112を通過できないため、第1セル108a内に捕集される。第2セル108bに流入した清浄な排ガスは第2セル108b内を下流に向かって進み、下流側の第二底面106から排出される。
【0005】
特開2009-220298号公報には、目封止部を有する柱状ハニカム構造体の製造方法が開示されている。未焼成のハニカム構造体の一方の底面に、粘着層を備えるマスク(以下、「フィルム」ともいう。)を貼り付け、このマスクの、目封止部が配設されるべきセルを覆っている部分に、画像処理を利用したレーザ加工等によって孔を開けた後、マスクが貼り付けられた底面部を目封止用スラリーに浸漬し、孔からセルの端部に目封止用スラリーを充填し、乾燥させ、底面に貼り付けたマスクを剥がす。他方の底面についても、同様の方法で目封止部を形成する。その後、目封止部を有する柱状ハニカム構造体を焼成すると、焼成ハニカム構造体が得られ、フィルタとして使用可能となる。
【0006】
当該公報の教示に従って貼り付けたマスクの状態を
図11に示す。当該公報によれば、マスク(703)はハニカム成形体(700)の底面(701)全体を覆うように貼り付けるとともに、底面(701)からはみ出した部分が側面(704)に折り込まれることが記載されている。マスクに所定の孔を開けて目封止用スラリーをセルの端部に充填した後、マスクに付着した目封止用スラリーが固化したものがブラッシング装置により除去される。次いで、空気噴射装置を用いてマスクのはみ出した部分が起こされる。起こされたマスクのはみ出し部分がマスク剥離装置の把持爪によって把持され、マスクが剥がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1によれば、ハニカム成形体を破損することなく、容易にマスク付目封止ハニカム成形体からマスクを剥すことができると記載されている。しかしながら、本発明者の検討結果によれば、マスクがハニカム成形体から上手く剥がれない場合があり、ハニカム製品の歩留まりを低下させることが分かった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一側面において、貼り付けたフィルムを容易に剥がすことのできるハニカム成形体のマスキング方法を提供することを課題とする。本発明は別の一側面において、本発明に係るハニカム成形体のマスキング方法を利用した目封止部形成方法を提供することを課題とする。本発明は更に別の一側面において、本発明に係る目封止部形成方法を利用したハニカム焼成品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許文献1に記載のマスキング方法において、フィルムがハニカム成形体から剥がれなかった事象を検討した。その結果、ハニカム成形体の底面に貼り付けたフィルムがハニカム成形体の四角形底面の全辺からはみ出しており、はみ出した部分は折り畳んでハニカム成形体の四側面に貼り付けられていることでフィルムが剥がれにくくなっていることを見出した。実際、フィルムがハニカム成形体の四側面に貼り付けたことで以下の(1)~(3)の事象が生じていた。
(1)空気噴射装置によるフィルムの起こし操作が失敗する。
(2)フィルムが起き上がったとしてもその起き上がったときのフィルム位置が安定しないため、マスク剥離装置の把持爪によってフィルムが掴めない。
(3)マスク剥離装置の把持爪によって把持したフィルムが把持爪から抜けてしまう。
【0011】
本発明者は、目封止用スラリーをセルの端部に充填する際には剥がれにくい一方で、フィルムを剥がしたいときに容易にフィルムを剥がせるようにする方策について鋭意検討したところ、ハニカム成形体の底面に加えて、対向する一対の側面にのみフィルムを貼り付けることが効果的であることを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0012】
[1]
第一底面から第二底面まで延びる複数のセルを備える四角柱状のハニカム成形体を用意
する工程と、
一方の主表面に粘着面を有し、他方の主表面に非粘着面を有する少なくとも一枚のフィルムを用意する工程と、
該ハニカム成形体の第一底面及び第二底面の少なくとも一方の底面に、該粘着面が該少なくとも一方の底面と接触するようにして、該フィルムを貼り付ける工程とを含み、
前記フィルムを貼り付ける工程は、
前記少なくとも一方の底面の全面を被覆する底面被覆部と、
前記少なくとも一方の底面の外周形状を画定する四角形の一方の対辺に沿った一対の外縁部、及び、該四角形の他方の対辺からはみ出す一対のはみ出し部と、
を有するように該フィルムを貼り付けること、並びに、
前記一対のはみ出し部のそれぞれの少なくとも一部の粘着面を、該ハニカム成形体の対向する一対の側面に接触させ、前記一対の外縁部を、該ハニカム成形体の対向する他方の一対の側面に接触させないようにして、貼り付けることを含む、
ハニカム成形体のマスキング方法。
[2]
前記貼り付ける工程は、少なくとも一方のはみ出し部を折り返して、当該はみ出し部の少なくとも一部の粘着面同士を貼り合わせることを含む、[1]に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
[3]
少なくとも一方のはみ出し部について、当該はみ出し部の粘着面の面積のうち、30%以上が隠蔽されるように前記粘着面同士の貼り合わせが行われる、[2]に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
[4]
前記貼り付ける工程は、少なくとも一方のはみ出し部を、当該はみ出し部の境界を形成する前記四角形の一辺に平行に折り返すことを含む、[2]又は[3]に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
[5]
各はみ出し部において、前記粘着面が前記ハニカム成形体の側面に接触している面積が800mm2以下である[1]~[4]の何れか一項に記載のハニカム成形体のマスキング方法。
[6]
[1]~[5]の何れか一項に記載のハニカム成形体のマスキング方法を実施する工程と、
前記フィルムの底面被覆部に複数の孔を空けた後、当該複数の孔内に目封止用スラリーを圧入する工程と、
該スラリーを乾燥し、固化させる工程と、
前記フィルムに付着した固化後のスラリーを除去する工程と、
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程と、
を含むハニカム成形体の目封止部形成方法。
[7]
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程が、
空気噴射装置からのエアブローにより前記フィルムの少なくとも一方のはみ出し部を起立させる工程と、
