IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

特許7045899柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法
<>
  • 特許-柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法 図1
  • 特許-柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法 図2
  • 特許-柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法 図3-1
  • 特許-柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法 図3-2
  • 特許-柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法 図4
  • 特許-柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】柱状ハニカム構造体の底面処理方法、焼成ハニカム構造体の製造方法、及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/08 20060101AFI20220325BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220325BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20220325BHJP
   B28B 11/02 20060101ALI20220325BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
B28B11/08
B01D39/20 D
B01D46/00 302
B28B11/02
F01N3/022 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018060669
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171623
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤江 将啓
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 祐二
(72)【発明者】
【氏名】板津 研
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥弘
【審査官】武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-132749(JP,A)
【文献】特開2004-261625(JP,A)
【文献】特開2009-220298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B11/00-19/00
C04B41/80-41/91
B01D46/00-46/90
F01N3/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一底面から第二底面まで平行に延び、第一底面が開口して第二底面に突出する目封止部を有する複数の第1セルと、少なくとも一つの第1セルに隔壁を挟んで隣接し、第一底面から第二底面まで平行に延び、第一底面に突出する目封止部を有し、第二底面が開口する複数の第2セルとを備える柱状ハニカム構造体を用意する工程と、
前記柱状ハニカム構造体の第1セル及び第2セルのそれぞれの目封止部から、前記突出する部分を除去する工程と、
を含み、
前記突出する部分を除去する工程は、回転軸を中心に回転可能な基体と、当該基体の表面に植え付けられた複数のブラシ毛とを備え、回転軸が第1セル及び第2セルの延びる方向に平行な少なくとも一つの回転ブラシを回転させながら、第一底面及び第二底面のそれぞれの突出する目封止部に、該複数のブラシ毛を接触させることを含む、
柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの回転ブラシにおいて、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心が、回転軸から偏心した位置にある請求項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
【請求項3】
複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の外周輪郭内側に、回転軸が位置する請求項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
【請求項4】
複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心は、回転軸から3mm以上偏心した位置にある請求項又はに記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
【請求項5】
