(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】静止誘導電器の監視システム、および監視装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20220325BHJP
G01R 21/06 20060101ALI20220325BHJP
G01R 21/133 20060101ALI20220325BHJP
H01F 27/34 20060101ALI20220325BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H01F27/00 J
G01R21/06 G
G01R21/133 A
H01F27/34
H01F41/00 D
(21)【出願番号】P 2018120916
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】日比野 貴郁
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0243428(US,A1)
【文献】特開昭57-211932(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103543329(CN,A)
【文献】特開昭59-034166(JP,A)
【文献】特開2000-341950(JP,A)
【文献】特開2016-090447(JP,A)
【文献】特開2013-004776(JP,A)
【文献】特開2007-305770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01F 27/38
G01R 21/06
G01R 21/133
H01F 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧巻線と低圧巻線とを有する静止誘導電器の監視システムであって、
前記高圧巻線が有するタップ端子のうち、電力系統に接続されていないタップ端子間に接続された第1の計器用変圧器と、
前記第1の計器用変圧器の巻数の比と、前記高圧巻線の巻数と前記タップ端子間の巻線の比と、前記高圧巻線と前記タップ端子間の漏れインピーダンスに対応する補正値と、前記第1の計器用変圧器に発生する電圧とに基づいて、前記高圧巻線の端子間の電圧を求める監視部とを有することを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
低圧側の電圧を計測する第2の計器用変圧器と、高圧側の電流を計測する第1の変流器と、低圧側の電流を計測する第2の変流器を有し、
前記監視部は、
前記第1の計器用変圧器と前記第1の変流器で計測した電圧および電流に基づいて、前記静止誘導電器の入力電力を求め、
前記第2の計器用変圧器と前記第2の変流器で計測した電圧および電流に基づいて、前記静止誘導電器の出力電力を求め、
前記入力電力と前記出力電力に基づいて、前記静止誘導電器で消費される消費電力を求めることを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
前記監視部は、
前記第1の計器用変圧器と前記第1の変流器で計測した電圧および電流の瞬時値を掛けた値を所定時間にわたり時間積分をすることで、前記入力電力を求め、
前記第2の計器用変圧器と前記第2の変流器で計測した電圧および電流の瞬時値を掛けた値を所定時間にわたり時間積分をすることで、前記出力電力を求め、
前記入力電力から前記出力電力を減算することで、前記消費電力を求めることを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
前記監視部は、
前記第1の計器用変圧器に発生する前記電圧の波形を計測する計測手段と、
前記高圧巻線の端子間の前記電圧を演算する演算部と、
前記第1の計器用変圧器に発生する前記電圧の時系列データ、もしくは前記高圧巻線の端子間の前記電圧を記録する記録手段とを有することを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
前記監視部は、
前記記録手段に記録した前記時系列データ、もしくは前記高圧巻線の端子間の前記電圧を、外部に送信する手段を有することを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項6】