把持部を備えたフィルム剥離装置により、起立した少なくとも一方のはみ出し部を把持して、前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程と、
を含む[6]に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
[8]
前記フィルムの少なくとも一方のはみ出し部は、当該はみ出し部を折り返して、当該はみ出し部の少なくとも一部の粘着面同士を貼り合わせることにより形成される、両外面が非粘着面である部分を有しており、
前記フィルム剥離装置は、起立したはみ出し部のうち両外面が非粘着面である部分を把
持する[7]に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
[9]
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程が、前記フィルムの底面被覆部をブラッシングすることを含む[6]に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
[10]
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程が、回転軸を中心に回転可能な基体と、当該基体の表面に植え付けられた複数のブラシ毛とを備え、回転軸が前記セルの延びる方向に平行な少なくとも一つの回転ブラシを回転させながら、該複数のブラシ毛を前記フィルムの底面被覆部に接触させることを含む[9]に記載のハニカム成形体の目封止部形成方法。
[11]
[6]~[10]の何れか一項に記載の目封止部形成方法を実施することで得られたハニカム成形体を焼成することを含むハニカム焼成品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るハニカム成形体のマスキング方法の一実施形態によれば、底面に貼り付けたフィルムを容易に剥がすことができる。当該特徴は、フィルムの剥がし操作を手作業で行う場合及びフィルム剥離装置により自動で行う場合の何れにおいても生産速度を向上させる点で有利である。特に、フィルム剥離装置を用いて自動でフィルムの剥がし操作を行う場合は、フィルム剥がし成功率が高まり、ハニカム製品の歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るマスキング方法の対象となる四角柱状のハニカム成形体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るハニカム成形体のマスキング方法の一実施形態によるフィルムの貼り方を説明する模式的な斜視図である。
【
図3】はみ出し部の粘着面の面積と、はみ出し部の折り返しによって隠蔽される面積の関係を説明する模式的な側面図である。
【
図4A】はみ出し部の折り返し方法の別の例を説明する模式的な側面図である。
【
図4B】はみ出し部の折り返し方法の更に別の例を説明する模式的な側面図である。
【
図4C】はみ出し部の折り返し方法の更に別の例を説明する模式的な側面図である。
【
図5】空気噴射装置を用いてフィルムのはみ出し部が起き上がる様子を示す模式図である。
【
図6】フィルム剥離装置によってフィルムが剥がされている様子を模式的に示す側面図である。
【
図7A】回転ブラシの構造例を示す模式的な斜視図である。
【
図7B】回転ブラシの平面構造を示す図(a)及び側面構造を示す図(b)である。
【
図8】一対以上の回転ブラシで複数のハニカム成形体に対するフィルム剥離工程を連続的に行う様子を示す模式図である。
【
図9】実施例におけるフィルムの貼り方を説明する模式図である。
【
図10】排ガス浄化用フィルタとしての柱状ハニカム構造体の構造を説明する模式図である。
【
図11】特許文献1において教示されるハニカム成形体へのフィルムの貼り方を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
(1.ハニカム成形体)
図1には、本発明に係るマスキング方法の対象となる四角柱状のハニカム成形体の一例を模式的に示す斜視図が記載されている。図示のハニカム成形体100は側面102と、側面102の内側に配設され、第一底面104から第二底面106まで延びる複数のセル108とを備える。複数のセル108は多孔質の隔壁112によって区画形成されている。
【0017】
ハニカム成形体の外形は四角柱状である限り特に限定されないが、例えば、底面が長方形又は正方形の四角柱状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、耐熱衝撃性を高めるという観点から、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0018】
セルの延びる方向(高さ方向)に直交する断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム成形体の焼成品をフィルタとして使用したときに、排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、浄化性能が優れたものとなる。
【0019】
ハニカム成形体は例えば以下の手順で作製可能である。セラミックス原料、分散媒、造孔材及びバインダを含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形することによりハニカム成形体が作製される。原料組成物中には分散材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。押出成形後、ハニカム成形体は乾燥することが好ましい。
【0020】
セラミックス原料としては、限定的ではないが、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア等のセラミックスを得るための原料が挙げられる。具体的には、限定的ではないが、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト等が挙げられる。セラミックス原料は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0021】
(2.マスキング)
次に、ハニカム成形体のマスキング方法について説明する。
図2には、本発明に係るハニカム成形体のマスキング方法の一実施形態によるフィルムの貼り方を説明する模式図が示されている。
【0022】
