(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】床版架設機における吊具ユニット
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20220325BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220325BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20220325BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D22/00 A
E01D24/00
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2018111837
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 真作
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-94995(JP,A)
【文献】実開昭56-72890(JP,U)
【文献】特開昭49-6645(JP,A)
【文献】特開平9-256323(JP,A)
【文献】実開昭60-167087(JP,U)
【文献】特開2004-300688(JP,A)
【文献】特開2011-93643(JP,A)
【文献】特開昭60-77086(JP,A)
【文献】特開昭51-87253(JP,A)
【文献】特開平7-53170(JP,A)
【文献】実開昭58-102578(JP,U)
【文献】特開2001-97662(JP,A)
【文献】特開2006-169757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E01D 22/00
E01D 24/00
E01D 19/12
B66C 1/00- 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の主桁と、
各主桁間に主桁と垂直に、且つ、前後方向に一列に配置される複数の横梁と、
を有する平面構造体と、
該平面構造体を左右一対の複数組で支持するとともに、夫々の下端に移動固定機構を装着する、脚体と、
前記平面構造体の下方に、前後方向に移動可能に設けられた走行機構と、
前記走行機構の左右方向に伸縮可能に設けられた横行機構と、
前記横行機構の下方に懸架され、架設用部材を吊上げる吊具ユニットと、
を備え、
前記吊具ユニットは、吊具上部と、
前記吊具上部と所定の間隔を有して設けられた吊具下部と、
前記吊具上部と前記吊具下部との各中央部に夫々跨って設けられた係合部材と、
を備え、
前記係合部材は、頭部と、前記頭部より小径な胴部と、を備え、
前記頭部は、前記吊具上部の中央部に揺動可能に支持され、
前記胴部は、下部に前記吊具下部を載置可能にする載置台が設けられ、
前記吊具上部は、前記横行機構から懸架された紐状の連結部材が複数箇所に取り付けられており、
前記吊具下部は、下部に床版が固定され、上部に吊上げ時の傾動による干渉においても旋回可能にする旋回環が固定されていることを特徴とする床版架設装置における吊具ユニット。
【請求項2】
前記載置台の上部は、凸状球面に形成され、且つ、それに対応する前記吊具下部の載置面は、凹状球面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の床版架設装置における吊具ユニット。
【請求項3】
前記吊具上部は、該吊具上部の両端面に夫々固定されたアーム部と、該各アーム部の略両端に、両端近傍を揺動可能に軸支された連結部材揺動部とを備え、前記連結部材揺動部は一方に前記連結部材が固定され、他方に揺動可能にアーム部に軸支されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床版架設装置における吊具ユニット。
【請求項4】
前記連結部材は、横行トロリーを介して前記横行機構に吊持されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の床版架設装置における吊具ユニット。
【請求項5】
前記吊具上部は、吊具上部側回動規制構造を有し、
