(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】バイオベースのN-アセチル-L-メチオニン及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12P 13/12 20060101AFI20220325BHJP
A23K 20/142 20160101ALI20220325BHJP
【FI】
C12P13/12 A
A23K20/142
(21)【出願番号】P 2018519350
(86)(22)【出願日】2016-10-14
(86)【国際出願番号】 KR2016011577
(87)【国際公開番号】W WO2017065567
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2018-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2015-0143428
(32)【優先日】2015-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0092089
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【氏名又は名称】小合 宗一
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ジュン オク
(72)【発明者】
【氏名】パク、チン スン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ス チン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、コク キ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソ ヨン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】中島 庸子
【審判官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500623号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12P13/12, A23K20/142
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
JST7580/JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)微生物発酵によってL-メチオニン前駆体を生産する段階;及び(ii)酵素変換過程によって前記L-メチオニン前駆体からL-メチオニンを生産する段階;及び
(b)前記L-メチオニンをN-アシルトランスフェラーゼ又は前記N-アシルトランスフェラーゼを生産する微生物を用いてアセチル化する段階を含み、前記N-アシルトランスフェラーゼが、シュードモナス・プチダ由来のN-アシルトランスフェラーゼ(ppmat)、バチルス・サブチリス由来のN-アシルトランスフェラーゼ(bsmat)、エンテロバクター属638由来のN-アシルトランスフェラーゼ(entmat)からなる群から選択される、
バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項2】
前記L-メチオニン前駆体が、O-アセチル-L-ホモセリン(O-acetyl-L-homoserine)またはO-スクシニル-L-ホモセリン(O-succinyl-L-homoserine)である、請求項1に記載のバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項3】
前記酵素変換過程が、シスタチオニン-γ-合成酵素(cystathionine-γ-synthase)、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-acetyl homoserine sulfhydrylase)及びO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-succinyl homoserine sulfhydrylase)からなる群から選択される1つ以上の酵素によって行われるものである、請求項1に記載のバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項4】
(a)微生物発酵によってL-メチオニンを生産する段階;及び
(b)前記L-メチオニンをN-アシルトランスフェラーゼ又は前記N-アシルトランスフェラーゼを生産する微生物を用いてアセチル化する段階を含み、前記N-アシルトランスフェラーゼが、シュードモナス・プチダ由来のN-アシルトランスフェラーゼ(ppmat)、バチルス・サブチリス由来のN-アシルトランスフェラーゼ(bsmat)、及びエンテロバクター属638由来のN-アシルトランスフェラーゼ(entmat)からなる群から選択される、
バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項5】
前記段階(b)においてアセチルCoAを供給する段階をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項6】
N-アシルトランスフェラーゼ活性を有するN-アセチル-L-メチオニンを直接生産する微生物の発酵によってバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンを生産する段階を含み、前記N-アシルトランスフェラーゼが、シュードモナス・プチダ由来のN-アシルトランスフェラーゼ(ppmat)、バチルス・サブチリス由来のN-アシルトランスフェラーゼ(bsmat)、及びエンテロバクター属638由来のN-アシルトランスフェラーゼ(entmat)からなる群から選択される、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項7】
前記微生物発酵時にバイオベースのL-メチオニンを培地に供給する段階を含む、請求項6に記載のバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項8】
前記バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンを構成する炭素の50%~100%がバイオ資源由来の炭素である、請求項1、4及び6のいずれか1項に記載のバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法により生産されるバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料添加物または飼料組成物を動物
(ヒトを除く)に給餌する段階を含む、動物
(ヒトを除く)の乳生産量、乳脂肪または乳タンパクの増進または増体効果を改善させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニン及びその生産方法に関する。また、本出願は、前記N-アセチル-L-メチオニン及びこれを含む飼料添加物、及び飼料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生命を維持し、新たな組織を形成したり、乳、肉、卵などを生産する活動を続けて行くために、動物は適切な栄養分を体外から持続的に供給されなければならない。したがって、動物に飼料の他に必須的な栄養成分であるアミノ酸を直接給餌して増体率及び肉質などの特性を改善させようとする努力が持続されてきた。しかし、反芻動物が摂取したほとんどのアミノ酸は反芻胃内の微生物の消化過程を介して60~70%が自体的に消費されて、一部の消化ができなかったアミノ酸のみが小腸で消化、吸収される。したがって、アミノ酸を反芻動物の飼料に添加しても養豚、養鶏でのような効果を得られないため、反芻胃をバイパス(bypass)して反芻動物が使用できる反芻胃保護アミノ酸の開発が必要である。
【0003】
つまり、反芻動物の飼料にアミノ酸を添加する場合、反芻胃内の微生物による分解過程を回避し、小腸に安定的に到達及び吸収されるべきであるため、反芻胃内の保護効果または反芻胃バイパス(bypass)効果が向上された新規技術及び物質に対する必要性が高まっている傾向にある。
【0004】
一方、N-アセチル-L-メチオニンは、食品添加物及び飼料用途としての機能が明らかになっている物質であるが、製造コストが高くて需要が限定的である。また、現在まで、その製造法は石油由来の物質を原料として用いることで、これにより、有限資源の枯渇及び環境的な問題が発生することになる(米国特許第7960575号)。
【0005】
既存のN-アセチル-L-メチオニンの製造方法の具体的な一例として、石油からD/L-メチオニンを化学的に合成してL-メチオニンを分離した後、アセチル化過程を介してN-アセチル-L-メチオニンを生産する方法があるが、D/L-メチオニンの混合物からL-メチオニンのみを分離するのに費用が掛かるという欠点がある。
【0006】
また、メチオニン生産菌株のアセチル化酵素を過発現させてL-型のみ得ることができる直接発酵方法(米国特許第8143031号)があるが、DTNB分析法を介してYncAがアセチルCoA(acetyl-CoA)を用いることを間接的に確認しただけで、酵素反応の産物または前記遺伝子の形質転換体が生産する産物としてN-アセチル-L-メチオニンが実際に生成されるかは確認できなかった。また、前記方法は、収率が低く、最終的に高コストで商業化に難しさがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、全体プロセスで二酸化炭素の発生が少なくて環境にやさしいながらも高効率及び経済性のあるN-アセチル-L-メチオニンの生産方法を開発するために鋭意努力した結果、バイオベースのL-メチオニンを高収率で生産し、これをアセチル化することにより環境汚染の懸念なく、経済的にN-アセチル-L-メチオニンを生産しうる方法を開発して、本出願を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一つの目的は、(a)(i)微生物発酵によってL-メチオニン前駆体を生産する段階;及び(ii)酵素変換過程によって前記L-メチオニン前駆体からL-メチオニンを生産する段階;及び(b)前記L-メチオニンをアセチル化する段階を含む、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法を提供することにある。
