(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】二次電池用複合固体電解質およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20220325BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220325BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220325BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20220325BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20220325BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220325BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20220325BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220325BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220325BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B13/00 Z
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/056
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2019536797
(86)(22)【出願日】2016-10-06
(86)【国際出願番号】 KR2016011180
(87)【国際公開番号】W WO2018056491
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2019-03-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2016-0120694
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518335975
【氏名又は名称】セブン キング エナージー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEVEN KING ENERGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1417 (Hyundai Pantheon,Sunae-dong)9-7,Hwangsaeul-ro,200beon-gil,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13595 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519097973
【氏名又は名称】キム、ジェグワン
【氏名又は名称原語表記】KIM,Jae-Kwang
【住所又は居所原語表記】603(Daehan Mansion,Dogye-dong),14-15,Dogye-ro 83beon-gil,Uichang-gu,Changwon-si,Gyeongsangnam-do 51161 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェグワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジウォン
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】河本 充雄
【審判官】小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212103(JP,A)
【文献】特開2008-277170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01B13/00
H01M10/052-10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性セラミック60~100重量部と高分子1~40重量部とを含む複合フィルム、および
リチウムイオンまたはナトリウムイオンと非水系有機溶媒が混合された溶液を含有する液体電解質
を含み、
前記複合フィルムと前記液体電解質は60~100:1~40の重量比で含まれ、
前記液体電解質は、前記複合フィルムに含浸されることを特徴とする複合固体電解質
(但し、高分子ゲルを含むものを除く)。
【請求項2】
前記液体電解質は溶媒内にリチウム塩またはナトリウム塩を0.1M以上に溶解した溶液であり、前記溶媒としてイオン性液体(ionic liquid)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合固体電解質。
【請求項3】
前記複合固体電解質は厚さが30μm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の複合固体電解質。
【請求項4】
前記複合固体電解質は400℃以上で熱的安定性を有することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複合固体電解質。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の複合固体電解質を含むことを特徴とする二次電池。
【請求項6】
イオン伝導性セラミック60~100重量部と高分子1~40重量部とを混合して混合物スラリーを製造するステップ(1)、
前記混合物スラリーをフィルム形態に成形して複合フィルムを製造するステップ(2)、および
