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特許7046057改良された吸音パネル性能のためのケイ酸塩コーティングおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】改良された吸音パネル性能のためのケイ酸塩コーティングおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20220325BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20220325BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220325BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220325BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20220325BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220325BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C09D1/00
C09D7/61
B05D7/00 B
B05D3/02 Z
B05D7/24 303B
B05D7/24 302B
B32B5/02 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019512225
(86)(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017051522
(87)【国際公開番号】W WO2018057390
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】15/271,033
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512127109
【氏名又は名称】ユーエスジー・インテリアズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ダブリュ・ドネラン
(72)【発明者】
【氏名】ネイサー・アルダバイベフ
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/080025(WO,A1)
【文献】特開昭49-098787(JP,A)
【文献】特開昭59-004661(JP,A)
【文献】セラミック原料解説集 ヤーユーヨーラ,窯業協会誌,73巻835号,日本,1965年,C248-C249,https://doi.org/10.2109/jcersj1950.73.835_C248
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00
C09D 7/61
B05D 7/00
B05D 3/02
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた繊維パネルであって、
繊維パネルは、鉱物ウール繊維とデンプンを含み、シーリングタイルまたは吸音パネルであって、裏打ち面と、反対側の対向面を有し、パネルの前記裏打ち面に配置された硬化コーティング層を備えており、前記硬化コーティング層は、
乾燥コーティングの全体積に基づいて、10~50体積%の無機結合剤と、
乾燥コーティングの全体積に基づいて、50~90体積%の無機充填剤とを含み、
前記無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩、またはそれらの組み合わせを含み、前記無機結合剤および前記無機充填剤は同じではなく、前記コーティングは有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、コーティングされた繊維パネル。
【請求項2】
前記金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ベリリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属ケイ酸塩を含む、請求項1に記載の繊維パネル。
【請求項3】
前記無機充填剤が、粘土、雲母、砂、硫酸バリウム、シリカ、タルク、石膏、炭酸カルシウム、珪灰石、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、中空ビーズ、ベントナイト塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される充填剤を含む、請求項1または2に記載の繊維パネル。
【請求項4】
前記無機結合剤はケイ酸ナトリウムを含み、前記無機充填剤はカオリン粘土及び/または炭酸カルシウムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維パネル。
【請求項5】
前記硬化コーティング層は、ホルムアルデヒドを実質的に含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維パネル。
【請求項6】
繊維パネルをコーティングする方法であって、
裏打ち面と、反対側の対向面とを備え、シーリングタイルまたは吸音パネルであって、鉱物ウール繊維とデンプンを含む繊維パネルを提供することと、
前記繊維パネルの前記裏打ち面に層を堆積させることであって、前記層は、無機結合剤および無機充填剤を含み、前記無機結合剤は、乾燥層中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の量で存在し、前記無機充填剤は、乾燥層中の固体の全体積に基づいて50~90体積%の量で存在し、前記無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、前記無機結合剤および前記無機充填剤は同じではなく、前記無機結合剤および前記無機充填剤は、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、堆積させることと、
前記層を少なくとも350°F(176℃)の表面温度に加熱し、それによって前記繊維パネルの少なくとも片面に金属ケイ酸塩コーティングを形成することと、を含む方法。
【請求項7】
(a)硬化性コーティング組成物を形成するように、前記無機結合剤および前記無機充填剤が予備混合される、または
(b)前記無機充填剤が第1の層として堆積され、前記無機結合剤が第1の層と接触する後続層として堆積される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
化学的硬化をさらに含む、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項9】
化学的硬化が、金属ケイ酸塩コーティング層を多価金属または酸の溶液でコーティングすること、およびコーティングを乾燥することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属ケイ酸塩コーティングが、0.01lb/ft (0.049kg/m (乾燥ベース)~0.07lb/ft (0.34kg/m (乾燥ベース)の範囲内のコーティング重量を有する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化学的硬化が、5mmol/ft (53.8mmol/m )~30mmol/ft (322.9mmol/m の範囲内のコーティング重量(乾燥または湿潤)で前記多価金属溶液を塗布することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記無機結合剤はケイ酸ナトリウムを含み、前記無機充填剤はカオリン粘土及び/または炭酸カルシウムを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記金属ケイ酸塩コーティングは、ホルムアルデヒドを実質的に含まない、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、吸音パネル用の硬化性コーティング、本開示の硬化性コーティングでコーティングされた吸音パネル、およびその製造方法に関する。より具体的には、本開示は、無機ケイ酸塩結合剤および無機充填剤を含む硬化性コーティング組成物に関し、硬化性コーティング組成物は、有機ポリマー結合剤を含まない。
【背景技術】
【0002】
吸音パネル(またはタイル)は、部屋、廊下、会議場などの屋内空間における吸音および/または音の透過を減らすことによって音響を改善することを意図した特別に設計されたシステムである。吸音パネルには多くの種類があるが、一般的な種類の吸音パネルは、例えば、米国特許第1,769,519号に開示されているように、一般に、鉱物ウール繊維、充填剤、着色剤および結合剤で構成される。これらの材料は、他の様々なものに加えて、望ましい音響特性ならびに色および外観などの他の特性を有する吸音パネルを提供するために使用することができる。
【0003】
パネルを製造するために、典型的には繊維、充填剤、増量剤、結合剤、水、界面活性剤および他の添加剤を組み合わせてスラリーを形成し、そして加工する。セルロース系繊維は、典型的には再生新聞紙の形態である。増量剤は、典型的には膨張パーライトである。充填剤は、粘土、炭酸カルシウムまたは硫酸カルシウムを含み得る。結合剤は、一緒に連結されて全ての成分を所望の構造マトリックスに固定するのを容易にする結合系を形成する、デンプン、ラテックスおよび再構成紙製品を含み得る。
【0004】