前記突出する部分を除去する工程は、前記少なくとも一つの回転ブラシを柱状ハニカム構造体の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動させることを含む請求項1~4の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
【請求項6】
前記突出する部分を除去する工程は、一対以上の前記回転ブラシで柱状ハニカム構造体の第一底面及び第二底面を挟みながら実施する請求項1~5の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
【請求項7】
前記基体は、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域が環状であり、且つ、当該表面領域の内周輪郭よりも内側の部分に、吸引装置に連通している吸引口を備えており、前記突出する部分を除去する工程を実施中に吸引装置を稼働させて、除去された前記突出する部分を吸引口から吸引することを含む請求項1~6の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法を実施して、底面処理された柱状ハニカム構造体を得る工程と、
底面処理された柱状ハニカム構造体を焼成する工程と、
を含む、焼成ハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の焼成ハニカム構造体の製造方法を実施して、複数の焼成ハニカム構造体を得る工程と、
各焼成ハニカム構造体の両底面にマスクを貼り付けた状態で、複数の焼成ハニカム構造体の側面同士を接合材を介して接合する工程と、
を含む、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状ハニカム構造体の底面処理方法に関する。また、本発明は当該底面処理方法を利用した焼成ハニカム構造体の製造方法に関する。また、本発明は焼成ハニカム構造体の製造方法を利用した接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、環境汚染の原因となる炭素を主成分とするパティキュレート(粒子状物質)が多量に含まれている。そのため、一般的にディーゼルエンジン等の排気系には、パティキュレートを捕集するためのフィルタが搭載されている。
【0003】
このようなフィルタとして、第一底面501から第二底面504まで平行に延び、第一底面501が開口して第二底面504に目封止部502を有する複数の第1セル508と、第一底面501から第二底面504まで平行に延び、第一底面501に目封止部502を有し、第二底面504が開口する複数の第2セル510とを備え、複数の第1セル508と複数の第2セル510は隔壁505を挟んで交互に隣接配置されている柱状ハニカム構造体500が知られている(図5参照)。
【0004】
この種のフィルタにおいては、以下のようなメカニズムにより粒子状物質が捕集される。柱状のハニカム構造体500の上流側の第一底面501に粒子状物質を含む排ガスが供給されると、排ガスは第1セル508に導入されて第1セル508内を下流に向かって進む。第1セル508は下流側の第二底面504が目封止されているため、排ガスは第1セル508と第2セル510を区画する多孔質の隔壁505を透過して第2セル510に流入する。粒子状物質は隔壁505を通過できないため、第1セル508内に捕集される。第2セル510に流入した清浄な排ガスは第2セル510内を下流に向かって進み、下流側の第二底面504から排出される。
【0005】
目封止部を有する柱状ハニカム構造体の製造方法は例えば以下のように製造可能である(例:特開2009-220298号公報、特開2001-300922号公報)。未焼成のハニカム構造体の一方の底面に、粘着層を備えるマスクを貼り付け、このマスクの、目封止部が配設されるべきセルを覆っている部分に、画像処理を利用したレーザ加工等によって孔を開けた後、マスクが貼り付けられた底面部を目封止用スラリーに浸漬し、孔からセルの端部に目封止用スラリーを充填し、乾燥させ、底面に貼り付けたマスクを剥がす。他方の底面についても、同様の方法で目封止部を形成する。その後、目封止部を有する柱状ハニカム構造体を焼成すると、焼成ハニカム構造体が得られ、フィルタとして使用可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-220298号公報
【文献】特開2001-300922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、柱状ハニカム構造体は、耐熱衝撃性を向上させるために、複数の柱状ハニカム構造体(ハニカムセグメント)の側面同士を接合材で接合して一体化して使用する場合がある。ハニカムセグメントを接合材で接合する際には、側面に塗工した接合材がハニカムセグメントの底面に付着しないように、マスクで底面を被覆することが望まれる。しかしながら、従来は接合材付着防止用マスクが底面に密着しにくく、一部のセルが閉塞するという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一側面において、接合材付着防止用マスクの密着性を改善する柱状ハニカム構造体の底面処理方法を提供することを課題とする。本発明は別の一側面において、本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法を利用した焼成ハニカム構造体の製造方法を提供することを課題とする。本発明は更に別の一側面において、本発明に係る焼成ハニカム構造体の製造方法を利用した接合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、目封止形成用マスクを剥がした後の目封止部は当該マスクの厚み分だけ僅かに凸状に突出していることを見出した。そして、この僅かに突出している目封止部を除去することで、接合材付着防止用マスクが柱状ハニカム構造体の底面に密着しやすくなり、接合材によるセルの閉塞を効果的に防止できることを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0010】
