(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】歯科用修復物を歯科用インプラントに連結するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
(21)【出願番号】P 2019537882
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2017074376
(87)【国際公開番号】W WO2018060194
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-16
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519104031
【氏名又は名称】ヴァロック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュラー, ティトゥス
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュラー, フェリックス
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0202370(US,A1)
【文献】特開平01-214360(JP,A)
【文献】特表2007-515245(JP,A)
【文献】国際公開第2008/077443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用修復物(4)を歯科用インプラント(5)に連結するためのアバットメント装置(1)であって、支柱体(2)およびねじ部品(3)を含み、
前記支柱体(2)は、根尖側開口部(212)および咬合側開口部(211)を備えた軸方向の通路(21)を有し、
前記支柱体(2)の前記通路(21)は、頭部スロット(213)と、前記頭部スロット(213)を制限するプレスセクション(214)を装備し、
前記ねじ部品(3)は、頭部セクション(31)と、前記頭部セクション(31)から軸方向に離れたねじ山セクション(32)とを備え、
前記ねじ部品(3)は、前記支柱体(2)の前記通路(21)内に配置
されており、これによって
、前記ねじ部品(3)の前記頭部セクション(31)は、前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記プレスセクション(214)に当接する前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記頭部スロット(213)内に位置決めされ、
且つ、前記ねじ部品(3)は、前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記咬合側開口部(211)を通って前記支柱体(2)の外に延
びて、
前記支柱体(2)は拡張部(23)を有し、前記ねじ部品(3)は拡大セクション(33)を含み、
前記通路(21)は前記支柱体(2)の前記拡張部(23)を通って延び、
前記支柱体(2)の前記拡張部(23)の外径(234、234’)は、横方向の力(F
1)を加えることによって弾性的に増大可能であり、
および
前記支柱体(2)の前記通路(21)は、前記拡張部(23)において圧力受けセクション(215)を有し、
以上により、前記ねじ部品(3)が前記支柱体(2)の前記通路(21)内に位置するとき、前記ねじ部品(3)の前記拡大セクション(33)は、前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記圧力受けセクション(215)に配置可能であり、これによって、前記横方向の力(F
1)が前記支柱体(2)の前記拡張部(23)に加えられ、前記支柱体(2)の前記拡張部(23)の前記外径(234、234’)が増大す
る、アバットメント装置(1)
において、
前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記圧力受けセクション(215)は、前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記プレスセクション(214)と別個であり、前記プレスセクション(214)から軸方向に離れていることを特徴とする、アバットメント装置(1)。
【請求項2】
前記支柱体(2)の前記拡張部(23)は可撓性薄板(232)を含む、請求項
1に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項3】
前記支柱体(2)の前記拡張部(23)は、前記可撓性薄板(232)間に配置されたブラインドセクションを含む、請求項
2に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項4】
前記ねじ部品(3)の前記頭部セクション(31)は、前記ねじ部品(3)が前記支柱体(2)の前記通路(21)内に配置されているとき、前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記プレスセクション(214)に当接するプッシュ部分(311)を有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項5】
前記ねじ部品(3)の前記頭部セクション(31)の前記プッシュ部分(311)は、前記ねじ部品(3)の前記拡大セクション(33)と別個であり、軸方向に離れている、請求項
4に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項6】
前記プッシュ部分(311)は、前記ねじ部品(3)の前記ねじ山セクション(32)に向かって円錐形状に先細になっている、請求項
4または
5に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項7】
前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記プレスセクション(214)は、前記ねじ部品(3)の前記頭部セクション(31)の前記プッシュ部分(311)に対応して円錐形状である、請求項
6に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項8】
