(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】ジカウイルス感染の治療のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20220325BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220325BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220325BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220325BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220325BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220325BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220325BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220325BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K45/00
A61P31/12
A61P29/00
A61P17/00
A61P27/02
A61P21/00
A61P19/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018566196
(86)(22)【出願日】2017-03-06
(86)【国際出願番号】 US2017020961
(87)【国際公開番号】W WO2017155886
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-03-04
(32)【優先日】2016-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507141273
【氏名又は名称】バイオクライスト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バブー,ヤーラガッダ・エス
(72)【発明者】
【氏名】コティアン,プラビン・エル
(72)【発明者】
【氏名】バンティア,シャンタ
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544788(JP,A)
【文献】Nature,2014年,Vol.508,p.402-405
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2014年,Vol.58,p.6607-6614
【文献】VirusDis.,2016年02月20日,Vol.27, No.2,p.111-115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるジカウイルス感染を、または対象におけるジカウイルス感染と関連する疾病もしくは病態を、治療、予防、または抑制するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を含み、
【化1】
式中、AはNH
2であり、BはHである、医薬組成物。
【請求項2】
対象の体液、組織、または細胞中のジカウイルスのウイルス力価を低下させるための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を含み、
【化2】
式中、AはNH
2であり、BはHである、医薬組成物。
【請求項3】
前記疾病または病態は、発熱、皮膚発疹、結膜炎、筋肉及び関節の痛み、倦怠感、頭痛、神経学的合併症、自己免疫合併症、ギラン・バレー症候群、小頭症、または上記の組み合わせである、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記体液は、血液、血漿、血清、羊水、母乳、精液、精漿、膣分泌物、脳脊髄液、尿、または唾液である、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組織は、胚、胎児、胎盤、肝臓、腎臓、脾臓、脳、精巣、または子宮である、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ジカウイルスのさらなる伝染が低減される、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記対象は、追加のウイルスに感染している、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記追加のウイルスは、ヤブカ(Aedes)属の蚊によって伝染される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
1つ以上の追加の抗ウイルス剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、前記対象が前記ジカウイルスに感染する前に、前記対象がジカウイルスに感染した後に、または前記対象がジカウイルスに感染した後かつ前記ジカウイルス感染が検出され得る前に、前記対象に投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
単回用量の式Iの前記化合物が治療過程中に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記単回用量が、前記単回用量を含有する単回医薬組成物として、または前記単回用量が、前記単回用量を複数回投与のための量に分割することにより得られる量をそれぞれ含有する複数の医薬組成物として投与される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
2回分以上の用量の式Iの前記化合物が治療過程中に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
各用量が、単回医薬組成物として、または各用量が、前記各用量を複数回投与のための量に分割することにより得られる量をそれぞれ含有する複数の医薬組成物として投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
各用量における前記式Iの前記化合物の量は同じではない、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記治療過程は、少なくとも1つの用量を負荷用量として、かつ少なくとも1つの用量を維持用量として投与することを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記負荷用量は200mg/kgであり、および前記少なくとも1つの維持用量は50mg/kgである、前記負荷用量は150mg/kgであり、および前記少なくとも1つの維持用量は38mg/kgである、または前記負荷用量は100mg/kgであり、および前記少なくとも1つの維持用量が25mg/kgである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記有効量は、少なくとも334mg/kgである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記有効量は334mg/kg~650mg/kgである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物は、静脈内投与、筋肉内投与、非経口投与、経口投与、または上記の組み合わせによって投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ウイルス性疾患は、世界的流行及びインフルエンザなどの毎年の季節的流行の両方の原因である。大流行は、毒性の増強を特徴とし得、突発的に起こり、深刻な罹患率及び/または死亡率をもたらす可能性がある。重要なことに、ウイルス性疾患はヒトに限定されない。例えば、インフルエンザは家畜及びトリにも影響を及ぼし、それは、ヒトへの伝染のリスクを高めるだけでなく、食糧供給にも大きな影響を与える可能性がある。ウイルス感染に関連する例示的な病態としては、例えば、インフルエンザ、天然痘、脳炎、西ナイル病、黄熱、デング熱、肝炎、ヒト免疫不全、ポリオ、及びコクサッキーが挙げられる。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、ジカウイルスからのウイルス核酸ポリメラーゼの阻害のための方法及び組成物を提供する。本開示はまた、対象におけるジカウイルス感染を治療、抑制、及び/または予防するのに有用である方法及び組成物を提供する。本開示はまた、対象におけるジカウイルス感染に起因する疾病または病態を治療、抑制、及び/または予防するのに有用である方法及び組成物を提供する。
【0003】
方法は、有効量の本開示の化合物、または本開示の化合物及び薬学的に許容される担体を含む組成物を対象に投与することを含む。方法は、1つ以上の追加の抗ウイルス剤を対象に投与することを任意に含んでもよい。
【0004】
本開示のこれら及び他の実施形態は、発明を実施するための形態、実施例、及び特許請求の範囲を含む本出願の以下の節でさらに説明される。
【0005】
本開示のさらに他の目的及び利点は、本明細書の開示から当業者に明らかになり、これは単に例示的であって限定的ではない。したがって、他の実施形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】偽感染対照と比較して10
3pfu/マウスジカウイルス(マレーシア、P6-740株)の攻撃接種用量に曝露されたAG129マウスの生存を示す。
【
図1B】10
3pfu/マウスジカウイルス(マレーシア、P6-740株)の攻撃接種用量に曝露されたAG129マウスにおける疾病兆候を示す。
【
図1C】10
3pfu/マウスジカウイルス(マレーシア、P6-740株)の攻撃接種用量に曝露されたAG129マウスにおける体重変化を示す。
【
図1D】感染後の10
3pfu/マウスジカウイルス(マレーシア、P6-740株)の攻撃接種用量に曝露されたAG129マウスの組織中のジカウイルスRNA蓄積の経時変化を示す。
【
図1E】Vero細胞中の化合物Aまたはリバビリンによるウイルス収量の低減を示す。
【
図1F】Huh-7細胞中の化合物Aまたはリバビリンによるウイルス収量の低減を示す。
【
図1G】RD細胞中の化合物Aまたはリバビリンによるウイルス収量の低減を示す。
【
図2】プラセボと比較した、AG129マウスの生存に対する、ジカウイルスの感染の4時間前に投与した150mg/kg/日及び300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す(プラセボ対照と比較して***P<0.001)。
【
図3A】プラセボ、正常対照、及び偽処置マウスと比較した、AG129マウスにおけるパーセント体重変化に対する、ジカウイルスの感染の4時間前に投与した150mg/kg/日及び300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す。
【
図3B】プラセボ、正常対照、及び偽処置マウスと比較した、AG129マウスにおける感染後7日目と13日目との間のグラムの体重変化に対する、ジカウイルスの感染の4時間前に投与した150mg/kg/日及び300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す(プラセボ対照と比較して***P<0.001、**P<0.01、*P<0.1)。
【
図4】プラセボと比較した、AG129マウスにおけるウイルス負荷に対する、ジカウイルスの感染の4時間前に投与した150mg/kg/日及び300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す(プラセボ対照と比較して***P<0.001、**P<0.01)。
【
図5】プラセボと比較した、AG129マウスにおける生存に対する、ジカウイルスの感染の4時間前に投与した50mg/kg/日及び75mg/kg/日のリバビリンの効果を示す。
【
図6】プラセボ、正常対照、及び偽処置マウスと比較した、AG129マウスにおけるパーセント体重変化に対する、ジカウイルスの感染の4時間前に投与した50mg/kg/日及び75mg/kg/日のリバビリンの効果を示す。
【
図7】プラセボと比較した、AG129マウスにおけるウイルス負荷に対する、ジカウイルスの感染の4時間前に投与した50mg/kg/日及び75mg/kg/日のリバビリンの効果を示す。
【
図8A】プラセボ、正常対照、及び偽処置マウスと比較した、初期ジカウイルス攻撃接種の28日後のジカウイルスを用いた第2の攻撃接種後のAG129マウスにおける生存に対する、300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す。
【
図8B】28日目のジカウイルスを用いた再攻撃接種前の、群1(300mg/kg、1日2回の化合物Aで処置、ジカウイルス感染)、及び群6(プラセボ、偽感染)からのマウスの血清中のジカウイルス中和抗体の力価を示す。
【
図9】プラセボと比較した、AG129マウスにおける生存に対する、感染の1、3、5、及び7日後に投与した300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す(プラセボ対照と比較して***P<0.001、**P<0.01、*P<0.1)。
【
図10A】プラセボと比較した、AG129マウスのパーセント体重変化に対する、感染の1、3、5、及び7日後に投与した300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す。
【
図10B】は、プラセボと比較した、AG129マウスにおける感染後7日目と13日目との間のグラムの体重変化に対する、感染の1、3、5、及び7日後に投与した300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す(プラセボ対照と比較して***P<0.001)。
【
図10C】は、プラセボと比較した、AG129マウスにおけるウイルス負荷に対する、感染の1、3、5、及び7日後に投与した300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す(プラセボ対照と比較して***P<0.001)。
【
図11】AG129マウスにおける疾病兆候の出現に対する、感染の1、3、5、及び7日後に投与した300mg/kg/日の化合物Aの効果を示す。
【
図12A】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の、非ヒト霊長類の血漿中のジカウイルスRNAの存在に対する、群1及び2(処置群)における化合物Aならびに群3(対照)におけるビヒクルのIM投与の効果を示す。
【
図12B】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の、群1及び2(処置群)における化合物Aならびに群3(対照)におけるビヒクルのIM投与後の、非ヒト霊長類における感染後のジカウイルスRNAに対して陽性の血漿試料の割合を経時的に示す。
【
図13A】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の非ヒト霊長類における脳脊髄液、唾液、及び尿中のジカウイルスRNAの検出に対する、化合物A処置(IM投与、感染後;群1)の効果を示す。
【
図13B】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の非ヒト霊長類における脳脊髄液、唾液、及び尿中のジカウイルスRNAの検出に対する、化合物A処置(IM投与、感染後;群2)の効果を示す。
【
図13C】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の非ヒト霊長類における脳脊髄液、唾液、及び尿中のジカウイルスRNAの検出に対する、対照処置(群3)の効果を示す。
【
図13D】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の、群1及び2(処置群)における化合物Aまたは群3(対照)におけるビヒクルのIM投与後の、非ヒト霊長類における感染後のジカウイルスRNAに対して陽性の脳脊髄液、唾液、及び尿試料の割合を経時的に示す。
【
図14A】ジカウイルス株PRVABC-59の一次攻撃接種、及び後続のジカウイルス株KF993678の異種攻撃接種後の、動物の血漿中のジカウイルスRNAの存在を示す。
【
図14B】ジカウイルス株PRVABC-59の一次攻撃接種、及び後続のジカウイルス株KF993678の異種攻撃接種後の、動物のCSF中のジカウイルスRNAの存在を示す。
【
図14C】ジカ株PRVABC-59の一次攻撃接種、及びジカ株KF993678の異種攻撃接種後の、感染後の経時的なB細胞活性化を示す。
【
図14D】ジカ株PRVABC-59の一次攻撃接種、及びジカ株KF993678の異種攻撃接種後の、感染後の経時的なメモリT細胞活性化を示す。
【
図14E】ジカウイルス株PRVABC-59の一次攻撃接種後の、化合物A処置群1及び2ならびに対照群3における経時的なプラーク減少率を示す。
【
図14F】ジカウイルス株PRVABC-59の一次攻撃接種後の、化合物A処置群1及び2ならびに対照群3における経時的な中和抗体のPRNT
90力価を示す。
【
図15A】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の、非ヒト霊長類における血液試料中のジカウイルスRNAの検出に対する、化合物A処置(IM投与、感染後;群1~4)または群5(対照)におけるビヒクルの効果を示す。
【
図15B】ジカ株PRVABC-59の皮下感染後の、群1~4(処置群)における化合物Aまたは群5(対照)におけるビヒクルのIM投与後の、非ヒト霊長類における感染後のジカウイルスRNAに対して陽性の血液試料の割合を経時的に示す。
【
図15C】ジカウイルス株PRVABC-59の後続の感染後の、化合物A処置群1~4及び対照群5における経時的な中和抗体のPRNT90力価を示す。
【
図15D】群1~5で投与した化合物Aの総用量(mg/kg)によるジカウイルスRNAの最大力価を示す。
【
図15E】対数用量の化合物Aによる対数力価のジカウイルスRNAのロジスティック回帰を示す。
【
図16A】1日目の化合物Aの第1の投与後の、IM注射によってヒト対象に投与した化合物Aの血漿PKプロファイルを示す(結果はng/mLの化合物Aとして表される)。
【
図16B】7日目の化合物Aの最後の投与後の、IM注射によってヒト対象に投与した化合物Aの血漿PKプロファイルを示す(結果はng/mLの化合物Aとして表される)。
【
図17】ジカ株PRVABC-59の膣内感染後の、非ヒト霊長類における血液、CSF、及び頸膣液中のジカウイルスRNAの出現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ジカウイルス疾患は、ヤブカ蚊によって伝染されるウイルスによって引き起こされる。ジカウイルスは、典型的には、皮膚発疹、結膜炎、筋肉及び関節の痛み、倦怠感、頭痛、ならびに関節痛など、感染した患者において軽度の疾病を引き起こす。このウイルスは、アメリカ大陸で急速に出現し、多くの異なる国において何百万人もの人々を感染させている。感染者の大多数は疾病を呈さないが、先天性疾患または重度の神経症状を含むより深刻な有害事象が最近のジカ大流行と関連している。小頭症は、妊娠中のジカウイルス感染に関連する最も劇的で重度の転帰であるように思われる。先天性小頭症の場合、胎盤、羊水、及び胎児の脳組織にウイルスが検出されており、ジカウイルスと小頭症との間の因果関係が示唆されている。ジカウイルスはまた、感染した患者の羊水、精液または精漿、尿、及び唾液からも分離されている。これらの症状は、通常2~7日間続く。現在利用可能な特定の治療法またはワクチンはない。このウイルスは、アフリカ、アメリカ大陸、アジア、太平洋に広まっていることが既知である。
【0008】
ジカウイルスは、森林黄熱病の監視ネットワークを通じて、ウガンダにおいて1947年にアカゲザルで最初に確認された。その後、1952年にウガンダ及びタンザニア連合共和国において、ヒトで確認された。アフリカ、アメリカ大陸、アジア、及び太平洋では、ジカウイルス病の大流行が記録されている。フランス領ポリネシア及びブラジルでそれぞれ2013年及び2015年に大規模な流行があった際に、国家保健当局は、ジカウイルス病の潜在的な神経学的合併症及び自己免疫合併症を報告した。近年ブラジルでは、地元の保健当局が、一般市民におけるジカウイルス感染と同時に起きたギラン・バレー症候群の増加、ならびにブラジル北東部における小頭症を持って生まれた新生児の増加を観察している。ジカウイルスは、ヤブカ(Aedes)属の感染した蚊、主に熱帯地域のネッタイシマカ(Aedes aegypti)の刺咬を通じて人々に伝染する。これは、デング熱、チクングニア、及び黄熱病を伝染させるのと同じ蚊である。しかしながら、ジカウイルスの性感染が2例、及び精液中のジカウイルスの存在がさらに1例において記述されている。2007年及び2013年(ヤップ島及びフランス領ポリネシアのそれぞれ)に太平洋から初めて、また2015年にはアメリカ大陸(ブラジル及びコロンビア)ならびにアフリカ(カーボベルデ共和国)からジカウイルスの大流行が報告された。さらに、アメリカ大陸の13を超える国が、散発的なジカウイルス感染を報告しており、ジカウイルスの急速な地理的な拡散を示す。