[1]
第一底面から第二底面まで平行に延び、第一底面が開口して第二底面に突出する目封止部を有する複数の第1セルと、少なくとも一つの第1セルに隔壁を挟んで隣接し、第一底面から第二底面まで平行に延び、第一底面に突出する目封止部を有し、第二底面が開口する複数の第2セルとを備える柱状ハニカム構造体を用意する工程と、
前記柱状ハニカム構造体の第1セル及び第2セルのそれぞれの目封止部から、前記突出する部分を除去する工程と、
を含む柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[2]
前記突出する部分を除去する工程は、回転軸を中心に回転可能な基体と、当該基体の表面に植え付けられた複数のブラシ毛とを備え、回転軸が第1セル及び第2セルの延びる方向に平行な少なくとも一つの回転ブラシを回転させながら、第一底面及び第二底面のそれぞれの突出する目封止部に、該複数のブラシ毛を接触させることを含む[1]に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[3]
前記少なくとも一つの回転ブラシにおいて、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心が、回転軸から偏心した位置にある[2]に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[4]
複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の外周輪郭内側に、回転軸が位置する[3]に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[5]
複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心は、回転軸から3mm以上偏心した位置にある[3]又は[4]に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[6]
前記突出する部分を除去する工程は、前記少なくとも一つの回転ブラシを柱状ハニカム構造体の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動させることを含む[2]~[5]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[7]
前記突出する部分を除去する工程は、一対以上の前記回転ブラシで柱状ハニカム構造体の第一底面及び第二底面を挟みながら実施する[2]~[6]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[8]
前記基体は、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域は環状であり、且つ、当該表面領域の内周輪郭よりも内側の部分に、吸引装置に連通している吸引口を備えており、前記突出する部分を除去する工程を実施中に吸引装置を稼働させて、除去された前記突出する部分を吸引口から吸引することを含む[2]~[7]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法。
[9]
[1]~[8]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造体の底面処理方法を実施して、底面処理された柱状ハニカム構造体を得る工程と、
底面処理された柱状ハニカム構造体を焼成する工程と、
を含む、焼成ハニカム構造体の製造方法。
[10]
[9]に記載の焼成ハニカム構造体の製造方法を実施して、複数の焼成ハニカム構造体を得る工程と、
各焼成ハニカム構造体の両底面にマスクを貼り付けた状態で、複数の焼成ハニカム構造体の側面同士を接合材を介して接合する工程と、
を含む、接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法の一実施形態によれば、接合材付着防止用マスクが底面に密着しやすくなり、接合材によるセルの閉塞を効果的に防止できる。
【0012】
本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法の好ましい一実施形態によれば、目封止部を除去する際にハニカム構造体の底面部に対してカケやエグレなどのダメージを与えることなく、目封止部を除去することが可能となる。
【0013】
