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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
F28D7/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019166658
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021042924
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】麓 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069265(WO,A1)
【文献】実開昭56-132498(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/10
F01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、流入端面から流出端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の外周壁面に嵌合される第1筒状部材と、
前記柱状ハニカム構造体の内周壁面に嵌合される第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の径方向内側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する筒状のガイド部材と、
前記第1筒状部材の上流側端部と前記ガイド部材の上流側端部との間を接続する上流側筒状部材と、
前記第1筒状部材の下流側端部に接続される下流側筒状部材と
を備え、
前記ガイド部材は、下流側に向かって拡径するように傾斜する傾斜部を有し、
前記ガイド部材の内周面側を流通する前記第1流体を前記第2筒状部材の内周面側と前記ガイド部材の外周面側との間に導くための連通口が、前記ガイド部材の傾斜部先端と前記第2筒状部材との間、又は前記ガイド部材の前記傾斜部に設けられている熱交換器。
【請求項2】
前記連通口の形成領域における前記ガイド部材の軸方向に垂直方向の断面積と、前記下流側筒状部材の下流側端部の軸方向に垂直な方向の断面積とが略同一である、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
下記式(1):
A=|A1-A2|/A2×100 ・・・(1)
で表される割合RA(式中、A1は前記下流側筒状部材の下流側端部の軸方向に垂直な方向の断面積であり、A2は前記連通口の形成領域における前記ガイド部材の軸方向に垂直な方向の断面積である)が75%以下である、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
下記式(2):
B=|A3-A4|/A4×100 ・・・(2)
で表される割合RB(式中、A3は前記第1筒状部材と前記第2筒状部材との間の流路端部の軸方向に垂直な方向の断面積又はπ×E×Fによって算出される値のうちの小さい値であり;A4は前記連通口の開口面積であり;前記連通口が前記ガイド部材の前記傾斜部先端と前記第2筒状部材との間に設けられている場合には、Eは、前記第2筒状部材の前記下流側端部と前記下流側筒状部材との間の軸方向に平行な方向の距離であり、Fは、前記第2筒状部材の前記下流側端部における内径であり;前記連通口がガイド部材の前記傾斜部に設けられている場合には、Eは、前記ガイド部材の前記下流側端部と前記下流側筒状部材との間の軸方向に平行な方向の距離であり、Fは、前記ガイド部材の前記下流側端部における内径である)が700%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1筒状部材の径方向外側に、第2流体の流路を構成するように間隔をもって配置される外筒部材を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第2筒状部材又は前記ガイド部材の下流側端部に配置される開閉バルブを更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記開閉バルブは、熱交換時に前記第2筒状部材及び/又は前記ガイド部材の内側における前記第1流体の流れを調整可能に構成されている、請求項6に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐため、冷却水、エンジンオイル、オートマチックトランスミッションフルード(ATF:Automatic Transmission Fluid)などを早期に暖めて、フリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
このようなシステムとして、例えば、熱交換器がある。熱交換器は、内部に第1流体を流通させるとともに外部に第2流体を流通させることにより、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う装置である。このような熱交換器では、高温の流体(例えば、排ガスなど)から低温の流体(例えば、冷却水など)へ熱交換することにより、熱を有効利用することができる。
特許文献1には、第1流体(例えば、排ガス)が流通可能な複数のセルを有するハニカム構造体として形成された集熱部と、集熱部の外周面を覆うように配置され、集熱部との間に第2流体(例えば、冷却水)が流通可能なケーシングとを有する熱交換器が提案されている。
しかしながら、特許文献1の熱交換器は、第1流体から第2流体に排熱を常時回収する構造となっているため、排熱を回収する必要がない場合(熱交換が必要でない場合)にも排熱を回収してしまうことがあった。そのため、排熱を回収する必要がない場合に回収された排熱を放出するためのラジエータの容量を大きくする必要があった。
【0004】