デンプンなどの有機結合剤は、多くの場合、パネルに構造的接着を提供する主要な結合剤成分である。デンプンは、他の理由の中でも比較的安価であるため、好ましい有機結合剤である。例えば、新聞紙、鉱物ウールおよびパーライトを含むパネルは、デンプンの助けを借りて経済的に結合させることができる。デンプンは、パネル構造に強度および耐久性の両方を与えるが、湿気によって引き起こされる問題の影響を受けやすい。湿気があるとパネルが軟化して垂れ下がることがあり、これはシーリングには見苦しく、パネルを弱くする可能性がある。
【0005】
パネル内の湿気によって引き起こされる問題に対処するために使用される1つの方法は、尿素-ホルムアルデヒド成分を含む、または含まないメラミン-ホルムアルデヒド樹脂系コーティングでパネルの裏側をコーティングすることである。そのようなホルムアルデヒド樹脂系コーティングが湿気または湿度にさらされると、それは下方に垂れ下がる動きから生じる裏面への圧縮力に抵抗する傾向がある。
【0006】
硬化したメラミン-ホルムアルデヒド樹脂は、適切に硬化すると、硬くて脆い架橋構造を有する。この剛性構造は、下方に垂れ下がる動きから生じる裏面への圧縮力に抵抗するように作用する。しかしながら、ホルムアルデヒド樹脂はホルムアルデヒドを排出する傾向があり、これは公知の環境刺激物である。
【0007】
ホルムアルデヒドの排出を減らすために、尿素などのホルムアルデヒド反応性物質を添加して遊離ホルムアルデヒドが捕捉されている。残念ながら、そのような小分子捕捉剤は、ホルムアルデヒド樹脂の反応性基を末端封鎖する可能性があり、それによって有意なレベルの架橋が生じるのが妨げられる。結果として、所望の高度に架橋されたポリマー構造が形成されない。得られるコーティングは弱く、たるみに抵抗するように作用しないであろう。
【0008】
低揮発性有機化学物質(VOC)放出物として分類される種々の市販の吸音パネル製品があるが、それでもなおこれらの製品はこれらのパネルに使用される種々のホルムアルデヒド排出成分の存在により検出可能なレベルのホルムアルデヒドを排出する。製造プロセスにおける熱暴露中に発生するホルムアルデヒドの排出物は、スタックまたは熱酸化器内に排気され得るが、結果として得られる製品には、設置後に排出され得る残留ホルムアルデヒドがまだ含まれている。ホルムアルデヒド排出の削減、またはそのような放出の排除は、学校を含む公共の建物、医療施設、またはオフィスビルなどの吸音パネルが設置されている場所での室内空気品質の改善を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の一態様は、乾燥コーティング組成物中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の無機結合剤と、乾燥コーティング組成物中の固体の全体積に基づいて50~90体積%の無機充填剤とを含む硬化性コーティング組成物を提供し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、コーティングは有機ポリマー結合剤を実質的に含まない。
【0010】
本開示の別の態様は、裏打ち面と、反対側の対向面と、パネルの裏打ち面上に配置された硬化コーティング層とを有するシーリングを含むコーティングされたシーリングタイルを提供し、硬化コーティング層は、乾燥コーティングの全体積に基づいて10~50体積%の無機結合剤と、乾燥コーティングの全体積に基づいて50~90体積%の無機充填剤とを含み、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、コーティングは、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない。
【0011】
本開示の別の態様は、シーリングタイルをコーティングする方法を提供し、方法は、裏打ち面と、反対側の対向面とを有するシーリングタイルを提供することと、無機結合剤および無機充填剤を含む層を裏打ち面上に堆積させることであって、無機結合剤は、層中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の量で存在し、無機充填剤は、層中の固体の全体積に基づいて50~90体積%の量で存在し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、無機結合剤および無機充填剤は、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、堆積させることと、層を少なくとも350°F(約176℃)の表面温度に加熱し、それによってシーリングタイルの裏打ち面に金属ケイ酸塩コーティングを形成することとを含む。
【0012】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明を検討することから当業者には明らかであろう。方法および組成物は様々な形態の実施形態の影響を受けやすいが、以下の説明は、特定の実施形態を含み、本開示は例示的であり、本開示を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図しないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態による裏面コーティングを有するコーティングパネルの斜視図を概略的に示す。
図2】本開示の実施形態による裏面コーティングを有するコーティングパネルの垂れ下がり性能に対する硬化温度および時間の影響のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、乾燥コーティング組成物中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の無機結合剤と、乾燥コーティング組成物中の固体の全体積に基づいて50~90体積%の無機充填剤とを含む硬化性コーティング組成物を提供し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、コーティングは有機ポリマー結合剤を実質的に含まない。
【0015】
有利には、本開示のコーティング組成物は、吸音タイル上にコーティングされた場合、非コーティングシーリングタイルと比較して低減された垂れ下がりを示す吸音タイルを提供し、業界標準ホルムアルデヒドコーティングを有する完成シーリングタイルと比べて、改善されないとしても少なくとも同様の垂れ下がり抵抗を示すことができる。さらに、本開示のコーティング組成物は、吸音タイル上にコーティングされると、吸音パネル用の既知のホルムアルデヒド不含コーティングと比較してもホルムアルデヒド排出の危険性が低減された吸音タイルを提供する。特に、吸音パネル用のホルムアルデヒド不含コーティングは一般に有機ポリマー結合剤を含む。特定の有機ポリマー結合剤は、検出可能かつ定量可能なレベルのホルムアルデヒドを本質的に含有、放出、排出または生成する。したがって、ホルムアルデヒドが吸音パネルに使用される有機ポリマー結合剤の成分ではないかもしれないとしても、パネルは、例えば有機ポリマー結合剤の分解を含む多くの理由で、依然としてホルムアルデヒドを放出、排出または生成し得る。本開示のコーティング組成物は有機ポリマー結合剤を含まないため、本開示のコーティング組成物は、そのような有機ポリマー結合剤の分解に関連するホルムアルデヒドを含有または放出しない。
【0016】
本明細書で使用される場合、パネルおよびタイルという用語は互換的であると見なされるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「有機ポリマー結合剤を実質的に含まない」とは、無機結合剤が有機ポリマー結合剤を含まず、無機結合剤を含むコーティング組成物もまた有意な量の意図的に添加された有機ポリマー結合剤を含まないことを意味する。したがって、付随的な、またはバックグラウンド量の有機ポリマー結合剤(例えば、約100ppb未満)が、(例えば、パネルコア材料から浸出した)本開示によるコーティング組成物中に存在してもよく、本開示の範囲内であり得る。本明細書で使用される場合、「有機ポリマー結合剤」は、有機ポリマーおよびオリゴマーを含み、さらにその場で(硬化ありまたはなしで)重合して有機ポリマーを形成することができる有機モノマーを含む。
【0018】
本開示はさらに、裏打ち面と、反対側の対向面と、パネルの裏打ち面上に配置または支持された硬化コーティング層とを有するシーリングを含むコーティングシーリングタイルを提供し、硬化コーティング層は、乾燥コーティングの全体積に基づいて10~50体積%の無機結合剤と、乾燥コーティングの全体積に基づいて50~90体積%の無機充填剤とを含み、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩であり、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、コーティングは、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「裏面コーティング」は、シーリングタイルまたは繊維パネルの裏打ち面に提供される金属ケイ酸塩コーティングを指す。
【0019】
本開示はさらに、裏打ち面と、反対側の対向面と、パネルの少なくとも一方の面上に配置または支持された硬化コーティング層とを有するパネルを含むコーティング繊維パネルを提供し、硬化コーティング層は、乾燥コーティングの全体積に基づいて10~50体積%の向き結合剤と、乾燥コーティングの全体積に基づいて50~90体積%の無機充填剤とを含み、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩であり、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、コーティングは、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない。
【0020】
