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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】フレキシブル電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20220325BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220325BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220325BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220325BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220325BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20220325BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20220325BHJP
   H01M 4/139 20100101ALN20220325BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/04 Z
H01M4/62 Z
H01M10/04 Z
H01M50/446
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/139
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018564962
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2017064441
(87)【国際公開番号】W WO2017216179
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】16305720.1
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルオー, エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベナール, ギャエル
(72)【発明者】
【氏名】マーシャ, レオ
(72)【発明者】
【氏名】サロモン, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-238526(JP,A)
【文献】特開平09-120818(JP,A)
【文献】国際公開第2015/169835(WO,A1)
【文献】特開2009-224296(JP,A)
【文献】特開2012-248430(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0030763(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/84
H01M 10/04
H01M 50/446
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流コレクタと、少なくとも1つのフルオロポリマー層とを含む電極であって、
前記電流コレクタはポリマー基材と該ポリマー基材に付着した導電性層を有し、
前記ポリマー基材は、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマーまたは少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つのフルオロポリマーを含み、
前記少なくとも1つのフルオロポリマー層は、前記電流コレクタの前記導電性層に付着し、かつ、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物を含み、
前記ポリマー(F)が、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである、
電極[電極(E)]。
【請求項2】
前記媒体(L)が、少なくとも1つの有機カーボネートと、任意選択的に、少なくとも1つのイオン液体とを含む、請求項1に記載の電極(E)。
【請求項3】
前記電流コレクタの前記ポリマー基材が、フルオロポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1または2に記載の電極(E)。
【請求項4】
前記電流コレクタの前記ポリマー基材が、
- テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、
- エチレン、プロピレンおよびイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1つの含水素モノマー、ならびに
- 任意選択的に、TFEおよび/またはCTFEと前記含水素モノマーとの総量を基準として、典型的には0.1モル%~30モル%の量で、1つもしくは複数の追加のモノマー
に由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、請求項3に記載の電極(E)。
【請求項5】
前記電流コレクタの前記導電性層が、炭素(C)もしくはケイ素(Si)、またはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)およびそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電極(E)。
【請求項6】
前記電流コレクタの前記導電性層が、ステンレス鋼を含む、請求項5に記載の電極(E)。
【請求項7】
少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーが、式(I):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基である)
の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される、請求項1に記載の電極(E)。
【請求項8】
前記媒体(L)の量が、前記媒体(L)と前記少なくとも1つのポリマー(F)との総量を基準として、少なくとも40重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極(E)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電極(E)の製造方法であって、前記方法が、
(i)ポリマー基材および、前記ポリマー基材に付着して、導電性層を含む、電流コレクタを提供する工程と、
(ii)
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 前記媒体(L)と異なる少なくとも1つの有機溶媒[溶媒(S)]、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物
を含む、電極形成組成物を提供する工程と、
(iii)工程(ii)において提供された前記電極形成組成物を、工程(i)において提供された前記電流コレクタの前記導電性層上へ適用する工程と、
(iv)前記少なくとも1つの溶媒(S)を蒸発させ、それによって電極[電極(E)]を提供する工程と
を含む方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電極(E)を含む電気化学デバイス。
【請求項11】
二次電池であって、二次電池が、
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間に、膜と
を含み、
ここで、前記正極および前記負極のうちの少なくとも1つが、請求項1~8のいずれか一項に記載の電極(E)である、二次電池。
【請求項12】
前記膜が、少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体と、液体媒体[媒体(L)]と、任意選択的に、少なくとも1つの金属塩[塩(M)]とを含む、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記膜が、少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体と液体媒体[媒体(L)]とを含む、請求項12に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年6月14日出願の欧州特許出願第16305720.1号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、フレキシブル電極に、前記フレキシブル電極の製造方法に、および電気化学デバイスでの、特に二次電池での前記フレキシブル電極の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーは、二次電池などの電気化学デバイスで使用するための電極の製造用のバインダーとして好適であることが当技術分野において公知である。
【0004】