前記ねじ部品(3)の前記拡大セクション(33)は円錐形状であり、前記ねじ部品(3)の前記ねじ山セクション(32)に向かって先細になっている、請求項1から
7のいずれか一項に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項9】
前記支柱体(2)の前記通路(21)の前記圧力受けセクション(215)は、前記ねじ部品(3)の前記拡大セクション(33)に対応して円錐形状である、請求項
8に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項10】
前記支柱体(2)は、前記拡張部(23)に隣接した基部(22)を有し、
前記通路(21)は、前記支柱体(2)の前記基部(22)を通って延び、
前記支柱体(2)の前記基部(22)は、前記支柱体(2)を前記歯科用インプラント(5)に効率的に連結するために調整された特性を有する第1の材料で作製され、
前記支柱体(2)の前記拡張部(23)は、前記支柱体(2)を前記歯科用修復物(4)に効率的に連結するために調整された特性を有する第2の材料で作製される、請求項1から
9のいずれか一項に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項11】
前記支柱体(2)の前記基部(22)の前記第1の材料はチタンであり、かつ/または前記支柱体(2)の前記拡張部(23)の前記第2の材料は、PEEK、PMMA、ポリカーボネート、ナイロン、シリコーンもしくはこれらの組み合わせである、請求項
10に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項12】
前記基部(22)は第1の連結構造(224)を有し、前記拡張部(23)は第2の連結構造(233)を有し、前記支柱体(2)は、前記基部(22)の前記第1の連結構造(224)が前記拡張部(23)の前記第2の連結構造(233)に係合することによって組み立てられる、請求項
10または
11に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項13】
前記基部(22)の前記第1の連結構造(224)は、第1のスナップ留めフォーメーション(224)であり、前記拡張部(23)の前記第2の連結構造(233)は、前記基部(22)の前記第1のスナップ留めフォーメーション(224)に対応する第2のスナップ留めフォーメーション(233)である、請求項
12に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項14】
前記支柱体(2)は、前記支柱体(2)上に配置されたときに前記歯科用修復物(4)を解放可能に保持するような寸法の突起要素(2331)を含む、請求項1から
13のいずれか一項に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項15】
前記突起要素(2331)は、前記支柱体(2)の前記拡張部(23)に形成される、請求項
14に記載のアバットメント装置(1)。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか一項に記載のアバットメント装置(1)と、前記アバットメント装置(1)の前記支柱体(2)を受けるための空洞(41)を有する歯科用修復物(4)とを含む歯科用修復物(4)アセンブリであって、前記歯科用修復物(4)の前記空洞(41)は、前記歯科用修復物(4)が前記アバットメント装置(1)の前記支柱体(2)に固定して連結されるように、前記アバットメント装置(1)の前記ねじ部品(3)が前記支柱体(2)の前記拡張部(23)の前記外径(234、234’)を増大させることを可能にするように形成される、歯科用修復物(4)アセンブリ。
【請求項17】
前記歯科用修復物(4)の前記空洞(41)は、前記支柱体(2)の前記拡張部(23)が中に拡張可能な凹型印象(411)を有し、前記凹型印象(411)は、前記支柱体(2)の前記拡張部(23)の前記外径(234、234’)が前記アバットメント装置(1)の前記ねじ部品(3)によって増大するときに前記アバットメント装置(1)の前記支柱体(2)に対して前記歯科用修復物(4)が動くことを阻止する、請求項
16に記載の歯科用修復物(4)アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプリアンブルに記載のアバットメント装置に関し、より詳細には、そのようなアバットメント装置を有する歯科用修復物アセンブリ、および歯科用修復物を歯科用インプラントに連結する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用修復では、多くの場合、損傷した歯または欠損した歯は、ブリッジ、クラウン等の歯科用修復物を含む人工歯に置き換えられる。これによって、歯科用修復物が、元の歯の残りの部分、または顎骨内に人工歯根としてセットされたインプラントの上に配置される。既知の修復物は、通常、生体適合性、ロバスト性、寿命等の特定の要件を満たす材料から作製される。例えば、口腔の露出されない区画では、例えば、金またはジルコニウムで作製された金属の歯科用修復物が多くの場合に用いられる。口腔の見える区画では、通例、光学的に自然な歯の外観により合った他の材料が好ましい。例えば、セラミック材料、複合材料、繊維強化複合材料、またはアクリルガラス(ポリメチルメタクリレート、すなわちPMMA)が一般的に用いられる。
【0003】
上述したように、クラウンの材料は、通常、美的要件、機械的条件等の、歯として用いられるための要件を考慮して選択される。しかしながら、通常チタンから作製されるインプラント上または元の歯の残りの部分上に直接置くには、これらの材料は多くの場合に適していない。したがって、通例、歯科用修復物とインプラントまたは元の歯の残りの部分との間に中間構造が設けられる。普及した中間構造は、クラウンまたは修復物に接合された基部またはアバットメントである。例えば、チタンインプラントに連結するために、多くの場合、クラウンがチタン基部に接合および/または結合され、これが次にインプラント上に置かれ、インプラントに連結される。
【0004】