本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法の好ましい一実施形態によれば、目封止部を除去する工程を自動化可能であり、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る底面処理方法の対象となる柱状ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2】突出する目封止部を除去する前のハニカム構造体の底面部分の顕微鏡写真(a)と、突出する目封止部を除去した後のハニカム構造体の底面部分の顕微鏡写真(b)である。
図3-1】回転ブラシの構造例を示す模式的な斜視図である。
図3-2】回転ブラシの平面構造を示す図(a)及び側面構造を示す図(b)である。
図4】一対以上の回転ブラシで複数の柱状ハニカム構造体の底面処理を連続的に行う様子を示す模式図である。
図5】排ガス浄化用フィルタとしての柱状ハニカム構造体の構造を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
(1.柱状ハニカム構造体)
図1には、本発明に係る底面処理方法の対象となる柱状ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図が記載されている。図示の柱状ハニカム構造体100は外周側壁102と、外周側壁102の内側に配設され、第一底面104から第二底面106まで平行に延び、第一底面104が開口して第二底面106に突出する目封止部を有する複数の第1セル108と、外周側壁102の内側に配設され、第一底面104から第二底面106まで平行に延び、第一底面104に突出する目封止部を有し、第二底面106が開口する複数の第2セル110とを備える。また、図示の柱状ハニカム構造体100においては、第1セル108及び第2セル110を区画形成する多孔質の隔壁112を備えており、第1セル108及び第2セル110が隔壁112を挟んで交互に隣接配置されており、両底面は市松模様を形成する。図示の実施形態に係る柱状ハニカム構造体においては、すべての第1セル108が第2セル110に隣接しており、すべての第2セル110が第1セル108に隣接している。しかしながら、必ずしもすべての第1セル108が第2セル110に隣接していなくてもよく、必ずしもすべての第2セル110が第1セル108に隣接していなくてもよい。
【0017】
ハニカム構造体の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、耐熱衝撃性を高めるという観点から、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0018】
セルの延びる方向(高さ方向)に直交する断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、フィルタとして使用したときの浄化性能が優れたものとなる。
【0019】
柱状ハニカム構造体は例えば以下の手順で作製可能である。セラミックス原料、分散媒、造孔材及びバインダを含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形することにより未焼成の柱状ハニカム構造体に成形する。原料組成物中には分散材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0020】
セラミックス原料としては、限定的ではないが、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア等のセラミックスを得るための原料が挙げられる。具体的には、限定的ではないが、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト等が挙げられる。セラミックス原料は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0021】
未焼成の柱状ハニカム構造体を乾燥後、当該ハニカム構造体の一方の底面の面積よりも大きなマスクを用いて、当該ハニカム構造体の底面全体及び対向する一対の側面の一部を覆うように、マスクの粘着面を貼り付ける。このマスクの、目封止部が配設されるべきセルを覆っている部分に、画像処理を利用したレーザ加工によって孔を開けた後、マスクが貼り付けられた底面部を目封止用スラリーに浸漬し、孔からセルの端部に目封止用スラリーを充填する。他方の底面に対しても同様にして目封止を実施し、両底面のセルが目封止用スラリーによって交互に封止されたハニカム構造体を得る。両底面に目封止用スラリーを充填したハニカム構造体を乾燥後、マスクを剥がすと、マスクの厚み分だけ目封止部が凸状に残存する柱状ハニカム構造体を得ることができる。
【0022】
目封止形成用マスクの材料は、特に制限はないが、孔を形成するための熱加工が容易であるため、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、又はテフロン(登録商標)であることが好ましい。また、マスクは粘着層を備えていることが好ましく、粘着層の材料は、アクリル系樹脂、ゴム系(例えば、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とするゴム)、又はシリコン系樹脂であることが好ましい。
【0023】
目封止形成用マスクとしては、例えば厚みが20~50μmの粘着フィルムを好適に使用することができる。
【0024】
