(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】EMIが低減された同軸データ通信
(51)【国際特許分類】
H04B 3/28 20060101AFI20220325BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H04B3/28
H04L25/02 303Z
(21)【出願番号】P 2019506472
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017056923
(87)【国際公開番号】W WO2018075482
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397050741
【氏名又は名称】マイクロチップ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROCHIP TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノフ, ガリン
(72)【発明者】
【氏名】カイク, マールテン
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0318599(US,A1)
【文献】特開2015-198303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/28
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の同軸ケーブル及び第2の同軸ケーブルを備える2つの同軸ケーブルを使用する伝送回路であって、
前記第1の同軸ケーブルは、中心導体及びシールドを有し、前記第2の同軸ケーブルは、中心導体及びシールドを有し、前記伝送回路は、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバと、第1及び第2の入力を有する差動レシーバと、を含む、集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力
、前記
第1の同軸ケーブルの
前記中心導
体、前記差動ドライバの前記第2の出力
、及び前記
第1の同軸ケーブ
ルの前記シール
ドに結合された第1のコモンモードチョークであって、
前記第1の同軸ケーブルの前記シールドが、第1のグランドノードに直接接続された、第1のコモンモードチョークと、
前
記差動ドライバの前記第2の出力
及び第2のグランドノー
ドに結合された第1の終端インピーダンスと、
前記差動レシーバの前記第1の入力と
前記第2の同軸ケーブルの前記中心導体との間、及び前記差動レシーバの前記第2の入力と
前記第2の同軸ケーブルの前記シールドとの間に結合された第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と前記第2のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、
前記第2の同軸ケーブルの前記シールドと前記第1のグランドノードとの間に結合された減衰素子と、を備える、伝送回路。
【請求項2】
前記第1の終端インピーダンスが、直列に結合された第1の抵抗及び第1のコンデンサを含み、前記第1の抵抗と前記
第1のコンデンサとの間のノードが、前記第1のコモンモードチョークに結合されている、請求項1に記載の伝送回路。
【請求項3】
前記第1のコンデンサに並列に結合された第2の抵抗を更に備える、請求項2に記載の伝送回路。
【請求項4】
前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第1及び第2のDCブロッキングコンデンサと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4のDCブロッキングコンデンサと、を更に備える、請求項2又は3に記載の伝送回路。
【請求項5】
前記第2のグランドノードと、前記第4のDCブロッキングコンデンサと前記第2のコモンモードチョークとの間のノードとの間に結合された第2のコンデンサを更に備える、請求項4に記載の伝送回路。
【請求項6】
前記第2のコンデン
サに並列に結合された第3の抵抗を更に備える、請求項5に記載の伝送回路。
【請求項7】
前記第2のグランドノードが、デジタルグランド面に接続されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の伝送回路。
【請求項8】
前記第1のグランドノードが、シャーシグランドに接続されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の伝送回路。
【請求項9】
前記第1のグランドノード及び前記第2のグランドノードが、ともに結合されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の伝送回路。
【請求項10】
第1の同軸ケーブル及び第2の同軸ケーブルを備える2つの同軸ケーブルを使用する伝送回路であって、
前記第1の同軸ケーブルは、中心導体及びシールドを有し、前記第2の同軸ケーブルは、中心導体及びシールドを有し、前記伝送回路は、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバと、第1及び第2の入力を有する差動レシーバと、を含む、集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力
、前記
第1の同軸ケーブルの
前記中心導体
、前記差動ドライバの前記第2の出力
、及び前記
第1の同軸ケーブ
ルの前記シール
ドに結合された第1のコモンモードチョークと、
前
記差動ドライバの前記第2の出力
及び第1のグランドノー
ドに結合された第1の終端インピーダンスと、
前記
第1の同軸ケーブルの前記シールドと第2のグランドノードとの間に結合された減衰素子と、
前記差動レシーバの前記第1の入力と
前記第2の同軸ケーブルの前記中心導体との間、及び前記差動レシーバの前記第2の入力と
前記第2の同軸ケーブルの前記シールドとの間に結合された第2のコモンモードチョークであって、
前記第2の同軸ケーブルの前記シールドが、前記第2のグランドノードに直接接続される、第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と前記第1のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、を備える、伝送回路。
【請求項11】
中心導体及びシールドを有する同軸ケーブル上で情報を伝送するためのシステムであって、
データ送信装置であって、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバを含む、第1の集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力と前記中心導体との間、及び第1のグランドノードと前記同軸ケーブルの一端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第1のコモンモードチョークと、