【0009】
残念なことに、ウイルス感染を予防または治療するための妊婦の治療のための抗ウイルス化合物を開発することは、規制事項に関して困難であり、母親及び発育中の胎児の健康に対する正当な懸念によって阻まれている。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)分野における妊娠中の治療にはいくつかの先例が存在する。妊婦の明白な治療標的に加えて、より容易に治療可能な群は、性交渉の相手にウイルスを伝染させる可能性のある感染した男性であろう。
【0010】
ジカウイルスの構造は、他のフラビウイルスの構造に従う。それは、エンベロープタンパク質E及びMを含有する宿主膜由来の脂質二重層によって包囲された約25~30nmの直径のヌクレオカプシドを含有する。ビリオンは、直径が約40nmで、表面突起物はおよそ5~10nmである。表面タンパク質は、正二十面体様対称で配置される。ジカウイルスの生殖周期は、他の既知のフラビウイルスの生殖周期に従う。最初に、ビリオンは、ビリオンエンドサイトーシスを誘導するエンベロープタンパク質を介して宿主細胞膜受容体に付着する。次に、ウイルス膜がエンドソーム膜と融合し、ウイルスのssRNAゲノムが宿主細胞の細胞質に放出される。次いで、ポリタンパク質に翻訳され、それは続いて開裂して、全ての構造タンパク質及び非構造タンパク質を形成する。次いで、複製がdsRNAゲノムをもたらす小胞体の細胞質ウイルス工場として既知の細胞内区画で起こる。次いで、dsRNAゲノムが転写され、追加のssRNAゲノムをもたらす。次いで、小胞体内で会合が起こり、新しいビリオンがゴルジ装置に輸送され、次いで新しいビリオンが新しい宿主細胞を感染させることができる細胞内空間に排出される。
【0011】
特定の実施形態では、本発明は、対象におけるジカウイルス感染の治療、抑制、及び/または予防に有用である方法及び組成物に関する。別の特定の実施形態では、本発明は、対象におけるジカウイルス感染に関連する疾病または病態の治療、抑制、及び/または予防のための方法及び組成物に関する。ジカウイルス感染に関連するそのような疾病または病態としては、発熱、皮膚発疹、結膜炎、筋肉及び関節の痛み、倦怠感、頭痛、神経学的合併症、自己免疫合併症、ギラン・バレー症候群、及び小頭症、特に小児小頭症が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明は、対象の体液、組織、または細胞中のジカウイルスのウイルス力価を低下させるために有用である方法及び組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明は、第1の対象から第2の対象へのジカウイルス感染の伝染を低減または予防するための方法及び組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明は、妊婦から出生前のヒトへのジカウイルス感染の伝染を低減または予防するのに有用である方法及び組成物を提供する。方法は、有効量の本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物(薬学的組成物など)を対象に投与することを含む。方法は、1つ以上の追加の抗ウイルス剤を投与することを任意に含んでもよい。
【0012】
本発明の化合物
本開示の化合物は、イムシリンとして一般的に既知の9-デアザアデニン誘導体であり、その合成は、例えば、WO 03/80620、ならびにEvans et al.のTetrahedron 2000,56,3053及びJ.Org.Chem.2001,66(17),5723に記載されている(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。同様の構造の合成は、例えば、米国特許第5,985,848号、同第6,066,722号、同第6,228,741号、ならびにPCT公開第WO2003/080620号及び同第2008/030119号で考察されている(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。イムシリン誘導体は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤として研究されている(Kicska et al.,J.Biol.Chem.2002,277,3219-3225及びKicska et al.,J.Biol.Chem.2002,277,3226-3231を参照されたい。それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかのイムシリンが、5´-メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)または5´-メチルチオアデノシンヌクレオシダーゼ(MTAN)阻害剤としても研究されている。そのような機序は、癌及び細菌感染の治療に関与している(の全体が参照により本明細書に組み込まれるWO 03/080620を参照されたい)。
【0013】
本開示の化合物は、互変異性体特性を呈し得る。したがって、本開示の化合物はまた、式Iの化合物の互変異性型、及びこれらの混合物を包含する。いくつかの化合物が薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び/または水和物として存在し、それらの各々が本開示の化合物の記載の範囲内にあることがさらに理解されるであろう。
【0014】
式(I)の化合物は以下の通りである:
【化1】
式中、AはOHまたはNH
2であり、BはHまたはNH
2である。
【0015】
したがって、式(I)の化合物のいくつかの実施形態では、AはNH2である。
【0016】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態では、BはNH2である。
【0017】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態では、AはOHである。
【0018】
式(I)の化合物のさらにいくつかの実施形態では、BはHである。
【0019】
式(I)の化合物のさらにいくつかの実施形態では、AはNH2であり、BはHである。
【0020】
式(I)の化合物のさらにいくつかの実施形態では、AはOHであり、BはNH2である。
【0021】
式(I)の化合物のさらにいくつかの実施形態では、AはNH2であり、BはNH2である。
【0022】
式(I)の化合物のさらにいくつかの実施形態では、AはOHであり、BはHである。
【0023】
式(I)の化合物の特に好ましい実施形態では、AはNH2であり、BはHである。
【0024】
式Iの化合物の合成は、当該技術分野において既知であり、例えばPCT/US2011/056421に記載されており、それはそのような教示に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
本開示の化合物は、塩、薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、または複合体などの異なる形態で調製され得、本開示は、化合物の全ての変異型を包含する組成物及び方法を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、水和物または塩として調製される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、薬学的に許容される塩として存在する。いくつかの実施形態では、塩の形態は、本開示の酸及び化合物の約1:1の比である。いくつかの実施形態では、塩の形態は、本開示の酸と化合物の比が約1:1よりも大きい。いくつかの実施形態では、塩の形態は、本開示の酸及び化合物の約2:1の比である。いくつかの実施形態では、塩の形態は、水和物として存在する。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、水和物または溶媒和物として存在する。
【0027】
略語及び定義
本明細書で使用される場合、「本開示の化合物(複数可)」または「本発明の化合物(複数可)」という用語は、式Iの化合物を意味し、その塩(薬学的に許容される塩を含む)、互変異性型、水和物、及び/または溶媒和物を含み得る。ある特定の実施形態では、本開示の化合物は、化合物Aである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「化合物A」という用語は、AがNH2であり、BがHである式Iの化合物を意味し、その塩(薬学的に許容される塩を含む)、互変異性型、水和物、及び/または溶媒和物を含み得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、好適な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を意味する。好適な溶媒は、投与される投与量において生理学的に許容される。好適な溶媒の例は、エタノール、水などである。水が溶媒である場合、その分子は「水和物」と称される。
【0030】
「薬学的組成物」は、生理学的/薬学的に許容される担体及び/または賦形剤などの他の成分と、本開示の化合物のうちの1つ以上の混合物を指す。薬学的組成物の目的は、塩、互変異性型、水和物、及び/または溶媒和物を含む式Iの化合物の対象への投与を容易にすることである(上記の薬学的に許容される形態を含む)。
【0031】
「薬学的に許容される塩」という用語は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マロン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ナフタレン-2スルホン酸、及び他の酸を含む、無機酸または有機酸由来の塩を含むよう意図される。薬学的に許容される塩の形態はまた、塩を含む分子の比が1:1ではない形態を含み得る。例えば、塩は、式Iの化合物の1分子当たり2つの塩酸分子など、塩基の1分子当たり2つ以上の無機酸分子または有機酸分子を含み得る。別の例として、塩は、酒石酸の1分子当たり式Iの化合物の2つの分子など、塩基の1分子当たり1つ未満の無機酸分子または有機酸分子を含み得る。塩はまた、溶媒和物または水和物として存在し得る。
【0032】
「酸」という用語は、全ての薬学的に許容される無機酸または有機酸を包含する。無機酸としては、鉱酸、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば、臭化水素酸及び塩酸、硫酸、リン酸、ならびに硝酸が挙げられる。有機酸としては、全ての薬学的に許容される脂肪族、脂環式、及び芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び脂肪酸が挙げられる。好ましい酸は、ハロゲンもしくはヒドロキシル基によって任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和C1~C20脂肪族カルボン酸、またはC6~-C12芳香族カルボン酸である。そのような酸の例は、炭酸、ギ酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、吉草酸、α-ヒドロキシ酸、例えば、グリコール酸及び乳酸、クロロ酢酸、安息香酸、メタンスルホン酸、及びサリチル酸である。ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸(tataric acid)、及びマレイン酸が挙げられる。トリカルボン酸の例は、クエン酸である。脂肪酸としては、4~24個の炭素原子を有する全ての薬学的に許容される飽和または不飽和、脂肪族または芳香族カルボン酸が挙げられる。例としては、酪酸、イソ酪酸、sec-酪酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びフェニルステリル酸(phenylsteric acid)が挙げられる。他の酸としては、グルコン酸、グリコヘプトン酸、及びラクトビオン酸が挙げられる。
【0033】
「約」という用語は、近似的に、大体、ほぼ、またはおよそを意味するために本明細書で使用される。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、それは、限界を記載される数値よりも上及び下に拡張することによって、その範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、20%上または下(より高いまたはより低い)の分散によって示された値よりも上及び下に数値を修正するために、本明細書で使用される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「有効量」、「十分な量」、または「治療有効量」という用語は、臨床結果を含む有益な、または所望の結果をもたらすのに十分である化合物の量である。そのようなものとして、有効量は、例えば、ウイルス感染の重症度及び/または持続時間、またはその1つ以上の症状を軽減または改善するために、ウイルス感染の進行を予防するために、ウイルス感染と関連する1つ以上の症状の再発、発現、または発症を予防するために、ウイルスの複製または増殖を予防または低減するために、ウイルス粒子の産生及び/または放出を予防または低減するために、別の療法の予防または治療効果(複数可)を強化または別様に改善するために十分であり得る。ある特定の実施形態では、有効量は、望ましくない副作用を回避または実質的に軽減する、本開示の化合物の量である。
【0035】
ある特定の実施形態では、ジカウイルス感染の文脈における「有効量」、「十分な量」、または「治療有効量」は、ジカウイルスのライフサイクルの以下のステップのうちの1つ以上を低減するのに十分な量である:少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の細胞へのウイルス粒子のドッキング、細胞へのウイルス遺伝子情報の導入、ウイルスタンパク質の発現、ウイルスRNAの翻訳、ウイルスRNAの転写、ウイルスRNAの複製、新しいウイルスRNAの合成、新しいウイルス粒子の産生、及び細胞からのウイルス粒子の放出。いくつかの実施形態では、ジカウイルス感染の文脈における「有効量」、「十分な量」、または「治療有効量」は、ジカウイルスの複製、増殖、または拡散を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%低減する。いくつかの実施形態では、ジカウイルス感染の文脈における「有効量」、「十分な量」または「治療有効量」は、感染した対象の生存率を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%増加させる。いくつかの実施形態では、ジカウイルス感染の文脈における「有効量」、「十分な量」または「治療有効量」は、小児小頭症を持って生まれた乳児の割合を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%減少させる。上記のそれぞれにおいて、増加の低減が特定される場合、そのような増加の低減は、本開示の化合物で処置されていない対象に関して判断され得る。
【0036】
「治療」という用語は、臨床結果を含む有益な、または所望の結果を得るためのアプローチである。有益な、または所望の臨床結果としては、検出可能か検出不可能かにかかわらず、1つ以上の症状または病態の緩和または改善、疾病の程度の減少、病状の安定化(すなわち、悪化しない)、疾病の拡散の予防、疾病の進行の遅延または緩徐化、病状の緩和または一時的緩和、及び寛解(部分か完全かにかかわらず)が挙げられ得るが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けていない場合の予想される生存と比較して、生存期間を延長させることも意味する。
【0037】
「担体」という用語は、化合物が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体の非限定的な例としては、水、及びピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物、または合成由来のものを含む油などの液体が挙げられる。薬学的担体はまた、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素などであってもよい。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤が使用されてもよい。好適な薬学的担体の他の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるE.W.Martinの‘‘Remington´s Pharmaceutical Sciences’’に記載されている。
【0038】
本明細書で使用される場合、「動物」、「対象」、及び「患者」という用語は、哺乳動物、動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタなど)及びヒトが挙げられるが、これらに限定されない動物界の全てのメンバーを含む。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、女性の性別のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、妊娠している女性の性別のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、出産の可能性がある女性の性別のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、男性の性別のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、生理学的に子供の父親になることが可能である男性の性別のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、性的に活発である。いくつかの実施形態では、対象は、乳児または子供である。いくつかの実施形態では、対象は、出生前のヒト(例えば、胚または胎児であるが、出生後のヒトは、受精後の任意の発育段階にあり得る)
【0039】
本発明の化合物は、イムシリンとして一般的に既知の9-デアザアデニン誘導体であり、その合成は、例えば、WO 03/80620、ならびにEvans et al.のTetrahedron 2000,56,3053及びJ.Org.Chem.2001,66(17),5723に記載されている(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。同様の構造の合成は、例えば、米国特許第5,985,848号、同第6,066,722号、同第6,228,741号、ならびにPCT公開第WO2003/080620号及び同第2008/030119号で考察されている(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。イムシリン誘導体は、PNP阻害剤として研究されている(Kicska et al.のJ.Biol.Chem.2002,277,3219-3225、及びKicska et al.のJ.Biol.Chem.2002,277,3226-3231を参照されたい。それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。 いくつかのイムシリンが、5´-メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAP)または5´-メチルチオアデノシンヌクレオシダーゼ(MTAN)阻害剤としても研究されている。そのような機序は、癌及び細菌感染の治療に関与している(の全体が参照により本明細書に組み込まれるWO 03/080620を参照されたい)。
【0040】
本発明の化合物は、互変異性体特性を呈し得る。したがって、本発明はまた、式Iの化合物の互変異性型、及びこれらの混合物を包含する。いくつかの化合物が薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び/または水和物として存在し、それらの各々が本発明の実施形態の範囲内にあることがさらに理解されるであろう。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として存在する。いくつかの実施形態では、塩の形態は、本発明の酸及び化合物の約1:1の比である。いくつかの実施形態では、塩の形態は、本発明の酸と化合物の比が約1:1よりも大きい。いくつかの実施形態では、塩の形態は、本発明の酸及び化合物の約2:1の比である。いくつかの実施形態では、塩の形態は、水和物として存在する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、水和物または溶媒和物として存在する。