一般に、正極または負極のいずれの製造技術も、フルオロポリマーバインダーを溶解させ、それらを電気活性材料およびすべての他の好適な成分と均質化して、電流コレクタに適用されるペーストを製造するためにN-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒の使用を伴う。
【0005】
有機溶媒の役割は典型的には、有機溶媒の蒸発時に電気活性材料粒子をそれぞれ一緒におよび電流コレクタに結合させるためにフルオロポリマーを溶解させることである。
【0006】
ポリマーバインダーは、電気活性材料粒子を、これらの粒子が充電および放電サイクル中に大量膨張および収縮に化学的に耐えることができるように、一緒におよび電流コレクタに適切に結合させるべきである。
【0007】
二次電池、特にリチウムイオン二次電池の成功裡の商品化のための必要条件は、すべての環境において電池の安全性を確保することである。
【0008】
二次電池などの電気化学デバイスでの使用に好適な電解質には典型的に、液体電解質および固体電解質が含まれる。
【0009】
電解質が二次電池での使用に好適であるために、それらは、高いイオン伝導率と、電極に対する高い化学的および電気化学的安定性と、広範囲の温度にわたる高い熱安定性とを示すべきである。
【0010】
リチウムイオン二次電池での使用に好適な液体電解質は典型的には、有機溶媒に溶解したリチウム塩を含む。
【0011】
しかしながら、液体電解質がその引火点よりも上に加熱されるときに、重大な安全性問題が過熱から生じる場合がある。特に、カソード材料によって放出される酸素と、燃料としての有機液体電解質との化学反応によって、熱暴走が高温で生じる場合がある。
【0012】
リチウムイオン二次電池の安全性問題を解決するために、液体電解質および固体ポリマー電解質の両方の利点を有利に組み合わせ、このようにして高いイオン伝導率と高い熱安定性とに恵まれているゲルポリマー電解質が研究されている。
【0013】
しかしながら、携帯電話、ラップトップコンピューター、携帯端末、電子ペーパーなどの、低コストの、フレキシブルな、および携帯用のデバイスがますます必要とされているので、これらの携帯用デバイスのエネルギー源である、フレキシブルな再充電可能なリチウムイオン電池が、より急速にますます注目を集めつつある。
【0014】
それにもかかわらず、フレキシブルな再充電可能なリチウムイオン電池において、全体電流コレクタは、操作条件下で曲げられるまたは変形させられ、それは、電極アセンブリから部分的に剥離する場合がある。結果として、電池の充電-放電サイクル特性は、大きく悪化し、電池の全体サイクル寿命は低下する。
【0015】
高い復元力、軽量および容易な携帯性などのいくつかのユニークな特徴を有しながら、良好な電気化学的性能を示すフレキシブル電池が当技術分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
意外にも、フレキシブル電極は、傑出した機械的復元力を確保しながら、傑出した電気化学的性能有利にも示す二次電池などの電気化学デバイスを成功裡に提供する本発明の方法によって容易に製造できることが今見いだされた。
【0017】
第1の場合に、本発明は、
- ポリマー基材および、前記ポリマー基材に付着して、導電性層を含む、好ましくはそれらからなる電流コレクタと、
- 前記電流コレクタの前記導電性層に付着して、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物
を含む、好ましくはそれらからなる少なくとも1つのフルオロポリマー層と
を含む電極[電極(E)]に関する。
【0018】
本発明の電極(E)は好ましくは、
- ポリマー基材および、前記ポリマー基材に付着して、導電性層を含む、好ましくはそれらからなる電流コレクタと、
- 前記電流コレクタの前記導電性層に付着して、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物
を含む、好ましくはそれらかなる少なくとも1つのフルオロポリマー層と
を含む。
【0019】
第2の場合に、本発明は、電極[電極(E)]の製造方法であって、前記方法が、
(i)ポリマー基材および、前記ポリマー基材に付着して、導電性層を含む、好ましくはそれらからなる電流コレクタを提供する工程と、
(ii)
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]、
- 液体媒体[媒体(L)]、
- 前記媒体(L)と異なる少なくとも1つの有機溶媒[溶媒(S)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]、および
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物
を含む、好ましくはそれらからなる電極形成組成物を提供する工程と、
(iii)工程(ii)において提供された電極形成組成物を、工程(i)において提供された電流コレクタの導電性層上へ適用する工程と、
(iv)前記少なくとも1つの溶媒(S)を蒸発させ、それによって電極[電極(E)]を提供する工程と
を含む方法に関する。
【0020】
溶媒(S)の選択は、それがポリマー(F)を可溶化するために好適であるという条件で、特に限定されない。
【0021】
溶媒(S)は典型的には、
- メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール、
- アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン、
- イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレートおよびγ-ブチロラクトンなどの線状もしくは環状エステル、
- N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリドンなどの線状もしくは環状アミド、ならびに
- ジメチルスルホキシド
からなる群から選択される。
【0022】
本発明の方法の工程(i)において提供される電流コレクタは、好ましくは、両面接着テープを典型的に使用する、積層、好ましくは共積層、熱エンボス加工、コーティング、印刷、電気化学的堆積を用いるめっきまたは物理蒸着、化学蒸着および直接蒸発などの真空技術などの任意の好適な手順により、導電性層をポリマー基材上へ適用することによって典型的には製造される。
【0023】
本発明の方法の工程(iii)下で、電極形成組成物は、典型的には、キャスティング、印刷およびロールコーティングなどの任意の好適な手順により電流コレクタの導電性層上へ適用される。
【0024】
任意選択的に、工程(iii)は、工程(iii)において提供された電極形成組成物を、工程(iv)において提供された電極(E)上へ適用することによって、典型的には1回もしくは複数回、繰り返されてもよい。
【0025】
本発明の方法の工程(iv)下で、乾燥は、大気圧下または真空下のいずれで行われてもよい。あるいは、乾燥は、改善雰囲気下で、例えば、典型的にはとりわけ水分が除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含有量)、不活性ガス下で行われ得る。
【0026】
乾燥温度は、本発明の電極(E)からの1つまたは複数の溶媒(S)の蒸発による除去を達成するように選択されるであろう。
【0027】
本発明の電極(E)は好ましくは、1つまたは複数の溶媒(S)を含まない。
【0028】
本発明の電極(E)は有利には、本発明の方法によって得られる。
【0029】
本発明の目的のためには、用語「電気活性化合物[化合物(EA)]」は、電気化学デバイスの充電段階および放電段階中にアルカリまたはアルカリ土類金属イオンをその構造中に組み入れるまたは挿入する、かつ、それから実質的に放出することができる化合物を意味することを意図する。化合物(EA)は好ましくは、リチウムイオンを組み入れるまたは挿入するおよび放出することができる。
【0030】
本発明の電極(E)の化合物(EA)の性質は、それによって提供される電極(E)が正極[電極(Ep)]であるかまたは負極[電極(En)]であるかどうかに左右される。
【0031】
リチウムイオン二次電池用の正極[電極(Ep)]を形成する場合には、化合物(EA)は、式LiMQ(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Al、CrおよびVなどの遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Qは、OまたはSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含んでもよい。これらの中で、式LiMO(式中、Mは上で定義されたものと同じものである)のリチウムベースの複合金属酸化物を使用することが好ましい。その好ましい例としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1-x(0<x<1)およびスピネル構造LiMnが挙げられ得る。
【0032】