前記差動ドライバの前記第2の出力と前記第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、を備え、
前記同軸ケーブルの前記一端の前記シールドが、第2のグランドノードに直接接続されている、データ送信装置と、
データ受信装置であって、
第1及び第2の入力を有する差動レシーバを含む、第2の集積回路と、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記中心導体及び前記同軸ケーブルの他端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの各差動入力と第3のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、
前記同軸ケーブルの前記他端の前記シールドと第4のグランドノードとの間に結合された第2の減衰素子と、を含む、データ受信装置と、を備える、システム。
【請求項12】
前記第3のグランドノードと、前記第2のコモンモードチョークを介して前記同軸ケーブルの前記中心導体に結合されない前記差動レシーバの前記差動入力との間に結合された、無線周波数バイパスコンデンサを更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
上部に第1のグランド面を有する第1のプリント回路基板であって、前記第1の集積回路が、前記第1のプリント回路基板上に実装されている、第1のプリント回路基板と、
上部に第2のグランド面を有する第2のプリント回路基板であって、前記第2の集積回路が、前記第2のプリント回路基板上に実装されている、第2のプリント回路基板と、を更に備える、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第1及び第2の伝送線と、
前記第2のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4の伝送線と、を更に備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記
第2の減衰素子が、減衰抵抗を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記減衰抵抗及び前記第4のグランドノードに直列に結合されたDCブロッキングコンデンサを更に備える、請求項
15に記載のシステム。
【請求項17】
前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4のDCブロッキングコンデンサと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第5及び第6のDCブロッキングコンデンサと、を更に備える、請求項11~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
中心導体及びシールドを有する同軸ケーブル上で情報を伝送するためのシステムであって、
データ送信装置であって、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバを含む、第1の集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力と前記中心導体との間、及び第1のグランドノードと前記同軸ケーブルの一端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第1のコモンモードチョークと、
前記差動ドライバの前記第2の出力と前記第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、
前記同軸ケーブルの前記一端の前記シールドと第2のグランドノードとの間に結合された減衰素子と、を含む、データ送信装置と、
データ受信装置であって、
第1及び第2の入力を有する差動レシーバを含む、第2の集積回路と、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記中心導体及び前記同軸ケーブルの他端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの各差動入力と第3のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、を含む、データ受信装置と、を備え、
前記同軸ケーブルの前記他端の前記シールドが、第4のグランドノードに直接結合されている、システム。
【請求項19】
前記第3のグランドノードと、前記第2のコモンモードチョークを介して前記同軸ケーブルの前記中心導体に結合されない前記差動レシーバの前記差動入力との間に結合された、無線周波数バイパスコンデンサを更に備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
上部に第1のグランド面を有する第1のプリント回路基板であって、前記第1の集積回路が、前記第1のプリント回路基板上に実装されている、第1のプリント回路基板と、
上部に第2のグランド面を有する第2のプリント回路基板であって、前記第2の集積回路が、前記第2のプリント回路基板上に実装されている、第2のプリント回路基板と、を更に備える、請求項18又は19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第1及び第2の伝送線と、
前記第2のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4の伝送線と、を更に備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記減衰素子が、減衰抵抗を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記減衰抵抗及び前記第2のグランドノードに直列に結合されたDCブロッキングコンデンサを更に備える、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4のDCブロッキングコンデンサと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第5及び第6のDCブロッキングコンデンサと、を更に備える、請求項18~23のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブル上の通信に関し、より具体的には、改善された電磁干渉(EMI)特性を有する同軸ケーブル上の通信に関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術は、例えば同軸ケーブルのような有線相互接続システム上のデータ伝送速度(帯域幅)の増大に対する需要を押し進めている。