一方、特許文献2には、エンジンからの排気ガスを車両後方側へ流通させる内管と;前記内管の外周に前記内管の軸方向に沿って配置され、前記内管の後端部よりも車両後方側に延出された外管と;前記内管の後端部を開閉するバルブと;前記内管の内部に対して車両後方側へ向かって開口する流入口を有し、前記内管の内部から前記流入口を通じて流入した排気ガスを車両前方側へ流通させ、該排気ガスを前記内管に形成された孔を通じて前記内管の径方向外側へ導く第一絞り部と;前記内管と前記外管との間に形成され、前記孔を通じて前記内管の径方向外側へ導かれた排気ガスを、前記内管の径方向外側で車両後方側へ流通させる流路と;前記内管の径方向外側に配置され、前記流路を流通する排気ガスと冷媒との間で熱交換する熱交換部と;前記流路における前記熱交換部よりも流通方向下流側に設けられた第二絞り部とを備える熱交換器(排気熱回収器)が提案されている。
【0005】
特許文献2の熱交換器は、バルブの開閉によって熱回収(熱交換)の促進と抑制との切替えを行うことができる。特に、この熱交換器は、第一絞り部及び第二絞り部を設けているため、熱回収抑制時には、内管の後端部を開放する(バルブを開とする)ことにより、内管から熱交換部へ排気ガスが流入し難くなる結果として熱遮断性能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-037165号公報
【文献】特開2018-119418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の熱交換器は、熱回収抑制時(バルブを開とする場合)に、第一絞り部周辺で排気ガスの流れの剥離が起こるため、圧力が低下する。他方、内管の後端部は、流路断面積が大きいため、その周辺ではガスの流速が低下して圧力が増加する。その結果、第一絞り部周辺の圧力が内管の後端部周辺よりも圧力が低くなり、その圧力差によって内管の後端部から熱交換部に排気ガスが逆流し易くなる。なお、排気ガスの流れの剥離とは、排気ガスの流れが物体から剥がれてしまう現象のことを意味する。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、熱回収抑制時に第1流体(排気ガス)の逆流を抑制して熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱交換器の構造について鋭意研究を行った結果、特定の構造を有する熱交換器とすることにより、上記の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、流入端面から流出端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の前記外周壁面に嵌合される第1筒状部材と、
前記柱状ハニカム構造体の前記内周壁面に嵌合される第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の径方向内側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する筒状のガイド部材と、
前記第1筒状部材の上流側端部と前記ガイド部材の上流側端部との間を接続する上流側筒状部材と、
前記第1筒状部材の下流側端部に接続される下流側筒状部材と
を備え、
前記ガイド部材は、下流側に向かって拡径するように傾斜する傾斜部を有し、
前記ガイド部材の内周面側を流通する前記第1流体を前記第2筒状部材の内周面側と前記ガイド部材の外周面側との間に導くための連通口が、前記ガイド部材の傾斜部先端と前記第2筒状部材との間、又は前記ガイド部材の前記傾斜部に設けられている熱交換器である。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱回収抑制時に第1流体(排ガス)の逆流を抑制して熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図2図1の熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図4図3の熱交換器におけるb-b’線の断面図である。
図5】比較例1で作製した熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0013】
本発明の実施形態に係る熱交換器は、中空型の柱状ハニカム構造体(以下、「柱状ハニカム構造体」と略すことがある)と、第1筒状部材と、第2筒状部材と、ガイド部材と、上流側筒状部材と、下流側筒状部材とを備える。この熱交換器は、外筒部材及び開閉バルブの少なくとも1つを更に備えることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。また、図2は、図1の熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
図1及び2に示されるように、本発明の実施形態に係る熱交換器100は、中空型の柱状ハニカム構造体10(以下、「柱状ハニカム構造体」と略すことがある)と、第1筒状部材20と、第2筒状部材30と、ガイド部材40と、上流側筒状部材50と、下流側筒状部材60と、外筒部材70及び開閉バルブ80を備えている。
【0015】
<中空型の柱状ハニカム構造体10>
中空型の柱状ハニカム構造体10は、内周壁11、外周壁12、及び内周壁11と外周壁12との間に配設され、流入端面13aから流出端面13bまで延びる第1流体の流路となる複数のセル14を区画形成する隔壁15を有する。
ここで、本明細書において「中空型の柱状ハニカム構造体10」とは、第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体10の断面において、中心部に中空領域を有する柱状ハニカム構造体10を意味する。
中空型の柱状ハニカム構造体10の形状(外形)としては、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。