任意選択で、本開示によるコーティングは、追加の非アルカリ金属ケイ酸塩結合剤を実質的に含まない。さらに任意選択で、本開示によるコーティングは、非アルカリ土類金属ケイ酸塩を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「追加の非アルカリ金属ケイ酸塩結合剤を実質的に含まない」および「追加の非アルカリ金属ケイ酸塩結合剤を実質的に含まない」とは、無機結合剤が、有意な量の意図的に添加された非アルカリ金属ケイ酸塩結合剤または非アルカリ土類金属ケイ酸塩結合剤を含有しないことを意味する。したがって、付随的またはバックグラウンド量の非アルカリ金属ケイ酸塩結合剤または非アルカリ土類金属ケイ酸塩結合剤(例えば、全固体含有量に基づいて3体積%未満、2体積%未満、または1体積%未満)が本開示によるコーティング組成物中に存在し得、また本開示の範囲内であり得る。したがって、実施形態では、無機結合剤は、1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、およびそれらの組み合わせからなるか、または本質的になる。実施形態では、金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ベリリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカリ金属ケイ酸塩を含む。実施形態では、アルカリ土類金属ケイ酸塩は、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ベリリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカリ土類金属ケイ酸塩を含む。実施形態では、無機充填剤は、粘土、任意選択でカオリン粘土またはベントナイト、雲母、砂、硫酸バリウム、シリカ、タルク、石膏、炭酸カルシウム、珪灰石、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、中空ビーズ、ベントナイト塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される充填剤を含む。実施形態では、結合剤は、ケイ酸ナトリウムを含み、充填剤は、カオリン粘土および炭酸カルシウムの少なくとも一方を含む。
【0021】
実施形態では、結合剤は実質的にホルムアルデヒドを含まない。本明細書で使用される場合、「実質的にホルムアルデヒドを含まない」とは、結合剤がホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド生成化学物質で作られておらず、通常の使用条件下でホルムアルデヒドを放出しないことを意味する。望ましくは、ホルムアルデヒド不含結合剤を含むコーティング組成物もまた、実質的にホルムアルデヒドを含まない。「実質的にホルムアルデヒドを含まない」という用語は、意図的に添加されたホルムアルデヒドを含まないこと、および付随的またはバックグラウンド量のホルムアルデヒド(例えば100ppb未満)がコーティング組成物中に存在し得、本開示の範囲内であり得ることとして定義される。表面処理剤および裏面コーティング剤に含まれる湿潤状態の保存剤または殺生物剤などの特定の添加剤は、検出可能および定量可能なレベルのホルムアルデヒドを放出、排出または生成する可能性がある。したがって、ホルムアルデヒドが吸音パネルに使用される意図的に添加された成分ではないかもしれないとしても、パネルは、例えば殺生物剤の分解を含む多くの理由で、依然としてホルムアルデヒドを放出、排出または発生することがある。
【0022】
コーティング組成物中に存在するホルムアルデヒドの量は、ASTM D5197に従って、加湿されたMarkes Microchember内で乾燥コーティング試料を115℃に加熱し、次いで2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)カートリッジを使用して制御条件下で排出物を収集することによって決定され得る。曝露後、DNPHカートリッジをアセトニトリルで洗浄し、アセトニトリル洗浄液を5mlの体積に希釈し、試料を液体クロマトグラフィーにより分析する。結果はμg/mgのコーティング試料で報告され、対照試料と比較される。有意な一連の試験にわたって対照試料の実験誤差内にある試料は、明らかに実質的にホルムアルデヒドを含まない。
【0023】
任意選択で、本開示のコーティング組成物および/またはコーティング層は分散剤をさらに含む。
【0024】
本開示はさらに、シーリングタイルをコーティングする方法を提供し、方法は、裏打ち面と、反対側の対向面とを有するシーリングタイルを提供することと、無機結合剤および無機充填剤を含む層を裏打ち面上に堆積させることであって、無機結合剤は、層中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の量で存在し、無機充填剤は、層中の固体の全体積に基づいて50~90重量%の量で存在し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、また無機結合剤および無機充填剤は有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、堆積させることと、層を少なくとも350°F(約176℃)の表面温度に加熱し、それによってシーリングタイルの裏打ち面に金属ケイ酸塩コーティングを形成することとを含む。
【0025】
本開示は、さらに、繊維パネルをコーティングする方法を提供し、方法は、裏打ち面と、反対側の対向面とを有する繊維パネルを提供することと、無機結合剤および無機充填剤を含む繊維パネルの少なくとも片面に層を堆積させることであって、無機結合剤は、層中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の量で存在し、無機充填剤は、層中の固体の全体積に基づいて50~90重量%の量で存在し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、無機結合剤および無機充填剤は、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、堆積させることと、層を少なくとも350°F(約176℃)の表面温度に加熱し、それによって繊維パネルの少なくとも片面に金属ケイ酸塩コーティングを形成することとを含む。
【0026】
任意選択で、無機結合剤および無機充填剤が予備混合されて、硬化性コーティング組成物が形成される。したがって、実施形態では、無機結合剤および無機充填剤は同時に堆積される。実施形態では、予混合硬化性コーティング組成物は、分散剤をさらに含む。代替の実施形態では、無機結合剤および無機充填剤は、段階的に堆積される。例えば、無機充填剤が最初に堆積されてもよく、次に無機結合剤が堆積されてもよい。任意選択で、分散剤を無機充填剤および/または無機結合剤と共に堆積させることができる。本明細書で使用される場合、「層」は、堆積が予備混合された硬化性コーティング組成物を使用して行われるか、または無機結合剤および無機充填剤の段階的堆積を使用して行われるかにかかわらず、シーリングタイルの裏面に堆積される。同様に本明細書中で使用される場合、「層」は、堆積が予備混合硬化性コーティング組成物を使用して行われるかまたは無機結合剤および無機充填剤の段階的堆積を使用して行われるかに関わらず、繊維パネルの少なくとも片面に堆積される。
【0027】
任意選択で、この方法は、加熱ステップに加えて、または場合によってはその代わりに化学的硬化を行うことをさらに含む。実施形態では、化学的硬化は、任意選択でコーティングの加熱後であるがその冷却前に、金属ケイ酸塩コーティング層を多価金属または酸の溶液でコーティングすることを含む。次いで、多価金属または酸の溶液を乾燥させることができる。実施形態では、化学的硬化は、無機充填剤と組み合わせて多価金属または酸を提供することと、多価金属および無機充填剤を同時に堆積させることとを含む。実施形態では、多価金属は、二価金属塩、三価金属塩、またはそれらの組み合わせを含む。
【0028】
無機結合剤
一般に、無機結合剤は、互いに結合して、全ての成分を所望の構造マトリックス内に保持するのを容易にする結合系を形成する、硬化性金属ケイ酸塩化合物を含む。無機結合剤は、1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、およびそれらの組み合わせを含む。アルカリ金属ケイ酸塩およびアルカリ土類金属ケイ酸塩は、架橋および/または脱水によりコーナー形状のSiO四面体で構成されるケイ酸塩のネットワークを有利に形成する。
【0029】
典型的には水溶液/分散液として提供されるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩は、コーティング用途に有用な物理的および化学的特性を有する。薄いコーティングとして塗布されると、ケイ酸塩溶液/分散液は乾燥して以下の利点の1つ以上を有するフィルムを形成する:低コスト、不燃性、3,000°Fまでの温度に対する耐性、無臭、および無毒。適切な金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ベリリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。実施形態では、金属ケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩である。実施形態では、金属ケイ酸塩は、アルカリ土類金属ケイ酸塩である。実施形態において、金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ベリリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、アルカリ土類金属ケイ酸塩は、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ベリリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、およびそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムである。ケイ酸ナトリウム溶液は「水ガラス」とも呼ばれ、名目上の式NaO(SiOを有する。市販のケイ酸ナトリウム溶液は、約1.5~約3.5の範囲内のSiO:NaOの重量比を有する。この比は、様々な分子量のケイ酸塩種の平均を表す。適切なケイ酸ナトリウム溶液は、約1.5~約3.5、約2~約3.2、約2.5~約3.2の範囲内、例えば、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、または約3.2のSiO:NaOの重量比を有する。実施形態では、ケイ酸ナトリウム溶液は、約3.0~約3.2の範囲内のSiO:NaOの重量比を有してもよい。理論に束縛されることを意図しないが、より低いアルカリ含有量は、水に対してより低い親和性を有するケイ酸塩を提供し、またそれ故に、より迅速に乾燥することができると考えられる。