データ伝送のために同軸ケーブル相互接続を使用する際の現在の問題として、これらに限定されないが、例えば、ノイズピックアップを引き起こすグランドループ、不要な信号(干渉)の受信及び放射を増大させる後続する不要なアンテナ効果によって特定の周波数で共鳴する同軸ケーブル長、電磁干渉(EMI)に対する劣悪なシールド有効性、例えば自動車用途用のワイヤハーネス内のフェライトチョークの使用不可が挙げられる。これらの同軸ケーブルの弱点は、その信号対雑音比が電磁干渉(EMI)を受けている同軸ケーブルによって劣化した場合に高速データ通信の信頼性を低減し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、同軸ケーブルを介して通信をする際に電磁干渉(EMI)を低減させることに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によれば、中心導体及びシールドを有する同軸ケーブルを使用する伝送回路は、集積回路は第1及び第2の出力を有する差動ドライバを含み得、差動ドライバの第1の出力と同軸ケーブルの中心導体との間、及び第1のグランドノードと同軸ケーブルのシールドとの間に結合されたコモンモードチョークと、差動ドライバの第2の出力と第1のグランドノードとの間に結合された終端インピーダンスと、同軸ケーブルのシールドと第2のグランドノードとの間に結合された減衰素子と、を備えてもよい。
【0005】
更なる実施形態によれば、集積回路は、差動ドライバの第1及び第2の出力とそれぞれ結合されるように構成され得る、第1及び第2の入力を有する差動レシーバを更に備えてもよい。更なる実施形態によれば、グランド面を上部に有するプリント回路基板が設けられてもよく、集積回路は、プリント回路基板上に実装されてもよい。更なる実施形態によれば、プリント回路基板上に第1及び第2の伝送線が設けられてもよく、第1の伝送線は、ドライバの第1の出力とコモンモードチョークとの間に結合されてもよく、第2の伝送線は、ドライバの第2の出力と終端インピーダンスとの間に結合されてもよい。更なる実施形態によれば、第1及び第2の伝送線、並びにグランド面は、マイクロストリップ伝送回路を形成してもよい。更なる実施形態によれば、第1及び第2の伝送線の反対側の第2のグランド面が設けられてもよく、第1及び第2の伝送線、グランド面、並びに第2のグランド面は、ストリップライン伝送回路を形成してもよい。
【0006】
更なる実施形態によれば、第1のDCブロッキングコンデンサが、減衰素子と第2のグランドノードとの間に結合されてもよい。更なる実施形態によれば、第2及び第3のDCブロッキングコンデンサが、差動ドライバの第1及び第2の出力とコモンモードチョークとの間に結合されてもよい。更なる実施形態によれば、減衰素子は、減衰抵抗を含んでもよい。更なる実施形態によれば、減衰抵抗は、約3オーム~約100オームであってもよい。更なる実施形態によれば、減衰抵抗は、約20オーム~約45オームであってもよい。更なる実施形態によれば、減衰抵抗は、約33オームであってもよい。
【0007】
更なる実施形態によれば、減衰素子は、減衰インダクタンスを含んでもよい。更なる実施形態によれば、減衰インダクタンスは、フェライトビーズであってもよい。更なる実施形態によれば、減衰素子は、減衰抵抗及びインダクタを含み得る、減衰インピーダンスであってもよい。更なる実施形態によれば、第1のグランドノードは、デジタルグランド面に接続されてもよい。更なる実施形態によれば、第2のグランドノードは、シャーシグランドに接続されてもよい。更なる実施形態によれば、第1及び第2のグランドノードは、ともに結合されてもよい。
【0008】
別の実施形態によれば、それぞれが中心導体及びシールドを有する2つの同軸ケーブルを使用する伝送回路は、第1及び第2の出力を有する差動ドライバと、第1及び第2の入力を有する差動レシーバと、を含み得る、集積回路と、差動ドライバの第1の出力との間、及び第1のグランドノードと一方の同軸ケーブルのシールドとの間に結合された第1のコモンモードチョークと、第1の差動ドライバの第2の出力と第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、同軸ケーブルの一端のシールドと第2のグランドノードとの間に結合された第1の減衰素子と、差動レシーバの第1の入力と他方の同軸ケーブルの中心導体との間、及び差動レシーバの第2の入力と他方の同軸ケーブルのシールドとの間に結合された第2のコモンモードチョークと、差動レシーバの第1及び第2の入力と第1のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、他方の同軸ケーブルのシールドと第2のグランドノードとの間に結合された第2の減衰素子と、を備えてもよい。
【0009】
更に別の実施形態によれば、中心導体及びシールドを有する同軸ケーブル上で情報を転送するためのシステムは、データ送信装置であって、第1及び第2の出力を有する差動ドライバと、差動ドライバの第1の出力と中心導体との間、及び第1のグランドノードと同軸ケーブルの一端のシールドとの間にそれぞれ結合された第1のコモンモードチョークと、差動ドライバの第2の出力と第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、同軸ケーブルの一端のシールドと第2のグランドノードとの間に結合された第1の減衰素子と、を含む、データ送信装置と、データ受信装置であって、第1及び第2の入力を有する差動レシーバを含む、第2の集積回路と、差動レシーバの第1及び第2の入力と、中心導体及び同軸ケーブルの他端のシールドとの間にそれぞれ結合された第2のコモンモードチョークと、差動レシーバの各差動入力と第3のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、同軸ケーブルの他端のシールドと第4のグランドノードとの間に結合された第2の減衰素子と、含む、データ受信装置と、を備えてもよい。
【0010】
更なる実施形態によれば、無線周波数バイパスコンデンサが、第3のグランドノードと第2のコモンモードチョークを介して同軸ケーブルの中心導体に結合されない差動レシーバの差動入力との間に結合されてもよい。更なる実施形態によれば、第1のグランド面を上部に有する第1のプリント回路基板が設けられてもよく、第1の集積回路は、第1のプリント回路基板上に実装されてもよく、上部に第2のグランド面を有する第2のプリント回路基板が設けられてもよく、第2の集積回路は、第2のプリント回路基板上に実装されてもよい。
【0011】
更なる実施形態によれば、第1のプリント回路基板上の第1及び第2の伝送線は、差動ドライバの第1及び第2の出力のそれぞれと第1のコモンモードチョークとの間に結合されてもよく、第2のプリント回路基板上の第3及び第4の伝送線は、差動レシーバの第1及び第2の入力のそれぞれと第2のコモンモードチョークとの間に結合されてもよい。更なる実施形態によれば、第1及び第2の減衰素子は、第1及び第2の減衰抵抗を含んでもよい。
【0012】
