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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】ハニカム補強法面
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20220325BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
E02D17/20 101
E02D29/02 308
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019155680
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021032012
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-04-23
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石垣 竜一
(72)【発明者】
【氏名】原田 道幸
(72)【発明者】
【氏名】太田 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】大山 亮貴
(72)【発明者】
【氏名】新目 陽平
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043962(JP,A)
【文献】特開2015-121030(JP,A)
【文献】特開2014-020079(JP,A)
【文献】特開2010-168888(JP,A)
【文献】特開2017-057566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長片状の樹脂又は繊維シートからなるストリップ材を当該ストリップ材の厚さ方向に並設し互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合し、これを前記厚さ方向に展張することによってハニカム状のセルを形成するハニカム状立体補強材に充填材を充填してなるハニカム層を法面形成面上に当該法面形成面に対して略平行に設置するハニカム補強法面であって、
当該ハニカム補強法面は積層された複数のハニカム層で構成され、
前記複数のハニカム層のうち少なくとも2層のハニカム層は性質の異なる充填材で充填され、
前記ハニカム層のうちの1層は充填材として砕石、クラッシャーラン、グリズリアンダー材のいずれかが充填されてなる排水性ハニカム層であり、
前記ハニカム層のうちの他の1層は、ハニカム補強法面の表面に配置され、充填材として土砂、砂質土、植生土嚢、植生吹付のいずれかが充填されてなる植生ハニカム層であるハニカム補強法面。
【請求項2】
前記複数のハニカム層の層間に不織布からなる層がある請求項1に記載のハニカム補強法面。
【請求項3】
前記複数のハニカム層を前記ハニカム補強法面に対してほぼ垂直に貫き、地山法面に食い込む垂直杭が配置されてなる請求項1または2のいずれかに記載のハニカム補強法面。
【請求項4】
前記ハニカム層に当該ハニカム層とほぼ平行に法面の天端から法尻まで貫く縦筋が配置されてなる請求項1から3のいずれかに記載のハニカム補強法面。
【請求項5】
前記ハニカム層中に略等標高レベルの法面延長方向に延設される横筋が配置されてなる請求項1から4のいずれかに記載のハニカム補強法面。
【請求項6】
前記複数のハニカム層の最上層のハニカム層上に植生シート、植生注入マット、植生吹付のいずれかからなる植生形成層が配置されてなる請求項1から5のいずれかに記載のハニカム補強法面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の長片状の樹脂又は繊維シートからなるストリップ材を幅方向に並設し互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合し、これを前記幅方向と直交する方向に展張することによってハニカム状のセルを形成するハニカム状立体補強材を法面に施工したハニカム補強法面に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の長片状の樹脂又は繊維シートからなるストリップ材を幅方向に並設し互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合し、これを前記幅方向と直交する方向に展張することによってハニカム状のセルを形成するハニカム状立体補強材は知られており、このハニカム状立体補強材は土砂・砕石等を充填して(以下、ハニカム状立体補強材に土砂・砕石等を充填した構造体を「ハニカム構造体」と記す)地盤の補強材、道路の路盤材、歩道の基礎材、架設道路、擁壁の資材に利用されてきた。
