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特許7045998膜、膜電極アッセンブリ、燃料電池、および膜を製造する方法
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  • 特許-膜、膜電極アッセンブリ、燃料電池、および膜を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】膜、膜電極アッセンブリ、燃料電池、および膜を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1067 20160101AFI20220325BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1023 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1039 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1046 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1051 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1053 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1058 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1065 20160101ALI20220325BHJP
   H01M 8/1069 20160101ALI20220325BHJP
【FI】
H01M8/1067
H01M8/10 101
H01M8/1023
H01M8/1039
H01M8/1046
H01M8/1051
H01M8/1053
H01M8/1058
H01M8/1065
H01M8/1069
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018540835
(86)(22)【出願日】2017-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017052174
(87)【国際公開番号】W WO2017134117
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2018-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-12
(31)【優先権主張番号】102016102088.5
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ヒューブナー,ゲロルト
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】本多 仁
【審判官】市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502629(JP,A)
【文献】国際公開第2014/177318(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/109780(WO,A1)
【文献】特開2009-87607(JP,A)
【文献】特開平7-90111(JP,A)
【文献】特開2005-5232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10-8/1286
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部分膜(200、300)を有する燃料電池の膜電極アッセンブリ(MEA)用の膜(100)であって、ペルフルオロスルホン酸ポリマー(PFSA)から構成される一方の部分膜(200)と、スルホン化炭化水素ポリマー(HC)から構成される他方の部分膜(300)と、を有し、2つの部分膜(200、300)の各々が、フェントン反応を生じさせる金属イオンを結合する添加物を含有し、
2つの部分膜(200、300)間に、少なくとも1つまたは2つの多孔質支持フィルム(600)が配置されるとともに、吸湿性の粒子または繊維が、添加物として、2つの部分膜(200、300)の各々に導入されることを特徴とする、燃料電池の膜電極アッセンブリ(MEA)用の膜(100)。
【請求項2】
2つの部分膜(200、300)は、互いに、厚み、多孔度および/または細孔密度が異なることを特徴とする請求項1に記載の膜(100)。
【請求項3】
2つの部分膜(200、300)は、互いに、導入される添加物の濃度および/または種類が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の膜(100)。
【請求項4】
2つの部分膜(200、300)の各々に、添加物として、フリーラジカルトラップ、および/または水素と酸素の再結合のための触媒が導入されることを特徴とする請求項1~3の1つに記載の膜(100)。
【請求項5】
