(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】新規化合物及びサンプル中の標的分子の検出のためのその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 401/12 20060101AFI20220325BHJP
C07D 239/91 20060101ALI20220325BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20220325BHJP
C08G 69/48 20060101ALI20220325BHJP
C08G 65/333 20060101ALI20220325BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20220325BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALN20220325BHJP
C12Q 1/6818 20180101ALN20220325BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
C07D239/91 ZNA
G01N21/78 C
C08G69/48
C08G65/333
C07D519/00 311
C12Q1/6888 Z
C12Q1/6818 Z
(21)【出願番号】P 2019541865
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2017076121
(87)【国際公開番号】W WO2018069470
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-06
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519135600
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド ジュネーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランド,ギアンパオロ
(72)【発明者】
【氏名】ウィッシンガー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】アンゾラ,マルセロ
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-500961(JP,A)
【文献】国際公開第2015/197981(WO,A1)
【文献】ZHOU,L. et al.,Localizable and Photoactivatable Fluorophore for Spatiotemporal Two-Photon Bioimaging,Analytical Chemistry(Washington, DC, United States),2015年04月23日,Vol.87, No.11,p.5626-5631
【文献】SADHU,K.K. et al.,In cellulo protein labelling with Ru-conjugate for luminescence imaging and bioorthogonal photocatalysis,Chemical Communications(Cambridge, United Kingdom),2015年,Vol.51, No.93,p.16664-16666
【文献】NALEWAY,J.J. et al.,Synthesis and use of new fluorogenic precipitating substrates,Tetrahedron Letters,1994年,Vol.35, No.46,p.8569-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/12
C07D 239/91
G01N 21/78
C08G 69/48
C08G 65/333
C12Q 1/6888
C12Q 1/6818
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、R
1~R
8、R
11~R
12、及びR
14~R
15は、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、置換されていてもよいC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいアミノC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいC
1~C
10アルコキシから選択され、R
13は、置換されていてもよいC
1~C
10アルキル、例えば、置換されていてもよいエチル、置換されていてもよいプロピル、又は置換されていてもよいブチルから選択され、Zは、-CR
16R
17であり、R
16及びR
17は、独立して、水素、及び置換されていてもよいC
1~C
6アルキルから選択される]
により表されるプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項2】
R
1、R
3~R
5、及びR
7~R
8が、Hである、請求項1に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項3】
R
2が、Clである、請求項1又は2に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項4】
R
2が、Hである、請求項1又は2に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項5】
R
6が、Clである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項6】
R
6が、Hである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項7】
R
6が、置換されたC
1~C
10アルキル、例えば、アミノC
1~C
10アルキル、又はアルコキシカルボニルC
1~C
10アルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項8】
R
13が、置換されていてもよいプロピル、例えば、プロピル若しくはN-プロピルニトリル、並びに置換されていてもよいブチルから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項9】
R
16が、Hである、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項10】
R
17が、Hである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項11】
Zが、メチルである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項12】
Zが、-C(H)(エチル)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項13】
以下の群:
【化2】
1-プロピル-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウム;
【化3】
1-(3-アジドプロピル)-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウム;
【化4】
1-ブチル-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウム;
【化5】
4-(1-(4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)プロピル)-1-プロピルピリジン-1-イウム;
【化6】
4-((4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-2,6-ジメチル-1-プロピルピリジン-1-イウム; 及び
【化7】
4-((2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-1-プロピルピリジン-1-イウム
から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項14】
式(I')
【化8】
[式中、R
1~R
8は、請求項1~13のいずれか一項に定義される通りである]
により表されるフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩の調製方法であって、還元剤の存在下で、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩を、遷移金属錯体フォトレドックス触媒と反応させるステップを含む、方法。
【請求項15】
前記フルオロフォア化合物が、
【化9】
6-クロロ-2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン;
【化10】
2-(2-ヒドロキシフェニル)キナゾリン-4(3H)-オン;
【化11】
メチル2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)アセテート; 及び
【化12】
2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)酢酸から選択される、請求項14に記載の式(I')により表されるフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩の調製方法。
【請求項16】
サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のためのin vitro方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩、又はそのコンジュゲートを含む組成物を、前記サンプルと接触させるステップを含
み、プロフルオロフォア化合物の前記コンジュゲートが、式(II):
【化13】
[式中、R
1
~R
8
及びZは、請求項1~15のいずれか一項に記載される通りであり;R
11c
、R
12b
、R
13a
、R
14g
及びR
15d
のそれぞれは、独立して、標的分子に対して特異的親和性を有する連結基であるか、又は存在せず;R
11c
、R
12b
、R
13a
、R
14g
及びR
15d
の少なくとも1つは存在し;R
11c
が存在しない場合、R
11
は、請求項1~15のいずれか一項に記載される通りであり;R
12b
が存在しない場合、R
12
は、請求項1~15のいずれか一項に記載される通りであり;R
13a
が存在しない場合、R
13
は、請求項1~15のいずれか一項に記載される通りであり;R
14g
が存在しない場合、R
14
は、請求項1~15のいずれか一項に記載される通りであり;R
15d
が存在しない場合、R
15
は、請求項1~15のいずれか一項に記載される通りであり;R
11c
が存在する場合、R
11
は、請求項1~15のいずれか一項にR
11
として記載される前記基に対応する二価の基から選択され;R
12b
が存在する場合、R
12
は、請求項1~15のいずれか一項にR
12
として記載される前記基に対応する二価の基から選択され;R
13a
が存在する場合、R
13
は、請求項1~15のいずれか一項にR
13
として記載される前記基に対応する二価の基から選択され;R
14g
が存在する場合、R
14
は、請求項1~15のいずれか一項にR
14
として記載される前記基に対応する二価の基から選択され;R
15d
が存在する場合、R
15
は、請求項1~15のいずれか一項にR
15
として記載される前記基に対応する二価の基から選択される]
のものである、方法。
【請求項17】
(i)前記標的分子がサンプル中に存在する場合に、プローブが前記少なくとも1つの標的分子に結合し、標的分子が係留化基材の表面上に係留されるのに適した条件下で、サンプルを、(1)前記少なくとも1つの標的分子に対する係留化基材、及び(2)前記少なくとも1つの標的分子に対するプローブと接触させるステップであって、前記プローブは、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識されている、ステップ;
(ii)プロフルオロフォアが遷移金属錯体フォトレドックス触媒の近傍に位置する場合に、前記プロフルオロフォア又はそのコンジュゲートのフォトレドックス触媒作用を誘導するのに適した条件下で、還元剤の存在下で、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩、又はそのコンジュゲートを含む組成物を、前記係留化基材と接触させるステップ
であって、前記コンジュゲートが、請求項16に記載される式(II)のものである、ステップ;
(iii)式(I'):
【化14】
[式中、R
1~R
8は、請求項1~16のいずれか一項に定義される通りである]
のフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩の前記係留化基材上における形成を検出するステップであって、前記フルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩の形成は、前記サンプル内の前記少なくとも1つの標的分子の存在を示す、ステップ
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(i)が、前記少なくとも1つの標的分子に結合すること、及び基材上の標的分子の係留化を確実にすることの両方が可能な、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された単一の種類のプローブの使用によって、又は(a)標的核酸配列の配列の一部、若しくは標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列を特異的に認識し、基材上の標的分子の係留化を確実にするプローブ(「係留化プローブ」)、及び(b)遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された、標的核酸配列の配列の一部、若しくは標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列を特異的に認識するプローブ(「触媒プローブ」)などの、少なくとも2つの異なる種類のプローブの使用によって達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式(I):
【化15】
[式中、R
1~R
8、R
11~R
12、及びR
14~R
15は、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、置換されていてもよいC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいアミノC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいC
1~C
10アルコキシから選択され、R
13は、置換されていてもよいC
1~C
10アルキル、例えば、置換されていてもよいエチル、置換されていてもよいプロピル、又は置換されていてもよいブチルから選択され、Zは、-CR
16R
17であり、R
16及びR
17は、独立して、水素、及び置換されていてもよいC
1~C
6アルキルから選択される]
により表されるプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩のコンジュゲートであって、前記コンジュゲートが、
請求項16に記載される式(II)
のものである、コンジュゲート。
【請求項20】
前記連結基が、(a)スペーシング部分、及び(b)ドッキング部分を含み、ドッキング部分(b)は、触媒プローブによって認識される領域の近傍において標的分子に結合するか、又はフォトレドックス触媒を、標的分子の領域を認識するプローブにコンジュゲートさせる基に結合し、スペーシング部分(a)は、ドッキング部分を前記プロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩に共有結合させ、鋳型反応に有利な適切な形状を有する化学スペーサー、例えば、アルキルリンカー、ポリエチレングリコール、又はポリアミド鎖である、請求項
19に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
連結基が、以下の式(III):
【化16】
[式中、nは、1~10の整数であり、mは、0~2の整数であり、bは、請求項
20に定義されるドッキング部分である]
の構造を有する、請求項
20に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
以下の群:
【化17】
メチル2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)アセテート(10); 及び
【化18】
2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)酢酸(11)
から選択される、フルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩。
【請求項23】
サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のためのキットであって、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩、又はそのコンジュゲートと、任意選択で、還元剤、及び前記標的分子の検出のためのさらなるプローブから選択される少なくとも1つの薬剤とを含
み、プロフルオロフォア化合物の前記コンジュゲートが、請求項16に記載される式(II)のものである、キット。
【請求項24】
a)フォトレドックス触媒で標識された、標的分子に対して特異的親和性を有する少なくとも1つのプローブ(触媒プローブ);
b)プローブを支持体に固定するための基で標識された(係留化プローブ)、又は請求項1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩、又は請求項
16~
21のいずれか一項に記載のそのコンジュゲートで標識された、標的分子に対して特異的親和性を有する少なくとも1つのプローブ;
c)任意選択で、係留化プローブを介して標的分子を固定するための係留化支持体;
d)還元剤;
e)請求項1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア化合物、又はその任意の互変異性体、幾何異性体若しくは塩、又は請求項
16~
21のいずれか一項に記載のそのコンジュゲート;
並びに
f)任意選択で、増幅反応を行うための少なくとも1つの容器、及び/又はサンプリングデバイス
を含む、請求項
23に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレドックス触媒作用下で標的分子とともに反応部位に沈殿するプロフルオロフォア、及びサンプル中の前記標的分子の検出のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
診断及び品質保証(トレーサビリティのモニタリング、有効保存期間、調達、安全性、偽造品、コンプライアンス)用途におけるシグナル検出に対するニーズが高まっている。特に、食品産業の分野では、食品の真正性、コンプライアンス、及び品質を即時に検証するために、成分及び細菌の存在の検出に対するニーズが高まっている。顧客の需要は、特に、サプライチェーンの完全性を管理する食品製造業者、小売業者、業界団体、及び政府機関からもたらされる。この完全性は、医学的な理由(例えば、アレルギー、食事療法)又は個人的な理由(例えば、宗教)のために特定の食品を食べることができない人々のような最終消費者にとって特に重要である。現在、食品成分を検証するために科学者以外の人がいかなる時及び条件においても簡単に実施できる試験は存在せず、したがって、団体は、第三者プロバイダーから提供された情報(すなわち、証明書)を信頼するか、又はサンプルを検査機関に送付しなければならない。動物、植物、及び微生物は、特定のDNAを含有するので、今日、「DNAバーコード」として知られるゲノムの小さな領域により300,000個を超える種を同定することができ、したがって、この「DNAバーコード」を使用して、食品成分を同定することができる。DNA配列決定費用は減少しているが、標準的アプローチは、650bp(塩基対)長のバーコードDNA領域を単離し、配列決定し、その結果を公知の種のデータベース(例えば、www.ibol.org)と比較することであるため、そのような試験の利用可能性は、訓練を受けていない人にとっては手が届かない。したがって、この方法は、長く、汚染を受けやすく、実験室ベースのサンプル調製、特殊な装置の使用、及び分析結果を解釈するための高度な知識を必要とする。
【0003】