まず、一方の主表面に粘着面を有し、他方の主表面に非粘着面を有する少なくとも一枚、好ましくは二枚のフィルム120を用意する。フィルム120はハニカム成形体の各底面の面積よりも大きな面積を有するものを使用する。フィルムの材料は、特に制限はないが、後述する孔を形成するための熱加工が容易であるため、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、又はテフロン(登録商標)であることが好ましい。フィルムの粘着面の材料は、アクリル系樹脂、ゴム系(例えば、天然ゴムまたは合成ゴムを主成分とするゴム)、シリコン系樹脂であることが好ましい。
【0023】
フィルムの粘着面の粘着力は、JIS Z0237:2009の試験方法1に準じて測定される値が、1.2~2.5N/cmであることが好ましく、1.4~2.3N/cmであることが更に好ましく、1.6~1.9N/cmであることが特に好ましい。上記粘着力が1.2N/cm以上であることで、後述する余分な目封止用スラリーの除去のためのブラッシングに際してフィルムが剥離するおそれを少なくすることができる。また、上記粘着力が2.5N/cm以下であることで、後述するフィルムの剥離工程においてハニカム成形体の底面からフィルムが剥れ易くなる。フィルムの厚さは、20~50μmであることが好ましく、30~40μmであることが更に好ましい。フィルムの厚さが20μm以上であることで、シワが生じにくいのでハニカム成形体の底面に正確に貼り付け易い、フィルムを正確に折り込みやすくなる、そして、不必要なセルにスラリーが充填されるおそれが低減されるといった利点が得られる。また、フィルムの厚さが50μm以下であることで、底面からはみ出した部分を折り込んだ状態が維持されやすくなる。
【0024】
次いで、上記手順で得られたハニカム成形体100の第一底面104及び第二底面106の少なくとも一方の底面に、フィルム120の粘着面がハニカム成形体100の少なくとも一方の底面と接触するようにして、少なくとも一枚のフィルムを貼り付ける。フィルム120は、ハニカム成形体100の第一底面104及び第二底面106の両方に貼り付けることが好ましい。
【0025】
前記フィルム120は、フィルムを貼り付ける各底面の全面を被覆する底面被覆部123が形成されるように、貼り付けることが好ましい。これにより、次工程で行われる目封止部形成時に、不必要なセル内に目封止部形成用スラリーが浸入するのを防止することができる。
【0026】
また、前記フィルム120は、フィルムを貼り付ける各底面(104、106)の外周形状を画定する四角形の一方の対辺に沿った一対の外縁部122、及び、該四角形の他方の対辺からはみ出す一対のはみ出し部124が形成されるように、該フィルムの大きさを調整し、貼り付けることが好ましい。そして、一対のはみ出し部124のそれぞれの少なくとも一部の粘着面は、ハニカム成形体100の対向する一対の側面に接触させるようにして、貼り付けることが好ましい。これにより、フィルムが適度に剥がれにくくなるので、次工程で行われる目封止部形成時に、フィルムが不用意に剥がれて、不必要なセル内に目封止部形成用スラリーが浸入するのを防止することができる。
【0027】
一対のはみ出し部124をハニカム成形体100の対向する一対の側面に貼り付ける際は、少なくとも一方のはみ出し部124を折り返して、当該折り返されたはみ出し部124の少なくとも一部の粘着面同士を貼り合わせることが好ましい。粘着面同士が貼り合わされたはみ出し部124の外表面は非粘着面となるため、ハニカム成形体100の側面には貼り付かない。従って、後工程で手又は空気噴射装置を用いてフィルムを起こしやすくなるという利点が得られる。また、粘着面同士が貼り合わされたはみ出し部124の外表面を把持してフィルム120を剥がすことで、剥がしたフィルムが手やフィルム剥離装置の把持爪に付着するのを防止することができ、作業効率を高めることができる。折り返した後、粘着面が露出しないように、折り返していないはみ出し部124の粘着面をハニカム成形体の側面に全部貼り付けることが好ましい。
【0028】
フィルムを剥がす際には、ハニカム成形体100の対向する一対の側面に貼り付けられた一対のはみ出し部124のうち、一方のはみ出し部124のみを把持できれば容易に剥がせるため、一方のはみ出し部124のみを折り返して、当該折り返されたはみ出し部124の少なくとも一部の粘着面同士を貼り合わせれば十分である。
【0029】
はみ出し部124の折り返し長さは、長いほど非粘着面がはみ出し部124の外表面を形成する面積が大きくなるためフィルムを起こしやすく、フィルムを剥離しやすく、また、フィルムの把持領域を大きできるという利点が得られる。この観点から、折り返されるはみ出し部124の粘着面の面積のうち、30%以上が隠蔽されるようにはみ出し部124を折り返すことが好ましく、50%以上が隠蔽されるようにはみ出し部124を折り返すことがより好ましく、60%以上が隠蔽されるようにはみ出し部124を折り返すことが更により好ましい。
【0030】
但し、はみ出し部124の折り返し長さは、長いほどフィルムのハニカム成形体100の側面への粘着力が低下することになる。フィルムのハニカム成形体100の側面への粘着力が過度に低下すると、次工程で行われる目封止部形成時に、フィルムが不用意に剥がれて、不必要なセル内に目封止部形成用スラリーが浸入するおそれがある。このため、折り返されるはみ出し部124の粘着面の面積のうち、100%未満が隠蔽されるようにはみ出し部124を折り返すことが好ましく、90%以下が隠蔽されるようにはみ出し部124を折り返すことがより好ましく、80%以下が隠蔽されるようにはみ出し部124を折り返すことが更により好ましい。
【0031】
図3には、折り返されるはみ出し部124の粘着面の面積と、はみ出し部124の折り返しによって隠蔽される粘着面の面積の関係を説明する模式的な側面図が示されている。
図3においては、側面から観察したときに、折り返されるはみ出し部124の粘着面の長さが10であり、折り返し長さは3である。このとき、折り返す前のはみ出し部の粘着面の面積を10とすると、折り返すことで隠蔽されるはみ出し部の粘着面の面積は6であるから、はみ出し部の粘着面の面積のうち60%が隠蔽されているといえる。
【0032】
図2及び
図3に示す例では、はみ出し部124を、はみ出し部124の境界を形成する前記四角形の一辺に平行に折り返したが、折り返しの方法はこれに限られるものではない。例えば、
図4Aに示すように、折り返し後のはみ出し部124の形状が五角形となるように折り返すこともできるし、
図4Bに示すように、折り返し後のはみ出し部124の形状が三角形となるように折り返すこともできる。更には、
図4Cに示すように、折り返し後のはみ出し部124の形状が六角形となるように折り返すこともできる。なお、
図4A、
図4B及び
図4C中の点線は内側に折り返したフィルム部分を示す。
【0033】