請求項1に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
前記監視部は、防水用の保護部材で囲まれており、
前記静止誘導電器の筐体の外部に配置したことを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項7】
請求項1に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
前記監視部は、
前記静止誘導電器の高圧側に配置した受電コイルから供給される電力により駆動されることを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項8】
請求項1に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
前記静止誘導電器は、三相の前記高圧巻線と前記低圧巻線とを有し、
前記第1の計器用変圧器は、前記三相の前記高圧巻線の前記タップ端子間に配置され、
第1の変流器は、前記三相の高圧側に配置され、
第2の計器用変圧器は、前記三相の低圧側に配置され、
第2の変流器は、前記三相の低圧側に配置され、
前記監視部は、
前記第1の計器用変圧器と前記第2の計器用変圧器で計測した電圧と、前記第1の変流器と前記第2の変流器で計測した電流とに基づいて、前記三相の前記静止誘導電器で消費される消費電力を求めることを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項9】
請求項8に記載の静止誘導電器の監視システムにおいて、
前記静止誘導電器は、モールド三相変圧器であり、
前記三相の前記高圧巻線はモールドされ、前記タップ端子は、モールド表面に配置されたことを特徴とする静止誘導電器の監視システム。
【請求項10】
高圧巻線と低圧巻線とを有し、前記高圧巻線が有するタップ端子のうち、電力系統に接続されていないタップ端子間に第1の計器用変圧器が接続されている静止誘導電器に取り付ける監視装置であって、
前記第1の計器用変圧器に発生する電圧を取得する電圧計測部と、
前記第1の計器用変圧器の巻数の比と、前記高圧巻線の巻数と前記タップ端子間の巻線の比と、前記高圧巻線と前記タップ端子間の漏れインピーダンスに対応する補正値と、前記電圧計測部からの計測結果とに基づいて、前記高圧巻線の端子間の電圧を求める演算部とを有することを特徴とする監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器やリアクトル等の静止誘導電器に関し、特に、その静止誘導電器の監視をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電力系統の受配電端では、配電用変電所からの3~6kV級の電力が複数の高圧配電線により送電されて柱上に備えられた受配電用変圧器等の静止誘導電器に接続され、100~200Vに降圧されて各需要家に配電される。電力系統の信頼性を確保し、適正な電圧・周波数を維持するため、従来は変電所等において配電状況を監視、調整している。
【0003】
しかし、近年では電力系統への風力、太陽光発電等による再生可能エネルギー電源の導入が進展している。これらの発電電力は天候状況等により刻一刻と変動するため、電力系統の健全性の把握や維持が困難となっている。このような状況に鑑み、各需要家が消費する電力量を把握することが考えられる。
【0004】
各需要家が消費する電力量を確実に把握する方法として、個々の静止誘導電器の入出力電力を電圧、電流を直接計測して求め、計測値を有線または無線通信手段により収集して系統管理に資することが望まれる。そのような技術が実現できれば、系統監視のみならず、個々の静止誘導電器の異常や余寿命に関する情報が得られ、その突発的な故障による停電等の発生を未然に防ぐことも可能になる。
【0005】