更なる実施形態によれば、第1及び第2のDCブロッキングコンデンサが、第1及び第2の減衰抵抗と第1及び第2のグランドとに直列にそれぞれ結合されてもよい。更なる実施形態によれば、第3及び第4のDCブロッキングコンデンサが、差動ドライバの第1及び第2の出力と第1のコモンモードチョークとの間に結合されてもよく、第5及び第6のDCブロッキングコンデンサが、差動レシーバの第1及び第2の入力と第2のコモンモードチョークとの間に結合されてもよい。
【0013】
更に別の実施形態によれば、中心導体及びシールドを有する同軸ケーブル上で双方向に情報を転送するためのシステムは、第1のデータ送信装置であって、第1及び第2の出力を有する第1の差動ドライバと、第1及び第2の入力を有する第1の差動レシーバと、を含み得る第1の集積回路と、第1の差動ドライバの第1の出力と、第1の差動レシーバの第1の入力及び同軸ケーブルの一端の中心導体との間、及び第1のグランドノードと同軸ケーブルの一端のシールドとの間に結合された第1のコモンモードチョークと、第1の差動ドライバの第2の出力と第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、同軸ケーブルの一端のシールドと第2のグランドノードとの間に結合された第1の減衰素子と、を含み得る、第1のデータ送信装置と、第2のデータ送信装置は第1及び第2の出力を有する第2の差動ドライバと、第1及び第2の入力を有する第2の差動レシーバと、を含み得る、第2の集積回路と、第2の差動ドライバの第1の出力と、第2の差動レシーバの第1の入力及び同軸ケーブルの他端の中心導体との間、及び第3のグランドノードと同軸ケーブルの他端のシールドとの間に結合された第2のコモンモードチョークと、第2の差動ドライバの第2の出力と第3のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、同軸ケーブルの他端のシールドと第4のグランドノードとの間に結合された第2の減衰素子と、を含み得る、第2のデータ送信装置と、を備えてもよい。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
それぞれが中心導体及びシールドを有する2つの同軸ケーブルを使用する伝送回路であって、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバと、第1及び第2の入力を有する差動レシーバと、を含む、集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力と前記同軸ケーブルの中心導体との間、及び前記差動ドライバの前記第2の出力と前記同軸ケーブルのうちの一方の前記シールドとの間に結合された第1のコモンモードチョークであって、前記シールドが、第1のグランドノードに直接接続された、第1のコモンモードチョークと、
前記第1の差動ドライバの前記第2の出力と第2のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、
前記差動レシーバの前記第1の入力と他方の同軸ケーブルの前記中心導体との間、及び前記差動レシーバの前記第2の入力と他方の同軸ケーブルの前記シールドとの間に結合された第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と前記第2のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、
他方の同軸ケーブルの前記シールドと前記第1のグランドノードとの間に結合された減衰素子と、を備える、伝送回路。
(項目2)
前記第1の終端インピーダンスが、直列に結合された第1の抵抗及び第1のコンデンサを含み、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との間のノードが、前記第1のコモンモードチョークに結合されている、項目1に記載の伝送回路。
(項目3)
前記第1のコンデンサに並列に結合された第2の抵抗を更に備える、項目2に記載の伝送回路。
(項目4)
前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第1及び第2のDCブロッキングコンデンサと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4のDCブロッキングコンデンサと、を更に備える、項目2又は3に記載の伝送回路。
(項目5)
前記第2のグランドノードと、前記第4のDCブロッキングコンデンサと前記第2のコモンモードチョークとの間のノードとの間に結合された第2のコンデンサを更に備える、項目4に記載の伝送回路。
(項目6)
前記第2のコンデンサに並列に結合された第3の抵抗を更に備える、項目5に記載の伝送回路。
(項目7)
前記第2のグランドノードが、デジタルグランド面に接続されている、項目1~6のいずれか一項に記載の伝送回路。
(項目8)
前記第1のグランドノードが、シャーシグランドに接続されている、項目1~7のいずれか一項に記載の伝送回路。
(項目9)
前記第1のグランドノード及び前記第2のグランドノードが、ともに結合されている、項目1~8のいずれか一項に記載の伝送回路。
(項目10)
それぞれが中心導体及びシールドを有する2つの同軸ケーブルを使用する伝送回路であって、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバと、第1及び第2の入力を有する差動レシーバと、を含む、集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力と前記同軸ケーブルの中心導体との間、及び前記差動ドライバの前記第2の出力と前記同軸ケーブルのうちの一方の前記シールドとの間に結合された第1のコモンモードチョークと、
前記第1の差動ドライバの前記第2の出力と第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、
前記同軸ケーブルの前記シールドと第2のグランドノードとの間に結合された減衰素子と、
前記差動レシーバの前記第1の入力と他方の同軸ケーブルの前記中心導体との間、及び前記差動レシーバの前記第2の入力と他方の同軸ケーブルの前記シールドとの間に結合された第2のコモンモードチョークであって、他方の同軸ケーブルの前記シールドが、前記第2のグランドノードに直接接続される、第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と前記第1のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、を備える、伝送回路。
(項目11)
中心導体及びシールドを有する同軸ケーブル上で情報を伝送するためのシステムであって、
データ送信装置であって、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバを含む、第1の集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力と前記中心導体との間、及び第1のグランドノードと前記同軸ケーブルの一端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第1のコモンモードチョークと、