目封止用スラリーは、例えば、セラミックス粉末、分散媒(例えば、水等)、及び必要に応じて、バインダ、解膠剤、発泡樹脂等の添加剤を混合することによって調製したものを用いることができる。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックスであることが好ましく、ハニカム構造体と同材質であることがより好ましい。バインダとしては、ポリビニルアルコールやメチルセルロースなどを挙げることができる。
【0025】
(2.底面処理)
本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法は一実施形態において、前記ハニカム構造体の第1セル及び第2セルのそれぞれの目封止部から、前記突出する部分(以下、「凸部」ともいう。)を除去する工程を含む。凸部を除去することにより、接合材付着防止用マスクが底面に密着しやすくなり、後工程で複数のハニカム構造体の側面同士を接合材で接合する場合に、底面側に垂れてくる接合材によってセルが閉塞するのを効果的に防止できる。例示的に、突出する目封止部を除去する前のハニカム構造体の底面部分の顕微鏡写真(a)と、突出する目封止部を除去した後のハニカム構造体の底面部分の顕微鏡写真(b)を図2に示す。底面処理は未焼成のハニカム構造体及び焼成後のハニカム構造体の何れに行うことも可能であるが、未焼成のハニカム構造体に実施するのが好ましい。焼成後のハニカム構造体は固くなるため、底面処理を行う際にハニカム構造体が破損するリスクが生じるからである。
【0026】
凸部の除去方法に関しては、特に制約はないが、例えばブラシ掛けする方法及びカッターで切断する方法、砥石や固いスポンジで研磨する方法などが挙げられる。作業性を考慮するとブラシ掛けすることが好ましい。凸部の除去は、手作業で行ってもよいが、工業的な処理速度を考えると自動で行えることが好ましい。このため、凸部の除去は、図3-1及び図3-2に示すように、回転軸Aを中心に回転可能な基体310と、当該基体310の表面に植え付けられた複数のブラシ毛320とを備える回転ブラシ300を用いて実施することが好ましい。
【0027】
底面処理後の柱状ハニカム構造体の底面の均質性を向上させるという観点からは、回転方向の異なる二つ以上の回転ブラシを用いて、又は、一つの回転ブラシの回転方向を途中で逆転させて、凸部の除去を行うことが好ましい。
【0028】
図3-2を参照すると、複数のブラシ毛320が植え付けられている基体310の表面領域の外周輪郭312の大きさは、ハニカム構造体の底面積の大きさに応じて、作業効率を高めるという観点から適宜設定すればよい。例えば、ハニカム構造体の底面積Xと、当該外周輪郭312に囲まれた面積Yは、0.5≦Y/X≦4.5の関係式を満たすことが好ましく、1.0≦Y/X≦3.5の関係式を満たすことがより好ましい。
【0029】
除去した凸部及び凸部の除去過程で発生した塵がセル内に入り込まないようにするため、凸部の除去は吸引装置(図示せず)で吸引しながら行うことが好ましい。従って、前記基体310は、吸引装置に連通する吸引口316を備えており、凸部の除去中に吸引装置を稼働させて、除去された凸部を吸引口316から吸引することがより好ましい。吸引口316は例えばホース等の配管を介して吸引装置に連通させることができる。好ましい一実施形態において、前記基体310は、複数のブラシ毛320が植え付けられている基体310の表面領域が環状(例:円環状)であり、当該表面領域の内周輪郭314よりも内側の部分に、吸引装置に連通している吸引口316を備えている。当該構成により、除去された凸部を効率的に吸引することができる。
【0030】
回転ブラシは、インバータにより回転数を制御可能なモータによって駆動することが望ましい。回転ブラシの回転数が可変であることで、ハニカム構造体の材質や凸部の状態等に合わせて適切な回転数に設定可能となる。一般に、回転ブラシの回転数が高くなるほど凸部の除去効率は上昇するものの、高くなりすぎるとハニカム構造体にダメージを与える原因となるので、両者のバランスを考慮して回転数を設定することが好ましい。回転ブラシの回転数は、例えば、100~600rpmとすることができ、典型的には200~500rpmとすることができ、より典型的には300~400rpmとすることができる。
【0031】
ブラシ毛320の長さLは、ブラシ毛の材質及び太さなどに応じて、適宜設定すればよい。ブラシ毛の長さは短くなるほどコシが強くなって凸部の除去効率を向上させるが、短くなりすぎるとハニカム構造体を傷つけやすくなることから、両者のバランスを考慮してブラシ毛320の長さLを設定することが好ましい。凸部の除去効率を高めるという観点からは、ブラシ毛320の長さLは50mm以下とすることができ、40mm以下とすることもでき、更には30mm以下とすることもできる。一方、ハニカム構造体へのダメージを抑制するという観点からは、ブラシ毛320の長さLは10mm以上とすることができ、15mm以上とすることもでき、更には20mm以上とすることもできる。
【0032】
ブラシ毛の材質は、限定的ではないが、例えばナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニール、ポリエステル、動物繊維(例えば、馬毛等)などを挙げることができる。これらの中でも、耐摩耗性、柔軟性に優れているため、ナイロンが好ましい。
【0033】