前記吊具下部は、前記吊具上部側回動規制構造と協働して、前後方向または左右方向への移動時に、前記吊具上部に対して当該吊具下部の回動を規制する吊具下部側回動規制構造を有していることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の床版架設装置における吊具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設橋梁の床版の取換工事において使用する床版架設機における吊具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁における床版の架設は、トラッククレーン、門型クレーン、及びジブクレーンなどといった大型重機を使用して行われてきた。
しかし、大型重機で架設工事する際、天井制限のあるトラス橋やトンネル内では、床版を架設場所まで搬送することは困難な場合がある。
また、床版の耐荷重力によっては、床版上に設置する大型重機の重量が制限を受ける場合もある。
そのため、昨今では大型重機を使用しなくても桁上の旧床版を容易に撤去でき、その後、新床版を容易に設置でき、さらに、どのような場所(例えば、トンネル内など)においても使用できる床版架設機が要望されており、このような要望を解決するために、例えば、特許文献1に記載の床版架設機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の床版架設機は、吊上げた床版を搬送する際に、左右の両脚内を移動(走行)できるように、床版を旋回させる必要がある。
ところが、床版を吊上げる際、床版の重心位置がズレていると、床版が傾斜し、その状態で吊り上がってしまう。ひとたび傾斜してしまうと、たとえスイベル機構が設けられていたとしても、10トン以上を有する床版を人力で旋回することは極めて困難である。
また、傾斜によっては、床版架設機、または、道路等に干渉する虞もある。
また、床版を吊上げる際、重心位置の正確な把握は困難である。それゆえ、水平に吊上げるためには、吊上げ、または、吊下げを繰り返し行って傾かないようにする必要があり、時間と手間を要する。
さらに、繰り返し作業の際、予期せぬ方向に床版が傾斜し、それによって床版が移動する(ズレる)危険もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、吊具ユニットと床版との互いの重心位置が多少ズレていても、安全且つ素早く床版を吊上げ可能で、さらに、人力によっても簡単に旋回可能な床版架設機における吊具ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
左右一対の主桁と、各主桁間に主桁と垂直に、且つ、前後方向に一列に配置される複数の横梁とを有する平面構造体と、この平面構造体を左右一対の複数組で支持するとともに、夫々の下端に移動固定機構を装着する脚体と、平面構造体の下方に、前後方向に移動可能に設けられた走行機構と、走行機構の左右方向に伸縮可能に設けられた横行機構と、横行機構の下方に懸架され、架設用部材を吊上げる吊具ユニットとを備え、吊具ユニットは、吊具上部と、吊具上部と所定の間隔を有して設けられた吊具下部と、吊具上部と吊具下部との各中央部に夫々跨って設けられた係合部材とを備え、係合部材は、頭部と、頭部より小径な胴部とを備え、頭部は、吊具上部の中央部に揺動可能に支持され、胴部は、下部に吊具下部を載置可能にする載置台が設けられ、吊具上部は、横行機構から懸架された紐状の連結部材が複数箇所に取り付けられており、吊具下部は、下部に床版が固定され、上部に吊上げ時の傾動による干渉においても旋回可能にする旋回環が固定されていることを特徴とする床版架設装置における吊具ユニットを提供することによって解決される。
【0007】
本発明の床版架設装置における吊具ユニットの載置台の上部は、凸状球面に形成され、且つ、それに対応する吊具下部の載置面は、凹状球面に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の床版架設装置における吊具ユニットの吊具上部は、該吊具上部の両端面に夫々固定されたアーム部と、各アーム部の略両端に、両端近傍を揺動可能に軸支された連結部材揺動部とを備え、連結部材揺動部は一方に連結部材が固定され、他方に揺動可能にアーム部に軸支されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の床版架設装置における吊具ユニットの連結部材は、横行トロリーを介して横行機構に吊持されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