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▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

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  • 特許-モータ及びこれを用いた圧縮機 図1A
  • 特許-モータ及びこれを用いた圧縮機 図1B
  • 特許-モータ及びこれを用いた圧縮機 図2
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  • 特許-モータ及びこれを用いた圧縮機 図5B
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  • 特許-モータ及びこれを用いた圧縮機 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】モータ及びこれを用いた圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/18 20060101AFI20220325BHJP
   H02K 1/02 20060101ALI20220325BHJP
   H02K 3/44 20060101ALI20220325BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20220325BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20220325BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H02K5/18
H02K1/02 B
H02K3/44 B
F04B39/00 106C
F04C29/00 T
F04C18/02 311A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018563984
(86)(22)【出願日】2017-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2017002485
(87)【国際公開番号】W WO2018138795
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史紀
(72)【発明者】
【氏名】兼本 喜之
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162819(WO,A1)
【文献】特開平07-184351(JP,A)
【文献】特開平10-285874(JP,A)
【文献】実開昭55-043386(JP,U)
【文献】特開2007-259609(JP,A)
【文献】特開2003-013870(JP,A)
【文献】特開2003-021065(JP,A)
【文献】特開2007-060834(JP,A)
【文献】特開昭50-032402(JP,A)
【文献】特開平02-047895(JP,A)
【文献】特開2015-006083(JP,A)
【文献】特開平06-351186(JP,A)
【文献】特開2013-240215(JP,A)
【文献】特開2017-017892(JP,A)
【文献】特開2007-189812(JP,A)
【文献】特開2013-126275(JP,A)
【文献】特開平09-098550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/18
H02K 1/02
H02K 3/44
F04B 39/00
F04C 29/00
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に設けられた回転軸と、
前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記ロータと前記回転軸に平行な方向に対向するステータと、
前記ロータと前記ステータとを収納する筒状体であり、内周側に前記ステータが樹脂モールドされたモータケーシングと、
を有するアキシャルギャップ型モータであって
前記モータケーシングは両側に開口部を有し、前記モータケーシングの外周面には、前記モータケーシングの一方の開口側から他方の開口側へと並列に延伸して複数の冷却フィンが配列され、
前記モータケーシングの外周面の前記ステータに対応する位置に、前記モータケーシングの周方向に延伸するリブが設けられ、
前記リブは、前記冷却フィンと交差して一体的に形成されたことを特徴とするアキシャルギャップ型モータ。
【請求項2】
前記リブの頂部は、前記冷却フィンの頂部と同一面上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記リブには、孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記リブは、凹部形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記リブは、前記モータケーシングの側面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項6】
前記リブは、前記モータケーシングの下面に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記ステータは、コイルが巻回された鉄心片が周方向に複数配置されて構成されており、