画像化及び診断用途におけるシグナル検出は、様々な色素、例えば、蛍光色素を用いてしばしば達成される。ローダミン及びアジドローダミンのようなフルオロフォアは、反応部位に沈殿しないので、空間分解能情報を提供せず、他のフルオロフォアがあたり一面に拡散し、シグナルを分散させ、多重バンド/コードへの読み出しの識別の取得を妨げる。したがって、これらの色素は、細胞内分解能に適応していない。酸化還元指示薬としてしばしば使用される別の公知の色素であるビオロゲン(例えば、パラコート)の使用は、その毒性のために食品用途において制限され、その低い感度は、肉眼検出を達成するために高濃度を必要とする。キナゾリン色素は、反応部位に沈殿するので、細胞内分解能でシグナル情報を提供するために開発されている。この目的のために、無色及び可溶性のプロフルオロフォアが、アジドトリガー基にコンジュゲートしたキナゾリノン沈殿色素(QPD)に基づいて設計されており(N3-QPD)、これは、光(例えば、455nm)によって引き起こされる、触媒(例えば、ルテニウムベースの触媒、例えば、Ru(bpy)3Cl2)及び還元剤(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、NaAscなど)の存在下での光触媒反応時に、蛍光分子に変換し、キナゾリノン沈殿色素(QPD)として沈殿する。この反応では、Ruベースの触媒の光励起は、触媒の近傍にあるアジドを還元し、それが今度は、プロフルオロフォア分子中のアジドと、フルオロフォアとの間のリンカーの犠牲をもたらし、したがって、蛍光色素を脱マスクする(いわゆる還元的切断又は脱マスキング)。脱マスキング時の色素の沈殿に起因して、蛍光は、反応が起こる場所に現れ、したがって、報告されるシグナルは、空間分解能情報を保持する(Holtzer et al., 2016, ACS Central Science, 10.1021/acscentsci.6b00054; Sadhu et al., 2015, Chem. Commun., 51: 16664-6)。遷移金属(例えば、Ru)が光触媒的に作用するという事実に基づいて、反応は、時間的に制御され、試薬は、早期反応の危険性なしに便利に取り扱われ、混合され得る。さらに、この反応は酵素的増幅を使用しないので、使用される試薬は、より安定であり、様々な環境において使用することができる。この技術は、Ruベースの触媒でタグ付けされたタンパク質の細胞内可視化のために(Sadhu et al., 2015, 上記)、又は標的マイクロRNAのインビボ可視化のための核酸鋳型反応において(Holtzer et al., 2016, 上記)使用することができる。しかし、空間的検出を可能にするこれらのフルオロフォアの制限は、アッセイ時間を短縮し、使い捨て型検出試験への組み込みを可能にするために、なお改善される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、高効率の検出を可能にし、携帯型及び使い捨て型の検出システムに適した新しいフルオロフォアの開発に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、そのフォトレドックス触媒作用時に沈殿生成物(対応するフルオロフォア)に変換する新規のプロフルオロフォア(例えば、フルオロフォア前駆体又は蛍光発生剤)ファミリーを対象とする。本発明は、この新規プロフルオロフォアファミリーと遷移金属錯体フォトレドックス触媒との反応を通して、下記式(I')のフルオロフォアが形成され得るという知見に基づいている。
【0006】
本発明は特に、還元剤の存在下における触媒の作用時におけるそれらの無色のプロフルオロフォアの、触媒の反応部位に沈殿する高蛍光生成物への変換の使用(特に診断又は標的物質の検出の分野における)を対象とする。本発明のプロフルオロフォアは、公知の沈殿色素よりも高い沈殿量の利点を有し、放出波長(シグナル)が励起波長及び他のノイズから容易に分離されるので、高性能器具なしに沈殿時の放出シグナルを検出するための測定を可能にする大きなストークスシフト(吸収波長と放出波長の差)を有し、かつシグナル変動及び分解能の損失なしに信頼性のある測定を可能にする、高度に光安定性である、対応するフルオロフォアに変換する。本発明は特に、サンプル中の標的小分子、天然及び合成核酸、タンパク質及び他の高分子の検出におけるそのようなプロフルオロフォアの使用方法、並びにそれらを含む検出システム及びデバイスを対象とする。
【0007】
一態様では、式(I)のプロフルオロフォアが提供される。
【0008】
別の態様では、式(I')のフルオロフォアの調製方法であって、還元剤の存在下で、式(I)のプロフルオロフォアを、遷移金属錯体フォトレドックス触媒と反応させるステップを含む、方法が提供される。
【0009】
別の態様では、式(I')のフルオロフォアが提供される。
【0010】
別の態様では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子(例えば、小分子、天然及び合成核酸、ペプチド又はタンパク質)の検出方法であって、本発明によるプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートを含む組成物(蛍光発生組成物)を、前記サンプルと接触させるステップを含む、方法が提供される。
【0011】
別の態様では、式(II)のものである、式(I)のプロフルオロフォアのコンジュゲートが提供される。
【0012】
別の態様では、式(I)のプロフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様は、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のためのキットであって、式(I)のプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートと、任意選択で、還元剤、及び前記標的分子の検出のためのさらなるプローブから選択される少なくとも1つの薬剤とを含む、キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例3にさらに記載される、サンプル中の標的DNA分子(10μMにおける)の検出方法の説明図である。A: 以下を含む検出方法の主なステップの概略図: 触媒プローブ(a)(例えば、遷移金属錯体フォトレドックス触媒にコンジュゲートしたPNA)及び係留化プローブ(b)(例えば、ビオチン化(Btn)PNA)(両プローブは、標的DNA分子の一部を認識する)の混合物と共に標的DNA分子(c)を含有するサンプルを、固定されたストレプトアビジンを含有するディップスティックの形態の係留化基材(d)と、還元剤(red.)及び本発明のプロフルオロフォア(Pro-fl.)の存在下で、プローブが標的DNA分子に結合し、標的分子が係留化基材の表面上に係留される(f)のに適した条件下で接触させること(e); 照射(g)によってディップスティック表面に結合したフォトレドックス触媒の近傍においてプロフルオロフォアのフォトレドックス触媒作用を引き起こすこと、及び係留化ディップスティック表面上で形成された蛍光(Fl.)帯を可視化すること; B: ディップスティック表面の陽性の蛍光(左)及び対照(右)帯の画像。
【
図2】
図2は、実施例4に記載される、サンプル中の標的豚肉DNA断片を検出するための本発明の方法のステップ(A)及び結果(B)を示す。
【
図3】
図3は、実施例2に記載される、豚肉に特異的に存在するDNAミニバーコードの同定を可能にする、15種の動物のCOI遺伝子のDNAバーコード領域から選択された73bpの5'→3'として示される1つのDNA領域の比較を示す。*: 配列保存。豚肉(配列番号5)、牛肉(配列番号6)、ウマ(配列番号7)、ホロホロチョウ(配列番号8)、シチメンチョウ(配列番号9)、ニワトリ(配列番号10)、ロバ(配列番号11)、サル(配列番号12)、ヒト(配列番号13)、ラット(配列番号14)、マウス(配列番号15)、ヒトコブラクダ(dromedarius)(配列番号16)、ラクダ(配列番号17)、ラム(配列番号18)、ヤギ(配列番号19)に由来するDNA領域。
【
図4】
図4は、実施例5に記載される、食品サンプル中の標的豚肉DNA断片の検出方法を説明する。A: 標的豚肉DNA断片を含有する食品サンプルが提供される; B: サンプルを、前記標的豚肉DNA断片に対する係留化プローブ(Ap)を担持する係留化基材(s)、及び遷移金属錯体フォトレドックス触媒(Cat.)で標識された標的DNA断片に対するプローブと、標識されたプローブが標的分子に結合し、標的分子が係留化プローブにより係留化基材の表面上に係留されるのに適した条件下で接触させ、一方、本発明のプロフルオロフォア(Pro-Fl.)とコンジュゲートした標的豚肉DNA断片に対する別のプローブが提供される; C: 適切な条件下で、プロフルオロフォア(Pro-Fl.)を担持するプローブは、還元剤の存在下でフォトレドックス触媒で標識されたプローブの結合部位の近傍において係留された標的分子とハイブリダイズし、対応するフルオロフォア(Fl.)へのプロフルオロフォアのフォトレドックス触媒作用が生じる。
【
図5】
図5は、実施例6に記載される、DNA増幅に供したサンプル中の標的DNA断片の検出のための本発明の方法のステップ(A~D)を概略的に表す。
【
図6】
図6は、実施例6に記載される、鎖侵入及びDNA鋳型化反応によるサンプル中のDNA断片の検出のためのアッセイのステップ(A~D)及び結果(E)を概略的に表す。
【
図7A】
図7は、実施例6に記載される、鎖侵入及びDNA鋳型化反応によるサンプル中の複数のDNA断片の検出のためのアッセイのステップ(A~D)を概略的に表す。
【
図8】
図8は、実施例6に記載される、試験結果の読み出しを概略的に表す。A: バーコード; B: マクロアレイコード; C: QR(商標)コード; D: アレイスポッター(矢印スケールバー-5mm)。
【
図9】
図9は、実施例7に記載される、本発明による方法における鋳型化光反応の例を示す。A: 係留化PNAプローブ(1)及びコンジュゲート化フォトレドックス触媒(Cat.)を含む触媒PNAプローブ(2)と接触させた標的dsDNA(3); B: プローブと標的dsDNAとの間のハイブリダイゼーション; C: ハイブリダイズした標的dsDNAを、係留化基材(s)としての試験ストリップと接触させる(係留化基材は、係留化プローブに対して親和性を有する部分を有する); D: ハイブリダイズした標的dsDNAは、係留化プローブにより試験ストリップ上に固定される; E: 触媒PNAプローブの一部に対して親和性を有するプローブにコンジュゲートしたプロフルオロフォア(化合物1)を含むプロフルオロフォア(Pro-Fl.)コンジュゲート(4)を、還元剤(Red.)の存在下で試験ストリップと接触させる; F: プロフルオロフォアコンジュゲートは、触媒PNAプローブ(2)のごく近傍において触媒PNAプローブ上に結合している; G: 試験ストリップは、フルオロフォア(Fl.)へのPro-Fl.の光触媒還元を促進するために、照明(例えば、LEDランプ、455nm)に供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
用語「蛍光発生組成物」は、本発明によるプロフルオロフォアをそれ自体で又はコンジュゲートの形態でのいずれかで含む組成物であって、プロフルオロフォア又はそのコンジュゲートが、フォトレドックス触媒の近傍にある場合に、フォトレドックス触媒作用を受けることができる組成物を指し、組成物は、フォトレドックス触媒を励起するのに十分な波長で励起され、それにより、対応するフルオロフォアを生成する。
【0016】
用語「標的分子」は、サンプル中のその存在について試験されるべき目的の任意の分子(例えば、小分子、天然及び合成核酸、ペプチド又はタンパク質)を指し、例えば、特定の起源に由来する標的DNA(例えば、特定の種に由来する(例えば、豚肉、ウマ、げっ歯類などに由来する)標的哺乳動物DNA断片、又は標的細菌DNA断片(例えば、大腸菌(E. Coli)、リステリア(Listeria)、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)、レジオネラ(Legionella)などの病原性細菌に由来するDNA)、又はそれらの毒素に由来するもの)がある。特定の態様では、標的分子は、食品(例えば、肉又はチーズ)、飼料、ペットフード、飲料、及び飲用調製物などの、ヒト又は獣医学的用途のための任意の材料中でのその存在について試験されるべき目的の任意の分子を包含する。材料は、原材料、中間製品及び最終製品、食品添加物(例えば、酵素、スターター培養物、ビタミン)又は医薬品若しくは化粧品を含む。本発明による標的分子としての核酸の例は、特定の種(すなわち、PLoS One., 2017, 12(8):e0181949. doi: 10.1371/journal.pone.0181949におけるように、豚肉対牛肉)、又は特定の種類(すなわち、J. Agric. Food Chem. 2006 54(20):7466-70におけるように、コーヒーアラビカ(Coffee Arabica)対ロブスタ(Robusta))、又は一般的ファミリー(すなわち、J. Clin. Microbiol., 2003,41(9): 4089-4094におけるように、微生物抗生物質耐性遺伝子)を同定するDNA及びRNAの配列及びプライマーを包含する。
【0017】
用語「プローブ」は、標的分子を特異的に認識する分子を指す。核酸プローブは、標的分子の少なくとも一領域を特異的に認識する少なくとも1つの核酸配列を含むプローブを指す。特定の態様では、核酸プローブは、約1~約60ヌクレオチド、例えば約4~約20ヌクレオチド、例えば約4~約14ヌクレオチド、特に約7~約14ヌクレオチドの核酸を含む。
【0018】
別の特定の態様では、本発明の核酸プローブは、PNA若しくはLNA、並びにDNA、RNA、PNA若しくはLNAの任意の混合物である。
【0019】
用語「ペプチド核酸」又は「PNA」は、天然核酸の糖ホスフェート骨格が、通常N-(2-アミノ-エチル)-グリシン単位から形成される合成ペプチド骨格によって置き換えられ、アキラルで非荷電の模倣体をもたらす、DNA又はRNAに類似した人工的に合成されたポリマー核酸類似体を指す。それは化学的に安定であり、加水分解(酵素的)切断に対して耐性である。いくつかの標的分子に対する結合親和性を増加させるために、プローブを立体化学的に修飾してキラルをアキラルプローブにして、立体化学に依存するそのように修飾されたプローブの結合特性を得ることができる。例えば、ガンマ-修飾PNAなどのPNA骨格の修飾は、診断アッセイにおける使用のために最近開発されている(Manicardi et al., 2014, Artificial DNA: PNA & XNA, 5:3, e1131801; Moccia et al., 2014, Artificial DNA: PNA & XNA, 5:3, e1107176)。特定の実施形態では、本発明によるプローブは、PNAプローブ、特にガンマPNAプローブ、例えば、γD-PNA、γL-PNAプローブである。
【0020】
用語「ロックド核酸」又は「LNA」は、人工的に合成された修飾RNAヌクレオチドを指す。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2'酸素と4'炭素を連結する追加の架橋で修飾されている。架橋は、A型二重鎖によく見られる3'-エンド(ノース)コンフォメーションでリボースを「ロック」する。LNAヌクレオチドは、所望の場合にオリゴヌクレオチド中のDNA又はRNA残基と混合され、ワトソン-クリック塩基対合則に従ってDNA又はRNAとハイブリダイズすることができる(Doessing et al., 2011, Molecules 2011, 16, 4511-4526)。
【0021】
特定の実施形態では、プローブは、14マー、7マー、又は4マーのPNAから選択されるPNAプローブを含む。
【0022】
用語「DNAミニバーコード」は、(典型的には約650bpの)DNAバーコード配列の断片であるDNA配列を指す。DNAミニバーコードは、通常、50~250bpの間、優先的には70と130bpの間であり、同定プロセスの間にそれが最初に比較された他の種の同じDNA領域から分岐するが、1つの種に特異的である。そのより短い長さのために、DNAミニバーコードは、DNAが部分的に分解される可能性があるサンプル(例えば、加工食品)中の1つの種をよりよく同定することができる。1つのDNAバーコード配列は、2つ以上のDNAミニバーコードを含み得る。
【0023】
用語「DNA増幅」は、反復複製によって特定のDNA断片のコピー数を人為的に増加させることを可能にする反応を指す。標的鋳型は、逆転写後のDNA又はRNAのいずれかであり得る。DNA増幅の例は、豚肉ミトコンドリアDNAに特異的な等温DNA増幅(LAMP、ループ媒介等温増幅)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ローリングサークル増幅(RCA)、単一プライマー等温増幅(SPIA)、スマート増幅プロセスバージョン2(SMAP2)、鎖置換増幅(SDA)、ニッキング及び伸長増幅反応(NEAR)、核酸の等温及びキメラプライマー開始増幅(ICAN)、ポリメラーゼスパイラル反応(PSR)である。
【0024】
用語「核酸鋳型化反応」は、化合物に結合したオリゴヌクレオチド(例えば、反応物-プローブコンジュゲート)が、特定の核酸を認識し、それらにハイブリダイズし、それによって反応物を互いに接近させる反応を指す(Pianowsky et al., 2007, Chem. Commun., 37: 3820-3822)。ランダムな分子間反応と比較して、核酸鋳型化反応は、より速い速度で起こり、これはこの化学に基づくポイントオブニード(point-of-need)試験の競争上の優位性であり得る。
【0025】
用語「アルコキシカルボニル」は、基-C(O)OR(式中、Rは、「C1~C6アルキル」を含む)を指す。
【0026】
用語「アルコキシカルボニルC1~C6アルキル」は、アルコキシカルボニル置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-(ベンジルオキシカルボニル)エチルなどを含む。
【0027】
個々の置換基の定義によって別段制約されない限り、用語「置換される」は、「C1~C6アルキル」、「アミノ」、「アミノスルホニル」、「アミノカルボニル」、「スルホニル」、「アルコキシ」、「アルコキシカルボニル」、「ハロゲン」、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロなどからなる群から選択される1~5個の置換基で置換された基を指す。
【0028】
本発明による化合物は、式(I)による化合物、及びその幾何異性体、特にキナゾリン部分の周知の異性体を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、キットは、本発明の方法、特に本発明によるDNA/RNA標的分子の検出を実施することを可能にする「試験ストリップ」の形態の「試験デバイス」を含有し得る。特定の態様では、試験デバイスは、溶液及びその中に含まれる分子の流れが毛管現象によって移動することを可能にする材料でできている。そのような材料の例は、セルロースエステル(ニトロセルロースアセテート及びセルロースアセテートを含む)、セルロース紙、ろ紙、ティッシュペーパー、又は多孔質ポリマーフィルムである。試験デバイスの一例は、固定されたストレプトアビジン又は捕捉プローブでできている検出ラインと、本発明によるプロフルオロフォア及び還元剤を含む底部ポーチとを含む「ラテラルフローストリップ」デバイスである。本発明によるキットは、サンプリングデバイスをさらに含み得る。
【0030】
用語「サンプリングデバイス」は、アッセイに使用するためのサンプルを得ることを可能にするデバイスを指す。サンプリングデバイスの例は、肉及び葉のための生検パンチ、又は微生物のための綿棒を含む。
【0031】
用語「サンプル破砕機」は、適合性緩衝液(すなわち、Tris 10mM、EDTA 1mM、pH8.0)内でサンプル材料を分解させることを可能にするデバイスを指す。様々なサンプルの細胞構造を破壊することによって、サンプル破砕機は、標的分析物(すなわち、DNA)を溶液中に通過させる。サンプル破砕機は、例えば、使い捨て型乳棒(Eppendorf)又は携帯型細胞破壊器(Xpedition, Zymo Research)として商業的に入手することができる。
【0032】
本発明によるプロフルオロフォア
一態様では、式(I):
【0033】
【化1】
[式中、R
1~R
8、R
11~R
12、及びR
14~R
15は、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、例えば、クロロ、シアノ、ニトロ、置換されていてもよいC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいアミノC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいC
1~C
10アルコキシから選択され、R
13は、置換されていてもよいC
1~C
10アルキル、例えば、置換されていてもよいエチル(例えば、エチル)、置換されていてもよいプロピル(プロピル又はN-プロピルニトリル)、又は置換されていてもよいブチル(例えば、ブチル)から選択され、Zは、-CR
16R
17であり、R
16及びR
17は、独立して、水素、及び置換されていてもよいC
1~C
6アルキルから選択される]
の化合物、又はその任意の互変異性体、異性体、コンジュゲート若しくは塩が提供される。