の床版架設装置における吊具ユニットの吊具上部は、吊具上部側回動規制構造を有し、吊具下部は、吊具上部側回動規制構造と協働して、前後方向または左右方向への移動時に、吊具上部に対して当該吊具下部の回動を規制する吊具下部側回動規制構造を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吊具ユニットと床版との互いの重心位置が多少ズレていても、安全且つ素早く床版を吊上げ可能で、さらに、人力によっても簡単に旋回可能な床版架設機における吊具ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態を示す床版架設機の側面図である。
【
図4】
図2を前後方向に見たD部詳細拡大図である。
【
図10】横行機構の一部と
図8の吊具ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0014】
本発明の床版架設機の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。
なお、説明で方向を表す際、特に言及しない限り、床版架設機が床版を廃棄物運搬車に搬送する側を「前」、一方、その反対側を「後」とし、床版架設機の前後に延在する走行レールに沿って移動する方向を「前後方向」とする。また、走行レールに直交する方向を「左右方向」、「横行方向」、または「幅員方向」とする。また、吊具ユニットが床版を吊上げる方向、または、吊下げる方向を「上下方向」とする。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を示す床版架設機の側面図、
図2は
図1の床版架設機の平面図、
図3は
図1の床版架設機のA-A矢視図である。
【0016】
本実施形態の床版架設機3は、既設の橋梁において路面を構成している架設用部材(以下、床版2という)の取換(旧床版の撤去とこれに換わる新床版の設置)を行う。
【0017】
図1において、橋梁の橋桁1は、H形鋼などにより構成されて前後方向に延在し、その上部に所定サイズの床版2が配置される。また、橋桁1の左右方向のピッチ間隔は、一般的に3m、または、6mの間隔となっている。
【0018】
床版2は、鉄筋入りのプレキャストコンクリート製で、その長手方向(長辺)を前後方向に直交する左右方向に向け、前後方向に列をなして連続して並べられることで路面を構成している。
【0019】
このような床版2は、長年の使用による腐食、剥離、或いは、ひび割れなどの経年劣化によって、取換(旧床版の撤去及び新床版の設置)が求められる場合がある。
そして、このような旧床版の撤去において、一般的に、旧床版を処理場まで運搬するには、10トン車の廃棄物運搬車等によって行われる。
そのため、10トン車に搬送できるように、通常、旧床版の前後方向の長さを2mサイズに切断し、更に左右方向の長さを2分割にすることで10トン以下の重量にしている。
【0020】
本実施形態の床版架設機3は、かかる場合に床版2の取換を行うものであって、
図1に示すように、床版架設機3を取換場所まで移動した後に、移動不能に床版2上に配置し、吊具ユニット11で旧床版を廃棄物運搬車等へ撤去(積込作業)する。
【0021】
そして、その作業を複数回(本実施形態では14回)繰り返した後、廃棄物運搬車等は、撤去された床版をまとめて処理場へ搬出する。その後、トレーラーで搬入された新床版を複数回(本実施形態では7回)設置することで、床版2の取換(旧床版の撤去と、これに換わる新床版の設置)が完了となる。
【0022】
〈床版架設機の構造〉
床版架設機3は、主に、主桁4と横梁5等からなる平面構造体6、脚体7、移動固定機構8、走行機構9、横行機構10、及び吊具ユニット11などで構成されている。
【0023】
主桁4は、角形管や鋼板などの部材からなり、前後方向に延在する左右一対の2本構成となっている。また、この各主桁4の下部には、後述の走行トロリー15を前後移動可能にするための走行レール14が夫々敷設されている。
【0024】
各走行レール14は、主桁4の前後端部より若干延在するように夫々設けられており、また、走行トロリー15のケーブルを収納可能となっている。
【0025】
横梁5は、角形管や鋼板などの部材からなり、各主桁4との間に垂直に設けられ、両端部は溶接によって連結されている。そして、前後方向に複数本(本実施形態では5本)が一列に設けられている。