通常、修復物は、歯科技工士または歯科医によって口の外または中で基部またはアバットメント上に接合される。これによって、特定の接着剤が接合剤として用いられ、多くの接合剤は、塗布される前に複数の成分と混合される。接合された基部および修復物は、次に、口腔内でインプラントまたは元の歯の残りの部分に連結され、基部がインプラントまたは元の歯の残りの部分と接触する。多くの場合に、歯科用修復物は、基部とともに、歯科用修復物および基部を通ってインプラント内に軸方向に突き出すねじによってインプラントに固定される。
【0005】
歯科用修復物を基部に接合するために、多くの場合、モデルが用いられる。その目的で、歯科用修復物を取り付けるためにインプラントがセットされる口腔の少なくとも一部分が、歯科技工士または歯科医によって、知られているモデル化技法を用いてモデル化される。しかしながら、そのようなモデルベースの接合が、修復物を基部に正確に接合し、高度な接合された修復物-基部構造を提供することを可能にするにもかかわらず、これは比較的厄介である。
【0006】
接合工程を高速かつ安価にするために、多くの歯科技工士または歯科医は、歯科用修復物を手作業で基部に接合する。これによって、多くの場合、通常、中空の内部を有する基部のねじ穴が、ワックスまたは弾性プラグによって閉じられ、接合剤が基部の内側に入ることができないようにされる。弾性プラグは通常、安全に閉じることを可能にするために、基部の形状に適合される。しかしながら、歯科用修復物、および特に基部が、通例、比較的小さいことを考えると、そのような手作業の接合により、多くの場合、結果として品質が低下することになる。例えば、多くの場合、接合剤はクラウンと基部との間で規則的または均一に分布しておらず、これによって連結が一貫して強力ではない。また、多くの場合、クラウンは、手作業で正確に位置決めまたは方向付けすることができず、これによって結果として快適性および使用性が低下する場合がある。更に、過剰に使用された接合剤が修復物-基部構造を抜け出す場合があり、これは歯肉炎等につながる可能性がある。
【0007】
したがって、歯科用修復物を歯科用インプラントに正確に、安全に、かつコスト効率よく連結することを可能にするシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、この需要は、独立請求項1の特徴部によって規定されるアバットメント装置、独立請求項17の特徴部によって規定される歯科用修復物アセンブリ、および独立請求項19の特徴部によって規定される方法によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
1つの態様において、本発明は、歯科用修復物を歯科用インプラントに連結するためのアバットメント装置に関する。この装置は、支柱体およびねじ部品を含む。支柱体は、根尖側開口部および咬合側開口部を備えた軸方向の通路を有する。支柱体の通路は、頭部スロットと、頭部スロットを制限するプレスセクションを装備する。有利には、通路は、直線状であるか、または根尖側開口部から咬合側開口部に延びる直線状の軸を有する。ねじ部品は、頭部セクションと、頭部セクションから軸方向に離れたねじ山セクションとを備える。これに関連して、「軸方向に離れた」という用語は、2つのセクションがねじ部品の長手方向延長部に沿って互いからオフセットされていることに関することができる。特に、ねじ部品は、有利には長手方向に延び、軸を有し、この軸に沿って2つのセクションが互いにオフセットされる。
【0010】
ねじ部品は支柱体の通路内に配置可能であり、これによって、ねじ部品の頭部セクションは、支柱体の通路のプレスセクションに当接する支柱体の通路の頭部スロット内に位置決めされ、ねじ部品は、支柱体の通路の咬合側孔部を通って支柱体の外に延びる。これによって、有利には、頭部セクションおよび頭部スロットは、頭部セクションが頭部スロット内に収まるような嵌合形状にされる。
【0011】
支柱体は拡張部を有し、ねじ部品は拡大セクションを含み、通路は支柱体の拡張部を通って延びる。支柱体の拡張部の外径は、横方向の力を加えることによって弾性的に増大可能である。これに関連して、「弾性的」という用語は、横方向の力がもはや加えられなくなると拡張部が初期状態に戻ることを可能にする装置に関することができる。これによって、拡張部は、例えば、固有の材料特性に起因して単独で初期状態に戻ることができるか、または別の部品によって能動的に動かすことができる。支柱体の通路は、拡張部において圧力受けセクションを有する。ねじ部品が支柱体の通路内に位置するとき、ねじ部品の拡大セクションは、支柱体の通路の圧力受けセクションに配置可能であり、これによって、横方向の力が支柱体の拡張部に加えられ、支柱体の拡張部の外径が増大する。
【0012】
「歯科用修復物」という用語は、本明細書において用いられるとき、通常、1つの人工歯または複数の人工歯の最も外側の構造である、歯科補綴物に関することができる。これは特に、クラウンまたはブリッジ等とすることができる。歯科用修復物は、歯科用インプラントに蓋をするかまたは歯科用インプラントを取り囲むことができ、1つまたは複数の人工歯の見える部分および咀嚼面を形成する。有利には、歯科用修復物は、この修復物によって置き換えられることになる1つまたは複数の歯の形状を有する。通常、クラウン等の修復物は、金属、金属セラミック、セラミック、ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、複合材料、繊維強化複合材料、または自然な歯に類似した色および特性を有する別の材料から作製される。
【0013】
「歯科用インプラント」という用語は、本明細書において用いられるとき、歯科用修復物を支持するために顎の骨または頭蓋骨とつながる外科的構成要素に関することができる。歯科用インプラントは、歯科矯正用アンカーまたは人工歯根として機能することができる。歯科用インプラントは、当該技術分野において、骨内インプラントまたは固定具としても知られている。通常、歯科用インプラントは、骨構造内の穴の中に置かれ、ここでオッセオインテグレーションと呼ばれる生物学的工程によって固定されるかまたは成長する。これによって、歯科用インプラント、またはより詳細には、チタン等のその材料が、骨に対し密な結合を形成する。オッセオインテグレーションの場合、歯科用修復物が直接またはアバットメントを介して取り付けられる前に、可変量の回復時間が必要とされる。
【0014】