前記ステータと前記ロータとは、前記回転軸に平行な方向に、空隙を挟んで対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項8】
前記鉄心片は、アモルファス金属により形成されていることを特徴とする請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータとを有する圧縮機であって、
前記モータは、
回転自在に設けられた回転軸と、
前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記ロータと前記回転軸に平行な方向に対向するステータと、
前記ロータと前記ステータとを収納する筒状体であり、内周側に前記ステータが樹脂モールドされたモータケーシングと、
を有するアキシャルギャップ型モータであって
前記モータケーシングは両側に開口部を有し、前記モータケーシングの外周面には、前記モータケーシングの一方の開口側から他方の開口側へと並列に延伸して複数の冷却フィンが配列され、
前記モータケーシングの外周面の前記ステータに対応する位置に、前記モータケーシングの周方向に延伸するリブが設けられ、
前記リブは、前記冷却フィンと交差して一体的に形成されたことを特徴とする圧縮機。
【請求項10】
前記圧縮部は、前記回転軸の端部を支持し、該回転軸の回転により旋回運動する旋回スクロールと、前記旋回スクロールと対向配置された固定スクロールと、を有し、
前記旋回スクロールと前記固定スクロールとは、それぞれ鏡板と、前記鏡板に立設された渦巻状のラップ部とを有し、前記ラップ部が互いに噛み合わされて設けられていることを特徴とする請求項9に記載の圧縮機。
【請求項11】
前記ステータは、コイルが巻回された鉄心片は周方向に複数配置されて構成されており、
前記ステータと前記ロータとは、前記回転軸に平行な方向に、空隙を挟んで対向配置されていることを特徴とする請求項9に記載の圧縮機。
【請求項12】
前記鉄心片は、アモルファス金属により形成されていることを特徴とする請求項11に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及びこれを用いた圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機を駆動するモータは、ロータと、ロータを駆動するステータとを、モータケーシング内に一体にして収納して構成される。例えば特許文献1には、ロータとステータとがモータケーシング内に収納され、このロータを貫通して、旋回スクロールを駆動する駆動軸が設けられた圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-68248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したモータでは、稼働時や製造時に、モータケーシングに対して高温、高圧力がかかることがある。例えばステータを、モータケーシング内に圧入した樹脂によりモールドして設置する場合には、樹脂の圧入時に、モータケーシングに対して高温、高圧力がかかるため、モータケーシングに歪みが生じることがある。このように、モータの仕様や、稼働時の条件によっては、モータケーシングに対してより高い強度が求められることがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、モータケーシングにおいて高い強度を得られるモータ及びこれを用いた圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るモータの好ましい実施形態としては、回転自在に設けられた回転軸と、前記回転軸と一体に回転するロータと、前記ロータと前記回転軸に平行な方向に対向するステータと、前記ロータと前記ステータとを収納する筒状体であり、内周側に前記ステータが樹脂モールドされたモータケーシングと、を有するアキシャルギャップ型モータであって、前記モータケーシングは両側に開口部を有し、前記モータケーシングの外周面には、前記モータケーシングの一方の開口側から他方の開口側へと並列に延伸して複数の冷却フィンが配列され、前記モータケーシングの外周面の前記ステータに対応する位置に、前記モータケーシングの周方向に延伸するリブが設けられ、前記リブは、前記冷却フィンと交差して一体的に形成されたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記モータを用いた圧縮機としても構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モータケーシングにおいて高い強度を得られるモータ及びこれを用いた圧縮機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】実施例1に係るモータの外観斜視図である。
図1B】実施例1に係るモータの外観斜視図である。
図2】モータカバー11から取り外したモータケーシング14の構成を示す斜視図である。
図3】実施例2に係るモータのモータケーシング14の外周面の一部を拡大して示す図である。
図4】実施例3に係るモータのモータケーシング14の外周面の一部を拡大して示す図である。
図5A】実施例5に係る圧縮機100の圧縮部40とモータ10とを分離した状態を示す斜視図である。