膜(100)は、3つ以上の部分膜(200、300、200’、300’)を有し、2つの部分膜(200、300)以外の部分膜(200’、300’)の性質及び材料特性は任意であることを特徴とする請求項1~4の1つに記載の膜。
【請求項6】
燃料電池の膜電極アッセンブリ(MEA)用の膜(100)を製造する方法であって、
膜(100)の部分膜(200、300)を形成することであって、一方の部分膜(200)が、ペルフルオロスルホン酸ポリマー(PFSA)から構成され、かつ他方の部分膜(300)が、スルホン化炭化水素ポリマー(HC)から構成された、2つの部分膜(200、300)を形成することを備え、
2つの部分膜(200、300)の各々に、フェントン反応を生じさせる金属イオンを結合する添加物が導入され、2つの部分膜(200、300)間に、少なくとも1つまたは2つの多孔質支持フィルム(600)が配置されるとともに、吸湿性の粒子または繊維が、添加物として、2つの部分膜(200、300)の各々に導入される、ことを特徴とする、燃料電池の膜電極アッセンブリ(MEA)用の膜(100)を製造する方法。
【請求項7】
支持フィルム(600)の両面へのイオノマー溶液(510、520)の両面適用(S30、S40)、および、これら両面のイオノマーを乾燥すること(S50、S60)、または、一方の部分膜(200)と他方の部分膜(300)多孔質支持フィルム(600)と一緒に結合すること(S20)のさらなるステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
膜電極アッセンブリが、請求項1~5の1つに記載の膜(100)を有する、および/または、請求項6~7の1つに記載の方法の1つを用いて製造される、ことを特徴とする、膜電極アッセンブリ。
【請求項9】
膜電極アッセンブリが、請求項1~5の1つに記載のように構成された膜(100)を備える、および/または、請求項6~7の1つに記載のように製造される、ことを特徴とする、膜電極アッセンブリ(MEA)を有する燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部分膜を有する燃料電池の膜電極アッセンブリ(MEA)用の膜、膜電極アッセンブリ、燃料電池、および膜電極アッセンブリ用の膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水を製造する燃料の酸素との化学反応を用いて電気エネルギーを生成する。この目的のために、燃料電池はその核心となる構成要素として、いわゆる膜電極アッセンブリ(MEA)を含み、膜電極アッセンブリは、イオン伝導性(通常プロトン伝導性)の膜と、膜の両側にそれぞれ配置された触媒電極(アノードおよびカソード)とから構成される構造である。電極は通常、支持された貴金属、特に白金を備える。設計に依存して、この構造は時には触媒被覆膜(CCM)とも呼ばれる。また、ガス拡散層(GDL)が、膜電極アッセンブリの両側で膜とは反対の側に配置可能である。通常、燃料電池は、スタックとして配置された複数の個々のMEA電池によって形成され、全ての電池の電気出力は、加法的である。個々の膜の間にバイポーラプレート(流れ場プレートまたはセパレータプレートとも呼ばれる)が一般に配置されており、個々の電池への作動媒体すなわち反応物の供給を確実にし、また冷却のために役立つ。バイポーラプレートはまた、膜電極アッセンブリとの電気伝導性接触を提供する。
【0003】
燃料電池が作動している際に、燃料(アノード作動媒体)特に水素H2または水素含有ガス混合物が、アノード側で開いている流れ場を通してアノードのバイポーラプレートに供給され、アノードで電子が放出されながらH2のプロトンH+への電気化学的酸化が生じる(H2 → 2H++2e-)。反応室を気密な仕方で分離しかつ電気的に絶縁する電解質または膜を介した、アノード区画からカソード区画へのプロトンの水が結合したまたは水なしの輸送が行われる。アノードで提供された電子は、電気接続を通してカソードに渡される。電子が取り込まれながらO2のO2-への還元が生じるように(1/2O2+2e- → O2-)、酸素または酸素含有ガス混合物(例えば、空気)が、バイポーラプレートの流れ場を通ってカソードにカソード作動媒体として供給される。同時に、カソード室内で酸素陰イオンが、膜を通して輸送されたプロトンと反応し、水を生成する(O2-+2H+ → H2O)。
【0004】
燃料電池スタックへの、その作動媒体、従ってアノード作動ガス(例えば、水素)、カソード作動ガス(例えば、空気)、および冷却材の供給が、スタック全体の方向にスタックを通過する主供給チャネルを通して行われ、作動媒体は、主供給チャネルからバイポーラプレートを介して個々の電池へと輸送される。この種類の少なくとも2つの主供給チャネルが、各作動媒体のために存在する、すなわち、各作動媒体を、1つは供給するため、もう1つは除去するために存在する。
【0005】
燃料電池システムの安定した作動のために、とりわけ、多種多様な手段を用いた膜電極アッセンブリ内の目標とする水の供給が、重要な基準になるが、それというのも、これらは乾燥しきらないかもしれず、または過剰に高い水分含有量を有するかもしれないからである。水の制御は、カソード室内で生成される水に、また外部から供給される水にも関連し、アノードまたはカソードへの目標とする水の輸送は、外部からの膜の加湿を省ける可能性がある。また、燃料欠乏(不十分な反応物の供給)による電極への損傷のリスクは、例えば、アノード領域からの水の除去により、最小に抑える必要がある。