前記複合フィルムに、リチウムイオンまたはナトリウムイオンと非水系有機溶媒が混合された溶液を含有する液体電解質を吸収させて複合固体電解質
(但し、高分子ゲルを含むものを除く)を製造するステップ(3)
を含み、
前記複合フィルムと前記液体電解質は60~100:1~40の重量比で含まれることを特徴とする複合固体電解質の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(3)において、吸収に適用される前記液体電解質は、溶媒としてイオン性液体(ionic liquid)を含み、前記吸収は、前記複合フィルムと前記液体電解質の重量比が60~100:1~40になるように提供して行われることを特徴とする、請求項6に記載の複合固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の安定性と電気化学的特性を向上させた二次電池用複合固体電解質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電池は、自動車用電池、固定用電池において蓄電用途として用いる大型電池が大きな注目を浴びている。これは、現在まで主流をなしていた携帯機器用小型電池ではない、電気自動車固定用蓄電池の用途などとして用いる大型電池の需要が急激に高まっていることにその原因がある。
【0003】
大型電池への要求が大きくなるにつれて、二次電池の安定性の確保と電池寿命の増加の側面では、現在の二次電池よりさらに向上した性能が求められている。
【0004】
リチウム二次電池のような商用化された二次電池では液体電解質が広く用いられているが、液体電解質は、可燃性が高く、熱的安定性が低いため、電池の安定性を低下させるという問題点がある。
【0005】
前記リチウム二次電池の安定性を向上させるために、その代わりに適用できる固体電解質に関する研究も行われている。セラミック系固体電解質のような固体電解質は、軽く、電解質の液漏れがなく、可変性に優れるが、常温でイオン伝導度が低く、電極との界面抵抗が高いため、電池の特性が低く示されるいという問題点がある。
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電池の安定性と電気化学的特性を向上させるためにイオン伝導性セラミックと高分子、および液体電解質を共に適用して製作した複合固体電解質およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例による複合固体電解質は、イオン伝導性セラミック60~100重量部と高分子1~40重量部とを含む複合フィルム、およびリチウムイオンまたはナトリウムイオンと溶媒が混合された溶液を含有する液体電解質を含み、前記液体電解質は、前記複合フィルムに含浸される。
【0009】
前記複合フィルムと前記液体電解質を60~100:1~40の重量比で含んでもよい。
【0010】
前記液体電解質は、溶媒内にリチウム塩またはナトリウム塩を0.1M以上に溶解した溶液であってもよい。
【0011】
前記溶媒としてイオン性液体(ionic liquid)を含んでもよい。また、前記溶媒はイオン性液体からなるものであってもよい。
【0012】
前記複合固体電解質は、厚さが30μm以下であってもよい。また、前記複合固体電解質は、その厚さが0.1μm以上30μm以下であってもよい。
【0013】
前記複合固体電解質は、400℃以上の熱的安定性を有することもできる。
【0014】
本発明の他の一実施例による二次電池は、上述した複合固体電解質を含む。
【0015】
本発明のまた他の一実施例による複合固体電解質の製造方法は、イオン伝導性セラミック60~100重量部と高分子1~40重量部とを混合して混合物スラリーを製造するステップ(1)、前記混合物スラリーをフィルム形態に成形して複合フィルムを製造するステップ(2)、および前記複合フィルムに液体電解質を吸収させて複合固体電解質を製造するステップ(3)を含む。
【0016】
前記ステップ(3)において、吸収に適用される前記液体電解質は溶媒としてイオン性液体(ionic liquid)を含んでもよく、前記溶媒はイオン性液体からなるものであってもよい。
【0017】
前記ステップ(3)において、前記吸収は、前記複合フィルムと前記液体電解質の重量比が60~100:1~40になるように提供して行われてもよい。
【0018】
【0019】
以下では、本発明についてより詳しく説明する。
【0020】
本発明の発明者は、セラミック固体電解質は、イオン伝導度とリチウム(またはナトリウム)イオン輸率が高いものの、界面抵抗が高くて二次電池の電気化学的特性を低下させるという短所があり、高分子固体電解質は、可変性は良いものの、常温でのイオン伝導度と電気化学的酸化安定性が低く、電極との界面抵抗が大きいという短所があるのを認識し、これらの短所を改善し、二次電池の安定性を向上させ、且つ、常温でイオン伝導度が高いと共に電極との界面抵抗を減少させて電池の電気化学的特性を向上できる複合高分子電解質に関する研究を繰り返し行った結果、本発明の構成により400℃以上の熱的安定性と6V以上の電気化学的酸化安定性、そして低い界面抵抗を有する複合固体電解質を製造し、本発明を完成するに至った。
【0021】
本発明の一実施例による複合固体電解質は、イオン伝導性セラミックと高分子とを含む複合フィルム、およびリチウムイオンまたはナトリウムイオンと溶媒が混合された溶液を含有する液体電解質を含む。前記液体電解質は、前記複合フィルムに吸収されて含浸された状態で存在する。
【0022】