すなわち、左右一対の主桁4と各主桁4に連結された横梁5とによって、一体構造物となるように平面構造体6が構成されている。
【0026】
脚体7は、鋼板などの部材からなり、平面構造体6を左右一対の複数組(本実施形態では前後2組)で溶接によって支持している。また、夫々の脚体7の下端には移動固定機構8が装着されている。
【0027】
また、
図2で示すように、前後の脚体7の間隔は、設置する新床版の床版回転範囲Rより大きく設けられていれば良い。
また、図示していないが、各脚体7には道路形状などに対応して、床版架設機3を水平レベルに維持可能に脚体の上下方向の長さを調整する伸縮構造が夫々設けられている。
【0028】
移動固定機構8は、複数(本実施形態では2つ)の車輪12とジャッキアップ装置13とからなり、車輪12を回転させる際は、ジャッキアップ装置13をオフ(縮んだ)状態にし、一方、車輪12を回転不能(移動不能)にする際は、ジャッキアップ装置13をオン(伸びた)状態にすることで車輪12を浮かして固定している。
【0029】
ところで、床版2は、上述の橋桁1によって支えられているが、薄い床版2だけで床版架設機3を支えることは強度的に難しい。よって、一般的には、床版架設機3の荷重がかかる箇所は橋桁1の近傍に配置するようになっている。すなわち、本実施形態の左右一対の移動固定機構8は、橋桁1のピッチ間隔(本実施形態では6m)と略同間隔となるように設けられており、固定する際は、橋桁1上で行うようにしている。
【0030】
走行機構9は、平面構造体6の下方に前後方向移動可能に取り付けられている。
図4は、
図2を前後方向に見たD部詳細拡大図であり、便宜上、走行機構9を説明する上で主桁4を省いた図としている。
【0031】
〈走行機構の構造〉
図4に示すように、走行機構9は、主に、走行トロリー15、走行梁16などで構成されている。
【0032】
走行トロリー15は、各走行レール14に前後移動可能に前後一対の2つが取り付けられている。また、前後一対の走行トロリー15同士は、つなぎ材(図示せず)によって一体に移動可能に構成されている。ここで、つなぎ材の長さによって、走行トロリー15間の距離は定まるが、後述する横行レール間の距離より長ければ良い。
【0033】
図5は、
図4のB-B矢視図、
図6は、
図5の走行梁の詳細拡大図である。
図5及び
図6に示すように、走行梁16は、鋼板組合せ構造からなり、断面凹状の形状をしている。そして、断面凹状の開口部を下にした状態で走行レール14と垂直に、且つ、前後方向に一列に配置されるように各走行トロリー15に取り付けられている。
【0034】
それによって、前後一対の走行梁16は、夫々走行トロリー15を介することで、走行レール14に吊持されている。
したがって、各走行梁16は、前後一体に構成された各走行トロリー15に夫々取り付けられていることより、各走行梁16と各走行トロリー15は一体となって前後方向に移動可能となっている。
【0035】
すなわち、走行梁16および走行トロリー15などで構成されている走行機構9は、一体に走行レール14に沿って前後方向に移動可能となっている。
【0036】
横行機構10は、平面構造体6の下方に平面構造体6に対して左右方向に伸縮可能に取り付けられている。
【0037】
〈横行機構の構造〉
横行機構10は、主に、上ローラ17、下ローラ18、横行梁19、及び横行レール20などで構成されている。
【0038】
下ローラ18は、円柱状の形状をしており、各走行梁16の断面凹状の両内側面下側に、且つ、自身の中心周りに回転可能な状態で左右方向に連続して設けられている。
【0039】
上ローラ17は、下ローラ18より径小な円柱状の形状をしており、横行梁19を摺動可能に挟むように、各下ローラ18の上側に対向して設けられている。
【0040】
横行梁19は、H形鋼などの梁で、走行梁16に設けられた上下一対のローラ17、18間に摺動可能に支持されており、左右方向に伸縮(移動)可能となっている。
また、各横行梁19同士は左右一対の連結材21によって、一体にフレーム状を形成している。そして、この横行梁19は、後述の横行駆動機構22によって、左右方向に伸縮駆動が可能となっている。
【0041】
横行レール20は、I形鋼などの部材からなり、横行梁19の上部、且つ、各横行梁19間に横行梁19と平行に所定の間隔を有して前後一対設けられている。
また、各横行レール20同士は左右一対の接続材32によって、一体にフレーム状を形成している。
【0042】