【0034】
別の態様では、本発明のプロフルオロフォアのカウンター塩は、トリフルオロメタンスルホネート(OTf)である。
【0035】
別の態様では、式(I)[式中、R1、R3~R5、及びR7~R8は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0036】
別の態様では、式(I)[式中、R11及びR15は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0037】
別の態様では、式(I)[式中、R11~R12及びR14~R15は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0038】
別の態様では、式(I)[式中、R12は、置換されていてもよいC1~C10アルキル、例えば、メチルである]のプロフルオロフォアが提供される。別の態様では、式(I)[式中、R14は、置換されていてもよいC1~C10アルキル、例えば、メチルである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0039】
別の態様では、式(I)[式中、R2は、Clである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0040】
別の態様では、式(I)[式中、R2は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0041】
別の態様では、式(I)[式中、R6は、Clである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0042】
別の態様では、式(I)[式中、R6は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0043】
別の態様では、式(I)[式中、R6は、置換されていてもよいC1~C10アルキルである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0044】
さらなる実施態様では、式(I)[式中、R6は、アルコキシカルボニルC1~C10アルキル、例えば、-CH2C(O)OMeである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0045】
別の態様では、式(I)[式中、R1~R8は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0046】
別の態様では、式(I)[式中、R13は、置換されていてもよいブチルである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0047】
さらなる態様では、式(I)[式中、R13は、プロピル又はN-プロピルニトリルから選択される]のプロフルオロフォアが提供される。
【0048】
別の態様では、式(I)[式中、R13は、置換されていてもよいプロピルである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0049】
さらなる態様では、式(I)[式中、R16は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0050】
さらなる態様では、式(I)[式中、R17は、Hである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0051】
さらなる態様では、式(I)[式中、R17は、置換されていてもよいC1~C6アルキルである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0052】
別のさらなる態様では、式(I)[式中、R17は、エチルである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0053】
別の態様では、式(I)[式中、Zは、メチルである]のプロフルオロフォアが提供される。
【0054】
別の態様では、式(I)[式中、Zは、-C(H)(エチル)-である]のプロフルオロフォアが提供される。
【0055】
一実施形態では、本発明のプロフルオロフォア化合物は、以下の群:
【0056】
【化2】
1-プロピル-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウム(化合物(1));
【0057】
【化3】
3-[4-[[4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3H-キナゾリン-2-イル)フェノキシ]メチル]ピリジン-1-イウム-1-イル]プロパンニトリル(化合物(2))及び
【0058】
【化4】
1-ブチル-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウム(化合物(3))
から選択される。
【0059】
別の実施形態では、本発明のプロフルオロフォア化合物は、以下の群:
【0060】
【化5】
4-(1-(4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)エチル)-1-プロピルピリジン-1-イウム(5)、
【0061】
【化6】
4-((4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-2,6-ジメチル-1-プロピルピリジン-1-イウム(6)、及び
【0062】
【化7】
4-((2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-1-プロピルピリジン-1-イウム(7)
から選択される。
【0063】
さらなる実施形態では、本発明による化合物は、1-プロピル-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウムである。
【0064】
さらなる実施形態では、本発明による化合物は、3-[4-[[4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3H-キナゾリン-2-イル)フェノキシ]メチル]ピリジン-1-イウム-1-イル]プロパンニトリルである。
【0065】
さらなる実施形態では、本発明による化合物は、4-(1-(4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)エチル)-1-プロピルピリジン-1-イウムである。
【0066】
別のさらなる実施形態では、本発明による化合物は、4-((4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-2,6-ジメチル-1-プロピルピリジン-1-イウムである。
【0067】
別のさらなる実施形態では、本発明による化合物は、4-((2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-1-プロピルピリジン-1-イウムである。
【0068】
特定の実施形態では、本発明のプロフルオロフォアは、可視光下で無色であり、室温で水溶液に可溶性である。
【0069】
別の特定の実施形態では、本発明のプロフルオロフォアは、還元剤の存在下で、遷移金属錯体との相互作用によるフォトレドックス触媒反応下で、水溶液に不溶性の蛍光化合物(例えば、沈殿物)に変換される。
【0070】
本発明によるプロフルオロフォアの合成
一実施形態では、本発明のプロフルオロフォア化合物は、以下の一般スキーム1による合成方法によって調製してもよい。アルカリ性媒体(例えば、炭酸カリウム)中の式(i)のアルデヒドを、極性溶媒(例えば、DMF)に溶解した。混合物を加熱し(例えば、80℃)、式(iia)のピリジン誘導体を固体として一部ずつ加える。得られた混合物を、数時間(例えば、6時間)撹拌する。次いで、溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製して、式(iii)の所望の中間生成物を得た。次いで、得られた式(iii)の化合物を、不活性雰囲気下で、極性非プロトン性溶媒(例えば、DMSO)中でアルキル化剤(例えば、ブタン-2-イルトリフルオロメタンスルホネート又は式(iv)のもの、例えば、1-ヨードプロパン)と反応させて、ピリジンからの窒素原子をアルキル化する。溶液を室温で一晩撹拌する。粗生成物を沈殿させ(例えば、ジエチルエーテル中で)、遠心分離し、洗浄して、式(v)の所望の中間体を得る。次いで、式(v)の中間体を、水溶性溶媒(例えば、乾燥エタノール)中での脱離反応(例えば、トシル酸の存在下)で式(vi)のアミドと反応させ、混合物を還流する(例えば、3時間)。次いで、溶液を0℃に冷却し、溶液を室温で温めながら酸化体媒体中(例えば、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)中)で沈殿させる。数時間(例えば、2時間)後、式(I)の化合物の固体を遠心分離により回収し、水溶性溶媒(例えば、冷エタノール)で洗浄する。
【0071】
【0072】
あるいは、別の実施形態では、本発明のプロフルオロフォア化合物は、以下のスキーム3に従って、中間体(iia)が中間体(iib)によって置き換えられ、式(i)のアルデヒドと反応して、中間体(iii)を調製する、一般スキーム1による合成方法によって調製してもよい。
【0073】
【0074】
中間体(iib)は、標準的な光延条件下(DIAD、PPh3)で活性化される。式(i)、(iia)、又は(iib)の中間体は、市販されているか、又は当技術分野において公知の標準的な方法に従って調製してもよい。
【0075】
次いで、式(I)による化合物を、極性非プロトン性溶媒(例えば、DMSO)に溶解し、遠心分離及び冷エタノールでの洗浄などの適切な方法によって精製する。
【0076】
典型的な又は好ましい実験条件(すなわち、反応温度、時間、試薬のモル数、溶媒など)が示される場合、別段記載のない限り、他の実験条件も使用できることが理解される。最適な反応条件は、使用される特定の反応物又は溶媒によって変わり得るが、そのような条件は、日常的な最適化手順を使用して、当業者によって決定され得る。
【0077】
本発明のプロフルオロフォアは、それ自体で溶液中で、又は小分子、天然若しくは合成核酸、ペプチド又はタンパク質と一緒にコンジュゲートの形態で使用することができる。例えば、それは、そのピリジニウム基から核酸配列(例えば、ペプチド核酸(PNA)配列)へ、特に側鎖のε位のリジン残基を介して、カップリングさせることができ、又は本発明のアジド担持プロフルオロフォアをアルキン担持PNAと反応させることによって、アジド-アルキン環化付加による「クリック」化学によってコンジュゲートさせることができる(例えば、Sadhu et al., 2013, Chem. Eur. J., 19, 8182-8189に記載されるように)。特定の実施形態では、本発明のプロフルオロフォアのコンジュゲートは、式(II):
【0078】
【化10】
のものである。式中、Raは、部分-R
13-R
13aであり、R
bは、部分-R
12-R
12bであり、R
cは、部分-R
11-R
11cであり、R
dは、部分-R
15-R
15dであり、R
gは、部分-R
14-R
14gであり、R
11~R
13及びZは、本明細書に記載される通りであり、R
11c、R
12b、R
13a、R
14g、及びR
15dは、独立して、任意選択で存在し、基R
11c、R
12b、R
13a、R
14g、及びR
15dの少なくとも1つは、
- 特に標的プローブによって認識される領域の近傍において、標的分子(例えば、DNA、LNA、PNA(標的分子の領域に相補的なもの)、モルホリン、RNA、抗体、ナノボディ及びそれらの類似体又は小分子リガンド)に対して特異的親和性を有する連結基であるか、
又は
- フォトレドックス触媒を、標的分子(例えば、DNA、LNA、PNA、モルホリン、RNA、抗体、ナノボディ及びそれらの類似体又は小分子リガンド)の領域を認識するプローブへコンジュゲートさせる基に対して特異的親和性を有する基である。
【0079】
本発明によるそれらの連結基及びコンジュゲート並びにそれらの使用の例は、
図4及び9並びに実施例2及び7に提供される。特定の実施形態では、化合物(1)のアジド誘導体である化合物(2)は、クリック化学によって本発明による化合物(1)のコンジュゲートを得るのに特に有用である。
【0080】
特定の実施形態では、標的分子に対して、又はフォトレドックス触媒を、標的分子の領域を認識するプローブへコンジュゲートさせる基に対して特異的親和性を有するこれらの連結基は、(a)スペーシング部分、及び(b)ドッキング部分を含んでもよく、ドッキング部分(b)は、触媒プローブによって認識される領域の近傍において標的分子に結合するか、又はフォトレドックス触媒を、標的プローブの領域を認識するプローブにコンジュゲートさせる基に結合し、スペーシング部分(a)は、ドッキング部分を本発明のプロフルオロフォアに共有結合させ、鋳型反応に有利な適切な形状を有する化学スペーサーである。特定の態様では、スペーシング部分は、単純なアルキルリンカー(典型的には約C1~C10アルキル)、又はポリエチレングリコール若しくはポリアミド鎖、典型的には約1~10単位(0.3~3nm)のものであり得る。
【0081】
特定の実施形態では、本発明のプロフルオロフォアのコンジュゲートは、式(II)
[式中、少なくとも1つのR11c、R12b、R13a、R14g、及びR15d基は、以下の式(III):
【0082】
【化11】
(式中、nは、1~10の整数であり、mは、0~2の整数であり、bは、上に定義されるドッキング部分である)
の連結基である]
のものである。
【0083】
さらなる特定の実施形態では、本発明のプロフルオロフォアのコンジュゲートは、実施例に記載されるものである。
【0084】
本発明のプロフルオロフォアの光触媒還元
一態様では、式(I)のプロフルオロフォアは、式(I)のプロフルオロフォアが遷移金属錯体フォトレドックス触媒の近傍にある場合に起こるフォトレドックス触媒作用のための蛍光発生組成物(フルオロフォア前駆体)として使用することができる。
【0085】
特定の態様では、フォトレドックス触媒は、Prier et al., 2013, Chem. Rev., 113, 5322-5363に記載されるものなどの公知の遷移金属から選択することができる。
【0086】
特に、フォトレドックス触媒作用(光触媒還元)は、式(I)のプロフルオロフォアがフォトレドックス触媒の近傍にある場合、還元剤の存在下で、式(I''):
【0087】
【化12】
[式中、Mは、遷移金属(例えば、ルテニウム)であり、nは、1~6の整数(例えば、3)であり、Hetは、少なくとも1つの窒素を含有する置換されていてもよい複素環であり、2つのHet基は、共有結合により結合していてもよく(例えば、ビピリジン(bpy))、又は縮合していてもよい(例えば、フェナトロリン(phenathroline)(Phen))]
の遷移金属錯体(フォトレドックス触媒)によって媒介することができ、前記フォトレドックス触媒は、光による励起の際に式(I)のプロフルオロフォアを含む蛍光発生組成物との単一電子移動プロセスに従事することができる。
【0088】
特定の態様では、Mは、ルテニウム(Ru)である。
【0089】
別の特定の態様では、Hetは、置換されていてもよいビピリジン(bpy)(例えば、ビピリジン又はクロロビピリジン)及びフェナトロリン(Phen)から選択される。
【0090】
さらなる特定の態様では、式(I)のプロフルオロフォアを含む蛍光発生組成物のフォトレドックス触媒作用を引き起こすのに有用なフォトレドックス触媒は、トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)塩化物(Ru(bpy)3Cl2)、ビス(ビピリジン)ルテニウム(II)フェナントロリン(Ru(bpy)2Phen)又は関連する類似体から選択される。
【0091】
特定の態様では、還元剤は、Sadhu et al., 2015, Chem. Commun., 51, 1664-6に記載されるものから選択することができる。
【0092】
さらなる特定の態様では、還元剤は、アスコルビン酸ナトリウム(NaAsc)、アスコルビン酸及び(ビタミンC)、ホスフィン、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、第三級アミン(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はトリエタノールアミン)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)から選択することができる。
【0093】
別のさらなる特定の態様では、還元剤は、アスコルビン酸ナトリウム(NaAsc)である。
【0094】
キナゾリノン沈殿色素の中で、6-クロロ-2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オンは、最も知られているものの1つであるが、いくつかの他のフルオロフォアは、同様に挙動することが知られており(Diwu et al., 1999, Conference on Advances in Fluorescence Sensing Technology IV, SPIE, 3602)、いくつかのさらなるものは、実施例9に説明されるように、同様に挙動することが示されている。したがって、本発明の方法は、特に標的分子の検出に使用するための、目的の様々なQPDの調製において有用である。
【0095】
別の態様では、式(I'):
【0096】
【化13】
[式中、R
1~R
8は、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、例えば、クロロ、シアノ、ニトロ、置換されていてもよいC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいアミノC
1~C
10アルキル、置換されていてもよいC
1~C
10アルコキシから選択される]
のフルオロフォア、又はその任意の互変異性体、異性体、コンジュゲート若しくは塩の調製方法であって、フォトレドックス触媒作用によって、還元剤の存在下で、本明細書に定義される式(I)のプロフルオロフォアを含む蛍光発生組成物を、遷移金属錯体フォトレドックス触媒と反応させるステップを含む、方法が提供される。
【0097】
別の態様では、式(I')[式中、R1、R3~R5、及びR7~R8は、Hである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0098】
別の態様では、式(I')[式中、R2は、Clである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0099】
別の態様では、式(I')[式中、R2は、Hである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0100】
別の態様では、式(I')[式中、R6は、Clである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0101】
別の態様では、式(I')[式中、R6は、Hである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0102】
別の態様では、式(I')[式中、R6は、置換されていてもよいC1~C10アルキルである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0103】
さらなる実施態様では、式(I')[式中、R6は、アルコキシカルボニルC1~C10アルキル、例えば、-CH2C(O)OMeである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0104】
別の態様では、式(I')[式中、R1~R8は、Hである]のフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0105】
別の態様では、フルオロフォア:
【0106】
【化14】
6-クロロ-2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン(8)の調製方法が提供される。
【0107】
別の態様では、以下の群:
【0108】
【化15】
2-(2-ヒドロキシフェニル)キナゾリン-4(3H)-オン(9);
【0109】
【化16】
メチル2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)アセテート(10); 及び
【0110】
【化17】
2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)酢酸(11)
から選択されるフルオロフォアの調製方法が提供される。
【0111】
別の態様では、以下の群:
【0112】
【化18】
メチル2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)アセテート(10); 及び
【0113】
【化19】
2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)酢酸(11)
から選択されるフルオロフォアが提供される。
【0114】