「アバットメント」または「基部」という用語は、本明細書において用いられるとき、歯科用インプラントに装着するために歯科用修復物に一体化されることになる部分構造または中間構造に関することができる。アバットメントまたは基部は、修復物に位置合わせし、修復物を保持するように適合することができる。アバットメントまたは基部は、特に、円筒形状または円錐形状のセクションと、インプラント面セクションとを有するカップのような形状とすることができる。
【0015】
「軸方向」という用語は、本明細書において用いられるとき、アバットメント装置またはアバットメント装置の他の部品の軸に関することができる。これによって、ねじ部品が意図されるように支柱体内に配置されているとき、ねじ部品の軸は、支柱体の軸と同一にすることができる。この軸は、特に、交換または固定される歯の軸に本質的に対応することができる。このため、口腔内に適用されるとき、軸方向の通路は、修復物の咬合面から歯科用インプラントに延びることができる。
【0016】
「咬合」という用語は、本明細書において用いられるとき、意図される用途における人工歯の咬面に本質的に向かう方向に関することができる。これによって、人工歯は、特に、修復物、アバットメント装置の支柱体、および歯科用インプラントを含むことができる。これに対応して、「根尖」という用語は、交換または固定されることを意図された歯の根に向かう方向に関することができる。咬合方向および根尖方向は反対であり得る。
【0017】
「横方向」という用語は、本明細書において用いられるとき、咬合方向または軸方向に対し本質的に垂直な方向に関することができる。支柱体が軸の回りで本質的に円対称である構成において、横方向は径方向に対応することができる。
【0018】
「横方向の力」という用語は、本明細書において用いられるとき、アバットメント装置の横方向、外方向、または径方向に作用する力に関することができる。これは、他の部分も有する力の横方向部分とすることができる。例えば、「横方向の力」は、横断方向に加わる、軸方向部分および横方向部分を有する力の横方向部分とすることができる。この力は、支柱体の特定のセクションを押すことによって、例えば、通路を画定する内壁のセクション、すなわち支柱体の圧力受けセクションを押すことによって、支柱体の拡張部分に適用されるかまたは適用可能とすることができる。通路の圧力受けセクションは、特に、横方向の力、または径方向成分を有する力を受けるように配置することができる。横方向の力は、例えば、支柱体の別のセクションに力を直接加え、そこから力が拡張部に伝達することにより、拡張部に間接的に加えることもできる。
【0019】
「外径」という用語は、支柱体の拡張部との関連で用いられるとき、支柱体の軸方向に対し垂直な面の任意の線における拡張部の外側境界に関することができる。外径が増大することにより、または換言すれば、支柱体の軸に対し垂直な断面が増大することにより、拡張部が拡張する。拡張部は、拡張可能でない、すなわち、外径を増大させることができないセクションも有することができる。特に、そのような拡張可能でないセクションは、拡張可能なセクションから軸方向にオフセットすることができる。本発明の意味において、拡張可能であるとは、拡張部の外径が拡張部の1つの単一セクションにおいて増大することができれば十分である。しかしながら、外径の拡張は、支柱体と歯科用修復物との間の連結を確立するのに適切でなくてはならない。例えば、十分な力が加えられた場合に全ての材料内に与えられる小さな拡張は、歯科用修復物を支柱体に連結するのに適切でない限り、本発明の意味において拡張として適格でない。
【0020】
支柱体の拡張部は、支柱体の咬合側端部を形成することができる。これによって、支柱体の通路の咬合側開口部が拡張部内に位置することができる。
【0021】
本発明によるアバットメント装置の使用において、ねじ部品は、インプラント内にねじ留めされたとき、複数の効果または機能を有することができる。一方で、支柱体の通路のプレスセクションに当接することによって、ねじ部品は、支柱体を歯科用インプラント上に押すことができる。このようにして、支柱体は、インプラントに堅く固定することができる。他方で、ねじ部品の拡大セクションが支柱体の通路の圧力受けセクションに配置され、これにより支柱体の拡張部に横方向の力が加わることにより、ねじ部品は支柱体を拡張部において拡張させる。特に、拡張部は、歯科用修復物内に設けられた対応する凹部または空洞内に拡張することができる。これによって、歯科用修復物は、支柱体に堅く連結することができる。
【0022】
本発明によるアバットメント装置は、支柱体をインプラントに固定することを可能にし、ねじ部品をインプラント内に単にねじ留めすることによって歯科用修復物をそこに連結することを可能にする。これによって、接合は不要である。これにより、修復工程を本質的により高速かつより効率的にすることが可能である。また、接合剤を伴わないため、歯科用修復物が固定された後、接合剤により生じる炎症は発生し得ない。このため、アバットメント装置は、完全に接合剤なしで歯科用修復物を顎に連結することを可能にする。
【0023】
更に、拡張部の外径が弾性的に増大可能であることにより、本発明によるアバットメント装置は、歯科用修復物の可逆的装着を可能にする。特に、ねじ部品をインプラントから単に外すことによって、拡張部の弾性に起因して、拡張部の外径は、歯科用修復物を解放し支柱体から取り外すことができるように自動的に再び縮小する。これによって、例えば、歯科用修復物を試しに使用し、所望の場合に交換するかまたは更に適合させることができるように、歯科用修復物の効率的な交換が可能になる。
【0024】
このため、本発明によるアバットメント装置は、歯科用修復物を歯科用インプラントに正確に、安全に、かつコスト効率よく連結することを可能にする。
【0025】
有利には、ねじ部品は、拡張部の拡張が開始する前に支柱体が少なくともわずかにインプラントに対し押されるような形状にされる。これにより、歯科用修復物を支柱体に最終的に連結する前に、支柱体を標的位置に保持することが可能になる。これによって、歯科用修復物は、支柱体がすでに最終位置にあるときに、正確な方式で最終的に位置決めすることができる。
【0026】
(i)支柱体を歯科用インプラントに堅く固定し、(ii)支柱体を歯科用修復物に堅く連結する、2つの機能を有利に分離するために、支柱体の通路の圧力受けセクションは、好ましくは支柱体の通路のプレスセクションと別個であり、軸方向に離れている。特に、圧力受けセクションは、プレスセクションから咬合方向に離すことができる。このため、プレスセクションは、支柱体の根尖側端部の近くまたは更には根尖側端部に配置することができ、圧力受けセクションは、支柱体の咬合側端部の近くまたは更には咬合側端部に配置することができる。