また、中空型の柱状ハニカム構造体10における中空領域の形状についても、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。
なお、中空型の柱状ハニカム構造体10の形状と、中空領域の形状とは同一であっても異なっていてもよいが、外部からの衝撃、熱応力などに対する耐性の観点から、同一であることが好ましい。
【0016】
セル14の形状としては、特に限定されず、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、又はその他の多角形などとすることができる。また、セル14は、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、放射状に設けられていることが好ましい。このような構成とすることにより、セル14を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体10の外部に効率良く伝達することができる。
【0017】
隔壁15の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは0.2~0.6mmである。隔壁15の厚みを0.1mm以上とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体10の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁15の厚さを1.0mm以下とすることにより、開口面積の低下によって圧力損失が大きくなったり、第1流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりするなどの問題を抑制することができる。
【0018】
内周壁11及び外周壁12の厚みは、特に限定されないが、隔壁15の厚みよりも大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などによって破壊(例えば、ひび、割れなど)が起こり易い内周壁11及び外周壁12の強度を高めることができる。
なお、内周壁11及び外周壁12の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、内周壁11及び外周壁12の厚みは、熱交換器100を一般的な熱交換用途に用いる場合は、好ましくは0.3mm以上10mm以下、より好ましくは0.5mm~5mm、更に好ましくは1mm~3mmである。また、熱交換器100を蓄熱用途に用いる場合は、外周壁12の厚みを10mm以上として外周壁12の熱容量を増大させてもよい
【0019】
隔壁15、内周壁11及び外周壁12は、セラミックスを主成分とする。「セラミックスを主成分とする」とは、全成分の質量に占めるセラミックスの質量比率が50質量%以上であることをいう。
【0020】
隔壁15、内周壁11及び外周壁12の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。また、隔壁15、内周壁11及び外周壁12の気孔率は0%であってもよい。隔壁15、内周壁11及び外周壁12の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0021】
隔壁15、内周壁11及び外周壁12は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。このような材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si34、及びSiCなどが挙げられる。これらの中でも、安価に製造でき、高熱伝導であることからSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを用いることが好ましい。
【0022】
第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体10の断面におけるセル密度(すなわち、単位面積当たりのセル14の数)は、特に限定されないが、好ましくは4~320セル/cm2である。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁15の強度、ひいては中空型の柱状ハニカム構造体10自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、第1流体が流れる際の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0023】
中空型の柱状ハニカム構造体10のアイソスタティック強度は、特に限定されないが、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは200MPa以上である。中空型の柱状ハニカム構造体10のアイソスタティック強度を100MPa以上とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体10の耐久性を向上させることができる。中空型の柱状ハニカム構造体10のアイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505-87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0024】
第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における外周壁12の直径(外径)は、特に限定されないが、好ましくは20~200mm、より好ましくは30~100mmである。このような直径とすることにより、熱回収効率を向上させることができる。外周壁12が円形でない場合には、外周壁12の断面形状に内接する最大内接円の直径を、外周壁12の直径とする。
また、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における内周壁11の直径は、特に限定されないが、好ましくは1~50mm、より好ましくは2~30mmである。内周壁11の断面形状が円形でない場合には、内周壁11の断面形状に内接する最大内接円の直径を、内周壁11の直径とする。