代案として、リチウムイオン二次電池用の正極[電極(Ep)]を形成する場合にはさらに、化合物(EA)は、式M(JO1-f(式中、Mは、M金属の20%未満を表す別のアルカリ金属で部分的に置換されていてもよい、リチウムであり、Mは、+1~+5の酸化レベルでの、そして0を含めて、M金属の35%未満を表す1つもしくは複数の追加の金属によって部分的に置換されてもよい、Fe、Mn、Ni、Alもしくはそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの、またはV、Coもしくはそれらの混合物から選択される+3の酸化レベルでの遷移金属であり、JOは、任意のオキシアニオンであり、ここで、Jは、P、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組み合わせのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシドまたはクロリドアニオンであり、fは、一般的に0.75~1に含まれるJOオキシアニオンのモル分率である)のリチウム化または部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオンベースの電気活性材料を含んでもよい。
【0033】
上で定義されたようなM(JO1-f電気活性材料は、好ましくはホスフェートベースであり、規則正しいまたは変性されたカンラン石構造を有してもよい。
【0034】
より好ましくは、化合物(EA)は、式Li3-xM’M’’2-y(JO(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’およびM’’は、同じまたは異なる金属であり、それらの少なくとも1つは遷移金属であり、JOは好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換されてもよいPOであり、ここで、Jは、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組み合わせのいずれかである)を有する。さらにより好ましくは、化合物(EA)は、式Li(FeMn1-x)PO(式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは1である(すなわち、式LiFePOのリチウム鉄ホスフェートである))のホスフェートベースの電気活性材料である。
【0035】
リチウムイオン二次電池用の負極[電極(En)]を形成する場合には、化合物(EA)は好ましくは、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維または球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素と;
- リチウム金属と;
- とりわけ米国特許第6,203,944号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO.)2001年3月20日におよび/または国際公開第00/03444号パンフレット(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING CO.)2000年1月20日に記載されているものなどの、リチウム合金組成物と;
- 一般に式LiTi12で表される、リチウムチタネート(これらの化合物は、可動イオン、すなわち、Liを受け入れるときに低レベルの物理的膨脹を有する、「ゼロ歪」挿入材料と一般に考えられる)と;
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られる、リチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウムと;
- 式Li4.4Geの結晶相を含む、リチウム-ゲルマニウム合金と;
- リチウム-スズおよびリチウム-アンチモン合金と
を含んでもよい。
【0036】
ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0037】
ポリマー(F)は好ましくは、部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0038】
本発明の目的のためには、用語「部分フッ素化フルオロポリマー」は、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味することを意図し、ここで、前記フッ素化モノマーおよび前記含水素モノマーのうちの少なくとも1つは、少なくとも1個の水素原子を含む。
【0039】
用語「フッ素化モノマー」とは、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン系不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0040】
用語「含水素モノマー」とは、少なくとも1個の水素原子を含み、そしてフッ素原子を含まないエチレン系不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0041】
用語「少なくとも1つのフッ素化モノマー」は、ポリマー(F)が1つもしくは2つ以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0042】
用語「少なくとも1つの含水素モノマー」は、ポリマー(F)が1つまたは2つ以上の含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「含水素モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1つまたは2つ以上の含水素モノマーの両方を意味すると理解される。
【0043】
ポリマー(F)は、官能性フルオロポリマー[官能性ポリマー(F)]であってもよい。
【0044】
官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0045】
ポリマー(F)は有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の線状配列を含む線状ポリマー[ポリマー(F)]である。
【0046】
ポリマー(F)はしたがって典型的には、グラフトポリマーと区別できる。
【0047】
官能性ポリマー(F)は有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の線状配列を含むランダムポリマー[ポリマー(F)]である。
【0048】
表現「ランダムに分布した繰り返し単位」は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーの配列(前記配列は、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する2つの繰り返し単位間に含まれる配列)の平均数(%)と、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の総平均数(%)との間のパーセント比を意味することを意図する。
【0049】
少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位のそれぞれが分離されているとき、すなわち、官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位が少なくとも1つのフッ素化モノマーの2つの繰り返し単位間に含まれるとき、少なくとも1つの官能性含水素モノマーの配列の平均数は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の平均総数に等しく、その結果、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率は100%である:この値は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の完全ランダム分布に対応する。したがって、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の総数に対して少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する分離された繰り返し単位の数が大きければ大きいほど、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率の百分率値はより高くなるであろう。
【0050】
官能性ポリマー(F)はしたがって典型的には、ブロックポリマーと区別できる。
【0051】
本発明の第1実施形態によれば、ポリマー(F)は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む官能性ポリマー(F)であってもよい。
【0052】
本発明の第2実施形態によれば、ポリマー(F)は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む官能性ポリマー(F)であってもよい。
【0053】
本発明のこの第1実施形態による官能性ポリマー(F)は、本発明の電極(E)での使用に特に好適である。
【0054】
ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーの重合によって得られる。
【0055】
官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1つの官能性含水素モノマーとの重合によって得られる。