【0009】
本出願の他の目的は、(a)微生物発酵によってL-メチオニンを生産する段階;及び(b)前記L-メチオニンをアセチル化する段階を含む、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法を提供することにある。
【0010】
本出願のもう一つの目的は、アセチル化酵素活性を有するN-アセチル-L-メチオニンを生産する微生物の発酵によって、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンを直接生産する段階を含む、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法を提供することにある。
【0011】
本出願のもう一つの目的は、バイオ資源由来の炭素を含む、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンを提供することにある。
【0012】
本出願のもう一つの目的は、N-アセチル-L-メチオニンの集団を構成する炭素の50%~100%がバイオ資源由来の炭素である、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの集団を提供することにある。
【0013】
本出願のもう一つの目的は、前記バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料添加物を提供することにある。
【0014】
本出願のもう一つの目的は、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料組成物を提供することにある。
【0015】
本出願のもう一つの目的は、前記飼料添加物または飼料組成物を動物に給餌する段階を含む、動物の乳生産量、乳脂肪または乳タンパクの増進または増体効果を改善させる方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0016】
本出願のバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法は、バイオ資源を用いて生産したもので、環境汚染が少なく、高収率で生産可能で経済的なもので、産業的に非常に有用に用いられうる。特に、前記生産方法で生産されたN-アセチル-L-メチオニンは、反芻胃バイパス(bypass)が可能なので、飼料添加物として優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】N-アセチル-L-メチオニンの反芻胃バイパス率(%)をグラフで表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記目的を達成するための本出願の一つの態様は、(a)(i)微生物発酵によってL-メチオニン前駆体を生産する段階;及び(ii)酵素変換過程によって前記L-メチオニン前駆体からL-メチオニンを生産する段階;及び(b)前記L-メチオニンをアセチル化する段階を含む、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法である。
【0019】
本出願の他の態様は、(a)微生物発酵によってL-メチオニンを生産する段階;及び(b)前記L-メチオニンをアセチル化する段階を含む、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法である。
【0020】
本出願において、用語「バイオベース(bio-based)」は、バイオ資源(bio resource)由来の物質を意味する。用語「バイオ資源」は、光合成によって生成された様々な藻類及び植物資源、すなわち木、草、農作物の枝、葉、根、果実などとこれから得られるすべての物質を含み、特に石油資源を除いた環境にやさしい資源を意味する。
【0021】
本出願のN-アセチル-L-メチオニン生産方法は、石油由来の物質ではなく、バイオ炭素源を発酵させてL-メチオニンの前駆体を高効率で生産し、そこからN-アセチル-L-メチオニン(N-acetyl-L-methionine、NALM)を生産するため、環境に優しく経済的な方法として産業的に非常に有用である。
【0022】
以下、本出願のN-アセチル-L-メチオニン生産方法を詳細に説明する。
【0023】
(a)段階は、(i)微生物発酵によってL-メチオニン前駆体を生産する段階、及び(ii)酵素変換過程によって前記L-メチオニン前駆体からL-メチオニンを生産する段階を含む。
【0024】
前記L-メチオニン前駆体は、バイオ炭素源を発酵して生産される物質の中でL-メチオニンに転換されうることを意味し、O-アセチル-L-ホモセリン(O-acetyl-L-homoserine)またはO-スクシニル-L-ホモセリン(O-succinyl-L-homoserine)であってもよいが、これら限定されるものではない。
【0025】
前記発酵に用いられる微生物は、L-メチオニン前駆体を生産しうる菌株をいい、本出願で使用される用語、「L-メチオニン前駆体を生産しうる菌株」とは、L-メチオニン前駆体を生物体内で生産しうる原核または真核微生物菌株であって、L-メチオニン前駆体を菌株内に蓄積しうる菌株をいう。前記L-メチオニン前駆体を生産しうる菌株は、O-アセチル-L-ホモセリンまたはO-スクシニル-L-ホモセリン生産菌株であってもよい。
【0026】
例えば、前記の菌株は、エシェリキア属(Escherichia sp.)、エルウィニア属(Erwinia sp.)、セラチア属(Serratia sp.)、プロビデンシア属(Providencia sp.)、コリネバクテリウム属(Corynebacteria sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、レプトスピラ属(Leptospira sp.)、サルモネラ属(Salmonellar sp.)、ブレビバクテリア属(Brevibacteria sp.)、ヒポモナス属(Hypomononas sp.)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.)、ノカルジア属(Norcardia sp.)、カビ類(fungi)または酵母類(yeast)に属する微生物菌株が含まれてもよい。具体的には、エシェリキア属、コリネバクテリウム属、レプトスピラ属の微生物菌株と酵母であってもよい。より具体的には、エシェリキア属の微生物菌株であってもよく、最も具体的には、大腸菌(Escherichia coli)であってもよいが、これに制限されるものではない。ちなみに、前記菌株は、本発明者らの先行特許である米国特許第8609396号及び米国特許第7851180号に開示された菌株を含んでもよい。
【0027】
本出願において、用語「発酵」は、より簡単な有機化合物の生産を引き起こす微生物による有機物質の分解をいう。前記発酵は嫌気性条件または酸素の存在下で起こりうる。特に、本出願で前記発酵は、L-メチオニン前駆体を生産しうる菌株を培養することにより行われるものであってもよい。
【0028】
前記で製造されたL-メチオニン前駆体生産菌株の培養過程は、当業界で知られている適当な培地と培養条件に応じて行うことができる。これらの培養過程は、当業者であれば、選択される菌株に応じて容易に調整して使用することができる。前記培養方法の例には、回分式、連続式及び流加式培養が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0029】
培養に使用される培地は、特定の菌株の要求条件を適切に満足させなければならない。前記培地は、様々な炭素源を含んでもよく、他の窒素源及び微量元素成分を含んでもよい。前記炭素源は、特に、バイオベースの物質を含むことを特徴とする。具体的に、前記バイオ炭素源は、砂糖、グルコース(glucose)、ラクトース(lactose)、スクロース(sucrose)、乳糖、フルクトース(fructose)、マルトース(maltose)、デンプン(starch)及びセルロース(cellulose)のような炭水化物;大豆油(soybean oil)、ひまわり油(sunflower oil)、ヒマシ油、カスターオイル(castor oil)、ウェーバー油及びココナッツ油(coconut oil)のような脂肪;パルミチン酸(palmitic acid)、ステアリン酸(stearic acid)及びリノール酸(linoleic acid)のような脂肪酸;グリセロール(glycerol)及びエタノール(ethanol)のようなアルコールと酢酸(acetic acid)のような有機酸(organic acid)であってもよいが、これに制限されない。これらの炭素源は、単独または組み合わせて使用されてもよい。窒素源としては、ペプトン(peptone)、酵母抽出液(yeast extract)、肉汁(gravy)、麦芽抽出液(malt extract)、コーン浸出液(corn steep liquor(CLS))及び豆粉(bean flour)のような有機窒素源及び尿素(urea)、硫酸アンモニウム(ammonium sulfate)、塩化アンモニウム(chloride)、リン酸アンモニウム(phosphate)、炭酸アンモニウム(carbonate)及び硝酸アンモニウム(nitrate)のような無機窒素源を含む。これらの窒素源は、単独または組み合わせて使用されてもよい。前記培地には、リン酸源としてさらにリン酸二水素カリウム(potassium dihydrogen phosphate)、リン酸水素カリウム(potassium hydrogen phosphate)及び相応するナトリウムを含む塩(sodium-containing salts)を含んでもよい。また、培地は硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)または硫酸鉄(iron sulfate)のような金属を含んでもよい。また、アミノ酸、ビタミン及び適切な前駆体などが添加されてもよい。これらの培地または前駆体は、培養物に回分式または連続式で添加されてもよい。