前記イオン伝導性セラミックは、Al2O3系、SiO2系、BaTiO3系、TiO2系とイオン伝導性セラミックであるLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(LTAP)、Li7La3Zr2O12(LLZO)、Li5La3Ta2O12、Li9SiAlO8のようなリチウム酸化物系、Li10GeP2S12、Li2S-P2S5、Li2S-Ga2S3-GeS2のようなリチウム硫化物系、Na3Zr2Si2PO12のようなナトリウム酸化物系が含まれてもよい。また、非晶質イオン伝導度物質(phosphorus-based glass、oxide-based glass、oxide/sulfide based glass)、ナシコン(Na superionic conductor、NASICON)、ナトリウム硫化物系固体電解質、Na3Zr2Si2PO12のようなナトリウム酸化物系固体電解質およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つが適用されてもよい。
【0023】
具体的には、前記イオン伝導性セラミックは、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Li7La3Zr2O12、Li5La3Ta2O12、Li9SiAlO8およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つのリチウム酸化物セラミック;Li10GeP2S12、Li2S-P2S5、Li2S-Ga2S3-GeS2およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つのリチウム硫化物セラミック;ナシコン(Na superionic conductor、NASICON);Na2S-SiS2、Na2S-GeS2およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つのナトリウム硫化物セラミック;またはNaTi2(PO4)3、NaFe2(PO4)3、Na2(SO4)3、Na3Zr2Si2PO12およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つのナトリウム化合物セラミックを含んでもよい。前記イオン伝導性セラミックとしてLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(LTAP)またはNa3Zr2Si2PO12が適用されてもよく、この場合、製造し易く、イオン伝導度をさらに向上させることができる。
【0024】
前記高分子としては、PVdF(Polyvinylidene fluoride)系高分子、P(VDF-TrFE)(poly[vinylidenefluoride-co-trifluoroethylene])系高分子、PEO(Polyethylene glycol)系高分子、PAN(Polyacrylonitrile)系高分子、PMMA[Poly(methyl methacrylate)]系高分子、ポリビニルクロリド(Polyvinyl chloride)系高分子、PVP(Polyvinylpyrrolidone)系高分子、PI(Polyimide)系高分子、PE(Polyethylene)系高分子、PU(Polyurethane)系高分子、PP(Polypropylene)系高分子、PPO[poly(propylene oxide)]系高分子、PEI[poly(ethylene imine)]系高分子、PES[poly(ethylene sulphide)]系高分子、PVAc[poly(vinyl acetate)]系高分子、PESc[poly(ethylenesuccinate)]系高分子、ポリエステル(Polyester)系高分子、ポリアミン(Polyamine)系高分子、ポリスルフィド(Polysulfide)系高分子、シロキサン系(Siloxane-based)高分子およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つの高分子が適用されてもよい。具体的には、前記高分子としてはPVdFを含む高分子が適用されてもよく、この場合、イオン伝導度と熱的、電気化学的安定性が向上し、後ほど説明する液状の電解質を十分に吸収して複合フィルム内に含浸された状態に維持できる複合固体電解質を得ることができる。
【0025】
前記イオン伝導性セラミックと前記高分子は、イオン伝導性セラミック60~100重量部と高分子1~40重量部の割合で適用されてもよく、イオン伝導性セラミック60~78重量部と高分子22~40重量部の割合で適用されてもよく、イオン伝導性セラミック95~85重量部と高分子5~15重量部の割合で適用されてもよい。上記のような重量部で前記イオン伝導性セラミックと前記高分子を混合して適用する場合、十分な量のイオン伝導性セラミックを複合フィルム内に分散させて適用しつつ、高分子によるバインディング効果や後ほど適用する液体電解質が液漏れなしで充分に含浸されるという効果を充分に得ることができ、且つ、複合固体電解質の優れた安定性と共に常温で高いイオン伝導度を得ることができる。
【0026】
前記イオン伝導性セラミックと前記高分子は、互いによく混合された後、混合物を形態に成形されて複合フィルムとして適用された。この時、必要時、適切な溶媒を前記混合物(または混合物スラリー)に追加して混合が行われてもよく、例えば、前記溶媒としてNMP(N-methyl-2-pyrrolidone):aceton(1:3vol)溶媒が適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0027】
前記複合フィルムはイオン伝導性セラミックと高分子とを含んでそのものでイオン伝導性に優れた固体電解質として役割をすることができるが、さらに優れた電池の電気化学的性能を確保するために、液体電解質を含浸して複合フィルムに前記液体電解質が吸収された状態で複合固体電解質として適用することができる。
【0028】
前記液体電解質は、リチウムイオンまたはナトリウムイオンが溶媒に溶解された状態の溶液を含有する。この時、リチウムイオンまたはナトリウムイオンは、二次電池に適用されるリチウム塩またはナトリウム塩から由来したものであってもよく、二次電池に適用できるものであれば適用されてもよい。