特定の態様では、フォトレドックス触媒作用は、配位子遷移まで金属を励起するのに十分な波長、典型的には約400~約500nm、特に約430~約470nm、特に約450(例えば、Ru(bpy)3又はRu(bpy)2Pheについて)~約460nmの照射によって開始される。
【0115】
特定の態様では、フォトレドックス触媒作用は、約450~455nmの波長の照射によって開始される。
【0116】
特定の実施形態では、フルオロフォアの調製方法は、遷移金属錯体フォトレドックス触媒を担持する標的分子が結合している固体支持体上で行われる。
【0117】
別の特定の実施形態では、フルオロフォアは、本発明によるフルオロフォアの調製方法によって形成され、遷移金属錯体フォトレドックス触媒と、式(I)のプロフルオロフォアを含む蛍光発生組成物との間の反応部位で沈殿する。したがって、触媒は、標的分子(分析物)が存在する固体支持体上の所与の物理的位置で濃縮され、フルオロフォアの形成は、蛍光沈殿物をもたらし、蛍光シグナル強度は、触媒にコンジュゲートした標的DNAの濃度と相関する。
【0118】
別の態様では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子(例えば、小分子、天然及び合成核酸、ペプチド又はタンパク質)の検出方法であって、本発明の方法によって形成された式(I')のフルオロフォアを検出するステップを含む、方法が提供される。
【0119】
式(I')のフルオロフォアの形成の検出は、肉眼で達成することができ、又は約300~約400nm、特に約330~約380nm、特に約360~約370nmの波長の照射によって、例えば、黒色光(例えば、365nmのUVランプ)下で可視化することができる。
【0120】
本発明による方法及び使用
本発明による式(I)のプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートは、式(I)のプロフルオロフォアが遷移金属錯体フォトレドックス触媒の近傍にある場合に起こるフォトレドックス触媒作用のための蛍光発生組成物(フルオロフォア前駆体)として使用することができる。
【0121】
特に、本発明による式(I)のプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートは、サンプル中の少なくとも1つの標的分子(例えば、小分子、天然及び合成核酸、ペプチド又はタンパク質)の検出方法に使用することができ、前記方法は、
(i)前記標的分子がサンプル中に存在する場合に、プローブが前記少なくとも1つの標的分子に結合し、標的分子が係留化基材(例えば、その表面)上に係留されるのに適した条件下で、サンプルを、(1)前記少なくとも1つの標的分子に対する係留化基材、及び(2)前記少なくとも1つの標的分子に対するプローブと接触させるステップであって、前記プローブは、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識されている、ステップ;
(ii)プロフルオロフォアが遷移金属錯体フォトレドックス触媒の近傍に位置する場合に、本発明によるプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートのフォトレドックス触媒作用を誘導するのに適した条件下で、還元剤の存在下で、本発明によるプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートを含む組成物を、前記係留化基材と接触させるステップ;
(iii)前記係留化基材上の式(I')のフルオロフォアの形成を検出するステップであって、前記フルオロフォアの形成は、前記サンプル内の前記少なくとも1つの標的分子の存在を示す、ステップ
を含む。
【0122】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、ステップ(ii)を実施する前に、前記係留化基材を洗浄して、前記係留化基材に結合していない任意の分子を除去するステップ(ia)をさらに含む、方法が提供される。
【0123】
特定の態様では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、前記プロフルオロフォアが、標的核酸(例えば、DNA)配列の配列の一部を(例えば、ワトソン/クリック核酸塩基対合により)特異的に認識するプローブにコンジュゲートしている、本発明のプロフルオロフォアコンジュゲート(「プロフルオロフォアプローブ」)の使用、及び遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識されている、前記少なくとも1つの標的分子に対するプローブ(「触媒プローブ」)の使用によって、前記ステップ(i)及び(ii)は、並行して達成される、方法が提供される。この変形において、触媒プローブがまた標的核酸に結合すると光触媒反応が起こるために、プロフルオロフォアコンジュゲート自体は、標的核酸に対する係留化基材としての役割を果たす。
【0124】
したがって、本発明の別の特定の態様では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子(例えば、小分子、天然及び合成核酸、ペプチド又はタンパク質)の検出方法であって、
(ia)還元剤の存在下で、及び前記標的分子がサンプル中に存在する場合に、プローブが前記少なくとも1つの標的分子に結合するのに適した条件下で、プロフルオロフォアコンジュゲートが遷移金属錯体フォトレドックス触媒の近傍において標的分子上に結合する場合に、本発明によるプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートのフォトレドックス触媒作用を誘導するのに適した条件下で、サンプルを、(1)本発明によるプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートで標識されている、前記少なくとも1つの標的分子に対するプローブ(「プロフルオロフォアプローブ」)、及び(2)遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識されている、前記少なくとも1つの標的分子に対するプローブと接触させるステップ;
(ib)式(I')のフルオロフォアの形成を検出するステップであって、前記フルオロフォアの形成は、前記サンプル内の前記少なくとも1つの標的分子の存在を示す、ステップ
を含む、方法。
【0125】
この特定の変形は、標的核酸が非常に豊富である適用のための支持基材を通しての物理的係留化の必要なしに、及び洗浄ステップの必要なしに、本発明の方法の使用を有利に可能にする。実際、標的核酸がないと、フォトレドックス触媒作用は、遊離触媒プローブとプロフルオロフォアプローブとの間でゆっくり、ランダムに起こり、したがって、標的核酸が存在する場合のフルオロフォアの形成による色の変化が観察可能である。
【0126】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、前記少なくとも1つの標的分子は、核酸配列又は標的核酸配列の一部である、方法が提供される。
【0127】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、前記少なくとも1つの標的分子は、標的DNA配列又は標的DNA配列の一部である、方法が提供される。
【0128】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、前記少なくとも1つの標的分子は、標的RNA配列又は標的RNA配列の一部である、方法が提供される。
【0129】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された、前記少なくとも1つの標的分子に対する前記プローブは、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された、標的核酸配列又は標的核酸配列の一部に対する核酸プローブである、方法が提供され、例えば、それは、ワトソン/クリック核酸塩基対合により標的核酸配列の配列の一部を特異的に認識する核酸「ベルクロ (Velcro)」プローブであってもよく、前記プローブは、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識されている。核酸「ベルクロ」の例は、Briones et al. (2012, Anal. Bioanal. Chem., 402(10): 3071-89)に記載されるように、RNA、DNA、PNA、若しくはLNA、又はそれらの混合物である。遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された、標的核酸配列又は標的核酸配列の一部に対する核酸プローブは、γD-PNA、γL-PNAであり得る。
【0130】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、前記係留化基材は、標的分子を前記基材の表面上に係留することを可能にする薬剤を含有する、試験ストリップなどの基材(例えば、セルロースエステル(ニトロセルロースアセテート、及びセルロースアセテートを含む)、セルロース紙、ろ紙、ティッシュペーパー、又は他の多孔質ポリマーフィルム)である、方法が提供される。例えば、係留化基材は、ストレプトアビジン-アガロースビーズ上に固定された前記標的核酸(例えば、DNA)配列又は前記標的DNA配列の一部に対する「ベルクロ」プローブを含む基材、ストレプトアビジン基を含む基材、一般的な核酸(例えば、DNA)マーカー(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル、及びビオチン)に対する抗体又はナノボディを含む基材であり得る。
【0131】
本発明によるサンプル中の少なくとも1つの標的核酸(例えば、DNA)分子の検出方法の例は、
図1、2、4~9に説明される。
【0132】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、前記ステップ(i)は、(a)標的核酸(例えば、DNA)配列の配列の一部(又は標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列)を(例えば、ワトソン/クリック核酸塩基対合により)特異的に認識し、基材上の標的分子の係留化を確実にするプローブ(「係留化プローブ」)、及び(b)遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された、標的核酸(例えば、DNA)配列の配列の一部(又は標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列)を(例えば、ワトソン/クリック核酸塩基対合により)特異的に認識するプローブ(「触媒プローブ」)などの、少なくとも2つの異なる種類のプローブの使用によって達成される、方法が提供される。
【0133】
一実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、前記ステップ(i)は、同じ標的DNAに特異的であり、かつそれにハイブリダイズする少なくとも2つのプローブの使用によって達成される、方法が提供される。
【0134】
特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、ステップ(i)は、DNA増幅後に、係留化基材上の固定化のための分子及びフォトレドックス触媒を含む標的DNA分子をもたらす、係留化基にコンジュゲートしたプローブ(プライマー)(係留化プローブ)及びフォトレドックス触媒にコンジュゲートした(プライマー)(触媒プローブ)を用いるDNA増幅のステップを含む、方法が提供される。
【0135】
別の特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、係留化プローブは、ステップ(i)の下で係留化基材のストレプトアビジン基に係留することができる標的DNA配列の配列の一部(又は標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列)を(例えば、ワトソン/クリック核酸塩基対合により)特異的に認識するビオチン化DNA配列、又は係留化基材にすでに係留されている標的DNA配列の配列の一部(又は標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列)を(例えば、ワトソン/クリック核酸塩基対合により)特異的に認識するプローブから選択される、方法が提供される。
【0136】
別の特定の実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のための本発明の方法であって、ステップ(ii)は、本発明のプロフルオロフォアのコンジュゲートを含む蛍光発生組成物の使用によって達成され、前記コンジュゲートは、触媒プローブによって認識される領域の近傍において標的分子の領域を特異的に認識する核酸(例えば、DNA)配列、又は触媒プローブ内の、標的分子の領域を特異的に認識するプローブに触媒をコンジュゲートさせるリンカーを特異的に認識する核酸(例えば、DNA)配列を含む、方法が提供される。
【0137】
プローブ分子
一態様では、本発明は、特定の核酸標的配列を認識し、それに結合するプローブを提供する。
【0138】
一態様では、本発明は、式(I)の化合物にコンジュゲートした、DNAミニバーコードなどの特定の標的DNA領域、又は別のプローブの核酸(RNA、DNA、PNA、又はLNA)を認識し、それに結合するDNAプローブを含むコンジュゲートを提供する。
【0139】
いくつかの例では、光触媒反応は、触媒されたプロフルオロフォア変換を鋳型化するための核酸オーバーハングを用いてさらに加速することができ、アッセイは、特定の固定化配列(バーコード)を割り当てることによって多重化することができる。オーバーハング配列と分析物結合配列との間のクロストークを回避するために、PNAの2つの異なる立体化学が使用される(DNA又はRNA標的化配列についてはL-ガンマPNA、並びに鋳型化反応及び固定化についてはR-ガンマPNA)。そのような手順は、実施例7に説明されている。
【0140】
本発明の方法の特定の利点は、標準的なDNA検出技術とは対照的に、実験室設定、並びにしたがって任意の機器、毒性試薬、若しくはバイオインフォマティクス分析のような複雑な手順の使用を必要としないことである。したがって、本発明は、DNA検出試験についての事前知識なしに誰でも実施及び解釈することができる費用対効果のよい分析であり、携帯可能で、使い捨て可能であり、短時間(数分又は数秒)のうちに実施することができる。したがって、本発明は、標的分子の検出、特に、複雑なサンプル混合物、例えば、食品(例えば、アレルギー成分の検出のため)、有機流体(例えば、ウイルス又は細菌のポイントオブケア(point-of-care)診断のため)、環境サンプル(例えば、生物兵器防御又は衛生試験のため)、及び他の方法では同定が困難なサンプル(例えば、絶滅の危機に瀕している野生生物の標本)中の特定の標的DNAの検出に特に有用である。本発明はまた、天然に存在する又は人工的に導入されたDNAがトレーサー又はウォーターマークとして使用される製品(例えば、織物、時計、タバコフィルターなど)のためのポイントオブニードの認証ツールを提供できるので、トレーサビリティ目的に有用である。
【0141】
試験デバイス
本発明の方法における使用に特に有用な試験デバイスは、例えばUS 5,798,273に記載されるような、毛管現象による反応物の移動を可能にし、本発明の標的分子又はプローブへの結合を可能にする係留化基材を含む。
【0142】
一態様では、試験デバイスは、セルロースエステル(ニトロセルロースアセテート、及びセルロースアセテートを含む)、セルロース紙、ろ紙、ティッシュペーパー、又は多孔質ポリマーフィルムから選択される材料を含む係留化基材を含む。
【0143】
別の態様では、係留化基材は、その表面に、本発明の標的分子又はプローブへの結合を可能にする捕捉プローブ(例えば、ストレプトアビジン又は係留されたプローブ)を含む。
【0144】
キット
本発明の別の態様は、サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のためのキットであって、式(I)のプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートと、任意選択で、還元剤、及び前記標的分子の検出のためのさらなるプローブから選択される少なくとも1つの薬剤とを含む、キットを提供する。特定の態様では、キットは、本発明による試験デバイスをさらに含む。
【0145】
より特定の態様では、本発明によるキットは、標的分子に対して特異的親和性を有する少なくとも1つの触媒プローブ及び1つの係留化プローブ(例えば、凍結乾燥プローブ)、還元剤、及び本発明によるプロフルオロフォアを、任意選択で、増幅反応を実施するための少なくとも1つの容器及び/又はサンプリングデバイスと一緒に含む。
【0146】
より特定の態様では、本発明によるキットは、標的分子に対して特異的親和性を有する少なくとも1つの触媒プローブ及び1つの係留化プローブ(例えば、凍結乾燥プローブ)、還元剤、及び本発明によるプロフルオロフォアを、任意選択で、陽性検出を対照として使用できる少なくとも1つの標的分子と一緒に含む。
【0147】
別のさらなる態様では、標的分子に対して特異的親和性を有する少なくとも1つの触媒プローブ及び1つの係留化プローブ(例えば、凍結乾燥プローブ)、並びに固定されたストレプトアビジンでできている検出ライン、及び本発明によるプロフルオロフォアと還元剤との混合物を含有する底部ポーチを有するストリップデバイスを含む、本発明によるキットが提供される。
【実施例】
【0148】
以下の略語は、それぞれ以下の定義を指す:
bp(塩基対)、COI(シトクロムcオキシダーゼ)、DDQ(2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン)、DIAD(ジイソプロピルアゾジカルボキシレート)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、dsDNA(二本鎖DNA)、EtOH(エタノール)、LED(発光ダイオード)、LNA(ロックド核酸)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、m-CPBA(メタ-クロロペルオキシ安息香酸)、PNA(ペプチド核酸)、TsOH(トシル酸)、MS(ESI)(質量分析(エレクトロスプレーイオン化))、NaAsc(アスコルビン酸ナトリウム)、NMR(核磁気共鳴)、QR(商標)コード(クイックレスポンスコード)、RP-HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)、Ru(bpy)3Cl2(トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)塩化物)、Ru(bpy)2Phen(ビス(ビピリジン)ルテニウム(II)フェナントロリン(Ru(bpy)2Phen)。
【0149】
実施例1: 本発明のプロフルオロフォアの合成
本発明のプロフルオロフォアは、一般スキーム1に従って合成することができる。以下のプロフルオロフォアは、スキーム2[Rは、H(中間体(iva)、(va)、及び化合物(1))及びN3(中間体(ivb)、(vb)、及び化合物(2))から選択される]の以下の手順に従って合成されている。
【0150】
ステップ1-中間体(iiia)の形成
5-クロロサリチルアルデヒド(491mg、3.13mmol)(中間体(ia))及び炭酸カリウム(K2CO3、1306mg、9.4mmol)を、8mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。混合物を、80℃に加熱し、4-(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩(中間体(iia))(800mg、3.13mmol)を、固体として一部ずつ加えた。得られた混合物を、6時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製して、365mgの所望の中間生成物(iii)を黄色固体として得た。収率: 47%。1H NMR(核磁気共鳴)(400 MHz, CDCl3) δ: 10.54 (s, 1H), 8.69 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 7.86 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.51 (dd, J = 8.9, 2.8 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 6.96 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 5.24 (s, 2H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ: 187.82, 158.64, 150.27, 144.64, 135.41, 128.51, 127.29, 126.05, 121.28, 114.38, 68.97. 質量分析(エレクトロスプレーイオン化)(MS (ESI)): C13H10ClNO2の計算値: 247.04, 実測値: 248.01 [M+H]+.