【0043】
ジカウイルス感染が別のウイルス感染と共に対象において示される場合、さらなるウイルス感染は、retroviridae科、adenoviridae科、orthomyxoviridae科、paramyxoviridae科、arenaviridae科、bunyaviridae科、flaviviridae科、filoviridae科、togaviridae科、picornaviridae科、poxviridae科、hepadnaviridae科、hepviridae科、及びcoronaviridae科のウイルスから選択され得る。これらの科の内の特定のウイルスとしては、アデノウイルス、ライノウイルス、A型、B型、C型、D型、及びE型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス、ポリオ、麻疹、エボラ、コクサッキー、西ナイル、天然痘、黄熱、デング熱、インフルエンザ(ヒト、トリ、及びブタを含む)、ラッサ、リンパ球性脈絡髄膜炎、フニン、マチュポ、グアナリト、ハンタウイルス、リフトバレー熱、ラクロス、カリフォルニア脳炎、クリミア・コンゴ、マールブルク、日本脳炎、キャサヌール森林病、ベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、パラインフルエンザ、呼吸器合胞体、Punta Toro、Tacaribe、及びpachindeが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、さらなるウイルスは、デング熱、チクングニア、及び黄熱などであるがこれらに限定されない、Aedes属の蚊によって伝染されるウイルスである。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、ジカウイルスの複製または感染性を阻害するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、ウイルスタンパク質の発現、ウイルスRNAの翻訳、ウイルスRNAの転写、ウイルスRNAの複製、新しいウイルスRNAの合成、新しいウイルス粒子の産生、または細胞からのウイルス粒子の放出を阻害するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、ジカウイルスに感染した細胞の成長を阻害するために使用される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明は、化合物Aを含むがこれに限定されない、有効量の本発明の化合物を前述の対象に投与することを含む、対象におけるジカウイルスRNAポリメラーゼを阻害するための方法を提供する。
【0046】
ボルティモアの分類体系によると、RNAポリメラーゼウイルスは、二本鎖ウイルス、陽性センス一本鎖ウイルス、及び陰性センス一本鎖ウイルスなどであるが、これらに限定されない群に分類され得る。陽性センス一本鎖ファミリーとしては、例えば、coronaviridae、picornaviridae、togaviridae、flaviviridaeなどが挙げられる。陰性センス一本鎖ファミリーとしては、例えば、paramyxoviridae、arenaviridae、bunyaviridae、orthomyxoviridae、filoviridaeなどが挙げられる。ウイルス科の各々は、属、種、及び血清型(または亜型)にさらに分類され得る。ウイルスの分類学上の名称のための他の名称は、International Committee on Taxonomy of Virusesに従った分類ガイドラインによって記載されている。
【0047】
RNA依存性RNAポリメラーゼは、ウイルスRNA転写及び複製を触媒する。ウイルスの転写及び複製がRNAポリメラーゼの活性に依存するため、この酵素は、最近の薬物耐性ウイルスの出現を受けて、新しい抗ウイルス化合物の開発のための標的として関心を集めている。ウイルスは、治療の際に1つの薬物に対する耐性を生じさせる可能性があり、したがって、薬物の有効性が減少し、別の抗ウイルス薬で対象を治療する必要がある。したがって、広範囲のウイルス株に対して同時に効力を示す薬物または治療が有用であろう。
【0048】
加えて、本明細書に記載の組成物または方法は、本発明の化合物と組み合わせて1つ以上の追加の抗ウイルス剤をさらに含んでもよい。そのような抗ウイルス剤の例としては、サイトベイン、ガンシクロビル、ホスホノホルメート三ナトリウム、リバビリン、インターフェロン、d4T、ddI、AZT、アマンタジン、リマンダチン、及び他の抗インフルエンザ剤;アシクロビル、及び関連薬剤、ホスカルネット、ならびに他の抗ヘルペスウイルス剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、抗インフルエンザ剤である。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ノイラミニダーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビル、及びペラミビルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ペラミビルである。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ラニナミビルである。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、オセルタミビルである。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ザナミビルである。
【0050】
インフルエンザポリメラーゼの阻害に関連する化合物は、例えば、米国特許第7,388,002号、同第7,560,434号、ならびに米国特許出願第12/440,697号(米国特許公開第2010/0129317号として公開)、及び同第12/398,866号(米国特許公開第2009/0227524号として公開)に記載されており、それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。現在、T-705(ファビピラビル;6-フルオロ-3-ヒドロキシ-2-ピラジンカルボキサミド)として既知の、臨床試験中の1つのインフルエンザポリメラーゼ阻害剤が存在する。T-705は、インビトロ及びインビボで、インフルエンザウイルス感染の複数の株に対して強力かつ広範囲の抗ウイルス活性を有する(Kiso et al.のPNAS 2010,107,882-887。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。T-705は、ほとんどの抗インフルエンザウイルス薬とは異なる作用機序を特徴とする。
【0051】
抗ウイルス剤として使用される別の種類の化合物は、M2阻害剤である(Pielak,R.,Schnell,J.,&Chou,J.(2009)Proceedings of the National Academy of Sciences,106(18),7379-7384を参照されたい(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。この種類の典型的なメンバーとしては、アマンタジン及びリマンタジンが挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、2つの追加の抗ウイルス剤をさらに含み、本発明の方法は、2つの追加の抗ウイルス剤の投与をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ノイラミニダーゼ阻害剤及びM2阻害剤である。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、1)ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビル、及びペラミビル、ならびに2)アマンタジン及びリマンダチンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ペラミビル及びアマンタジンである。いくつかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、ペラミビル及びリマンタジンである。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1つ以上の追加の抗ウイルス剤をさらに含み、本発明の方法は、1つ以上の追加の抗ウイルス剤の投与をさらに含む。
【0054】
本発明は、ポリメラーゼを有効量の本発明の化合物と接触させることを含む、ジカウイルスRNAポリメラーゼを阻害するための方法を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を前述の対象に投与することを含む、ジカウイルス感染に罹患している対象を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、対象におけるジカウイルス感染を抑制するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、対象におけるジカウイルス感染を予防するための方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を前述の対象に投与することを含む、ジカウイルス感染に関連する疾病または病態を治療、抑制、及び/または予防するための方法を提供する。ジカウイルス感染に関連するそのような疾病または病態としては、発熱、皮膚発疹、結膜炎、筋肉及び関節の痛み、倦怠感、頭痛、神経学的合併症、自己免疫合併症、ギラン・バレー症候群、及び小頭症、特に小児小頭症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象の体液、組織、または細胞におけるジカウイルスに対するウイルス力価を低下させる方法を提供し、前述の体液、組織、または細胞を本発明の化合物と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、対象の体液、組織、または細胞におけるジカウイルスに対するウイルス力価を低下させるための方法を提供し、方法は、有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む。そのような体液としては、血液、血漿、血清、羊水、母乳、精液、精漿、膣分泌物、脳脊髄液、尿、もしくは唾液(または上記の組み合わせ)が含まれるが、これらに限定されない。上記の実施形態では、組織は、胚、胎児、胎盤、肝臓、腎臓、脾臓、脳、精巣、もしくは子宮(または上記の組み合わせ)であってもよい。ある特定の実施形態では、ジカウイルスの伝染(例えば、ジカウイルスに感染した対象からまだ感染していない対象へ)が低減される。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を上述の第1の対象に投与することを含む、第1の対象から第2の対象へのジカウイルス感染の伝染を低減または予防するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、そのような低減または予防は、少なくとも部分的に、第1の対象の体液中のジカウイルスのウイルス力価を低下させることによって得られる。ある特定の実施形態では、第1の対象は、男性である。ある特定の実施形態では、第1の対象は、女性である。ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の家族または知人である。ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の性交渉の相手である。ある特定の実施形態では、第2の対象は、乳児または子供(例えば、16歳未満の対象)である。ある特定の実施形態では、第2の対象は、出生前のヒト(例えば、胚または胎児であるが、出生前のヒトは、受精後の任意の発育段階にあってもよい)である。ある特定の実施形態では、第1の対象は女性であり、第2の対象は乳児、子供、または出生前のヒトである。
【0059】
ある特定の実施形態では、ジカウイルス感染は、第1の対象の体液の第2の対象への伝達を通して、第1の対象から第2の対象に伝染される。そのような体液としては、血液、血漿、血清、羊水、母乳、精液、精漿、膣分泌物、脳脊髄液、尿、または唾液が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の家族または知人であり、ジカウイルスは、第1の対象及び第2の対象の相互作用を通して第2の対象に伝染される。ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の性交渉の相手であり、ジカウイルスは、精液、精漿、膣分泌物、血液、もしくは唾液(または上記の組み合わせ)などであるが、これらに限定されない体液によって、第1の対象から第2の対象に伝染される。ある特定の実施形態では、第1の対象は女性であり、第2の対象は乳児または子供であり、ジカウイルスは、母乳、血液、もしくは唾液(または上記のの組み合わせ)体液などであるが、これらに限定されない体液によって、第1の対象から第2の対象に伝染される。ある特定の実施形態では、第1の対象は女性であり、第2の対象は出生前のヒト(例えば、胚または胎児であるが、出生前のヒトは、受精後の任意の発育段階にあってもよい)、ジカウイルスは、羊水などであるが、これに限定されない体液によって、第1の対象から第2の対象に伝染される。
【0061】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、第1の対象がジカウイルス感染に感染する前に、第1の対象がジカウイルス感染に感染した後に、または第1の対象がジカウイルスに感染した後かつジカウイルス感染が検出され得る前に、第1の対象に投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を上述の第2の対象に投与することを含む、第1の対象から第2の対象への疑わしいまたは実際のジカウイルス感染の伝染を低減または予防するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、そのような低減または予防は、少なくとも部分的に、第2の対象におけるジカウイルス感染を予防または抑制することによって得られる。ある特定の実施形態では、そのような低減または予防は、少なくとも部分的に、第2の対象におけるジカウイルス感染が、そのような感染が起きた場合に、第2の対象によってさらに拡散される可能性が低くなるように、第2の対象の体液中のジカウイルスのウイルス力価を低下させることによって得られる。ある特定の実施形態では、そのような低減または予防は、少なくとも部分的に、第2の対象におけるジカウイルス感染が、そのような感染が最初に起きた場合に、それが追加の治療化合物の投与の有無にかかわらず、第2の対象によって生理学的に(例えば、免疫系によって)排除され得るように、第2の対象の体液中のジカウイルスのウイルス力価を低下させることによって得られる。ある特定の実施形態では、第1の対象は、男性である。ある特定の実施形態では、第1の対象は、ジカウイルス感染を有する疑いがある(例えば、第1の対象は、ジカウイルス感染が記録されている地域を旅行した可能性がある)。したがって、ある特定の実施形態では、ジカウイルス感染は、疑わしいジカウイルス感染である。ある特定の実施形態では、第1の対象は、ジカウイルス感染(その時点の現在の診断方法によって検出することができないジカウイルス感染、及び活性であり、かつ現在の診断方法によって検出され得るジカウイルス感染を含む)を有する。したがって、ある特定の実施形態では、ジカウイルス感染は、実際のジカウイルス感染である。ある特定の実施形態では、第1の対象は、女性である。ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の家族または知人である。ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の性交渉の相手である。ある特定の実施形態では、第2の対象は、乳児または子供(例えば、16歳未満の対象)である。ある特定の実施形態では、第1の対象は女性であり、第2の対象は乳児または子供である。
【0063】
ある特定の実施形態では、ジカウイルス感染は、第1の対象の体液の第2の対象への伝達を通して、第1の対象から第2の対象に伝染される。そのような体液としては、血液、血漿、血清、羊水、母乳、精液、精漿、膣分泌物、脳脊髄液、尿、または唾液が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の性交渉の相手であり、ジカウイルスは、精液、精漿、膣分泌物、血液、もしくは唾液(または上記の組み合わせ)などであるが、これらに限定されない体液によって、第1の対象から第2の対象に伝染される。ある特定の実施形態では、第1の対象は女性であり、第2の対象は乳児または子供であり、ジカウイルスは、母乳、血液、もしくは唾液(または上記のの組み合わせ)体液などであるが、これらに限定されない体液によって、第1の対象から第2の対象に伝染される。ある特定の実施形態では、第2の対象は、第1の対象の家族または知人であり、ジカウイルスは、第1の対象及び第2の対象の相互作用を通して第2の対象に伝染される。
【0065】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、第1の対象がジカウイルス感染に感染する前に、第1の対象がジカウイルス感染に感染した後に、または第1の対象がジカウイルスに感染した後かつジカウイルス感染が検出され得る前に、第2の対象に投与される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を上述の対象に投与することを含む、妊婦から出生前のヒトへのジカウイルス感染の伝染を低減または予防するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、そのような低減または予防は、少なくとも部分的に、女性の体液中のジカウイルスのウイルス力価を低下させることによって得られる。ある特定の実施形態では、出生前のヒトは、胚または胎児である(しかしながら、出生前のヒトは、受精後の任意の発育段階にあってもよい)。
【0067】
ある特定の実施形態では、ジカウイルスは、羊水、血液、血漿、または血清などであるが、これらに限定されない体液によって妊婦から出生前のヒトに伝染される。
【0068】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、妊婦がジカウイルス感染に感染する前に、妊婦がジカウイルス感染に感染した後に、または妊婦がジカウイルスに感染した後かつジカウイルス感染が検出され得る前に、妊婦に投与される。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、受精前、受精後及び胚形成前、または胚形成後に、妊婦に投与される。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、ジカウイルス感染を発症するリスクがある対象を治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、そのような治療は、少なくとも部分的に、対象におけるジカウイルス感染を治療、予防、または抑制することによって得られる。ある特定の実施形態では、そのような治療は、少なくとも部分的に、対象におけるジカウイルス感染が、そのような感染が最初に起きた場合に、対象によってさらに拡散される可能性が低くなるように、対象の体液中のジカウイルスのウイルス力価を低下させることによって得られる。ある特定の実施形態では、そのような治療は、少なくとも部分的に、対象におけるジカウイルス感染が、そのような感染が最初に起きた場合に、それが追加の治療化合物の投与の有無にかかわらず、対象によって生理学的に(例えば、免疫系によって)排除され得るように、対象の体液中のジカウイルスのウイルス力価を低下させることによって得られる。ある特定の実施形態では、対象は、男性である。ある特定の実施形態では、対象は、女性である。ある特定の実施形態では、対象は、ジカウイルス感染が記録されている地域を旅行した結果としてリスクがある。ある特定の実施形態では、対象は、ジカウイルス感染が記録されている地域を旅行した人と接触した結果としてリスクがある。ある特定の実施形態では、対象は、ジカウイルス感染(検出できないジカウイルス感染を含む)を有するヒトと接触した結果としてリスクがある。ある特定の実施形態では、対象は、ジカウイルス感染を発症するリスクがある(例えば、ジカウイルス感染が記録されている地域を旅行した結果として)人と接触した結果としてリスクがある。ある特定の実施形態では、対象は、ジカウイルス感染を有するか、またはジカウイルス感染を有するリスクがある人の家族または知人である。ある特定の実施形態では、対象は、ジカウイルス感染を有するか、またはジカウイルス感染を有するリスクがある人の性交渉の相手である。ある特定の実施形態では、対象は、ジカウイルス感染を有するか、またはジカウイルス感染を有するリスクがある介護者または親を有する、乳児または子供(例えば、16歳未満の対象)である。