【0003】
とりわけ、建設機械等で整地された法面(以下、「法面形成面」という。)上に当該法面形成面とほぼ平行にハニカム状立体補強材を展帳してセルを形成し、当該セルに土砂・砕石などからなる充填材を充填して法面形成面に対して平行にハニカム構造体(以下、法面形成面に対して平行に形成したハニカム構造体を「ハニカム層」という。)を形成して法面形成面を補強する「ハニカム補強法面」は、法面の表面浸食を防止する目的に用いられている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
ハニカム補強法面は、展帳したハニカム状立体補強材に充填する充填材の種類により様々な機能を付与することができる。例えば、充填材に土砂を利用すれば充填した土砂の上に草が生えることで法面緑化が可能であり、充填材に砕石を利用すれば排水性の良い法面を構築でき、さらにコンクリートやモルタルなどを充填すれば表面浸食しない強固な法面を形成可能である。
【0005】
また、法面緑化を行う一方で法面の排水性能も維持したいなどの相反する複数の性能を有する法面を構築したいニーズがあれば、法面形成面とハニカム層との間に不織布などの排水層を設置する例もある。特許文献1では、凍上せず植生可能な火山灰充填ハニカム層の下に吸い出し防止材としてスパンポンド不織布を設置した例が例示されている。また特許文献2では、法面の凍上を防止するためにハニカム層と法面形成面との間に発泡ポリスチレンからなる断熱層を設けた例が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-168888号公報
【文献】特開2017-057566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のハニカム補強法面は法面形成面にハニカム層を1層敷設されるが、表面浸食が激しい場所では浸食に対して十分対抗できない場合がある。またハニカム補強法面に法面緑化を行う一方で、ハニカム補強法面の排水性能も維持したいなど相反する複数の性能を有するハニカム補強法面を構築したいなどのニーズがある場合に、特許文献1、2ように複数の異なる部材を組み合わせる必要があり、施工者にとっては施工が煩雑になり手間がかかるという問題がある。本発明の目的は、法面の表面浸食が激しい場所でも十分浸食に耐え、またハニカム層の設置手間のみで複数の性能を有するハニカム補強法面を構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、法面形成面にハニカム補強法面を構築する際に、法面形成面上に、当該法面形成面と略平行の複数のハニカム層を積層して設置することで、激しい表面浸食に耐えるハニカム補強法面を構築できることを見いだした。また、各ハニカム層におのおの異なる性質の充填材を充填することにより、複数の性能を有するハニカム補強法面を構築できることを見いだした。
【0009】
請求項1記載の発明は、
複数の長片状の樹脂又は繊維シートからなるストリップ材を当該ストリップ材の厚さ方向に並設し互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合し、これを前記厚さ方向に展張することによってハニカム状のセルを形成するハニカム状立体補強材に充填材を充填してなるハニカム層を法面形成面上に当該法面形成面に対して略平行に設置するハニカム補強法面であって、
当該ハニカム補強法面は積層された複数のハニカム層で構成され、
前記複数のハニカム層のうち少なくとも2層のハニカム層は性質の異なる充填材で充填され、
前記ハニカム層のうちの1層は充填材として砕石、クラッシャーラン、グリズリアンダー材のいずれかが充填されてなる排水性ハニカム層であり、
前記ハニカム層のうちの他の1層は、ハニカム補強法面の表面に配置され、充填材として土砂、砂質土、植生土嚢、植生吹付のいずれかが充填されてなる植生ハニカム層であるハニカム補強法面である。
【0010】
すなわち本発明のハニカム補強法面は、法面形成面上に当該法面形成面と略平行に複数のハニカム層が設置されていることを発明の要旨とする。
【0011】