ブラシ毛の直径(線径)は例えば0.2~0.8mmとすることができ、典型的には0.3~0.6mmとすることができ、より典型的には0.4~0.5mmとすることができる。
【0034】
複数のブラシ毛は、ハニカム構造体の底面に対して垂直に近い状態で接触することが凸部の除去効率の観点から有利である。このため、複数のブラシ毛の植え付け方向(ブラシ毛の根元における方向)が回転軸方向となす角度は、0~45°であることが好ましく、0~20°であることがより好ましく、0~10°であることが更により好ましい。
【0035】
ハニカム構造体の底面に垂直な方向への、ブラシ毛の押込み量(ブラシ押込み量)は、多いほうが凸部の除去効率を高めることができるが、過多になるとブラッシング圧が増加して、ハニカム構造体へのダメージリスクが増加することから、両者のバランスを考慮してブラシ押込み量を設定することが好ましい。ブラシ毛の材質、長さ及び太さにもよるが、凸部の除去効率を高めるという観点からは、ブラシ押込み量は例えば0.1mm以上とすることができ、0.5mm以上とすることもでき、更には1mm以上とすることもできる。一方、ハニカム構造体へのダメージを抑制するという観点からは、ブラシ押込み量は4mm以下とすることができ、3mm以下とすることもでき、更には2mm以下とすることもできる。
【0036】
ハニカム構造体の底面に局所的な負荷を与えることなく、凸部を均一に除去するという観点からは、回転軸が第1セル及び第2セルの延びる方向(すなわち、柱状ハニカム構造体の高さ方向)に平行な少なくとも一つの回転ブラシを回転させながら、第一底面及び第二底面のそれぞれの突出する目封止部に、該複数のブラシ毛を接触させることが好ましい。
【0037】
この際、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心Oが、回転軸Aから偏心した位置にあることが好ましい(図3-1、図3-2参照)。複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の重心Oが回転軸Aと一致している場合には、前記表面領域よりも広範囲な領域に対して凸部を除去することができない。このため、例えばハニカム構造体の底面中央に回転軸Aが位置する場合、ハニカム構造体の底面中央付近と底面外周付近ではブラシによる凸部の除去効果が底面外周付近の方が弱くなりやすい。また、凸部を除去する領域を広げるためには回転軸を変位させる必要がある。
【0038】
これに対して、図3-1及び図3-2に示すように、複数のブラシ毛320が植え付けられている基体310の表面領域の重心Oが、回転軸Aから偏心した位置にある場合、回転軸を変位させなくても、前記表面領域が偏心距離だけ変位するため、広範囲な領域に対して凸部を除去することができる。
【0039】
前記表面領域の重心Oを、回転軸Aから偏心させる程度については、当該表面領域の面積、ハニカム構造体の底面積、及び凸部の除去効果の均一性の観点から、適宜設定すればよい。好ましい一実施形態においては、複数のブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の外周輪郭312の内側に、回転軸が位置する。当該構成により、回転軸付近の凸部の除去効率が低下するのを防止可能であり、凸部の除去効果の均一性が向上し、底面処理後の底面の均質性を向上させる。
【0040】
図3-2を参照すると、前記表面領域の重心Oを、回転軸Aから回転軸Aに直角な方向へ偏心させる距離(偏心距離D)は、3mm以上とすることができ、5mm以上とすることが好ましく、10mm以上とすることがより好ましい。偏心距離Dの上限は特に設定されないが、ディーゼルエンジンからの排ガス浄化用のフィルタ用途に使用される通常のハニカム構造体の底面積からみて、偏心距離Dは50mm以下とするのが一般的であり、30mm以下であるのが典型的である。
【0041】
工業的な観点からは、凸部の除去工程は、底面処理の対象となる多数の柱状ハニカム構造体に対して連続的に実施できることが好ましい。このため、本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法の好ましい実施形態においては、前記少なくとも一つの回転ブラシを柱状ハニカム構造体の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動させることを含む。図4を参照すると、回転ブラシ300が柱状ハニカム構造体100の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動することで、セルの延びる方向(高さ方向)に対して直角な方向に並べた複数の柱状ハニカム構造体100の底面処理を連続的に実施できることが理解できる。
【0042】
回転ブラシが柱状ハニカム構造体の第一底面及び第二底面に平行な方向に相対移動する方式としては、例えば、複数の柱状ハニカム構造体をコンベヤで一方向に搬送している間に、定位置にある回転ブラシによって順次底面処理する方式、及び、一列に並べた複数の柱状ハニカム構造体を、平行移動する回転ブラシによって順次底面処理する方式が挙げられる。
【0043】