【0070】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、対象がジカウイルス感染に感染する前に対象に投与される。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、対象がジカウイルス感染に罹患するリスクにさらされる前に対象に投与される。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、対象がジカウイルス感染に罹患するリスクにさらされた後に対象に投与される。
【0071】
いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、ジカウイルス及び1つ以上のさらなるウイルスによる感染を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、さらなるウイルス感染は、retroviridae科、adenoviridae科、orthomyxoviridae科、paramyxoviridae科、arenaviridae科、bunyaviridae科、flaviviridae科、filoviridae科、togaviridae科、picornaviridae科、poxviridae科、hepadnaviridae科、hepviridae科、及びcoronaviridae科のウイルスから選択される感染である。これらの科の内の特定のウイルスとしては、アデノウイルス、ライノウイルス、A型、B型、C型、D型、及びE型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス、ポリオ、麻疹、エボラ、コクサッキー、西ナイル、天然痘、黄熱、デング熱、インフルエンザ(ヒト、トリ、及びブタを含む)、ラッサ、リンパ球性脈絡髄膜炎、フニン、マチュポ、グアナリト、ハンタウイルス、リフトバレー熱、ラクロス、カリフォルニア脳炎、クリミア・コンゴ、マールブルク、日本脳炎、キャサヌール森林病、ベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、パラインフルエンザ、呼吸器合胞体、Punta Toro、Tacaribe、及びpachindeが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、さらなるウイルスは、デング熱、チクングニア、及び黄熱などであるがこれらに限定されない、Aedes属の蚊によって伝染されるウイルスである。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、以下のステップを含む:I)必要としている対象を任意に識別するステップ、(ii)本発明の化合物または本発明の化合物を含む薬学的組成物を任意に提供するステップ、及び(iii)上述の化合物または組成物を有効量で投与するステップ。そのような投与は、ジカウイルスRNAポリメラーゼを阻害するために、ジカウイルス感染に罹患しているか、もしくはジカウイルス感染のリスクがあると疑われる対象を治療するために、対象におけるジカウイルス感染を予防するために、対象におけるジカウイルス感染を抑制するために、またはジカウイルス感染に関連する疾病もしくは病態を治療、抑制、もしくは予防するために、かつ/または対象の体液、組織、もしくは細胞中のジカウイルスのウイルス力価を低下させるために使用され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、有効量(本明細書に記載されるような)で本発明の化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、1日あたりの有効量(本明細書に記載されるような)で本発明の化合物を投与することを含む。好適な有効量は、本明細書においてより詳細に記載される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、治療過程(用量が有効量の本発明の化合物を含有し得る)中に、単回用量の本発明の化合物を投与することを含む。そのような用量は、単回投与(1日1回)で投与され得るか、またはそのような用量は、同じ日に複数回投与で投与されてもよい(1日2回または1日3回などであるが、これらに限定されない)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、治療過程(用量が有効量の本発明の化合物を含有し得る)中に、2回分以上の用量の本発明の化合物を投与することを含む。各用量は、単回投与(1日1回)で投与され得るか、またはそのような用量は、同じ日に複数回投与で投与されてもよい(1日2回または1日3回などであるが、これらに限定されない)。治療過程中に投与される各用量における本発明の化合物の量は、同じである必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、治療過程は、少なくとも1つの負荷用量及び少なくとも1つの維持用量を投与することを含み、負荷用量は、維持用量と比較してより多くの量の本発明の化合物を含有する(例えば、2~10倍高いが、これに限定されない)。投与は、本明細書においてより詳細に記載される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかにおける本発明の化合物を含む薬学的組成物及び/または薬剤の使用を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態では、治療有効性は、ウイルスRNAポリメラーゼの阻害に起因する。いくつかの実施形態では、治療有効性は、1つ以上のウイルス科からのウイルスポリメラーゼを阻害することに起因する。
【0077】
いくつかの実施形態では、方法は、インビボで実施される。いくつかの実施形態では、方法は、インビトロで実施される。いくつかの実施形態では、方法は、エクスビボで実施される。
【0078】
いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、トリである。いくつかの実施形態では、対象は、イノシシ属の動物またはブタである。いくつかの実施形態では、対象は、男性の性別のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、女性の性別のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、妊娠している女性の性別のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、出産の可能性がある女性の性別のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、生理学的に子供の父親になることが可能である男性の性別のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、性的に活発である。いくつかの実施形態では、対象は、乳児または子供である。いくつかの実施形態では、対象は、出生前のヒト(例えば、胚または胎児であるが、出生後のヒトは、受精後の任意の発育段階にあってもよい)である。
【0079】
いくつかの実施形態では、体液は、血液である。いくつかの実施形態では、体液は、血漿である。いくつかの実施形態では、体液は、血清である。いくつかの実施形態では、体液は、精液または精漿である。いくつかの実施形態では、体液は、膣分泌物である。いくつかの実施形態では、体液は、脳脊髄液である。いくつかの実施形態では、体液は、尿である。いくつかの実施形態では、体液は、唾液である。いくつかの実施形態では、体液は、母乳である。いくつかの実施形態では、体液は、羊水である。
【0080】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、または経口投与される。
【0081】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、静脈内投与される。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、腹腔内投与される。
【0083】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、非経口投与される。
【0084】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、筋肉内投与される。
【0085】
いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、経口投与される。
【0086】
ある特定の実施形態では、方法は、有効量の本発明の化合物、または本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物などの組成物を、対象に投与することを含む。
【0087】
本発明の化合物は、塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、または複合体などの異なる形態で調製され得、本発明は、化合物の全ての変異型を包含する方法を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本発明の化合物の薬学的に許容される塩を含む。本発明の化合物は、その薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩、及び複合体として製剤化され得る。そのような塩の調製は、その生理学的効果を妨げることなく薬剤の物理的特性を変化させることによって、薬理学的使用を容易にすることができる。物理的特性の有用な変化の例としては、経粘膜投与を容易にするための融点を低下、及びより高い濃度の薬物を投与することを容易にするための溶解度の増加が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書に記載の方法の好ましい実施形態では、本発明の化合物は、化合物Aである。
【0090】
本発明の方法は、例えば、細胞または組織が単離または培養された、非細胞インビトロアッセイ系及び動物(例えば、両生類、トリ、サカナ、哺乳動物、有袋動物、ヒト、家畜、例えば、ネコ、イヌ、サル、マウス、もしくはラット、またはウシもしくはブタなどであるが、これらに限定されない商業用動物)を含む、インビトロ系及びインビボ系の両方で実施され得る。
【0091】
薬学的組成物
本開示の化合物は、インビボ投与に好適な生物学的に適合する形態で対象に投与するための薬学的組成物に製剤化され得る。本開示は、薬学的に許容される担体との混合物中で本開示の化合物を含む薬学的組成物を提供する。薬学的に許容される担体は、組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害ではないという意味で許容されなければならない。本明細書で用いられる薬学的に許容される担体は、薬学的製剤用の材料として使用され、かつ鎮痛剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、乳化剤、賦形剤、増量剤、流動促進剤、可溶化剤、安定剤、懸濁化剤、等張化剤、ビヒクル、及び増粘剤として組み込まれる、様々な有機または無機材料から選択されてもよい。酸化防止剤、芳香族化合物、着色剤、風味改良剤、防腐剤、及び甘味料などの薬学的添加剤もまた添加され得る。許容される薬学的担体の例としては、特に、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、グリセリン、アラビアゴム、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、粉末、生理食塩水、アルギン酸ナトリウム、スクロース、デンプン、タルク、及び水が挙げられる。いくつかの実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、またはU.S.Pharmacopeiaまたは動物、特にヒトにおける使用の関する他の一般に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0092】
多くの場合、薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用条件下で非毒性である。薬学的に許容される担体の例としては、例えば、水または生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリマー、炭水化物及びその誘導体、油、脂肪酸、またはアルコールが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、担体は、生理食塩水または水である。いくつかの実施形態では、担体は、生理食塩水である。いくつかの実施形態では、担体は、水である。
【0093】
洗剤などであるが、これに限定されない界面活性剤もまた、製剤での使用に好適である。界面活性剤の特定の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル及びビニルピロリドンのコポリマー、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、マンニトール、グリセロール、ソルビトールもしくはソルビタンのポリオキシエチレン化エステル;レシチンもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム;またはアクリル酸誘導体、例えば、メタクリレート及び他のもの、アニオン性界面活性剤、例えば、アルカリステアリン酸塩、特に、ステアリン酸ナトリウム、カリウム、もしくはアンモニウム;ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸トリエタノールアミン;アルキル硫酸塩、特に、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sufate)及びセチル硫酸ナトリウム;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはジオクチルスルホコハク酸ナトリウム;または脂肪酸、特に、ヤシ油由来のもの、カチオン性界面活性剤、例えば、式N+R´R´´R´´´R´´´´Y-の水溶性四級アンモニウム塩(式中、Rラジカルは、同一のまたは異なる任意にヒドロキシル化された炭化水素ラジカルであり、Y-は、強酸のアニオン、例えば、ハロゲン化物、硫酸、及びスルホン酸アニオンであり、臭化セチルトリメチルアンモニウムは、使用され得るカチオン性界面活性剤の1つである)、式N+R´R´´R´´´のアミン塩(式中、R基は、同一のまたは異なる任意にヒドロキシル化された炭化水素ラジカルであり、オクタデシルアミン塩酸塩は、使用され得るカチオン性界面活性剤の1つである)、非イオン界面活性剤、例えば、ソルビタンの任意にポリオキシエチレン化されたエステル、特に、;ポリソルベート80、もしくはポリオキシエチレン化アルキルエーテル;ポリエチレングリコールステアレート、ヒマシ油のポリオキシエチレン化誘導体、ポリグリセロールエステル、ポリオキシエチレン化脂肪アルコール、ポリオキシエチレン化脂肪酸もしくはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、両性界面活性剤、例えば、ベタインの置換ラウリル化合物が挙げられる。
【0094】
対象に投与される場合、本開示の化合物及び薬学的に許容される担体は、滅菌であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の化合物が静脈内投与される場合、水が担体である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物Iが静脈内投与される場合、担体は、生理食塩水である。デキストロース及びグリセロール水溶液は、特に注射液のための液体担体として用いられ得る。また、好適な薬学的担体は、デンプン、グルコース、ラクトース、サッカロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、ポリエチレングリコール300、水、エタノール、ポリソルベート20などの賦形剤も含んでもよい。本組成物はまた、必要に応じて、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。
【0095】
本開示の薬学的製剤は、薬学分野で周知の方法によって調製される。例えば、本開示の化合物は、懸濁液または溶液として担体及び/または希釈剤と会合される。任意に、1つ以上の副成分(例えば、緩衝剤、香味剤、界面活性剤など)も添加される。担体の選択は、化合物の溶解度及び化学的性質、選択された投与経路、ならびに標準的な薬務によって決定される。いくつかの実施形態では、製剤は、本開示の化合物及び水を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、本開示の化合物及び生理食塩水を含む。
【0096】
加えて、本開示の化合物は、経口投与、舌下または口腔投与、非経口投与、経皮投与、吸入、または鼻腔内、経膣、経直腸、及び筋肉内が挙げられるが、これらに限定されない既知の手技によって、ヒトまたは動物対象などの対象に投与される。本開示の化合物は、筋膜上、嚢内、頭蓋内、皮内、くも膜下腔、筋肉内、眼窩内、腹腔内、髄腔内、胸骨内、血管内、静脈内、実質内、皮下もしくは舌下注射によって、またはカテーテルによって、非経口的に投与され得る。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、筋肉内送達によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、腹腔内送達によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、静脈内送達によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、経口投与される。ある特定の実施形態では、本開示の化合物は、ボーラス投与、例えば、IVまたはIMボーラス投与によって投与される。
【0097】
経口投与のために、本開示の化合物の製剤は、カプセル、錠剤、粉末、顆粒、または懸濁液もしくは溶液として提示されてもよい。カプセル製剤は、ゼラチン、軟質ゲル、または固体であってもよい。錠剤及びカプセル製剤は、1つ以上のアジュバント、結合剤、希釈剤、崩壊剤、賦形剤、充填剤、または潤滑剤をさらに含有してもよく、それらの各々は、当該分野で既知である。そのようなものの例としては、炭水化物、例えば、ラクトースまたはサッカロース、無水二塩基性リン酸カルシウム、コーンスターチ、マンニトール、キシリトール、セルロースまたはその誘導体、微結晶セルロース、ゼラチン、ステアリン酸塩、二酸化ケイ素、タルク、グリコール酸ナトリウムデンプン、アカシアゴム、香味剤、防腐剤、緩衝剤、崩壊剤、及び着色剤が挙げられる。経口投与される組成物は、薬学的に許容される調製物を提供するために、甘味剤、例えば、フルクトース、アスパルテーム、またはサッカリン;香味剤、例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー;着色剤;及び防腐剤などであるが、これらに限定されない、1つ以上の任意の薬剤を含有してもよい。
【0098】
非経口投与(すなわち、消化管以外の経路を通る注射による投与)のために、本開示の化合物は、対象の血液と等張である滅菌水溶液と組み合わされてもよい。そのような製剤は、塩化ナトリウム、グリシンなどの生理学的に適合する物質を含有する水に固体活性成分を溶解し、水溶液を生成するために生理学的条件に適合する緩衝pHを有し、次いで上述の溶液を滅菌の状態にすることによって調製される。製剤は、密封されたアンプルまたはバイアルなどの単位用量または複数用量の容器で提示され得る。製剤は、筋膜上、嚢内、頭蓋内、皮内、くも膜下腔、筋肉内、眼窩内、腹腔内、髄腔内、胸骨内、血管内、静脈内、実質内、皮下、もしくは舌下、またはカテーテルによるものが挙げられるが、これらに限定されない、任意の注射の方式によって対象の体内に送達されてもよい。
【0099】
非経口投与は、水性及び非水性の溶液を含む。その例としては、例えば、水、生理食塩水、糖または糖アルコール水溶液、アルコール(エチルアルコール、イソプロパノール、グリコールなど)、エーテル、油、グリセリド、脂肪酸、及び脂肪酸エステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、水が非経口投与のために使用される。いくつかの実施形態では、生理食塩水が非経口投与のために使用される。非経口注射のための油としては、動物油、植物油、合成油、または石油系油が挙げられる。溶液のための糖の例としては、スクロース、ラクトース、デキストロース、マンノースなどが挙げられる。油の例としては、鉱油、ワセリン、大豆、トウモロコシ、綿実、ピーナッツなどが挙げられる。脂肪酸及びエステルの例としては、オレイン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、及びそれらのエステルが挙げられる。
【0100】