【0056】
本発明の第1実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーと、任意選択的に、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーとの重合によって得られる。
【0057】
本発明の第2実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーと、任意選択的に、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーとの重合によって得られる。
【0058】
フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0059】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それは、パー(ハロ)フッ素化モノマーと称される。
【0060】
フッ素化モノマーは、1個もしくは複数個の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含んでもよい。
【0061】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、下記:
- テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロペンなどのC~Cパーフルオロオレフィン;
- フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレンなどのC~C含水素フルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキルである)のパーフルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-またはパーフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- CF=CFOX(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル[式中、Xは、C~C12アルキル基、C~C12オキシアルキル基または、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基など、1つまたは複数のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基である];
- 式CF=CFOCFORf2[式中、Rf2は、C~Cフルオロ-またはパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、C、または-C-O-CFなどの1つもしくは複数のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基である]の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOY[式中、Yは、C~C12アルキル基もしくは(パー)フルオロアルキル基、C~C12オキシアルキル基、
または1つもしくは複数のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、そしてYは、その酸、酸ハライドまたは塩の形態での、カルボン酸またはスルホン酸基を含む]の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール
が挙げられる。
【0062】
フッ素化モノマーが、例えば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンまたはフッ化ビニルなどの水素含有フッ素化モノマーである場合、ポリマー(F)は、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、前記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーであるか、またはそれは、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1つの官能性含水素モノマー、任意選択的に、前記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーおよび、任意選択的に、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0063】
フッ素化モノマーが、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフロオロプロピレンまたはパーフルオロアルキルビニルエーテルなどのパー(ハロ)フッ素化モノマーである場合、ポリマー(F)は、少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、少なくとも1つの官能性含水素モノマー、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーおよび、任意選択的に、前記パー(ハロ)フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0064】
ポリマー(F)は、非晶質であっても、半結晶性であってもよい。
【0065】
用語「非晶質」は、ASTM D-3418-08に従って測定されるように、5J/g未満の、好ましくは3J/g未満の、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0066】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定されるように、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0067】
ポリマー(F)は好ましくは、半結晶性である。
【0068】
ポリマー(F)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0069】
ポリマー(F)は、好ましくは最大でも20モル%、より好ましくは最大でも15モル%、さらにより好ましくは最大でも10モル%、最も好ましくは最大でも3モル%の、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0070】
ポリマー(F)中の少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の平均モル百分率の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけ酸-塩基滴定方法またはNMR方法に言及することができる。
【0071】
官能性ポリマー(F)は好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0072】
本発明の第1実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0073】
本発明のこの第1の好ましい実施形態の官能性ポリマー(F)はより好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、ならびに
- 任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0074】
少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む官能性含水素モノマーは好ましくは、式(I):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基である)
の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される。
【0075】
少なくとも1個のカルボン酸末端基を含む官能性含水素モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0076】
本発明の第2実施形態によれば、官能性ポリマー(F)は好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーおよび、任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0077】
本発明のこの第2の好ましい実施形態の官能性ポリマー(F)はより好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
- 0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、ならびに
- 任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0078】
ポリマー(F)は典型的には、乳化重合または懸濁重合によって得られる。
【0079】
本発明の目的のためには、用語「液体媒体[媒体(L)]」は、大気圧下に20℃で液体状態にある1つもしくは複数の物質を含む媒体を意味することを意図する。
【0080】
媒体(L)は典型的には、1つまたは複数の溶媒(S)を含まない。
【0081】