図5B】実施例5に係る圧縮機100の圧縮部40とモータ10とを分離した状態を示す斜視図である。
図6図5A、5Bに示すモータ10と圧縮部40とを一体化して構成された圧縮機100を側面から見た断面図を示す。
図7】ロータ32を装着する前のモータケーシング14の内部を、モータケーシング14の開口側から見た状態を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1A、1B及び図2を用いて、実施例1に係るモータ10の構成を説明する。図1A、1Bに、実施例1に係るモータの外観斜視図を示す。図1A、1Bにおいて、11はモータカバーであり、12は回転軸であり、13は冷却ファンである。モータカバー11は、ステータとロータとを収容するモータケーシング14を有している。モータケーシング14は、両側に開口部を有する円筒形状を有しており、一方の開口部にはフランジ15が設けられており、他方の開口部にはエンドブラケット16が設けられて、モータカバー11が構成されている。冷却ファン13は、エンドブラケット16との対向面側に設けられた吸入孔から外気を吸込み、回転羽根の回転により、冷却風を発生させる。
【0011】
モータ10は、ロータとステータとが回転軸12に平行な方向に対向配置されたアキシャルギャップ型であってもよく、ロータの外径側にステータが配置されたラジアルギャップ型であってもよい。モータケーシング14内の構成については、後に詳述する。
【0012】
図2は、モータカバー11から取り外したモータケーシング14の構成を示す斜視図である。図2に示すように、モータケーシング14の側面20A、20B及び下面20Cには、モータケーシング14内の熱を放熱する冷却フィン21が、その外周面に複数本突設されている。冷却フィン21は、それぞれモータケーシング14の一方の開口側から他方の開口側へと並列に延伸して、複数本が配列されている。即ち、冷却フィン21は、各フィンが互いに平行な状態で、モータケーシング14の外周面に沿って並んで設けられている。なお、モータケーシング14の内周面には、ステータを固定するための固定部24が形成されている。
【0013】
モータケーシング14の両側面20A、20B及び下面20Cには、モータケーシング14の周方向に延伸するリブ22が、モータケーシング14の外周面に突設されている。リブ22は、冷却フィン14の幅方向の略中央の位置において、各冷却フィン21と交差して一体的に形成されている。
【0014】
図2に示す例では、モータケーシング14の両側面20A、20Bにおいて、それぞれ一条のリブ22が、最上部の冷却フィン21aから最下部の冷却フィン21bまで交差するように設けられている。また、図示上見えないが、モータケーシング14の下面20Cにおいても同様に、リブ22は、冷却フィン21の幅方向の略中央の位置において、図2における左端側から右端側まで、各冷却フィン21と交差して設けられている。
【0015】
図2に示す例では、リブ22の頂部221は、その全体において、冷却フィン21の頂部211と同一面上に形成されている。
【0016】
上記したように、モータケーシング14の外周面にリブ22を設けることで、モータケーシング14は、その周方向の強度が高められている。
【0017】
なお、図2では、モータケーシング14の両側面20A、20Bにおいて、最上部の冷却フィン21aから最下部の冷却フィン21bまで、リブ22を交差させて設けた構成を示した。実施例1に係るモータ10は、これに限定されず、リブ22を最上部の冷却フィン21aより下側の位置から設けてもよく、最下部の冷却フィン21bより上側の位置から設けてもよい。
【0018】
また、図2に示す例では、モータケーシング14の両側面20A、20B及び下面20Cの中央に、それぞれ一条のリブ22を設けた。しかし、これに限定されず、モータケーシング14の両側面20A、20B及び下面20Cに、それぞれ複数条のリブを設けてもよい。これにより、モータケーシング14の強度がより一層向上する。
【0019】
また、図2に示す例では、リブ22を、モータケーシング14の両側面20A、20B及び下面20Cに設けた構成を示した。実施例1に係るモータ10はこれに限定されず、モータケーシング14の側面20A、20Bのうちの一方のみにリブ22設ける構成としてもよく、下面20Cにはリブ22を設けない構成としてもよい。
【0020】
また、図1に示す構成では、リブ22を、冷却フィン21の幅方向の略中央の位置に設ける構成とした。しかし、これに限定されず、リブ22を、モータケーシング14の一方の開口側に近い位置に設けてもよい。
【実施例2】
【0021】
次に、図3及び図4を参照して実施例2に係るモータについて説明する。図3及び図4は、実施例2に係るモータのモータケーシング14の外周面の一部を拡大して示す図である。図3に示す例では、リブ22の一部に通風用の孔23が設けられている。また、図4に示す例では、リブ22の一部が凹部222を成している。即ち、リブ22の一部の凹部222が、冷却フィン21の頂部211より低い位置に設けられている。
【0022】
図3及び図4に示す構成により、モータケーシング14の周辺の外気は、リブ22の孔23又は凹部222を通過できるため、冷却ファン13の吸入孔からの外気の吸入効率が向上する。従って、冷却ファン13による冷却効率を向上させることができる。なお、実施例2に係るモータは、上記した点以外は、実施例1のモータ10と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【実施例3】