【0030】
また、培養中に水酸化アンモニウム(ammonium hydroxide)、水酸化カリウム(potassium hydroxide)、アンモニア、リン酸及び硫酸のような化合物を適切な方法で添加することにより、培養物のpHを調整してもよい。また、培養中に脂肪酸ポリグリコールエステル(polyglycol ester)のような消泡剤を使用することにより、培養中に気泡の生成を抑制してもよい。また、培養液の好気性(aerobic)の条件を維持するために、培養液内に酸素または酸素を含むガス(例えば、空気)が培養液に注入されてもよい。培養物の温度は、一般的に20~45℃、具体的には25~40℃であってもよい。培養の期間は、L-メチオニン前駆体の生産が所望のレベルに到達するまで継続されてもよく、培養時間は10~160時間であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0031】
前記酵素変換過程は、L-メチオニン前駆体を酵素を用いてL-メチオニンに転換する過程をいう。具体的に、酵素変換過程で用いられる酵素は、シスタチオニン-γ-合成酵素(cystathionine-γ-synthase)、O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-acetyl homoserine sulfhydrylase)及びO-スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-succinyl homoserine sulfhydrylase)からなる群から選択される1つ以上の酵素によって行われるものであってもよいが、これに制限されるものではない。特に、前記酵素変換過程は、L-メチオニン前駆体またはそれを含む発酵液自体にメチルメルカプタン(methyl-mercaptan)を添加して酵素と反応させるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0032】
また、前記(a)段階は、微生物発酵によってL-メチオニンを直接生産する段階であってもよい。この場合、前記発酵に用いられる微生物は、L-メチオニンを生産しうる菌株をいい、本出願で使用される用語、「L-メチオニンを生産しうる菌株」とは、L-メチオニンを生物体内で生産しうる原核または真核微生物菌株であって、L-メチオニンを菌株内に蓄積しうる菌株をいう。
【0033】
例えば、前記菌株はエシェリキア属(Escherichia sp.)、エルウィニア属(Erwinia sp.)、セラチア属(Serratia sp.)、プロビデンシア属(Providencia sp.)、コリネバクテリウム属(Corynebacteria sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、レプトスピラ属(Leptospira sp.)、サルモネラ属(Salmonellar sp.)、ブレビバクテリア属(Brevibacteria sp.)、ヒポモナス属(Hypomononas sp.)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.)、ノカルジア属(Norcardia sp.)、カビ類(fungi)または酵母類(yeast)に属する微生物菌株が含まれてもよい。具体的には、エシェリキア属、コリネバクテリウム属、レプトスピラ属の微生物菌株と酵母であってもよい。より具体的には、エシェリキア属の微生物菌株であってもよく、最も具体的には、大腸菌(Escherichia coli)であってもよいが、これに制限されるものではない。ちなみに、前記菌株は、本発明者らの先行特許である大韓民国登録特許第10-1140906号に開示された菌株を含んでもよい。
【0034】
(b)段階は、前記L-メチオニンをアセチル化する段階である。
【0035】
前記L-メチオニンをアセチル化する方法は、化学合成方法、微生物による生産方法、またはアセチル化酵素によって行われるものであってもよいが、これに制限されるものではなく、L-メチオニンをアセチル化しうる方法であれば、当業者が適宜選択して用いてもよい。
【0036】
前記化学合成方法は、L-メチオニンのアミン基をアセチル化しうるアセチル化化合物を注入して常温または高温で反応させる工程である。L-メチオニンのアセチル化反応に用いられる原料としては、一般的に無水酢酸(acetic anhydride)が使用されてもよく、その他にも遷移金属系の触媒を伴った酢酸(acetic acid)が使用されたり、非プロトン性溶媒が適用された適当な反応条件の場合、ハロゲン化アセチル(acetyl halide)がアセチル化化合物として使用されてもよい。ここで、高温は70~100℃、具体的には、80~90℃であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0037】
また、前記アセチル化は、L-メチオニン及びアセチルCoAを含む混合物に精製されたアセチル化酵素またはアセチル化酵素を発現する微生物を破砕して収得した上澄液を添加して行われるものであってもよい。前記アセチル化酵素は、L-メチオニンをN-アセチル-L-メチオニンに転換しうるアシルトランスフェラーゼを含み、例えば、YncA(L-amino acid N-acyltransferase MnaT)、ArgA(N-acetylglutamate synthase)、YjdJ(Putative acetyltransferase)、YfaP(Putative acetyltransferase)、YedL(Putative acetyltransferase)またはYjhQ(Putative acetyltransferase)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
前記アセチル化酵素は、前記酵素を発現するように形質転換された大腸菌、コリネバクテリウムまたは酵母から収得したものであってもよい。すなわち、それぞれのアセチル化酵素をコードする遺伝子を用いて大腸菌、酵母、またはコリネバクテリウムを形質転換させた後、これを培養してアセチル化酵素を精製した後に用いるか、前記形質転換菌株を破砕した後に上澄液を回収して用いてもよい。また、前記形質転換菌株を破砕せずにキシレンなどを用いた前処理過程を経て菌株の細胞壁の透過性を高めた後、L-メチオニンを供給してアセチル化反応を誘導してもよい。
【0039】
さらに、前記アセチル化は、微生物発酵を介して菌株の培養と同時に菌株内のアセチル化酵素反応を用いて行われてもよい。微生物の直接発酵はL-メチオニンを直接アセチル化しうる酵素を含んでいる野生型菌株を使用するか、人工突然変異を介してアセチル化酵素の活性が強化された特徴を有する突然変異体を使用するか、L-メチオニンのアセチル化を誘導しうる酵素を過発現してアセチル化反応が改善された形質転換菌株を使用してもよい。つまり、アセチル化酵素活性を有するN-アセチル-L-メチオニンを生産する微生物であれば制限なく使用してもよい。また、微生物内で生合成されるL-メチオニンだけでなく、発酵中に外部から供給されるL-メチオニンを使用してアセチル化反応によるN-アセチル-L-メチオニンの生産も可能である。
【0040】
前記L-メチオニンをアセチル化する段階でアセチル化酵素またはそれを生産する微生物を用いる場合、アセチルCoAを供給する段階を含むものであってもよいが、これはアセチルCoAを直接供給したり、微生物の内部に十分な量のアセチルCoAが供給されるようにブドウ糖または酢酸などを添加して行われるものであってもよい。
【0041】
本出願は、発酵を介してL-メチオニン前駆体を製造した後、酵素変換過程を介してL-メチオニンを高収率で製造するか、または発酵を介して直接L-メチオニンを高収率で製造した後に様々なアセチル化の方法により、N-アセチル-L-メチオニンを製造するもので、既存の石油化学ベースのN-アセチル-L-メチオニンの製造方法とは全く異なる新しいパラダイムを提示することができる。
【0042】
さらに、本出願を通じてN-アセチル-L-メチオニンの直接生産が可能な野生型微生物、その人工突然変異体、またはアセチル化酵素の導入によりN-アセチル-L-メチオニンの生産能が向上された形質転換菌株を用いて直接発酵または転換反応によるN-アセチル-L-メチオニンの生産能を著しく向上させることができ、これにより、現在まで低い生産能を示すN-アセチル-L-メチオニンの生物学的生産方法の効率を著しく改善することができる。
【0043】
前記N-アセチル-L-メチオニンは、これを構成する炭素の少なくとも50%以上がバイオ資源由来の炭素であってもよい。例えば、前記N-アセチル-L-メチオニン生産方法で生産されたN-アセチル-L-メチオニンを構成する炭素のうち、50%以上がバイオ炭素源を発酵して得られたL-メチオニン前駆体であるO-アセチル-L-ホモセリン(O-acetyl-L-homoserine)またはO-スクシニル-L-ホモセリン(O-succinyl-L-homoserine)由来のものであってもよい。
【0044】