各はみ出し部において、フィルムの粘着面がハニカム成形体の側面に接触している面積は、使用する粘着面の材料及びハニカム成形体の材質にもよるが、後工程で剥離し易くするという観点から、800mm2以下であることが好ましく、600mm2以下であることがより好ましく、400mm2以下であることが更により好ましい。但し、フィルムの粘着面がハニカム成形体の側面に接触している面積は、小さいほどフィルムのハニカム成形体100の側面への粘着力が低下することになる。フィルムのハニカム成形体100の側面への粘着力が過度に低下すると、次工程で行われる目封止部形成時に、フィルムが不用意に剥がれて、不必要なセル内に目封止部形成用スラリーが浸入するおそれがある。そこで、各はみ出し部において、フィルムの粘着面がハニカム成形体の側面に接触している面積は、使用する粘着面の材料及びハニカム成形体の材質にもよるが、35mm2以上であることが好ましく、100mm2以上であることがより好ましく、200mm2以上であることが更により好ましい。
【0034】
(3.目封止部の形成)
本発明の一側面によれば、本発明に係るハニカム成形体のマスキング方法を利用した目封止部形成方法が提供される。
本発明に係る目封止部形成方法は一実施形態において、
本発明に係るハニカム成形体のマスキング方法を実施する工程と
前記フィルムの底面被覆部に複数の孔を空けた後、当該複数の孔内に目封止用スラリーを圧入する工程と、
該スラリーを乾燥し、固化させる工程と、
前記フィルムに付着した固化後のスラリーを除去する工程と、
前記フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する工程と、
を含む。
【0035】
本発明に係るハニカム成形体のマスキング方法によりフィルムを貼付した後は、目封止部が配設されるべきセルを覆っているフィルム部分に複数の孔を開けた後、フィルムが貼り付けられた底面部を目封止用スラリーに浸漬し、当該複数の孔からセルの端部に目封止用スラリーを圧入する。フィルムに孔を開ける方法は特に制限はないが、例えば画像処理を利用したレーザ加工によって行うことができる。当該操作を両方の底面に対して実施し、両底面のセルが目封止用スラリーによって交互に封止されたハニカム成形体(以下、「フィルム付目封止ハニカム成形体」ともいう。)を得る。
【0036】
目封止用スラリーをセルの端部に圧入した後、該スラリーを乾燥固化する際の条件は、特に制限はないが、例えば100~150℃で20~60分とすることができる。
【0037】
目封止用スラリーは、例えば、セラミックス粉末、分散媒(例えば、水等)、及び必要に応じて、バインダ、解膠剤、発泡樹脂等の添加剤を混合することによって調製したものを用いることができる。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックスであることが好ましく、ハニカム構造体と同材質であることがより好ましい。バインダとしては、ポリビニルアルコールやメチルセルロースなどを挙げることができる。
【0038】
フィルム付目封止ハニカム成形体のフィルムには、固化した目封止用スラリーがハニカム成形体の底面側及び側面側に余分に付着していることが多い。固化した余分な目封止用スラリーは除去しておくほうが、後工程でフィルムを剥がしやすくなるので好ましい。固化した余分な目封止用スラリーの除去方法に特に制限はないが、例えばブラッシングによって除去することができる。ブラッシングは手作業でも行ってもよいが、ブラッシング装置を用いて自動的に行うことが工業的な観点から好ましい。具体的なブラッシング装置については特許文献1に記載されている装置を使用することができ、その全内容を本明細書に援用する。また、ブラッシング装置は後述するフィルム剥離用の回転ブラシを有するブラッシング装置を用いてもよい。
【0039】
固化した余分な目封止用スラリーを除去した後、フィルムを前記ハニカム成形体から剥離する。フィルムの剥離方法に特に制限はなく、手作業でフィルムを引っ張って剥がして行ってもよいが、フィルム剥離装置を用いて自動的に行うことが工業的な観点から好ましい。フィルム剥離装置としては、例えば特許文献1に記載のように、把持爪を有するフィルム剥離装置を使用することができる。また、フィルムの底面被覆部をブラッシングすることによってフィルムを剥離することもできる。ブラッシングは手作業で行うこともできるが、ブラッシング装置を使用することが工業的な観点から好ましい。
【0040】
<3-1 把持爪を有するフィルム剥離装置を使用したフィルム剥離>
把持爪を有するフィルム剥離装置を使用する場合は、まず、ハニカム成形体の側面に貼り付けられたフィルムを起こす操作を実施することが望ましい。この操作は、例えば特許文献1に記載の空気噴射装置を用いて行うことができる。
図5には、空気噴射装置500によるフィルム起こし操作を説明する模式的な斜視図が示されている。
図5の(a)は、フィルム起こし前の状態を示す。空気噴射装置500は、第一底面104側に貼り付けたフィルム120に対しては、はみ出し部124が設けられたハニカム成形体100の側面102に沿って、第二底面106側から第一底面104側に向かって(図中の矢印の方向)、空気を噴射する。また、空気噴射装置500は、第二底面106側に貼り付けたフィルム120に対しても同様に、空気を噴射する。これにより、
図5(b)に示すように、各底面(104、106)に貼り付けたフィルム120が起き上がるので、人手又はフィルム剥離装置が容易にはみ出した部分を把持することができ、マスクを確実に剥すことができるようになる。
【0041】
ハニカム成形体の各底面に貼り付けたフィルムは、ハニカム成形体の対向する一対の側面に貼り付いていることで適度な粘着力で貼り付いている一方で、ハニカム成形体の対向するもう一対の側面には貼り付いていない。このことにより、ハニカム成形体の四側面にフィルムが貼り付いている場合と比較して、フィルム120が容易に起き上がる。
【0042】
空気噴射装置500としては、例えば、ノズル502と、このノズル502に空気を送り込む空気配管504とを備えた空気噴射装置を用いることができる。空気配管504は図示しないコンプレッサー等の空気供給源に接続することができる。
【0043】
空気噴射装置によって噴射する空気の圧力は、0.2~0.9MPaであることが好ましく、0.3~0.6MPaであることが更に好ましく、0.3~0.5MPaであることが特に好ましい。上記圧力が0.2MPa以上であることにより、フィルムのはみ出し部が起き上がる確率を高めることができる。また、上記圧力が0.9MPa以下であることで、フィルムが破れるおそれを軽減することができる。また、空気の噴射時間は、0.2~2.0秒であることが好ましく、0.3~1.5秒であることが更に好ましく、0.5~1.0秒であることが特に好ましい。空気の噴射時間が0.2秒以上であると、フィルムのはみ出し部が起き上がる確率を高めることができる。また、空気の噴射時間が2.0秒以下であることでフィルムが破れるおそれを低減することができる。また、噴射回数は、1~3回であることが好ましく、1回であることが更に好ましい。