【0025】
中空型の柱状ハニカム構造体10の熱伝導率は、特に限定されないが、25℃において、好ましくは50W/(m・K)以上、より好ましくは100~300W/(m・K)、更に好ましくは120~300W/(m・K)である。中空型の柱状ハニカム構造体10の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、中空型の柱状ハニカム構造体10内の熱を外部に効率良く伝達させることができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611-1997)により測定した値を意味する。
【0026】
中空型の柱状ハニカム構造体10のセル14に、第1流体として排ガスを流す場合、中空型の柱状ハニカム構造体10の隔壁15に触媒を担持させてもよい。隔壁15に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NOx、HCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になるとともに、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることも可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、又はそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0027】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、特に限定されないが、好ましくは10~400g/Lである。また、貴金属を含む触媒を用いる場合、その担持量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~5g/Lである。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすることにより、触媒作用が発現し易くなる。また、触媒(触媒金属+担持体)の担持量400g/L以下とすることにより、圧力損失とともに製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものを用いることができる。
【0028】
<第1筒状部材20>
第1筒状部材20は、柱状ハニカム構造体10の外周壁12面に嵌合される。
第1筒状部材20は、上流側端部21a及び下流側端部21bを有する筒状部材である。
第1筒状部材20の軸方向は、柱状ハニカム構造体10の軸方向と一致し、第1筒状部材20の中心軸は柱状ハニカム構造体10の中心軸と一致することが好ましい。また、第1筒状部材20の軸方向の中央位置は、柱状ハニカム構造体10の軸方向の中央位置と一致することが好ましい。さらに、第1筒状部材20の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。
第1筒状部材20としては、特に限定されず、例えば、柱状ハニカム構造体10の外周壁12面に嵌合して柱状ハニカム構造体10の外周壁12を周回被覆する筒状部材を用いることができる。
【0029】
ここで、本明細書において、「嵌合」とは、柱状ハニカム構造体10と第1筒状部材20とが、相互に嵌まり合った状態で固定されていることをいう。したがって、柱状ハニカム構造体10と第1筒状部材20との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などにより、柱状ハニカム構造体10と第1筒状部材20とが相互に固定されている場合なども含まれる。
【0030】
第1筒状部材20は、柱状ハニカム構造体10の外周壁12面に対応した内周面形状を有することが好ましい。第1筒状部材20の内周面が柱状ハニカム構造体10の外周壁12に直接接触することで、熱伝導性が良好となり、柱状ハニカム構造体10内の熱を第1筒状部材20に効率良く伝達することができる。
【0031】
熱回収効率を高めるという観点からは、柱状ハニカム構造体10の外周壁12の全面積に対する、第1筒状部材20によって周回被覆される柱状ハニカム構造体10の外周壁12の部分の面積の割合は高いほうが好ましい。具体的には、当該面積割合は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは100%(すなわち、柱状ハニカム構造体10の外周壁12の全部が第1筒状部材20によって周回被覆される。)である。
なお、ここでいう「外周壁12」とは、柱状ハニカム構造体10の第1流体の流路方向に平行な面を指し、柱状ハニカム構造体10の第1流体の流路方向と垂直な面(流入端面13a及び流出端面13b)を示すものではない。
【0032】
第1筒状部材20の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。また、第1筒状部材20が金属製であると、後述する外筒部材70などとの溶接が容易に行える点でも優れている。第1筒状部材20の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0033】
第1筒状部材20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。第1筒状部材20の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第1筒状部材20の厚みは、好ましくは10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。第1筒状部材20の厚みを10mm以下とすることにより、熱抵抗を低減して熱伝導性を高めることができる。
【0034】
<第2筒状部材30>
第2筒状部材30は、柱状ハニカム構造体10の内周壁11面に嵌合される。