前記N-アセチル-L-メチオニンが少なくとも50%以上のバイオ資源由来の炭素を含みうる理由は、分子を構成する原料がバイオ資源由来の炭素から来るからである。N-アセチル-L-メチオニンの分子量は、191.25g/molであって、L-ホモセリン(119.12g/mol)、メチルメルカプタン(48.11g/mol)及び酢酸(acetic acid、59.04g/mol)から構成される。結合時にL-ホモセリンのヒドロキシ基とメチルメルカプタンの水素が離れ、酢酸のヒドロキシ基とL-ホモセリンの水素が離れて最終的にN-アセチル-L-メチオニンが作製される。L-ホモセリンは、バイオ資源を用いた発酵を介して得られ、N-アセチル-L-メチオニン全体の分子量の50%以上を占めている(L-ホモセリン119.12g/mol-水(H2O)18.01g/mol=101.11g/mol、この数値は、N-アセチル-L-メチオニン分子量の50%以上である)。また、アセチル化酵素を用いる場合、酢酸の由来もバイオ資源なので、N-アセチル-L-メチオニンのバイオ由来の炭素含量は、より大きくなれる(水が除去されたL-ホモセリン101.11g/mol+ヒドロキシが削除された酢酸42.04g/mol=143.15g/mol、N-アセチル-L-メチオニンの約75%を占める)。
【0045】
一方、物質が石油由来であるか、バイオ由来であるかは、放射性炭素を測定することで可能である。つまり、炭素には3種類(12C、13C、14C)の同位元素が存在し、石油系物質の炭素源には、14C(放射性炭素)がほとんど存在せず、バイオ由来のみに14Cが存在する科学的事実に基づいて、14Cの含量分析によりバイオ由来の有無を判断することができる。
【0046】
本出願の他の一つの態様は、バイオ資源由来の炭素を含む、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンである。
【0047】
前記バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンは、構成する炭素の50%~100%がバイオ資源由来の炭素であってもよい。
【0048】
本出願のもう一つの態様は、N-アセチル-L-メチオニンを構成する炭素の50%~100%がバイオ資源由来の炭素である、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの集団である。
【0049】
前記バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンは、前記生産方法によって生産されたものであってもよい。
【0050】
バイオ資源、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニン及びその生産方法については、前記説明した通りである。
【0051】
本出願は、もう一つの様態として、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料添加物を提供する。
【0052】
本出願は、もう一つの様態として、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料組成物を提供する。
【0053】
前記N-アセチル-L-メチオニンについては、前記説明した通りである。
【0054】
本出願において、用語「飼料添加物」は、飼料組成物に添加される物質を意味する。前記飼料添加物は、対象動物の生産性向上や健康を増進させるためのものであってもよいが、これに制限されない。
【0055】
前記飼料添加物は、反芻動物用であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0056】
本出願では、前記N-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料添加物を用い、前記飼料添加物は、前記N-アセチル-L-メチオニンまたはその塩以外にも、対象動物の生産性または健康増進のためのヌクレオチド類、アミノ酸、カルシウム、リン酸、有機酸などの栄養素をさらに含んでもよいが、これに制限されない。
【0057】
本出願において、用語「飼料組成物」は、動物に与える餌をいう。前記飼料組成物は、動物の生命を維持、または肉、乳などを生産するのに必要な有機または無機栄養素を供給する物質をいう。前記飼料組成物は、飼料添加物を含んでもよく、本出願の飼料添加物は、飼料管理法上の補助飼料に該当してもよい。
【0058】
前記飼料の種類は特に制限されず、当該技術分野で一般的に使用される飼料を用いてもよい。前記飼料の非制限的な例としては、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、瓜類または穀物副産物類などの植物性飼料;タンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類または飲食物などの動物性飼料が挙げられる。これら単独で使用したり、2種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
本出願の飼料組成物を適用することができる個体は、特に限定されず、どのような形態のものであっても適用可能である。例えば、牛、羊、キリン、ラクダ、シカ、ヤギなどの動物に制限なく適用可能であり、特に好ましくは反芻胃を有する反芻動物に適用可能であり、代表的な例として、畜牛が挙げられるが、これに制限されない。
【0060】
本出願の一具現例によれば、前記N-アセチル-L-メチオニンまたはその塩は、反芻胃微生物による分解程度が低くて、反芻胃保護ペプチドの誘導体として用いてもよい。したがって、前記N-アセチル-L-メチオニンまたはその塩は、反芻動物用の飼料添加物として効果的に使用されうるが、これに制限されない。
【0061】
本出願の用語、「反芻胃」とは、哺乳類小目の一部の動物で見られる特殊な消化管で、別名、反芻をするためにこぶ胃、蜂巣胃、重弁胃、及びしわ胃の4つの部屋に分かれている。別名反芻胃とも呼ばれており、一度飲み込んだ食べ物を再び口に吐いてよく噛んだ後に飲み込むこと反芻といい、このような反芻を可能にする胃を反芻胃という。反芻胃には微生物が共生していて、一般的な動物が消化できない植物のセルロースを分解してエネルギー化することができる能力を持つことになる。
【0062】
本出願の用語で「反芻動物」とは、前記説明した反芻胃を有する動物を意味し、これには、ラクダ科、マメジカ科、シカ科、キリン科及びウシ科の動物が含まれる。ただし、ラクダ科とマメジカ科は重弁胃及びしわ胃が完全に分化されず、3つの部屋で構成される反芻胃を有していると知られている。
【0063】
前記飼料添加物は、飼料の総重量に対して、0.01~90重量%で、前記N-アセチル-L-メチオニンまたはその塩が含まれるように飼料組成物に添加されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0064】
また、本出願に基づく飼料添加剤は、個別に使用してもよく、従来公知の飼料添加物と併用して使用してもよく、従来の飼料添加物と順次的または同時に使用してもよい。そして、単一または多重に投与されてもよい。前記要素のすべてを考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定されてもよい。
【0065】
本出願のもう一つの態様は、前記バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンまたはこれを生産する微生物を含む顆粒製剤である。
【0066】
バイオベースのN-アセチル-L-メチオニン及びこれを生産する微生物は、前記説明した通りである。
【0067】
前記顆粒製剤は、N-アセチル-L-メチオニン生産能を有する微生物の発酵培養液から直接顆粒を形成させて製造してもよく、または前記微生物を含んで製造してもよい。また、前記発酵培養液及び微生物をすべて含んで製造してもよい。顆粒形成工程は、当業者が適宜選択して行うことができ、これに制限されるものではない。
【0068】
顆粒乾燥機の運転方法の最適化と非規格製品のリサイクル工程を経て最終製品での粒子の大きさが500μm以下は0~5%であり、500μm超過1000μm以下は20~30%であり、1000μm超過1300μm以下は60~70%であり、1300μm超過は5%以下の範囲である製品が提供されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0069】
本出願の実施例によると、N-アセチル-L-メチオニン発酵培養液を総固形分(total solid)の40~50重量%に濃縮する段階;前記濃縮液に賦形剤及び自由N-アセチル-L-メチオニンからなる群から選択されたいずれか1つ以上を混合して混合濃縮液を形成する段階;及び顆粒機に200~500μmサイズの微粒子シードを投入し、前記顆粒機の下部から前記混合濃縮液を噴射して前記微粒子シードをコーティングし、前記微粒子シードのサイズを増加させて、タマネギの形の顆粒を形成させて粒子のサイズは500μm以下は0~5%であり、500μm超過1000μm以下は20~30%であり、1000μm超過1300μm以下は60~70%であり、1300μm超過は5%以下の範囲になるように顆粒化する段階からなる顆粒製剤の製造方法が提供される。
【0070】
一例として、本出願による顆粒製剤は、下記組成と特性を有する顆粒化によるN-アセチル-L-メチオニン発酵培養液を主成分とするものであってもよい。
【0071】
含量N-アセチル-L-メチオニン50重量%以上;
粒子サイズ500μm以下は0~5%、500μm超過1000μm以下は20~30%、1000μm超過1300μm以下は60~70%、1300μm超過は5%以下(wt比);
かさ密度670±50kg/m3;
タンパク質10~15重量%;
総糖1重量%以下;
無機物3重量%以下;
水分3重量%以下。
【0072】
前記混合濃縮液を形成する段階で自由N-アセチル-L-メチオニンまたは賦形剤の添加量を調節して、顆粒製品の最終含量を所望の目標含量として調節することができる。前記顆粒化は、前記顆粒機の下部で混合濃縮液をノズルで噴射し、熱風を加えて流動層を形成しながら行われるものであってもよい。
【0073】
前記顆粒化する段階で得られる粒子の大きさは、混合濃縮液の流速、ノズル圧または熱風の風量を調節して成すことができる。