経皮投与のために、本開示の化合物は、皮膚浸透助剤、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、イソプロパノール、エタノール、オレイン酸、N-メチルピロリドンなどと組み合わせられ、それらは、本開示の化合物への皮膚の浸透性を高め、化合物が皮膚を通って血流に浸透することを可能にする。化合物/増強剤組成物はまた、ゲル形態の組成物を提供するために、ポリマー物質、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン/ビニルアセテート、ポリビニルピロリドンとさらに組み合わされてもよく、それらは、塩化メチレンなどの溶媒に溶解され、所望の粘度まで蒸発させられ、次いで裏材に塗布されてパッチを提供する。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、錠剤、カプセル,または単回用量バイアルなどの単位用量形態である。好適な単位用量、すなわち有効量は、選択された化合物の投与が指示される条件の各々に対して適切に設計された臨床試験中に決定され得、当然のことながら、所望の臨床エンドポイントに応じて異なる。
【0102】
本開示はまた、対象において、ウイルス性疾患などの疾患を治療及び予防するための製品を提供する。製品は、任意に本明細書に記載の少なくとも1つの追加の抗ウイルス化合物をさらに含有する、本開示の化合物または本開示の化合物を含む薬学的組成物を含む。製品は、薬学的組成物が治療及び/または予防することが可能である様々な障害に関する表示を伴って包装されてもよい。例えば、製品は、ある特定の障害を治療または予防することが可能である本開示の化合物の単位用量、及びその単位用量がある特定の障害、例えば、ジカウイルス感染を治療または予防することが可能であるという表示を含んでもよい。
【0103】
投与量と投与
本開示の方法に従って、本開示の化合物は、有効量で対象に投与される(または対象の細胞と接触させられる)。この量は、インビボで確立された滴定曲線の分析ならびに本明細書に開示の方法及びアッセイを含む既知の手順に基づき、当業者によって容易に決定される。いくつかの実施形態では、有効量は、対象におけるジカウイルスのレベルを低下させ、かつ/または対象におけるウイルス粒子のレベルの増加を制限もしくは防止する。いくつかの実施形態では、有効量は、対象の体液中のジカウイルスのウイルス力価を低下させる。いくつかの実施形態では、有効量は、ウイルスRNAポリメラーゼなどの対象におけるジカウイルスのウイルスポリメラーゼの活性を阻害する。
【0104】
ある特定の実施形態では、本開示の化合物の有効量は、約0.01mg/kg/日~約500mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約400mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約300mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約200mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約50mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約25mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約20mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約15mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約10mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約5mg/kg/日の範囲である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.01mg/kg/日~約2.5mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約5mg/kg/日~約100mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約5mg/kg/日~約50mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約5mg/kg/日~約30mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約5mg/kg/日~約10mg/kg/日の範囲である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物の有効量は、約5mg/kg/日~約200mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約10mg/kg/日~約195mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約15mg/kg/日~約190mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約20mg/kg/日~約185mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約25mg/kg/日~約180mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約30mg/kg/日~約175mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約35mg/kg/日~約170mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約40mg/kg/日~約165mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約45mg/kg/日~約160mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約50mg/kg/日~約155mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約55mg/kg/日~約150mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約60mg/kg/日~約145mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約65mg/kg/日~約140mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約70mg/kg/日~約135mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約75mg/kg/日~約130mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約80mg/kg/日~約125mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約85mg/kg/日~約120mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約90mg/kg/日~約115mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約95mg/kg/日~約110mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約100mg/kg/日~約105mg/kg/日の範囲である。
【0106】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物の有効量は、約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.5mg/kg/日~約30mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約1mg/kg/日~約25mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約2mg/kg/日~約20mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約3mg/kg/日~約15mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約4mg/kg/日~約10mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約20mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約15mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約5mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約6.5mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約9mg/kg/日の範囲である。いくつかの実施形態では、有効量は、約1mg/kg/日~約14mg/kg/日の範囲である。
【0107】
いくつかの実施形態では、100mg/kg/日未満の本開示の化合物が投与される。いくつかの実施形態では、90mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、80mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、70mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、60mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、50mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、40mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、30mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、700mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、20mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、10mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、5mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、2.5mg/kg/日未満が投与される。いくつかの実施形態では、1mg/kg/日未満が投与される。上記の実施形態では、投与される本開示の化合物の量は、0.01mg/kg/日よりも多い。
【0108】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物の有効量は、約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約40mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約30mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約20mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約10mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg/日~約5mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、有効量は、2.5、5、または10mg/kg/日である。
【0109】
いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に100ng/mLを超える本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な本開示の化合物の量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に500ng/mLを超える本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に1000ng/mLを超える本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。
【0110】
いくつかの実施形態では、有効量は、投与の12~24時間後に50ng/mLを超える本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な本開示の化合物の量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の12~24時間後に75ng/mLを超える本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の12~24時間後に100ng/mLを超える本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の12~24時間後に200ng/mLを超える本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。
【0111】
いくつかの実施形態では、有効量は、1~20mg/kg/日の本開示の化合物の量の少なくとも4日間の投与後に、25ng/mLを超える本開示の化合物の最小血漿レベルを達成するのに十分な本開示の化合物の量である。いくつかの実施形態では、有効量は、1~20mg/kg/日の本開示の化合物の量の少なくとも4日間の投与後に、50ng/mLを超える本開示の化合物の最小血漿レベルを達成するのに十分な本開示の化合物の量である。いくつかの実施形態では、有効量は、1~20mg/kg/日の本開示の化合物の量の少なくとも4日間の投与後に、75ng/mLを超える本開示の化合物の最小血漿レベルを達成するのに十分な本開示の化合物の量である。いくつかの実施形態では、有効量は、1~20mg/kg/日の本開示の化合物の量の少なくとも4日間の投与後に、100ng/mLを超える本開示の化合物の最小血漿レベルを達成するのに十分な本開示の化合物の量である。
【0112】
いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約0.5μg/mL~15μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な本開示の化合物の量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約1μg/mL~20μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約2μg/mL~25μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約3μg/mL~30μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約4μg/mL~40μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約5μg/mL~50μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約5μg/mL~10μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約10μg/mL~15μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約15μg/mL~20μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量の範囲は、投与の1~4時間後に約20μg/mL~25μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約25μg/mL~30μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約30μg/mL~40μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約40μg/mL~50μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約50μg/mL~60μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約60μg/mL~70μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約70μg/mL~80μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約1μg/mL~50μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約1μg/mL~40μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約1μg/mL~30μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、投与の1~4時間後に約1μg/mL~20μg/mLの範囲の本開示の化合物の血漿レベルを達成するのに十分な量である。
【0113】
上記の実施形態のいずれにおいても、本開示の化合物は、化合物Aであり得る。上記の実施形態のいずれにおいても、本開示の化合物は、薬学的に許容される塩としての化合物Aであり得る。上記の実施形態のいずれにおいても、本開示の化合物は、薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、または上記の組み合わせとしての化合物Aであり得る。
【0114】
ある特定の実施形態では、有効量は、治療過程(用量が1日に投与される本発明の化合物の量を指す)に従って1回分以上の用量で投与される。ある特定の実施形態では、用量は、q.d.(1日当たり1回/投与)で投与される。ある特定の実施形態では、用量は、b.i.d.(1日当たり2回/投与。例えば、1日2回の投与で有効量の2分の1)で投与される。ある特定の実施形態では、用量は、t.i.d.(1日当たり3回/投与。例えば、1日2回の投与で有効量の3分の1)で投与される。用量が1日当たり複数回の投与に分割される場合、用量は、等しく分割されてもよく、または各投与において不均等に分割されてもよい。任意の所与の用量は、単一投与形態または2回分以上の投与形態(例えば、錠剤)で送達されてもよい。
【0115】
ある特定の実施形態では、1回分の用量の本開示の化合物のみが治療過程中に投与され、さらなる用量は投与されない。したがって、本明細書に記載の方法において、方法は、治療の全過程中に有効量の本開示の化合物の単回用量の投与を含み得る。単回用量が治療の全過程中に投与される場合、治療経過は、4週間未満、例えば、1週間、2週間、または3週間である。単回用量与が治療の全過程中に投与される場合、用量は、1日1回投与されてもよく、または用量は、投与日の間に複数回投与に分割されてもよい(例えば、1日2回または1日3回)。用量が1日当たり複数回の投与に分割される場合、用量は、等しく分割されてもよく、または各投与において不均等に分割されてもよい。ある特定の実施形態では、用量は、IM投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、IV投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、非経口投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、経口投与によって送達される。用量は、単一投与形態または2回分以上の投与形態(例えば、錠剤)で送達されてもよい。
【0116】