しかし、3~6kV級の高圧一次側の入力電圧を計測するには、十分な絶縁対策を施す必要があり、計測のための部品が高コストとなる問題がある。この問題を解決する手段として、低圧二次側の出力電圧の計測値と、一次側巻線と二次側巻線の巻数比から高圧一次側の電圧を計算により求める方法が考えられる。例えば、特許文献1には、絶縁型DC-DCコンバータのスイッチング動作の制御のため、絶縁トランスの二次側整流回路に接続された制御回路からのパルス信号を、一次側に伝達するために備えられたパルストランスの巻数比から入力電源電圧を算出し、それに応じたコンバータの制御を行う技術が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1による技術は、DC-DCコンバータのように、入出力される電圧波形が厳密に制御される用途においては有効である。しかし、電力系統に用いられる静止誘導電器においては、上述したように再生可能エネルギー電源の増加に伴い、制御できない電圧、周波数の変動や、高調波の重畳が顕著となる。よって、静止誘導電器の一次側と二次側巻線間の漏れインピーダンスが不規則に変動し、巻数比による一次側電圧の算出精度が十分確保できない課題がある。そこで、静止誘導電器の高圧一次側の入力電圧を計測することが望ましいが、上記したように、例えば、3~6kV級の高圧一次側の入力電圧を計測するには、十分な絶縁対策を施す必要があるため、対策が複雑となり、計測のための部品が高コストとなる問題がある。
【0008】
本発明の目的は、精度よく、かつ簡易に静止誘導電器の監視ができる監視システム、および監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一例としては、高圧巻線と低圧巻線とを有する静止誘導電器の監視システムであって、
前記高圧巻線が有するタップ端子のうち、電力系統に接続されていないタップ端子間に接続された第1の計器用変圧器と、前記第1の計器用変圧器の巻数の比と、前記高圧巻線の巻数と前記タップ端子間の巻線の比と、前記高圧巻線と前記タップ端子間の漏れインピーダンスに対応する補正値と、前記第1の計器用変圧器に発生する電圧とに基づいて、前記高圧巻線の端子間の電圧を求める監視部とを有する静止誘導電器の監視システムである。
【0010】
また、本発明の好ましい他の例は、高圧巻線と低圧巻線とを有し、前記高圧巻線が有するタップ端子のうち、電力系統に接続されていないタップ端子間に第1の計器用変圧器が接続されている静止誘導電器に取り付ける監視装置であって、
前記第1の計器用変圧器に発生する電圧を取得する電圧計測部と、
前記第1の計器用変圧器の巻数の比と、前記高圧巻線の巻数と前記タップ端子間の巻線の比と、前記高圧巻線と前記タップ端子間の漏れインピーダンスに対応する補正値と、前記電圧計測部からの計測結果とに基づいて、前記高圧巻線の端子間の電圧を求める演算部とを有する監視装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、精度よく、かつ簡易に静止誘導電器の監視をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1における単相変圧器の電流、電圧測定方法の回路図。
【
図2】実施例1における油入単相変圧器の縦方向の構成図。
【
図3】実施例1における油入単相変圧器の横方向の構成図。
【
図4】実施例1における油入単相変圧器の運転監視システムの回路図。
【
図5】実施例1における油入単相変圧器の運転監視システムの全体図。
【
図6】実施例2における油入単相変圧器の運転監視システムの回路図。
【
図7】実施例3における三相変圧器の電流、電圧測定方法の回路図。
【
図8】実施例3における油入三相変圧器の縦方向の構成図。
【
図9】実施例4におけるモールド三相変圧器の正面図。
【
図10】単相変圧器の電流、電圧についての比較例における測定方法を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1から
図5は、第1の実施例1を説明する図である。本実施例の構成とその作用について、
図10に示した比較例を使い説明する。
【0015】
図1は、実施例1における単相変圧器の電流、電圧を測定する方法を示す回路図である。鉄心3の周囲に、2つに分けられた高圧巻線1aおよび1bと、2つに分けられた低圧巻線2aおよび2bが巻回される。高圧巻線1aと1bの接続部には、一定の巻数ごとに複数のタップ端子1dが備えられ、任意のタップ端子間をタップ接続線1cで接続することで、該変圧器の高圧、低圧巻線間の巻数比を微調整し、低圧巻線2aと2bの接続部は、接続線2cにより接続されて運用に供される。タップ端子1dは、例えば、変圧器の受電する電圧が変動した場合、電圧に適合した巻数が選択できるように、巻線の途中から外部へ引き出した引出し線である。本実施例では、高圧側の電極U、V間に設けられている。該変圧器の高圧側電圧は電極U、V間に印加され、降圧された低圧側電圧は電極u、v間より出力される。
【0016】