【0074】
前記賦形剤は澱粉、カラギーナン及び寒天からなる群から選択された1つ以上のものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0075】
前記顆粒製剤の製造に用いられるN-アセチル-L-メチオニンを生産する微生物は、GRAS(Generally Recognized as Safe)に分類される微生物であってもよく、具体的には、タンパク質含量が高いコリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)、または脂肪含量が高いヤロウィア属(Yarrowia sp.)微生物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0076】
微生物の発酵条件は、特に制限されるものではないが、発酵培養液中のN-アセチル-L-メチオニンが大量に蓄積され、菌体量は少なく蓄積される条件で培養することが望ましい。また、発酵液中の糖分は、発酵液の乾燥を妨害し、得られる製品の吸湿性を上昇させるため、その量を減少させる条件で培養することが望ましい。しかし、本出願では、混合過程を介してN-アセチル-L-メチオニンの含量を調節することができ、顆粒工程の特性上、製品の表面が稠密であるため、発酵条件が前記例のような条件に必ず限定される必要はない。
【0077】
本出願では、吸湿防止剤は添加されなくても吸湿低減効果があるが、必要に応じて吸湿防止剤としてシリカ、ポリマーなど、好ましくは流動パラフィンが添加されてもよい。
【0078】
本出願のもう一つの態様は、前記バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料添加物または飼料組成物を動物に給餌する段階を含む、動物の乳生産量、乳脂肪または乳タンパクの増進または増体効果を改善させる方法である。前記飼料添加物または飼料組成物に対しては、先に説明した通りである。
【0079】
前記方法は、詳しくは、(a)前記飼料添加物または飼料組成物を動物用飼料に混合する段階;及び(b)前記飼料を動物に給餌する段階を含んでもよい。
【0080】
本出願による前記(a)段階は、本出願のN-アセチル-L-メチオニンまたはその塩を含む飼料組成物を家畜用の一般的な飼料に混合する段階で、混合飼料内0.01~90重量%、好ましくは0.1~10重量%で混合して給餌してもよい。
【0081】
本出願による前記(b)段階は、前記(a)段階で製造された飼料を動物に給餌する段階であり、給餌することができる家畜は、前記で説明したように特に制限されず、特に反芻動物であってもよい。
【0082】
本出願による飼料添加物または飼料組成物を動物に給餌する場合、動物の乳生産量、乳脂肪または乳タンパクの増進または増体効果などの優れた効果を期待することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本出願をより詳細に説明する。これらの実施例は、本出願を例示するためのものであり、本出願の範囲がこれらの実施例により制限されるものではない。
【0084】
実施例1:バイオベースのL-メチオニン(L-methionine)の生産
【0085】
実施例1-1.L-メチオニン前駆体生産菌株の発酵
L-メチオニン前駆体生産菌株としてO-アセチルホモセリン生産菌株である大腸菌CJM-BTJA/pCJ-MetXlme-CL(大韓民国登録特許第10-0905381号)を用いて、L-メチオニン前駆体(O-アセチルホモセリン)を大量生産するために、5L発酵槽培養を実施した。抗生剤が含有された平板LB培地に前記菌株を接種し、31℃で一晩培養した。その後、単一コロニーを抗生剤が含まれた10ml LB培地に接種した後、31℃で5時間培養し、再び200ml L-メチオニン前駆体のシード培地を含む1000ml三角フラスコに100倍希釈して31℃、 200rpmで3~10時間培養した後、5L発酵槽に接種して流加式培養(Fed batch)発酵法で50~100時間培養した。主培養発酵培地の組成を下記表1に示した。
【0086】
【0087】
実施例1-2.L-メチオニン転換反応
前記実施例1で生産された発酵培養液を膜ろ過(membrane filtration)を用いてろ過することにより、O-アセチルホモセリン培養液と細胞を分離した。0.1μmの膜を用いて通過した液体、すなわち細胞を分離した残りを透過液(permeate)といい、細胞スラッジ(cell sludge)を保有液(retentate)とした。
前記保有液に脱イオン水(deionized water)を添加して、残りのO-アセチルホモセリンを再回収した。
前記透過液にO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-acetylhomoserine sulfhydrylase)活性を有する酵素または前記酵素を含む菌株を用いて、メチルメルカプタンとL-メチオニン転換酵素であるO-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼまたはロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)由来O-アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-acetylhomoserine sulfhydrylase、大韓民国登録特許第10-1250651号)を添加して酵素転換反応を行った。
反応中の残存O-アセチルホモセリンの濃度を測定し、メチルメルカプタンを供給して6時間酵素転換反応を行い、O-アセチルホモセリンの濃度が測定されない時に反応を終了した。
【0088】
実施例1-3.L-メチオニンの結晶化工程
前記L-メチオニン転換液をそのまま使用しても構わないが、L-メチオニンの含量が高い組成物を得るために、前記実施例1-2で製造されたL-メチオニン転換液を濃縮して結晶を分離してもよく、硫酸を投入してpH4.0~5.5に滴定した後に濃縮してもよい。本実施例では、より高い純度のL-メチオニンを得るために、硫酸を投入してpH4.0~5.5に滴定した後、L-メチオニン総量の0.5~2重量%の活性炭(active carbon)を添加して50℃で1~2時間混合した後、ろ過して活性炭及び不純物を除去した。ろ過液は、L-メチオニンの濃度が150~200g/Lになるまで濃縮し、結晶分離器を用いて結晶を獲得した。結晶を分離して回収された母液は再び濃縮して2次結晶を回収し、獲得された2次結晶は溶解してpH4.0~5.5に滴定されたL-メチオニン反応液に再投入して前記過程を繰り返して使用した。このようにして95.0~99.9重量%のL-メチオニンを収得した。
【0089】
実施例2:化学合成方法を用いたN-アセチル-L-メチオニン(N-acetyl-L-methionine)の合成
250mlフラスコに、前記実施例1で製造したL-メチオニン20g(0.134モル)を酢酸エチル30gと混合して入れた後、攪拌を行い、懸濁液状態のL-メチオニン溶液を製造した。30分間攪拌を行いL-メチオニン粒子を均一に分散させた後、濃硫酸(98.5%)0.133gと蒸留水0.666gとを投入すると白の結晶が析出されて反応物の状態がスラリー状態に転換される。この時、攪拌を維持しながらL-メチオニンのアミン基をアセチル化することができるアセチル化化合物(無水酢酸(acetic anhydride、97%)14.4g(0.141モル))をゆっくり注入し、フラスコに凝縮管を装着して加熱を行った。チラー冷却器を用いて、凝縮管の温度を0℃以下に維持しながら加熱を進めると、気化した酢酸エチルが凝縮管内で凝縮されてフラスコ内に還流されて、この時反応物の温度は83℃に維持される。20分間反応を行うとスラリー状態の反応物の色が徐々に変わってすぐ黄色の透明な液体に転換され、この時の反応物を回収して急冷を行った。
【0090】
前記反応生成物を1~2時間程度強く攪拌すると、液体内の白いN-アセチル-L-メチオニンの結晶が生じ始め、結晶が完全に形成された後、真空フィルタを用いて黄色の上澄液を除去した。回収されたN-アセチル-L-メチオニンを0℃に冷却された酢酸エチルを用いて洗浄した後、真空フィルタを用いて再び精製し、減圧乾燥装置を用いて50℃、-0.1Mpaで1時間乾燥した。乾燥後に回収されたN-アセチル-L-メチオニンの質量は19.448g(精製収率=77.8%)と確認され、HPLC分析により確認した純度は95.8%、残存のL-メチオニンは0.6%と確認された。
【0091】
また、前記化学合成方法を用いたN-アセチル-L-メチオニンのバイオ由来含量の評価のために、米国特許第8946472号の「バイオベースの含量(Bio-based content)」の測定方法を参考にして分析を進めており、下記公式を用いてバイオベースの含量を導出した。
バイオベースの含量=14C/12C比率 sample/14C/12C比率モダン/1.075
【0092】
評価結果、化学合成を介して生産されたN-アセチル-L-メチオニンの平均バイオベースの含量(MEAN BIO-BASED CONTENT)は51.9%と確認された。
【0093】
実施例3:酵素反応をベースにしたL-メチオニンのN-アセチル-L-メチオニンの転換
L-メチオニンを用いて酵素反応をベースにしたN-アセチル-L-メチオニンの転換研究を行った。