塩(M)は典型的には、
(a)Meが金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeがLi、Na、KまたはCsであり、さらにより好ましくはMeがLiであり、nが前記金属の原子価であり、典型的にはnが1または2である、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、C、またはCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Meと、
(式中、R’は、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFおよびCFOCFからなる群から選択される)と、
(c)それらの組み合わせと
からなる群から選択される。
【0082】
電極(E)中の媒体(L)の量は典型的には、前記媒体(L)と少なくとも1つのポリマー(F)との総重量を基準として、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0083】
媒体(L)中の塩(M)の濃度は、有利には少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0084】
媒体(L)中の塩(M)の濃度は、有利には最大でも3M、好ましくは最大でも2M、より好ましくは最大でも1Mである。
【0085】
媒体(L)は、少なくとも1つの有機カーボネートと、任意選択的に、少なくとも1つのイオン液体とを有利には含む、好ましくはそれらからなる。
【0086】
好適な有機カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0087】
本発明の目的のためには、用語「イオン液体」は、大気圧下に100℃よりも下の温度で液体状態にある、正電荷を持つカチオンと、負電荷を持つアニオンとの組み合わせにより形成される化合物を意味することを意図する。
【0088】
イオン液体は典型的には、
- 1つまたは複数のC~C30アルキル基を任意選択的に含有するイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムイオンからなる群から選択される正電荷を持つカチオンと、
- ハライド、過フッ素化アニオンおよびボレートからなる群から選択される負電荷を持つアニオンと
を含有する。
【0089】
~C30アルキル基の非限定的な例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-ヘプチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシル基が挙げられる。
【0090】
イオン液体の正電荷を持つカチオンは好ましくは、
- 式(II):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R11およびR22は独立して、C~Cアルキル基を表し、互いに等しいかもしくは異なる、R33、R44、R55およびR66は独立して、水素原子またはC~C30アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基を表す)
のピロリジニウムカチオンと、
- 式(III):
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R11およびR22は独立して、C~Cアルキル基を表し、互いに等しいかもしくは異なる、R33、R44、R55、R66およびR77は独立して、水素原子またはC~C30アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基を表す)
のピペリジニウムカチオンと
からなる群から選択される。
【0091】
イオン液体の正電荷を持つカチオンはより好ましくは、
- 式(II-A):
のピロリジニウムカチオンと、
- 式(III-A):
のピペリジニウムカチオンと
からなる群から選択される。
【0092】
イオン液体の負電荷を持つアニオンは好ましくは、
- 式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと、
- 式PF のヘキサフルオロホスフェートと、
- 式BF のテトラフルオロボレートと、
- 式:
のオキサロボレートと
からなる群から選択される。
【0093】
イオン液体はさらにより好ましくは、上で定義されたような式(II-A)のピロリジニウムカチオンと、式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、式PF のヘキサフルオロホスフェートおよび式BF のテトラフルオロボレートからなる群から選択される過フッ素化アニオンとを含有する。
【0094】
本発明の目的のためには、用語「導電性化合物[化合物(C)]」は、電子伝導性を電極に付与することができる化合物を意味することを意図する。
【0095】
化合物(C)は典型的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛粉末、黒鉛繊維などの炭素質材料、ならびにニッケルおよびアルミニウム粉末または繊維などの金属粉末または繊維からなる群から選択される。
【0096】
本発明の電極(E)のフルオロポリマー層は、媒体(L)の重量を基準として、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~7重量%の量で、1つもしくは複数の添加物をさらに含んでもよい。
【0097】
本発明の電極(E)のフルオロポリマー膜は、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリル酸ニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、アルキルホスホネート、およびビニル含有シランベースの化合物などの1つもしくは複数の添加物をさらに含んでもよい。
【0098】
本発明の電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、少なくとも1つの半結晶性ポリマーを典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0099】
本発明の目的のためには、用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定されるように、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマーを意味することを意図する。
【0100】
本発明の電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、130℃よりも高い、好ましくは150℃よりも高い、より好ましくは200℃よりも高い融点を有する少なくとも1つの半結晶性ポリマーを好ましくは含む、より好ましくはそれからなる。
【0101】
本発明の電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、ポリ塩化ビニリデンなどのハロポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、芳香族ポリアミドなどのポリアミドおよびポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの半結晶性ポリマーをより好ましくは含む、さらにより好ましくはそれからなる。
【0102】
好適なフルオロポリマーの非限定的な例としては、フッ化ビニリデン(VDF)などの少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)および/もしくはテトラフルオロエチレン(TFE)などの少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーが挙げられる。
【0103】
本発明の電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、
- エチレン、プロピレンおよびイソブチレンから選択される少なくとも1つの含水素モノマー、ならびに
- 任意選択的に、TFEおよび/またはCTFEと前記含水素モノマーとの総量を基準として、典型的には0.1モル%~30モル%の量で、1つもしくは複数の追加のモノマー
に由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーをより好ましくは含む、さらにより好ましくはそれからなる。
【0104】
本発明の電極(E)の電流コレクタのポリマー基材は、
- 35モル%~65モル%、好ましくは45モル%~55モル%のエチレン(E)と、
- 65モル%~35モル%、好ましくは55モル%~45モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびテトラフルオロエチレン(TFE)またはそれらの混合物の少なくとも1つと、
- 任意選択的に、TFEおよび/またはCTFEとエチレンとの総量を基準として、0.1モル%~30モル%の1つもしくは複数の追加のモノマーと
を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーを、さらにより好ましくは含む、さらにより好ましくはそれからなる。