【0044】
また、空気噴射装置によって噴射した空気が、フィルムのはみ出し部とハニカム成形体の側面の間に入り込むことによって、フィルムのはみ出し部を起こすことができれば、空気の噴射角度や空気を噴射する速度は特に制限はないが、空気の噴射角度、即ち、ハニカム成形体の側面と空気を噴射する方向とのなす角度は、5~60°であることが好ましく、15~45°であることが更に好ましい。また、空気を噴射する速度は、100~400m/秒であることが好ましく、150~300m/秒であることが更に好ましい。
【0045】
起き上がったフィルムのはみ出し部をフィルム剥離装置の把持爪で挟んで引っ張ることでフィルムを剥離することができる。フィルム剥離装置としては、例えば特許文献1に記載のフィルム剥離装置を用いることができ、その全内容を本明細書に援用する。
図6には、フィルム剥離装置600によってフィルム120が剥がされている様子を模式的に示す側面図である。図示の実施形態に係るフィルム剥離装置600は、フィルムのはみ出し部を把持するための把持面を有する一対の把持爪611及びこの把持爪611を開閉する爪駆動装置を備えた把持装置610と、この把持装置610を移動させる第一の直線駆動装置620と、第一の直線駆動装置620を移動させる第二の直線駆動装置630と、第二の直線駆動装置630を移動させる第三の直線駆動装置640とを備える。
【0046】
一対の把持爪の把持力は、0.3~0.7MPaであることが好ましく、0.4~0.6MPaであることが更に好ましく、0.5~0.55MPaであることが特に好ましい。上記把持力が0.3MPa以上であることにより、把持爪からフィルムが容易に滑り抜けてしまうのを防止することができる。また、上記把持力が0.7MPa以下であることにより、ハニカム成形体の底面にフィルムが接着されたまま把持爪を強制的に引き降ろすことでハニカム成形体が破壊されてしまうのを防止することができる。即ち、フィルムの粘着力が強すぎた場合、把持力が粘着力に勝ってしまうと、底面からフィルムを無理に引き剥がすことになり、例えば、底面の一部が欠けてしまう等のおそれがあるところ、上記把持力を0.7MPa以下とすることで、そのおそれを少なくすることができる。なお、一対の把持爪の把持面には、剥離後のフィルムの付着を防ぐ非粘着処理が施されていることが好ましい。非粘着処理としては、例えば、トシカルコート、フッ素系樹脂コート(例えば、PTFE、PFA、FEP等)などを挙げることができる。
【0047】
第一の直線駆動装置620は、
図6に示すように、把持装置610に接続した接続部620aと、この接続部620aにその一端が固定され、接続部620aを直線方向に移動させる柱状の第一シャフト620bと、第一シャフト620bを出し入れ可能な凹部を有し、この凹部に第一シャフト620bが嵌め込まれている第一シリンダー620cと、中心軸が第一シャフト620bの中心軸に沿って配置され、一方の端部が接続部620aに固定され、他方の端部が第一シリンダー620cに固定されていることに加え、接続部620aが第一シリンダー620cに向かって移動する方向の力を与える所定のバネ定数を有する円筒形状の第一引張コイルバネ620dと、を備えることができる。第一の直線駆動装置620は、第一引張コイルバネを用いることによって、フィルムがハニカム構造体の底面から剥がれる速度に応じて接続部620aが移動するため、マスクが破損するおそれが低減され、ハニカム成形体の底面にフィルムの一部が残るおそれが低減されるという利点がある。
【0048】
第一シリンダーとしては、例えば、エアシリンダー、油圧シリンダー、電動シリンダーなどを挙げることができる。これらの中でも、制御が容易であるため、エアシリンダーが好ましい。第一の直線駆動装置は、把持爪がマスクを把持するまでは、第一シリンダーによって第一引張コイルバネを伸張させておき、把持爪がマスクを把持した後は、第一シリンダーによって第一引張コイルバネを伸張させる力を加えずに、第一引張コイルバネのバネ力によって接続部(把持爪)を後退させることができる。なお、後述する第二シリンダーも同様の動作をするものである。
【0049】
第二の直線駆動装置630は、
図6に示すように、第一の直線駆動装置620の第一シリンダー620cに接続し、第一の直線駆動装置620を支持する支持体630aと、この支持体630aにその一端が固定され、支持体630aを水平方向に移動させる柱状の第二シャフト630bと、第二シャフト630bを出し入れ可能な凹部を有し、この凹部に第二シャフト630bが嵌め込まれている第二シリンダー630cと、中心軸が第二シャフト630bの中心軸に沿って配置され、一方の端部が支持体630aに固定され、他方の端部が第二シリンダー630cに固定されていることに加え、支持体630aが第二シリンダー630cに向かって水平方向に移動する方向の力を与える所定のバネ定数を有する円筒形状の第二引張コイルバネ630dと、を備えることができる。第二の直線駆動装置630は、第二引張コイルバネ630dを用いることによって、フィルムがハニカム成形体の底面から剥がれる速度に応じて支持体630aが移動するため、マスクが破損するおそれが低減され、ハニカム成形体の底面にフィルムの一部が残るおそれが低減されるという利点がある。
【0050】
支持体630aは、水平方向に対して0~45°の第一シリンダー支持面630a1を有しており、この第一シリンダー支持面630a1上に第一シリンダー620c、即ち、第一の直線駆動装置620を配置することによって、第一の直線駆動装置620の接続部620aが直線方向に移動すると、一対の把持爪611によって把持されたフィルム120は斜め方向に引き上げられる。このようにフィルム120を斜め方向に引き上げると、フィルムのはみ出した部分を引っ張る力が分散されるため、剥しやすくなるという利点がある。
【0051】
第三の直線駆動装置640は、
図6に示すように、第二の直線駆動装置630の第二シリンダー630cに接続し、第二の直線駆動装置630を支持する支持板640aと、その一端が支持板640aに固定され、支持板640aを鉛直方向に移動させる柱状の第三シャフト640bと、第三シャフト640bを出し入れ可能な凹部を有し、この凹部に第三シャフト640bが嵌め込まれている第三シリンダー640cとを備えるものを用いることができる。
【0052】