第2筒状部材30は、上流側端部31a及び下流側端部31bを有する筒状部材である。
第2筒状部材30の軸方向は、柱状ハニカム構造体10の軸方向と一致し、第2筒状部材30の中心軸は柱状ハニカム構造体10の中心軸と一致することが好ましい。また、第2筒状部材30の軸方向の中央位置は、柱状ハニカム構造体10の軸方向の中央位置と一致することが好ましい。
【0035】
第2筒状部材30としては、特に限定されず、外周面の一部が柱状ハニカム構造体10の内周壁11面と接する筒状部材を用いることができる。
ここで、第2筒状部材30の外周面の一部と柱状ハニカム構造体10の内周壁11面とは直接的に接していてもよく、他の部材を介して間接的に接していてもよい。
【0036】
第2筒状部材30の外周面の一部と柱状ハニカム構造体10の内周壁11面とは、相互に嵌まり合った状態で固定されている。固定方法としては、特に限定されず、上記第1筒状部材20の固定方法について述べた内容と同様である。
第2筒状部材30の材料は、特に限定されず、上記第1筒状部材20の材料について述べた内容と同様である。
第2筒状部材30の厚みは、特に限定されず、上記第1筒状部材20の厚みについて述べた内容と同様である。
【0037】
<ガイド部材40>
ガイド部材40は、第2筒状部材30の径方向内側に第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する。
ガイド部材40は、上流側端部41a及び下流側端部41bを有する筒状部材である。
ガイド部材40の軸方向は、柱状ハニカム構造体10の軸方向と一致し、ガイド部材40の中心軸は柱状ハニカム構造体10の中心軸と一致することが好ましい。
【0038】
ガイド部材40としては、例えば、ガイド部材40及び第2筒状部材30の軸方向に垂直な断面において、第2筒状部材30の内径よりも小さい外径を有する筒状部材を用いることができる。このような構成とすることにより、第2筒状部材30とガイド部材40とが接触せず、第2筒状部材30とガイド部材40との間に形成される第1流体の流路を確保することができる。
ガイド部材40及び第2筒状部材30の軸方向に垂直な方向(第1流体の流路の軸方向に垂直な方向)における第2筒状部材30とガイド部材40と間の断面積は、特に限定されないが、下記で説明する上流側筒状部材50の軸方向に垂直な方向の上流側端部51aにおける断面積に対する、第2筒状部材30とガイド部材40との間の断面積の比が、好ましくは0.1~3、より好ましくは0.5~2である。このような範囲に断面積の比を制御することにより、熱回収時に圧力損失が増大することを抑制することができる。
【0039】
ガイド部材40は、下流側に向かって傾斜する傾斜部42を有する。この傾斜部42は、ガイド部材40の径(外径及び内径)が、下流側に向かって拡径する部分に相当する。
【0040】
ガイド部材40の内周面側を流通する第1流体を第2筒状部材30の内周面側とガイド部材40の外周面側との間に導くための連通口43は、ガイド部材40の傾斜部42先端と第2筒状部材30との間に設ければよい。このような連通口43は、ガイド部材40の傾斜部42の先端の外径を第2筒状部材30の内径よりも小さくすることによって設けることができる。
上記のような連通口43を有する場合、ガイド部材40及び第2筒状部材30の軸方向において、ガイド部材40の下流側端部41bは、第2筒状部材30の下流側端部31bよりも上流側端部31a側に位置する。
【0041】
或いは、当該連通口43は、図3及び4に示されるように、ガイド部材40の傾斜部42に設けてもよい。ここで、図3は、本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。また、図4は、図3の熱交換器におけるb-b’線の断面図である。
上記のような連通口43は、ガイド部材40の傾斜部42にガイド部材40の径方向に貫通する貫通孔44を形成することによって設けることができる。貫通孔44は、ガイド部材40の周方向全体に設けられていることが好ましい。また、貫通孔44は、ガイド部材40の軸方向に複数設けられていてもよい。
上記のような連通口43を有する場合、ガイド部材40及び第2筒状部材30の軸方向において、ガイド部材40の下流側端部41bは、第2筒状部材30の下流側端部31bよりも上流側端部31a側に位置していても、下流側端部31bよりも下流側に延在していてもよい。また、第2筒状部材30の下流側端部31bがガイド部材40と接続されていてもよい。
【0042】
上記のような位置に連通口43を設けることにより、連通口43の周辺で第1流体の流れの剥離が生じることを抑制することができるため、連通口43の周辺の圧力と、開閉バルブ80を通過した後の領域との圧力差が小さくなる。そのため、熱回収抑制時に、開閉バルブ80を通過した第1流体が下流側から柱状ハニカム構造体10に逆流することを抑制し、熱遮断性能を向上させることが可能となる。
【0043】
また、連通口43は、第2筒状部材30の軸方向において、上流側端部31aよりも下流側端部31b側に位置している。このような位置に連通口43を設けることにより、柱状ハニカム構造体10に向かう第1流体の流路方向が、ガイド部材40の内周面側を第1流体が流れる方向とは逆になる。そのため、熱回収抑制時に、第2筒状部材30とガイド部材40との間に第1流体が流入し難くなり、熱遮断性能を向上させることが可能となる。
【0044】
連通口43は、柱状ハニカム構造体10の軸方向において、柱状ハニカム構造体10の流出端面13bを越えて延在していてもよい。このような位置に連通口43を設けることにより、ガイド部材40の内周面側を第1流体が流れる方向とは逆の第1流体の流通経路が長くなる。そのため、熱回収抑制時に、第2筒状部材30とガイド部材40との間に第1流体がより一層流入し難くなり、熱遮断性能を向上させることが可能となる。
【0045】
ガイド部材40の固定方法としては、特に限定されず、上記第1筒状部材20の固定方法について述べた内容と同様である。