図10は、前記の単相変圧器に入力される電圧と電流、および出力される電圧と電流の計測方法を示した比較例としての回路図である。U、V電極間に第1の計器用変圧器(VT)10が、u、v電極間に第2の計器用変圧器20が接続され、高圧側電圧V1と低圧側電圧V2をそれぞれ計測する。そして、高圧側電極には第1の変流器(CT)11が、低圧側電極には第2の変流器21が備えられ、高圧側の電流I1と低圧側の電流I2をそれぞれ計測する。該単相変圧器の入力電力Pin、および出力電力Poutは、電流、電圧の時間波形の積を周期Tに渡って時間積分することにより、それぞれ以下の式(1)および式(2)により、求められる。ただし、第1の計器用変圧器10、および第2の計器用変圧器20の巻数比は、いずれもnとする。ここで、巻数比nは、高圧巻線の巻数を、低圧巻線の巻数で割った値をいう。周期Tとしては、例えば、1/50秒、または1/60秒間とし、そのような時間に渡って時間積分して静止誘導電器の入力電力もしくは出力電力を求めることができる、
【0017】
【0018】
【0019】
単相変圧器に入力される電圧と電流、および出力される電圧と電流の比較例における計測方法では、高圧側電極U、V間には3~6kV級の電圧V0が印加されるため、第1の計器用変圧器10の巻数比nを非常に大きくして、計測される電圧V1を十分降圧させて、計測される電圧V1を、式(3)により求める必要がある。
【0020】
【0021】
さらに、電圧を計測するための部品の絶縁対策も施す必要がある。そのため、比較例では、計器用変圧器10をはじめ、電圧波形を取得するための電子回路や、その先に配置される電子回路等のコストが増加し、安全性の確保も困難となる。
【0022】
実施例1では、
図1に示す回路図により単相変圧器に入力される電圧と電流、および出力される電圧と電流を計測する。低圧側の電圧V2と電流I2、および高圧側の電流I1の計測方法は、比較例と同一である。該単相変圧器の高圧巻線の途中に備えられている、電力系統に接続されていないタップ端子1d間に第1の計器用変圧器10を接続し、該タップ端子間に発生する電圧V1を計測する。高圧巻線全体の巻数をN1、第1の計器用変圧器10を接続したタップ端子1d間の巻数をNt、さらに、高圧巻線と、タップ端子1d間の巻線間の漏れインピーダンスに対応する補正係数をrとすると、計測される電圧V1と、高圧側電極U、V間の高圧側電圧V
0との関係は、式(4)により求めることができる。
【0023】
【0024】
さらに、該変圧器の入力電力Pin’は以下のように求められる。
【0025】
【0026】
第1の計器用変圧器10を接続するタップ端子1d間の巻線は、高圧巻線1a、1bの一部なので、該高圧巻線に対する漏れインピーダンスは十分に小さい。よって、式(5)内の補正係数rの考慮により、入力電力Pin’を計算することができる。該単相変圧器で発生する損失Lossは、以下の式により求められる。
【0027】
【0028】
図2は、実施例1における油入単相変圧器の縦方向の構成図を示す。
図2では、該単相変圧器の高圧側の電極U、Vのみの配線の状況を示している。単相鉄心3の周囲に低圧巻線2aと2bが、さらにその外側に高圧巻線1a、1bが、それぞれ2本の磁脚に分けて巻回されている。低圧巻線2aと2bは、接続線2cにより接続される。単相鉄心3の上部と下部には固定金具5が備えられ、図示していないが、巻線とともに絶縁油タンク6の内壁に固定されている。上部の固定金具5にはタップ端子台4が備えられ、該端子台には、高圧巻線と接続されたタップ端子が備えられる。高圧巻線1aと1bは、タップ接続線1cにより接続されている。そして電力系統に接続されていないタップ端子1dに、第1の計器用変圧器10を接続し、電圧V1を計測する。高圧側電極には第1の変流器11が備えられて、高圧側の電流I1を計測する。そして式(5)により、該単相変圧器への入力電力Pin’が求められる。
【0029】
図3は、実施例1における油入単相変圧器の横方向の構成図を示す。
図2で説明した構成部材の記号は同一なので、その説明は省略する。本図において、絶縁油タンク6の下側には高圧側電極U、Vが備えられ、第1の計器用変圧器10が接続された端子台4に接続される。そして絶縁油タンク6の上側には低圧側電極u、vが備えられ、低圧巻線2a、2bに直接接続される。第2の計器用変圧器20は、絶縁油タンク6の外部で、低圧側電極u、vに直接接続される。
【0030】