【0105】
本発明の電極(E)の電流コレクタの導電性層は、炭素(C)もしくはケイ素(Si)、またはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)および、ステンレス鋼を含むが、それに限定されないそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0106】
本発明の電極(E)の電流コレクタの導電性層は典型的には、箔、メッシュまたはネットの形態にある。
【0107】
本発明の電極(E)の電流コレクタの導電性層は典型的には、0.1μm~100μm、好ましくは2μm~50μm、より好ましくは5μm~20μmの厚さを有する。
【0108】
本発明の電極(E)のフルオロポリマー層は典型的には、5μm~500μm、好ましくは10μm~200μm、より好ましくは30μm~100μmの厚さを有する。
【0109】
本発明の電極(E)は、電気化学デバイスでの、特に二次電池での使用に特に好適である。
【0110】
本発明の目的のためには、用語「二次電池」は、再充電可能な電池を意味することを意図する。
【0111】
本発明の二次電池は好ましくは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)およびイットリウム(Y)のいずれかをベースとする二次電池である。
【0112】
本発明の二次電池はより好ましくは、リチウムイオン二次電池である。
【0113】
第3の場合に、本発明は、本発明の少なくとも1つの電極(E)を含む電気化学デバイスに関する。
【0114】
第4の場合に、本発明はさらに、
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間に、膜と
を含む二次電池であって、
正極および負極のうちの少なくとも1つが本発明の電極(E)である二次電池に関する。
【0115】
本発明の目的のためには、用語「膜」は、それと接触する化学種の透過を抑える不連続の、一般に薄い、界面を意味することを意図する。この界面は、均質であっても、すなわち、構造が完全に一様であってもよく(稠密な膜)、またはそれは、例えば、有限の寸法の空隙、細孔もしくは穴を含有する、化学的にもしくは物理的に不均一であってもよい(多孔質膜)。
【0116】
本発明の電極(E)の電流コレクタの性質は、それによって提供される電極(E)が正極[電極(Ep)]であるかまたは負極[電極(En)]であるかどうかに左右される。
【0117】
本発明の電極(E)が正極[電極(Ep)]である場合、電流コレクタは、炭素(C)、またはアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)およびそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0118】
本発明の電極(E)が正極[電極(Ep)]である場合、電流コレクタは好ましくは、アルミニウム(Al)からなる。
【0119】
本発明の電極(E)が負極[電極(En)]である場合、電流コレクタは、炭素(C)もしくはケイ素(Si)、またはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)およびそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を典型的には含む、好ましくはそれからなる。
【0120】
本発明の電極(E)が負極[電極(En)]である場合、電流コレクタは好ましくは、銅(Cu)からなる。
【0121】
膜は典型的には、無機材料および有機材料から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0122】
好適な有機材料の非限定的な例としては、とりわけ、ポリマーが挙げられ、前記ポリマーは、ポリマー(F)、好ましくは部分フッ素化ポリマー(F)からなる群から好ましくは選択される。
【0123】
膜は有利には、上で定義されたような1つもしくは複数の化合物(EA)を含まない。
【0124】
膜は、上で定義されたような媒体(L)をさらに含んでもよい。
【0125】
膜は、上で定義されたような少なくとも1つの塩(M)をもっとさらに含んでもよい。
【0126】
膜は、少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体と、上で定義されたような液体媒体[媒体(L)]と、任意選択的に、上で定義されたような少なくとも1つの金属塩[塩(M)]とを典型的には含む、好ましくはそれらからなる。
【0127】
本発明の第1実施形態によれば、膜は典型的には、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 式(IV):
4-mAY (IV)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは、1つまたは複数の官能基を任意選択的に含む、炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む、好ましくはそれらからなる組成物を加水分解する工程および/または縮合させる工程を含む方法によって得られる。
【0128】
上で定義されたような式(IV)の化合物(M1)の加水分解性基Yの選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にするという条件で、特に限定されない。上で定義されたような式(IV)の化合物(M1)の加水分解性基Yは典型的には、好ましくは塩素原子である、ハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0129】
上で定義されたような式(IV)の化合物(M1)が少なくとも1つの官能基を基X上に含む場合、それは官能性化合物(M1)と称され;上で定義されたような式(IV)の化合物(M1)の基Xのどれもが官能基を含まない場合、上で定義されたような式(IV)の化合物(M1)は非官能性化合物(M1)と称されるであろう。
【0130】
化合物(M1)は好ましくは、式(IV-A):
4-mA(OR (IV-A)
(式中、mは、1~4、および、特定の実施形態によれば1~3の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RおよびRは独立して、C1~18炭化水素基から選択され、ここで、Rは任意選択的に、少なくとも1つの官能基を含む)
のものである。
【0131】
官能基の非限定的な例としては、とりわけ、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩またはハライドの形態での)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩またはハライドの形態での)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、またはハライドの形態での)、チオール基、アミン基、第四級アンモニウム基、エチレン系不飽和基(ビニル基のような)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基が挙げられる。
【0132】
上で定義されたような式(IV)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それはより好ましくは、式(IV-B):
A’ 4-mA(ORB’ (IV-B)
(式中、mは、1~3の整数であり、Aは、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RA’は、少なくとも1つの官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RB’は、C~C線状もしくは分岐アルキル基であり、好ましくはRB’は、メチルまたはエチル基である)
のものである。
【0133】
官能性化合物(M1)の例はとりわけ、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、およびそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、
式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、およびそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(L)(OR)(式中、Lは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、xおよびyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0134】
非官能性化合物(M1)の例はとりわけ、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0135】
本発明の第2実施形態によれば、膜は典型的には、
- 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの官能性フルオロポリマー[官能性ポリマー(F)]と、