ガイド部材40の材料は、特に限定されず、上記第1筒状部材20の材料について述べた内容と同様である。
ガイド部材40の厚みは、特に限定されず、上記第1筒状部材20の厚みについて述べた内容と同様である。
【0046】
<上流側筒状部材50>
上流側筒状部材50は、第1筒状部材20の上流側端部21aとガイド部材40の上流側端部41aとの間を接続する筒状部材である。
上流側筒状部材50の軸方向は、柱状ハニカム構造体10の軸方向と一致し、上流側筒状部材50の中心軸は柱状ハニカム構造体10の中心軸と一致することが好ましい。
上流側筒状部材50は、フランジ部52を有することが好ましい。フランジ部52を有していれば、第1筒状部材20の上流側端部21aとガイド部材40の上流側端部41aとの間を接続することが容易になる。
【0047】
上流側筒状部材50の材料は、特に限定されず、上記第1筒状部材20の材料について述べた内容と同様である。
上流側筒状部材50の厚みは、特に限定されず、上記第1筒状部材20の厚みについて述べた内容と同様である。
【0048】
<下流側筒状部材60>
下流側筒状部材60は、第1筒状部材20の下流側端部21bに接続される。接続は、直接的又は間接的のいずれであってもよい。間接的な接続の場合、例えば、下流側筒状部材60と第1筒状部材20の下流側端部21bとの間に、後述する外筒部材70の下流側端部71bなどが配置されていてもよい。
【0049】
下流側筒状部材60は、上流側端部61a及び下流側端部61bを有する筒状部材である。
下流側筒状部材60の軸方向は、柱状ハニカム構造体10の軸方向と一致し、下流側筒状部材60の中心軸は柱状ハニカム構造体10の中心軸と一致することが好ましい。
下流側筒状部材60の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部が縮径又は拡径していてもよい。
【0050】
下流側筒状部材60の材料は、特に限定されず、上記第1筒状部材20の材料について述べた内容と同様である。
下流側筒状部材60の厚みは、特に限定されず、上記第1筒状部材20の厚みについて述べた内容と同様である。
【0051】
<外筒部材70>
外筒部材70は、第1筒状部材20の径方向外側に、第2流体の流路を構成するように間隔をもって配置される。
外筒部材70は、上流側端部71a及び下流側端部71bを有する筒状部材である。
外筒部材70の軸方向は、柱状ハニカム構造体10の軸方向と一致し、外筒部材70の中心軸は柱状ハニカム構造体10の中心軸と一致することが好ましい。
【0052】
外筒部材70は、第2流体を外筒部材70と第1筒状部材20との間の領域に供給するための供給管72、及び第2流体を外筒部材70と第1筒状部材20との間の領域から排出するための排出管73に接続されていることが好ましい。供給管72及び排出管73は、柱状ハニカム構造体10の軸方向両端部に対応する位置に設けられていることが好ましい。
また、供給管72及び排出管73は、同じ方向に向けて延出されていても、異なる方向に向けて延出されていてもよい。
【0053】
外筒部材70は、上流側端部71a及び下流側端部71bの内周面が第1筒状部材20の外周面と直接的又は間接的に接するように配置されていることが好ましい。
外筒部材70の上流側端部71a及び下流側端部71bの内周面を第1筒状部材20の外周面に固定する方法としては、特に限定されないが、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などを用いることができる。
【0054】
外筒部材70の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向中央部、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。例えば、外筒部材70の軸方向中央部を縮径させることにより、供給管72及び排出管73側の外筒部材70内で第2流体を第1筒状部材20の外周方向全体に行き渡らせることができる。そのため、軸方向中央部で熱交換に寄与しない第2流体が低減するため、熱交換効率を向上させることができる。
【0055】
外筒部材70の材料は、特に限定されず、上記第1筒状部材20について述べた内容と同様である。
【0056】
外筒部材70の厚みは、特に限定されず、上記第1筒状部材20の厚みについて述べた内容と同様である。
【0057】
<開閉バルブ80>
開閉バルブ80は、第2筒状部材30の下流側端部31b又はガイド部材40の下流側端部41bに配置される。
開閉バルブ80は、熱交換時(熱回収時)に第2筒状部材30及び/又はガイド部材40の内側における第1流体の流れを調整可能に構成される。また、開閉バルブ80は、非熱交換時(熱回収抑制時)に第2筒状部材30又はガイド部材40の内周面側における第1流体の流れを開放可能に構成される。すなわち、開閉バルブ80は、熱回収時に閉状態とすることにより、柱状ハニカム構造体10に第1流体を流通させることができ、熱回収抑制時に開状態とすることにより、柱状ハニカム構造体10への流れを抑制し、第2筒状部材30又はガイド部材40を介して下流側筒状部材60に第1流体を流通させることができる。
【0058】
開閉バルブ80の形状及び構造は、特に限定されず、開閉バルブ80が設けられる第2筒状部材30又はガイド部材40の形状などに応じて適切なものを選択すればよい。
【0059】
<連通口43の形成領域におけるガイド部材40の軸方向に垂直な方向の断面積と、下流側筒状部材60の下流側端部61bの軸方向に垂直な方向の断面積との関係>
連通口43の形成領域におけるガイド部材40の軸方向に垂直方向(図1及び3に示されるAの位置)の断面積と、下流側筒状部材60の下流側端部61bの軸方向に垂直な方向(図1及び図3に示されるBの位置)の断面積とは略同一であることが好ましい。このような構成とすることにより、連通口43の形成領域における圧力と、下流側筒状部材60の下流側端部61bにおける圧力とが略同一になる。そのため、熱回収抑制時に、開閉バルブ80を通過した第1流体が下流側から柱状ハニカム構造体10に逆流することを抑制し、熱遮断性能を向上させることができる。