【0030】
金属ケイ酸塩溶液は、2つの方法、すなわち水の蒸発(脱水)または化学硬化によって固体金属ケイ酸塩コーティングに変換される。2つの機構は別々にまたは組み合わせて使用することができる。金属ケイ酸塩のフィルムは吸湿および劣化を受けやすい。しかしながら、水がケイ酸塩から完全に除去される場合、このプロセスは遅くなり得る。風乾だけでは通常、天候または高湿度の条件にさらされる可能性がある金属ケイ酸塩コーティングを提供するのに適切ではない。そのような用途では、熱が必要となり得る。過剰な水をゆっくり除去するために温度を徐々に200~210°F(約93℃~約99℃)まで上昇させるべきであり、次いで最終硬化は350~700°F(約175℃~約370℃)で行うことができる。急速に加熱しすぎると蒸気が形成し、その結果フィルムが膨れたり膨張したりすることがある。以下で詳細に説明されるように、比較的不溶性のフィルムを提供するために、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を種々の多価金属化合物と反応させて、溶液から不溶性金属ケイ酸塩化合物を沈殿させて固体層を提供することにより硬化アルカリ金属ケイ酸塩コーティングを形成することができる。化学硬化反応は急速に起こり得、多価金属化合物は、無機結合剤、無機充填剤と同時に、または多価金属化合物が無機結合剤を含む層上に堆積されるような後処理として適用され得る。
【0031】
実施形態では、硬化性コーティング組成物は、金属ケイ酸塩以外の結合剤を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「金属ケイ酸塩以外の結合剤を実質的に含まない」とは、無機結合剤が有意な量の意図的に添加された非アルカリ金属ケイ酸塩結合剤または非アルカリ土類金属ケイ酸塩結合剤を含有しないことを意味する。したがって、付随的またはバックグラウンド量の非アルカリ金属ケイ酸塩結合剤または非アルカリ土類金属ケイ酸塩結合剤(例えば、全固体含有量に基づいて3体積%未満、2体積%未満、または1体積%未満)は、本開示によるコーティング組成物中に存在し得、また本開示の範囲内であり得る。したがって、実施形態でが、硬化性コーティング組成物の結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、およびそれらの組み合わせからなるか、または本質的になる。実施形態では、硬化性コーティング組成物および無機結合剤は、有機ポリマー結合剤を実質的に含まず、またホルムアルデヒド含有結合剤を実質的に含まない。
【0032】
無機充填剤
適切な無機充填剤としては、例えば、粘土(例えば、カオリン粘土およびベントナイト)、雲母、砂、硫酸バリウム、シリカ、タルク、石膏、炭酸カルシウム、珪灰石、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、中空ビーズ、ベントナイト塩、およびそれらの混合物が挙げられる。実施形態では、充填剤は、粘土、雲母、砂、硫酸バリウム、シリカ、タルク、石膏、炭酸カルシウム、珪灰石、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、中空ビーズ、ベントナイト塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、充填剤は炭酸カルシウムを含む。実施形態では、充填剤は炭酸カルシウムおよびカオリン粘土の組み合わせを含む。
【0033】
無機充填剤は無機結合剤と同じではない。したがって、実施形態では、無機充填剤は、アルカリ金属ケイ酸塩およびアルカリ土類金属ケイ酸塩を実質的に含まない。本明細書で使用される「実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含まない」および「実質的にアルカリ土類金属ケイ酸塩を含まない」とは、無機充填剤が有意な量の意図的に添加されたアルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、もしくはケイ酸リチウムを含有しないこと、または、有意な量の意図的に添加されたアルカリ土類金属ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、またはケイ酸ベリリウムを含有しないことを意味する。したがって、付随的またはバックグラウンドの金属ケイ酸塩(例えば、3体積%未満、2体積%未満、または1体積%未満)が無機充填剤中に存在し得、本開示の範囲内であり得る。ガラスおよび粘土を含む無機充填剤は、ケイ酸アルミニウムを含み得、本開示の範囲内であり得る。
【0034】
コーティング組成物およびコーティング層は、任意選択で、分散剤、顔料、界面活性剤、pH調整剤、緩衝剤、粘度調整剤、安定剤、消泡剤、流動調整剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の成分をさらに含む。
【0035】
適切な分散剤としては、例えば、ピロリン酸四カリウム(TKPP)(FMC Corp.)、Tamol(登録商標)731A(Rohm&Haas)などのポリカルボン酸ナトリウム、およびTriton(商標)CF-10アルキルアリールポリエーテル(Dow Chemicals)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。好ましくは、コーティング組成物は、Triton(商標)CF-10アルキルアリールポリエーテル(Dow Chemicals)などの非イオン性界面活性剤から選択される分散剤を含む。
【0036】
任意選択で、コーティング組成物およびコーティング層は、コーティングに増加した耐水性を付与するために少量の成分をさらに含み得る。例えば、増加した耐水性を付与するための成分は、約3重量%以下、約2重量%以下、または約1重量%以下の量でコーティング組成物および/またはコーティング層に含まれ得る。増加した耐水性を付与する適切な成分としては、例えば、コーティングに疎水性を付与するシロキサンが挙げられる。適切なシロキサンは、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリジメチルシロキサン、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0037】
硬化性コーティング組成物は、従来の混合技術を使用して、無機結合剤、無機充填剤および他の任意選択の成分を混合することによって調製することができる。典型的には、コーティング粒子または固体は水性担体に懸濁されている。典型的には、無機結合剤および無機充填剤を水性キャリアに添加して混合し、続いて他の任意選択の成分を乾燥重量%の量に従って降順に添加する。あるいは、コーティング層は、無機結合剤および無機充填剤を段階的に堆積させることによって調製することができる。そのような実施形態では、無機結合剤を添加して水性キャリアと混合し、続いて上記のような他の任意選択の成分と混合して結合剤分散液を形成し、これを典型的には最初に堆積し、次いで無機充填剤を添加して水性キャリアと混合し、続いて上記のような他の任意選択の成分と混合して充填剤分散液を形成し、これを典型的にはその後に堆積する。
【0038】
本開示のコーティング組成物、結合剤分散液および/または充填剤分散液の固体含有量は、特定の用途にとって実用的な限り高くすることができる。例えば、使用される液体キャリアの選択および量に関する制限要因は、必要量の固体で得られる粘度である。したがって、噴霧は粘度に最も敏感であるが、他の方法はそれほど敏感ではない。コーティング組成物の固体含有量の有効範囲は、約15重量%以上、例えば、約20重量%以上、または約25重量%以上、または約30重量%以上、または約35重量%、または約40重量%以上、または約45重量%以上である。代替として、または追加的に、コーティング組成物の固体含有量は、約80重量%以下、または約75重量%以下、または約70重量%以下である。したがって、コーティング組成物の固体含有量は、コーティング組成物の固体含有量について列挙した上記の終点のうちの任意の2つによって制限され得る。例えば、コーティング組成物の固体含有量は、約15重量%~約80重量%、約35重量%~約80重量%、約45重量%~約75重量%、または約45重量%~約70重量%であってもよい。
【0039】
結合剤および充填剤を予備混合して硬化性コーティング組成物を形成する実施態様、ならびに結合剤分散液および充填剤分散液を別々に調製して堆積する実施態様において、無機結合剤は、コーティング組成物および/または硬化コーティング層中の固体の全体積に基づいて約10~約50体積%の範囲内の量で提供され、無機充填剤は、コーティング組成物および/または硬化コーティング層中の固体の全体積に基づいて約50~約90体積%の範囲内の量で提供される。例えば、無機結合剤は、約10~約50体積%、約15~約45体積%、または約20~約30体積%の範囲内、例えば約10体積%、約15体積%、約20体積%、約25体積%、約30体積%、約35体積%、約40体積%、約45体積%、または約50体積%の量で提供することができる。同様に、無機充填剤は、例えば、約50~約90体積%、約55~約85体積%、または約60~約80体積%の範囲内、例えば約50体積%、約55体積%、約60体積%、約65体積%、約70体積%、約75体積%、約80体積%、約85体積%、または約90体積%の量で提供することができる。