【0029】
前記リチウム塩はLiClO4、LiPF6、LiBF4、CF3SO2NLiSO2CF3(LiTFSI)、LiB(C2O4)2、Li[N(SO2F)2](LiFSI)、Li[B(C2O4)2]、LiAsF6およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つであり、前記ナトリウム塩はNaClO4、NaBF4、NaPF4、NaPF6、NaAsF6、CF3SO2NNaSO2CF3(NaTFSI)、NaB(C2O4)2、Na[(C2F5)3PF3]、Na[B(C2O4)2]、Na[N(SO2F)2](NaFSI)、NaN[SO2C2F5]2およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つであってもよい。
【0030】
前記溶媒としては、非水系有機溶媒が適用されてもよく、前記非水系有機溶媒としては、カルボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つが適用されてもよく、非プロトン性溶媒が適用されてもよい。
【0031】
前記溶媒としてはイオン性液体(ionic liquid)が適用されてもよく、この場合、電解質の安全性、特に熱的安定性をさらに向上できるという長所がある。具体的には、前記イオン性液体としては、イミダゾリウム(imidazolium)系イオン性液体、ピリジニウム(pyridinium)系イオン性液体、ピロリジニウム(pyrrolidinium)系イオン性液体、アンモニウム(ammonium)系イオン性液体、ピペリジニウム(piperidinium)系イオン性液体が溶媒として適用されてもよい。
【0032】
より具体的には、前記イオン性液体は、イミダゾリウム(imidazolium)系、ピリジニウム(pyridinium)系、ピロリジニウム(pyrrolidinium)系、アンモニウム(ammonium)系、ピペリジニウム(piperidinium)系およびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つの陽イオンと、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、AlCl4
-、HSO4
-、ClO4
-、Cl-、Br-、I-、SO4
-、CF3SO3
-、CF3CO2
-、(C2F5SO2)(CF3SO2)N-、NO3
-、Al2Cl7
-、CH3COO-、[N(SO2F)2]-、CH3SO3
-、CF3SO3およびこれらの組み合わせから選択されたいずれか一つの陰イオンとを含むものであってもよい。
【0033】
さらに具体的には、前記イオン性液体は、N-メチル-N-ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(3-トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されたいずれか一つであってもよく、この場合、製造される複合固体電解質の安定性をさらに向上させることができる。
【0034】
前記液体電解質は溶媒内にリチウムイオンまたはナトリウムイオンを含んだ状態で複合フィルムに吸収されて前記複合固体電解質に適用され、イオン伝導性セラミックが有する高い界面抵抗を緩和し高分子が有する常温で低いイオン伝導度を補完し、高分子が含まれた複合フィルム内に吸収されて存在するため、液体電解質そのものが有する可燃性、液漏れの発生可能性などの問題がほぼ発生せず、高い熱的安定性と低い界面抵抗を有する電解質を製造することができるようにする。
【0035】
前記液体電解質は、溶媒内にリチウム塩またはナトリウム塩を0.1M以上含有する溶液であってもよく、0.1M~2M含有する溶液であってもよい。
【0036】
前記複合フィルムと前記液体電解質を60~100:1~40の重量比で適用してもよく、70~80:10~20の重量比で適用してもよい。前記複合フィルムに比して液体電解質の適用量が大きすぎれば液体電解質の浪費があり、少なすぎれば液体電解質適用の効果が微小である。
【0037】
前記複合固体電解質は、その厚さが30μm以下であってもよい。本発明の複合固体電解質は、安定性、特に熱的安定性が大幅に向上し、厚さを30μm以下に製造して二次電池に適用可能な安定性を有する。
【0038】
具体的には、前記複合固体電解質は、400℃以上の温度にも優れた熱的安定性を有するものあってもよい。
【0039】
また、前記複合固体電解質は、優れた電気化学的安定性を有し、6V以上の電気化学的安定性を有するという特性がある。
【0040】
さらに、前記複合固体電解質は、界面抵抗を顕著に減らし、具体的には800Ω以下の界面抵抗を有するものであってもよい。
【0041】
本発明の複合固体電解質は、i)イオン(LiまたはNa)伝導性セラミックはイオン伝導度とイオン(LiまたはNa)輸率を向上させ、ii)高分子はセラミック粒子をよく縛り、iii)液体電解質はイオン伝導度を向上させ、セラミック粒子の間と電極と電解質間の界面抵抗を低下させる。このように製作された複合固体電解質はセラミックと高分子によって熱的、電気化学的安定性に優れ、少量の液体電解質は界面抵抗を減少させて二次電池の電気化学的特性を向上させることができる。
【0042】
本発明の他の一実施例による二次電池は、正極、負極、そして前記正極と前記負極との間に位置する上述の複合固体電解質を含む。
【0043】
前記正極と前記負極に関する内容は、リチウム二次電池またはナトリウム二次電池に適用される正極または負極であれば適用できるので、詳しい説明は省略する。また、前記複合固体電解質については上記の説明と重複するので、その記載は省略する。
【0044】
具体的には、リチウム二次電池の場合、正極としてLiFePO4を、負極としてLi metalを、そして本発明の複合固体電解質を電解質として適用しており、この場合、熱的、電気化学的安定性に優れ、且つ、界面抵抗を減らして、150mAh/g以上の高い容量を得ることができる。