【0060】
ここで、本明細書において「連通口43の形成領域」とは、連通口43が形成されている領域を意味する。例えば、連通口43が、ガイド部材40の傾斜部42先端と第2筒状部材30との間に設けられている場合には、ガイド部材40の傾斜部42先端と第2筒状部材30との間の領域のことを意味する。また、連通口43がガイド部材40の傾斜部42に設けられている場合は、連通口43(貫通孔44)が形成された傾斜部42の領域のことを意味する。
また、本明細書において「連通口43の形成領域」におけるガイド部材40の軸方向に垂直方向の断面積とは、連通口43が、ガイド部材40の傾斜部42先端と第2筒状部材30との間に設けられている場合には、ガイド部材40の傾斜部42先端の軸方向に垂直な方向の断面積を意味する。また、連通口43がガイド部材40の傾斜部42に設けられている場合は、連通口43(貫通孔44)が形成された傾斜部42の領域の中央部の軸方向に垂直な方向の断面積を意味する。
【0061】
連通口43の形成領域におけるガイド部材40の軸方向に垂直な方向の断面積と、下流側筒状部材60の下流側端部61bの軸方向に垂直な方向の断面積との関係(割合RA)は、下記式(1)で表すことができる。
A=|A1-A2|/A2×100 ・・・(1)
式(1)中、A1は下流側筒状部材60の下流側端部61bの軸方向に垂直な方向の断面積であり、A2は連通口43の形成領域におけるガイド部材40の軸方向に垂直方向の断面積である。
式(1)で表されるRAは、好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下である。このような範囲にRAを制御することにより、熱回収抑制時に、開閉バルブ80を通過した第1流体が下流側から柱状ハニカム構造体10に逆流することを抑制し、熱遮断性能を向上させることができる。
【0062】
<連通口43の大きさと、柱状ハニカム構造体10の流出端面13bよりも下流側の第1流体の流路の大きさとの関係>
第1筒状部材20と第2筒状部材30との間の流路端部の軸方向に垂直な方向(図1及び図3に示されるCの位置)の断面積と、連通口43(図1及び図3に示されるDの位置)の開口面積とは略同一であることが好ましい。このような構成とすることにより、連通口43の開口部における圧力と、第1筒状部材20と第2筒状部材30との間の流路端部における圧力とが略同一になる。そのため、熱回収抑制時に、開閉バルブ80を通過した第1流体が下流側から柱状ハニカム構造体10に逆流することを抑制し、熱遮断性能を向上させることができる。
【0063】
ここで、本明細書において「連通口43の開口面積」とは、連通口43が、ガイド部材40の傾斜部42先端と第2筒状部材30との間に設けられている場合には、ガイド部材40の傾斜部42先端(外周面の先端)と第2筒状部材30との間に形成される部分の軸方向に垂直な方向の断面積を意味する。また、連通口43がガイド部材40の傾斜部42に設けられている場合は、傾斜部42の外周面における連通口43(貫通孔44)の開口面積のことを意味する。
【0064】
また、連通口43の大きさと、柱状ハニカム構造体10の流出端面13bよりも下流側の第1流体の流路の大きさとの関係(割合RB)は、下記式(2)で表すことができる。
B=|A3-A4|/A4×100 ・・・(2)
式(2)中、A3は、第1筒状部材20と第2筒状部材30との間の流路端部の軸方向に垂直な方向の断面積又はπ×E×Fによって算出される値のうちの小さい値であり;A4は連通口43の開口面積であり;連通口43がガイド部材40の傾斜部42先端と第2筒状部材30との間に設けられている場合には、Eは、第2筒状部材30の下流側端部31bと下流側筒状部材60との間の軸方向に平行な方向の距離であり、Fは、第2筒状部材30の下流側端部31bにおける内径であり(図1参照);連通口43がガイド部材40の傾斜部42に設けられている場合には、Eは、ガイド部材40の下流側端部41bと下流側筒状部材60との間の軸方向に平行な方向の距離であり、Fは、ガイド部材40の下流側端部41bにおける内径である(図3参照)。
式(2)で表されるRBは、好ましくは700%以下、より好ましくは100%以下である。このような範囲にRBを制御することにより、熱回収抑制時に、開閉バルブ80を通過した第1流体が下流側から柱状ハニカム構造体10に逆流することを抑制し、熱遮断性能を向上させることができる。
【0065】
<第1流体及び第2流体>
熱交換器100に用いられる第1流体及び第2流体としては、特に限定されず、種々の液体及び気体を利用することができる。例えば、熱交換器100が自動車に搭載される場合、第1流体として排ガスを用いることができ、第2流体として水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)を用いることができる。また、第1流体は、第2流体よりも高温の流体とすることができる。
【0066】
<熱交換器100の製造方法>
熱交換器100は、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。例えば、熱交換器100は、以下に説明する方法に従って製造することができる。
まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。このとき、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、セル14の形状及び密度、隔壁15、内周壁11及び外周壁12の形状及び厚さなどを制御することができる。また、ハニカム成形体の材料としては、前述のセラミックスを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水及び/又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練して坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁15により区画形成されたセル14を有する中空型の柱状ハニカム構造体10を得ることができる。