【0040】
例えば、33.5重量%の37.5%固体ケイ酸ナトリウム溶液、31.4重量%の追加の水、17.6重量%のカオリン粘土および17.6重量%の炭酸カルシウムを含むコーティング組成物は、約12.6%のケイ酸ナトリウム結合剤および約35.2%の無機充填剤(カオリン粘土および炭酸カルシウム)で構成される約47.8重量%の固体含有量を有する。したがって、固体のうち、ケイ酸ナトリウム結合剤は約26.4重量%を構成し、無機充填剤は約73.6重量%を構成する。硬化ケイ酸塩の密度はカオリン粘土および炭酸カルシウム(約2.7g/cc)と同様であるため、組成物および最終コーティング中のケイ酸ナトリウム結合剤および無機充填剤の対応する体積パーセントは、溶液中の重量パーセント分布とほぼ同じであり、すなわち、約26.4体積%のケイ酸塩結合剤および約73.6体積%の無機充填剤である。したがって、ケイ酸ナトリウム、ほとんどの粘土、および/または炭酸カルシウムを含む組成物の場合、組成物中の固体の重量%は、コーティング組成物(同様の密度による)および最終ケイ酸塩コーティング中の体積%におおよそ対応する。しかしながら、当業者が容易に認識するように、金属ケイ酸塩結合剤よりもはるかに高い密度または低い密度を有する充填剤(例えば、中空球)を使用する場合、組成物中の固体の重量%は、本開示による金属ケイ酸塩コーティング組成物およびケイ酸塩コーティングにおける体積%と同じではないであろう。
【0041】
繊維パネル
本開示はさらに、本開示のコーティング組成物でコーティングされたパネル(例えば、吸音パネル、シーリングタイル)に関する。図1に概略的に示されるように、本開示の一態様によるコーティングパネル10は、裏打ち面30と対向面40とを有するパネルコア20を備える。パネルは、任意選択で、裏打ち面30と接触している裏打ち層35、および/または対向面40と接触している対向層45をさらに備える。裏面コーティング層50は、例えば裏打ち面30または任意選択の裏打ち層35と接触するように配置される。任意選択で、さらなる前面コーティング層60が、例えば、対向面40または任意選択の対向層45の上に配置される。
【0042】
裏面コーティング層50は、加湿状態において重力による垂れ下がる力に有益に対抗し、したがってコーティングはパネルコア20の裏打ち面30(または存在する場合は裏打ち層35)に施される。裏打ち面30は、吊りシーリングタイルシステムにおいてパネル上方のプレナムに向けられる側であってもよい。コーティングパネル10は、音を減衰させるための吸音パネルであってもよい。裏打ち面30は、吸音パネルが壁に設けられている用途においてパネルの後ろの壁に向けられている面であってもよい。
【0043】
パネルコア20を製造するための例示的な手順は、米国特許第1,769,519号に記載されている。一態様において、パネルコア20は、鉱物ウール繊維およびデンプンを含む。本開示の別の態様において、デンプン成分は、米国特許第1,769,519号、第3,246,063号、および第3,307,651号に開示されているように、鉱物ウール繊維用の結合剤として作用するデンプンゲルであってもよい。本開示のさらなる態様では、パネルコア20は、ガラス繊維パネルを含んでもよい。
【0044】
本開示のコーティングパネルのパネルコア20はまた、様々な他の添加剤および薬剤を含み得る。例えば、パネルコア20は、硫酸カルシウム材料(例えば、スタッコ、石膏および/または無水石膏)、ホウ酸およびヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)を含み得る。カオリン粘土およびグアーガムは、吸音タイルの製造時にスタッコおよびホウ酸の代わりに使用することができる。
【0045】
本開示のコーティングパネルのコアは、様々な技術を使用して調製することができる。一実施形態では、パネルコア20は、米国特許第4,911,788号および第6,919,132号に記載されているように、湿式または水フェルトプロセスによって調製される。別の実施形態では、パネルコア20は、水中でデンプンおよび様々な添加剤を組み合わせて混合してスラリーを提供することによって調製される。スラリーを加熱してデンプンを熱処理し、デンプンゲルを形成し、次いでそれを鉱物ウール繊維と混合する。ゲル、添加剤、および鉱物ウール繊維(「パルプ」と呼ばれる)のこの組み合わせは、連続プロセスでトレイに計量される。パルプが計量供給されるトレイの底部は、裏打ち層35(例えば、漂白紙、未漂白紙、またはクラフト紙で裏打ちされたアルミニウム箔、以下クラフト/アルミニウム箔と呼ばれる)を任意選択で含有することができ、裏打ち層は、トレイからの材料の放出を助けるが、最終製品の一部としても残る。パルプの表面はパターン化することができ、パルプを含むトレイは、例えば対流式トンネル乾燥機を通してそれらを輸送することによって、その後乾燥させることができる。次に、乾燥生成物またはスラブを仕上げラインに供給することができ、そこでパネルコア20を提供するサイズに切断することができる。次いで、パネルコア20を、本開示のコーティング組成物を塗布することによって本開示のパネルに変換することができる。コーティング組成物は、好ましくは、コアが形成され乾燥された後にパネルコア20に塗布される。さらに別の実施形態では、パネルコア20は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,364,015号に記載されている方法に従って調製される。具体的には、パネルコア20は、硬化石膏のインターロッキングマトリックスを含む吸音層を備え、これはモノリシック層でも多層複合材料でもよい。望ましくは、パネルコア20は、水、焼成石膏、発泡剤、および任意選択でセルロース繊維(例えば紙繊維)、軽量骨材(例えば発泡スチロール)、結合剤(例えばデンプン、ラテックス)、ならびに/または強化材料(例えばトリメタリン酸ナトリウム)の混合物をコンベアベルト上にキャストすることによって形成される。
【0046】
実施形態では、パネルコアは、任意選択でスクリム層(例えば紙、織または不織ガラス繊維)、および/または焼成石膏を含み、少なくとも約35lbs/ftの密度を有する高密度化層前駆体でコーティングされた裏打ちシート(例えば紙、金属箔、またはそれらの組み合わせ)を備える。さらに別の実施形態では、パネルコア20は、湿式フェルトプロセスに従って調製される。湿式フェルトプロセスでは、鉱物ウール、膨張パーライト、デンプンおよび少量の添加剤を含むパネル形成材料の水性スラリーが、長網抄紙機またはシリンダー形成機などの可動ワイヤスクリーン上に堆積される。長網抄紙機のワイヤスクリーン上で、水性スラリーを重力によって脱水し、次いで任意選択で真空吸引によって脱水することによって湿潤マットが形成される。湿潤マットは、さらなる脱水のためにプレスロール間で所望の厚さにプレスされる。プレスされたマットは、オーブンで乾燥され、次いで吸音パネルを製造するために切断される。次いで、パネルコア20を、本開示のコーティング組成物を塗布することによって本開示のパネルに変換することができる。コーティング組成物は、好ましくは、コアが形成され乾燥された後にパネルコア20に塗布される。
【0047】
さらなる実施形態では、パネルコア20は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0277948A1号に記載されているように、保存剤として1種以上のホルムアルデヒド不含殺生物剤を含むことができる。適切なホルムアルデヒド不含殺生物剤としては、Proxel(登録商標)GXLまたはProxel(登録商標)CRL(ARCH Chemicals)、Nalcon(登録商標)(Nalco)、Canguard(商標)BIT(Dow Chemical)、およびRocima(商標)BT 1S(Rohm&Haas)として入手可能な1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンが挙げられる。他のイソチアゾリン-3-オンとしては、Acticide(登録商標)MBS(Acti-Chem)として入手可能な1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンおよび2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンのブレンドが挙げられる。さらなるイソチアゾリン-3-オンとしては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、およびそれらのブレンドが挙げられる。5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンのブレンドは、Kathon(商標)LX(Rohm & Haas)、Mergal(登録商標)K14(Troy Chemical)、およびAmerstat(登録商標)251(Drew Chemical)として入手可能である。別の適切なホルムアルデヒド不含殺生物剤には、Zinc Omadine(登録商標)(ARCH Chemicals)として入手可能な亜鉛1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオンが含まれ、好ましくは乾燥状態および湿潤状態の両方で有効である。亜鉛1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオンはまた、Zinc Omadine(登録商標)エマルジョンとして入手可能な酸化亜鉛と共に使用することができる。他の適切なホルムアルデヒドフリー殺生物剤としては、Kathon(商標)893およびSkane(登録商標)M-8(Rohm&Haas)として入手可能な2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、およびMetasol(登録商標)TK-100(LanXess)として入手可能な2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾールが挙げられる。