【0027】
支柱体のそのような構成に対応して、ねじ部品の頭部セクションは、ねじ部品が支柱体の通路内に配置されているとき、支柱体の通路のプレスセクションに当接するプッシュ部分を有することができる。ねじ部品の頭部セクションのプッシュ部分は、好ましくはねじ部品の拡大セクションと別個であり、軸方向に離れている。
【0028】
これによって、ねじ部品の頭部セクションの円錐形状のプッシュ部分は、好ましくは、ねじ部品のねじ山セクションに向かって円錐形状に先細になっている。そのような円錐形状のプッシュ部分によって、ねじ部品が意図されるようにインプラントにねじ留めされているとき、頭部セクションは、歯科用インプラントに向かって圧力を効率的に加えることが可能になる。これによって、支柱体の通路のプレスセクションは、好ましくは、ねじ部品の頭部セクションのプッシュ部分に対応して円錐形状である。プレスセクションは、ねじ部品が通路を通って延び、インプラント内にねじ留めされるとき、支柱体が歯科用インプラントに更に固定されるように、プッシュ部分からの圧力を効率的に受けることを可能にする。特に、主に、プッシュ部分からプレスセクションに作用する圧力の軸方向部分は、支柱体がインプラントに堅く固定されるように支柱体をインプラント上に押す。
【0029】
好ましくは、支柱体の拡張部は可撓性薄板を含む。これに関連して、「可撓性」という用語は、曲げ可能、移動可能、または変形可能である薄板に関することができる。薄板は、特に、本質的に軸方向に延びることができる。拡張部は、薄板がそこからほぼ軸方向に延びる、例えばリングセクション等の、固定の直径を有するセクションを有することができる。そのような可撓性薄板は、例えば、薄板の内側に作用する横方向の力によって、外方向、横方向または径方向に効率的に曲げることができる。薄板には、外面または外側面において、歯科用修復物の対応する空洞または凹部内に効率的に係合することを可能にする凸状の隆起を設けることができる。これによって、支柱体は、その拡張部が拡張しているとき、歯科用修復物に堅く連結することができる。
【0030】
支柱体の拡張部は、好ましくは、可撓性薄板間に配置されたブラインドセクションを含む。薄板間にブラインドセクションを有することによって、拡張部は、完全な円周の周りに延びることができる。特に、ブラインドセクションは、薄板の任意の状態において、例えば薄板が外方に変位しているかまたは曲がっているときにも、完全な円周をカバーすることを可能にする。これによって、支柱体の内部、使用時は特にねじ部品に光が通り得ることを阻止することを可能にする。
【0031】
好ましくは、ねじ部品の拡大セクションは円錐形状であり、ねじ部品のねじ山セクションに向かって先細になっている。そのような円錐形状の拡大セクションにより、ねじ部品が意図されるようにインプラント内にねじ留めされているとき、ねじ部品が拡張部に向けて横方向の力を効率的に加えることが可能になる。このようにして、拡張部の外径は効率的に拡張することができ、これにより歯科用修復物が支柱体に固定される。これによって、支柱体の通路の圧力受けセクションは、好ましくは、ねじ部品の拡大セクションに対応して円錐形状である。そのような圧力受けセクションは、拡張部分の外径を効率的に増大させることができるように、拡大セクションから横方向の力を効率的に受けることを可能にする。特に、主に、拡大セクションから圧力受けセクションに作用する力の横方向部分または径方向部分は、拡張部の外径または断面が増大するように拡張部を外方に押す。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、支柱体は、1つの単一材料から作製することができる単一ピースのデバイスである。
【0033】
別の好ましい実施形態では、支柱体は、拡張部に隣接した基部を有し、通路は、支柱体の基部を通って延び、支柱体の基部は、支柱体を歯科用インプラントに効率的に連結するために調整された特性を有する第1の材料で作製され、支柱体の拡張部は、支柱体を歯科用修復物に効率的に連結するために調整された特性を有する第2の材料で作製される。特に、第1の材料および第2の材料は異なる材料である。支柱体の拡張部と基部とで異なる材料を準備することにより、双方の部品が適切な特異性を有することができることを達成することができる。例えば、拡張部では、材料が横方向に効率的に曲がるかまたは変位されることを可能にする材料が必須である。そのような可撓性は基部では不利である場合がある。このため、別の材料の基部を準備することによって、基部は、例えば、剛性または歯科用インプラントの材料と類似の特性等の適切な特性を有する。具体的には、基部は、歯科用インプラントと同じ材料で作製することができる。このため、支柱体の2つの材料組成により、支柱体は、例えば、インプラント上の安全な固定、および外径の可撓性拡大であり得る、その様々な機能を効率的にかつ特異的に行うことが可能になる。
【0034】
これによって、支柱体の基部の第1の材料は、好ましくはチタンであり、かつ/または支柱体の拡張部の第2の材料は、好ましくはPEEK、PMMA、ポリカーボネート、ナイロン、シリコーンもしくはこれらの組み合わせである。頭文字PEEKは、工学用途で頻繁に用いられるポリアリールエーテルケトン(PAEK)類の有機熱可塑性ポリマーであるポリエーテルエーテルケトンに関する。とりわけ、PEEKは同等の良好な生体適合性を有し、歯に類似の白色を有することができ、同等に剛性であり、依然として良好な弾性変形を可能にする同等に高い可撓性を有する。頭文字PMMAは、アクリルまたはアクリルガラスとしても知られる、ポリ(メチルメタクリレート)に関する。チタンは、良好な生体適合性、効率的なオッセオインテグレーション等のような様々な理由で歯科用インプラントにおいて広く用いられている。したがって、チタン製の基部を設けることによって、基部はインプラント上に堅く嵌合して固定することができる。美的理由により、基部は、より目立たないようにするために、例えば、白色または白に似た色に着色することができる。
【0035】