図4は、本実施例1における油入単相変圧器の運転監視システムの回路図を示す。絶縁油タンク6の内部のタップ端子台4に接続された第1の計器用変圧器10で計測される電圧V1とする。低圧側電極u、vに接続された第2の計器用変圧器20で計測される電圧V2とする。高圧側電極に備えた第1の変流器11で計測される電流I1とする。低圧側電極に備えた第2の変流器21で計測される電流I2とする。V1、V2、I1、およびI2は、監視部もしくは監視装置を構成する基板35に備えられた電圧、電流波形の計測手段30に入力される。
【0031】
計測手段30は、基板35上の制御手段31により制御され、一定時間ごとに前記の電圧、電流波形を計測する。計測された波形、および式(2)、式(5)、および式(6)により、演算部とし機能する制御手段31が、計算した、該単相変圧器の入力電力Pin’、出力電力Pout、損失Loss、電圧波形の時系列データ、または電流波形の時系列データは、記録手段32に蓄積される。
【0032】
計測、蓄積されたこれらの数値データは、通信手段33とアンテナ34により送信され、電力系統の状態の監視、および該単相変圧器の健全性の監視に使われる。なお、計測された数値データの送信方法は、本図に示したアンテナ34を経由する方法だけではなく、有線通信、あるいは赤外線等の光通信による方法を用いてもよい。基板35上に備えられる各手段は、電池36より供給される電力により駆動される。
【0033】
図5は、実施例1における油入単相変圧器の運転監視システムの全体図を示す。
図4に示した、計器用変圧器10と20、電圧、電流の計測手段30、制御手段31、記録手段32、および通信手段33を備えた基板35は、該単相変圧器の絶縁油タンク6の外面に固定され、電池36とアンテナ34が接続されている。
【0034】
基板35は、静止誘導電器の筐体としての該絶縁油タンク6の外面に、固定した保護部材としての箱状部材の内部に収納してもよい。もしくは、基板35は、防水性の保護部材としての樹脂材で覆い、絶縁油タンク6の外面に接着することで固定してもよい。また、監視装置もしくは監視部を構成する基板35は、防水などの保護部材を、その表面に設けることで、絶縁油タンク6内の開いたスペースに配置することも出来る。そうすることで、絶縁油タンク6の外側のスペースを別の用途に利用できる。
【0035】
実施例1によれば、静止誘導電器の高圧側の電圧や、消費される電力などを、簡易な構成で、低コストで監視することができる。また、高精度な電力系統の監視、調整が可能になる。さらに、該変圧器の異常や、余寿命に関する情報が得られ、突発的な変圧器の故障による停電等を未然に防ぐことが可能になる。その上、本実施例の監視部もしくは監視装置は、既設の静止誘導電器へ簡便に追加できるので、静止誘導電器の大規模な入れ替え作業を経ずに、高精度な電力系統の監視、調整が可能となる効果も奏する。
【実施例2】
【0036】
図6は、実施例2における油入単相変圧器の運転監視システムの回路図を示す。実施例1と共通の構成部材には
図4と同一の記号が付されており、これらの説明は省略する。実施例1では、基板35上に備えられる各手段は、電池より供給される電力により駆動されるが、定期的な電池の交換作業が必要になるという課題がある。
【0037】
そこで実施例2では、該単相変圧器の高圧側電極に受電コイル37aを備え、該電極を流れる電流I1により作られる磁界から誘導起電力を得て、これを基板35上の各手段を駆動させる電力に供する。
【0038】
基板35上には、受電コイル37aから出力される交流電力に重畳される高周波成分を除去し、直流電力に変換するフィルタおよび交流-直流変換手段37が備えられ、生成した直流電力により、基板35上の他の各手段を駆動させる。
【0039】
実施例2により、該単相変圧器が電力系統に接続されている間は、監視システムを連続して駆動させることが可能になり、電池の交換作業等が不要になる。
【実施例3】
【0040】
図7および
図8は、実施例3を説明するための図である。
図7は、実施例3における三相変圧器の電流、電圧の測定方法の回路図であり、一般的な受配電用変圧器で採用されている、三相高圧巻線1u、1v、1wをスター結線し、三相低圧巻線2u、2v、2wをデルタ結線した例を示している。実施例1などと共通した箇所の説明は省略している。三相高圧巻線1u、1v、1wの電極U、V、Wの反対側には、一定の巻数ごとに複数のタップ端子1dが備えられ、任意のタップ端子間をタップ接続線1cで接続することで、該変圧器の高圧、低圧巻線間の巻数比を微調整し、三相低圧巻線2u、2v、2wは、接続線2cによりデルタ結線されて運用に供される。該三相変圧器の高圧側の三相電圧は電極U、V、Wに印加され、降圧された低圧側の三相電圧は電極u、v、wより出力される。