本発明のように法面形成面上に当該法面形成面と略平行に複数の積層されたハニカム層を設置したハニカム補強法面では、表面浸食が激しい場所でも浸食に対して十分対抗することができる。すなわち、仮に表面浸食により表層のハニカム層が浸食されても、その下のハニカム層が浸食に耐えることができる。
【0014】
すなわち本発明のハニカム補強法面を構成する複数の積層されたハニカム層は、おのおののハニカム層ごとに充填される充填材の性質が異なり、おのおののハニカム層ごとに異なる性能を発揮する。例えば法面形成面すぐ上に配置される第1ハニカム層と、第1ハニカム層の上に形成された第2ハニカム層の2層のハニカム層からなるハニカム補強法面の場合、法面形成面のすぐ上の第1ハニカム層には砕石を充填し、第1ハニカム層の上に積層され法面表面を構成する第2ハニカム層に土砂を充填すると、第2ハニカム層は排水層として機能し、第2ハニカム層は、植生層として機能するなどの各ハニカム層による機能分担の付与できる。
【0015】
ハニカム層に充填する充填材は様々なものを用いることができるが、例えば、土砂、砂質土、砕石、クラッシャーラン、グリズリアンダー材、火山灰土、コンクリート、モルタル、発泡ウレタン、発泡スチロール、植生土嚢、植生吹きつけ土などが利用可能である。特に第2ハニカム層に植物の種子などが含まれる植生土嚢や植生吹きつけ土を充填すると、ハニカム補強法面を緑化することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、
前記複数のハニカム層の層間に不織布からなる層がある請求項1に記載のハニカム補強法面である。
【0017】
本発明のハニカム補強法面を構成する複数のハニカム層の間には、適宜不織布の層を設けてもよい。とりわけ上層のハニカム層に充填する充填材が下層のハニカム層に充填する充填材よりも粒度が小さい充填材の場合は、下層のハニカム層の充填材に目詰まりを起こす可能性があるため、上層のハニカム層と下層のハニカム層の間に目詰まり防止の対策として不織布の層を配置することは好適である。
【0018】
請求項3記載の発明は、
前記複数のハニカム層を前記ハニカム補強法面に対してほぼ垂直に貫き、地山法面に食い込む垂直杭が配置されてなる請求項1または2のいずれかに記載のハニカム補強法面である。
【0019】
本発明のハニカム補強法面を構成する複数のハニカム層の法面勾配に対してほぼ垂直に配置され法面形成面に食い込む垂直杭を設置すると、複数のハニカム層と法面形成面とを一体化させることができ、ハニカム層の崩壊が起こりにくくなり好適である。
【0020】
請求項4記載の発明は、
前記ハニカム層に当該ハニカム層とほぼ平行に法面の天端から法尻まで貫く縦筋が配置されてなる請求項1から3のいずれかに記載のハニカム補強法面である。
【0021】
本発明のハニカム層とほぼ平行に法面の天端から法尻まで貫く縦筋をハニカム層内に設置すると、ハニカム層を構成するセルの変形やハニカム層のずり落ちなどを抑止できる。
【0022】
請求項5記載の発明は、
前記ハニカム層中に略等標高レベルの法面延長方向に延設される横筋が配置されてなる請求項1から4のいずれかに記載のハニカム補強法面である。
【0023】
本発明のハニカム層中に略等標高レベルの法面延長方向に延設される横筋を配置すると、ハニカム層を構成するセルの変形やハニカム層のずり落ちなどを抑止できる。
【0024】
請求項6記載の発明は、
前記複数のハニカム層の最上層のハニカム層上に植生シート、植生注入マット、植生吹付のいずれかからなる植生形成層が配置されてなる請求項1から5のいずれかに記載のハニカム補強法面である。
【0025】
本発明の複数のハニカム層の最上層のハニカム層上に植生シートまたは植生注入マットなどからなる植生形成層を設置すると、ハニカム補強法面を植生させることができる。
【0027】
老朽化した既設コンクリート法面に、透水性の大きい充填材を充填した第1ハニカム層を設置し、当該第1ハニカム層の上に不織布層を設置し、さらに当該不織布層の上に、充填材として植生土嚢もしくは植生吹きつけ土を充填した第2ハニカム層を設置することで、老朽化した既設コンクリート法面を保護しながら法面を緑化することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、法面形成面にハニカム補強法面を構築する際に、法面形成面上に、当該法面形成面と略平行の複数のハニカム層を積層して設置することで、激しい表面浸食に耐えるハニカム補強法面を構築できる。また、各ハニカム層におのおの異なる性質の充填材を充填することにより、複数の性能を有するハニカム補強法面を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ハニカム状立体補強材の展張前の斜視図である。