ある特定の実施形態では、2回分以上の用量の本開示の化合物が治療過程中に投与される。したがって、本明細書に記載の方法において、方法は、治療過程中に有効量の本開示の化合物の複数回用量の投与を含み得る。ある特定の実施形態では、治療過程は、2日間~数年間の範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、治療過程は、2日間~数ヶ月の範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、治療過程は、2日間~4週間の範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、治療過程は、2日間~3週間の範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、治療過程は、2日間~2週間の範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、治療過程は、2日間~1週間の範囲であってもよい。ある特定の実施形態では、有効量の本開示の化合物は、治療過程中に毎日送達されてもよい。ある特定の実施形態では、有効量の本開示の化合物は、治療過程中に毎日投与されない(例えば、有効量は、治療過程中に1日おきまたは3日毎に投与され得る)。さらに、有効量は、治療過程中の各投与に対して同じである必要はない。一実施形態では、治療過程は、少なくとも1つの用量を負荷用量として、かつ少なくとも1つの用量を維持用量として投与することを含んでもよく、負荷用量は、維持用量と比較してより多くの量の本発明の化合物を含有する(例えば、2~10倍高いが、これに限定されない)。一実施形態では、高用量が、単回投与または複数回投与のいずれかのために最初に投与され(負荷用量)、続いて、より低い用量(維持用量)が残りの治療過程を通して投与される。例えば、10日間続く治療過程に関して、200mg/kg/日の高用量が投与初日に投与されてもよく、続いて、より低い用量の50mg/kg/日が残りの9日間の治療過程中に投与される。別の例として、10日間続く治療過程に関して、100mg/kg/日の高用量が投与初日に投与されてもよく、続いて、より低い用量の25mg/kg/日が残りの9日間の治療過程中に投与される。別の例として、25日間続く治療過程に関して、100mg/kg/日の高用量が投与の最初の3日間投与されてもよく、続いて、より低い用量の25mg/kg/日が残りの22日間の治療過程中に投与される。任意の所与の投与に関して、用量は、1日1回投与されてもよく、または用量は、投与日の間に複数回投与に分割されてもよい(例えば、1日2回または1日3回)。用量が1日当たり複数回の投与に分割される場合、用量は、等しく分割されてもよく、または各投与において不均等に分割されてもよい。例えば、10日間続く治療過程に関して、200mg/kg/日の高用量が投与初日に投与されてもよく、用量は1日2回投与され(1日のうちに100mg/kgの2回の別々の投与で)、続いて、より低い用量の50mg/kg/日が残りの9日間の治療過程中に投与され、用量は1日2回投与される(各日のうちに25.0mg/kgの2回の別々の投与で)。例えば、10日間続く治療過程に関して、100mg/kg/日の高用量が投与初日に投与されてもよく、用量は1日2回投与され(1日のうちに50mg/kgの2回の別々の投与で)、続いて、より低い用量の25mg/kg/日が残りの9日間の治療過程中に投与され、用量は1日2回投与される(各日のうちに12.5mg/kgの2回の別々の投与で)。ある特定の実施形態では、用量は、IM投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、IV投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、非経口投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、経口投与によって送達される。用量は、単一投与形態または2回分以上の投与形態(例えば、錠剤)で送達されてもよい。
【0117】
ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した後のいずれかの時点で投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した後かつ活性なジカウイルス感染が検出され得る前(すなわち、臨床検査診断または他の方法によって)のいずれかの時点で投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象が活性なジカウイルス感染を有する間(すなわち、臨床検査診断または他の方法によって)のいずれかの時点で投与する。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した後のいずれかの時点、かつジカウイルス感染が活性である(すなわち、ジカウイルスが臨床検査診断または他の方法によって検出され得る)時点で投与される。活性なジカウイルス感染は、血液、血漿または血清、母乳、羊水、精液、精漿、膣分泌物、脳脊髄液、尿、唾液などが挙げられるが、これらに限定されない対象の体液または組織において、ならびに組織(脳ならびに男性及び女性の両方の生殖組織を含む)において検出され得る。ある特定の実施形態では、体液は、血液である。ある特定の実施形態では、体液は、血液以外である。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した1日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した2日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した3日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した4日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した5日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した6日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した7日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した8日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した9日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した10日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した20日後に投与される。ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染した30日後以降に投与される。ジカウイルスの感染は、医療専門家による標準的な臨床試験及び/または診断で確認され得る。ある特定の実施形態では、用量は、IM投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、IV投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、非経口投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、経口投与によって送達される。
【0118】
ある特定の実施形態では、用量は、対象がジカウイルスに感染する前に投与される(すなわち、予防的投与)。例えば、対象が、ジカウイルス感染が報告されている地域を旅行することを計画しているか、またはジカウイルスに曝露される可能性があると信じている場合、その対象は、その地域への旅行前に本開示の化合物を用いた治療過程を受けてもよい。さらに、対象は、非ヒトベクター源(例えば、Aedes属の蚊)由来のジカウイルス感染に最初に曝露されていない人物であってもよい。例えば、ジカウイルスに曝露されたか、またはジカウイルスに曝露されるリスクがある(例えば、ジカウイルス感染が報告されている地域に旅行することによって)人物の配偶者またはパートナーは、同様に本発明の化合物を用いた治療過程を受けてもよい。
【0119】
一実施形態では、そのような治療過程は、本明細書に記載の治療過程中に投与される1回分の用量の本開示の化合物であり得る。一例として、対象は、その地域への旅行前、その地域の到着時、またはその地域に滞在中、1回分の用量を投与され得る。ある特定の実施形態では、用量は、IM投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、IV投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、非経口投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、経口投与によって送達される。
【0120】
一実施形態では、そのような治療過程は、本明細書に記載の治療過程中に投与される2回分以上の用量の本開示の化合物であり得る。一例として、対象は、その地域への旅行前に治療過程に従ってある用量の本開示の化合物を任意に投与され(その地域への旅行の1~7日前、1日当たり1回の用量などであるが、これらに限定されない)、その地域に滞在中に治療過程に従ってある用量の本開示の化合物を投与され(その地域に滞在中、1日当たり1回の用量などであるが、これらに限定されない)、かつ治療過程に従ってある用量の本開示の化合物を任意に投与されてもよい(その地域への旅行から戻った1~7日後、1日当たり1回の用量などであるが、これらに限定されない)。ある特定の実施形態では、対象は、その地域への旅行前、その地域から戻った時、またはその地域への旅行前及びその地域から戻った時の両方において、ある用量の本開示の化合物を投与される。本開示の化合物のそのような予防的使用は、本開示の化合物を投与される対象を防御するだけでなく、対象が接触する対象(例えば、家族及び同僚)を防御するのにも有益である。ある特定の実施形態では、用量は、IM投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、IV投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、非経口投与によって送達される。ある特定の実施形態では、用量は、経口投与によって送達される。用量は、単一投与形態または2回分以上の投与形態(例えば、錠剤)で送達されてもよい。
【0121】
本明細書の実施形態のいずれにおいても、用量は、本開示の化合物を単独で、または本開示の化合物を薬学的組成物中で含んでもよい。
【0122】
組成物中で用いられる正確な用量はまた、投与経路及び感染または障害の重症度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。いくつかの実施形態では、経口、IM、IV、またはIP投与の有効量は、約5mg/kg/日~約50mg/kg/日、約50mg/kg/日~約80mg/kg/日、約80約150mg/kg/日、約150mg/kg/日~約250mg/kg/日、約250mg/kg/日~約350mg/kg/日、もしくは約350mg/kg/日~約450mg/kg/日(または、体表面積1平方メートル当たりで表される等価用量)である。いくつかの実施形態では、経口、IM、IV、またはIP投与の有効量は、患者の体重または体表面積に対する調節なしで約5~約2000mgである。他の有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から導き出された用量反応曲線から外挿され得る。そのような動物モデル及び系は、当技術分野において周知である。
【0123】
当業者は、本明細書に記載の本開示の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または単なる日常的な実験を使用して確認することができるであろう。そのような同等物は、本開示の範囲内にあるよう意図される。
【0124】
本開示は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0125】
実施例1.マウスジカウイルスマウスモデルの特徴付け
AG129マウスモデルがこの研究で使用され、ジカウイルスのウイルスポリメラーゼ阻害剤の研究においてすでに使用されている。AG129マウスは、α/β(I型)及びγ(II型)インターフェロン受容体の両方を欠いている。AG129マウスは、ジカウイルス感染を受けやすく、結膜炎、神経障害及び疾患、測定可能なウイルス血症、後肢麻痺、及び死亡、ならびに感染の後期における猫背、無気力、及び興奮性を含む疾病の関連兆候を呈する。ジカウイルス感染の結果としての死亡は、一般に、ウイルス攻撃接種の用量に依存して、ウイルス攻撃接種の8日後から20~30日後に起こる。
【0126】
ジカウイルスのマレーシア株(P6-740)をマウスにおいて力価測定し(データは図示せず)、10
3pfu/マウスのウイルス攻撃接種用量を、皮下注射後にAG129マウスにおける100%の死亡率を引き起こすための好適な用量として同定した(
図1A)。この攻撃接種用量を後続の実験で使用した。結膜炎、四肢衰弱/麻痺、興奮性、猫背、及びうつ伏せを含む様々な疾病兆候が、感染したマウスにおいて観察された(
図1B)。感染したマウスは、典型的には1つ以上の症状を呈したが、疾病兆候はマウスによって異なった。体重変化は、死亡直前に急速に低下し(
図1C)、上記の疾病兆候と一致した。
【0127】
様々な組織におけるウイルスRNA蓄積のレベルを、方法の節に記載されているように、感染後の様々な時間におけるqRT-PCRによって決定した。ウイルスRNAレベルがピークに達し、血清、肝臓、腎臓、及び子宮から除去された一方で、ウイルスは、脾臓、脳、及び精巣において比較的高い力価でウイルス接種後(dpi)13日まで持続した(
図1D)。高力価は、5及び7dpiにおいて血清中に存在し、これは、抗ウイルス研究で使用するための生前パラメータとして有用であった。尿中のウイルスRNA力価は散発的であったが、ウイルスは、13dpiになっても検出された(
図1D)。脳内の高い力価は、死亡直前に観察される疾病の神経学的兆候と一致している。神経学的兆候は、活動亢進(混乱時または無作為にケージを迅速かつ非協調的に走り回る)、呼吸努力の増加、振戦、または発作及び猫背を含んだ。
【0128】
実施例2.インビトロ結果
この実験で使用した薬剤は、化合物A(AがNH2であり、BがHCL塩としてのHである、式Iの化合物)及びリバビリンであった。化合物を最大100μg/mLの濃度範囲で投与した。試験の直前にMEM中で化合物を調製した。ウイルス複製の阻害を、細胞変性効果に関する感染細胞の顕微鏡検査、ニュートラルレッド(NR)色素取り込みの増加(比色定量)、及びウイルス収量低下によって判定した。化合物で処置した非感染細胞を細胞傷害性対照のために上記のように分析した。ニュートラルレッド取り込み色素アッセイ及びウイルス収量低下アッセイによって分析されるように、EC50、EC90、及びSI(選択指標)値をVero76、Huh7、及びRD細胞で決定した。結果は、3つ以上の独立した実験から提示される(標準偏差は示されていない)。マレーシア株P6-740、ウガンダ株MR-766、及びプエルトリコ株PRVABC-59の3つのジカウイルス株を、このインビトロ研究で使用した。細胞を標準条件下で維持した。
【0129】
結果を表1に示す。化合物Aは、低いμM範囲内の50%有効濃度(EC
50)値、及び望ましい選択指数(SI)値を伴い、RD、Huh-7、及びVero76細胞株においてジカウイルスのウガンダ、マレーシア、及びプエルトリコの分離株によって誘発されたウイルスCPEを一貫して低減することがわかった(表1)。有効性もまた、アフリカ株、アジア株、及び現在広まっているアメリカ株を代表する、使用した3つのジカウイルス株の間で同様であった。化合物Aの有効性を、VYR試験によって確認した。90%有効濃度(EC
90)値、またはウイルス力価を1log
10低下させるために必要とされる濃度は、わずかに高かったが、EC
50に類似していた(表1)。化合物Aに対するVYR曲線は、試験した3つの異なる細胞株に関して同様であった(
図1E~1G)。
【0130】
リバビリンもまた、細胞培養において活性であり、結果は、どの細胞株が使用されたかによって異なった(表1)。ウイルス収量低下アッセイは、この細胞株に依存する変動性をさらに実証した。リバビリンは、CPE低下アッセイでいくつかの活性が観察されたにもかかわらず、アッセイをVero76細胞で実施した場合(
図1E)、VYR研究において活性ではなかった。これは、リバビリンがYFV及び西ナイルウイルス(WNV)に対してこの細胞株において広域スペクトル活性を有するため、予期せぬことであった。Huh-7及びRDを含むヒト細胞株は、リバビリンの抗ウイルス活性を確認した(それぞれ
図1F及びG)。
【表1】
【0131】
実施例3.マウスジカウイルスモデルにおける化合物A及びリバビリンの有効性。
この実験で使用した薬剤は、化合物A(AがNH2であり、BがHCL塩としてのHである、式Iの化合物)及びリバビリンであった。化合物Aを150mg/kg/日及び300mg/kg/日で、各々を0.05mLの生理食塩水中でIM投与し、リバビリンを、75mg/kg/日及び50mg/kg/日で、各々を0.1mLの生理食塩水の体積中でIP投与した。1日用量のIMまたはIP投与を、各々の1日用量の2分の1の2回のIM/IP注射で達成した。ジカウイルスによる感染の4時間前に、マウスに化合物A及びリバビリンの第1の用量を投与し、感染後8日間処置を継続した。
【0132】
この実験では、ジカウイルス(マレーシア、P 6-740株)を0.1mLの体積の皮下注射を介して、マウス当たり100CCID
50(10
3PFU)の攻撃接種用量で投与した。処置群を以下の表2に示す。
【表2】
【0133】
マウスの生存をウイルス攻撃接種の28日後に監視した。個々のマウスの体重変化は、0日目及び実験の終わりまで1日おきに測定した。結膜炎、猫背、及び四肢衰弱または麻痺を含む疾病の兆候に関して、マウスを毎日観察した。
【0134】
図2は、プラセボ(群9)と比較した、150mg/kg/日(群3)及び300mg/kg/日(群1)の化合物Aを投与したAG129マウスに対する生存率を示す。
図2に示すように、プラセボ群のマウスは、感染後21日目を過ぎて生存しなかったが、300mg/kg/日の化合物Aで処置した8匹中7匹のマウスが感染後28日目まで生存した。生存の増加は、統計学的に有意であった(p<0.0001)。150mg/kg/日の化合物Aで処置したマウスが全て、感染後27日目までに死亡したが、化合物Aは、感染したマウスの死亡率曲線を統計学的に有意に遅延させた(p≦0.001)。さらに、感染の28日後に、群1の生存マウスにおいて罹患は観察されなかった。感染後28日目に、偽処置群(群2及び群6)におけるマウスの罹患または死亡は認められなかった。
【0135】
図3Aは、プラセボ(群9)、化合物A 300mg/kg/1日の偽群(群2)、偽プラセボ(群6)、及び正常対照(群8)と比較した、150mg/kg/日(群3)及び300mg/kg/日(群1)の化合物Aを投与されたAG129マウスの体重変化率を示す。
図3Aに示すように、300mg/kg/日の化合物Aを用いた処置(ジカウイルス感染の群1及び偽対照の群2の両方)は、正常対照(群8)及び偽マウス(群6)に見られるものと同様の体重変化をもたらした。150mg/kg/日の化合物Aを投与されたマウス(群3)は、感染後15日目あたりから軽度の体重減少を示した。プラセボマウス(群9)は、感染後11日目あたりから劇的な体重減少を示した。
図3Bは、感染後7~13日目の間(最小の死亡率がいずれの群についても観察された時点)の体重変化を示す。300mg/kg/日の化合物Aを用いた処置(ジカウイルス感染の群1及び偽対照の群2の両方)ならびに150mg/kg/日の化合物A(群1)は、正常対照(群8)及び偽マウス(群6)に見られるものと同様の体重変化をもたらした。プラセボマウス(群9)は、体重減少を示し、
図3Aに示される結果とよく似ていた。
【0136】
図4は、AG129マウスに存在するジカウイルスの量を示す。相対的なウイルスレベルを、方法の節に記載されているように決定した。300mg/kg/日または150mg/kg/日の化合物Aを用いた処置(それぞれ群1及び群3)は、プラセボ(群9)と比較して統計的に有意にウイルスレベルを低下させた。
【0137】
図5は、プラセボ(群9)と比較した、50mg/kg/日(群7)及び75mg/kg/日(群5)のリバビリンを投与したAG129マウスに対する生存率を示す。
図5に示すように、いずれの用量のリバビリンを用いた処置も、プラセボと比較してAG129マウスの生存を高めず、群5及び7のマウスは、感染後20日目を過ぎて生存しなかった。
【0138】
図6は、プラセボ(群9)、リバビリン75mg/kg/日の偽群(群4)、偽プラセボ(群6)、及び正常対照(群8)と比較した、50mg/kg/日(群7)及び75mg/kg/日(群5)のリバビリンを投与されたAG129マウスの体重変化率を示す。75mg/kg/日及び50mg/kg/日の両方のリバビリンが、プラセボと比較して体重変化率の有意な改善を示さなかった。群6のマウス(リバビリン75mg/kg/日の偽)は、感染後19日目に有意な体重変化を示さなかった。
図5及び6の結果と一致して、50mg/kg/日(群7)及び75mg/kg/日(群5)のリバビリンによる処置は、プラセボと比較して、AG129マウスにおける相対的なウイルスレベルを低下させることができなかった(
図7を参照されたい)。
【0139】
これらの結果は、化合物Aがジカウイルス感染の治療に有効であることを示している。
【0140】
実施例4.再攻撃接種後のマウスジカウイルスモデルにおける化合物Aの有効性
本実施例では、実施例3に記載の研究からの生存マウスを、感染後28日目の再攻撃接種に供した。28日目に、処置群の唯一の生存マウスは、群1(8匹中7匹のマウス)、正常対照(群8、8匹中8匹のマウス)、ならびにウイルス偽処置群(群2、8匹中8匹のマウス及び群6、8匹中8匹のマウス)内に存在した。全ての生存マウス(正常対照を除く)に、第1の攻撃接種と同一のジカウイルスの攻撃接種を投与した。