【0048】
前述のように、本開示によるコーティングパネルは、任意選択で裏打ち層35を含んでもよい。未漂白紙、漂白紙、クラフト/アルミニウム箔などを含む多数の材料を裏打ち層35として使用することができる。製品の表面燃焼特性を向上させるために、任意選択で、耐燃性裏面コーティングを漂白または未漂白紙裏打ちと組み合わせて塗布することができる。耐燃性裏面コーティングは、例えば、水、難燃剤、および殺生物剤などの様々な成分を含むことができる。裏打ち層35はまた、垂れ下がり抵抗性および/または音響制御を改善するためにも使用され得る。さらに、1つまたは複数のフィルコーティングを裏打ち層35に塗布することもできる。フィルコーティングは、例えば、水、充填剤、結合剤、および消泡剤、殺生物剤、および分散剤などの様々な他の添加剤などの様々な成分を含むことができる。一般に、フィルコーティングが使用される場合、フィルコーティングは、典型的には本開示の金属ケイ酸塩コーティングの後に塗布される。
【0049】
本開示のコーティング組成物は、繊維パネル(例えば、吸音パネルまたはシーリングタイル)などのパネルの前面および/または裏面のコーティングに使用するのに適している。本開示のコーティング組成物は、当技術分野で公知の吸音パネルと共に使用することができ、ウォーターフェルト法によって製造された吸音パネルを含む、当技術分野で公知の方法によって製造することができる。本開示に従って使用するのに適した市販のシーリングタイルは、例えば、Chicago、IllのUSG Interiors,Inc.から入手可能なRadar(商標)ブランドのシーリングタイルを含む。Radar(商標)ブランドのタイルは、厚さ5/8インチの水フェルトスラグウールまたは鉱物ウール繊維パネルであり、以下の組成を有する:1~75重量%のスラグウール繊維、5~75重量%の膨張パーライト、1~25重量%セルロース、5~15重量%のデンプン、0~15重量%のカオリン、0~80重量%の脱水硫酸カルシウム、2重量%未満の石灰石またはドロマイト、5重量%未満の結晶性シリカ、および2重量%未満の酢酸ビニルポリマーまたはエチレン酢酸ビニルポリマー。鉱物ウール繊維の直径は、実質的な範囲、例えば0.25~20ミクロンにわたって変動し、また繊維の大部分は直径3~4ミクロンの範囲内にある。鉱物繊維の長さは、約1mm~約8mmの範囲である。例えば、吸音パネルおよびその製造は、例えば、米国特許第1,769,519号、第3,246,063号、第3,307,651号、第4,911,788号、第6,443,258号、第6,919,132号、および第7,364,015号に記載されている。
【0050】
方法
本開示はさらに、シーリングタイルをコーティングする方法を提供し、方法は、裏打ち面と、反対側の対向面とを有するシーリングタイルを提供することと、無機結合剤および無機充填剤を含む層を裏打ち面上に堆積させることであって、無機結合剤は、層中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の量で存在し、無機充填剤は、層中の固体の全体積に基づいて50~90体積%の量で存在し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、無機結合剤および無機充填剤は、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、堆積させることと、層を少なくとも350°F(約176℃)の表面温度に加熱し、それによってシーリングタイルの裏打ち面に金属ケイ酸塩コーティングを形成することとを含む。
【0051】
本開示はさらに、繊維パネルをコーティングする方法を提供し、方法は、裏打ち面と、反対側の対向面とを有する繊維パネルを提供することと、無機結合剤および無機充填剤を含む裏打ち面上の層を少なくとも片面に堆積させることであって、無機結合剤は、層中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の量で存在し、無機充填剤は、層中の固体の全体積に基づいて50~90体積%の量で存在し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、無機結合剤および無機充填剤は、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、堆積させることと、層を少なくとも350°F(約176℃)の表面温度に加熱し、それによって繊維パネルの少なくとも片面に金属ケイ酸塩コーティングを形成することとを含む。
【0052】
実施形態では、無機結合剤および無機充填剤が予め混合されて硬化性コーティング組成物が形成され、したがって混合物中に同時に堆積される。代替の実施形態では、無機充填剤および無機結合剤は、無機結合剤分散液および無機充填剤分散液から段階的に堆積される。任意選択で、無機充填剤が最初に堆積され、その後無機結合剤が第1の無機充填剤層と接触して堆積される。理論に束縛されることを意図しないが、最初に無機充填剤を堆積させることは、まずケイ酸塩結合剤の架橋/脱水によって形成されたマトリックス中の充填剤の保持を高め、さらにケイ酸塩結合剤の架橋/脱水を促進すると考えられる。実施形態では、分散剤が硬化性コーティング組成物に混入され、無機結合剤および無機充填剤と同時に堆積されてもよい。結合剤および充填剤が段階的に堆積される場合、分散剤が無機結合剤分散液および/または無機充填剤分散液中に含まれてもよい。
【0053】
コーティング組成物は、当業者には容易に知られ利用可能な様々な技術を用いて、パネル、好ましくは繊維吸音パネルまたはシーリングタイル基板の1つ以上の表面に塗布することができる。そのような技術は、例えば、無気噴霧システム、空気補助噴霧システムなどを含む。コーティングは、ロールコーティング、フローコーティング、フラッドコーティング、噴霧、カーテンコーティング、押出し、ナイフコーティング、およびそれらの組み合わせなどの方法によって塗布することができる。金属ケイ酸塩コーティングは、約10g/ft~約40g/ft、約15g/ft~約35g/ft、および約15g/ftから約25g/ftの湿潤ベースの量のコーティング重量を有するように塗布することができる。コーティング組成物は、例えば、約30%~約70%、約40%~約70%、約40%~約50%、または約60%~約70%の範囲内の任意の適切な固体を有してもよい。金属ケイ酸塩コーティングは、乾燥ベースで約0.014lb/ft(約6.5g/ft)~約0.065lb/ft(約29.3g/ft)、約0.020lb/ft(約9.8g/ft)~約0.050lb/ft(約22.8g/ft)、または約0.020lb/ft(約9.8g/ft)~約0.036lb/ft(約16.3g/ft)のコーティング重量を有するように65%固体組成物から塗布されてもよい。実施形態では、金属ケイ酸塩コーティングは、乾燥ベースで約0.010lb/ft(約4.5g/ft)~約0.040lb/ft(約18g/ft)、約0.015lb/ft(約6.8g/ft)~約0.035lb/ft(約15.8g/ft)、または約0.015lb/ft(約6.8g/ft)~約0.025lb/ft(約11.3g/ft)のコーティング重量を有するように45重量%固体組成物から塗布されてもよい。一実施形態では、本開示のコーティング組成物は、パネルの裏打ち面30に塗布される。別の実施形態では、本開示のコーティング組成物は、パネルの裏打ち層35に塗布される。
【0054】
本開示の硬化性コーティング組成物を、予備混合硬化性組成物として、または無機充填剤および無機結合剤の段階的堆積物としてパネルに塗布した後、それを加熱して乾燥および硬化させ、架橋/脱水固体金属ケイ酸塩コーティング層を形成する。理論に束縛されることを意図しないが、加熱は無機ケイ酸塩結合剤の硬化および架橋/脱水をもたらし、それによって所望の構造マトリックス内での無機充填剤の保持を高めると考えられる。得られた生成物を乾燥させると、コーティング組成物またはその成分のいずれかのための担体として使用された任意の水が除去され、無機ケイ酸塩ポリマー結合剤がパネルの構造的剛性を高めることができる構造的剛性ネットワークに変換される。「硬化」とは、本明細書では、例えば共有化学反応(例えば縮合反応)、水素結合などを介して、結合剤の特性を変えるのに十分な化学的または形態学的変化を意味する。
【0055】
加熱の期間および温度は、乾燥速度、加工または取り扱いの容易さ、および加熱された基板の特性発現に影響を与えるであろう。約100℃~約300℃(例えば、約150℃~約300℃、または約175℃~約250℃、または約200℃~約250℃)での約3秒~約15分の期間の熱処理を行うことができる。吸音パネルの場合、適切な温度は、約175℃~約280℃、または約190℃~約240℃(約375~約450°F)の範囲内である。一般に、約200~240℃(約390~約465°F)のコーティング表面温度は完全硬化を示す。
【0056】
必要に応じて、乾燥および硬化機能を2つ以上の異なる工程で行うことができる。例えば、硬化性コーティング組成物は、最初に、組成物を実質的に乾燥させるが実質的に硬化させないのに十分な温度で十分な時間加熱され、次いで、完全な硬化をもたらすためにより高い温度で、および/またはより長い期間、再び加熱されてもよい。「Bステージング」と呼ばれるそのような手順は、本開示に従ってコーティングパネルを提供するために使用され得る。