【0006】
膜電極アッセンブリ内に水を供給するために、より薄い膜を通常使用することで、アノードとカソードの間の水のより容易な交換が可能となるが、より薄い膜は、電池の効率を低下させるとともに機械的により不安定であることが知られている。
【0007】
反応ガスの計画的な再結合により膜を加湿するために水が供給可能であることも知られている。例えば、DE19917812C2には、水を生成する再結合が生じる触媒層であって膜の内部に配置された触媒層が設けられた燃料電池用の膜電極アッセンブリが記載されている。膜は、ナフィオン(登録商標)から作成された2つの部分膜から構成可能であり、2つの部分膜は、触媒層の配置に従って一方が他方の上に層状に重ねられる。
【0008】
燃料電池膜は、別な仕方で、例えばe-PTFE(発泡ポリテトラフルオロエチレン)に基づく多孔質支持フィルムを取り囲むことができる化学的および物理的に均一な高分子電解質から均一な仕方で通常作成される。
【0009】
高分子電解質に使用される材料はしばしば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー(PFSA膜)またはスルホン化炭化水素ポリマー(HC膜)である。これらの高分子電解質は、ポリマー中のスルホン酸の濃度の関数であるイオン交換能力(IEC)によって特徴付けられる。
【0010】
PFSA膜は、炭化水素膜に比較して、特に、燃料電池カソードにおいて中間生成物として好ましく形成される酸素ラジカルに対して、高い化学的安定性の利点を有するのに対して、炭化水素膜は、ペルフルオロスルホン酸やより有利な基本的材料に比較して、同じ膜厚で低い気体透過性の利点を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明は、従来技術に比較して容易な水管理を可能とする膜電極アッセンブリアッセンブリ用の膜を供給する目標に基づく。
【0012】
本発明によれば、目標は、請求項1の特徴を有する膜を用いて達成される。
【0013】
燃料電池の膜電極アッセンブリ用の膜が調製され、膜は、2つの層状部分膜から構成され、部分膜は、互いに異なるイオン交換能力(イオン交換容量)(IEC)を有する、および/または、第1の部分膜は、ペルフルオロスルホン酸ポリマー(PFSA)から構成されかつ第2の部分膜は、スルホン化炭化水素(HC)から構成される。
【0014】
ペルフルオロスルホン酸ポリマー(PFSA)およびスルホン化炭化水素ポリマー(HC)から作成された部分膜の組み合わせは、本発明の特に好ましい実施例を示すが、それというのも、この組み合わせでは、炭化水素膜の低い気体透過性の利点が、ペルフルオロスルホン酸膜の高い酸化安定性と組み合わせ可能であるからである。
【0015】
これとは別に、MEAのアノード側およびカソード側での異なる水の供給および需要は、本発明による膜の設計で有利にかつ簡単に管理できる。
【0016】
本発明による膜は好ましくは、膜を安定化するための1つまたは2つの、特に好ましくは1つの多孔質支持フィルムであって、部分膜間にまたは好ましくは部分膜の一方または両方の内部に配置された多孔質支持フィルムを備える。2つの支持フィルムは、部分膜の両方を2つの最終組み立ての前に安定化する必要がある場合に設けられる。1つまたは複数の支持フィルムは好ましくはそれぞれに、対応するイオノマーを含浸させる。イオノマーは好ましくは、部分膜を製造するために使用されるイオノマーに対応する。支持フィルムそれ自体は好ましくは、e-PTFE(発泡ポリテトラフルオロエチレン)から構成される。
【0017】
好ましくは、本発明による膜の組み立てを通して、従来技術の膜のものまたは有利さがいっそう小さくなる膜のものに相当する全厚みを達成することが可能になり、それによって、本発明による膜を有する燃料電池スタックは、既知の膜を有する燃料電池スタックに比較して必要となる空間が小さくなる。本発明による膜は、好ましくは4~20μm、特に好ましくは10~20μmの全厚みを有する。また、部分膜は有利には、好ましくは2~10μm、特に好ましくは5~10μmの個々の厚みを有する。
【0018】
本発明による膜の特に好ましい実施例によれば、部分膜はまた、とりわけ水管理に影響を及ぼし得る追加の材料特性が、互いに異なり得る。これらは好ましくは、部分膜の厚み、それらの多孔度および/または細孔の密度である。部分膜においてこれらの材料特性を変えることで、部分膜を通る水および気体の通過速度を有利に制御できる。
【0019】
膜の別の特に好ましい実施例によれば、さまざまな添加物が、さまざまな濃度で部分膜に導入または適用できる。
【0020】
これらは好ましくは部分膜の膜を加湿する確定程度を確実にするために電池反応からの水を貯蔵するのに有利に役に立つ、ZrO2、SiO2および/またはTiO2などの材料から作成された吸湿性の粒子または繊維とすることができる。
【0021】