好ましくは、基部は第1の連結構造を有し、拡張部は第2の連結構造を有し、支柱体は、基部の第1の連結構造が拡張部の第2の連結構造に係合することによって組み立てられる。そのような第1の連結構造および第2の連結構造は、2つの材料の支柱体を効率的に準備することを可能にする。これによって、基部の第1の連結構造は、好ましくは、第1のスナップ留めフォーメーション(snap-in formation)であり、拡張部の第2の連結構造は、好ましくは、基部の第1のスナップ留めフォーメーションに対応する第2のスナップ留めフォーメーションである。そのような第1のスナップ留めフォーメーションおよび第2のスナップ留めフォーメーションは、基部および拡張部を共にスナップ留めすることを可能にする。このようにして、2つの異なる材料で作製された支柱体の効率的な組み立てを達成することができる。
【0036】
好ましくは、支柱体は、支柱体上に配置されているときに歯科用修復物を解放可能に保持するような寸法の突起要素を含む。そのような突起要素を用いて、歯科用修復物を、支柱体上に中間で保持することができる。このようにして、好都合で効率的な取り扱いを達成することができる。特に、クラウン等の歯科用修復物を歯科用インプラントに装着するとき、歯科用インプラントは、ねじ部品を歯科用インプラントにねじ留めする前に支柱体を正しい位置に好都合に位置決めすることができるように、支柱体をインプラントに固定する前に、支柱体の突き出した要素を介して摩擦により支柱体を保持することができる。
【0037】
これによって、突起要素は、好ましくは、支柱体の拡張部に形成される。そのような突起要素は、拡張部または薄板と同じ材料で具現化することができる。このため、突起要素は、歯科用修復物が摩擦により支柱体上に保持されるように内側から歯科用修復物をわずかに締め付けることを可能にする弾性を有することができる。
【0038】
支柱体と歯科用修復物との間の安定した安全な中間連結を達成するために、支柱体には、有利には支柱体上で規則的に位置決めされた複数のそれぞれの突起を装備することができる。
【0039】
アバットメント装置の支柱体には、フランジ部分を装備することができる。特に、そのようなフランジ部分は、支柱体の咬合側端部の付近に位置することができる。このようにして、歯科用インプラントのそれぞれの咬合面と接触するように増大した表面を設けることができる。これにより、噛む力または咀嚼する力等の力を大きなエリアにわたって分散させることが可能になり、これによって、支柱体およびインプラントが連結される場所での支柱体およびインプラントの摩耗を低減し、システムの安定性を増大させることができる。
【0040】
本発明の更なる態様は、上記で説明したアバットメント装置と、アバットメント装置の支柱体を受けるための空洞を有する歯科用修復物とを含む歯科用修復物アセンブリに関する。これによって、歯科用修復物の空洞は、歯科用修復物がアバットメント装置の支柱体に固定して連結されるように、アバットメント装置のねじ部品が支柱体の拡張部の外径を増大させることを可能にするように形成される。
【0041】
空洞は、特に、歯科用修復物が支柱体上に配置されている間にねじ部品が支柱体内に提供されることを可能にする貫通穴とすることができる。特に、貫通穴は、歯科用修復物が意図されるように支柱体上に配置されているとき、アバットメント装置の軸と同一の軸を有することができる。高度な方式では、歯科用修復物は、CAD/CAM工程において製造することができる。代替的に、歯科用修復物は、加圧工程、成形工程またはこれらの組み合わせで製造されてもよい。
【0042】
そのような歯科用修復物アセンブリでは、本発明および本発明の実施形態によるアバットメント装置との関連で上記で説明した効果および利点を効率的に達成することができる。
【0043】
好ましくは、歯科用修復物アセンブリの歯科用修復物の空洞は、支柱体の拡張部が中に拡張可能な凹型印象を有し、凹型印象は、支柱体の拡張部がアバットメント装置のねじ部品によって拡張するときにアバットメント装置の支柱体に対して歯科用修復物が動くことを阻止する。印象は、空洞の軸方向の断面の隆起として具現化することができる。印象は、支柱体の完全な円周の周りに、または薄板等の拡張部の拡張可能なセクションが位置する円周のセクションにおいてのみ延びることができる。そのような凹型印象は、支柱体と歯科用修復物との間の安全な連結を提供することを可能にする。
【0044】
本発明の更なる態様は、歯科用修復物を歯科用インプラントに連結する方法に関する。この方法は、上記で説明したアバットメント装置を得ることと、アバットメント装置のねじ部品が支柱体の拡張部の外径を増大させることを可能にするように形成された空洞を歯科用修復物に設けることと、アバットメント装置の支柱体を歯科用修復物の空洞内に組み付けることと、支柱体を歯科用インプラント上にセットすることと、歯科用修復物の空洞およびアバットメント装置の支柱体の通路を通してアバットメント装置のねじ部品を設けることと、ねじ部品を歯科用インプラントに固定することであって、これによって、アバットメント装置のねじ部品の頭部セクションがアバットメント装置の支柱体の通路のプレスセクションに当接し、これによってアバットメント装置の支柱体が歯科用インプラントに対し押され、アバットメント装置のねじ部品の拡張セクションが、アバットメント装置の支柱体の拡張部上に横方向の力を与え、これによってアバットメント装置の支柱体の拡張部の外径が増大し、歯科用修復物が、アバットメント装置の支柱体に固定して連結されることと、歯科用修復物の空洞の咬合側孔部を閉じることと、を含む。
【0045】
これによって、通路は、歯科用修復物がインプラントに装着されたときに適切な表面を有するために、特殊な手段によって閉鎖可能とすることができる。例えば、修復物がインプラントに装着された後、適切なプラグを通路内に押し込むことができる。
【0046】
そのような方法は、接合剤を用いることを一切必要とすることなく、歯科用修復物を歯科用インプラントに効率的に連結することを可能にする。特に、この方法は、アバットメント装置およびアバットメント装置の実施形態に関して上記で説明した効果および利点を効率的に達成することを可能にする。
【0047】
本発明によるアバットメント装置、歯科用修復物アセンブリおよび方法が、以下で例示的な実施形態として、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明によるアバットメント装置の実施形態の支柱体の斜視図を示す。