【0057】
任意選択で、本開示の方法は、熱硬化に加えて、またはその代わりに化学的硬化を利用することができる。化学的硬化は、溶液から不溶性金属ケイ酸塩化合物を沈殿させて固体層を提供することによって多価金属化合物または酸性溶液を堆積させて硬化金属ケイ酸塩コーティングを形成することを含み得る。実施形態では、例えば本開示の金属ケイ酸塩コーティング層を乾燥および硬化させるために加熱を行った後、冷却前に金属ケイ酸塩コーティング層をさらに多価金属または酸の溶液でコーティングすることができる。無機結合剤および無機充填剤が段階的に堆積される実施形態において、多価金属は、無機充填剤および/または無機結合剤と共に提供され、それと同時に堆積され得る。
【0058】
理論に束縛されることを意図しないが、多価金属は無機ネットワークの格子間隙内の任意の一価カチオン(例えば、ナトリウム、リチウム、またはカリウム)を置換し、不溶性ケイ酸塩コーティングの硬化および形成を促進すると考えられる。多価金属は、二価および/または三価金属塩として提供されてもよい。適切な多価金属としては、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、およびAl3+が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態において、多価金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二価または三価のカチオンを有する金属塩を含む。実施形態において、多価金属は、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される二価または三価のカチオンを有する金属塩を含む。実施形態において、多価金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを有するアルカリ土類金属塩を含む。適切な塩としては、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。実施形態では、多価金属は、酸化物、水酸化物またはそれらの組み合わせの形態で提供される。理論に束縛されることを意図しないが、より遅い溶解性の化合物、例えば炭酸塩、酸化物、水酸化物などが安定な製剤を提供するために使用され得ると考えられる。
【0059】
多価金属化合物は、当技術分野において公知の任意の技術、例えば、無気噴霧システム、空気補助噴霧システムなどによって塗布することができる。多価金属化合物コーティングは、ロールコーティング、フローコーティング、フラッドコーティング、噴霧、カーテンコーティング、押出し、ナイフコーティング、およびそれらの組み合わせなどの方法によって塗布することができる。塩化カルシウム、塩化マグネシウム、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない多価金属化合物の溶液が、硬化性コーティング組成物でコーティングした高温パネル上に噴霧され得る。理論に束縛されることを意図しないが、化学的硬化反応を完了させるために必要な多価金属塩の最小量が存在すると考えられる。化学的硬化反応を完了させるための多価金属塩の適切なコーティング重量は、湿潤または乾燥ベースで少なくとも約2.5mmol/ft、または少なくとも約5mmol/ftである。多価金属は、約2.5mmol/ft~約35mmol//ft、または約5mmol/ft~約30mmol/ft、約7mmol/ft~約20mmol/ft、または約9mmol/ft~約15mmol/ftの範囲内のコーティング重量(乾燥または湿潤ベース)で塩として堆積され得る。
【0060】
任意選択で、多価金属化合物の溶液をパネル上に噴霧した後、パネルを乾燥させ、例えば、20秒~5分の間、100°F~400°F(約35℃~約210℃)の範囲内の温度に再び加熱することができる。
【0061】
酸が化学的硬化に使用される実施形態では、酸は任意の酸、例えば、酢酸、硫酸、リン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される有機酸または鉱酸を含むがこれらに限定されない有機酸または鉱酸であってもよい。
【0062】
本開示のコーティングパネルは、ASTM C367M-09に従って決定されるように、永久ひずみに対する増加した抵抗(垂れ下がり抵抗)を有する。
【0063】
垂れ下がり試験-ASTM C367M-09
シーリングタイルの垂れ下がりは、ASTM C367M-09に従って測定することができる。簡潔に説明すると、シーリンググリッドを模した試験ラックにシーリングタイルを配置する。ラックにセットされたパネルの幾何学的中心の垂直位置を測定して、70°F(21℃)/50%R.H.の1時間の調整後の製品の初期位置を決定する。パネルのタイルの初期位置が測定されると、タイルは単一の試験サイクルを含むさまざまな環境条件に曝される。特に、下記の実施例では、104°F(40℃)/50%R.H.で12時間、続いて70°F(21℃)/50%R.H.で12時間のサイクルが3回完了され、各サイクルの完了後に中心位置が測定される。垂れ下がりは、2つの様式で報告される。「総移動」は、3回のサイクルが完了した後のシーリングタイルの初期位置とタイルの最終位置との間の垂直位置の差を取ることによって決定される。「最終位置」は、タイルの最終的な垂直位置を取ることによって決定される。特に指定のない限り、垂れ下がりは2’×4’のタイルのインチ単位で列挙される。本開示の適切なタイルは、コーティングされていないタイルよりも垂れ下がりが少ないこと、例えば、約1.0インチ未満、または約0.8インチ未満、または約0.6インチ未満、または約0.5インチ未満、または約0.4未満、または約0.3インチ未満、または約0.2インチ未満、または約0.1インチ未満の垂れ下がりを示す。
【0064】
本明細書における本開示の特定の企図された態様は、以下の番号を付けられた段落に記載されている。
【0065】
1.コーティングされた繊維パネルであって、
繊維パネルは、裏打ち面と、パネルの少なくとも片面に配置された硬化コーティング層を有する反対側の対向面とを備える繊維パネルを備えており、硬化コーティング層は、
乾燥コーティングの全体積に基づいて、10~50体積%の無機結合剤と、
乾燥コーティングの全体積に基づいて、50~90体積%の無機充填剤とを含み、
無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、コーティングは有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、コーティングされた繊維パネル。
【0066】
2.硬化性コーティング組成物であって、
乾燥コーティング組成物中の固体の全体積に基づいて、10~50体積%の無機結合剤と、
乾燥コーティング組成物中の固体の全体積に基づいて、50~90体積%の無機充填剤とを含み、
無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、コーティングは有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、硬化性コーティング組成物。
【0067】
3.コーティングが、追加の結合剤を含まない、段落1または段落2の繊維パネルまたは組成物。
【0068】
4.金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ベリリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属ケイ酸塩を含む、段落1~3のいずれか一項に記載の繊維パネルまたは組成物。
【0069】
5.結合剤が、ケイ酸ナトリウムを含む、段落1~4のいずれか一項に記載の繊維パネルまたは組成物。
【0070】
6.無機充填剤が、粘土、雲母、砂、硫酸バリウム、シリカ、タルク、石膏、炭酸カルシウム、珪灰石、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、中空ビーズ、ベントナイト塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される充填剤を含む、段落1~5のいずれか一項に記載の繊維パネルまたは組成物。
【0071】
7.無機充填剤が、カオリン粘土および/または炭酸カルシウムを含む、段落6に記載の繊維パネルまたは組成物。
【0072】
8.コーティングが、ホルムアルデヒドを実質的に含まない、段落1~7のいずれか一項に記載の繊維パネルまたは組成物。
【0073】
9.結合剤が、ケイ酸ナトリウムを含み、充填剤が、カオリン粘土および炭酸カルシウムの少なくとも1つを含む、段落1~8のいずれか一項に記載の繊維パネルまたは組成物。
【0074】
10.コーティングが、分散剤をさらに含む、段落1~9のいずれか一項に記載の繊維パネルまたは組成物。
【0075】
11.繊維パネルをコーティングする方法であって、
裏打ち面と、反対側の対向面とを有する繊維パネルを提供することと、
繊維パネルの少なくとも片面に層を堆積させることであって、層は、無機結合剤および無機充填剤を含み、無機結合剤は、乾燥層中の固体の全体積に基づいて10~50体積%の量で存在し、無機充填剤は、乾燥層中の固体の全体積に基づいて50~90重量%の量で存在し、無機結合剤は、アルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、無機結合剤および無機充填剤は同じではなく、無機結合剤および無機充填剤は、有機ポリマー結合剤を実質的に含まない、堆積させることと、
層を少なくとも350°F(約176℃)の表面温度に加熱し、それによって繊維パネルの少なくとも片面に金属ケイ酸塩コーティングを形成することとを含む方法。
【0076】
12.無機結合剤および無機充填剤が予備混合され、硬化性コーティング組成物を形成する、段落11に記載の方法。
【0077】