図2】ハニカム状立体補強材を展張した際の斜視図である。
図3】ハニカム状立体補強材を法面形成面上で展帳した際の斜視図である。
図4】法面形成面上で展帳したハニカム状立体補強材に充填材を充填し、ハニカム層を作成した際の斜視図である。
図5】法面形成面上にハニカム層を2層積層したハニカム補強法面の断面図である。
図6】砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面の断面図である。
図7】砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面に垂直杭を配置した断面図である。
図8】砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面に縦筋を配置した断面図である。
図9】第1ハニカム層に縦筋を配置する際の斜視図である。
図10】砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面に横筋を配置した断面図である。
図11】第1ハニカム層に横筋を配置する際の斜視図である。
図12】砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面の上に植生形成層を配置した断面図である。
図13】老朽化した既設のコンクリート法面上に砕石を充填した第1ハニカム層と植生吹きつけ土からなる充填材を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面を配置した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。また、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0031】
〔実施形態〕
本発明は、法面形成面にハニカム補強法面を構築する際に、法面形成面上に、当該法面形成面と略平行の複数のハニカム層を積層して設置することで、激しい表面浸食に耐え、また、各ハニカム層におのおの異なる性質の充填材を充填することにより、複数の性能を有するハニカム補強法面を構築することを発明の要旨としているが、このような事例はこれまで知られていない。
【0032】
すなわち本発明は、
複数の長片状の樹脂又は繊維シートからなるストリップ材を幅方向に並設し互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合し、これを前記幅方向と直交する方向に展張することによってハニカム状のセルを形成するハニカム状立体補強材に充填材を充填してなるハニカム層を法面形成面上に当該法面形成面に対して略平行に設置するハニカム補強法面であって、当該法面形成面と略平行に複数のハニカム層が配置されてなるハニカム補強法面である。
【0033】
本願発明に使用するハニカム状立体補強材及びハニカム構造体を説明する。
図1は、本願発明に使用するハニカム状立体補強材(3セル)の展張前の斜視図である。図1では3セルのハニカム状立体補強材1を例示したが、ハニカム状立体補強材のセル数は3セルに限らず何セルあってもよい。以下、当該ハニカム状立体補強材1から作製されるハニカム層やハニカム補強法面についても同様である。ハニカム状立体補強材1は、複数の長片状の樹脂又は繊維シートからなるストリップ材2を幅方向に並設し互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に一定間隔の結合部位4にて結合したものである。このハニカム状立体補強材1は展張方向aに展張してハニカム状のセル構造を形成する。ハニカム状立体補強材に利用される素材は樹脂が好ましく、樹脂の中でも高密度ポリエチレンが好適である。
【0034】
ストリップ材2にはセル内に溜まる水を排出するために孔3を設ける場合がある。孔の大きさや形状はどのようなものでもよい。孔の数は多い方が良いが、多すぎるとストリップ材の強度が低下するため、ストリップ材の面積の40%を越えない程度の数がよい。また孔の配置は直列でも千鳥配置でもよい。
【0035】
図2は、図1で示したハニカム状立体補強材(3セル)を展張した際の斜視図である。ハニカム状立体補強材1を展張すると、ハニカム状のセル5が形成される。一般的なハニカム状立体補強材1の使用方法としては、ハニカム状立体補強材1のセル5内にセルの高さまで充填材を充填して締め固めを行うことにより、剛性のあるハニカム構造体(ハニカム層)を形成させる。