【
図2】
図1に示されるアバットメント装置の断面図を示す。
【
図3】
図1に示される支柱体のアバットメント装置を含む、本発明による歯科用修復物アセンブリの実施形態の断面図を示す。
【
図4】支柱体上でクラウンがシフトされている間の
図3の歯科用修復物アセンブリの断面図を示す。
【
図5】クラウンが支柱体上にセットされているときの
図3の歯科用修復物アセンブリの断面図を示す。
【
図6】ねじ部品がクラウンおよび支柱体に入っていく間の
図3の歯科用修復物アセンブリの断面図を示す。
【
図7】インプラントに固定されているときの
図3の歯科用修復物アセンブリの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の説明において、便宜上いくつかの用語を用いているが、これらは本発明を限定することを意図するものではない。「右」、「左」、「上」、「下」、「~の下」および「~の上方」という用語は、図面における方向を示す。専門用語は、明示的に述べた語、ならびにこれらの派生語および同様の意味の語を含む。また、「~の下方」、「~の下」、「下側」、「~の上方」、「上側」、「近位」、「遠位」のような空間的相対語は、図面に示されるような、ある要素または特徴と別の要素または特徴との関係を説明するため使用される場合がある。これらの空間的相対語は、図に示す位置および向きに加えて、使用時または動作時のデバイスの異なる位置および向きを包含することが意図される。例えば、図におけるデバイスが反転される場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」として記載された要素は、これらの他の要素または特徴の「上方」または「上」にあることになる。このため、例示的な用語「~の下」は、上下双方の位置および向きを包含することができる。デバイスは、他の向きに向けられる(90°または他の向きに回転される)場合があり、本明細書において用いられる空間的相対語はこれに応じて解釈される。同様に、様々な軸に沿った、および様々な軸の周りの運動の記述は、様々な特殊なデバイスの位置および向きを含む。
【0050】
様々な態様および例示的な実施形態の図および説明の繰り返しを回避するために、多くの特徴は、多くの態様および実施形態に共通であることが理解されるべきである。説明または図からある態様を省くことは、この態様がその態様を組み込んだ実施形態から欠落していることを暗に意味するものではない。そうではなく、その態様は明確性のために、冗長な説明を回避するために省かれた場合がある。これとの関連において、以下のことが本明細書の残りの部分に適用される。図面を明確にするために、図面が明細書の直接関連した部分において説明されていない参照符号を含む場合、この参照符号は、前のまたは後の説明セクションにおいて参照される。更に、明快性の理由から、図面において、部品の全ての特徴に参照符号が与えられていない場合、これは同じ部品を示す他の図面において参照される。2つ以上の図面における類似の番号は、同じまたは同様の要素を表す。
【0051】
図1は、本発明によるアバットメント装置1の実施形態の支柱体2を示す。支柱体2は、2つのピース、すなわち、上側拡張部23および下側基部22からなる。支柱体2は、咬合側開口部211および根尖側開口部212を備えた中央通路21を更に有する。通路21は、拡張部23および基部22を通って軸方向に延びる。拡張部23はリング部分231を含み、このリング部分231から、4つの薄板232が軸方向に上方に延びる。薄板232は、リング部分231の円周の回りに規則的に分散される。各薄板232は、外方にまたは径方向に延びる隆起2321と、切り欠き2322とを含む。切り欠き2322は、薄板232の下端に位置する。切り欠き2322において薄板232の厚みが低減するため、薄板232は好都合には外方に曲がることができる。薄板232の内面は、通路21の圧力受けセクション215を形成する。
【0052】
薄板232の各々の下に、スナップ留めフォーメーションとしてのスナップ留め舌状部233が軸方向に下方に延びる。各スナップ留め舌状部233は、スナップ留め舌状部233を2つの平行な部分に分割する軸方向のスリットを有する。各スナップ留め舌状部233の外面から、突起2331が横方向に延びる。
【0053】
拡張部23はPEEKから作製される。基部22はチタンから作製され、下側の根尖側円筒221と、中間フランジ部分222と、上側の咬合側円筒223とを備える。咬合側円筒223は、スナップ留め舌状部233に対応して位置するスナップ留めフォーメーションとして4つのスナップ留め凹部224を有する。これによって、スナップ留め凹部224は、拡張部23が上部から基部22上に押されるときに、スナップ留め舌状部233を受けるように形成される。特に、各スナップ留め舌状部233の2つの平行な部分は、これらがそれぞれのスナップ留め凹部224内に配置されるまで、互いに向かって弾性的に動かされる。そこでこれらは初期位置に戻るように動かされ、これによって基部22および拡張部23が堅く連結される。
【0054】
図2において、ねじ部品3が支柱体2の通路21内に配置されたアバットメント装置1が示される。ねじ部品3は、頭部セクション31を軸方向に通る、上側の円錐形状拡大セクション33と、ねじ部品3の根尖側端部付近の、下側のねじ山セクション32とを含む。拡大セクション33は、軸方向に下方に先細になっている。拡大セクション33は、その上端または咬合側端部において、ねじ回しを収容するためのドライバ凹部331を含む。拡大セクション33と同様に、頭部セクション31の下側部分は、軸方向に下方に先細になっている円錐形状のプッシュ部分311を形成する。
【0055】
ねじ部品3は、支柱体2の通路21に完全に押し込まれる。これによって、プッシュ部分311の外面は、通路21のプレスセクション214に当接する。同様に、拡大セクション33の外面は、通路21の圧力受けセクション215に当接し、これによって、横方向または径方向の力F1が拡張部23の薄板232上に作用する。これによって、薄板232は、切り欠き2322を中心に外方に曲がり、これによって拡張部23の外径234’が増大する。拡張部23は拡張状態にある。
【0056】
図3は、
図1および