【0045】
また、ナトリウム二次電池の場合、正極としてNaFePO4を、負極としてNa metalを、そして電解質として本発明の複合固体電解質を適用しており、この場合、熱的、電気化学的安定性に優れ、且つ、界面抵抗が減って、135mAh/g以上の優れた放電容量を得ることができる。
【0046】
本発明のまた他の一実施例による複合固体電解質の製造方法は、イオン伝導性セラミック60~100重量部と高分子1~40重量部とを混合して混合物スラリーを製造するステップ(1)、前記混合物スラリーをフィルム形態に成形して複合フィルムを製造するステップ(2)、および前記複合フィルムに少量の液体電解質を吸収させて複合固体電解質を製造するステップ(3)を含む。
【0047】
イオン伝導性セラミック、高分子、これらの混合割合、複合フィルム、液体電解質とその溶媒などに関する内容は、上記の説明と重複するので、その記載は省略する。
【0048】
前記混合物スラリーは、プリンティング方式またはドクターブレード方式のような方式でコーティング後に乾燥される方式で複合フィルムを製造することができ、スラリーをフィルム形態に製造する方法であれば、特に制限なしで適用可能である。
【0049】
前記ステップ(3)において、吸収に適用される前記液体電解質は、溶媒としてイオン性液体(ionic liquid)を含んでもよく、その具体的な種類と含量に関する内容は上記の記載と重複するので、その説明は省略する。
【0050】
また、前記吸収は前記複合フィルムと前記液体電解質の重量比が60~100:1~40になるように提供して行われてもよく、上記での説明と重複する部分は詳しい説明を省略する。
【0051】
【発明の効果】
【0052】
本発明に係る二次電池用複合固体電解質およびその製造方法によれば、電池の安定性および電池化学的特性を改善した二次電池を提供することができる。本発明は、比較的に簡易な方法で製造が可能であり、且つ、リチウム二次電池またはナトリウム二次電池に適用されて優れた放電容量を有し、低い界面抵抗と高い安定性を有しており、二次電池の安定性と電気化学的特性を同時に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の一実施例による複合固体電解質の概念図である。
【0054】
【
図2】本発明の実施例1および実施例2で製造された複合固体電解質の表面と断面のSEM-EDX分析データ(上側:リチウムイオン伝導性電解質、下側:ナトリウムイオン伝導性電解質)である。
【0055】
【
図3】本発明の実施例1で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質の熱的安定性の評価結果[TG(Thermogravimetric)グラフ]である。
【0056】
【
図4】本発明の実施例1で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質の電気化学的安定性を評価した結果(LVS)である。
【0057】
【
図5】本発明の実施例1で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質を適用した電池の界面抵抗特性を確認したグラフである。
【0058】
【
図6】本発明の実施例1で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質とLiFePO
4電極で二次電池を構成した時の充放電曲線である。
【0059】
【
図7】本発明の実施例2で製造されたナトリウムイオン伝導性複合固体電解質とNaFePO
4電極で構成したナトリウム電池の充放電曲線である。
【0060】
【
図8】本発明の実施例3で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質のせん断面のSEM写真である。
【0061】
【
図9】本発明の実施例3で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質(赤色)と実施例1で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質(黒色)の熱的安定性を評価した結果(TGグラフ)である。
【0062】
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下では、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者が容易に実施することができるように本発明の実施例について添付した図面を参照して詳しく説明することにする。但し、本発明は、種々の相異した形態に実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0064】
本発明の実施例として、伝導性セラミックと高分子、および液体電解質を混合し、安定性に優れ、可変性が良く、電気化学的特性に優れた複合固体電解質を下記のような方法により製作し、その物性を評価した。
【0065】
【0066】
複合固体電解質と電池の製造および特性評価
【0067】
70重量部の伝導性セラミックと15重量部の高分子をNMP(N-methyl-2-pyrrolidone):aceton(1:3vol)溶媒に混合して混合物を製造した後、プリンティング方式またはドクターブレード方式でスラリーを平らに広げて相分離法により複合フィルムを製作した。前記複合フィルム85重量部に液体電解質(またはイオン性液体電解質)を15重量部吸収させて
図1に開示された概念図のような形態の複合固体電解質を製造した。
【0068】
また、製造された複合電解質各々を適用した二次電池の電気化学的特性を分析するために界面抵抗、充放電テストなどを行った。
【0069】
【0070】
<実施例1>
【0071】
1)リチウムイオン伝導性複合固体電解質の製造
【0072】