【0067】
次に、中空型の柱状ハニカム構造体10を第1筒状部材20内に挿入し、中空型の柱状ハニカム構造体10の外周壁12面に第1筒状部材20を嵌合させる。次に、中空型の柱状ハニカム構造体10の中空領域に第2筒状部材30を挿入し、中空型の柱状ハニカム構造体10の内周壁11面に第2筒状部材30を嵌合させる。次に、第1筒状部材20の径方向外側に外筒部材70を配置して固定する。なお、供給管72及び排出管73は、外筒部材70に予め固定しておいてもよいが、適切な段階で外筒部材70に固定してもよい。次に、第2筒状部材30の径方向内側にガイド部材40を配置し、上流側筒状部材50によって第1筒状部材20の上流側端部21aとガイド部材40の上流側端部21aとの間を接続する。次に、第2筒状部材30の下流側端部31b又はガイド部材40の下流側端部41bに開閉バルブ80を取り付ける。次に、第1筒状部材20の下流側端部21bに下流側筒状部材60を配置する。
また、各部材の配置及び固定(嵌合)の順番は上記に限定されず、製造可能な範囲で適宜変更してもよい。また、固定(嵌合)方法は、上述した方法を用いればよい。
【0068】
本発明の実施形態1に係る熱交換器100は、熱回収抑制時に、連通口43の周辺で第1流体の流れの剥離が生じることを抑制することができるため、連通口43の周辺の圧力と、開閉バルブ80を通過した後の領域との圧力差が小さくなる。そのため、第1流体の逆流を抑制して熱遮断性能を向上させることができる。
【実施例
【0069】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0070】
<中空型の柱状ハニカム構造体の作製>
SiC粉末を含む坏土を所望の形状に押出成形した後、乾燥させ、所定の外形寸法に加工し、Si含浸焼成することによって、中空型の柱状ハニカム構造体を製造した。中空型の柱状ハニカム構造体は、外径を75mm、中空領域の径を57mm、第1流体の流路方向の長さを33mm、隔壁の厚さを0.3mm、内周壁の厚さを1.5mm、外周壁の厚さを1.5mmに設定した。また、中空型の柱状ハニカム構造体は、隔壁、内周壁及び外周壁の気孔率を1%、セル密度を300セル/cm2、アイソスタティック強度を150MPa、25℃における熱伝導率を150W/(m・K)に設定した。
【0071】
<熱交換器の作製>
(実施例1)
上記で作製した中空型の柱状ハニカム構造体を用い、図1及び2に示される構造を有する熱交換器100を上述の方法によって作製した。熱交換器100の各部材は、ステンレス製とし、それらの厚さは1~1.5mmとした。また、上流側筒状部材50の軸方向に垂直な方向の上流側端部51aにおける断面積に対する、第2筒状部材30とガイド部材40との間の断面積の比を0.3とした。なお、この熱交換器100ではRAを50%、RBを40%に設定した。
(比較例1)
上記で作製した中空型の柱状ハニカム構造体を用い、図5に示される構造を有する熱交換器300(下流側に向かって傾斜する傾斜部42を有していないガイド部材40を用いたこと以外は、実施例1の熱交換器100と同じ構造)を上述の方法に準じて作製した。なお、この熱交換器ではRAを55%、RBを160%に設定した。
【0072】
上記の実施例及び比較例で得られた熱交換器100,300について、熱回収抑制時の回収熱量及び逆流ガス流量をシミュレーションによって評価した。回収熱量及び逆流ガス流量は、次のようにして評価を行った。
【0073】
(回収熱量)
上記の実施例及び比較例で得られた熱交換器100,300に対し、開閉バルブ80を開にした状態で800℃(Tg1)の空気(第1流体)を90g/sec(Mg)の流量で供給するとともに、供給管72から水(第2流体)を166g/sec(Mw)の流量で供給し、排出管73から水を回収した。上記の各条件にて、熱交換器100,300に対して空気及び水の供給を開始し、定常状態に達した後に、供給管72における水の温度(Tw1)及び排出管73における水の温度(Tw2)を測定し、水によって回収される熱量Qを求めた。この回収熱量Qは、次式で表される。
Q(kW)=ΔTw×Cpw×Mw
式中、ΔTw=Tw2-Tw1、Cpw(水の比熱)=4182J/(kg・K)である。
【0074】
(逆流ガス流量)
第1筒状部材20の下流側端部21bにおける第1筒状部材20と第2筒状部材30との間の位置でガス(第1流体)の流速及び密度を求め、これらの積を積分することによって、逆流ガス流量を求めた。
上記の評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示されるように、実施例1の熱交換器100は、比較例1の熱交換器300に比べて、回収熱量及び逆流ガス流量が少なかった。
【0077】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、熱回収抑制時に第1流体の逆流を抑制して熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
10 柱状ハニカム構造体
11 内周壁
12 外周壁
13a 流入端面
13b 流出端面
14 セル
15 隔壁
20 第1筒状部材
21a 上流側端部
21b 下流側端部
30 第2筒状部材
31a 上流側端部
31b 下流側端部
40 ガイド部材
41a 上流側端部
41b 下流側端部
42 傾斜部
43 連通口
44 貫通孔
50 上流側筒状部材
51 上流側端部
52 フランジ部
60 下流側筒状部材
61a 上流側端部
61b 下流側端部
70 外筒部材
71a 上流側端部
71b 下流側端部
72 供給管
73 排出管
80 開閉バルブ
100,200,300 熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5