そして、各横行レール20の両端部は、束材33を介して横行梁19の連結材21と上下一体となるように夫々固定されている。
【0043】
すなわち、横行梁19と横行レール20は、上下方向において一体に固定されており、一体となって、走行梁16に設けられた上下一対のローラ17、18に沿って、左右方向に伸縮可能となっている。
【0044】
また、各横行レール20には、左右一対の横行トロリー34が左右方向に移動可能に夫々取り付けられている。そして、この各横行トロリー34を介してチェーンブロック35が横行レール20に吊下げられている。すなわち、この前後左右に設けられた4つのチェーンブロック35で後述の吊具ユニット11の吊上げ、または、吊下げを行っている。
【0045】
また、前後に設けられた横行トロリー34同士には、つなぎ材34aが設けられており、それによって横行トロリー34同士は一体に移動可能となっている。
【0046】
その際、横行機構10の横行駆動は、手動で行っても良いが、好ましくは横行駆動機構22によって自動で行う方が良い。
以下、横行駆動機構22について、
図4~
図6を用いて説明する。
【0047】
〈横行駆動機構の構造〉
横行駆動機構22は、主に、前軸受23、後軸受24、シャフト25、チェーンスプロケット26、第1ローラチェーン27、モータ28、駆動スプロケット29、従動スプロケット30、及び第2ローラチェーン31などで構成されている。
【0048】
シャフト25は、走行梁16の上端側を前後方向に貫通するように走行梁16の左右両端近傍に一対設けられている。
この各シャフト25の一方の前側となる走行梁16の前側側面には、シャフト25が回転可能に支持されるように前軸受23が夫々嵌合されて取り付けられている。
【0049】
一方、他方の後側となる走行梁16の後側側面にも、シャフト25が回転可能に支持されるように後軸受24が夫々嵌合されて取り付けられている。
また、走行梁16内の各シャフトの前後方向中央部には、チェーンスプロケット26がシャフト25と回転一体に夫々取り付けられている。
【0050】
そして、この左右方向に設けられた各チェーンスプロケット26を掛け渡すように第1ローラチェーン27が夫々に係合されている。この第1ローラチェーン27によって、一方のシャフト25の回転が、他方のシャフト25に伝達されるようになっている。また、このとき、第1ローラチェーン27は、横行梁19の上面と繋止されている。
【0051】
また、左右両端近傍に設けられた一対のシャフト25のうち、左側のシャフト25の最後端(ここでは、後側の走行梁16を例としていう。)である後軸受24の後側には、従動スプロケット30がシャフト25と回転一体に取り付けられている。
【0052】
ここで、走行梁16の左側上端面にはモータ28が固定されており、その回転主軸には、駆動スプロケット29が回転一体に取り付けられている。そして、駆動スプロケット29と従動スプロケット30とを掛け渡すように第2ローラチェーン31が夫々に係合されている。
【0053】
したがって、横行駆動機構22は、モータ28の駆動によって、駆動スプロケット29、従動スプロケット30を介して、シャフト25に伝達され、シャフト25が回転することで、チェーンスプロケット26を介して第1ローラチェーン27が駆動するようになっている。この駆動力が横行梁19に伝達されることで、横行機構10が横行(左右方向)に駆動可能となっている。
【0054】
〈吊具ユニット〉
吊具ユニット11は、横行機構10の下方に懸架され、床版の吊上げ、または、吊下げを行うものである。また、上下方向に分割され、その各々が相対的に旋回可能な構造となっている。
【0055】
以下、
図8~10を用いて、詳細に説明をする。
図8は吊具ユニットの平面図、
図9は
図8の吊具ユニットのC-C矢視図、
図10は横行機構の一部と
図8の吊具ユニットの側面図を夫々示している。
【0056】
吊具ユニット11は、上下方向に吊具上部36と、吊具下部37とが所定の間隔を有して一列に設けられている。
【0057】
吊具上部36は、鋼板の組合わせ構造体で一辺が長いブロック状となっており、上下方向の中心線上の上方と下方に、それぞれ異なったサイズの上側円錐ころ軸受44と下側円錐ころ軸受45とが固定されている。
【0058】
ところで、上述の所定の間隔は、吊具ユニット11の大きさによって異なり、特に限定されないが、本実施形態では、5~10mm程度としている。