リチウム伝導性セラミックとしてはLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(LTAP)を70重量部を適用し、高分子としてはPVdFを15重量部を適用した。液体電解質としては1M LiPF6をEC(ethylene carbonate)/DMC(dimethyl carbonate)混合溶媒に溶解させて複合フィルム85重量部当たりに15重量部を適用してリチウムイオン伝導性複合固体電解質を構成した。
【0073】
2)リチウムイオン伝導性複合固体電解質の物性評価
【0074】
図2は本発明の実施例で製造された複合固体電解質の表面と断面のSEM-EDX分析データであり、これを参照すれば、厚さ30μmに製造された複合固体電解質は、LTAPOと高分子が均一に混合されているのをEDXを通じて確認できる(上側:リチウムイオン伝導性電解質のデータを参考)。
【0075】
リチウムイオン伝導性複合固体電解質の熱的安定性の評価結果(TGグラフ)と電気化学的安定性の評価結果(LSV)を各々
図3と
図4に示す。
【0076】
比較例として適用した液体電解質は120℃で分解され、複合固体電解質は、180℃で吸収された液体電解質によって若干の重さ減少はあるが、全体的に400℃を越える高い熱的安定性を示した。また、
図4のリニア走査法のグラフは電解質の電気化学的安定性を分析する実験であり、複合固体電解質は6V以上の高い安定性を示しているの確認することができた。
【0077】
3)リチウムイオン伝導性複合固体電解質を用いた電池製造および物性評価
【0078】
正極としてはLiFePO4を用い、負極としては電位が最も低いLi metalを用い、電解質としては上記で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質を適用して二次電池を製造し、その物性を評価した。
【0079】
複合固体電解質を用いた電池の界面抵抗を測定し、その結果を
図5に示す。複合固体電解質を用いる場合、800Ω以下の低い抵抗を示すの確認することができた。
【0080】
常温、0.1Cの電流密度で充放電させ、複合固体電解質を用いた電池の充電-放電特性を
図6に各々示す。リチウムイオン伝導性セラミック(Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3)を用いた複合固体電解質とLiFePO
4正極で電池を構成した時の結果を示す
図6を参照すれば、150mAh/gの高い容量を示した。
【0081】
【0082】
<実施例2>
【0083】
1)ナトリウムイオン伝導性複合固体電解質の製造および物性評価
【0084】
ナトリウム伝導性セラミックとしてはNa3Zr2Si2PO12 70重量部、高分子としてはPVdF 15重量部、そして液体電解質としては1M NaCF3SO3(sodium triflate)をTEGDME(tetraethylene glycol dimethyl ether)溶媒に溶解させて複合フィルム85重量部当たりに15重量部を適用してナトリウムイオン伝導性複合固体電解質を構成した。
【0085】
前記複合固体電解質の厚さは30μmであり、セラミックと高分子が均一に混合されているのをEDXが示している(
図2の下側の写真を参考)。
【0086】
2)ナトリウムイオン伝導性複合固体電解質を用いた電池製造および物性評価
【0087】
正極としてNaFePO4を用い、負極としてNa metalを用い、電解質として上記で製造されたナトリウムイオン伝導性複合固体電解質を適用して二次電池を製造し、その物性を評価した。
【0088】
常温、0.1Cの電流密度で充放電させ、複合固体電解質を用いた電池の充電-放電特性を
図7に示す。ナトリウム伝導性セラミック(Na
3Zr
2Si
2PO
12)を用いた複合固体電解質とNaFePO
4正極でナトリウム電池を構成した時の結果を示す
図7の結果を参照すれば、135mAh/gの優れた放電容量を示すのを確認した。
【0089】
【0090】
<実施例3>
【0091】
1)イオン性液体電解質を用いたリチウムイオン伝導性複合固体電解質の製造
【0092】
リチウム伝導性セラミックとしてはLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(LTAP)を70重量部を適用し、高分子としてはPVdFを15重量部を適用した。イオン性液体電解質としては1M LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide)をイオン性液体であるPy14TFSI(N-methyl-N-butylpyrrolidinium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide))に溶解させて製造したイオン性液体電解質を複合フィルム85重量部当たりに15重量部を適用してリチウムイオン伝導性複合固体電解質を構成した。
【0093】
図8は、本発明の実施例3で製造されたリチウムイオン伝導性複合固体電解質のせん断面のSEM写真である。
図8を参照すれば、製作された複合固体電解質が30μm以下の厚さに形成され、高分子と伝導性セランミクがよく混合されているのを確認することができた。
【0094】
図9は実施例3により液体電解質としてイオン性液体電解質を用いた複合固体電解質の熱的安定性TGグラフであり、一般的な液体電解質を用いた実施例1の複合固体電解質に比べて熱的安定性にさらに優れるのを確認することができた(>400℃)。
【0095】
【0096】
以上、本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲は、これらに限定されず、以下の請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形および改良の形態も本発明の権利範囲に属すると言える。
【0097】
配列表 Free Text
【0098】
無し