【0151】
【0152】
ステップ2a-中間体(va)の形成
中間体(iiia)(279mg、1.13mmol)を、不活性雰囲気下で、2.2mlのDMSO中の1-ヨードプロパン(中間体(iva))(3.78g、18mmol)の溶液に混合した。溶液を室温で一晩撹拌した。粗生成物を、ジエチルエーテル中で沈殿させ、遠心分離し、3回洗浄して、中間生成物(va)を褐色油として得た。収率: 90% 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 9.09 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.83 - 7.70 (m, 1H), 7.35 (dd, J = 8.6, 0.7 Hz, 1H), 5.68 (s, 1H), 4.59 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 1.96 (q, J = 7.3 Hz, 1H), 0.90 (t, J = 7.4 Hz, 2H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ: 189.03, 158.38, 156.33, 145.07, 136.07, 128.38, 126.40, 126.22, 125.55, 116.59, 68.33, 62.19, 24.57, 10.70. MS (ESI): C16H17ClNO2
+の計算値: 290.09, 実測値: 290.17 [M]+.
【0153】
ステップ2b-中間体(vb)の形成
中間生成物(vb)は、中間体(va)について記載したように、中間体(iiia)(365mg、1.47mmol)及び1-アジド-3-ヨードプロパン(中間体(ivb))(1.58g、7mmol)から調製した。収率: 75%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 10.48 (s, 0H), 9.11 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 8.30 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.80 - 7.74 (m, 1H), 7.34 (d, J = 8.8 Hz, 0H), 5.69 (s, 1H), 4.69 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 3.50 (t, J = 6.5 Hz, 1H), 2.32 - 2.13 (m, 1H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ: 189.01, 158.36, 156.47, 145.31, 136.05, 128.36, 126.40, 126.22, 125.57, 116.61, 68.33, 58.65, 48.07, 30.13. MS (ESI): C16H16ClN4O2
+の計算値: 331.10, 実測値: 331.10 [M]+.
【0154】
ステップ3a-本発明の化合物(1)の形成
化合物(1)(114.5mg、0.27mmol)、2-アミノ-5-クロロベンズアミド(中間体(via))(49mg、0.29mmol)及びTsOH・H2O(11mg、0.06mmol)を、3mlの乾燥エタノール(EtOH)に溶解し、混合物を3時間還流した。次いで、溶液を0℃に冷却し、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)(80mg、0.35mmol)を加え、溶液を室温に温めた。2時間後、固体を遠心分離により回収し、冷エタノールで3回洗浄した。得られたゴム状褐色沈殿物を、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により精製して、化合物(1)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 12.69 (s, 1H), 9.07 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 8.17 - 8.09 (m, 3H), 7.91 (dd, J = 8.7, 2.5 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.66 (dd, J = 8.9, 2.7 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 5.59 (s, 2H), 4.54 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.92 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 0.87 (t, J = 7.3 Hz, 3H).13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ: 156.75, 154.50, 151.73, 144.99, 135.18, 132.33, 131.69, 130.84, 130.22, 129.74, 125.81, 125.36, 125.28, 125.24, 122.95, 115.59, 68.48, 62.14, 24.53, 10.66. MS (ESI): C23H20Cl2N3O2
+の計算値: 440.09, 実測値: 440.28 [M]+.
【0155】
ステップ3b-本発明の化合物(2)の形成
化合物(2)を、化合物(1)について記載したように、化合物(va)(580mg、1.32mmol)及び2-アミノ-5-クロロベンズアミド(270mg、1.4mmol)から調製した。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 12.71 (s, 1H), 9.08 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 8.17 - 8.09 (m, 3H), 7.92 (dd, J = 8.7, 2.5 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.67 (dd, J = 8.9, 2.7 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 5.59 (s, 2H), 4.64 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.47 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.19 (p, J = 6.8 Hz, 2H). 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ: 160.43, 157.72, 157.48, 156.41, 154.00, 151.24, 147.57, 144.76, 134.71, 131.82, 131.22, 130.35, 129.76, 125.33, 124.88, 124.81, 124.77, 122.48, 115.08, 67.97, 58.13, 47.57, 29.60. MS (ESI): C23H19Cl2N6O2
+の計算値: 481.09, 実測値: 481.31 [M]+.
【0156】
ステップ2でヨードプロパンではなくヨードブタンを使用して、同じ手順に従って(iiia)から化合物(3)を調製した。
【0157】
本発明のさらなるプロフルオロフォアを、以下のように一般スキーム3に従って、中間体(iia)が中間体(iib)によって置き換えられ、これが式(i)のアルデヒドと反応して、中間体(iii)を調製する、一般スキーム1に従って合成した。
【0158】
ステップ1-中間体(iib1)の形成
【0159】
【0160】
4-ピリジンカルボキシアルデヒド(940μL、10mmol)を、ジエチルエーテル中の臭化エチルマグネシウムの冷溶液(0.3Mの最終濃度、12mmol)に滴下した。
【0161】
添加後、冷却浴を取り外し、溶液を室温で1時間撹拌した。反応を水でクエンチし、粗生成物をシリカに吸収させた。
【0162】
シリカゲル上で精製して、850mgの中間生成物(iib1)を黄色粘性油として得た。収率: 62%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 8.56 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 4.66 (t, J = 6.3 Hz, 1H), 3.50 (s, 1H), 1.79 (qd, J = 7.4, 6.2 Hz, 2H), 0.97 (t, J = 7.4 Hz, 3H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ: 154.00, 149.45, 121.04, 74.03, 31.74, 9.72.
【0163】
ステップ2-中間体(iiib)の形成
【0164】
【0165】
5-クロロサリチルアルデヒド(中間体(ia))(200mg、1.27mmol)、1-(ピリジン-4-イル)プロパン-1-オール(上で得られた中間体(iib1))(350mg、2.54mmol)、及びPPh3(732mg、2.8mmol)を、20mlのジクロロメタンに溶解し、氷-塩浴で-20℃に冷却した。5mLのジクロロメタン中のDIAD(550μL、2.8mmol)の溶液を滴下した。添加すると、反応を室温まで温め、3時間続けた。
【0166】
溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルに吸収させた。フラッシュクロマトグラフィー精製により、175mgの生成物(iiib)を黄色固体として得た。収率: 50%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 10.49 (s, 1H), 8.71 (d, J = 6.2 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.55 (d, J = 9 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 6.2 Hz, 2H), 4.63 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 1.77 (qd, J = 7.4, 6.4 Hz, 2H), 1.03 (t, J = 7.4 Hz, 3H).13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 188.62, 159.61, 149.97, 145.74, 134.24, 130.51, 126.80, 125.00, 120.58, 114.62, 75.97, 32.51, 9.82.
【0167】
ステップ3-中間体(vc)の形成
【0168】
【0169】
中間体(va)について示したように、中間体(iiib)のアルキル化を行い、中間体(vc)を得た。収率: 92%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 10.45 (s, 1H), 9.08 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 7.84 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.56 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 5.74 (s, 2H), 4,70 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.59 (t, J = 6.2 Hz, 1H), 2.03 - 1.98 (m, 2H), 0.96 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.4 Hz, 3H). 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ: 189.25, 158.42, 156.24, 144.86, 136.54, 128.91, 125.57, 124.99, 121.52, 112.90, 75.40, 68.05, 61.79, 31.07, 23.57, 11.03.
【0170】
ステップ1-中間体(iic)の形成
【0171】
【0172】
2,6-ルチジン(2mL、17.3mmol)を10mLのクロロホルムに溶解し、溶液を0℃に冷却した。mCPBA(3g、17.4mmol)を、撹拌した溶液に一部ずつ加えた。溶液を0℃で1時間保持し、ゆっくり室温まで温め、さらに9時間撹拌し続けた。固体K2CO3(2.4g、70mmol)を溶液に加え、さらに30分間撹拌した。固体をろ過により除去し、ろ液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、1.7gの2,6-ルチジン-N-オキシドを透明な油として得た。収率: 80%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 7.21(d, J = 6.3 Hz, 2H), 7.08 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 2.45 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ: 156.21, 150.45, 118.04, 26.35.
【0173】
【0174】
2,6-ルチジン-N-オキシド(1.5g、12.2mmol)を、窒素雰囲気下でシュレンク容器に導入した。容器を0℃に冷却し、硫酸ジメチル(1.15mL、12.2mmol)をシリンジを介して5分間かけて導入した。次いで、反応を80℃に加熱し、3時間撹拌した。粗製混合物を乾燥するまで濃縮し、残渣を乾燥アセトンから再結晶して、2.4gの生成物を無色針状結晶として得た。収率: 80%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 8.28 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 4.45 (s, 3H), 3.46 (s, 3H), 2.66 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ: 153.28, 148.56, 128.41, 69.65, 54.46, 22.64.
【0175】
【0176】
ルチジン-N-メトキシド(2g、8mmol)を、25mLのメタノールに溶解し、加熱還流した。この混合物に、3mLの水中の過硫酸アンモニウム(456mg、4mmol)の溶液を加えた。還流を1時間続けた。粗生成物を室温に冷却し、10%NaOHを用いてpHを7に調整した。粗生成物をろ過し、乾燥するまで蒸発させた。最終化合物をシリカゲルで精製して、440mgの所望の中間体(iic)を白色固体として得た。収率: 40%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.88 (s, 2H), 4.58 (s, 2H), 2.41 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ: 157.78, 150.71, 117.80, 63.43, 24.27.
【0177】
ステップ2-中間体(iiic)の形成
【0178】
【0179】
式(ia)の5-クロロサリチルアルデヒド(200mg、1.27mmol)、及び上記のようにして得られた中間体(iic)である(2,6-ジメチルピリジン-4-イル)メタノール(350mg、2.54mmol)から出発して、中間体(iiic)を上記のように調製した。黄色固体、144mg。収率: 40%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 10.42 (s, 1H), 7.82 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 7.50 (dd, J = 8.9, 2.9 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 6.90 (s, 2H), 4.45 (s, 2H), 2.34 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ: 188.12, 156.80, 149.71, 145.67, 134.55, 127.83, 127.31, 126.35, 120.67, 118.30, 64.03, 24.83.
【0180】
ステップ3-中間体(vd)の形成
【0181】
【0182】
中間体(va)について示したように、上で得られた中間体(iiic)のアルキル化を行い、中間体(vd)を得た。収率: 定量的。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 10.40 (s, 1H), 8.10 (s, 2H) 7.93 (d, J = 2.7 Hz, 2H), 7.81 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.52 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 5.65 (s, 2H), 4.62 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.35 (s, 6H), 2.00 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 0.98 (t, J = 7.4 Hz, 3H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ: 189.42, 157.30, 149.51, 146.67, 134.35, 128.06, 127.42, 126.88, 120.15, 119.30, 67.54, 65.24, 26.02, 25.33, 12.11.
【0183】
ステップ1-中間体(iiid)の形成
【0184】
【0185】
435μL(4.1mmol)のサリチルアルデヒド((ib))、1.5gのピリジン誘導体(iic)(6.15mmol)、及び1.7gのK2CO3(12.3mmol)(40mLのDMF中)から出発して、化合物(iiia)と同様にして中間体(iiid)の合成を行った。収率: 55%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 10.61 (s, 1H), 8.68 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.91 (dd, J = 7.7, 1.8 Hz, 1H), 7.56 (ddd, J = 8.5, 7.3, 1.8 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 7.11 (td, J = 7.5, 0.9 Hz, 1H), 7.00 (td, J = 8.4, 0.8 Hz, 1H), 5.25 (s, 2H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ: 189.22, 160.22, 150.24, 145.13, 135.93, 129.09, 125.24, 121.58, 121.27, 112.71, 68.58.
【0186】
ステップ2-中間体(ve)の形成
中間体(va)について示したように、上で得られた中間体(iiid)(300mg)のアルキル化を行い、中間体(ve)を黄色~褐色の固体として得た。収率: 90%。
【0187】
【0188】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 10.57 (s, 1H), 9.11 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 8.31 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 7.83 (dd, J = 7.7, 1.8 Hz, 1H), 7.73 (ddd, J = 8.5, 7.3, 1.9 Hz, 1H), 7.31 (dd, J = 8.5, 1.0 Hz, 1H), 7.27 - 7.15 (m, 1H), 5.69 (s, 2H), 4.61 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.03 - 1.91 (m, 2H), 0.92 (t, J = 7.4 Hz, 3H). 13C NMR (101 MHz, DMSO) δ: 190.01, 159.71, 156.72, 145.06, 136.87, 129.31, 125.57, 125.09, 122.22, 114.22, 67.95, 62.19, 24.57, 10.71.
【0189】
対応するアルデヒド中間体(vc)、(vd)、(ve)から、化合物(1)と同様にして、それらを上に定義される式(via)又は
【0190】
【化31】
のジアミンと反応させて、それぞれプロフルオロフォア(5)、(6)、及び(7)(これらは化合物(1)~(4)と同様に試験し、挙動した)をもたらし、式(I)の本発明のさらなるプロフルオロフォアを得た。
【0191】
【0192】
111mgのアルデヒド(0.29mmol)から化合物(6)の合成を行い、白色固体を得た。収率: 60% 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 9.07 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 8.21 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 8.14 (s, 1H), 7.64 (dd, J = 7.7, 1.6 Hz, 1H), 7.53 (dd, J = 7.5, 1.7 Hz, 1H), 7.36 (ddd, J = 8.8, 7.4, 1.7 Hz, 1H), 7.26 (ddd, J = 8.2, 7.2, 1.7 Hz, 1H), 7.11 - 7.02 (m, 2H), 6.78 (dd, J = 8.2, 1.0 Hz, 1H), 6.70 (ddd, J = 8.0, 7.2, 1.1 Hz, 1H), 6.26 (s, 1H), 5.54 (s, 1H), 4.56 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.01 - 1.88 (m, 2H), 0.90 (t, J = 7.4 Hz, 3H).
13C NMR (101 MHz, DMSO-d6): δ 164.24, 157.40, 155.01, 148.55, 146.32, 144.93, 138.00, 133.80, 130.25, 129.79, 128.49, 125.96, 121.81, 117.61, 115.18, 114.91, 112.91, 67.78, 62.16, 24.54, 10.72.