【0023】
実施例3では、実施例1に係るモータ10のモータケーシング14(図2参照)の作製に適した製造方法について説明する。
(工程1)まず、砂型を作製する。砂型は、図2に示すモータケーシング14のリブ22の位置で二分した領域それぞれについて、対応する外周面の形状を作製するための金型を作製し、この金型をそれぞれ砂地に押し付けて、主型となる左側砂型、右側砂型を作製する。さらに、モータケーシング14の内周面の形状を作製するための中子を、主型を作製したのと同様の砂地を用いて作製する。
(工程2)次に、(工程1)で作製した中子を囲むようにして、左側砂型と右側砂型を、分割面で合わせるようにして接続する。
(工程3)次に、(工程2)で接続した砂型に金属溶湯を注ぎ込み、所定時間放置して冷却させる。金属溶湯としては、例えばAlの溶湯を用いることができる。
(工程4)砂型内の金属溶湯が冷却して固形化した後、砂型を外して金属成型体を取り出す。砂型は、左側砂型と右側砂型とを、それぞれ、モータケーシング14の開口面に対して鉛直方向に引き抜きながら崩して、取り外すことができる。
(工程5)次いで、金属成型体のバリを研磨して除去する。なお、バリは、砂型内に注入した金属溶湯の一部が、砂型の接続面等からはみ出した状態で固形化したものをいう。
【0024】
上記のようにして作製した金属成型体においては、リブ22の位置が左側砂型と右側砂型の接続面となるため、バリは、主にリブ22の位置に形成される。従って、主にリブ22の表面や、その周辺の冷却フィン21の頂部をグラインダー等により研磨することで、バリの大半を除去することができる。従って、冷却フィン21の奥側の面を研磨する手間を大幅に低減することができる。リブ22の表面や冷却フィン21の表面をグラインダー等で研磨することで、リブ22の頂部221は、冷却フィン21の頂部211と同一面上に形成される。
【実施例4】
【0025】
次に、実施例4に係る圧縮機の構成を、図5A、5B、図6及び図7を用いて説明する。図5A、5Bは、実施例4に係る圧縮機100の圧縮部40とモータ10とを分離した状態の斜視図である。図5A、5Bに示すように、圧縮機100は、流体を圧縮する圧縮部40と、圧縮部40を駆動するモータ10とを有している。モータ10は、実施例1で説明したモータ10(図1A図1B及び図2参照)を用いる。以下の説明では、モータ10として、アキシャルギャップ型モータを採用した場合の構成を例に説明する。
【0026】
図5A、5Bに示すように、モータ10は、モータカバー11のフランジ15を、圧縮部40の本体ケーシング41と締結することにより、圧縮部40と一体に設けることができる。具体的には、回転軸12を圧縮部40の所定の位置に挿入し、モータカバー11のフランジ15に設けられたボルト挿通孔151と本体ケーシング41に設けられたボルト挿通孔411とに、締結ボルト42を挿入することにより、モータ10のフランジ15と本体ケーシング41とを締結することができる。圧縮部40における回転軸12の挿入位置については、後述する。
【0027】
図6に、図5A、5Bに示すモータ10と圧縮部40とを一体化して構成された圧縮機100を側面から見た断面図を示す。モータケーシング14内には、円盤状のステータ31が、円盤状の一対のロータ32に挟まれて配置されている。回転軸12は、ステータ31、ロータ32の中央部を貫通して設けられており、圧縮部40側に設けられた主軸受33と、ステータ31を挟んで主軸受33と反対側に設けられた反負荷軸受34により回転自在に支持されている。主軸受33と反負荷軸受34とは同心となるように配置されている。回転軸12は、主軸受33側の端部に偏心部12aを有している。
【0028】
ステータ31とロータ32との間には、空隙が形成されている。これにより、ステータ31とロータ32とは、回転軸12に平行な方向に、空隙を挟んで対向配置された状態で、モータケーシング14内に収容されている。
【0029】
図7は、ロータ32を装着する前のモータケーシング14の内部を、モータケーシング14の開口側から見た状態を示す写真図である。図7においては、ステータ31のロータ32との対向面が露出して示されている。
【0030】
ステータ31は、複数の鉄心片311が周方向に等間隔で配置されて構成されている。鉄心片311には、非磁性体を介して、コイルが巻回されている。周方向に配置された鉄心片311は、樹脂材料312により樹脂モールドされることにより一体成形されて、モータケーシング14に固定されている。鉄心片311は、例えば電磁鋼板や、アモルファス金属により構成することができる。
【0031】
ステータ31の鉄心片311に巻回されたコイルに電流が流れると、ステータ31、ロータ32に生成された磁場により、ロータ32に回転力が付与される。ロータ32の回転に伴い回転軸12が回転する。
【0032】
鉄心片311をアモルファス金属により形成した場合には、他の磁性材料と比較して損失が大幅に低く、かつ透磁率が高いため、高いモータ効率を得られる。一方、アモルファス金属は、金属自体の硬度が高く、脆いことに加え、比較的板厚を薄くして用いられるため、打ち抜き等の加工には不向きである。
【0033】
アキシャルギャップ型モータでは、ステータ31を、比較的容易に作成できる扇形形状(図7参照)の箔帯を積層した鉄心片311により構成することができる。従って、アキシャルギャップ型モータは、複雑な形状の打ち抜き加工を行うことなくステータ31を作成できるため、アモルファス金属の使用に適している。