【0141】
ジカウイルス(マレーシア、P 6-740株)を0.1mLの体積の皮下注射を介して、マウス当たり100CCID50(103pfu)の攻撃接種用量で、群1、2、及び6のマウスに投与した。群1、2、及び6の動物には、再攻撃接種の28日前または後に、化合物Aの追加の用量を投与しなかった。この実験では、群2及び6の偽感染マウスは、免疫系活性化に対する化合物Aの処置の効果を分析するための対照群としての役割を果たした(群2のマウスが、0日目に群1のマウスと同じ300mg/kg/日の用量の化合物Aを投与されたことに留意されたい)。第1の感染後60日目まで、マウスの生存を監視した。処置群は、表2(実施例3)に示すものである。
【0142】
図8Aは、結果を示す。ジカウイルスを用いた第2の攻撃接種後の群1のマウスでは、さらなる死亡は観察されず、ジカウイルスで再攻撃接種されたマウスのうち7匹全てが60日目に生存していた。対照的に、偽処置群(28日目に初めてジカウイルスを用いて攻撃接種された群2及び6)において、51日目を過ぎて(またはこれらの群に対する二次攻撃接種の23日後に)生存は観察されず、それは、化合物Aを用いた処置をしていないジカ感染AG129マウスの100%死亡率を示す以前の結果と一致している。全ての正常対照マウスは、60日目に生存していた。ジカウイルスに対する中和抗体の抗体力価を、最初のジカウイルス攻撃接種で生存した化合物A処置マウス(群1)及び偽感染に供されたマウス(群6)から、28日目のジカウイルスを用いた再攻撃接種直前に採取した血清試料において決定した。結果を
図8Bに示す。群1のマウスは、血清中のジカウイルス中和抗体の高力価(4~5log
10 PRNT
50)を示した。ジカウイルスで最初に感染されなかったマウス(群6)は、再攻撃接種研究において感染前の血清中の検出可能なレベルのジカウイルス中和抗体を示さなかった。集合的に、これらの結果は、化合物Aでの処置が、デノボ抗ウイルス免疫応答の生成を損なわず、またはジカウイルスに対する抗体生成を阻害しないことを示す。
【0143】
これらの結果は、化合物Aが、ジカウイルス感染の治療に有効であり、ジカウイルスによる再感染の場合に有効であることを示す。
【0144】
実施例5.マウスジカウイルスモデルにおける化合物Aの治療有効性
この実験で使用した薬剤は、化合物A(AがNH
2であり、BがHCL塩としてのHである、式Iの化合物)であった。化合物Aを、0.05mLの生理食塩水の体積中300mg/kg/日でIM投与した。1日用量のIM投与を、各々の1日用量の2分の1の2回のIM注射で達成した。マウスに、ジカウイルスによる感染の1、3、5、または7日後に第1の用量の化合物Aを投与し、第1の投与後8日間処置を継続した(n=10のプラセボ及びn=4の正常対照を除き、各条件に対してn=8)。ジカウイルス(マレーシア、P6-740株)を0.1mLの体積の皮下注射を介して、マウス当たり100CCID
50(10
3pfu)の攻撃接種用量で投与した。結果を
図9~11に示す。
【0145】
図9は、プラセボと比較した、1、3、5、及び7dpiにおいて300mg/kg/日の化合物Aで処置したマウスの生存を示す。以前の結果と一致して、プラセボ群のマウスは、感染後18日目を過ぎて生存しなかった。1dpiにおける化合物Aの投与は、プラセボ群と比較して生存の統計的に有意な改善をもたらした(p≦0.001)。3及び5dpiにおいて300mg/kg/日の化合物Aで処置したマウスは、1dpiにおいて投与した化合物Aと比較して死亡率の増加を示したが、化合物Aは、感染マウスの死亡率曲線を遅延させ、統計的に有意に生存を高めた(***に対してp≦0.001及び**に対してp≦0.01)。
【0146】
図10Aは、プラセボ及び正常対照と比較した、1、3、5、及び7dpiにおいて300mg/kg/日を投与したAG129マウスの体重変化率を示す。1dpiにおける300mg/kg/日の化合物Aでの処置が、27dpiまで本質的に何の体重変化も示さなかった一方で、正常対照は、27dpiにおいて体重増加の15%の上昇を示した。3、5、及び7dpiにおける化合物Aでの処置に関して、体重減少率は、化合物Aの投与の遅延と共に増加し、3及び5dpiにおける処置では、体重減少率の統計的に有意な低下を示した。
図10Bは、感染後7~13日目の間(最小の死亡率がいずれの群についても観察された時点)の体重変化を示す。1、3、及び5dpiにおける300mg/kg/日の化合物Aでの処置は、
図10Aの結果と一致して、プラセボ処置マウスと比較して体重減少の統計的に有意な低下をもたらした(p≦0.001)。
図10Cは、感染後5日目のウイルス血症を示す。感染後5日目(各群におけるウイルス投与に対して)の血清中のウイルスRNAレベルは、いずれの処置群においても有意に低下しなかった。
【0147】
図11は、処置による疾病兆候(興奮性、うつ伏せ、麻痺、猫背、結膜炎、または無兆候)の評価を示す。疾病兆候を、各マウスに対して毎日評価し、疾病兆候が最初に観察された日付を記録した。グラフは、各疾病兆候が観察されたマウスの数を表す。各群のマウスの約50%のみが各疾病兆候を呈した。1dpiにおいて投与された化合物Aに関して、6匹のマウスは疾病を示さず、残りの2匹のマウスは、示されるように6つの疾病兆候を示した。感染後の化合物Aの投与時間が増加するにつれて、疾病の兆候を呈さないマウスの数は減少し(3dpiにおいて2匹のマウス、5dpiにおいて1匹のマウス、及び7dpiにおいて0匹のマウス)、疾病兆候の総数は増加した(3dpiにおいて13個の疾病兆候、5dpiにおいて16個の疾病兆候、及び7dpiにおいて23個の疾病兆候)。
【0148】
これらの結果は、化合物Aがジカウイルスによる感染の最大5日後まで投与された場合に有効であり、ジカウイルス感染の治療のために治療的に使用され得ることを示す。
【0149】
実施例6.非ヒト霊長類ジカウイルスモデルにおける化合物Aの治療有効性
この実験に用いた薬剤は、化合物A(AがNH2であり、BがHCL塩としてのHである、式Iの化合物)であった。本実施例で使用した非ヒト霊長類(NHP)動物は、人工的に繁殖されたインドアカゲザルであった。アカゲザルは、世界中で現在広まっているジカウイルスの系統による感染を受けやすいことが報告されている(Osuna,et al.,Nat Med,PMID 27694931,October 2016。そのような教示に関して参照により本明細書に組み込まれる)。アカゲザルモデルでは、ウイルス投与の2~3日後にピークウイルス血症が観察され、雄動物は、雌動物よりもわずかに大きなピークウイルス血症を示す。体温は、このモデル系では、一般的にウイルス血症負荷と相関する。感染後、ジカウイルスRNAは、血液、血漿または血清、母乳、羊水、精液、精漿、膣分泌物、脳脊髄液、尿、唾液などが挙げられるが、これらに限定されない対象の体液または組織において、ならびに組織(脳、神経組織、ならびに男性及び女性の両方の生殖組織を含む)において検出され得る。このモデルでは、ジカウイルス感染は、本実施例におけるジカウイルス株の投与では致命的ではない。さらに、アカゲザルにおいて、最初のジカウイルス感染が再感染に対する防御免疫を誘発することが示されている。
【0150】
動物は、サルレトロウイルス、ヘルペスB、及びフィロウイルスに対して血清陰性であることが予めスクリーニングされている。15匹の動物(n=15)を本実施例で使用し、3群に分けた(表3を参照されたい)。2つの群の動物(群1及び2;それぞれに対してn=5)を、表3に記載されるように化合物Aで処置した。対照群(群3;n=5)には、製剤ビヒクルのみを投与した。群1~3の全ての動物に、記載されたジカウイルスの用量を投与した。最初のウイルス攻撃接種中、本実施例においてジカウイルスのプエルトリコ分離株(PRVABC-59)を使用し、105PFUの用量で皮下投与した。最初のウイルス感染後の異種攻撃接種に対して、ジカウイルスのタイ分離株(KF993678)を使用した(最初のジカウイルス攻撃接種に対して感染後70日目に投与した)。最初のウイルス感染に関して、全血ならびに尿、唾液、及び脳脊髄液(CSF)を抽出して、ジカウイルスの存在を監視することによって、研究過程全体を通して動物を監視した。サンプルを、投与前、ならびに血液、尿、及び唾液に関して0、1、2、3、4、5、7、10、14、21、及び28日目に、かつCSFに関して7、14、21、及び28日目に(腰椎穿刺を介して)採取した。血漿、尿、唾液、及びCSF中のジカウイルスRNAレベルを測定した。
【0151】
群1に対して、製剤化された化合物Aを0日目に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第1の100mg/kg用量をジカウイルスでの攻撃接種の90分後に投与し、第2の100mg/kg用量を第1の投与の6~8時間後に送達した)、次いでジカウイルス攻撃接種後1~9日目に25mg/kgで1日2回、IM投与した。群2に対して、製剤化された化合物Aを0日目に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第1の100mg/kg用量をジカウイルスでの攻撃接種の90分後に投与し、第2の100mg/kg用量を第1の投与の6~8時間後に送達した)。群3に対して、ビヒクルのみをジカウイルス攻撃接種の日(+90)に、次いでジカウイルス攻撃接種後1~9日目に1日2回、IM投与した。
【表3】
【0152】
化合物Aは、全ての動物において耐容性が良好であった。群1~3に対する血漿ウイルス血症の結果を
図12A及び12Bに示す。全ての対照動物(群3)が、感染後2日目までに血漿中で検出されるような高レベルのウイルス血症を発症した。4匹の対照動物が感染後2日目までにウイルス血症になり、1匹の動物は感染後3日目にウイルス血症になった。ウイルス複製は、群3の2匹の動物において7日目まで持続した。群1の動物は、感染後28日目まで、血漿中で検出されるような検出可能なウイルス血症を発症しなかった。群2の動物は有意な防御を示し、この群からの2匹の動物のみが血漿中で検出可能なウイルス血症を示し、1匹の動物は、感染後3~4日目に血漿中で検出可能なウイルス血症を呈し、もう1匹の動物は、感染後10日目に血漿中で検出可能なウイルス血症を呈した。群2の動物の両方の場合において、ウイルス血症の大きさは、対照(群3)と比較して有意に減少し、1つの場合において、ウイルス血症の発症は、対照(群3)と比較して有意に遅延した。
【0153】
全ての動物に関してCSF、唾液、及び尿中でもジカウイルスを監視した。群1の結果を
図13Aに、群2の結果を
図13Bに、群3の結果を
図13Cに示す。
図13Dは、感染後の様々な時点におけるCSF、唾液、及び尿中のジカウイルスRNAに対する検査で陽性と出た試料の数を示す陰影付き棒を用いた、群1~3のデータの要約を示す。群1及び2の動物は、CSF、唾液、及び尿中に散発的に検出可能なジカウイルスRNAのみを示し、ウイルス排出は対照(群3)と比較して減少した。
【0154】
群1~3の動物の血清(感染後0、7、14、21、及び28日目)ならびにCSF(0、3、7、及び10日目)中のウイルスRNAの存在も、タイジカウイルス分離株を用いた異種攻撃接種後に決定した。結果は、
図12A(血清)ならびに
図13A及びB(CSF)に示すように、プエルトリコジカウイルス分離株による最初の感染後の血漿及びCSF中のウイルスRNAの存在と比較して示される。結果は、血清(
図14A)及びCSF(
図14B)中に存在する最小限のウイルスRNAの存在を示し、動物において、異種攻撃接種後の強力な末梢免疫応答が、血漿及び中枢神経系中のジカウイルスRNAレベルの優れた制御を伴い生成されたことを示す。
【0155】
要約すると、化合物Aは、NHPにおいて耐容性が良好であり、ジカウイルス感染及びその後の再攻撃接種(ジカウイルスの異なる株でさえ)に対する有意な防御を提供した。
【0156】
免疫系活性化に対する化合物Aの効果も、NHP動物モデルにおいて検査した。B細胞活性化及びメモリT細胞活性化を、0日目のPRVABC-59ジカウイルス分離株を用いた最初の攻撃接種後、及び70日目のジカウイルスのタイ分離株(KF993678)を用いた異種攻撃接種後に検査した。B細胞及びメモリT細胞活性化の分析のために、0、7、14、21、及び28日目に血漿試料を採取した(各ジカウイルス分離株による感染後の日数)。タイジカウイルス分離株を用いた異種攻撃接種後、動物に化合物Aの追加用量を投与しなかった。
図14Cは、群1~3における、プエルトリコジカウイルス分離株を用いた最初の攻撃接種、及びタイジカウイルス分離株を用いた異種攻撃接種後のB細胞活性化に対する化合物Aの効果を示す。血漿試料中の未感染(CD27-)及びメモリ(CD27+)B細胞のCD38発現を、フローサイトメトリによって決定した(結果は、幾何平均蛍光、GMF、CD38の×10
4として表される)。黒丸は、ジカウイルス感染に対して血漿陽性であった動物を示し、白丸は、動物がジカウイルス感染に対して血漿陰性であったことを示す。群1~3の全ての動物が、最初の攻撃接種後及び異種攻撃接種後(群1~3)に、ジカウイルス特異的中和抗体応答を有した。
図14Cに示すように、全ての動物が、異種攻撃接種後に限られたB細胞活性化を示した。
【0157】
図14Dは、群1~3における、PRVABC-59ジカウイルス分離株を用いた0日目の最初の攻撃接種、及びタイジカウイルス分離株を用いた異種攻撃接種後のメモリT細胞活性化に対する化合物Aの効果を示す。CD69+/CD8+T及びCD69+/CD4+エフェクタT細胞の割合を、フローサイトメトリによって決定した。黒丸は、ジカウイルス感染に対して血漿陽性であった動物を示し、白丸は、動物がジカウイルス感染に対して血漿陰性であったことを示す。
図14Dに示すように、群1~3の全ての動物が、異種攻撃接種後に活性化されたCD8+及びCD4+T細胞応答を示した。
【0158】
PRVABC-59ジカウイルス分離株を用いた攻撃接種後の中和抗体の存在を評価するために、プラーク減少アッセイを実施した。プラーク減少の割合及び90%プラーク減少中和力価(PRNT
90)を決定した。結果を、処置群毎のプラーク減少率に関して
図14Eに、かつ処置群毎のPRNT
90に関して
図14Fに示す。群1~3の全てが、14日目までにジカウイルスに対する中和抗体の存在を示し、これは70日目まで持続した。群1~3のPRNT
90は、70日目に本質的に同等であった。
【0159】
集合的に、これらの結果は、化合物Aでの処置が、デノボ抗ウイルス免疫応答の生成を損なわないことを示す。
【0160】
実施例7-非ヒト霊長類ジカウイルスモデルにおける化合物Aの用量範囲決定研究
この実験に用いた薬剤は、化合物A(AがNH2であり、BがHCL塩としてのHである、式Iの化合物)であった。本実施例で使用した非ヒト霊長類(NHP)動物は、実施例6に記載される通りであった。動物は、サルレトロウイルス、ヘルペスB、及びフィロウイルスに対して血清陰性であることが予めスクリーニングされている。20匹の動物(n=20)を本実施例で使用し、5群に分けた(表4を参照されたい)。4群の動物(群1~4;それぞれに対してn=4)を化合物Aで処置した。対照群(群5;n=4)には、製剤ビヒクルのみを投与した。群1~5の全ての動物に、ジカウイルスプエルトリコ分離株PRVABC-59を投与した。ジカウイルスを105PFUの用量で皮下投与した。全血を抽出することによって動物を研究過程全体を通して監視して、ジカウイルスの存在を監視した。血液に関して投与前ならびに0、1、2、3、4、5、7、10、14、及び21日目に、かつ薬物動態学的分析のために投与前ならびに0(化合物Aの第2の投与の約2時間後)及び1日目に、試料を採取した。血漿中のジカウイルスRNAレベルを測定した。
【0161】
群1に対して、製剤化された化合物Aを0日目に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第1の100mg/kg用量をジカウイルスでの攻撃接種の90分後に投与し、第2の100mg/kg用量を第1の投与の6~8時間後に送達した)、次いで感染後1~9日目に25mg/kgで1日2回、IM投与した。群2に対して、製剤化された化合物Aを0日目に150mg/kgで(群1にあるようなタイミングで75mg/kgの分割用量)、次いで感染後1~9日目に19mg/kgで1日2回、IM投与した。群3に対して、製剤化された化合物Aを0日目に100mg/kgで(群1にあるようなタイミングで50mg/kgの分割用量)、次いで感染後1~9日目に13mg/kgで1日2回、IM投与した。群4に対して、製剤化された化合物Aを0日目に50mg/kgで(群1にあるようなタイミングで25mg/kgの分割用量)、次いで感染後1~9日目に6mg/kgで1日2回、IM投与した。群5に対して、ビヒクルのみを群1~4と同じスケジュールでIM投与した。
【表4】
【0162】
化合物Aは、全ての動物において耐容性が良好であった。群1~3に対する血漿ウイルス血症の結果を
図15A及び15Bに示す。全ての対照動物(群5)が、感染後2日目までに血漿中で検出されるような高レベルのウイルス血症を発症し、4匹全ての動物が感染後2日目にウイルス血症であった。ウイルス複製は、群5の4匹全ての動物に関して7日目まで持続した。群1の動物は、感染後28日目まで、血漿中で検出されるような検出可能なウイルス血症を発症しなかった。群2の動物は、ほぼ完全な防御を示し、この群からの1匹の動物のみが、感染後7日目に検出可能なわずかなウイルス血症を示した。群3の動物は有意な防御を示し、この群からの2匹の動物のみが血漿中で検出可能なわずかなウイルス血症を示し、1匹の動物は、感染後4~5日目に血漿中で検出可能なウイルス血症を呈し、もう1匹の動物は、感染後5日目に血漿中のみで検出可能なウイルス血症を呈した。4群の動物は、感染後4~7日目の間にウイルス血症であり、ウイルス血症は、感染後10日目まで動物の半数において持続した。ウイルス血症を呈する群2及び3の動物の両方の場合において、ウイルス血症の大きさは、対照(群5)と比較して有意に減少し、1つの場合において、ウイルス血症の発症は、対照(群5)と比較して有意に遅延した。対照群(群5)の動物は、感染後10日目を過ぎてウイルス血症を呈さなかった。
【0163】
要約すると、化合物Aは、NHPにおいて耐容性が良好であり、群3~1に関して記載される用量及び投与スケジュールで、ジカウイルス感染に対する有意な防御を提供した。
【0164】
PRVABC-59ジカウイルス分離株を用いた攻撃接種後の中和抗体の存在を、実施例6に記載されるように決定した。結果を
図15Cに示す。群1~5の全てが、感染後21日目までにジカウイルスに対する中和抗体の存在を示した。全ての動物が、感染後28日目に中和抗体の存在を示した。これらの結果は、化合物Aでの処置が、群1~4に関して記載された用量及び投与スケジュールでのデノボ抗ウイルス免疫応答の生成を損なわないことを示す。
【0165】
非ヒト霊長類の血清中のジカウイルス負荷に関する化合物Aの用量応答も検査した。
図15Dは、群1~4及び対照群(群5)に対する、処置期間にわたって投与された化合物Aの総用量(mg/kg)毎のジカウイルスRNAの最大力価を示す。結果は、334mg/kgを超える化合物Aの総用量で(群1~3)、ジカウイルス力価が対照ジカウイルス力価と比較して劇的に、かつ統計的に有意に減少したことを示す(p値<0.0001)。492mg/kg(群2)及び650mg/kg(群1)の化合物Aの総用量で、ジカウイルスは、それぞれ4つの試料のうち3つ及び4つの試料のうち4つにおいて定量限界未満であった。
図15Eは、化合物Aの対数用量毎のジカウイルス対数力価のロジスティック回帰を示す。各総用量における数字は、定量限界未満であった試料数を示す。
図15Dと一致して、334mg/kgを超える化合物Aの総用量の投与は、ウイルス力価を有意に低下させた。
【0166】
実施例8-ヒト対象における化合物Aの筋肉内注射
健康なヒト対象において筋肉内注射(IM)によって投与される化合物Aの安全性、忍容性、及び薬物動態を評価するために、第1相二重盲検、プラセボ対照、用量範囲決定研究を実施した。研究を2つの部分で実施した。第1部では、対象は、IM投与を介して0.3mg/kg~10mg/kgの用量で化合物Aの単回用量を投与された。さらに、注射と関連する痛みの緩和に対するリドカイン投与(4mg/kgの用量で化合物Aと同時投与)の効果も評価した。第2部では、対象は、IM投与を介して2.5mg/kg/日、5mg/kg/日、または10mg/kg/日の用量で化合物Aを7日間(1日1回)投与された。50名の対象が、第1部において化合物Aの単回用量を投与され(12名がプラセボを投与された)、23名の対象が、第2部において化合物Aの複数回用量を投与された(6名の対象がプラセボを投与された)。様々な投与レジメンへの対象の割り当てを表5に示す。計画された全てのコホートが完了した。
【表5】
【0167】