フィルム剥離装置600によるフィルム剥離動作について例示する。まず、一対の把持爪611によって空気噴射装置で起こしたはみ出し部124を挟む。このとき、一対の把持爪611は、起立したはみ出し部のうち両外面が非粘着面である部分を把持することが好ましく、起立したはみ出し部のうち両外面が非粘着面である部分のみを把持することがより好ましい。次に、第一シリンダー620c内に第一シャフト620bを引き込むことによって、一対の把持爪611を移動させる。このとき、一対の把持爪611に把持されたフィルム120には
図6に示す矢印Aの方向に力がかかる。次に、接続部620aが移動端にある状態を0.2~0.7秒(好ましくは0.3~0.5秒)維持する。次に、第二シリンダー630c内に第二シャフト630bを引き込むとともに、この引き込み動作の開始時から0.2~0.7秒(好ましくは0.3~0.5秒)後に第三シリンダー640c内に第三シャフト640bを引き込むことによって、第二の直線駆動装置630を鉛直方向下向きに移動させ、一対の把持爪611を降下させる。一対の把持爪611を降下させると、フィルムの剥離が完了する。
【0053】
<3-2 ブラッシング装置を使用したフィルム剥離>
また、フィルム剥離装置としてブラッシング装置を使用する場合は、例えば、
図7A及び
図7Bに示すように、回転軸Aを中心に回転可能な基体710と、当該基体710の表面に植え付けられた複数のブラシ毛720とを備える回転ブラシ700を好適に用いることができる。ブラッシング装置を使用する場合は、フィルムのはみ出し部を把持することはないため、フィルムのはみ出し部を内側に折り返す必要はない。
【0054】
ブラッシング後の底面の均質性を向上させるという観点からは、回転方向の異なる二つ以上の回転ブラシを用いて、又は、一つの回転ブラシの回転方向を途中で逆転させて、フィルムの剥離を行うことが好ましい。
【0055】
図7Bを参照すると、複数のブラシ毛720が植え付けられている基体710の表面領域の外周輪郭712の大きさは、ハニカム成形体の底面積の大きさに応じて、作業効率を高めるという観点から適宜設定すればよい。例えば、ハニカム成形体の底面積Xと、当該外周輪郭712に囲まれた面積Yは、0.5≦Y/X≦4.5の関係式を満たすことが好ましく、1.0≦Y/X≦3.5の関係式を満たすことがより好ましい。
【0056】
フィルムを剥離する際に発生する粉塵がセル内に入り込まないようにするため、フィルムの剥離は吸引装置(図示せず)で吸引しながら行うことが好ましい。吸引装置は、フィルムを引き剥がす補助的役割を果たすとともに、剥離したフィルムを吸引するという機能も担うことができる。従って、前記基体710は、吸引装置に連通する吸引口716を備えており、フィルムの剥離中に吸引装置を稼働させて、粉塵を吸引口716から吸引することがより好ましい。吸引口716は例えばホース等の配管を介して吸引装置に連通させることができる。好ましい一実施形態において、前記基体710は、複数のブラシ毛720が植え付けられている基体710の表面領域が環状(例:円環状)であり、当該表面領域の内周輪郭714よりも内側の部分に、吸引装置に連通している吸引口716を備えている。当該構成により、粉塵を効率的に吸引することができる。
【0057】
回転ブラシは、インバータにより回転数を制御可能なモータによって駆動することが望ましい。回転ブラシの回転数が可変であることで、ハニカム成形体の材質やフィルムの粘着力等に合わせて適切な回転数に設定可能となる。一般に、回転ブラシの回転数が高くなるほどフィルムの剥離効率は上昇するものの、高くなりすぎるとハニカム成形体にダメージを与える原因となるので、両者のバランスを考慮して回転数を設定することが好ましい。回転ブラシの回転数は、例えば、100~600rpmとすることができ、典型的には200~500rpmとすることができ、より典型的には300~400rpmとすることができる。
【0058】
ブラシ毛720の長さLは、ブラシ毛の材質及び太さなどに応じて、適宜設定すればよい。ブラシ毛の長さは短くなるほどコシが強くなってフィルムの剥離効率を向上させるが、短くなりすぎるとハニカム成形体を傷つけやすくなることから、両者のバランスを考慮してブラシ毛720の長さLを設定することが好ましい。フィルムの剥離効率を高めるという観点からは、ブラシ毛720の長さLは50mm以下とすることができ、40mm以下とすることもでき、更には30mm以下とすることもできる。一方、ハニカム成形体へのダメージを抑制するという観点からは、ブラシ毛720の長さLは10mm以上とすることができ、15mm以上とすることもでき、更には20mm以上とすることもできる。
【0059】
ブラシ毛の材質は、限定的ではないが、例えばナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニール、ポリエステル、動物繊維(例えば、馬毛等)などを挙げることができる。これらの中でも、耐摩耗性、柔軟性に優れているため、ナイロンが好ましい。
【0060】
ブラシ毛の直径(線径)は例えば0.2~0.8mmとすることができ、典型的には0.3~0.6mmとすることができ、より典型的には0.4~0.5mmとすることができる。
【0061】
複数のブラシ毛は、ハニカム成形体の底面に対して垂直に近い状態で接触することがフィルムの剥離効率の観点から有利である。このため、複数のブラシ毛の植え付け方向(ブラシ毛の根元における方向)が回転軸方向となす角度は、0~45°であることが好ましく、0~20°であることがより好ましく、0~10°であることが更により好ましい。
【0062】
ハニカム成形体の底面に垂直な方向への、ブラシ毛の押込み量(ブラシ押込み量)は、多いほうがフィルムの剥離効率を高めることができるが、過多になるとブラッシング圧が増加して、ハニカム成形体へのダメージリスクが増加することから、両者のバランスを考慮してブラシ押込み量を設定することが好ましい。ブラシ毛の材質、長さ及び太さにもよるが、フィルムの剥離効率を高めるという観点からは、ブラシ押込み量は例えば0.1mm以上とすることができ、0.5mm以上とすることもでき、更には1mm以上とすることもできる。一方、ハニカム成形体へのダメージを抑制するという観点からは、ブラシ押込み量は4mm以下とすることができ、3mm以下とすることもでき、更には2mm以下とすることもできる。
【0063】
ハニカム成形体の底面に局所的な負荷を与えることなく、フィルムを剥離するという観点からは、回転軸が第1セル及び第2セルの延びる方向(すなわち、ハニカム成形体の高さ方向)に平行な少なくとも一つの回転ブラシを回転させながら、第一底面及び第二底面のそれぞれに貼り付けられたフィルムの底面被覆部に、該複数のブラシ毛を接触させることが好ましい。
【0064】
この際、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心Oが、回転軸Aから偏心した位置にあることが好ましい(