適切/確定の加湿が、プロトン伝導性を保証するために必要である。通常、水は、膜に使用されるスルホン酸基によって膜中に結合され、それによって、適切なプロトン伝導性が存在する。しかしながら、より高い作動温度および/またはより高い作動圧力では、電池反応の際に生成される水は、十分に結合されず、膜は乾燥しきり、それによって、膜のプロトン伝導性の低下に起因して性能の損失が生じる。この不利益は、本発明による部分膜内での吸湿性の粒子または繊維の使用によって回避できる。
【0022】
また、これらの添加物は、部分膜内で反応物の再結合を通して計画的に水を供給するための触媒を含むこともできる。この目的のために、純粋な白金または白金炭素化合物またはH2とO2の制御された再結合を可能とする任意の他の触媒が使用できる。
【0023】
好ましくはこれらの添加物は、フリーラジカルトラップとすることもできるが、それというのも、膜は燃料電池内で形成され得る過酸化物陰イオンおよびフリーラジカルによる損傷または破壊を受け易いからである。特にカソード側では、副反応の結果として過酸化物が形成され、そこで、このような添加物を設ける必要があるが、それらは、アノード側でも形成され得る。
【0024】
有害な過酸化物ラジカル生成物を除去するために、部分膜に、フリーラジカルトラップと過酸化物を分解する物質との任意の組み合わせが添加可能である。
【0025】
このような添加物は専門家には知られている。これらは、例えば、フェノール誘導体、特定のアミンおよび同様のものなど、好ましくは金属酸化物とすることができる。ミクロンまたはナノメートルの大きさのセリウム酸化物粒子またはセリウム酸化物塩が特に好ましい。これらの添加物は、電極の近傍での酸素含有ラジカルの、生成の傾向を低減し、または分解を促進する。
【0026】
また、好ましくは、フェントン反応に触媒作用を及ぼす金属イオンを結合する物質が使用される。フェントン反応では、過酸化水素の還元によってヒドロキシルラジカルが形成される。これらは、例えば、鉄、ニッケル、コバルトおよび銅イオンである。燃料電池では、バイポーラプレートの腐食によって放出され得る鉄(II)イオンが特に問題となる。従来技術から当業者には適切な添加物が知られている。これらは、例えば、キレート剤である。
【0027】
フッ化物含有劣化生成物の放出を結果として伴う部分膜の劣化を防止するために、両方の部分膜、好ましくはフッ素含有膜において、金属イオン結合添加物が使用できる。
【0028】
上述の材料特性および/または添加物は、部分膜内に均一に分散できる。有利に、部分膜内のその濃度は、勾配を示すことができ、その方向は、燃料ガスの一方または両方の燃料ガスの流れ方向に相当して、経路に関連してそれらの加湿の程度を取得するか、またはこれを補償する。
【0029】
当然また、特に、例えば、ちょうど表面でなく、むしろ膜全体内で水を生成するために燃料ガスの再結合に触媒作用を及ぼすように、勾配は膜に垂直に形成できる。
【0030】
部分膜の1つまたは複数の部分表面にはまた、部分膜の必要指向の適合を可能とするために、上述の特性または添加物を設けることができる。
【0031】
部分膜を最適化するための上述の特性および添加物は好ましくは、それぞれの部分膜または両方の部分膜内で、互いに独立して設けられる。
【0032】
好ましくは、本発明による膜はまた、3つ以上の部分膜を有することができ、それらは、上述したものがいずれも異なるか、または、少なくとも2つの部分膜が、同じ性質および材料特性を有する。
【0033】
3つ以上の部分膜を有する膜の形成によってさまざまな効果が達成できる。例えば、他の部分膜間に配置された部分膜を有する膜が好ましくは、特定の添加物を有して特定の水貯蔵または水素酸化特性を示す膜芯として取得できる。特に、この膜芯には、そうでなければ、MEAの電極に有害な影響を及ぼし得る材料が付加され得る。
【0034】
また、本発明によれば、燃料電池の膜電極アッセンブリ(MEA)用の上述の膜を製造する方法が導入できる。
【0035】
方法は、以下のステップ、すなわち、異なるイオン交換能力(IEC)によって異なる部分膜の形成および/またはペルフルオロスルホン酸ポリマー(PFSA)からの第1の部分膜およびスルホン化炭化水素ポリマー(HC)からの第2の部分膜の形成によって特徴付けられる。
【0036】
また、上述の部分膜は、さまざまな要求、特に、水管理および安定性に関して適合するように、本発明によって変更できる。
【0037】
方法の好ましい実施例では、部分膜は、支持フィルムの両面への適切なイオノマー溶液の両面適用、およびイオノマーを乾燥することによって形成される。
【0038】
代替として、方法は、例えばプレスすることにより、2つの別々の部分膜を結合することを含むことができる。
【0039】
好ましくは少なくとも1つの膜には、対応する電極アッセンブリを形成するように触媒が被覆できる。この目的のために、対応する触媒ペーストが、一方または両方の部分膜に適用され、後続の乾燥ステップにおいて溶媒が取り除かれる。得られた触媒被覆部分膜は、触媒被覆膜(CCM)を形成するように一緒に結合される。
【0040】
触媒層の適用は、支持フィルムの両面への対応するイオノマー溶液の適用、およびイオノマーを乾燥することによっても行われる。
【0041】