これによって、床版の吊上げ時に床版の重心位置が多少ズレていても、吊上げが可能となる。また、道路が幅員方向に対して傾斜していても吊上げが可能となる。
【0059】
また、吊具ユニット11は、吊具上部36と吊具下部37との各中央部に夫々跨る係合部材38が設けられている。
【0060】
係合部材38は、頭部38aと、この頭部38aより小径な胴部38bとが互いの中心を一致させた状態で連続して一体に設けられている。
【0061】
頭部38aは、上方にいくにつれて小径となる略円錐台形状となっており、吊具上部36の略中央部に設けられている。一方、胴部38bは、略円柱状となっており、吊具上部36と吊具下部37との各中央部にそれぞれ跨って設けられている。
【0062】
このような係合部材38には、上述の上側円錐ころ軸受44と下側円錐ころ軸受45とが嵌合されている。
具体的には、上側円錐ころ軸受44は、頭部38aの上方に嵌合され、一方、下側円錐ころ軸受45は、胴部38bの上方、且つ、頭部38aの下端面に当接するように嵌合されている。
【0063】
それにより、係合部材38は、上側円錐ころ軸受44と下側円錐ころ軸受45によって軸支されており、吊具上部36は、係合部材38に対して相対的に頭部38aの回転中心oを基点として揺動可能となっている。
【0064】
一方、胴部38bの下方は、吊具下部37を載置可能に支持する載置台39が設けられている。
載置台39は、ブロック状に形成されており、その上部は凸状球面41に形成されている。一方、それに対応する吊具下部37の載置面は、凹状球面42に形成されている。
【0065】
この球面に互いが接することで、係合部材38に偏芯荷重などの無理な力がかかっても、球面にならうことで荷重を受け流すことが可能となっている。
【0066】
吊具下部37は、下部に床版2が固定され、上部に吊上げ時の傾動による干渉においても旋回可能にする旋回環40が固定されている。
【0067】
旋回環40は、内輪40aと外輪40bが相対回転可能に構成され、外輪40bが吊具下部37の上部に固定されている。
このような、旋回環40は、一般的に大きな重量を有しつつも安定した旋回動作が求められる重機、土木機械、精密機械、設備機械などに採用されている。
【0068】
吊具上部36は、長手方向の両端面に溶接などによって固定されるとともに、両側に張り出す板状のアーム部43を備えている。
【0069】
また、各アーム部43の略両端には、両端近傍を揺動可能に軸支された連結部材揺動部46が設けられており、連結部材揺動部46の一方には、チェーンブロック35(連結部材の一例)が固定され、他方には、アーム部43に対して連結部材揺動部46を揺動可能に軸支する軸受43aが設けられている。
【0070】
この構成によって、吊具上部36は、床版2の荷重を支持するとともに、吊上げまたは吊下げすることが可能となっている。
【0071】
また、このチェーンブロック35は、横行トロリー34を介して横行機構10の横行レール20に吊持されている。
【0072】
〈吊具ユニットの回動規制構造〉
吊具ユニット11の回動規制構造は、吊具上部36に設けられた吊具上部側回動規制構造と吊具下部37に設けられた吊具下部側回動規制構造とからなっている。
【0073】
すなわち、吊具上部36は、吊具上部側回動規制構造を有し、吊具下部37は、吊具上部側回動規制構造と協働して、前後方向または左右方向への移動時に、吊具上部36に対して当該吊具下部37の回動を規制する吊具下部側回動規制構造を有している
【0074】
吊具上部側回動規制構造は、貫通孔47aを有するブラケット47からなり、吊具上部36に取り付けられている。
一方、吊具下部側回動規制構造は、ブラケット47の貫通孔47aより大径な貫通孔48aを有する被ブラケット48からなり、吊具上部36が回転中心p回りに90度毎回転する際のブラケット47の貫通孔47aの位置に被ブラケット48の貫通孔48aの位置が対応するように4ヶ所設けられている。
【0075】
すなわち、ブラケット47の貫通孔47aと被ブラケット48の貫通孔48aの位置が一致した状態で段付規制ピン49などを挿入することで、回動規制が実現する。また、好ましくは、段付規制ピン49の終端近傍に径方向に貫通する穴にスナップピンを挿入することで、より確実に回動を規制することができる。
【0076】
図11は、重心位置のズレた床版を水平に吊上げる動作を示した図である。
図11(a)は重心位置のズレによる床版の傾きの一例を示した図、
図11(b)は床版の傾きを水平にした一例を示した図を夫々示している。