【0193】
実施例2: 本発明による方法で使用するための標的分子に対するプローブの調製
本発明による方法では、対応するプロフルオロフォアがサンプル中の標的分子に結合したフォトレドックス触媒の近傍にあると、不溶性フルオロフォアの形成の検出によって、サンプル中の標的分子の検出が達成され、それにより、前記標的分子の検出及び定量化が可能になる。
【0194】
プローブ
標的分子に結合すべきフォトレドックス触媒を達成するために、前記フォトレドックス触媒で標識されたプローブは、標的分子に対して特異的親和性を有する必要がある。
【0195】
標的分子を、光反応が起こり得る係留化基材に結合させるために、係留化基材は、標的分子(例えば、標的分子に対して特異的親和性を有するプローブを含む基材)又は標的分子に結合した標識(標的分子に対して特異的親和性を有するプローブにコンジュゲートしたビオチン基と反応することができるストレプトアビジン基)に対して特異的親和性を有するべきである。
【0196】
標的分子の近傍においてプロフルオロフォアをより効率的に得るために、実施例7に記載されるように、本発明のプロフルオロフォアはまた、標的分子に対して特異的親和性を有する部分にコンジュゲートされ、「ベルクロ」核酸配列として使用することができる。この場合、特定の実施形態では、フォトレドックス触媒標識プローブ及びプロフルオロフォア標識プローブは、標的分子の配列上の近傍に位置する標的配列の部分を認識する。
【0197】
したがって、それらの部分は、例えば、標的分子配列の少なくとも一部を特異的に認識する4つの天然塩基A、T、C、及びGに限定されない、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、又はDNA、RNA、PNA、LNAの任意の混合物などの核酸プローブであり得る。
【0198】
DNAプローブは、標的分子に対して特異的親和性を有する任意の公知の短い配列であり得る。食品、特に肉の分野では、別の種類の肉からの潜在的な汚染物質を検出するために、1種の肉に特異的な短いDNAプローブを見出すことは困難であり得る。この分野における特異的な短いDNAプローブの同定の実例として、ミトコンドリア遺伝子COI(シトクロムcオキシダーゼ)は、その急速な進化のために、動物の標準DNAバーコードとして使用されるので、選択された。同時に、ミトコンドリアは、多数存在し(200~1000コピー/細胞)、したがって、ゲノムバックグラウンドと比較して標的DNAの存在量を増加させる。潜在的実験室汚染物質(ヒト、マウス、ラット)と共に、肉の生産に一般的に使用される12種(ニワトリ、ホロホロチョウ、ロバ、ウマ、ラム、ヒトコブラクダ、ラクダ、牛肉、豚肉、シチメンチョウ、サル、及びヤギ)を含む15種の動物のミトコンドリアDNAを、NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)データベースからダウンロードし、バーコード領域を、Ivanova et al., 2012, Methods Mol. Biol., 858: 153-82に記載されるように同定した。配列をアラインすることによって、最も相違する1つの74bpの豚肉DNA領域を、1種の生物に特異的に存在すると同定することができ(
図2)、豚肉に特異的なDNAプローブを、これに基づいて設計することができた。
【0199】
DNAと比較したPNAプローブは、以下の利点を有する: i)単一のミスマッチを有するRNA又はDNA分子に弱く結合し、したがって、選択性を向上させる; ii)培地中の塩の濃度とは無関係に標的RNA/DNA分子に結合し、そのため、反応中の塩濃度を最小にして選択性を向上させることができる; iii)細胞分解酵素に耐性であり、より少ないプローブの使用を可能にし、したがって、オフターゲットハイブリダイゼーションを最小にすることを可能にする。PNAと比較したLNAは、以下の利点を有する: i)LNA-DNAキメラは、ホスホロアミダイト化学に基づくので、実験室で容易に合成することができ、これにより、ヌクレオチドの数を最小にしながらプローブの融解温度を上昇させることが可能になる。一塩基多型を識別するためには、最小限の数のヌクレオチドが重要である; ii)PNAと比較した、より高い水溶解性。
【0200】
DNAプローブは、低コストで合成し、紙などの支持体上に潜在的に印刷し、抗体ベースのアッセイ(すなわち、妊娠検査)のために以前に開発された標準ラテラルフロー技術に従って使用することができる。
【0201】
カップリング方法
フォトレドックス触媒へのプローブ、特に核酸プローブのカップリングは、Sadhu et al., 2013, 上記に記載される方法によって、又は以下に記載されるように、調製することができる。
【0202】
さらに、本発明のプロフルオロフォアへのプローブ、特に核酸プローブのカップリングは、Sadhu et al., 2013, 上記に記載される方法によって、又は以下に記載されるように、調製することができる。
【0203】
例えば、本発明による方法で使用するためのプローブは、PNAと別のPNAなどの2つの核酸配列間のリンカー、例えば、プローブの柔軟性及び水溶性を改善するためのポリエチレングリコール(PEG)部分を含むことができる。
【0204】
特定の態様では、式(II)のプロフルオロフォアコンジュゲートは、標準的なカップリング反応により、式(I)のプロフルオロフォアを、本明細書に定義されるスペーシング部分(a)及び(b)ドッキング部分とカップリングさせ、以下に示されるように式(IIa)又は(IIb)の4マーγD-PNAプロフルオロフォアコンジュゲートをもたらすことによって調製することができる。自動合成を、Sadhu et al., 2013, Chemistry-a European Journal, 19, 8182-8189で以前に報告されたように実施し、プロフルオロフォア(2)を、[3+2]環化付加を介して樹脂上でカップリングした。化合物(2)を、50μLのNMPに溶解し、0.1M溶液を得た。2mgのTBTAを、固体として加えた。CuSO4の0.4M溶液(水中)15μLを加え、続いて、アスコルビン酸の2M水溶液50μLを加えた。黄色溶液を、樹脂上に移し、一晩反応させた。最終化合物を、逆相HPLCにより精製した。式(IIa)のPNA-プロフルオロフォア(式(II)のコンジュゲート[式中、R13aは、式(III)の連結基であり、mは、0であり、R11c、R12b、R14g、及びR15dは、存在しない])は、MW計算値(C78H91Cl2N32O19
+): 1851.69Daを有する。LCMS m/z実測値: 1234.58 [2M+H]3+, 926.42 [M+H]2+, 618.08 [M+2H]3+. MALDI-TOF m/z実測値: 1545.563 [M-QPD]+.
【0205】
【0206】
式(IIb)のPNA-PEG-プロフルオロフォア(式(II)のコンジュゲート[式中、R13aは、式(III)の連結基であり、mは、1であり、nは、2であり、R11c、R12b、R14g、及びR15dは、存在しない])は、MW計算値(C84H102Cl2N33O22
+): 1996.85Daを有する。LCMS m/z実測値: 1330.83 [2M+H]3+, 999.08 [M+H]2+, 666.42 [M+2H]3+. MALDI-TOF m/z実測値: 1690.226 [M-QPD]+.
【0207】
【0208】
本発明の文脈において記載されるような鋳型化反応において化合物は試験され、機能的であることが示された。
【0209】
実施例3: 試験ストリップ上で本発明のプロフルオロフォアを用いたサンプル中の標的DNAの検出のためのアッセイ
光化学反応によりサンプル中のDNA標的分子を検出するための本発明の検出方法の一般原理を、
図1に示されるように試験した。
【0210】
化合物(1)を純水に溶解し、2mMに希釈した。係留化プローブ(標的分子を認識するビオチン化PNA(
図1Aa))及び触媒プローブ(遷移金属錯体フォトレドックス触媒Ru(bpy)
3Cl
2にコンジュゲートした標的分子を認識するRu-PNA(
図1Ab))を、10nM濃度で使用した。PNAプローブを、PBS 1×に溶解して、200nM溶液を得た。アスコルビン酸ナトリウム(NaAsc、還元剤)を水に溶解して、30mM溶液を得た。PNAプローブ及び還元剤を、それぞれ30μLの等体積で混合し、90μLのワーキング溶液を得た。
【0211】
ステップ(i):
各PNAプローブに相補的な領域を含む標的DNA分子の様々な濃度(60μlのリン酸緩衝生理食塩水pH7.4中、50nM、100nM、250nM、500nM、1000nM)を含有するサンプル(
図1Ac)を、上記のように調製したPNAプローブ及び還元剤を含有する混合物と接触させ、プローブが標的DNAに結合して、ハイブリダイゼーションにより、標的DNA分子がビオチン及びルテニウムの両方で標識されている複合体が生じる。さらに、サンプルを、固定されたストレプトアビジンを含有するラテラルフローディップスティックの形態の係留化基材(
図1Ad)と接触させて、試験ストリップ上を溶液が流れる間に、形成された複合体が、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用により、ディップスティックの表面上に捕捉される(
図1Af)。
【0212】
ステップ(ii)
ディップスティックを、サンプル溶液中に存在する本発明のプロフルオロフォアと接触させ、455nmのLEDランプを用いて5分間照射し、ディップスティック表面に結合したフォトレドックス触媒の位置でプロフルオロフォアとの間の光化学反応を促進し、化学結合切断をもたらし(
図1Ag)、ディップスティック上に沈殿し、緑色蛍光帯を形成する対応するフルオロフォアの形成をもたらす(
図1Ah)。
【0213】
ステップ(iii)
緑色蛍光フルオロフォアは、黒色光(365nmのUVランプ)下で係留化ディップスティック上で可視化することができ、標的DNAの濃度をそこから導き出すことができる。陰性対照は、光触媒標識PNAプローブの非存在下で実行する(
図1B)。
【0214】
実施例4: ブタ起源のDNAの検出のためのアッセイ
本発明の方法を、2つのブタDNA断片に特異的なDNAプローブを用いて、サンプル中の豚肉起源の標的DNA配列を検出するその能力について試験した。
【0215】
プローブ分子
実施例2で同定された豚肉DNA特異的領域(CAGCCCGGAACCCTACTTGGCGATGATCAAATCTATAATG、配列番号3)に特異的な2つの異なる核酸配列を含む2つの「ベルクロ」プローブ。プローブ1(L'と称される)を、ストレプトアビジン-アガロースビーズの形態の係留化基材上に固定されたアンカーキャプチャーとして使用し、これは、標的DNA配列の一部(部分L)にハイブリダイズする配列番号1(CTTGGGATGAAC)の核酸配列を含む。プローブ2(R'と称される)を、標的DNAの一部(部分R)にハイブリダイズする配列番号2(CTACTAGTTTAGAT)の核酸を含む触媒プローブとして使用し、これは、実施例2に記載されるように、触媒(Ru(bpy)2Phen)にコンジュゲートさせた。
【0216】
標的豚肉ミトコンドリアDNA、プローブ1、プローブ2、及びアスコルビン酸(還元剤)の化学量論的(1:1:1)濃度をロードしたストレプトアビジン-アガロースビーズのタイトレーション(60μlのリン酸緩衝生理食塩水pH7.4中、50nM、100nM、250nM、500nM、1000nM)を、本発明によるプロフルオロフォア(化合物1)を用いて本発明による方法で試験した。
【0217】
第1のステップにおいて、サンプル溶液、係留化プローブを含む係留化基材(ビーズ)、及び触媒プローブを一緒に混合して、DNAプローブ(L'及びR')を標的DNAのそれぞれのL及びR部分に結合させ(
図2A)、
図2に示されるように、固定されたプローブ-DNAコンジュゲートによりビーズの表面上に係留された標的分子をもたらした。次いで、ビーズをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、ビーズを100μMの本発明のプロフルオロフォア及び100mMのアスコルビン酸(還元剤)を含有する50μlのPBSに再懸濁する。プロフルオロフォアを、プローブR'にコンジュゲートした触媒の存在下で10分以内還元し、その結果、溶液中に蛍光シグナルが生じた(
図2B)。肉眼での蛍光シグナル検出の限界は、豚肉0.1mgに対応する100nMのミトコンドリアDNAを含むサンプルについて達成されることが見出された。
【0218】
結論として、本発明による方法に基づくアッセイは、実験室機器、毒性試薬、又は複雑なバイオインフォマティクス分析を使用する必要なく、蛍光シグナルにより、サンプル中の豚肉DNA断片の存在を迅速に(約10分以内に)検出するための効率的なツールである。
【0219】
実施例5: ブタ起源のDNA検出に対する選択性の向上
サンプル中のこのDNAの検出に使用されるためには、プローブは、標的DNA分子に対して特異的、選択的かつ高感度でなければならない。係留プローブ及び触媒プローブ上で、典型的には2又は3ヌクレオチドのみが特異的である。したがって、これらのわずかな違いを考慮すると、これまでに開発されたハイブリダイゼーション技術は、選択的ではない可能性があり、これは、プローブが豚肉DNAに特異的であり得るが、ウシDNAにも結合する可能性があり、その結果、使用したアッセイの偽陽性結果が生じることを意味する。
【0220】
実施例4に記載されるアッセイの選択性を改善するために、ワトソン/クリック核酸塩基対合により、
図3の豚肉DNAミニバーコードに相補的であるように設計されている化学的PNAプローブを使用した。プローブの選択性は、(実施例4に記載されるように)短い配列の使用によりさらに向上した。これらの短い配列は、より長いプローブよりもミスマッチに対してより耐性があるからである。したがって、1つの長いプローブの代わりに、上記のように調製した3つの短いPNAプローブを用いてアッセイを設計し、このアッセイでは、ブタ起源の標的DNAは、
図4に示されるように、3つのPNAプローブが同じDNA分子上でハイブリダイズする場合にのみ検出できる。豚肉DNAに特異的な第1の係留化プローブ(CGCGACTTGATCCAG、配列番号6)を用いて、標的豚肉DNAを試験ストリップ上に固定し、係留された標的DNAと称される固定された豚肉標的DNAを有する係留化基材をもたらす(
図4A)。第2及び第3のDNAプローブを、係留された標的DNAを接触させるために使用し、第2のプローブ(CTTGGGATGAAC、配列番号1)は、核酸塩基対合により係留された豚肉標的DNAの領域を特異的に認識するPNA核酸配列、及び遷移金属錯体フォトレドックス触媒(Cat.)を含む「触媒プローブ」であり、第3のプローブ(CTACTAGTTTAGAT、配列番号2)は、本発明のプロフルオロフォア(Pro-Fl.)にコンジュゲートした、(第2のプローブによって認識される領域とは異なる)核酸塩基対合により係留された豚肉標的DNAの領域を特異的に認識するPNA核酸配列を含む(
図4B)。触媒プローブ、及びプロフルオロフォアを担持するプローブが、光触媒作用(還元媒体及び光励起)に適した条件下で、係留された標的DNA分子上にハイブリダイズする場合、標的DNA分子のサイズが小さいために、触媒及びプロフルオロフォアは、プロフルオロフォアの光触媒作用及びフルオロフォア(Fl.)の放出を開始するのに十分近傍に維持され(
図4C)、このフルオロフォアは、次いで、肉眼で検出することができる。