最後に、本発明によれば、膜電極アッセンブリおよび膜電極アッセンブリを有する燃料電池も請求され、膜電極アッセンブリは、膜を備える。膜は、本発明によって形成されおよび/または本発明の方法によって製造される。
【0042】
このような仕方で、本発明による膜の技術的恩恵は、膜電極アッセンブリおよび燃料電池に移行する。
【0043】
本発明の他の好ましい実施例は、従属請求項に述べられる残りの特徴から結果として得られる。
【0044】
本願に記載された本発明のさまざまな実施例は有利には、個々の場合に特に明記しない限り、互いに組み合わせ可能である。
【0045】
本発明は、以下において、添付の図面に基づいて実施例に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明による膜の切欠き図。
図2】本発明による膜の第2の実施例の製造の切欠き図。
図3】本発明による膜の第3の実施例の製造の切欠き図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の以下の実施例は、化学的組み立ておよび/または物理的特性が異なる2つの部分膜に基づく燃料電池の膜電極アッセンブリ用の膜の構成に関する。本発明によれば、これは、部分膜のイオン交換能力および/またはペルフルオロスルホン酸ポリマーおよびスルホン化炭化水素ポリマーからのそれらの組み立てに関する。例えば、膜は、重ね合わされた部分膜を用いて、または、支持フィルムの両面へのイオノマーの適用によって、構成できる。
【0048】
図1に示す第1の実施例では、プロトン伝導性の膜100の構造は、多孔質支持フィルム600上の2つの薄い部分膜200、300から構成され、結果として得られるその全厚みは、従来技術によるプロトン伝導性の膜のものに相当するか、またはそれより小さくすらなり得る。支持フィルム600は、任意選択的であり、本発明の本質には必要不可欠ではない。各部分膜200、300は、膜100の1つの膜面101、102を形成する。部分膜200、300、従って、膜面101、102は、それらのイオン交換能力および/または部分膜100、200に使用されるポリマーが異なる。
【0049】
なおさらなる開発では、部分膜は、細孔の大きさおよび/または密度も異なる。付加的にまたは代替として、差は、部分膜の水管理および安定性に影響を及ぼす材料特性または添加物に存在し得る。
【0050】
触媒材料410、420が両方の部分膜200、300に適用される本発明による膜100の製造は、図2の実施例として示す。ステップS10において、貯蔵器からの触媒材料410、420が、部分膜200、300の反対側向きの面に適用される。次のステップS20において、触媒被覆部分膜200’、300’を有する膜100が得られる。このプロセスでは、支持フィルム600、有利には既にイオノマーを含浸させたものが、部分膜200、300間に配置されるか、または部分膜200、300の一方または両方がそれぞれ、本明細書では図示しないが支持フィルム600を備える。支持フィルムなしの実施例も、本明細書では説明しないが、可能である。
【0051】
図3に示す第3の実施例では、ステップS50、S60における異なる乾燥方法に起因して、高分子膜100の両面が、異なる化学的および/または物理的特性を示す。両面に適用され、任意選択的には異なるイオノマー溶液510、520を乾燥する乾燥方法が適用される。これらは、先行のステップS30、S40において支持フィルム600に適応されたものである。S50、S60の乾燥方法は、特にこれらによって、乾燥された膜の面の水輸送特性が、例えば細孔径および密度に関して、異なるようになる点において、特に異なる。
【0052】
本発明による方法は、容易な製造の利点を有する。膜を損傷する可能性のある変更は必要とされない。
【0053】
異なるイオノマーの異なるイオン交換能力を有する2つの薄い膜を組み合わせることで、MEA内における目標とする水の輸送が達成できる。これは、そこで水分なしで作動を可能とするようにカソードからアノードに生成水を輸送するように、または反対に、アノードから水を取り除くことでアノードの湛水に備えるように、使用できる。
【0054】
一方の電極、好ましくはアノード上の炭化水素膜を、他方の電極、好ましくはカソード上のPFSA膜と組み合わせることで、炭化水素膜のより低い気体透過性の利点を、PFSA膜のより高い酸化安定性と結合できる。
【0055】
膜のハイブリッド構造の結果として、電極への膜の接続を最適化できるが、それというのも、それぞれの膜の面が、それぞれの電極で必要とされるイオノマーで作成できるからである。
【0056】
本明細書で与えられた本発明は、触媒層をそれぞれのアノードまたはカソード部分膜に直接適用し、次いで、簡単な重ね合わせ、あるいは必要ならばホットプレスすることによって2つの触媒被覆部分膜を一緒に取り付けることによって製造できる膜を供給する。このような仕方で、支持フィルムなしで触媒層を適用できる。
【符号の説明】
【0057】
100…膜電極アッセンブリ用の膜
101、102…膜面
200、300…部分膜
200’、300’…触媒被覆高分子部分膜
410、420…触媒材料
510、520…イオノマー材料
600…支持フィルム
S10…触媒適用
S20…結合
S30、S40…イオノマー適用
S50、S60…乾燥
図1
図2
図3