前記差動ドライバの前記第2の出力と前記第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、を備え、
前記同軸ケーブルの前記一端の前記シールドが、第2のグランドノードに直接接続されている、データ送信装置と、
データ受信装置であって、
第1及び第2の入力を有する差動レシーバを含む、第2の集積回路と、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記中心導体及び前記同軸ケーブルの他端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの各差動入力と第3のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、
前記同軸ケーブルの前記他端の前記シールドと第4のグランドノードとの間に結合された第2の減衰素子と、を含む、データ受信装置と、を備える、システム。
(項目12)
前記第3のグランドノードと、前記第2のコモンモードチョークを介して前記同軸ケーブルの前記中心導体に結合されない前記差動レシーバの前記差動入力との間に結合された、無線周波数バイパスコンデンサを更に備える、項目11に記載のシステム。
(項目13)
上部に第1のグランド面を有する第1のプリント回路基板であって、前記第1の集積回路が、前記第1のプリント回路基板上に実装されている、第1のプリント回路基板と、
上部に第2のグランド面を有する第2のプリント回路基板であって、前記第2の集積回路が、前記第2のプリント回路基板上に実装されている、第2のプリント回路基板と、を更に備える、項目11又は12に記載のシステム。
(項目14)
前記第1のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第1及び第2の伝送線と、
前記第2のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4の伝送線と、を更に備える、項目13に記載のシステム。
(項目15)
前記減衰素子が、減衰抵抗を含む、項目11~14のいずれか一項に記載のシステム。
(項目16)
前記減衰抵抗及び前記第4のグランドノードに直列に結合されたDCブロッキングコンデンサを更に備える、項目14に記載のシステム。
(項目17)
前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4のDCブロッキングコンデンサと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第5及び第6のDCブロッキングコンデンサと、を更に備える、項目11~16のいずれか一項に記載のシステム。
(項目18)
中心導体及びシールドを有する同軸ケーブル上で情報を伝送するためのシステムであって、
データ送信装置であって、
第1及び第2の出力を有する差動ドライバを含む、第1の集積回路と、
前記差動ドライバの前記第1の出力と前記中心導体との間、及び第1のグランドノードと前記同軸ケーブルの一端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第1のコモンモードチョークと、
前記差動ドライバの前記第2の出力と前記第1のグランドノードとの間に結合された第1の終端インピーダンスと、
前記同軸ケーブルの前記一端の前記シールドと第2のグランドノードとの間に結合された減衰素子と、を含む、データ送信装置と、
データ受信装置であって、
第1及び第2の入力を有する差動レシーバを含む、第2の集積回路と、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記中心導体及び前記同軸ケーブルの他端の前記シールドとの間にそれぞれ結合された第2のコモンモードチョークと、
前記差動レシーバの各差動入力と第3のグランドノードとの間に結合された第2の終端インピーダンスと、を含む、データ受信装置と、を備え、
前記同軸ケーブルの前記他端の前記シールドが、第4のグランドノードに直接結合されている、システム。
(項目19)
前記第3のグランドノードと、前記第2のコモンモードチョークを介して前記同軸ケーブルの前記中心導体に結合されない前記差動レシーバの前記差動入力との間に結合された、無線周波数バイパスコンデンサを更に備える、項目18に記載のシステム。
(項目20)
上部に第1のグランド面を有する第1のプリント回路基板であって、前記第1の集積回路が、前記第1のプリント回路基板上に実装されている、第1のプリント回路基板と、
上部に第2のグランド面を有する第2のプリント回路基板であって、前記第2の集積回路が、前記第2のプリント回路基板上に実装されている、第2のプリント回路基板と、を更に備える、項目18又は19に記載のシステム。
(項目21)
前記第1のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第1及び第2の伝送線と、
前記第2のプリント回路基板上にあり、かつそれぞれ前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4の伝送線と、を更に備える、項目20に記載のシステム。
(項目22)
前記減衰素子が、減衰抵抗を含む、項目18~21のいずれか一項に記載のシステム。
(項目23)
前記減衰抵抗及び前記第2のグランドノードに直列に結合されたDCブロッキングコンデンサを更に備える、項目21に記載のシステム。
(項目24)
前記差動ドライバの前記第1及び第2の出力と、前記第1のコモンモードチョークとの間に結合された第3及び第4のDCブロッキングコンデンサと、
前記差動レシーバの前記第1及び第2の入力と、前記第2のコモンモードチョークとの間に結合された第5及び第6のDCブロッキングコンデンサと、を更に備える、項目18~23のいずれか一項に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0014】
下記の添付図面と併せて行われる以下の説明を参照することによって、本開示のより完全な理解を得ることが可能である。
【
図1】本開示の特定の実施形態に係る、同軸ケーブルを使用し、かつEMIが低減されたデータ通信回路の模式図を示す。
【
図2】同軸ケーブルを使用する先行技術のデータ通信システムの模式的なブロック図を示す。
【
図3】
図1に示す同軸ケーブルを使用するデータ通信システムの模式的なブロック図を示す。
【
図4】本開示の教示に係る、より低い周波数での差動レシーバのCMRRのグラフの例を示す。
【
図5】本開示の教示に係る、より高い周波数でのコモンモードチョークのコモンモード周波数応答のグラフの例を示す。
【
図6】本開示の別の特定の実施形態に係る、別々の回路部品並びに受信及び送信用の同軸ケーブルを使用し、かつEMIが低減された第1のデータ通信回路の模式図を示す。