【0221】
上記プローブの使用により、20分後に、牛肉ベースの製品中の少なくとも1%w/wの豚肉を報告することが可能になった。これは、規制機関が通常、汚染/誤表示について陽性であると考える閾値である。
【0222】
実施例6: 標的DNAの検出及び多重化
本発明の方法において使用される、可能性のある構築物のさらなる例を以下に提供する。
【0223】
a)DNA増幅後の標的DNAの検出
標的核酸の濃度が本方法の感度より低い場合があり得る。これは、食品の安全性(すなわち、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)、リステリア(Lysteria)のような望ましくない細菌の検出)、又は微量の豚肉DNAが望ましくないハラール/コーシャ(Halal/Kosher)認証の枠組みに当てはまり得る。本方法が高感度を必要とする場合、特異的合成によって標的核酸の濃度を増加させることが可能である。第1のステップでは、標的dsDNA(すなわち、豚肉)を、この標的DNAの異なる領域(F1'及びR1')に特異的なプライマー(F1及びR1)を用いて増幅する。1つのプライマー(F1)は、ビオチンとコンジュゲートした、標的DNAの領域F1'に特異的なDNAプローブを含む係留化プローブであり、第2のプライマー(R1)は、フォトレドックス触媒(Ru bpy
2 Phen)とコンジュゲートした、標的DNAの領域R1'に特異的なDNAプローブを含む触媒プローブである。増幅を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は任意の公知の等温反応によって行う。標的核酸がRNAベース(すなわち、A型肝炎ウイルス)である場合、逆転写活性を有するポリメラーゼが好ましいかもしれない。増幅の終わりに、一端にビオチンを、他端に触媒を含有するDNA配列が得られる(
図5A)。
【0224】
固定されたストレプトアビジンでできている検出ライン、及び本発明によるプロフルオロフォア(プロ色素)と還元剤(アスコルビン酸)との混合物を含有する底部ポーチを有するラテラルフローストリップデバイス(
図5B)を、係留化基材として使用する。
【0225】
試験ストリップを、ビオチンと触媒の両方で標識された得られた標的DNA配列を含有するDNA増幅媒体を含有する容器に浸して、プロ色素及びアスコルビン酸を、ストリップに沿って毛管現象により移動させる(
図5C)。次いで、増幅された標的DNAは、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用により検出ライン(係留化基材)上に捕捉される。次に、標的DNA配列上の触媒が、プロ色素を、対応する色素に変換し、これが検出ライン上に沈殿し(
図5D)、検出され得る。検出ライン上の色の変化は、サンプル中の標的DNAの存在を示す。
【0226】
b)鎖侵入による標的DNAの検出
実施例6aでは、本発明による方法を用いた標的DNAの検出は、標的DNAの増幅に使用されるプライマーの選択に依存している。この制約は、鎖侵入戦略を採用して回避することができる。標的dsDNAの2つの特異的領域F1'及びR1'に相補的な核酸配列(例えば、PNA)を含む2つのプローブを設計する。第1のプローブは、標的DNA配列F1'に相補的な核酸配列F1を有し、係留化プローブC1'に相補的な核酸配列C1にコンジュゲートしている。第2のプローブは、標的DNA配列R1'に相補的な核酸配列R1を有し、触媒とコンジュゲートしたプローブR0'(触媒プローブ)に相補的な核酸配列R0にコンジュゲートしている(
図6A)。
【0227】
第1のプローブの尾部C1に相補的な係留化プローブC1'(すなわち、PNA)でできている検出ライン、並びに本発明によるプロフルオロフォア(プロ色素)、還元剤(アスコルビン酸)、及び触媒とコンジュゲートした尾部R0に相補的な検出プローブR0'の混合物を含有する底部ポーチを有するラテラルフローストリップデバイス(
図6B)を、係留化基材として使用する。プローブF1-C1及びR1-R0を、適切な緩衝液(すなわち、PBS)中の標的DNA(#1)と共に反応チューブ中でインキュベートする。プローブは、二本鎖標的DNAに鎖侵入して、ハイブリッド構造を作り出す(
図6A)。試験ストリップを、反応チューブに浸して、鎖侵入DNA複合体を検出ラインに固定させ、検出プローブR0'、プロ色素、及びアスコルビン酸を、毛管現象によってストリップの上方に移動させる(
図6C)。C1'及びC1核酸のハイブリダイゼーションにより、DNA複合体が検出ライン上に捕捉され、触媒は、プロ色素を、対応する色素に変換し、これが検出ライン上に沈殿する(
図6D)。検出ラインにおける色の変化は、サンプル中の標的DNAの存在を示す(
図6E)。
【0228】
c)鎖侵入による標的DNAの混合物の検出
図7に例示されるように、標的DNAの混合物も、本発明による方法で検出することができる。
【0229】
いくつかの標的DNA配列に相補的な核酸配列(例えば、PNA)を含むいくつかのプローブを設計する。各標的dsDNAについて、2つの異なる特異的標的DNA領域に相補的な核酸配列を含む2つのプローブを設計する。例えば、標的dsDNA#1について、プローブはそれぞれ領域F1'及びR1'に相補的であり、標的dsDNA#2について、プローブは領域F2'及びR2'に相補的であり、標的dsDNA#3について、プローブは領域F3'及びR3'に相補的である。対に由来する第1のプローブは、標的DNA配列(例えば、F1'、F2'、F3')に相補的な核酸配列(例えば、F1、F2、F3)を有し、捕捉プローブ(C1'、C2'、C3')に相補的な核酸配列(例えば、C1、C2、C3)にコンジュゲートしている。各対に由来する第2のプローブは、標的DNA配列(例えば、R1'、R2'、R3')に相補的な核酸配列(例えば、R1、R2、R3)を有し、触媒とコンジュゲートしたプローブR0'に相補的な核酸配列R0にコンジュゲートしている(
図7A)。尾部プローブヌクレオチド(C1、C2、又はC3)に相補的な捕捉プローブ(C1'、C2'、C3')(すなわち、PNA)でできている固定された検出ライン、並びに本発明によるプロフルオロフォア(プロ色素)、還元剤(例えば、アスコルビン酸)、及び触媒とコンジュゲートした尾部R0に相補的な検出プローブR0'の混合物を含有する底部ポーチを有するラテラルフローデバイス(
図7B)。複数のプローブ対(F1-C1及びR1-R0、F2-C2及びR2-R0、F3-C3及びR3-R0)を、PBS中の標的DNA(#1及び#2)と共に反応チューブ中でインキュベートする。プローブは、二本鎖標的DNAに鎖侵入して、ハイブリッド構造を作り出す(
図7A)。試験ストリップ(
図7B)を、反応チューブに浸して、鎖侵入DNA複合体を検出ラインに固定させ、検出プローブR0'、プロ色素、及びアスコルビン酸を、毛管現象によってストリップの上方に移動させる(
図7C)。C1'/C2'及びC1/C2核酸ハイブリダイゼーションにより、DNA複合体が検出ライン上に捕捉され(
図7C)、触媒は、プロ色素を、対応する色素に変換し、これが検出ライン上に沈殿する(
図7D)。検出ラインにおける色の変化は、サンプル中の標的DNAの存在を示す(
図7D)。
【0230】
複数の標的DNAの検出に適用される本発明による方法におけるフルオロフォアの形成についてのいくつかの種類の読み出しを使用し得る。例えば、それらは以下を含む:
【0231】
1)それぞれの試験DNAに対する捕捉プローブが、試験ストリップ上に別々のラインの形態で固定されている、バーコード配置(
図8A);
【0232】
2)それぞれの試験DNAに対する捕捉プローブが、試験ストリップ上に別々の円の形態で固定されている、マクロアレイコード配置(
図8B);
【0233】
3)それぞれの試験DNAに対する捕捉プローブが、試験ストリップ上にマトリックスバーコードの形態で固定されている、QR(商標)コード(マトリックスバーコード又は二次元バーコードの一種であるクイックレスポンスコード)(
図8C)。QR(商標)コードのフォーマットは、キーなしでは解読できない安全なフォーマットで遺伝子試験の結果を暗号化することを可能にし、したがって、データのセキュリティ及びプライバシーを高めることができるので、興味深い。これは、試験結果の不正を防ぐこともできる;
【0234】
4)アッセイ化合物がアッセイ領域(例えば、ラテラルフローストリップの制約に適合し、肉眼又はスマートフォンカメラでの検出に十分な光学的分解能を維持する、直径5mmの円)内に液滴(例えば、1~144滴)として配置される、アレイスポッター配置(
図8D)。アレイスポッターは、市販のツール、例えばScienionを用いて製造することができる。
【0235】
実施例7: 核酸「鋳型化」反応における標的DNAの検出
PNAの異なる立体化学(L、D)の使用を含む本発明の方法の例を以下に提供し、これにより、
図9に示されるように、核酸鋳型化反応を迅速に進行させることが可能になる。以下のプローブを使用した:
【0236】
以下を含む、係留化プローブ1:
- 標的DNA(二本鎖DNA、dsDNA)に相補的な、14マーγL-PNAオリゴマー;
- PEGリンカー、及び;
- 実施例2に従って調製された、係留化基材上に固定された7マーγD-PNAに相補的な、7マーγD-PNA。
【0237】
以下を含む、触媒プローブ2:
- プローブ1の14マーγL-PNAとは異なるが、標的DNAに相補的な、14マーγL-PNAオリゴマー;
- PEGリンカー、及び;
- 実施例2に従って調製された、フォトレドックス触媒にコンジュゲートした(プローブ3の4マーγD-PNAに相補的な)、4マーγD-PNA。以下を含む、本発明のプロフルオロフォアのコンジュゲート3:
- 実施例2に従って調製された、式(I)の本発明によるプロフルオロフォアにコンジュゲートしたプローブ2の4マーγD-PNAに相補的な、4マーγD-PNA。
【0238】
実施例2に従って調製された、プローブ1の7マーγD-PNAに相補的な7マーγD-PNAを含む、係留化基材(試験ストリップ)。
【0239】
プローブ1及び2の14マーγL-PNA配列は、固有のdsDNA配列に対で結合するように設計される。プローブ1及び2の14マーγL-PNA配列の同時変動は、異なるdsDNA間の識別を可能にする。プローブ1上の7マーγD-PNA及び係留化基材からの相補的7マーγD-PNAの変動は、係留化基材上のプローブ-DNA複合体の異なる位置付けを可能にする。プローブ2の4マーγD-PNAは、他の配列のいかなる変動にもかかわらず一定に保たれ、プローブ3の相補的4マーγD-PNAのみと相互作用することができる。異なるdsDNA及びPNAベースのプローブの組み合わせを、一緒にインキュベートし、次いで、固定されたPNA鎖とのそれらの特異的相互作用によって分離することができる。
【0240】
まず、プローブ1、プローブ2、及び標的dsDNAを、PBSに溶解して、200nMのそれぞれの化合物溶液を得る。プローブ1、2、及びdsDNAを含む溶液を混合して、標的dsDNAとPNAプローブ1及び2との間のハイブリダイゼーションを可能にし(
図9A)、係留化プローブ1及び触媒プローブ2で標識された標的DNAをもたらす(
図9B)。次に、プローブ1の7マーγD-PNAに相補的な7マーγD-PNAが固定されている(
図9D)位置(例えば、レーン)で係留化基材表面上に捕捉される、上で得られたプローブ-DNAコンジュゲートを含む溶液に、係留化基材(
図9C)を添加する。次いで、係留化基材をPBSで洗浄して(PBS中、500nM)、未結合プローブ-DNA複合体を除去し、還元剤(水中、NaAsc 10mM溶液)の存在下でプロフルオロフォアコンジュゲート4と接触させ(
図9E)、触媒プローブ2の触媒部分のごく近傍において標的DNA上のプロフルオロフォアコンジュゲートのさらなるコンジュゲーションをもたらす(
図9F)。次いで、基材を照射し(例えば、LEDランプで約455nmにて)、プロフルオロフォアの光触媒還元及び得られたフルオロフォアの反応部位での沈殿を促進し(
図9G)、複合体が係留化プローブ1を介して基材に結合している蛍光帯を形成する。
【0241】
実施例8: 標的DNA/RNAの検出のための本発明の方法によるアッセイを実施するためのキット
標的核酸配列の検出のための本発明の方法を実施するためのキットを以下に説明する。例えば、試験の前に増幅反応が行われた、標的核酸配列を検出するためのアッセイを実施することを可能にするキット(実施例7)、又は事前の増幅反応なしに、標的核酸を検出するためのアッセイを実施することを可能にし、したがって、サンプル調製(例えば、材料溶解物)及び増幅(プローブ、試験デバイス)に必要とされる材料を含むキットがある。例えば、以下を含む、キットが提供される:
【0242】
- 任意選択でDNAポリメラーゼなどの増幅剤と共に、任意選択で逆転写酵素(標的分析物がRNAである場合)と共に、任意選択で、ヘリカーゼ、ニッキング酵素、又はDNA伸長反応を安定化するための一本鎖DNA結合タンパク質のような補助的酵素と共に、凍結乾燥形態における、触媒プローブ(フォトレドックス触媒で標識されたプローブ)及び係留化プローブ(標的分子を係留化基材に係留することを可能にするプローブ)(両プローブは、標的分子の異なる領域に対して特異的親和性を有する);
- 任意選択で、再水和媒体;
- 任意選択で、増幅反応を実施するための、好ましくは増幅媒体の温度を増幅温度に維持することを可能にする、反応容器;
- 任意選択で、サンプルを破砕し、前記サンプルから標的分子を抽出するためのサンプル破砕機などのサンプリングデバイス;
- 例えば係留化プローブに対して親和性を有する係留化基材も含む試験ストリップのポーチに配置される、還元剤及び本発明によるプロフルオロフォア。
【0243】
実施例9: 式(I')のフルオロフォアのさらなる例
本発明の文脈内で可能なQPDとしての式(I')の様々なフルオロフォアの挙動を確認するために、以下の化合物を合成し試験した。
【0244】
(R1~R8がHである、式(I')の)フルオロフォア(9)
70mgの2-アミノベンズアミドアミド(0.51mmol)(vib)及び55μLのサリチルアルデヒド(viib)(0.51mmol)から出発して化合物(9)を合成し、以下に示されるように白色~黄色固体の最終生成物を得た。
【0245】
【0246】
収率: 65%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 13.77 (s, 1H), 12.47 (s, 1H), 8.24 (dd, J = 8.1, 1.6 Hz, 1H), 8.17 (dd, J = 7.9, 1.5 Hz, 1H), 7.87 (ddd, J = 8.5, 7.2, 1.6 Hz, 1H), 7.78 (dd, J = 8.3, 1.1 Hz, 1H), 7.56 (ddd, J = 8.2, 7.1, 1.2 Hz, 1H), 7.47 (ddd, J = 8.6, 7.2, 1.6 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 8.3, 1.2 Hz, 1H), 6.98 (ddd, J = 8.2, 7.2, 1.2 Hz, 1H).
13C NMR (101 MHz, DMSO) δ: 161.84, 160.47, 154.17, 146.62, 135.51, 134.18, 128.18, 127.45, 126.54, 126.50, 121.22, 119.30, 118.34, 114.25.