以下、重心位置のズレた旧床版を水平に吊上げ、搬送する動作の一例を説明する。
【0077】
〈吊上げ動作及び搬送動作〉
撤去する床版2の重心位置gがズレている状態で吊上げると
図11(a)で示すように、正面視する(前後方向の前方向に見る)と右肩上がり状態となる。このとき、床版2を固定している吊具下部37も同じ傾きとなっている。
【0078】
また、この傾きによって、旋回環40の内輪40aと吊具上部36の下端面は干渉している。
このような状態では、床版2を安全に搬送することができないため、床版2を略水平に保持する必要がある。
【0079】
したがって、まず、正面視左側の前後一対のチェーンブロック35を目視で床版2が略水平となるように巻き上げる。
このとき、吊具上部36は、上側円錐ころ軸受44と下側円錐ころ軸受45によって、回転中心o回りに回転することで、正面視左肩上がり状態となっている(
図11(b)状態)。
【0080】
この状態(床版2が略水平)になって、吊具ユニット11の回動規制構造を用いて、吊具上部36と吊具下部37との動きを規制する。
その後、横行機構11や横行トロリー34を駆動させることで、左右一対の脚体7の両脚体7内の位置まで、左右方向に吊具ユニット11を移動(横行移動)させる。
【0081】
このとき、床版2は両脚体7間の長さより長いため、このまま前後方向に移動(走行移動)させると、前側に設けられた左右一対の脚体7に干渉してしまう。
したがって、吊具ユニット11の回動規制構造の吊具上部36と吊具下部37の動きの規制を解除して、90度旋回させる必要がある。
【0082】
このとき、上述のように吊具上部36と旋回環40の内輪40aは干渉しているが、外輪40bはフリーな状態となっているため、人力でも容易に旋回させることができる。
90度旋回させたあと、再度、吊具ユニット11の回動規制構造を用いて、吊具上部36と吊具下部37との動きを規制して、前後方向の前側に移動(走行移動)することで床版2の搬送が行われる。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、床版の重心位置が多少ズレていても吊上げることができるため、吊上げの微調整の時間を短縮することができる。また、それに発生する手間が削減できる。
また、重心位置のズレによる床版の傾きを簡単に水平に修正でき、搬送が安全で容易となる。また、傾斜による傾き分の高さを考慮する必要がなく機高を低くできる。
また、旋回環を設けることで、床版の重心位置がズレて吊上げることで吊具下部が傾いたとしても、人力で回転させることができる。
さらに、道路(床版)が傾斜していても、チェーンブロックの調整により吊具ユニットを道路の傾斜(道路勾配)にあわせて傾けることができ、それによって吊具ユニットと床版の固定が簡易的にできる。
また、床版設置の際も道路勾配にあわせて床版を傾けることができるため、設置が容易となる。
【0084】
なお、本発明にかかる吊具ユニットは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0085】
例えば、吊具ユニットの回動規制構造は、吊具上部に設けられたブラケット、吊具下部に設けられた被ブラケット、及びそれらに設けられた貫通孔同士を結合する段付規制ピンとからなっているが、これに限らず、ブラケットと被ブラケットを直接クランプしても良い。
また、吊具ユニットはチェーンブロックによって懸架されているが、これに限らずホイストや強固なロープなどであっても構わない。
また、旋回環の替わりにボールベアリング等の軸受を環状に並べても良い。
【符号の説明】
【0086】
2 床版
3 床版架設機
4 主桁
5 横梁
6 平面構造体
7 脚体
8 移動固定機構
9 走行機構
10 横行機構
11 吊具ユニット
14 走行レール
15 走行トロリー
16 走行梁
19 横行梁
20 横行レール
22 横行駆動機構
34 横行トロリー
35 チェーンブロック
36 吊具上部
37 吊具下部
38 係合部材
38a 頭部
38b 胴部
39 載置台
40 旋回環
40a 内輪
40b 外輪
41 凸部球面
42 凹部球面
43 アーム部
43a 軸受
44 上側円錐ころ軸受
45 下側円錐ころ軸受
46 連結部材揺動部
47 ブラケット(吊具上部側回動規制構造の一例)
48 被ブラケット(吊具下部側回動規制構造の一例)
47a、48a 貫通孔
49 段付規制ピン
o 回転中心
g 重心位置