【
図7】本開示の別の特定の実施形態に係る、別々の回路部品並びに受信及び送信用の同軸ケーブルを使用し、かつEMIが低減された第2のデータ通信回路の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、様々な修正及び代替の形態が可能である一方で、それらの特定の実施形態の例が、図で示され、本明細書で詳細に記述される。しかしながら、本明細書における特定の実施形態例の説明は、本明細書に開示される特定の形態に限定されることを意図していないものの、一方で、本開示は添付請求項によって定義される全ての変形及び均等物を網羅するものである、と理解されるべきである。
【0016】
同軸ケーブルを介して通信する際、電磁干渉(EMI)を低減して、データ伝送速度(情報帯域幅)を増大させる必要性が存在する。例えば同軸ケーブルの信号配線の現在の問題は、これらに限定されないが、グランディング、グランドループ、共振/アンテナ効果、遮蔽有効性(耐性及び放射)、回路トポロジ不均衡->EMI、自動車用ワイヤハーネス内でのフェライトチョークの使用不可等がある。一般に、同軸ケーブルの信号配線を用いる場合、高ビットレート通信中に外部干渉に対する耐性を提供するとともに、電磁放射量を低減させる必要性が存在する。厳格な自動車のEMI要件を、単一の同軸ケーブルにわたって全二重通信用でさえも、高ビットレートの通信を提供しつつ、低コストで満たさなければならない。
【0017】
これらの困難な技術的要件を満たすために、以下を実現しなければならない:1)発信(送信)データに由来する発信電磁放射(出射)を低減すること、2)電子装置のプリント回路基板(PCB)上のデジタル回路に由来する電磁放射(出射)、例えば、ノイズ装置のスイッチングにより電源/グランド面から発生するノイズ等を低減すること、3)共振、例えば、接続する同軸ケーブルを介した2つ以上の装置のQ値の高い結合による共振の誘導に由来する電磁放射(出射)を低減すること、4)同軸ケーブルを介して高ビットレートで両半二重及び全二重の送信及び受信を行うこと、5)自動車用途に必要とされるような輻射(いわゆるバルク電流注入)に対する高い耐性を実現すること、並びに6)部品及び製造のコストを低く抑えること。
【0018】
種々の実施形態によれば、同軸ケーブルを使用する通信のために最小限に必要な回路トポロジが、コモンモードチョーク、並びに例えば、抵抗、インダクタ、及びそれらの組み合わせのようなインピーダンスを有する減衰素子を使用することによって提供され、これは、低コストの方法で極めて低い放射量及び外部放射の干渉に対する高い耐性をもたらす。
【0019】
ここで図面を参照すると、特定の実施形態例の詳細が模式的に示されている。図面中の同様の要素は、同様の番号で表され、類似の要素は、異なる小文字の接尾辞を付与した類似の番号で表される。
【0020】
図1を参照すると、本開示の特定の実施形態に係る、同軸ケーブルを使用し、かつEMIが低減されたデータを通信回路の模式図が示されている。本開示の教示に係る例示的な実施形態は、例えば、ネットワーク機能のようなデータ通信を行うための回路を有する集積回路(IC)101を備え得る。IC101は、差動ドライバ109と、任意に、差動レシーバ110とを含んでもよい。IC101は、装置120のシャーシ(例えば、筐体)102の内側に含まれ得るプリント回路基板(PCB)106上に配置されてもよい。装置120は、これらに限定されないが、画像及び/若しくは音声の取り込み並びに/又は記録、ネットワーキング、表示(マン・マシン・インターフェース-MMI)、センシング、制御等のために使用されてもよい。PCB106はまた、デジタルグランド面107、コモンモードチョーク118、及び減衰素子122を備えてもよい。
【0021】
他の装置と通信するために、同軸ケーブル103(例えば、短い同軸ケーブル)は、装置120と他の装置(複数可)(図示せず)との間に接続されてもよい。シャーシ102は、装置120、例えば、装置120の一部であり得るディスプレイを見るための開口を有するディスプレイ、を必ずしも完全に取り囲まなくてもよい。シャーシ102は、EMIの放射又は受信を防止するための導電性材料で作られていてもよい。装置120の使用に応じて、シャーシ102は、車両のシャーシフレーム(図示せず)に接続するために使用され得るシャーシグランド接続部(ノード)108を有してもよい。シャーシグランド108がデジタルグランド面107に接続され得るということが考えられ、それは本開示の範囲内である。
【0022】
同軸ケーブル103は、データ通信用のものとして、例えば、単信、半二重、又は全二重モードにおけるデータの送信及び/又は受信用のものとしている。差動ドライバ109は、信号を送信するために、その出力ノード111及び112において相補的な出力信号を生成する。好ましくは、差動ドライバ109の各出力ノード111及び112は、適切なソース終端(図示せず)に結合されてもよい。好ましくは、出力ノード111及び112上の出力信号は、コモンモード成分をほぼ有していない差動(信号が逆相になる)として構成される。しかしながら、実際には、出力ドライバ回路のアンバランスが小さいために存在する小さなコモンモード成分、又は、デューティサイクル歪みのレベルが小さい非線形性が常に存在する。出力ノード111は、IC101からコモンモードチョーク118に結合された伝送線路132(TLmain)を駆動する。同軸ケーブル103は、コモンモードチョーク118と近接して結合されてもよい。出力ノード112は、コモンモードチョーク118にも結合された伝送線134(TLref)を駆動する。AC結合は、伝送線132及び/又は134のいずれか一方又は両方に設けられてもよい。DCバランス信号データを伝送する際には、伝送線132及び134の両方のAC結合が好ましい。電子回路設計における通常の技術と本開示の利益を有する者が、1つ以上のDCブロッキングコンデンサ(AC結合コンデンサ)を、DC電圧がAC信号として現れないように、本明細書に開示された回路内の異なる場所に置くようにしてもよいということが考えられ、それは本開示の範囲内である。
【0023】
AC信号結合(DCブロッキング)は、コンデンサ124、126及び/又は128によって提供されてもよい。基準伝送線134は、デジタルグランド面107に結合され得る直列終端インピーダンス(例えば抵抗)130によって更に終端されてもよい。伝送線132及び134は、グランドノード136(Via1)を介してデジタルグランド面107を基準としてもよい。デジタルグランド面107は、好ましくは、伝送線のリターン電流が存在する伝送線132及び134の直下に存在するグランド面である。デジタルグランド面107と伝送線132及び134との併用により、マイクロストリップ伝送線が形成される。伝送線132及び134の他方側に第2のグランド面(図示せず)を配置することにより、ストリップライン伝送線が形成される。マイクロストリップ又はストリップライン伝送線を使用することにより、より低いEMI放射及びピックアップ、並びに実質的に一定の伝送インピーダンスが提供される。