アセチル化酵素反応を介してN-アセチル-L-メチオニンを生産するためにシュードモナス・プチダ由来のN-アシルトランスフェラーゼ(N-acyltransferase、ppmat)、バチルス・サブチリス由来のN-アシルトランスフェラーゼ(bsmat)、エンテロバクター属638由来のN-アシルトランスフェラーゼ(entmat)、シュードビブリオ属FO-BEG1由来のN-アシルトランスフェラーゼ(pvmat)、ヤロウィア・リポリティカ由来のN-アシルトランスフェラーゼ(ylmat)、コリネバクテリウム・グルタミカム由来のN-アシルトランスフェラーゼ(cgmat)、大腸菌由来のN-アシルトランスフェラーゼ(yncA)酵素を使用した。前記N-アシルトランスフェラーゼ酵素は、アセチルCoAからアセチルグループを基質に伝達する役割をする。これらの酵素反応は、さらにArgA(N-acetylglutamate synthase)、YjdJ(Putative acetyltransferase)、YfaP(Putative acetyltransferase)、YedL(Putative acetyltransferase)、YjhQ(Putative acetyltransferase)などの酵素を介しても適用可能であり、さらに、配列ベースの相同性が高い他のアシルトランスフェラーゼの機能を有する酵素の適用も可能である。
【0094】
前記7種のN-アシルトランスフェラーゼをコードするDNA断片を、それぞれ制限酵素NdeI及びXbaI末端を有するように準備した後、同じ制限酵素で処理されたpUCtkベクターにライゲーションした。前記作製された組み換えプラスミドを大腸菌DH5αに形質転換させた後、これをカナマイシン含有LB固体培地に塗抹して37℃で一晩培養した。前記培養で得られたコロニー一つをカナマイシン含有のLB液体培地3mlに接種して一晩培養した後、プラスミドミニプレップキット(Bioneer、Korea)を用いて組み換えプラスミドを回収した。回収した組み換えプラスミドの配列情報をシーケンシング(Macrogen社、Korea)により確認し、それぞれpUCtk-ppmat、pUCtk-bsmat、pUCtk-entmat、pUCtk-pvmat、pUCtk-ylmat、pUCtk-cgmat、pUCtk-yncAと命名した。
【0095】
前記組み換えプラスミドを導入して形質転換された大腸菌BL21(DE3)をカナマイシン含有のLB固体培地で選択した。選択された形質転換体は、それぞれBL21(DE3)/pUCtk-ppmat、BL21(DE3)/pUCtk-bsmat、BL21(DE3)/pUCtk-entmat、BL21(DE3)/pUCtk-pvmat、BL21(DE3)/pUCtk-ylmat 、BL21(DE3)/pUCtk-cgmat、BL21(DE3)/pUCtk-yncAと命名した。
【0096】
前記作製した形質転換体BL21(DE3)/pUCtk-ppmat、BL21(DE3)/pUCtk-bsmat、BL21(DE3)/pUCtk-entmat、BL21(DE3)/pUCtk-pvmat、BL21(DE3)/pUCtk-ylmat 、BL21(DE3)/pUCtk-cgmat、BL21(DE3)/pUCtk-yncAの各コロニー一つをカナマイシン25mg/L、グルコース1%(w/v)が含有されたLB液体培地3mlに接種して、37℃で8時間培養した後、同一培地50mlに接種して一晩培養した。
【0097】
前記培養液を遠心分離してペレットを得て、リン酸緩衝液(pH7.0、50mM)5mlに懸濁した後、ソニケーション(sonication)を用いて細胞を破砕した。細胞残渣(debris)は14,000rpmで30分間遠心分離して除去し、上澄液を収得した。前記アシルトランスフェラーゼのサイズがすべて19kDa付近であることを勘案し、Amicon Ultra(Milipore、Ireland)30kDa cut-off membraneを通過したろ過液を10kDa cut-off membraneに通過させてフィルタの上に残った濃縮液を得た。前記濃縮液をQセファロースが充填されたHiTrap Q FFカラム(GE、USA)に充填し、NaCl濃度勾配(80、100、150、200、300、500mM順)を用いて前記アシルトランスフェラーゼを純粋に分離した。希釈された酵素は、Amicon Ultra 10kDa cut-off membraneを通じて再濃縮した。前記アシルトランスフェラーゼの過発現の程度と精製度はSDS-PAGEにより確認した。
前記精製されたアシルトランスフェラーゼを介したN-アセチル-L-メチオニンの生産量を確認するために、20mMアセチルCoA、20mMメチオニンを含有したリン酸緩衝液(pH7.0、50mM)に酵素濃縮液を入れて、37℃で1時間反応した後、生成されたN-アセチル-L-メチオニンの量をHPLCを用いて測定した。
【0098】
【0099】
前記結果から、L-メチオニンはアシルトランスフェラーゼによってN-アセチル-L-メチオニンに転換されることを確認した。前記転換反応は、緩衝溶液に希釈されたL-メチオニンだけでなく、発酵及び酵素転換反応を介して生産された培養液内の精製されてないL-メチオニンも可能である。一方、グルコースまたは酢酸などの添加を介してアシルトランスフェラーゼの酵素菌の内部に十分な量のアセチルCoA供給のための代謝工学的なアクセスが可能であり、または発酵工程の改良によりN-アセチル-L-メチオニンの生産収率を改善することができる。
【0100】
バイオベースのL-メチオニンを用いたN-アセチル化方法に関する前記実施例は例示的なものであり、限定的ではないものと理解されるべきである。すなわち、本出願のバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの生産方法は、バイオベースの原料を発酵して高収率でL-メチオニンを生産し、これを様々なアセチル化工程を経て、簡単な方法でN-アセチル-L-メチオニンを製造するものである。前記実施例は、これを代表的に行ったものである。
【0101】
実施例4:N-アシルトランスフェラーゼ導入の形質転換体を用いたN-アセチル-L-メチオニンの生産
前記実施例3で作製した形質転換体BL21(DE3)/pUCtk-ppmat、BL21(DE3)/pUCtk-bsmat、BL21(DE3)/pUCtk-entmat、BL21(DE3)/pUCtk- pvmat、BL21(DE3)/pUCtk-ylmat、BL21(DE3)/pUCtk-cgmat、及びBL21(DE3)/pUCtk-yncAの各コロニー一つをカナマイシン25mg/L、グルコース1%(w/v)が含有されたLB液体培地3mlに接種して、37℃で8時間培養した後、培養液500μlをカナマイシン25mg/L、グルコース1%(w/v)、メチオニン2%(w/v)が含有されたLB液体培地50mlに接種して一晩培養した。この時、対照群は、目的の遺伝子が挿入されてないpUCtkベクターのみをBL21(DE3)に形質転換して使用した。培養液内の細胞を遠心分離で除去して、HPLCを用いて生成されたN-アセチル-L-メチオニンを分析した。
【0102】
その結果、BL21(DE3)/pUCtk-ppmatの場合、最も高い3.03g/Lの濃度でN-アセチル-L-メチオニンを生産し、BL21(DE3)/pUCtk-entmatが2.23g/Lで2番目に高いN-アセチル-L-メチオニン濃度を示した。対照群の場合も微量のN-アセチル-L-メチオニンが検出されたが、これは大腸菌が保有しているYncA酵素の役割であると推定され、これを野生型大腸菌で過発現させる場合、野生型大腸菌に比べてN-アセチル-L-メチオニンの生産量が増加することを確認できた(表3)。
【0103】
【0104】
また、形質転換大腸菌をベースに生産したN-アセチル-L-メチオニンのバイオ由来含量の評価のために、米国特許第8946472号の「バイオベースの含量(Bio-based content)」の測定方法を参考にして分析を行った。評価の結果、形質転換大腸菌により生産されたN-アセチル-L-メチオニンの平均バイオベースの含量(MEAN BIO-BASED CONTENT)は76.6%で確認された。
【0105】
このことから、化学合成工程、またはアセチル化酵素またはこれを生産する微生物によってL-メチオニンをアセチル化できることを確認し、特にアセチル化酵素反応を介して、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの環境にやさしい、高効率生産が可能であることを確認した。
【0106】
実施例5:形質転換されたL-メチオニン生産菌株の発酵を介したN-アセチル-L-メチオニンの生産
【0107】
実施例5-1.L-メチオニン生産菌株を用いた直接発酵及びその酵素転換反応
L-メチオニン生産菌株として、大腸菌TF4076BJF metA#10+ metYX(Lm)(大韓民国登録特許第10-1140906号;以下metA10YXLm)を用いて、L-メチオニンを生産するための三角フラスコ培養を行った。平板LB培地に前記菌株を接種し、31℃で一晩培養した。形成された単一のコロニーを10ml L-メチオニンシード培地に接種した後、31℃で6時間培養した後、シード培養液1mlをL-メチオニンの主発酵培地20mlを含む250ml三角フラスコに接種して31℃、200rpmで78時間培養した。シード培地及び主発酵培地の組成は下記表4に示した。
【0108】
【0109】
前記L-メチオニン培養液中のL-メチオニンの濃度をHPLCを用いて分析した結果、6.6g/LのL-メチオニンが生成されたことを確認した。
【0110】
また、前記L-メチオニン直接発酵菌株から生産されたL-メチオニンを対象にアシルトランスフェラーゼを用いてN-アセチル-L-メチオニンの生産を行った。実施例3と同様の方法で確保された精製アシルトランスフェラーゼを活用して評価を行い、実験方法のうちL-メチオニンは、前記直接発酵を介して確保された培養液を添加して行った。つまり、20mMアセチルCoA及びL-メチオニン直接発酵培養液をリン酸緩衝液(pH7.0、50mM)と混合した後、酵素濃縮液を入れて、37℃で1時間反応した後、生成されたN-アセチル-L-メチオニン量をHPLCを用いて測定し、実験結果は以下の通りである。
【0111】
【0112】
前記実施例は、直接発酵で生産されたL-メチオニン培養液を対象にN-アセチル-L-メチオニンの生産能が評価されたが、実施例3と同様に直接発酵を介して生産されたL-メチオニンの精製粉末を使用してもN-アセチル-L-メチオニンの生産が可能である。
【0113】
実施例5-2.N-アシルトランスフェラーゼが導入されたL-メチオニン直接生産菌株由来の形質転換体(N-アセチル-L-メチオニン直接生産菌株)の発酵を介したN-アセチル-L-メチオニンの生産