【0036】
図3は、ハニカム状立体補強材1を法面形成面上で展帳した際の斜視図である。図3のようにハニカム状立体補強材1を建設機械等で整地された法面(法面形成面6)上で展帳して、展帳したハニカム状立体補強材のセル5に充填材を充填することでハニカム層7を形成し、ハニカム補強法面を構築することができる。本発明では法面形成面6の上にハニカム層7を複数層積層することでハニカム補強法面の浸食による耐性をより強固にすることができる。
図4には、法面形成面6上で展帳したハニカム状立体補強材1に充填材8を充填し、ハニカム層7を作成した際の斜視図を示した。
【0037】
図5図8図10図12図13の断面図は、図4示したz平面で切り取られた断面であり、その断面を視線方向bから見たものである。
【0038】
図5は、法面形成面にハニカム層7を2層積層したハニカム補強法面の断面図である。図5のハニカム補強法面は建設機械等で整地された法面(法面形成面6)上にハニカム層を2層積層したが、ハニカム層に充填された充填材は同じ種類のもの(図5では充填材として土砂を用いたものを例示)を用いた例である。ハニカム層7を2層積層してハニカム補強法面を構築した場合には、法面表面の第2ハニカム層7Bが表面浸食しても2層目の第1ハニカム層7Aが法面を守るため、大規模な法面崩壊が起こる可能性が低くなる。
【0039】
図6は、砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面の断面図である。
第1ハニカム層7Aと第2ハニカム層7Bに充填する充填材に性質の異なる充填材を充填することで、第1ハニカム層7Aと第2ハニカム層7Bに異なる機能を分担することができる。例えば、第1ハニカム層7Aに砕石8Bを充填し第2ハニカム層7Bに土砂8Aを充填した場合には、第1ハニカム層7Aには排水機能を有し、第2ハニカム層7Bの表面には植生をさせることができる。この場合、第2ハニカム層7Bの充填材(土砂)が第1ハニカム層7Aの充填材(砕石)よりも粒度が細かい成分(土や粘土)を含むため、第2ハニカム層7Bから第1ハニカム層7Aへの充填材の細粒分の移動を防止するため、細粒分より目の細かい不織布9を第1ハニカム層7Aと第2ハニカム層7Bとの間に挟むことが望ましい。
【0040】
ハニカム層に充填する充填材は様々なものを用いることができるが、例えば、土砂、砂質土、砕石、クラッシャーラン、グリズリアンダー材、火山灰土、コンクリート、モルタル、発泡ウレタン、発泡スチロール、植生土嚢、植生吹きつけ土などが利用可能である。
【0041】
法面を形成する最上層のハニカム層(本実施形態の場合は第2ハニカム層)にコンクリートやモルタルを充填すると、剛性のある強固なハニカム法面を形成できる。また、法面を形成する最上層のハニカム層(本実施形態の場合は第2ハニカム層)に植生土嚢や植生吹きつけ土を充填すると、ハニカム法面を緑化することができる。
【0042】
法面を形成する最上層のハニカム層(本実施形態の場合は第2ハニカム層)を植生するには、展帳したハニカム状立体補強材のセルに植物の種の入った植生土嚢を充填したり、土、肥料、接合材、種子、水などを混合した植生吹きつけ土をモルタル吹付け用ガンに投入して展帳したハニカム状立体補強材のセル内に吹付けながら充填したりすることで、法面を形成する最上層のハニカム層(本実施形態の場合は第2ハニカム層)を緑化することができる。
【0043】
図7は、砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面に垂直杭を配置した断面図である。
第2ハニカム層7Bと第1ハニカム層7Aを法面勾配に対してほぼ垂直に貫き、法面形成面6に到達し法面形成面6に食い込むように垂直杭10を設置することで、第2ハニカム層7Bと第1ハニカム層7Aと法面形成面6を一体化させて、ハニカム層の剥離崩壊を起こしにくくすることが可能である。垂直杭10はどのような材料の杭でも利用可能である。具体的には、金属製や樹脂製、コンクリート製のものなどが挙げられる。とりわけ金属製の鋼製鉄筋などが好適である。
【0044】
図8は、砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面に縦筋を配置した断面図である。
第ハニカム層7Aと第2ハニカム層7Bの法面勾配とほぼ平行に法面の天端から法尻まで貫く縦筋11をハニカム層に設置することで、ハニカム層を構成するセルの変形やハニカム層のずり落ちなどを抑止できる。縦筋はどのような材料ものでも利用可能である。具体的には、金属製の鉄筋や樹脂製のロープなどが挙げられる。とりわけ金属製の鋼製鉄筋が好適である。