第一底面に突出する凸部の除去及び第二底面に突出する凸部の除去は同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。作業効率の観点からは、第一底面に突出する凸部の除去及び第二底面に突出する凸部の除去は同時に行うことが好ましい。従って、本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法の好ましい実施形態においては、図4に示すように、前記突出する部分を除去する工程を、一対以上の前記回転ブラシ300で柱状ハニカム構造体100の第一底面及び第二底面を挟みながら実施する。回転ブラシ300を二対以上使用する場合は、底面処理後の柱状ハニカム構造体100の第一底面及び第二底面の均質性を高めるため、少なくとも一対の回転ブラシ300は残りの少なくとも一対の回転ブラシ300と回転方向を反対にすることが好ましい。
【0044】
(3.底面処理後の工程)
本発明に係る柱状ハニカム構造体の底面処理方法を実施して、底面処理された柱状ハニカム構造体を得た後は、底面処理された柱状ハニカム構造体を焼成することで焼成ハニカム構造体を製造することができる。焼成条件は公知の任意の条件を採用すればよく、特に制限はない。
【0045】
焼成工程の前に脱脂工程を行ってもよい。バインダの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300~1000℃程度である。従って、脱脂工程はハニカム成形体を200~1000℃程度の範囲に加熱して実施すればよい。加熱時間は特に限定されないが、通常は、10~100時間程度である。脱脂工程を経た後のハニカム成形体は仮焼体と称される。焼成工程は、ハニカム成形体の材料組成にもよるが、例えば仮焼体を1350~1600℃に加熱して、3~10時間保持することで行うことができる。
【0046】
焼成ハニカム構造体のそれぞれをハニカムセグメントとして利用し、複数のハニカムセグメントの側面同士を接合材で接合して一体化し、セグメント接合体とすることができる。セグメント接合体は例えば以下のように製造することができる。各ハニカムセグメントの両底面に接合材付着防止用マスクを貼り付けた状態で、接合面(側面)に接合材を塗工する。上述した底面処理によってハニカムセグメントの底面は平滑化されており、接合材付着防止用マスクはハニカムセグメントの底面に密着しやすくなっている。このため、接合材をハニカムセグメントの側面に塗工する際に、底面に垂れてきた接合材が当該マスクとハニカムセグメントの間に入り込みにくいので、セルの開口部に接合材が浸入することによってセルが閉塞するという事象を効果的に防止できるという利点が得られる。
【0047】
次に、これらのハニカムセグメントを、ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置し、隣接するハニカムセグメント同士を圧着した後、加熱乾燥する。このようにして、隣接するハニカムセグメントの側面同士が接合材によって接合されたセグメント接合体を作製する。セグメント接合体に対しては、外周部を研削加工して所望の形状(例えば円柱状)とし、外周面にコーティング材を塗工した後、加熱乾燥させて外周壁を形成してもよい。
【0048】
接合材付着防止用マスクの材料は、特に制限はないが、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、又はテフロン(登録商標)等の合成樹脂を好適に使用可能である。また、マスクは粘着層を備えていることが好ましく、粘着層の材料は、アクリル系樹脂、ゴム系(例えば、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とするゴム)、又はシリコン系樹脂であることが好ましい。
【0049】
接合材付着防止用マスクとしては、例えば厚みが20~50μmの粘着フィルムを好適に使用することができる。
【0050】
接合材としては、例えば、セラミックス粉末、分散媒(例えば、水等)、及び必要に応じて、バインダ、解膠剤、発泡樹脂等の添加剤を混合することによって調製したものを用いることができる。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックスであることが好ましく、ハニカム構造体と同材質であることがより好ましい。バインダとしては、ポリビニルアルコールやメチルセルロースなどを挙げることができる。
【実施例
【0051】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0052】
<1.底面処理>
(No.1~7)
縦38mm、横38mm、高さ154mmの直方体状で、各セルが高さ方向に延び、セル密度が46.5個/cm2であるSiC製の未焼成ハニカム構造体を用意した。この未焼成ハニカム構造体の一方の底面全体及び一対の対向する側面の一部を覆うように、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のマスク(厚さ36μm)の粘着面を貼り付けた。このマスクの、目封止部が配設されるべきセルを覆っている部分に、画像処理を利用したレーザ加工によって孔を開けた後、マスクが貼り付けられた底面部をSiC粉及び金属Si粉を含有する目封止用スラリーに浸漬し、孔からセルの端部に目封止用スラリーを充填した。他方の底面に対しても同様にして目封止を実施し、両底面のセルが目封止用スラリーによって交互に封止されたハニカム構造体を得た。次に、目封止用スラリーを充填したハニカム構造体を150℃で0.4時間乾燥した。乾燥後、ハニカム構造体の両底面に貼り付けたマスクを剥がした。目封止部を顕微鏡で観察したところ、マスクの厚み分だけ凸状に突出していることが確認された。