L-メチオニン生産菌株として、大腸菌TF4076BJF metA#10+metYX(Lm)(大韓民国登録特許第10-1140906号;以下metA10YXLm)を活用して、発酵を介したN-アセチル-L-メチオニンの直接生産を試みた。実施例3で作製されたpUCtk-ppmat、pUCtk-bsmat、pUCtk-entmat、pUCtk-pvmat、pUCtk-ylmat、pUCtk-cgmat、pUCtk-yncAをそれぞれ導入して形質転換された大腸菌metA10YXLm由来の形質転換体をカナマイシン含有のLB固体培地から選別した。選別された形質転換体は、それぞれmetA10YXLm/pUCtk-ppmat、metA10YXLm/pUCtk-bsmat、metA10YXLm/pUCtk-entmat、metA10YXLm/pUCtk-pvmat、metA10YXLm/pUCtk-ylmat、metA10YXLm/pUCtk-cgmat、metA10YXLm/pUCtk-yncAと命名した。前記形質転換された菌株を対象に実施例5-1に記載された発酵条件に応じて、培養及び分析を行った。分析の結果、metA10YXLm/pUCtk-ppmatの場合、最も高い8.32g/Lの濃度でN-アセチル-L-メチオニンを生産し、metA10YXLm/pUCtk-entmatが6.19g/Lで2番目に高いN-アセチル-L-メチオニン濃度を示した(表6)。
【0114】
また、前記構築された形質転換体を対象にN-アセチル-L-メチオニンの直接生産能を向上させるために、外部からさらにL-メチオニンを供給して比較評価を行った。このため、2%のL-メチオニンを前記発酵条件にさらに添加した。分析の結果、すべての形質転換体のN-アセチル-L-メチオニンの生産量の増加を確認し、特にL-メチオニン未添加の時にも最も高い生産量を示したmetA10YXLm/pUCtk-ppmat菌株で最も高いN-アセチル-L-メチオニンの生産量(14.1g/L)を確認した(表6)。これらの結果から、L-メチオニンの生産能がさらに向上された菌株を活用してN-アセチル-L-メチオニンを生産する場合、より高い生産量を期待することができ、同時に、外部からのL-メチオニン追加供給によりN-アセチル-L-メチオニンの生産量増加も期待できる。特に野生型大腸菌の場合、YncA酵素を有しているので、極微量のN-アセチル-L-メチオニンの生産能が確認された反面(実施例4)、L-メチオニンの生産能が増加されたN-アセチル-L-メチオニン生産菌株の場合、対照群でもN-アセチル-L-メチオニンの生産量が増加することを確認した。これは菌株内で生産されるか、外部から供給されたL-メチオニンによりN-アセチル-L-メチオニンの生産量が増加したと判断される。
【0115】
【0116】
また、直接発酵を介して生産されたN-アセチル-L-メチオニンのバイオ由来含量の評価のために、米国特許第8946472号の「バイオベースの含量(Bio-based content)」の測定方法を参考して分析を行った。評価結果、直接発酵を介して生産されたN-アセチル-L-メチオニンの平均バイオベースの含量(MEAN BIO-BASED CONTENT)は99.3%と確認された。
【0117】
実施例6:生体外の反芻胃発酵を介したバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンのバイパス(bypass)効率の測定実験
【0118】
6-1.反芻胃液の採取
反芻胃カニューレ装着のホルスタイン(Holstein)去勢牛(体重630~650kg前後)1頭を公示し、公示畜は1日に2回(午前7時30分、午後3時)市販飼料(ミルクジェンTM、CJ第一製糖社)及び稲わらを給餌して飼育した。
【0119】
反芻胃液の採取は、実験当日の午前10時頃に行い、カニューレを介して反芻胃内容物を取り出した後、ガーゼで胃液をしぼって抽出した後、魔法瓶に入れてCO2でバブリング(bubbling)して、酸素の侵入を遮断した状態で実験室に運んだ後に使用した。実験室まで運ぶのに1時間以内がかかった。
【0120】
6-2.嫌気培養の進行
実験室に運ばれた反芻胃液は2重のガーゼでろ過した後、反芻胃実験で一般的に用いられているMcDougall’s緩衝液(Troelsen and Donna、1966)の模写液と1:3の割合で混合して嫌気培養液に使用した。McDougall’s緩衝液の模写液組成は、下記表7に示すようである。
【0121】
【0122】
試験飼料は、実際に牛の飼育に使用している市販飼料(ミルクジェンTM)を基礎飼料として使用し、基礎飼料に試験物質を混合して試験飼料を製造した。試験物質はN-アセチル-L-メチオニンであり、これを実験群1とし、試験物質なしの基礎飼料のみの対照群1とL-メチオニンを試験物質として使用した対照群2とを比較した。各実験群に対して3回反復して培養を行った。
【0123】
基礎飼料と試験物質とを4:1の割合で混合し、(基礎飼料0.4g、試験物質0.1g、ただし、対照群1は基礎飼料のみを0.5g)、125mlの培養瓶に混合された試験飼料0.5gを添加した後、用意された嫌気培養液50mlを混合した後に密閉して、40℃インキュベーターに定置することにより、培養を開始した。
【0124】
反芻胃液の希釈を含む培養開始までの全過程の間にO2 free CO2を噴射して反芻胃液が酸素に露出されないように嫌気状態を維持しようとした。
【0125】
6-3.サンプリング(sampling)及び試験物質の反芻胃バイパス(bypass)効率の測定結果
培養は最終的に48時間行われ、培養液のサンプリング(sampling)は培養開始後、合計4回(0h、24h、36h、48h)行った。各サンプリング時に、40℃インキュベーターに定置させた標本を取り出して蓋を開いた後、培養液を遠心分離(4000rpm、10分)して上澄液中に存在する試験物質の量を測定した。
試験物質のHPLC定量分析の結果を基に反芻胃バイパス率(%)を計算し、その値は下記表8に示すとおりであった。
【0126】
【0127】
バイパス率(%)は、0hサンプリング時点の試験物質の残存量を100%として換算したとき、24h、36h、48h標本の相対的な残存量(%)で示した。
図1は、反芻胃バイパス率(%)をグラフで表したものである。
【0128】
結果的に、対照群であるL-メチオニンは0hに比べて、48h以降の反芻胃バイパス率(%)が1.5%であって、反芻胃微生物によってほとんど消化されたことを確認できたし、試験物質であるN-アセチル-L-メチオニンは0hに比べて、24hに89.1%、36hに76.2%そして48hに55.4%の反芻胃バイパス率(%)を示した。
【0129】
実施例7:生体外小腸及び肝臓抽出液によるバイオベースのN-アセチル-L-メチオニンの消化分解率の測定実験
反芻胃内の微生物によって分解されてない栄養成分は、小腸で吸収され、タンパク質合成、エネルギー代謝などに活用される。N-アセチル-L-メチオニンの場合、高バイパス効率で小腸に伝達されると予想される。それで、小腸及び肝臓に存在する分解酵素の適用によりメチオニンの形態に転換されうるため、反芻胃動物の小腸から容易に吸収利用されるだろう。これらの理由から、実際の牛の小腸及び肝臓に存在する酵素を対象にN-アセチル-L-メチオニンの消化分解の可能性を確認した。
【0130】
実施例7-1.小腸抽出液の確保
農協中央会富川畜産物共販場で屠殺された韓牛(履歴番号:KOR005078680400)の小腸を40m購入した。小腸を1m前後に切った後、切った小腸内に20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)5mlを加え、小腸の両端を握った後に左右、上下に小腸を動かして最大限に小腸内の酵素がリン酸ナトリウム緩衝液に溶解するようにした。小腸40mから約200mlの小腸酵素液を確保し、4℃で遠心分離(14000rpm、10分)して上澄液を確保し、これを20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で2倍希釈して使用した。
【0131】
実施例7-2.肝臓抽出液の確保
農協中央会富川畜産物共販場で屠殺された韓牛(履歴番号:KOR005078680400)の肝臓を購入した。肝臓組織0.125gと20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)1mlを混ぜた後にガラスビーズ(Sigma G1145)を2ml容量のチューブに約1/10に満たした後、beadbeater(MPTM FastPrep)を用いて20秒ずつ3回反応させて肝臓の組織を破砕し、4℃で遠心分離(14000rpm、10分)して上澄液を確保した後、これを使用した。
【0132】
実施例7-3.確保した小腸及び肝臓抽出液の酵素能評価
確保した小腸及び肝臓抽出液の酵素群に対する活性を比較群とし、豚の腎臓から抽出されたアシラーゼI(sigma A3010)を活用した。N-アセチル-L-メチオニンはアシラーゼIによってよく分解されることが知られている(Chem. Res. Toxicol. 1998, 11(7):800-809)。前記アシラーゼIとの活性程度の比較を介して小腸及び肝臓抽出液によるN-アセチル-L-メチオニンの消化分解率を確認した。実験条件は、下記表9の通りであり、反応は40℃で定置された状態で24時間行った。
【0133】
【0134】
反応が終わったサンプル内のタンパク質を除去するために0.5%過塩素酸(DEA JUNG、純度60~62%)を添加して10倍希釈した後、遠心分離(14000rpm、10分)により上澄液中に存在する N-アセチル-L-メチオニンとL-メチオニンを定量分析した(HPLC)。転換率(%)は、反応前のN-アセチル-L-メチオニンのモル濃度(mM)と反応後のL-メチオニンモル濃度(mM)との割合をパーセント(%)に換算して計算した(N-アセチル-L-メチオニン分子量:191.25g/L、L-メチオニン分子量:149.25g/L)。