図7A、
図7B参照)。複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心Oが回転軸Aと一致している場合には、前記表面領域よりも広範囲な領域に対してフィルムを剥離することができない。このため、例えばハニカム成形体の底面中央に回転軸Aが位置する場合、ハニカム成形体の底面中央付近と底面外周付近ではブラシによるフィルムの剥離効果が底面外周付近の方が弱くなりやすい。また、フィルムの剥離領域を広げるためには回転軸を変位させる必要がある。
【0065】
これに対して、
図7A及び
図7Bに示すように、複数のブラシ毛720が植え付けられている基体710の表面領域の重心Oが、回転軸Aから偏心した位置にある場合、回転軸を変位させなくても、前記表面領域が偏心距離だけ変位するため、広範囲な領域に対してフィルムを剥離することができる。また、複数のブラシ毛が、フィルムに接触しながらハニカム成形体の底面の外周部分から中央部分に向かって変位することで、フィルムが剥離しやすくなるという効果も得られる。
【0066】
前記表面領域の重心Oを、回転軸Aから偏心させる程度については、当該表面領域の面積、ハニカム成形体の底面積、及びフィルムの剥離効率の観点から、適宜設定すればよい。好ましい一実施形態においては、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の外周輪郭712の内側に、回転軸Aが位置する。当該構成により、回転軸A付近のフィルムの剥離効率が低下するのを防止可能であり、フィルムの剥離効果の均一性が向上し、底面の均質性を向上させる。
【0067】
図7Bを参照すると、前記表面領域の重心Oを、回転軸Aから回転軸Aに直角な方向へ偏心させる距離(偏心距離D)は、3mm以上とすることができ、5mm以上とすることが好ましく、10mm以上とすることがより好ましい。偏心距離Dの上限は特に設定されないが、ディーゼルエンジンからの排ガス浄化用のフィルタ用途に使用される通常のハニカム成形体の底面積からみて、偏心距離Dは50mm以下とするのが一般的であり、30mm以下であるのが典型的である。
【0068】
工業的な観点からは、フィルムの剥離工程は、フィルムの剥離工程を受ける多数のハニカム成形体に対して連続的に実施できることが好ましい。このため、本発明に係るフィルム付目封止ハニカム成形体のフィルム剥離方法の好ましい実施形態においては、前記少なくとも一つの回転ブラシをハニカム成形体の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動させることを含む。
図8を参照すると、回転ブラシ700がハニカム成形体100の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動することで、セルの延びる方向(高さ方向)に直角な方向に並べた複数のハニカム成形体100の底面処理を連続的に実施できることが理解できる。
【0069】
回転ブラシが柱状ハニカム成形体の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動する方式としては、例えば、複数の柱状ハニカム成形体をコンベヤで一方向に搬送している間に、定位置にある回転ブラシによって順次底面処理する方式、及び、一列に並べた複数の柱状ハニカム成形体を、平行移動する回転ブラシによって順次底面処理する方式が挙げられる。
【0070】
第一底面側のフィルムの剥離及び第二底面側のフィルムの剥離は同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。作業効率の観点からは、第一底面側のフィルムの剥離及び第二底面側のフィルムの剥離は同時に行うことが好ましい。従って、本発明に係るフィルム付目封止ハニカム成形体のフィルム剥離方法の好ましい実施形態においては、
図8に示すように、フィルムの剥離工程を、一対以上の前記回転ブラシ700で柱状ハニカム成形体100の第一底面及び第二底面を挟みながら実施する。回転ブラシ700を二対以上使用する場合は、フィルム剥離後の柱状ハニカム成形体100の第一底面及び第二底面の均質性を高めるため、少なくとも一対の回転ブラシ700は残りの少なくとも一対の回転ブラシ700と回転方向を反対にすることが好ましい。
【0071】
(4.フィルム剥離後の工程)
本発明の一側面によれば、本発明に係る目封止部形成方法を実施することで得られたハニカム成形体を焼成することを含むハニカム焼成品の製造方法が提供される。焼成条件は公知の任意の条件を採用すればよく、特に制限はない。
【0072】
焼成工程の前に脱脂工程を行ってもよい。バインダの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300~1000℃程度である。従って、脱脂工程はハニカム成形体を200~1000℃程度の範囲に加熱して実施すればよい。加熱時間は特に限定されないが、通常は、10~100時間程度である。脱脂工程を経た後のハニカム成形体は仮焼体と称される。焼成工程は、ハニカム成形体の材料組成にもよるが、例えば仮焼体を1350~1600℃に加熱して、3~10時間保持することで行うことができる。
【0073】
ハニカム焼成品のそれぞれをハニカムセグメントとして利用し、複数のハニカムセグメントの側面同士を接合材で接合して一体化し、セグメント接合体としてもよい。セグメント接合体は例えば以下のように製造することができる。各ハニカムセグメントの両底面に接合材付着防止用フィルムを貼り付けた状態で、接合面(側面)に接合材を塗工する。
【0074】
次に、これらのハニカムセグメントを、ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置し、隣接するハニカムセグメント同士を圧着した後、加熱乾燥する。このようにして、隣接するハニカムセグメントの側面同士が接合材によって接合されたセグメント接合体を作製する。セグメント接合体に対しては、外周部を研削加工して所望の形状(例えば円柱状)とし、外周面にコーティング材を塗工した後、加熱乾燥させて外周壁を形成してもよい。
【0075】
接合材付着防止用フィルムの材料は、特に制限はないが、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、又はテフロン(登録商標)等の合成樹脂を好適に使用可能である。また、フィルムは粘着層を備えていることが好ましく、粘着層の材料は、アクリル系樹脂、ゴム系(例えば、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とするゴム)、又はシリコン系樹脂であることが好ましい。
【0076】