13.無機充填剤が第1の層として堆積され、無機結合剤が前記第1の層と接触する後続層として堆積される、段落11に記載の方法。
【0078】
14.化学的硬化をさらに含む、段落11~13のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
15.化学的硬化が、金属ケイ酸塩コーティング層を多価金属または酸の溶液でコーティングすること、およびコーティングを乾燥することを含む、段落14に記載の方法。
【0080】
16.無機充填剤が第1の層として堆積され、無機結合剤が第1の層と接触する後続層として堆積され、化学的硬化が第1の層中の無機充填剤と共に多価金属を堆積させることを含む、段落14の方法。
【0081】
17.化学的硬化のステップが、金属ケイ酸塩コーティング層を多価金属の溶液でコーティングすることを含み、多価金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含むアルカリ土類金属塩を含む、段落15または段落16に記載の方法。
【0082】
18.化学的硬化が、アルカリ金属ケイ酸塩コーティング層を酸の溶液でコーティングすることを含み、酸が、有機酸、鉱酸、またはそれらの組み合わせを含む、段落15に記載の方法。
【0083】
19.金属ケイ酸塩コーティングが、約0.01lb/ft(乾燥ベース)~約0.07lb/ft(乾燥ベース)の範囲内のコーティング重量を有する、段落11~18のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
20.化学的硬化が、5mmol/ft~約30mmol/ftの範囲内のコーティング重量(乾燥または湿潤)で多価金属溶液を塗布することを含む、段落14または15のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
本発明の範囲内の変更は当業者に明らかであり得るため、前述の説明は理解を明確にするためだけに記載され、そこからは不必要な制限が理解されるべきではない。
【0086】
本開示による組成物、パネル、および方法は、単に本開示の組成物、パネル、および方法を例示することを意図し、決して本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例に照らして、より良く理解され得る。
【実施例
【0087】
実施例1
一連のコーティング吸音シーリングタイルを製造し、垂れ下がり抵抗について試験した。他に指定のない限り、実施例において使用される全てのシーリングタイルは、Chicago、IllのUSG Interiors,Inc.から入手可能なRadar(商標)ブランドのシーリングタイルである。Radar(商標)ブランドのタイルは、厚さ5/8インチの水フェルトスラグウールまたは鉱物ウール繊維パネルであり、以下の組成を有する:1~75重量%のスラグウール繊維、5~75重量%の膨張パーライト、1~25重量%セルロース、5~15重量%のデンプン、0~15重量%のカオリン、0~80重量%の脱水硫酸カルシウム、2重量%未満の石灰石またはドロマイト、5重量%未満の結晶性シリカ、および2重量%未満の酢酸ビニルポリマーまたはエチレン酢酸ビニルポリマー。鉱物ウール繊維の直径は、実質的な範囲、例えば0.25~20ミクロンにわたって変動し、また繊維の大部分は直径3~4ミクロンの範囲内にある。鉱物繊維の長さは、約1mm~約8mmの範囲である。
【0088】
無機充填剤と組み合わせたケイ酸ナトリウム溶液(N Sodium Silicate Solution、3.22 SiO:NaO、37.5%固体、PQ Corporation、Valley Forge、PA)を含む本開示のホルムアルデヒド不含結合剤組成物を含むコーティング組成物を使用して、試料を調製した。ケイ酸塩コーティング組成物は、33.5重量%のケイ酸ナトリウム溶液、31.4重量%の水、17.6重量%のカオリン粘土および17.6重量%の炭酸カルシウムを含んでいた。ケイ酸塩コーティング組成物は、11.86lb/galの密度、5rpmで4,000cPの粘度、100rpmで280cPの粘度、および120℃で52重量%の固体を有していた。粘度は#3HBスピンドルを有するブルックフィールド粘度計で測定した。個々の試料パネルをロールコーティングして、4’×4’試料パネルに前面プライマーコーティングおよびケイ酸塩裏面コーティングを施した。タイルは穿孔されておらず、または亀裂が入っておらず、仕上げ用トップコーティングは施されていなかった。
【0089】
3つの対照試料、すなわち(1)穿孔され、亀裂が入れられ、またメラミンホルムアルデヒド裏面コーティング、前面プライマーコーティング、および仕上げ用トップコーティングを有する完全仕上げシーリングタイル、(2)メラミンホルムアルデヒド裏面コーティングおよび前面プライマーコーティングのみを有する未完成シーリングタイル、ならびに(3)コーティングされていないシーリングタイルが、比較のために使用された。
【0090】
本開示のケイ酸塩コーティング組成物で第1の組のシーリングタイル試料をコーティングし、600°Fの空気温度で1回、高速空気衝突対流オーブンに通した。25秒の全オーブン時間は、ハンドヘルド赤外線温度計を用いてオーブンの直後で350°Fの表面温度を与えた(ケイ酸塩#1)。第2の組の試料を第1の組の試料と同様に製造したが、シーリングタイルを同じオーブンに3回通して、裏面温度450°Fおよび全オーブン時間75秒を達成した(ケイ酸塩#2)。垂れ下がり試験は上記のように実施した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
上記の表に示され、図2にグラフで示されるように、本開示による全てのコーティングシーリングタイルは、コーティングされていないシーリングタイルと比較して垂れ下がりを低減した。さらに、ケイ酸塩コーティングをより高温で硬化させた場合(ケイ酸塩#2)、本開示のケイ酸塩ベースのコーティング組成物でコーティングされたシーリングタイルは、ホルムアルデヒドコーティングを施した最終シーリングタイルおよびホルムアルデヒドコーティングを施しただけのシーリングタイルと同様の性能を示す。したがって、実施例1は、本開示の硬化性コーティング組成物でコーティングされたシーリングタイルが、少なくとも業界標準のホルムアルデヒドコーティングシーリングタイルに匹敵する性能を示すことを実証している。
【0094】
実施例2
一連のコーティング吸音シーリングタイルを製造し、垂れ下がり抵抗について試験した。無機充填剤と組み合わせたケイ酸ナトリウム溶液を含むホルムアルデヒド不含結合剤組成物を含む本開示のコーティング組成物を使用して、試料を調製した。ケイ酸塩コーティング組成物は、45.7重量%のケイ酸ナトリウム溶液(N Sodium Silicate Solution、3.22 SiO:NaO、37.5%固体、PQ Corporation、Valley Forge、PA)(固体の全体積に基づいて27.3体積%)、8.6重量%の水、および45.7重量%の炭酸カルシウム(固体の全体積に基づいて72.7体積%)(CC90、Superior Minerals Company、Savage、MN)を含んでいた。以下の表に記載されるように、一連の2’×4’シーリングタイルをロールコーターでタイルの裏面にコーティングした。試料を、約400°Fの裏面温度を達成する600°F(315.5℃)の空気温度で高速空気衝突対流オーブンに通した。いくつかの試料は、ロールコーターを用いて第2の層のケイ酸塩コーティングでコーティングし、同じオーブンを通過させ、約400°Fの裏面温度を達成した。次いで、ロールコーターまたは噴霧コーターを用いて、下記の表に記載のアルカリ土類金属塩の水溶液でタイルをコーティングし、約375°Fの裏面温度を達成する約400°Fの空気温度で、ガス燃焼直火仕上げオーブンに通過させた。記録された全ての重量は、乾燥ベースで示されている。タイルは標準的な穿孔/亀裂およびトップ仕上げコートで仕上げられた。シーリングタイルの内部への穴または亀裂の穿孔または穴開けは、音波の吸収および減衰を提供する。上記のように、湿気により誘導される垂れ下がりに対する耐性について試料を試験した。メラミンホルムアルデヒドベースのコーティングを施した試料タイルおよびコーティングを施していないシーリングタイルを対照として試験した。
【0095】
【表3】
【0096】
全てのコーティングタイルは、コーティングされていないタイルと比較して垂れ下がりが減少した。本開示のコーティング組成物、ケイ酸塩#6およびケイ酸塩#8を有するタイルを比較することによって示されるように、垂れ下がりに対する抵抗は、塗布されるケイ酸塩の総量が増加するにつれて増加した(総移動が減少した)。さらに、本開示のコーティング組成物、ケイ酸塩#7およびケイ酸塩#9を有するタイルを比較することによって示されるように、垂れ下がりに対する抵抗は、アルカリ土類金属塩溶液のコーティング重量が増加するにつれて増加した(総移動が減少した)。理論に束縛されることを意図しないが、アルカリ土類金属塩溶液のコーティング重量が増加すると、無機ケイ酸塩ネットワークの間隙空間内により多くの一価カチオン(例えばナトリウム)を置換するために存在する多価アルカリ土類金属がより多く存在し、不溶性ケイ酸塩コーティングの硬化および形成を促進すると考えられる。したがって、実施例2は、本開示の硬化性コーティング組成物およびコーティングされたシーリングタイルを実証している。したがって、実施例2は、塗布されるケイ酸塩の総量が増加したとき、およびアルカリ土類金属塩のコーティング重量が不溶性コーティングを形成するのに十分な量で塗布されたときの、本開示のコーティングによる改善された垂れ下がり抵抗性を実証している。実施例2はさらに、本開示の硬化性コーティング組成物でコーティングされたシーリングタイルが、業界標準のメラミンホルムアルデヒドコーティングシーリングタイルよりも良好とはいかなくとも、それと同等であることを実証している。
図1
図2