【0135】
分析の結果、比較群であるアシラーゼIの場合、文献に報告されたものと同様に高い消化分解率(98.9%モル転換率)を示すことを確認した。これと同様に、小腸抽出液の反応(97.5%モル転換率)及び肝臓抽出液の反応(99.1%モル転換率)でも非常に高い消化分解率を確認した。
【0136】
【0137】
結論的に、前記実施例を介して小腸と肝臓抽出液の試験官内反応でN-アセチル-L-メチオニンがL-メチオニンに転換されることを確認した。これらの結果から、N-アセチル-L-メチオニンが反芻胃を経て小腸に到達する場合、小腸内の消化/分解酵素によりほとんどL-メチオニンに転換可能であることを確認し、未分解の極微量のN-アセチル-L-メチオニンも小腸で吸収された後に血液を介して肝臓に流入した後、L-メチオニンに転換されることが予想できる。これは飼料添加物として指定されたN-アセチル-L-メチオニンが実質的に反芻動物の体内でアミノ酸の形態であるL-メチオニンとして直接活用可能であることを意味する。
【0138】
実施例8:生体外小腸及び肝臓抽出液によるN-アセチル-L-メチオニン及びN-アセチル-D,L-メチオニンの消化分解率の比較評価
【0139】
実施例8-1.小腸及び肝臓抽出液による消化分解率の評価
実施例7を介して確保した小腸及び肝臓抽出液を用いて、N-アセチル-メチオニンの光学異性体による消化分解率を比較評価した。評価は、実施例7-3と同様の方法で行い、評価結果は以下の通りである。
【0140】
【0141】
小腸と肝臓抽出液の試験官内反応で、約50%のD-型を含むN-アセチル-D,L-メチオニンは小腸抽出液によって約46%、肝臓抽出液によって約50%がL-メチオニンに転換されることを確認した。つまり、生体内でN-アセチル-メチオニンの消化分解率は、光学異性体の中でL-型がD-型に比べてはるかに高いことを確認し、前記結果からN-アセチル-D,L-メチオニンを使用する場合、同量のN-アセチル-L-メチオニンに比べて著しく低い消化分解率を示すと予想できる。
【0142】
実施例9:N-アセチル-L-メチオニンの給餌による乳成分の分析
試験管内の評価を基に、高い反芻胃バイパス及び小腸内の消化分解率が確認されたN-アセチル-L-メチオニンを対象に、実際の酪農牛の仕様評価を通じた効能検証を行った。そのため、本評価では、牛を2つの群に分けて、N-アセチル-L-メチオニンの添加有無による乳成分の変化を分析した。このため、合計8頭の酪農牛を対象に、1つの群に4頭ずつ下記飼料成分にN-アセチル-L-メチオニン(30g/1頭/1日)を添加して84日間評価を行った。
- 処理区1:N-アセチル-L-メチオニン未添加
- 処理区2:N-アセチル-L-メチオニン添加
【0143】
【0144】
前記仕様評価を通じて生産された牛乳の乳成分の分析結果を表13に示した。
【0145】
【0146】
前記仕様の評価を通じて確認できるようにN-アセチル-L-メチオニンの添加有無に応じた総飼料摂取量(DMI)の変化は観察されなかった。しかし、N-アセチル-L-メチオニンを添加した場合、牛乳の成分のうち乳脂肪(12.2%)及び乳タンパク(3.5%)の増加が確認された。また、エネルギー修正牛乳(ECM)の場合、未添加に比べて6.7%の増加を確認し、飼料効率(ECM yield/DMI)も8.3%増加することを確認した。すなわち、前記結果から分かるように、N-アセチル-L-メチオニンを酪農牛の飼料成分として添加する場合、牛乳内の脂肪含量及びタンパク質含量の増加、飼料効率の増加など、さまざまな効果が確認できた。
【0147】
実施例10:N-アセチル-L-メチオニンの給餌を通じた増体効果の分析
N-アセチル-L-メチオニンの給餌を通じた肥育牛の増体効果を検証した。このため、24頭の肥育牛(Beef steer)を対象に、各12頭の牛を2つの群に分けたあと、N-アセチル-L-メチオニンの添加有無(30g/1頭/1日)による増体効果を90日間比較した。
【0148】
基本的な飼料成分は、表12に記載された組成と同一であり、仕様評価を通じた増体効果は次の通りである。
【0149】
【0150】
前記肥育牛を使用した仕様評価で確認できるようにN-アセチル-L-メチオニンが追加給餌された場合、約132.9kgの増体効果を確認し、これは未添加に比べて16.5kgの追加増体に該当する。また、1日平均増体量も未添加に比べて約14.7%の改善効果を確認した。すなわち、前記結果から分かるように、N-アセチル-L-メチオニンの飼料添加物の適用を通し酪農牛の牛乳内の脂肪含量及びタンパク質含量の増加、飼料効率の増加などの改善効果(実施例9)だけでなく、肥育牛の増体改善効果を確認し、これらの結果をもとに、様々な反芻動物の飼料添加剤としてN-アセチル-L-メチオニンの可能性を確認した。
【0151】
実施例11.バイオベースのN-アセチル-L-メチオニン発酵培養液の準備
【0152】
実施例11-1.コリネバクテリウム・グルタミカムを用いたN-アセチル-L-メチオニンの発酵培養液の準備
本実施例では、N-アセチル-L-メチオニンの生産能を有するコリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC13032)をL-メチオニンを含む培地(組成(1L当たり):L-メチオニン20g、グルコース20g 、ペプトン10g、酵母抽出液10g、尿素5g、KH2PO4 4g、K2HPO4 8g、MgSO4・7H2O 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl 1,000 μg )1Lで、35℃、pH6.0~8.0の範囲で72時間培養してN-アセチル-L-メチオニン濃度が1.07g/Lである発酵培養液を確保した。
【0153】
実施例11-2.ヤロウィア・リポリティカを用いたN-アセチル-L-メチオニンの発酵培養液の準備
本実施例では、N-アセチル-L-メチオニンの生産能を有するヤロウィア・リポリティカPO1f(ATCC MYA-2613TM)をL-メチオニンを含む培地(組成(1L基準):L-メチオニン20g、グルコース20g、Na2HPO4 3.28g、NaH2PO4 3.22g、酵母抽出液2g、プロテオースペプトン 50g)1Lで、30℃、pH6.0~8.0の範囲で72時間培養してN-アセチル-L-メチオニン濃度が1.02g/Lである発酵培養液を確保した。
L-メチオニンを含む培地の場合、N-アセチル-L-メチオニンの生産量を増加させることができ、微生物発酵を介して生産されたL-メチオニンの発酵母液を使用することができる。
【0154】
実施例12.発酵培養液から直接顆粒形成
発酵培養液または発酵培養液のろ過液を減圧濃縮方式で総固形分40~60重量%まで濃縮した後、pHを3.5~3.6に調節した。pH調節は、硫酸を用いて行ない、pH調節後には濃縮液を60℃で2.5時間放置した。gDNA分解過程まで経た濃縮液は顆粒機(GR Engineering、Fluid Bed Spray Dryer Batch type Pilot)の下部ノズルを介してボトムスプレー(bottom spray)方式で顆粒機内に投入した。この時、顆粒機の運転条件は、ヒーター温度170℃、入口温度140~160℃、出口温度60~70℃、スプレー圧力1.8~2.0 barとした。使用するシードは、スプレードライ方法で製造し、その大きさは300μmとした。顆粒機内に投入された濃縮液は熱風によって乾燥されて固化され、流動層内を流動しながら新たに投入された濃縮液によってサイズが大きくなる。顆粒粒子が所望のサイズまで大きくなると顆粒機運転を中止し、製品を回収して含量をはじめとする製品の成分を分析した。
【0155】
本実施例を通じて得られたコリネバクテリウム・グルタミカムの発酵培養液の顆粒及びヤロウィア・リポリティカの発酵培養液の顆粒の特性を下記表15に示した。
【0156】
【0157】
実施例13.発酵培養液に自由N-アセチル-L-メチオニンを添加して含量の調整
実施例11と同様の条件で発酵培養過程を経て生産された発酵培養液を総固形分40~60重量%まで濃縮した。ここで、当社が開発した自由N-アセチル-L-メチオニンを混合タンクに添加して混合した後、実施例12と同様の条件で顆粒化した。
【0158】
コリネバクテリウム・グルタミカム及びヤロウィア・リポリティカを用いて最終的に得られた製品の特性を下記表16に示し、結論的に、タンパク質及び脂肪の含量が増加した顆粒製品を確保することができた。
【0159】
【0160】
実施例14.発酵培養液に賦形剤を添加して含量の調整
前記発酵培養液を濃縮した後、濃縮液に賦形剤としてトウモロコシデンプン0.22kgを水0.5Lに溶解した水分含量が9.0%であるものを混合タンクに添加し混合した。発酵培養液のろ過液を減圧濃縮方式で総固形分50.5重量%まで濃縮した後、実施例12と同様の条件で顆粒化した。
コリネバクテリウム・グルタミカム及びヤロウィア・リポリティカを用いて最終的に得られた製品の特性を下記表17に示した。
【0161】
【0162】
したがって、本出願で製造したN-アセチル-L-メチオニンはL-メチオニンに比べて、反芻胃内の微生物によって相対的に少なく分解されてバイパス率が高いと判断することができ、高い消化分解率を示し、実際の酪農牛給餌を通じた乳脂肪及び乳タンパクの増進効果を確認した。これらの結果は、本出願の製造方法を介して製造したN-アセチル-L-メチオニンが反芻動物のための飼料添加剤として非常に有用に用いられることを示唆する。また、バイオベースのN-アセチル-L-メチオニンを反芻動物に給餌することにより、石油由来物質に比べて環境にやさしい効果も得ることができる。
【0163】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者は、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なもので、限定的なものではないと理解しなければならない。本出願の範囲は、前記詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。