【0034】
アキシャルギャップ型のモータを製造する際には、上記したように、鉄心片311をモータケーシング14内に周方向に配置した後、樹脂材料312で樹脂モールドすることにより、ステータ31を形成する手法が多く採用されている。この場合、樹脂モールド時には、樹脂材料を高温とし、かつ4MPa程度の高圧をかけてモータケーシング14内に圧入される(トランスファーモールド)。従って、モータケーシング14には、内周側から高圧力が負荷される。
【0035】
実施例4に係る圧縮機100では、実施例1で説明したモータ10を用いているため、モータケーシング14において、周方向の強度が高められている。従って、樹脂モールド時にかかる圧力によりモータケーシング14に変形や亀裂が生じるのが抑制され、モータ10として適正な外形を得ることができる。
【0036】
圧縮部40は、図6に示すように、固定スクロール43と、固定スクロール43と対向配置された旋回スクロール44とを有している。固定スクロール43及び旋回スクロール44は、本体ケーシング41内に収納されている。
【0037】
本体ケーシング41は、両端に開口部を有する筒状体であり、一方の開口部に固定スクロール43が取り付けられ、他方の開口部49(図5B参照)にモータ10が取り付けられている。
【0038】
固定スクロール43及び旋回スクロール44は、それぞれ、鏡板43A、44Aの表面に、渦巻き状のラップ部43B、44Bが形成されている。固定スクロール43のラップ部43Bと、旋回スクロール44のラップ部44Bとが互いに噛み合わされることにより、圧縮室45が形成されている。固定スクロール43のラップ部43B及び旋回スクロール44のラップ部44Bには、それぞれの先端にチップシール43C、44Cが設けられている。
【0039】
旋回スクロール44の背面には、ボス部46に旋回軸受47が設けられている。回転軸12の偏心部12aは、旋回軸受47に挿入されており、これにより回転軸12の偏心部12aが、旋回スクロール44に支持されている。
【0040】
回転軸12の偏心部12aは、回転軸12の回転運動に伴い偏心運動する。従って、回転軸12がモータ10により回転駆動されると、偏心部12aと接続された旋回スクロール44が旋回運動する。旋回スクロール44が旋回運動すると、固定スクロール43のラップ部43Bと旋回スクロール44のラップ部44Bとの間に画成された圧縮室45が連続的に縮小される。これにより、圧縮室45内に導入された流体が圧縮され、圧縮空気が圧縮部40の外部に吐出される。なお、図示省略しているが、複数の圧縮室45のうちの一つが、流体の吸入口となっており、複数の圧縮室45のうちの一つが、圧縮流体の吐出口となっている。
【0041】
以上説明した圧縮機100においては、回転軸12端部の偏心部12aが、旋回スクロール44の背面部に直接接続されており、回転軸12の駆動力が、旋回スクロール44に直接伝わることで、旋回スクロール44が旋回運動する。このため、旋回スクロール44の円滑な旋回運動を実現するためには、回転軸12の偏心部12aが、旋回スクロール44の背面に対して適正な状態で支持されることが求められる。このため、主軸受33や反負荷軸受34、旋回軸受47等の各部材は、設計段階において、その設置位置が高い精度で調整されている。この場合、モータ10の製造時にモータケーシング14に歪みが生じると、これらの設置位置にずれが生じ、回転軸12が圧縮部40に対して適正な状態で支持されなくなる。この場合、旋回スクロール44の旋回運動に支障が生じる場合がある。
【0042】
実施例4に係る圧縮機100は、モータ10として、モータケーシング14の外周面にリブ22を設けたものを用いている。このため、モータケーシング14は、周方向の強度が高められており、変形や亀裂等の発生が抑制されている。従って、上記した弊害が生じ難く、所謂一軸型のスクロール式の圧縮機100において、円滑な圧縮動作を実現することができる。
【0043】
以上説明した実施例4では、モータ10として、実施例1に係るモータ10を用いた構成を例に説明した。実施例4に係る圧縮機100はこれに限定されず、実施例2で説明したモータを用いることも可能である。
【0044】
また、実施例4では、スクロール方式の圧縮部40を備えた圧縮機100の構成を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、レシプロ式の圧縮部を、実施例1に係るモータ10と組み合わせた構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
10…モータ、100…圧縮機、11…モータカバー、12…回転軸、12a…偏心部、13…冷却ファン、14…モータケーシング、15…フランジ、151、411…ボルト挿通孔、16…エンドブラケット、20A、20B…側面、20C…下面、21…冷却フィン、21a…最上部の冷却フィン、21b…最下部の冷却フィン、211…頂部、22…リブ、221…頂部、23…孔、31…ステータ、311…鉄心片、312…樹脂材料、32…ロータ、33…主軸受、34…反負荷軸受、40…圧縮部、41…本体ケーシング、42…締結ボルト、43…固定スクロール、44…旋回スクロール、43A、44A…鏡板、43B、44B…渦巻き状のラップ部、43C、44C…チップシール、45…圧縮室、46…ボス部、47…旋回軸受
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7