図2のアバットメント装置1と、歯科用修復物としてのクラウン4とを含む歯科用修復物アセンブリ6の実施形態を示す。クラウン4は、空洞41を有するセラミッククラウン本体42を有する。この空洞41は、下方向に完全に開いており、上方に延びる軸方向のねじアクセスチャネル412を有する。空洞41は、クラウン本体42における凹型セクションを形成する印象411を更に有する。
【0057】
歯科用修復物アセンブリ6のアバットメント装置1の支柱体2が歯科用インプラント5上に配置される。インプラント5の上端が咬合側端面51を形成する。インプラント5は、下側ねじ凹部53内まで通る上側アバットメント凹部52を更に有する。支柱体2は、基部22の根尖側円筒221がアバットメント凹部52内に収まるようにアバットメント凹部52内に位置決めされる。これによって、アバットメント凹部52は、支柱体2がインプラント5に対し回転することができないように、根尖側円筒221の外面に合致するような形状にされる。基部22のフランジ部分222は、インプラント5の咬合側端面51に当接する。
【0058】
図3の断面図において見てとることができるように、拡張部23の薄板232は、内側方向にわずかに曲がる。このようにして、隆起2321は、支柱体2の残りの部分の上に横方向に突出しない。横方向の力が加えられないため、拡張部23の外径234は増大されず、拡張部23は非拡張状態にある。突起2331は、横方向または径方向において支柱体2の残りの部分の上にわずかに延びる。
【0059】
図3、
図4、
図5および
図6に示すように、本発明による方法の実施形態においてクラウン4をインプラント5に連結するために、支柱体2が、またはより厳密にはフランジ部分222の上方の支柱体2の一部分がクラウンの空洞41内に組み付けられる。
図3に見てとることができるように、支柱体2は、インプラント5上にセットされる。次に、
図4に見てとることができるように、拡張部23が空洞41内に軸方向に挿入されるように、クラウン4が支柱体2上にシフトされる。これによって、空洞41は、拡張部23がスナップ留め舌状部233の突起2331まで空洞41に容易に入ることができるような寸法にされる。
【0060】
図5に見てとることができるように、クラウン4は、クラウン本体42がフランジ部分222に当接するまで支柱体2上に更に押される。これによって、突起2331は内側に押され、これによって拡張部23がわずかに変形する。このため、PEEK材料の弾性に起因して、クラウン4は支柱体2上に締め付けられ、取り外し可能に保持される。
【0061】
図6に見てとることができるように、次に、ねじ部品3が、クラウン4のねじアクセスチャネル412を介して上から下に支柱体2の通路21内に入る。
図7に示されるように、ねじ部品3のねじ山セクション32は、次に、ねじ部品3をインプラント5に固定するためにインプラント5のねじ凹部53内にねじ込まれる。特に、外側ねじ山セクション32のねじ山は、ねじ凹部53の内側ねじ山に係合する。これによって、ねじ部分3の頭部セクション31のプッシュ部分311が支柱体2の通路21のプレスセクション214に当接し、これによって支柱体2が押され、インプラント5に固定される。
【0062】
その間、ねじ部品3の拡張セクション33は、通路21および拡張部23の圧力受けセクション215上への横方向成分F1を有する力を与える。このようにして、拡張部23の外径234’が増大し、薄板232の隆起2321がクラウン4の空洞41の印象411内に動かされる。このため、クラウン4は、支柱体2に固定して連結され、インプラント5に間接的に連結される。材料がねじアクセスチャネル412内に蓄積され得るのを防ぐために、クラウン4のねじアクセスチャネル412は、例えばプラグによって閉じられる。
【0063】
本発明の態様および実施形態を示すこの明細書および添付の図面は、保護される本発明を規定する特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきでない。換言すれば、本発明は、図面および上記の説明において例示され、詳細に説明されてきたが、そのような例示および説明は、限定ではなく、例示的または代表的なものとみなされるべきである。本明細書および特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な機械的、組成的、構造的、電気的および動作的変更を行うことができる。いくつかの例では、本発明を不明瞭にしないために、既知の回路、構造および技法が詳細に説明されていない。このため、以下の特許請求の範囲の適用範囲および趣旨内で、当業者によって変更および修正を行うことができることが理解されよう。特に、本発明は、上記および下記で説明される異なる実施形態からの特徴の任意の組み合わせを用いた更なる実施形態を包含する。
【0064】
本開示はまた、図における全ての更なる特徴を、これらが上記または下記の説明において記載されていない場合があっても、個々に包含する。また、図および説明に記載されている実施形態の個々の代替形態ならびにその特徴の個々の代替形態を、本発明の主題からまたは開示した主題から除外することができる。本開示は、特許請求の範囲および例示的な実施形態に規定されている特徴からなる主題とともに、これらの特徴を含む主題も含む。
【0065】
更に、特許請求の範囲において、「備える、有する、含む(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを排除せず、「1つの(a、an)」という不定冠詞は、複数を排除しない。特許請求の範囲において言及されているいくつかの特徴の機能を、単一のユニットまたはステップによって実現することができる。単に或る手段が相互に異なる従属項において挙げられていることだけでは、これらの手段の組み合わせを有利に用いることができないことを示すものではない。特に、属性または値と関連して、「実質的に」、「約」、「およそ」等の用語は、それぞれ、厳密にこの属性または厳密にこの値もまた定義する。所与の数値または範囲と関連して、「約」という用語は、所与の値または範囲の例えば20%以内、10%以内、5%以内または2%以内にある値または範囲を指す。接続または連結していると説明された構成要素は、電気的もしくは機械的に直接接続されてもよく、または1つもしくは複数の中間構成要素を介して間接的に接続されてもよい。特許請求の範囲における任意の参照符号は、請求項の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。