接合材付着防止用フィルムとしては、例えば厚みが20~50μmの粘着フィルムを好適に使用することができる。
【0077】
接合材としては、例えば、セラミックス粉末、分散媒(例えば、水等)、及び必要に応じて、バインダ、解膠剤、発泡樹脂等の添加剤を混合することによって調製したものを用いることができる。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックスであることが好ましく、ハニカム構造体と同材質であることがより好ましい。バインダとしては、ポリビニルアルコールやメチルセルロースなどを挙げることができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0079】
<試験番号No.1~7>
縦37mm×横37mm×高さ154mmの直方体状で、各セルが高さ方向に延び、セル密度が46.5個/cm
2であるSiC製の未焼成ハニカム成形体を用意した。この未焼成ハニカム成形体の一方の底面全体及び一対の対向する上下側面の一部を覆うように、縦70mm×横39mm(但し、No.7のみ、縦50mm×横39mm)の長方形状の透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルム(厚さ36μm)の粘着面を
図9に示すように貼り付けた。フィルムの貼り付け条件は、試験番号に応じて表1に記載の通りとした。
【0080】
フィルムの、目封止部が配設されるべきセルを覆っている部分に、画像処理を利用したレーザ加工によって孔を開けた後、マスクが貼り付けられた底面部をSiC粉及び金属Si粉を含有する目封止用スラリーに浸漬し、孔からセルの端部に目封止用スラリーを充填した。No.1~7の何れにおいても、スラリー充填時にフィルムがずれて狙いのセル以外にもスラリーが侵入してしまうという事象は発生しなかった。次に、目封止用スラリーを圧入したハニカム構造体を150℃で0.4時間乾燥した。その後、固化した余分な目封止用スラリーをブラッシング装置により除去した。
【0081】
次いで、
図5に示す空気噴射装置でハニカム成形体の上側面に貼り付いているフィルムのはみ出し部を起こした。No.1~6については、容易にフィルムのはみ出し部が起き上がった。No.7については、フィルムを起こすことは可能だったが、はみ出し部に折り返しがないため、はみ出し部を起こすことのできる空気の噴射角度の範囲が狭かった。その後、No.1~5については、
図6に示す把持爪を有するフィルム剥離装置によって、起こしたはみ出し部を把持してフィルムを剥がした。また、No.6及び7については、
図7A及び
図7Bに示すような、外径90mmの円盤基体の表面に、外径60mmの円環状に複数のナイロン製ブラシ毛(ブラシ毛長:25mm、線径0.4mm)を植え付けた回転ブラシによって回転数330rpm、ブラシ押し込み量1mmで剥がした。剥離試験は各試験番号について連続して100回行い、フィルムが完全に剥離した割合を「剥がし率」として算出した。結果を表1に示す。
【0082】
<試験番号No.8(比較例)>
No.1と同じ未焼成ハニカム成形体を用意した。次に、この未焼成ハニカム成形体の一方の底面全体を覆うように、PET(ポリエチレンテレフタレート)製であり、縦70
mm×横55mmの長方形状の透明なフィルム(厚さ36μm)を貼り付けた。このとき、未焼成ハニカム成形体の底面の一辺からフィルムの近い方の長辺までの距離が9mm、未焼成ハニカム成形体の底面の一辺からフィルムの近い方の短辺までの距離が16.5mmとなるように、フィルムを配置した。次に、底面からはみ出した部分は、
図11に示すように折り畳んでハニカム成形体の四側面に貼り付けた。
【0083】
その後、No.1と同様の手順で、目封止用スラリーのセル端部への圧入、及び固化した余分な目封止用スラリーの除去を行った。次いで、No.1と同じ条件でハニカム成形体の上側面に貼り付いているフィルムのはみ出し部を空気噴射装置により起こし、
図6に示す把持爪を有するフィルム剥離装置によって、起こしたはみ出し部を把持してフィルムを剥がした。剥離試験は連続して100回行い、フィルムが完全に剥離した割合を「剥がし率」として算出した。結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
<考察>
No.8(比較例)の方法による剥がし率が70%であるのに対して、No.1~7の方法を用いると剥がし率は95%前後に上昇することが確認された。
No.1は剥がし率が高く、また、適度な粘着面積でフィルムがハニカム成形体に貼り付いていた。このため、フィルムの貼り付け後、目封じ用スラリーを充填するまでの間にフィルムの折り込み部がその復元力により自然と起き上がり、その結果、スラリー充填時にフィルムがずれて狙いのセル以外にもスラリーが侵入してしまうリスクも小さい。
No.2及びNo.5は、No.1よりも上側はみ出し部の粘着面積が小さいため、剥がし率が高かった。このため、フィルムの貼り付け後、目封じ用スラリーを充填するまでの間にフィルムの折り込み部がその復元力により自然と起き上がり、その結果、スラリー充填時にフィルムがずれて狙いのセル以外にもスラリーが侵入してしまう可能性はNo.1よりも高い。
No.3及びNo.4は、No.1よりも上側はみ出し部の粘着面積が大きいため、スラリー充填時のフィルムがずれるおそれは低い。しかしながら、把持爪によりフィルムを把持する際に、把持爪が粘着面に接触する可能性が高くなるため、剥がしたフィルムが把持爪やフィルム剥離装置内に付着して堆積し剥がし動作を妨害する可能性があり、長期的には剥がし率が低下するリスクはNo.1よりも高い。
No.6及びNo.7から、フィルムは回転ブラシでこすりながら剥がすことも可能であった。回転ブラシを用いる場合ははみ出し部を折り返さなくてもよい(No.7)。
【符号の説明】
【0086】
100 ハニカム成形体
102 側面
104 第一底面
106 第二底面
108 セル
108a 第一セル
108b 第二セル
112 隔壁
120 フィルム
122 外縁部
123 底面被覆部
124 はみ出し部
500 空気噴射装置
502 ノズル
504 空気配管
600 フィルム剥離装置
611 把持爪
610 把持装置
620 第一の直線駆動装置
620a 接続部
620b 第一シャフト
620c 第一シリンダー
630 第二の直線駆動装置
630a 支持体
630a1 第一シリンダー支持面
630b 第二シャフト
630c 第二シリンダー
630d 第二引張コイルバネ
640 第三の直線駆動装置
640a 支持板
640b 第三シャフト
640c 第三シリンダー
700 回転ブラシ
710 基体
712 外周輪郭
714 内周輪郭
716 吸引口
720 ブラシ毛