【0041】
該三相変圧器の三相高圧巻線1u、1v、1wの途中に備えられている、電力系統に接続されていないタップ端子1d間に、第1の計器用変圧器10u、10v、10wをそれぞれ接続し、該タップ端子間に発生する相電圧V1u、V1v、V1wを計測する。実施例1と同様に、各相の高圧側電極間、つまり、U-V間、V-W間、U-W間の高圧電圧は、それぞれ、式(4)に基づいて、算出することができる。
【0042】
また、低圧側の三相電極u、v、w間に、第2の計器用変圧器20uv、20vw、20wuをそれぞれ接続し、該電極間に発生する線間電圧V2uv、V2vw、V2wuを計測する。そして高圧側の三相電極U、V、Wには、それぞれ第1の変流器11u、11v、11wを備えて相電流I1u、I1v、I1wを計測し、低圧側の三相電極u、v、wには、それぞれ第2の変流器21u、21v、21wを備えて線間電流I2u、I2v、I2wを計測する。
【0043】
該三相変圧器の入力電力Pin3、および出力電力Pout3は、前記の計器用変圧器および変流器により計測される電圧、電流の時間波形の積を周期Tに渡って時間積分することにより求められる。高圧側の三相巻線1u、1v、1wそれぞれの巻数をN1、第1の計器用変圧器10u、10v、10wを接続したタップ端子1d間の巻数をNt、計器用変圧器の巻数比をn、さらに高圧巻線1u、1v、1wと、各巻線内のタップ端子1d間の巻線間の漏れインピーダンスに対応する補正係数をそれぞれru、rv、rwとすると、入力電力Pin3は、
【0044】
【0045】
と表される。また、出力電力Pout3は、
【0046】
【0047】
と表され、該三相変圧器で発生する損失Loss3は、以下の式により求められる。
【0048】
【0049】
図8は、実施例3における油入三相変圧器の縦方向の構成図を示す。
図8では、該三相変圧器の高圧側の電極U、V、Wのみの配線の状況を示している。三相鉄心3の周囲に三相低圧巻線2u、2v、2wが、さらにその外側に三相高圧巻線1u、1v、1wが巻回されている。三相鉄心3の上部と下部には固定金具5が備えられ、図示していないが、巻線とともに絶縁油タンク6の内壁に固定されている。上部の固定金具5にはタップ端子台4が備えられ、該端子台には、高圧巻線と接続されたタップ端子が備えられる。そして電力系統に接続されていないタップ端子1dに、第1の計器用変圧器10u、10v、10wを接続し、相電圧V1u、V1v、V1wを計測する。高圧側電極U、V、Wには第1の変流器11u、11v、11wが備えられて、相電流I1u、I1v、I1wを計測する。そして(7)式により、実施例1と同様に、制御手段31が、該三相変圧器への入力電力Pin3を算出する。
【0050】
実施例3によれば、三相変圧器などの三相の静止誘導電器における高圧側の電圧や、消費される電力などを、低コストで監視することができる。
【実施例4】
【0051】
図9は、実施例4を示す、モールド三相変圧器の正面図である。実施例4では、実施例3と共通の構成部材には
図8と同一の記号が付しており、これらの説明は省略する。実施例4では、樹脂などでモールドされた三相高圧巻線1u、1v、1wの表面に複数のタップ端子1dが備えられ、任意のタップ端子間をタップ接続線1cで接続することで、三相高圧巻線をスター結線している。実施例4では、該高圧巻線の表面に備えられた電力系統に接続されていないタップ端子1d間に第1の計器用変圧器10u、10v、10wを接続することで、相電圧V1u、V1v、V1wが計測される。
【0052】
実施例4によれば、モールド三相変圧器などの三相のモールドされた静止誘導電器における高圧側の電圧や、消費される電力などを、簡易な構成で、低コストで監視することができる。
【0053】
上述した各実施例は、構成を限定するものではない。また、任意の複数の実施例を組み合わせて構成することを排除するわけではない。
【符号の説明】
【0054】
1a,1b:単相高圧巻線、1c:タップ接続線、1d:タップ端子、2a,2b:単相低圧巻線、2c:低圧巻線の接続線、10:高圧巻線側の計器用変圧器(VT)、11:高圧巻線側の変流器(CT)、20:低圧巻線側の計器用変圧器(VT)、21:低圧巻線側の変流器(CT)、3 :鉄心、30:電圧・電流波形の取得手段、31:制御手段、32:記録手段、33:通信手段、35:基板