【0024】
グランドノード136は、接続部4として
図1に示すコモンモードチョーク118の一方の入力に更に結合されてもよい。伝送線132aは、接続部1として
図1に示すコモンモードチョーク118の他方の入力に結合されてもよい。両伝送線132及び134は、可能な限り、例えば、実質的に同じ長さ及び幅で対称的に構成され、同じデジタルグランド面107、例えば、同じ特性インピーダンス等を基準とすることが好ましい。両伝送線132及び134の先頭において、IC101は、好ましくは、がデジタルグランド面107との接続を有している。このデジタルグランド面107との接続はまた、IC101の差動レシーバ110が同軸ケーブル103から到来するデータ信号を受信するのに使用される時に好ましい。
【0025】
コモンモードチョーク118は、伝送線132及び134の両方の端部に到達する差動電流を実質的に未減衰で通過させることができる。例えば、差動ドライバ109が、その出力ノード111及び112のそれぞれにおいて送信する場合、シングルエンドの500mVの信号は、180度位相がずれており、デジタルグランド面107を基準とする。1000mV(1ボルト)のピーク間差動信号が生成されることになる。一方で、わずか信号500mVの信号が、その中心導体105とシールド104との間の同軸103に信号が送出されることになる。この信号電圧の他の半分は、終端インピーダンス(抵抗器)130で終端することになる。コモンモードチョーク118に隣接してこのように差動をシングルエンドの信号変換にかけることにより、コモンモードチョークの入力には互いに逆の信号電流が与えられるので、ほんのわずかのコモンモード電圧のみがコモンモードチョークに与えられることになる。デューティサイクル歪みに起因する上述した非理想的な小さな成分のコモンモード信号の生成のみが、コモンモードチョーク118で与えられてもよいが、そのすでに小さな信号は、コモンモードチョーク118のチョーキングの挙動により、コモンモード信号に対して更に低減することになる。また、例えば、IC101及び/又は他のIC(図示せず)のデジタル活性によるトランジスタのスイッチング電流に起因する、PCB106上に存在する電圧バウンスも、コモンモードチョーク118により有効にチョークされる。
【0026】
コモンモードチョーク118の他方側には、出力接続部2及び3が同軸ケーブル103の中心導体105及びシールド104にそれぞれ結合されてもよい。シールド104は、例えば、これら限定されないが、抵抗及び/又はインダクタ(例えば、フェライトビーズ)であり得る、減衰素子122を介してシャーシ102に更に結合されてもよい。減衰素子122は、複素インピーダンスを見る場合に、抵抗部及びインダクタンス部を有してもよい。更に、ほとんどの場合、AC結合(DCブロッキング)コンデンサ124との減衰素子122の経路内に直列接続されたDCブロッキング装置を提供することが薦められるので、シールド104とシャーシ102との間にDC電流がないことが好ましい。
【0027】
減衰素子122の抵抗値は、何らか考慮した上で選択すべきである。これに伴うトレードオフがある。小さな値は、放射耐性性能試験を行う際に同軸ケーブル103のシールド104上に生成される入射バルク電流注入を反映するのがよい。より大きな抵抗値は、バルク電流注入波を減衰させる傾向があり、減衰素子122の加熱を引き起こし、またバルク電流の多くを、それを反映させるのではなく、装置102に注入させることになる。よって、減衰素子122のより小さな値は、理想的であると思われるが、減衰素子122の抵抗値の他の機能が、2つ以上の装置がそれらの間の同軸ケーブル103とともに結合される場合に別の高いQ値のシステムにおいて減衰抵抗として機能することになる。高いQ値のシステムを有する場合には、例えば、PCB106からの最小の入力信号によって、多くの共振周波数を誘導することができる。これらの信号の1つ、又は装置シャーシ102内のいずれかの場所での信号若しくは放射に由来するその高調波のいずれかとの結合は、装置120を組み込んだシステムの輝線スペクトルにおいて不要な放射ピークを生成するのに十分であり得る。これにより、減衰素子122の抵抗及び/又はインダクタンスは、かなり十分に大きくなった場合に、このタイプの共振を低減させる。実際には、約100オームまでのわずかなオームの値が機能し、より具体的には、良好な結果が、約20オームから約45オームの範囲内の抵抗値で放射を低減させるものとして、良好なバルク電流注入耐性を実現するために観察された。好ましくは、抵抗値は、約33オームであってもよい。
【0028】
IC101がコモンモードチョーク118に近接して結合される場合、伝送線132及び134は、非常に短い長さに縮小することができ、これにより、まさにデータ伝送回路の電気的なノードになる。この場合、好ましい回路の残りは全て同じままである。また、必要に応じて終端インピーダンス130を、グランドノード136及びコモンモードチョーク118の入力接続部4への接続の状態で残したままとする。しかしながら、利点の1つは、必ずしも、IC101が同軸接続に近接して位置する必要がないことである。実際には、同軸ケーブル103は、好適な同軸コネクタを介して接続されてもよく、電子分野における通常の技術を有しかつ本開示の利益を有する者が、そのような接続を様々な実施形態を享受するように実施してもよいということが考えられ、それは本開示の範囲内である。
【0029】
装置120から同軸ケーブル103を介してデータを送信するだけで、ノード111及び112上の信号のコモンモード電圧は、それら2つのノードがドライバ109によって逆相信号として提供されていることを意図しているので、極めて小さくなる。同軸ケーブル103の他端の装置に由来するデータ信号を同軸103から受信する際にも、これは、ノード111及び112上の信号のコモンモード電圧において重畳された低減されたデータ信号としてみなされる。したがって、レシーバ110は、同軸ケーブル103の他端から由来するデータを受信するために、ノード111及び112上のコモンモード信号を排除することができる。IC101がレシーバのみとして意図されている場合、ドライバ109は、伝送線132及び134の終端となる、そのソース終端抵抗(図示せず)に低減することができる。差動レシーバ110は、いずれの場合にしても同じままである。
【0030】
差動レシーバ110は、ドライバ109と同じ回路部品、例えば、コモンモードチョーク118、減衰素子122、同軸ケーブル103等を共有してもよく、又は差動レシーバ110の回路部品は、ドライバ109の回路部品から独立していてもよいということが考えられ、それは本開示の範囲内である。これにより、適切に接続されたドライバ、レシーバ、及び同軸ケーブルとの同時全二重動作及び/又は同時二重単信動作が可能となる。
【0031】