適格対象は、18~50歳のいずれかの性別の成人であった。選択基準は以下の通りであった。1)50kg(110lbs)以上及び100kg(220lbs)以下の体重。2)19~32kg/m2の肥満度指数(BMI)、3)研究前の2日間及び研究中にアルコール摂取を控える意思がある、4)出産可能性がある性的に活発な女性及び性的に活発な男性は、研究中及び研究後のある期間にわたって、2つの非常に有効な避妊方法を使用しなければならない、5)カフェイン飲料を控える、6)安静時の正常なバイタルサイン、ならびに7)書面によるインフォームドコンセントを提供することが可能。除外基準は、以下の通りであった。1)研究施設従業員、または研究施設もしくはスポンサー従業員の肉親である対象、2)過去90日以内の臨床研究試験への参加、3)治験責任医師またはスポンサーの意見で、対象が研究に参加する能力を妨げるか、またはその対象の参加リスクを増大させる、任意の医学的状態または病歴、4)グレード1(軽度)以上の異常な結果を伴う任意のスクリーニング臨床試験、5)異常なECG(450msecを超える任意のスクリーニングもしくはベースラインQTc、200msecを超えるPR、または時折よりも頻繁、かつ/もしくは分類内で2連発以上である心室性及び/もしくは心房性期外収縮として定義される)、6)5分間の仰臥位安静後のスクリーニング時に確認された高血圧(収縮期が140超、拡張期が90超)、5分間の仰臥位安静後の100bpmを超える頻脈を含む、異常な心臓血管検査、7)突然死またはQT延長の家族歴または個人歴、8)研究前の7日間及び研究中、アセトアミノフェン及び非経口ホルモン避妊薬を除く、処方薬、市販(OTC)の医薬品、またはハーブサプリメントの使用、9)IM注射を受けるには不十分な筋肉量、10)前年のアルコールまたは薬物乱用の既往歴、または物質依存または乱用の現在の証拠、11)現在の喫煙者または過去12ヶ月以内の喫煙歴、12)任意の薬物に対する深刻な有害反応または深刻な過敏性、13)治験責任医師によって判断されるような、治療を必要とする臨床的に有意なアレルギーの存在または既往歴。活性でない限り、花粉症は許容される。14)過去3ヶ月以内に400mLを超える献血または失血、15)B型肝炎表面抗原、C型肝炎抗体、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)1型に対する陽性血清学、16)妊娠中または授乳中の女性、ならびに17)妊娠中の女性パートナーがいる男性対象。
【0168】
結果
化合物Aの血漿濃度時間プロファイルを、第2部の各対象に対して測定した(結果は、ng/mLの化合物Aとして表される)。第1の用量の投与前の1日目、ならびに第1の用量の化合物Aの投与後1、2、3、4、6、8、10、12、16、及び24時間、ならびに最後の用量の化合物Aの投与前の7日目、ならびに最後の用量の化合物Aの投与後1、2、3、4、6、8、10、12、16、24、36、48、72、及び96時間において、血液試料を採取した。血漿試料を血液試料から得て、化合物Aの濃度を決定した。
【0169】
結果を1日目に関して
図16Aに、かつ7日目に関して
図16Bに示す。結果を、幾何平均(95%CI)として示し、ng/mLの化合物Aとして表す。
図16A及び16Bに見られるように、曝露は用量比例的であり、用量の増加に伴って線形であった。化合物Aの血漿濃度は、投与の1~2時間後に最大であった。
【0170】
第1部及び第2部の両方に関して、深刻なまたは重篤な有害事象は発生せず、臨床的に有意な臨床検査異常はいずれの用量においても生じなかった。リドカインと化合物Aとの同時投与は、化合物Aの血漿PKプロファイルを変更することなく、注射部位の痛みを改善することがわかった(データは図示せず)。
【0171】
実施例9-ジカウイルスの膣内投与のモデル
ジカウイルス感染は、性的接触を通じて拡大され得る。膣経路によるジカウイルス感染の動物モデルを使用して、感染様式に基づきジカウイルスのウイルス血症の差を決定した。本実施例で使用した非ヒト霊長類動物は、実施例6に記載されるような人工的に繁殖されたインドアカゲザルであった。雌動物(n=4)に、105PFUの用量(実施例6及び7の皮下投与のために使用したのと同じ用量)の膣内投与によって、ジカウイルスプエルトリコ分離株PRVABC-59を投与した。研究過程全体を通して、動物を視覚的に監視した。血液、CSF、及びCVL試料を採取して、ジカウイルスの存在を監視し、薬物動態学、薬力学、免疫活性化、及びウイルス学的パラメータを評価した。ジカウイルスRNAレベル、免疫活性化(21日目までのみ)、及びウイルス学的パラメータの決定のために、投与前ならびに0、1、2、3、4、5、7、10、14、21、及び28日目に、かつ薬物動態学的及び薬力学的分析のために、投与前ならびに0(化合物Aの第2の投与の約2時間後)、1、及び7日目に、血液試料を採取した。ジカウイルスRNAレベル及びウイルス学的パラメータの決定のために、CSF試料を0、7、14、21、及び28日目に(腰椎穿刺を介して)採取し、CVL試料を0、3、7、14、21、及び28日目に(頸膣スワブを介して)採取した。
【0172】
以下に示すように、アカゲザルは、膣内投与を介したジカウイルス感染を受けやすかった。投与された用量では、動物は、感染後7~10日目の間に血液中のジカウイルスRNAの検出によって決定されるようにウイルス血症であり、ピークウイルス血症は、感染の10日後に発生した。さらに、ジカウイルスRNAは、感染後28日目に2匹の動物の血液中で検出された(
図17)。同じ用量のジカウイルスの皮下投与(実施例6の
図12A及び12Bに示される)と比較して、皮下投与は、血液中のジカRNAのより迅速な出現をもたらすことが明らかになる(ウイルス血症は、感染後2~7日目の間に検出可能であり、ピークウイルス血症は、感染後5日目あたりに発生する)。ジカウイルスRNAは、感染後7日目以降の皮下投与後に血液中で検出可能ではなく、皮下投与後のジカウイルスのより迅速なクリアランスを示した。データのさらなる比較は、血液中の総ジカウイルス負荷が、皮下投与(ピークウイルス血症において6~7の対数ジカウイルスRNAコピー数/mL)と比較して、膣内投与(ピークウイルス血症において5未満の対数ジカウイルスRNAコピー数/mL)によってジカウイルスに感染した動物においてより低かったことを示す。
【0173】
CSFに関して、ジカウイルスの膣内投与は、
図17に示すように、感染後7日目から始まり(1匹の動物)、感染後28日目まで続く(4匹全ての動物)、CSF中のジカウイルスRNAの検出をもたらした。総ジカウイルス負荷も感染後21日目まで増加し、感染後28日目に上昇したままであった。同じ用量のジカウイルスの皮下投与(実施例6の
図13C及び13Dに示される)と比較して、皮下投与は、CSF中のジカRNAのより迅速な出現(ジカウイルスRNAは、膣内投与による1匹と対比して、感染後7日目に3匹の動物において検出可能)、及びCSFからのジカウイルスのより迅速なクリアランス(膣内投与による4匹の動物と対比して、2匹の動物が感染後28日目に検出可能なジカウイルスを有した)。CSF中の総ジカウイルス負荷が、膣内投与(感染後28日目において約5の対数ジカウイルスRNAコピー数/mL)と比較して、後の時点での皮下投与(感染後28日目において約3の対数ジカウイルスRNAコピー数/mL)によって、ジカウイルスに感染した動物においてより低かったことを示す。
【0174】
要約すると、ジカウイルスへの膣内曝露は、皮下曝露と比較して、血液及びCSF中の遅延した、かつより持続性のウイルス複製をもたらす。さらに、膣内曝露後の血液中の総ウイルス負荷は、皮下曝露で見られるものよりも小さい。CSF中で検出された総ウイルスRNAは、膣内及び皮下投与のピークレベルにおいて同等であったが、ジカウイルスRNAは、膣内曝露後の後の時点でより高レベルで検出可能であった。
【0175】
膣内投与はまた、血液及びCSFと比較して、膣粘膜中でより早期のウイルス複製をもたらした(
図17)。データは、CVL中で検出されたジカウイルスのレベルが、血液中よりも高く、膣粘膜中のウイルス複製のレベルがより高いことを示している。ウイルスRNAは、感染後21及び28日目に1匹の動物において検出可能であった。
【0176】
これらの結果は、ジカウイルス感染の動態が異なり、対象がジカウイルスに曝露される様式に依存することを示している。感染したパートナーとの性交を通じてなどの膣内曝露は、血液及びCSF中のジカウイルスの存在の遅延をもたらすが、より持続的なウイルス複製をもたらす。これらのデータは、ジカ曝露が(蚊に刺されたときに生じるような)皮下曝露を通してよりも、膣内曝露を通して生じる場合に、ジカウイルス感染の治療のための治療手段がより広くなる可能性があることを示している。
【0177】
実施例10-非ヒト霊長類における化合物の遅延投与を伴うジカウイルスの膣内投与のモデル
この実験で使用される薬剤は、化合物A(AがNH2であり、BがHCL塩としてのHである、式Iの化合物)である。本実施例で使用した非ヒト霊長類動物は、実施例6に記載されるような人工的に繁殖されたインドアカゲザルである。動物は、サルレトロウイルス、ヘルペスB、及びフィロウイルスに対して血清陰性であることが予めスクリーニングされる。15匹の動物(n=15)をこの研究で使用し、3群に分ける(表6を参照されたい)。動物の2つの群(群1及び2;それぞれに対してn=5)を、ジカウイルスによる膣内感染後の様々な時間において化合物Aで処置する。対照群(群3;n=5)は、同じ投与経路及び製剤ビヒクルのみによって、同じ用量のジカウイルスを投与される。群1~3の全ての動物に、研究の0日目にジカウイルスプエルトリコ分離株PRVABC-59を投与する。ジカウイルスを、105PFUの用量で膣内投与する。研究過程全体を通して、動物を視覚的に監視する。血液、CSF、及びCVL試料を採取して、ジカウイルスの存在を監視し、薬物動態学、薬力学、免疫活性化、及びウイルス学的パラメータを評価する。ジカウイルスRNAレベル、免疫活性化(21日目までのみ)、及びウイルス学的パラメータの決定のために、投与前ならびに0、1、2、3、4、5、7、10、14、21、及び28日目に、かつ薬物動態学的及び薬力学的分析のために、投与前ならびに0(化合物Aの第2の投与の約2時間後)、1、及び7日目に、血液試料を採取する。ジカウイルスRNAレベル及びウイルス学的パラメータの決定のために、CSF試料を0、7、14、21、及び28日目に(腰椎穿刺を介して)採取し、CVL試料を0、3、7、14、21、及び28日目に(頸膣スワブを介して)採取する。尿及び唾液などであるが、これらに限定されない他の体液の試料も、上記のスケジュールの1つに従って、または異なるスケジュールに従って採取され得る。
【0178】
群1に対して、製剤化された化合物Aを、感染の96±1時間後に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第2の用量を第1の投与の6~8時間後に送達する)、次いで感染後5~13日目に25mg/kgで1日2回、IM投与する。群2に対して、製剤化された化合物Aを、感染の120±1時間後に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第2の用量を第1の投与の6~8時間後に送達する)、次いで感染後6~14日目に25mg/kgで1日2回、IM投与する。群3に対して、ビヒクルのみをジカウイルス感染の日及び感染後1~9日目に1日2回、IM投与する。
【表6】
【0179】
この研究の主なエンドポイントは、血漿ウイルス血症の減少である。処置がない場合、投与されたジカウイルスの用量において、血漿ウイルス血症は動物の100%において容易に検出可能である。研究は、表6に記載されるように、ジカ攻撃接種及び化合物Aの投与後の血液中のジカウイルスRNAの減少を測定する。NHPモデルにおける化合物Aの薬物動態学的及び薬力学的応答(群1~2)も評価する。薬物動態、薬力学、及びウイルス負荷データを使用した抗ウイルスモデリングも実施する。フローサイトメトリによって、様々な免疫系パラメータ(NK細胞サブセットの割合及びそれらの活性化レベル、単球細胞サブセットの割合及びそれらの活性化レベル、ならびに、未感作、セントラルメモリ、エフェクタ/エフェクタメモリCD4+及びCD8+T細胞サブセット及び活性化レベル)、ならびにジカウイルスに対する中和抗体の産生を測定する。
【0180】
実施例11-非ヒト霊長類における遅延投与モデル
この実験で使用される薬剤は、化合物A(AがNH2であり、BがHCL塩としてのHである、式Iの化合物)である。本実施例で使用される非ヒト霊長類(NHP)動物は、実施例6に記載される通りである。動物は、サルレトロウイルス、ヘルペスB、及びフィロウイルスに対して血清陰性であることが予めスクリーニングされる。20匹の動物(n=20)をこの研究で使用し、5群に分ける(表7を参照されたい)。動物の3つの群(群1~3;それぞれに対してn=5)を、ジカウイルスによる感染後の様々な時間において化合物Aで処置する。対照群(群4;n=5)は、同じ用量のジカウイルス及び製剤ビヒクルのみを投与される。群1~4の全ての動物に、研究の0日目にジカウイルスプエルトリコ分離株PRVABC-59を投与する。ジカウイルスを、105PFUの用量で皮下投与する。研究過程全体を通して、動物を視覚的に監視する。血液試料を採取して、ジカウイルスの存在を監視し、薬物動態学、薬力学、免疫活性化、及びウイルス学的パラメータを評価する。ジカウイルスRNAレベル、免疫活性化及びウイルス学的パラメータの決定のために、投与前ならびに0、1、2、3、4、5、7、10、14、及び21日目に、かつ薬物動態学的及び薬力学的分析のために、投与前ならびに0(化合物Aの第2の投与の約2時間後)、1、及び7日目に、血液試料を採取する。
【0181】
群1に対して、製剤化された化合物Aを、感染の24±1時間後に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第2の用量を第1の投与の6~8時間後に送達する)、次いで感染後2~10日目に25mg/kgで1日2回、IM投与する。群2に対して、製剤化された化合物Aを、感染の48±1時間後に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第2の用量を第1の投与の6~8時間後に送達する)、次いで感染後3~11日目に25mg/kgで1日2回、IM投与する。群3に対して、製剤化された化合物Aを、感染の72±1時間後に200mg/kgで(100mg/kgの分割用量で、第2の用量を第1の投与の6~8時間後に送達する)、次いで感染後4~12日目に25mg/kgで1日2回、IM投与する。群4に対して、ビヒクルのみをジカウイルス感染の日及び感染後1~9日目に1日2回、IM投与する。
【表7】
【0182】
この研究の主なエンドポイントは、血漿ウイルス血症の減少である。処置がない場合、投与されたジカウイルスの用量において、血漿ウイルス血症は動物の100%において容易に検出可能である。研究は、表7に記載されるように、ジカ攻撃接種及び化合物Aの投与後の血液中のジカウイルスRNAの減少を測定する。NHPモデルにおける化合物Aの薬物動態学的及び薬力学的応答(群1~3)も評価する。薬物動態、薬力学、及びウイルス負荷データを使用した抗ウイルスモデリングも実施する。フローサイトメトリによって、様々な免疫系パラメータ(NK細胞サブセットの割合及びそれらの活性化レベル、単球細胞サブセットの割合及びそれらの活性化レベル、ならびに、未感作、セントラルメモリ、エフェクタ/エフェクタメモリCD4+及びCD8+T細胞サブセット及び活性化レベル)、ならびにジカウイルスに対する中和抗体の産生を測定する。
【0183】
方法
ウイルス
ジカウイルスのMR-766分離株は、1947年4月にウガンダのジカ森林のセンチネルアカゲザルから採取され、P6-740株は、1966年7月にマレーシアの蚊から採取された。これら2つのジカウイルス株は、Robert B.Tesh(University of Texas Medical Branch,Galveston,TX)によって寄贈された。ジカウイルスPRVABC-59株は、2015年12月にヒト患者の血液からプエルトリコで分離された。このウイルスは、もともとBarbara Johnson(Centers for Disease Control and Prevention,Fort Collins,CO)によって提供された。ジカウイルス株KF993678は、最近タイで休暇を過ごしたヒト患者の血液から2103年にカナダで分離された。ウイルス株は、Vero細胞中で1回または2回増幅し、MR-766、P 6-740、及びPRVABC-59のそれぞれに対して107.7、106.7、107.5の50%細胞培養感染量(CCID50)/mLの力価を有した。マレーシアP6-740株をAG129マウスの致死率に関して滴定し、本動物研究のために使用した。
【0184】
マウスモデル
ジカウイルス感染及び疾患のマウスモデルを特徴付けた。8~10週齢の雌及び雄のAG129マウスを、ジカウイルス(P6-740)に皮下(s.c.)感染させた。ウイルスの用量滴定を実施して、モデルの特徴付け及び抗ウイルス/ワクチン研究のためのウイルスの好適な攻撃接種用量を決定した。
【0185】
様々な組織中のウイルス複製の重要な時点を同定するために、モデルの特徴付け研究を実施した。動物のコホートを含み、これらのパラメータとの一貫性を実証するために生存及び体重を監視した。2匹の雄及び2匹の雌のマウスを、ウイルス攻撃接種の1、3、5、7、9、11、及び13日後に剖検した。各動物から血清、脾臓、肝臓、腎臓、脳、精巣/子宮を含む組織、及び尿を採取した。上記の免疫組織化学分析で使用するためのパラフィン包埋及び切開の前に少なくとも24時間、各組織の一部を4%パラホルムアルデヒドまたは中性緩衝ホルマリン中で固定した。全RNAを組織から抽出し、ジカウイルスRNAを上記のように定量化した。
【0186】
ジカウイルス感染及び抗ウイルス治療研究のために、マウスをそれぞれ10匹の動物の群に無作為に割り当てた。ウイルスの10-3希釈物(104.0pfu/mL)をMEM中で調製した。マウスを、0.1mLの希釈ウイルスで皮下攻撃接種した(約103.0PFU/動物)。全ての化合物の投与量は、22gの平均マウス体重に基づいた。化合物を、マウスへの最初の投与前の18時間未満に滅菌生理食塩水中で調製し、研究期間中は4℃で保存した。化合物Aを300または150mg/kg/日で1日2回(bid)筋肉内投与した。リバビリンを、75または50mg/kg/日で1日2回腹腔内投与した。処置は、ウイルス攻撃接種の4時間前に開始し、8日間続いた。処置群の同一性は、処置を施す技術者には盲検化された。死亡率を28日間毎日2回観察し、各マウスの体重を0日目、次いでウイルス感染後1~19日目(dpi)に1日おきに記録した。マウスがもはや自身で直立できないか、または刺激剤に対して反応しなくなった場合、人道的に安楽死させた。
【0187】
ジカウイルスRNAの検出のためのリアルタイムRT-PCR
50~100mgの新たに単離した組織を、1mLのTRI試薬(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)中の乳棒で粉砕し、全RNAを抽出した。液体試料からウイルスRNAを抽出するために、製造業者の説明書(Qiagen,Valencia,CA)に従って、QIAamp Viral RNA Mini Spinキットを使用した。抽出されたRNAをヌクレアーゼフリー水で溶出し、Co-Diagnostics,Inc.(Bountiful,UT)によって開発されたLogix Smart Zika Testを使用して定量的リアルタイムRT-PCRによって増幅した。FAMフルオロフォア及びDABCYL消光剤で標識されたプライマー及びRapid Probeの組を含有する5μLのマスターミックスを、2~5μLのRNA及び適切な体積の水と混合して、最終反応体積を10μLにした。RNAを最初に55℃で10分間逆転写させ、続いて95℃で20秒間加熱することによって鎖分離した。PCR反応は、95℃で1秒間、55℃で20秒間の40サイクルからなった。増幅領域に及ぶ合成RNAを用いて標準曲線を生成し、それを、未知の試料のゲノム当量の数を計算するために使用した。
【0188】
フローサイトメトリ
フローサイトメトリを、Osuna,et al.(Nat Med,PMID 27694931,October 2016)に記載されるように実施し、それはそのような教示に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
プラーク減少アッセイ
プラーク減少アッセイを以下に記載するように実施した。簡潔に、NHP血漿試料を採取し、熱不活性化し、-80℃で保存した。NHP血漿及び陽性対照のZIKV中和血清(既知の力価の)を連続希釈した。未希釈及び希釈試料を、等体積の2,000PFU/mLのZIKV(プエルトリコPRVABC59)に添加した。ウイルス-抗体混合物を37℃で1時間インキュベートし、その後、Vero細胞を播種したコンフルエントな6ウェル組織培養皿の各ウェルに100μL(100PFU ZIKV)を添加した。37℃で1時間のウイルス吸着後、補充された最小必須培地(MEM)中1%不活性寒天で細胞を覆った。感染後4日目に、1%寒天を含むMEM中の0.02%(重量/体積)ニュートラルレッドを用いたさらなる覆いを追加し、翌日プラークを計数及び記録した。アッセイは3重で実施し、対照ウェルも組み込んだ。中和抗体力価を、90%プラーク減少(PRNT90)をもたらした血漿の最大希釈として表した。
【0190】
統計分析
Wilcoxonログランク生存分析を使用して生存データを分析し、Bonferroni群比較(Prism 5,GraphPad Software,Inc)を用いた一方向ANOVAを使用して、他の全ての統計分析を実施した。