- 式(V):
X’4-m’A’Y’m’ (V)
(式中、m’は、1~3の整数であり、A’は、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Y’は加水分解性基であり、X’は、少なくとも1個の-N=C=O官能基を含む炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M2)]と、
- 任意選択的に、式(IV)の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む、好ましくはそれらからなる組成物を加水分解する工程および/または縮合させる工程を含む方法によって得られる。
【0136】
上で定義されたような式(V)の化合物(M2)の加水分解性基Y’の選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にするという条件で、特に限定されない。上で定義されたような式(V)の化合物(M2)の加水分解性基Y’は典型的には、好ましくは塩素原子である、ハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0137】
化合物(M2)は好ましくは、式(V-A):
4-m’A’(ORm’ (V-A)
(式中、m’は、1~3の整数であり、A’は、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Rは、少なくとも1個の-N=C=O官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Rは、C~C線状もしくは分岐アルキル基であり、好ましくはRは、メチルまたはエチル基である)
のものである。
【0138】
化合物(M2)はより好ましくは、式(V-B):
O=C=N-RC’-A’-(ORD’ (V-B)
(式中、A’は、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RC’は、線状もしくは分岐C~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、RD’は、C~C線状もしくは分岐アルキル基であり、好ましくはRD’は、メチルまたはエチル基である)
のものである。
【0139】
好適な化合物(M2)の非限定的な例としては、下記:トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネートおよびトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0140】
本発明のこの第2実施形態による膜中の、上で定義されたような式(IV)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それは典型的には、-N=C=O官能基と異なる少なくとも1つの官能基を含む。
【0141】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーは好ましくは、式(VI)の(メタ)アクリルモノマーおよび式(VII)のビニルエーテルモノマー:
(式中、互いに等しいかもしくは異なる、R、RおよびRのそれぞれは独立して、水素原子またはC~C炭化水素基であり、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
からなる群から選択される。
【0142】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーはより好ましくは、上で定義されたような式(VI)のものである。
【0143】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーはさらにより好ましくは、式(VI-A):
(式中、R’、R’およびR’は水素原子であり、R’は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部分である)
のものである。
【0144】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0145】
少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含む官能性含水素モノマーはさらにより好ましくは、下記:
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレー(HPA)、
- および、それらの混合物
から選択される。
【0146】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体は典型的には、フルオロポリマードメインと無機ドメインとを含み、好ましくはそれらからなり、ここで、無機ドメインは、式-O-C(O)-NH-Z-AY3-m(M1-g)[式中、m、Y、A、Xは、上で定義されたものと同じ意味を有し、Zは、少なくとも1つの官能基、任意選択的に、式-O-A’Y’m’-1X’4-m’(M2-g)(式中、m’、Y’、A’、X’は、上で定義されたものと同じ意味を有する)の末端基を任意選択的に含む少なくとも1つのペンダント側鎖を含む、炭化水素である]の末端基を含む少なくとも1つのペンダント側鎖を加水分解する工程および/または縮合させる工程によって得られる。
【0147】
本発明の二次電池は好ましくは、
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間に、膜と
を含み、
ここで、正極および負極の少なくとも1つは、本発明の電極(E)であり、フルオロポリマー層は、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]と、
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物と
を含む、好ましくはそれらからなる。
【0148】
本発明の二次電池はより好ましくは、
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間に、膜と
を含み、
ここで、正極および負極の少なくとも1つは、本発明の電極(E)であり、フルオロポリマー層は、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]と、
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物と
を含み、好ましくはそれらからなり、そして
ここで、前記膜は、少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体と、上で定義されたような液体媒体[媒体(L)]と、任意選択的に、上で定義されたような少なくとも1つの金属塩[塩(M)]とを含む、好ましくはそれらからなる。
【0149】
本発明の二次電池はさらにより好ましくは、
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間に、膜と
を含み、
ここで、正極および負極の少なくとも1つは、本発明の電極(E)であり、フルオロポリマー層は、
- 少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]と、
- 任意選択的に、1つもしくは複数の添加物と
を含み、好ましくはそれらからなり、そして
ここで、前記膜は、少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体と、上で定義されたような液体媒体[媒体(L)]とを含む、好ましくはそれらからなる。
【0150】
本出願人は、これが本発明の範囲を限定することなしに、1つもしくは複数の塩(M)と、任意選択的に、1つもしくは複数の添加物とが有利には、前記塩(M)を含む電極のいずれかから、1つもしくは複数の塩(M)を含まない膜の方へ移行し、それによって、それにより提供される二次電池の良好な電気化学的性能を確保すると考える。
【0151】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0152】
本発明は、以下の実施例に関連してより詳細にこれから説明されるが、実施例の目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0153】
原材料
ポリマー(F-A):25℃でのDMF中で0.30L/gの固有粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー(F-B):25℃でのDMF中で0.30L/gの固有粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)ポリマー。
ポリマー(A):25℃でのDMF中で0.08L/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
黒鉛:75%のSMG HE2-20(日立化成株式会社)/25%のTIMREX(登録商標)SFG6(Timcal Ltd.)。
LiTFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩。