図6を参照すると、本開示の別の特定の実施形態に係る、別々の回路部品並びに受信及び送信用の同軸ケーブルを使用し、かつEMIが低減された第1のデータ通信回路の模式図が示されている。例えば、受信機能用の同軸コネクタ652に接続される別の同軸ケーブルを使用する場合、上述した送信(ドライバ109)回路部品を複製してもよい。受信コモンモードチョーク618は、受信同軸ケーブル(コネクタ652)と差動レシーバ110の差動入力との間に結合されてもよい。受信減衰素子622は、受信同軸ケーブルのシールド側とシャーシグランド108との間に結合してもよく、終端インピーダンス646及び648は、レシーバ110の差動入力とデジタルグランド面107との間に結合されてもよい。受信減衰素子622に対するインピーダンスの種類及び値は、減衰素子122に対して、上述したように選択されてもよい。終端インピーダンス646及び648は、受信同軸ケーブルと、及び/又は差動レシーバ110の入力を受信コモンモードチョーク618に結合する伝送線のそれぞれと、実質的に同じインピーダンス値であってもよい。典型的な値は、これらに限定されないが、終端インピーダンス646及び648のそれぞれに対して約50オームであり、受信減衰素子622に対して約33オームであり得る。DCブロッキングコンデンサ624、626、及び628もまた、
図6に示すように追加されてもよい。コンデンサ629は、
図6に示すように、DCをブロックして無線周波数を差動レシーバ110の入力の1つにバイパスするために任意に使用されてもよい。同様に、コンデンサ129は、DCをブロックして無線周波数をアイソレーションチョーク118のノードの1つにバイパスするために任意に使用されてもよい。
【0032】
図7を参照すると、
図6と類似した受信及び送信のための別個の回路部品及び同軸ケーブル並びに関連する回路を使用するとともにEMIが低減された更に別のデータ通信回路の模式図が示されている。再度、この実施形態では、別個の同軸ケーブルが使用される。しかしながら、TX又はRX回路の一方において、コネクタの同軸シールドは、
図6の減衰抵抗122/622を使用せずに、グランドに直接接続されてもよい。例えば、
図7に示すように、一実施形態によれば、コネクタ650のシールドは、減衰素子122を使用する代わりに、接続部710を介してグランド108に直接接続されている。一方、トランスミッタは、
図1及び
図6の実施形態と同一である。トランスミッタコネクタ650のシールドがグランドに直接接続される場合、レシーバ回路は
図6に対しては変わらないままである。すなわち、減衰素子622及びDCブロッキングコンデンサ624は、コネクタ652のシールドをシャーシグランド108に結合させる。一方、回路は、
図6に対して同じままである。
【0033】
図7に示すように、トランスミッタ109及びレシーバ110は、単一の装置601に配置されてもよく、これによりトランシーバが形成される。次いで、2つの同軸ケーブルを介して結合された各第2の通信装置は、
図7に示すものと同じ配置を含むようになる。これにより、同軸ケーブルの片側のみがシールドをシャーシグランドに直接接続することになる。
【0034】
代替の実施形態では、
図7の点線で示すように、トランスミッタ回路は、
図6に対しては変わらないままであり、レシーバ回路内のコネクタ652のシールドは、接続部715を介してシャーシグランド108に直接接続される。
【0035】
更に別の実施形態によれば、
図7に示すように、コンデンサ129及び629に並列に任意選択的な抵抗器720及び730を導入することができ、これにより、特定の外乱に対する時間応答(回復時間)を改善する。
【0036】
図2を参照すると、同軸ケーブルを使用する先行技術のデータ通信システムの模式的なブロック図が示されている。NRZ符号化は、単純化を提供し、これによりコスト効果の高い解決策を提供するが、広帯域励起(broadband excitation)をもたらす。非常に低いインピーダンスのケーブルのシールド/シャーシグランド接続は、外乱(実寿命による寄生効果に起因する)を増幅し得るダイポール/ループアンテナ効果を有する高いQ構造を生み出す。
【0037】
図3を参照すると、
図1に示す同軸ケーブル回路を使用するデータ通信システムの模式図が示されている。本開示の好ましい実施形態は、信号ループ内に減衰素子122を追加して、回路Qを低下させる。これにより、同軸ケーブル103のシールド効果を低下させる。これは、本開示の教示によれば、差動レシーバ110(
図1)のCMRRと組み合わせたコモンモードチョーク118を使用することによって補償される。コモンモードチョーク118は、低減されたシールド効果を相殺(補償)する1つのステージである。他のステージは、差動レシーバ110のCMRRである。これは、各ステージが異なる周波数範囲に対応するという2ステージアプローチである(CMRRは、低周波範囲ノイズ除去をカバーし、コモンモードチョークは、高周波ノイズ除去をカバーする)。すなわち、コモンモードチョークは、差動レシーバ110のより高い周波数でのCMRR有効性の低下を補償する。
【0038】
図4を参照すると、本開示の教示に係る、より低い周波数での差動レシーバのCMRRのグラフの例が示されている。差動レシーバはまた、数十Hz~数十MHzの周波数に対して高いレベル(>80dB)のコモンモード除去を示すことができる。より高い周波数では、コモンモード除去のレベルが低下する。
【0039】
図5には、本開示の教示に係る、より高い周波数でのコモンモードチョークのコモンモード周波数応答のグラフの例が示されている。好適なコモンモードチョークのコモンモード除去は、100MHzを超える周波数範囲において、高いレベルのコモンモード除去(>30dB)を示すことができる。より低い周波数に対するコモンモード減衰効果は低下し、はるかにより高い周波数(1GHz以上)に対しては、寄生(容量性)結合効果が支配する。
【0040】
したがって、差動レシーバとコモンモードチョークアプローチのこのマルチステージ結合は、差動ドライバ/レシーバ109のより低い周波数コモンモード除去及びコモンモードチョーク118のより高い周波数コモンモード除去を有利にするために使用することによって、非減衰高Q同軸ケーブルと実質的に同じ出射/耐性レベルを提供する。
【0041】
他の実施形態は、エレクトロニクス分野において本開示の利点を有する当業者によって構成され得ることが考えられ、それは、本開示の範囲内である。また、本明細書に開示される実施形態は、これらに限定されないが、CMOS BICMOS及びSiGe BICMOSを含む、いかなるトランジスタ技術においても構成され得る同様の回路に良好に適用され得るということが考えられ、それは、本開示の範囲内である。また、本明細書で開示する実施形態は、差動又はシングルエンド構成として実施される際に、通信信号に有益となり得る。
【0042】
本開示の実施形態が示され、開示の実施形態例を参照することによって定義されているが、このような参照は、本開示に限定することを示唆するものではなく、そのような制限は推定されない。開示される主題は、関連分野に関する通常の技術を有するとともに本開示の利益を有する者が着想するように、形態及び機能の点で大幅な修正、変更、及び均等物が可能である。本開示に描写及び記載された実施形態は、例示にすぎず、開示の範囲を網羅していない。