【0247】
(R1、R3~R5、R7~R8がHであり、R2がClであり、R6が-CH2-C(O)-OMeである、式(I')の)フルオロフォア(10)
メチル2-(4-ヒドロキシフェニル)アセテート(3.31g、20mmol)、パラホルムアルデヒド(3.3g、1:1重量)、及び塩化マグネシウム(1.85g、20mmol)を、75mlの乾燥アセトニトリルに懸濁した。トリエチルアミン(7mL、50mmol)を加え、反応を3時間還流した。完了したら、以下に示されるように、アセトニトリルを部分的に蒸発させ、残渣をジエチルエーテルに取り、1MのHClで抽出した。
【0248】
【0249】
有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、2.3gの表題化合物をピンクがかった油として得た。収率: 60%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 10.96 (s, 1H), 9.89 (s, 1H), 7.50 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.46 (dd, J = 8.5, 2.3 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.63 (s, 2H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 196.38, 171.70, 160.75, 138.03, 134.09, 125.48, 120.47, 117.93, 52.19, 39.79. 次いで、化合物(9)をオープンフラスコ中で合成し、そこでは、上記のようにして得られたメチル2-(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)アセテート(616mg、3.17mmol)、2-アミノ-5-クロロベンズアミド(650mg、3.8mmol)、及びTsOH・H2O(300mg、1.58mmol)を、以下に示されるように、60mLのメタノールに溶解し、6時間還流した。
【0250】
【0251】
反応が進行するにつれて化合物(9)が沈殿し、黄色沈殿物を遠心分離により単離し、冷メタノールで3回洗浄した。黄色固体、490mg。収率: 44%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 13.12 (s, 1H), 12.50 (s, 1H), 8.12 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.89 (dd, J = 8.7, 2.5 Hz, 1H), 7.83 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.37 (dd, J = 8.4, 2.1 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 3.66 (s, 2H), 3.64 (s, 3H). 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ: 172.15, 160.84, 158.82, 154.14, 145.87, 135.43, 135.34, 131.52, 129.36, 129.04, 125.42, 122.52, 118.23, 114.44, 52.21.
【0252】
(R1、R3~R5、R7~R8がHであり、R2がClであり、R6が-CH2-C(O)-OHである、式(I')の)フルオロフォア(11)
メチル2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)アセテート(上記のようにして得られた化合物(10))(70mg、4.9mmol)から出発して、化合物(11)を合成し、該化合物は、ジオキサンと10%NaOH溶液(水中)の1:1混合物(合計10mL)に懸濁し、撹拌しながら80℃に加熱した。親化合物が完全に消費されるまで、加熱を6時間維持した。溶媒体積を蒸発により減少させ、残渣を逆相クロマトグラフィーにより精製して黄色溶液を得た。以下に示されるように、溶液のpHをHClで5に調整し、残渣をろ過し、冷水、次いで冷アセトンで洗浄した:
【0253】
【0254】
白色固体。収率: 62%。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 8.17 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.09 (dd, J = 8.3, 2.4 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.17 (s, 2H). 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ: 189.31, 176.30, 163.44, 161.07, 149.80, 134.18, 132.89, 131.95, 129.28, 128.00, 126.68, 125.25, 123.06, 119.14, 116.99, 45.92.
【0255】
化合物(8)と同様にしてフルオロフォアが溶液中で沈殿する能力を確認した。したがって、式(I')のフルオロフォアは、本発明の文脈内でQPDとして使用することができる。
【0256】
実施例10: 本発明の方法を用いた標的細菌DNAの検出
本発明の方法は、食料品(例えば、肉又はチーズ中に存在してもよい)、飲用調製物、医薬品、又は化粧品などのヒト又は獣医学的用途のための何らかの物質中のその存在について、標的細菌DNA断片の検出のために使用することができ、試験サンプルは、実施例6及び
図5に記載されるように、等温DNA増幅(LAMP)に供される。
【0257】
増幅反応を実施するための反応緩衝液(例えば、50~100マイクロリットル)は、以下を含む:
30mM NH
4B
5O
8(五ホウ酸アンモニウム、Sigma)
40mM リンゴ酸(Sigma)
8mM Mg
2SO
4(Sigma)
0.8mM dNTPs(Promega)
0.8M ベタイン(5M溶液、PCR用、Sigma)
5% トレハロース(Sigma)
0.4U/マイクロリットル 鎖置換活性を有するポリメラーゼ(すなわち、Bst又はGspSSD) 0.0004U/マイクロリットル ピロホスファターゼApePPiase
0.1% Triton X-100
1.5マイクロM 専有プライマー
pH8.5 25℃にて
(付記)
(付記1)
式(I):
【化39】
[式中、R
1
~R
8
、R
11
~R
12
、及びR
14
~R
15
は、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、置換されていてもよいC
1
~C
10
アルキル、置換されていてもよいアミノC
1
~C
10
アルキル、置換されていてもよいC
1
~C
10
アルコキシから選択され、R
13
は、置換されていてもよいC
1
~C
10
アルキル、例えば、置換されていてもよいエチル、置換されていてもよいプロピル、又は置換されていてもよいブチルから選択され、Zは、-CR
16
R
17
であり、R
16
及びR
17
は、独立して、水素、及び置換されていてもよいC
1
~C
6
アルキルから選択される]
のプロフルオロフォア、又はその任意の互変異性体、異性体、コンジュゲート若しくは塩。
(付記2)
R
1
、R
3
~R
5
、及びR
7
~R
8
が、Hである、付記1に記載のプロフルオロフォア。
(付記3)
R
2
が、Clである、付記1又は2に記載のプロフルオロフォア。
(付記4)
R
2
が、Hである、付記1又は2に記載のプロフルオロフォア。
(付記5)
R
6
が、Clである、付記1~4のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記6)
R
6
が、Hである、付記1~4のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記7)
R
6
が、置換されたアミノC
1
~C
10
アルキル、例えば、アルコキシカルボニルC
1
~C
10
アルキルである、付記1~4のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記8)
R
13
が、置換されていてもよいプロピル、特に、プロピル若しくはN-プロピルニトリル、並びに置換されていてもよいブチルから選択される、付記1~7のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記9)
R
16
が、Hである、付記1~8のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記10)
R
17
が、Hである、付記1~9のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記11)
Zが、メチルである、付記1~10のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記12)
Zが、-C(H)(エチル)である、付記1~8のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記13)
以下の群:
【化40】
1-プロピル-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウム;
【化41】
3-[4-[[4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3H-キナゾリン-2-イル)フェノキシ]メチル]ピリジン-1-イウム-1-イル]プロパンニトリル;
【化42】
1-ブチル-4-((4-クロロ-2-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)ピリジン-1-イウム;
【化43】
4-(1-(4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)プロピル)-1-プロピルピリジン-1-イウム; 4-((4-クロロ-2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-2,6-ジメチル-1-プロピルピリジン-1-イウム
【化44】
; 及び4-((2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)フェノキシ)メチル)-1-プロピルピリジン-1-イウム
【化45】
から選択される、付記1~12のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア。
(付記14)
式(I')
【化46】
[式中、R
1
~R
8
は、付記1~13のいずれか一項に定義される通りである]
のフルオロフォアの調製方法であって、還元剤の存在下で、付記1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォアを、遷移金属錯体フォトレドックス触媒と反応させるステップを含む、方法。
(付記15)
前記フルオロフォアが、
【化47】
6-クロロ-2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-3H-キナゾリン-4-オン;
【化48】
2-(2-ヒドロキシフェニル)キナゾリン-4(3H)-オン;
【化49】
メチル2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)アセテート; 及び
【化50】
2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)酢酸から選択される、付記14に記載の式(I')のフルオロフォアの調製方法。
(付記16)
サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出方法であって、付記1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートを含む組成物を、前記サンプルと接触させるステップを含む、方法。
(付記17)
(i)前記標的分子がサンプル中に存在する場合に、プローブが前記少なくとも1つの標的分子に結合し、標的分子が係留化基材の表面上に係留されるのに適した条件下で、サンプルを、(1)前記少なくとも1つの標的分子に対する係留化基材、及び(2)前記少なくとも1つの標的分子に対するプローブと接触させるステップであって、前記プローブは、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識されている、ステップ;
(ii)プロフルオロフォアが遷移金属錯体フォトレドックス触媒の近傍に位置する場合に、前記プロフルオロフォア又はそのコンジュゲートのフォトレドックス触媒作用を誘導するのに適した条件下で、還元剤の存在下で、付記1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートを含む組成物を、前記係留化基材と接触させるステップ;
(iii)前記係留化基材上の式(I')のフルオロフォアの形成を検出するステップであって、前記フルオロフォアの形成は、前記サンプル内の前記少なくとも1つの標的分子の存在を示す、ステップ
を含む、付記16に記載の方法。
(付記18)
前記ステップ(i)が、前記少なくとも1つの標的分子に結合すること、及び基材上の標的分子の係留化を確実にすることの両方が可能な、遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された単一の種類のプローブの使用によって、又は(a)標的核酸配列の配列の一部、若しくは標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列を特異的に認識し、基材上の標的分子の係留化を確実にするプローブ(「係留化プローブ」)、及び(b)遷移金属錯体フォトレドックス触媒で標識された、標的核酸配列の配列の一部、若しくは標的分子を認識する配列ストリングに共有結合した配列に対する相補的配列を特異的に認識するプローブ(「触媒プローブ」)などの、少なくとも2つの異なる種類のプローブの使用によって達成される、付記17に記載の方法。
(付記19)
プロフルオロフォアのコンジュゲートが、式(II):
【化51】
[式中、Raは、部分-R
13
-R
13a
であり、R
b
は、部分-R
12
-R
12b
であり、R
c
は、部分-R
11
-R
11c
であり、R
d
は、部分-R
15
-R
15d
であり、R
g
は、部分-R
14
-R
14g
であり、R
11
~R
13
及びZは、付記1~18のいずれか一項に記載される通りであり、R
11c
、R
12b
、R
13a
、R
14g
、及びR
15d
は、独立して、任意選択で存在し、基R
11c
、R
12b
、R
13a
、R
14g
、及びR
15d
の少なくとも1つは、標的分子に対して特異的親和性を有する連結基である]
のものである、付記16又は17に記載の方法。
(付記20)
付記19に定義される式(II)のものである、式(I)のプロフルオロフォアのコンジュゲート。
(付記21)
前記連結基が、(a)スペーシング部分、及び(b)ドッキング部分を含み、ドッキング部分(b)は、触媒プローブによって認識される領域の近傍において標的分子に結合するか、又はフォトレドックス触媒を、標的分子の領域を認識するプローブにコンジュゲートさせる基に結合し、スペーシング部分(a)は、ドッキング部分を本発明のプロフルオロフォアに共有結合させ、鋳型反応に有利な適切な形状を有する化学スペーサー、例えば、アルキルリンカー、ポリエチレングリコール、又はポリアミド鎖である、付記20に記載のコンジュゲート。
(付記22)
少なくとも1つのR
11c
、R
12b
、R
13a
、R
14g
、及びR
15d
基が、以下の式(III):
【化52】
[式中、nは、1~10の整数であり、mは、0~2の整数であり、bは、付記21に定義されるドッキング部分である]
の連結基である、付記21に記載のコンジュゲート。
(付記23)
前記フルオロフォアが、以下の群:
【化53】
メチル2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)アセテート(10); 及び
【化54】
2-(3-(6-クロロ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)酢酸(11)
から選択される、式(I')によるフルオロフォア。
(付記24)
サンプル中の少なくとも1つの標的分子の検出のためのキットであって、付記1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア又はそのコンジュゲートと、任意選択で、還元剤、及び前記標的分子の検出のためのさらなるプローブから選択される少なくとも1つの薬剤とを含む、キット。
(付記25)
a)フォトレドックス触媒で標識された、標的分子に対して特異的親和性を有する少なくとも1つのプローブ(触媒プローブ);
b)プローブを支持体に固定するための基で標識された(係留化プローブ)、又は付記1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア若しくは付記20~22のいずれか一項に記載のそのコンジュゲートで標識された、標的分子に対して特異的親和性を有する少なくとも1つのプローブ;
c)任意選択で、係留化プローブを介して標的分子を固定するための係留化支持体;
d)還元剤;
e)付記1~13のいずれか一項に記載のプロフルオロフォア、又は付記20~22のいずれか一項に記載のそのコンジュゲート;
f)任意選択で、増幅反応を行うための少なくとも1つの容器、及び/又はサンプリングデバイス
を含む、付記24に記載のキット。
【0258】
標的DNAの検出は、本明細書に記載されるように鋳型化核酸化学によって実施される。
【0259】
配列表
ブタDNAに特異的なプローブの核酸配列
配列番号1:
CTTGGGATGAAC
【0260】
ブタDNAに特異的なプローブの核酸配列
配列番号2:
CTACTAGTTTAGAT
【0261】
ブタDNA断片の核酸配列
配列番号3:
CAGCCCGGAACCCTACTTGGCGATGATCAAATCTATAATG
【0262】
ブタDNAに特異的なプローブの核酸配列
配列番号4:
CGCGACTTGATCCAG
【0263】
豚肉DNA領域
配列番号5:
GCGCTGAACTAGGTCAGCCCGGAACCCTACTTGGCGATGATCAAATCTATAATGTAATTGTTACAGCTCATGCC
【0264】
牛肉DNA領域
配列番号6:
GCCTGAATTAGGCCAACCCGGAACTCTGCTCGGAGACGACCAAATCTACAACGCAGTTGTAACCGCACACGCA
【0265】
ウマDNA領域
配列番号7:
GTGCTGAATTAGGCCAACCTGGGACCCTACTAGGAGATGATCAGATCTACAATGTCATTGTAACCGCCCATGCA
【0266】
ホロホロチョウDNA領域
配列番号8:
GCGCAGAACTAGGACAACCAGGGACCCTTTTAGGGGACGACCAAATTTATAATGTAATCGTCACAGCCCATGCC
【0267】
シチメンチョウDNA領域
配列番号9:
GGTGCAGAACTGGGACAACCTGGGACACTCCTAGGAGACGACCAAATCTATAACGTAATCGTCACAGCCCATGC
【0268】
ニワトリDNA領域
配列番号10:
GCGCAGAACTAGGACAGCCCGGAACTCTCTTAGGAGACGATCAAATTTACAATGTAATCGTCACAGCCCATGCT
【0269】
ロバDNA領域
配列番号11:
GTGCTGAATTAGGTCAACCTGGGACCCTGCTGGGAGATGATCAGATCTACAATGTTATTGTAACTGCCCATGCA
【0270】
サルDNA領域
配列番号12:
GAGCTGAACTAGGCCAACCCGGTAGTTTACTAGGTAGTGACCATATCTATAATGTCATTGTGACAGCCCATGCA
【0271】
ヒトDNA領域
配列番号13:
GAGCCGAGCTGGGCCAGCCAGGCAACCTTCTAGGTAACGACCACATCTACAACGTTATCGTCACAGCCCATGCA
【0272】
ラットDNA領域
配列番号14:
GAGCTGAACTAGGACAGCCAGGCGCACTCCTAGGAGATGACCAAATCTATAATGTCATCGTCACAGCCCATGCA
【0273】
マウスDNA領域
配列番号15:
GAGCAGAATTAGGTCAACCAGGTGCACTTTTAGGAGATGACCAAATTTACAATGTTATCGTAACTGCCCATGCT
【0274】
ヒトコブラクダDNA領域
配列番号16:
GTGCTGAATTGGGGCAGCCTGGGACATTGCTTGGAGATGACCAAATCTATAATGTAGTTGTAACGGCTCATGCT
【0275】
ラクダDNA領域
配列番号17:
GCGCTGAATTGGGACAGCCCGGGACGTTGCTTGGAGACGACCAAATCTATAACGTAGTTGTAACAGCTCATGCT
【0276】
ラムDNA領域
配列番号18:
GCGCCGAACTAGGCCAACCCGGAACTCTACTCGGAGATGACCAAATCTACAACGTAATTGTAACCGCACATGCA
【0277】
ヤギDNA領域
配列番号19:
GCGCCGAACTAGGTCAACCCGGAACCCTACTTGGAGATGACCAGATCTACAATGTAATTGTAACTGCACACGCA
【配列表】