TSPI:3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート。
DBTDL:ジブチルスズジラウレート。
【0154】
ポリマー(F)の固有粘度の測定
固有粘度(η)[dl/g]は、Ubbelhode粘度計を用い、ポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させることによって得られた溶液の、25℃での、滴下時間に基づいて、以下の方程式:
(式中、cは、ポリマー濃度[g/dl]であり、ηは、相対粘度、すなわち、試料溶液の滴下時間と、溶媒の滴下時間との間の比であり、ηspは、比粘度、すなわち、η-1であり、Γは、ポリマー(F)については3に相当する、実験因子である)
を用いて測定した。
【0155】
電流コレクタの製造のための一般的な手順
両面接着テープ(Adhesive 300LSE-3M)を、HALAR(登録商標)500 ECTFEのフィルム(50μm)上へ適用し、それによって接着テープ上の保護フィルムの除去後にいつでも接着する1面を有するECTFEのフィルムを提供した。
【0156】
15μmの厚さを有するアルミ箔を、そのようにして得られたECTFEのフィルム上へ積層により適用し、それによって正極での使用に好適な電流コレクタを提供した。
【0157】
同様に、8μmの厚さを有する銅箔を、そのようにして得られたECTFEの別のフィルム上へ積層により適用し、それによって負極での使用に好適な電流コレクタを提供した。
【0158】
負極の製造のための一般的な手順
アセトン中のポリマー(F-A)の溶液を60℃で調製し、次いで室温にした。次に、黒鉛を、そのようにして得られた溶液に90:10の重量比(黒鉛:ポリマー(F-A))で添加した。
【0159】
次工程において、電解質媒体(前記電解質媒体は、その中にLiTFSI(1モル/L)が添加され、ビニレンカーボネート(VC)(2重量%)が最後に添加されたエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物(容積で1/1)からなる)を添加した。
【0160】
重量比[m電解質/(m電解質+mポリマー(F-A))]×100は75%であった。
【0161】
正極の製造のための一般的な手順
アセトン中のポリマー(F-A)の溶液を60℃で調製し、次いで室温にした。次に、50重量%のC-NERGY(登録商標)SUPER C65カーボンブラックと50重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)とLiFePO(LFP)とのブレンドを含む組成物を、そのようにして得られた溶液に92.8:7.2の重量比((CB+CF+LFP):ポリマー(F-A))で添加した。(CB+CF)/LFP重量比は7.8:92.2であった。
【0162】
次工程において、電解質媒体(前記電解質媒体は、その中にLiTFSI(1モル/L)が添加され、ビニレンカーボネート(VC)(2重量%)が最後に添加されたエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物(容積で1/1)からなる)を添加した。
【0163】
重量比[m電解質/(m電解質+mポリマー(F-A))]×100は85.8%であった。
【0164】
キャスティング手順
溶液混合物を、テープキャスティング機(ドクターブレード)を用いて電流コレクタの導電性層上へ一定の厚さで塗布した。厚さは、ナイフと電流コレクタとの間の距離によって制御した。負極についての厚さは約120μmであった。正極についての厚さは約250μmであった。
【0165】
電極を次に、室温で空気下に30分間乾燥させた。
【0166】
膜の製造のための一般的な手順
ポリマー(A)(1.5g)を60℃で8.5gのアセトンに溶解させ、それによって15重量%の前記ポリマー(F-A)を含有する溶液を提供した。次に、DBTDL(0.015g)を添加した。溶液を60℃で均質化した。TSPI(0.060g)をそれに添加した。DBTDLの量は、TSPIに対して10モル%であると計算された。TSPIはそれ自体、ポリマー1に対して1.1モル%であると計算された。再度、溶液を60℃で均質化させ、次にそれを、TSPIのイソシアネート官能基をポリマー(A)のヒドロキシル基と反応させるために約90分間60℃でそのままにしておいた。
【0167】
次工程において、電解質媒体(前記電解質媒体は、その中にLiTFSI(1モル/L)が添加され、ビニレンカーボネート(VC)(2重量%)が最後に添加されたエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合物(容積で1/1)からなる)を添加した。
【0168】
重量比[m電解質/(m電解質+mポリマー(A))]は80%であった。
60℃での均質化後に、ギ酸を添加した。溶液を60℃で均質化し、TEOSを次に添加した。
【0169】
TEOSの量は、SiOへのTEOSの全変換を仮定して、重量比(mSiO2/mポリマー(A))から計算した。この比は10%であった。
【0170】
ギ酸の量は、次式:
ギ酸/nTEOS=4.9
から計算した。
溶液混合物を、テープキャスティング機(ドクターブレード)を用いてPET基材上へ一定の厚さで塗布した。厚さは、ナイフとPETフィルムとの間の距離によって制御して250μmの値にセットした。
【0171】
膜を55℃で20分間乾燥させ、次にそれをPET基材から取り外した。そのようにして得られた膜は、40μmの一定の厚さを有した。
【0172】
実施例1
ポーチ電池バッテリ(34×36mm)を、本明細書で上に記載されたような正極と負極との間に、本明細書で上に記載されたような膜を組み立てることによって製造した。
【0173】
バッテリを先ずC/20レートで充電し、次にD/20レートで放電し、引き続いてC/10-D/10レートで運転した。
【0174】
D/10レートでの4サイクル後に、バッテリを、30秒間ラジアル表面の50%をカバーする7.5mm外部ラジオのチューブ上で曲げ;印加応力を取り除いたときに、バッテリは、ポーチ電池の元の平面形態を復元した。
【0175】
バッテリは、9サイクルについて、表1に示されるように、正常に動作し続けた。バッテリを次に、他の方向に再び曲げた。バッテリは、その容量値を実質的に未変更に保つことで、表1に示されるように、25サイクル間サイクリングを続けた。
【0176】
そのようにして得られたバッテリの平均放電容量値を、本明細書で下の表1に示す。
【0177】
【0178】
実施例2
ポーチ電池バッテリ(34×36mm)を、本明細書で上に記載されたような正極と負極との間に、本明細書で上に記載されたような膜を組み立てることによって製造した。
バッテリをD/10放電レートで運転した。
【0179】
6サイクル後に、バッテリを固定し、1.5cmの外径を有するチューブ上で曲げ、次に試験した。バッテリは、その容量値を実質的に未変更に保つことで5790分(9サイクル)間、表2に示されるように、正常に動作し続けた。
【0180】
14サイクル後に、印加応力を取り除き、バッテリは、ポーチ電池の元の平面形態を復元した。バッテリは、正常に動作し続けた。
【0181】
そのようにして得られたバッテリの平均放電容量値を、本明細書で下の表2に示す。
【0182】
【0183】
比較例1
ポーチ電池(36×36mm)を、標準正極(非ゲル正極)と標準負極(非ゲル負極)との間に、本明細書で上に記載されたような膜を組み立てることによって製造した。
【0184】
非ゲル電極は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中のポリマー(F-B)の12重量%溶液を使用して製造した。
【0185】
負極:黒鉛を、そのようにして得られた溶液に96:4の重量比(黒鉛/ポリマー(F-B))で添加した。
正極:50重量%のC-NERGY(登録商標)SUPER C65カーボンブラックと50重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)とLiFePO(LFP)とのブレンドを含む組成物を、そのようにして得られた溶液に95.5:4.5の重量比((CF+LFP):ポリマー(F-B))で添加した。CF/LFP重量比は4:96であった。
【0186】
溶液混合物を、負極については250μmおよび正極については350μmの厚さのステンシルスクリーンを用いて金属コレクタ上へスクリーン印刷した。
【0187】
NMPを、一夜間60℃で乾燥させることによって蒸発させ、そのようにして得られた電極を次に、負極については100μmおよび正極については112μmの最終厚さを提供するためにカレンダー加工した。
【0188】
そのような得られたバッテリは、動作しなかった。ポーチ電池を、層間のより良好な電気接触を確保するためにガラスの2シート間に挟んだが、それは依然として充電を開始しなかった。
【0189】
比較例2
比較例1の下で詳述されたものと同じ手順に従ったが、負極については400μmの厚さのステンシルスクリーンを用いた。負極を30分間50℃で乾燥させた。そのようにして得られたバッテリは動作しなかった。
【0190】
上記を考慮して、本発明の電極は、傑出した機械的復元力を確保しながら、傑出した電気化学的性能を有利にも示す二次電池などの電気化学デバイスを成功裡に提供することが分かった。