【0053】
次に、図3-1及び図3-2に図示するような、外径90mmの円盤基体の表面に、外径60mmの円環状に複数のナイロン製ブラシ毛(ブラシ毛長:表1参照、線径0.4mm)を植え付けた一対の回転ブラシを用意した。各ブラシは、複数のブラシ毛が植え付けられている基体表面の円環領域の重心が、回転軸から試験番号に応じて表1に記載の偏心距離だけ偏心した位置にある。また、各ブラシは、ブラシ毛が植え付けられている基体の表面領域の内周輪郭よりも内側部分に、吸引装置に連通している吸引口を有する。各回転ブラシはモータで駆動し、インバータにより回転数を変更可能である。
【0054】
用意した一対の回転ブラシでハニカム構造体の両底面を挟み、吸引装置を稼働しながら、回転軸がセルの延びる方向に平行となるようにブラシを一方向に回転させ、回転ブラシを柱状ハニカム構造体の両底面に平行な方向に相対移動させることでハニカム構造体の底面処理を行った。この際、ブラシ毛のハニカム構造体の底面に垂直な方向の押込み量(ブラシ押込み量)、ブラシ回転数及び処理時間は、試験番号に応じて表1に記載の値に設定した。また、複数のブラシ毛の植え付け方向が回転軸となす角度は0°とした。
【0055】
得られた各ハニカム構造体の底面品質を確認した。
No.1では、ハニカム構造体にカケやエグレといった不良を発生させること無く、ハニカム構造体の目封止部の凸部の除去ができた。
No.2ではNo.1よりもブラシ毛長が短い回転ブラシを使用した。ブラシ毛長が短くなるにつれてブラシ毛のコシが強くなるため、No.2よりもブラシ毛長を短くするとハニカムへのダメージが懸念される。
No.3及びNo.4ではNo.1に対してブラシ押込み量を変更した。No.3よりもブラシ押込み量を多くするとブラッシング圧が増加して、ハニカム構造体へのダメージリスクが増えると予測される。逆にNo.4よりもブラシ押込み量が少なくなると、ブラッシング圧が弱く、また、ハニカム構造体の位置ずれや摩耗によるブラシ毛長変化でハニカム構造体にブラシが当たらなくなるため、凸部が除去できない恐れがある。
No.5及びNo.6ではNo.1に対してブラシ回転数を変更した。No.5よりもブラシ回転数が多いとハニカム構造体への接触回数が増えるのでカケ等が発生する可能性があり、逆にNo.6よりも回転数が少ないとハニカム構造体への接触回数が減るので凸部除去が不完全になる可能性がある。
No.7ではブラシを偏心させなかった。この場合、ハニカム構造体の底面四隅の部分に凸部残りが生じやすい傾向が見られたため、No.1よりも処理時間を長くする必要があった。
【0056】
(No.8)
No.1~7と同様に、両底面のセルが目封止用スラリーによって交互に封止されたハニカム構造体を作製し、乾燥後にマスクを剥がした。次いで、吸引口に表1に記載のブラシ毛長のブラシのついた掃除機を用いて両底面の処理を手作業で実施した。底面品質に問題はなかったが、処理時間がNo.1に比べて長くなった。
【0057】
(No.9)
No.1~7と同様に、両底面のセルが目封止用スラリーによって交互に封止されたハニカム構造体を作製し、乾燥後にマスクを剥がした。その後、如何なる底面処理も行わなかったため、目封止部には凸部が残存した。
【0058】
<2.ハニカム構造体の接合>
試験番号毎に16個の底面処理を行ったハニカム構造体を、Ar雰囲気にて約1450℃で5時間焼成した。得られた各焼成ハニカム構造体をハニカムセグメントとして、各ハニカムセグメントの両底面全体にPET製のマスク(厚さ70μm)の粘着面を貼り付けた。次いで、ハニカムセグメントの側面に、厚さが1mmとなるようにSiC粉及びバインダを含有するペースト状の接合材を塗布して塗布層を形成した。次に、このハニカムセグメント上に、上記塗布層と側面が接するように別のハニカムセグメントを載置した。その後、この工程を繰り返し、縦4個×横4個に組み合わせた合計16個のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント構造体を作製した。その後、外部から圧力を加えた後、140℃で2時間乾燥させてセグメント接合体を得た。その後、各ハニカムセグメントからマスクを剥がした。
【0059】
得られた各試験例に係るセグメント接合体の底面を観察し、セルの閉塞箇所の有無を確認した。結果を表1に示す。No.1~8においては、目封止部の凸部を除去したため、接合材付着防止用マスクが底面に密着して、セルの閉塞を効果的に防止できた。一方、No.9においては、目封止部の凸部が残存していたため、接合材付着防止用マスクとハニカムセグメントの底面の間に隙間が生まれ、接合材が浸入して一部のセルを閉塞させた。
【0060】
【表1】
【符号の説明】
【0061】
100 柱状ハニカム構造体
102 外周側壁
104 第一底面
106 第二底面
108 第1セル
110 第2セル
112 隔壁
300 回転ブラシ
310 基体
312 外周輪郭
314 内周輪郭
316 吸引口
320 ブラシ毛
500 柱状ハニカム構造体
501 第一底面
504 第二底面
502 目封止部
505 隔壁
508 第1セル
510 第2セル
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5