【0045】
図9は、第1ハニカム層に縦筋を配置する際の斜視図である。
縦筋11は、ハニカム層構築時に於いてハニカム状立体補強材1を展帳しながら法面上に設置する際に充填材8を充填する前にハニカム層のストリップ材2を貫き、セルを法面方向に縦断するような形で設置される。縦筋設置後に充填材8を充填し、ハニカム層7を構築する。
【0046】
図10は、砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム補強法面に横筋を配置した断面図である。
ハニカム層7中の略等標高レベルの法面延長方向に延設される横筋12を配置することで、ハニカム層7を構成するセルの変形やハニカム層のずり落ちなどを抑止できる。横筋12はどのような材料ものでも利用可能である。具体的には、金属製の鉄筋や樹脂製のロープなどが挙げられる。とりわけ金属製の鋼製鉄筋が好適である。
【0047】
図11は、第1ハニカム層に横筋を配置する際の斜視図である。
横筋12は、ハニカム層構築時に於いてハニカム状立体補強材1を展帳しながら法面上に設置する際に充填材8を充填する前にハニカム層7のストリップ材2を貫き、セルを法面の延長方向にほぼ等標高レベルに縦断するような形で設置される。横筋設置後に充填材を充填し、ハニカム層を構築する。
【0048】
図12は、砕石を充填した第1ハニカム層と土砂を充填した第2ハニカム層を積層したハニカム法面の上に植生形成層を配置した断面図である。
第2ハニカム層7Bの上に植生形成層13を設置すると、ハニカム補強法面に植生を促すことができる。植生形成層13としては、植生シートや植生注入マットが好適である。
【0049】
本発明に利用可能な植生シートは、不織布や織布などの繊維形状をしており、前記繊維中に植物の種子や肥料を含ませたシートなどが好適である。また植生注入マットとは、連続した袋状のマットを法面に展開・固定した後、バーク堆肥・種子・肥料・水などを注入ポンプ等により注入するものである。
【0050】
本発明は老朽化した既設のコンクリート法面を緑化する工法として適用可能である。図13は、老朽化した既設のコンクリート法面上に砕石を充填した第1ハニカム層7Aと植生吹きつけ土からなる充填材を充填した第2ハニカム層7Bを積層したハニカム補強法面を配置した断面図である。
【0051】
すなわち、老朽化した既設のコンクリート法面14上にハニカム状立体補強材1を展帳して設置し、当該展帳したハニカム状立体補強材1のセル5に砕石などの透水性の大きい充填材8Bを充填して第1ハニカム層7Aを設置し、当該第1ハニカム層7Aの上に不織布9層を敷設し、該不織布9層の上にさらに展帳したハニカム状立体補強材1を展帳して設置し、当該展帳したハニカム状立体補強材1のセル5に充填材8として植生土嚢もしくは植生吹きつけ土8Cを充填して第2ハニカム層7Bを設置することで、老朽化した既設のコンクリート法面を緑化することが可能である。
【0052】
老朽化した既設コンクリート法面のすぐ上に排水性能のある第1ハニカム層7Aを設置すると、雨水などが既設コンクリート法面14の上面を這うように排水させることができる。また、第1ハニカム層7Aと第2ハニカム層7Bの間に不織布9層を設置することで、第2ハニカム層7Bの土壌が透水性を有する第1ハニカム層7Aに流れ込まずに、第1ハニカム層7Aの透水性能を維持することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明を利用することで、法面形成面にハニカム補強法面を構築する際に、法面形成面上に、当該法面形成面と略平行の複数のハニカム層を積層して設置することで、激しい表面浸食に耐えるハニカム補強法面を構築でき、また、各ハニカム層におのおの異なる性質の充填材を充填することにより、複数の性能を有するハニカム補強法面を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ハニカム状立体補強材
2 ストリップ材
3 孔
4 結合部位
5 セル
6 法面形成面
7 ハニカム層
7A 第1ハニカム層
7B 第2ハニカム層
8 充填材
8A 土砂からなる充填材
8B 砕石からなる充填材
8C 植生吹きつけ土からなる充填材
9 不織布
10 垂直杭
11 縦筋
12 横筋
13 植生形成層
14 既設コンクリート法面
a 展張方向
b 視線方向
z 断面図断面
図1
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図13