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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】抗RSVモノクローナル抗体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220325BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220325BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220325BHJP
   C07K 16/10 20060101ALN20220325BHJP
【FI】
A61K39/395 S ZNA
A61K39/395 W
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/19
A61K9/08
A61P31/14
A61P11/00
C07K16/10
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2019547310
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018020264
(87)【国際公開番号】W WO2018160722
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】62/465,379
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】Milstein Building,Granta Park,Cambridge CB21 6GH,England
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ロボ
(72)【発明者】
【氏名】デボラ・ゴールドバーグ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0121580(US,A1)
【文献】特開2016-104715(JP,A)
【文献】特表2015-522524(JP,A)
【文献】特表2017-504321(JP,A)
【文献】特表2005-508981(JP,A)
【文献】特表2006-501168(JP,A)
【文献】Antimicrob. Agents Chemother. (2017-Feb-23) vol.61, issue 3, e01714-16
【文献】Drugs of the Future (2015) vol.40, no,11, p.765-766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
C07K 16/10
A61K 47/18
A61K 47/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤であって、
抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)モノクローナル抗体;および
イオン性賦形剤;
を含み、
前記モノクローナル抗体が、配列番号9の軽鎖可変領域配列および配列番号10の重鎖可変領域配列を含み;
前記モノクローナル抗体がIgG1モノクローナル抗体であり;
前記モノクローナル抗体が50mg/ml以上の濃度で前記製剤中に存在し;
前記イオン性賦形剤がアルギニンまたはリジンを含み;
前記イオン性賦形剤が50~150mMの濃度で前記製剤中に存在し;
前記製剤が5.5~7.5のpHを有する、
製剤。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が、配列番号1の軽鎖配列および配列番号2の重鎖配列を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体が、100mg/ml~165mg/mlの濃度で前記製剤中に存在する、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
pH5.7~pH6.1の範囲のpHを有する、請求項1~のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
前記イオン性賦形剤がアルギニンを含む、請求項1~4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
前記イオン性賦形剤がアルギニン塩酸塩を含む、請求項に記載の製剤。
【請求項7】
前記イオン性賦形剤が、75mM~100mMの濃度で前記製剤中に存在する、請求項1~のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
前記イオン性賦形剤が80mMの濃度で前記製剤中に存在する、請求項に記載の製剤。
【請求項9】
糖をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
前記糖がスクロースを含む、請求項に記載の製剤。
【請求項11】
前記糖が、100mM~140mMの濃度で前記製剤中に存在する、請求項または10に記載の製剤。
【請求項12】
前記糖が120mMの濃度で前記製剤中に存在する、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
1つまたは複数の緩衝剤をさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の製剤。
【請求項14】
前記1つまたは複数の緩衝剤が、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、またはその組み合わせを含む、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記1つまたは複数の緩衝剤が、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩、またはその組み合わせである、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記1つまたは複数の緩衝剤が10mM~50mMの濃度で前記製剤中に存在する、請求項1315のいずれかに記載の製剤。
【請求項17】
前記1つまたは複数の緩衝剤が30mMの濃度で前記製剤中に存在する、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載の製剤。
【請求項19】
前記界面活性剤がポリソルベートを含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記界面活性剤がポリソルベート80を含む、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記界面活性剤が、0.001%(w/v)~0.07%(w/v)の濃度で前記製剤中に存在する、請求項18~20のいずれかに記載の製剤。
【請求項22】
前記界面活性剤が、0.02%(w/v)~0.04%(w/v)の濃度で前記製剤中に存在する、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記界面活性剤が、0.02%(w/v)または0.04%(w/v)の濃度で前記製剤中に存在する、請求項21に記載の製剤。
【請求項24】
1つまたは複数の追加の賦形剤をさらに含む、請求項1~23のいずれかに記載の製剤
【請求項25】
製剤であって、
抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)モノクローナル抗体;および
イオン性賦形剤;
を含み、
前記抗RSVモノクローナル抗体が、配列番号1の軽鎖および配列番号2の重鎖を含み;
前記モノクローナル抗体が75mg/ml~200mg/mlの濃度で存在し;
前記イオン性賦形剤が75mM~100mMの濃度のアルギニン塩酸塩を含み;
前記製剤が、10mM~50mMのL-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩、またはその組み合わせ、100mM~140mMのスクロース、および0.02%(w/v)~0.04%(w/v)のポリソルベート80をさらに含み;
前記製剤が5.7~6.1のpHを有する、
製剤。
【請求項26】
1つまたは複数の追加の賦形剤をさらに含む、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
前記1つまたは複数の追加の賦形剤が、1つまたは複数の糖、塩、アミノ酸、ポリオール、キレート剤、乳化剤、保存剤、またはその組み合わせから選択される、請求項24または26に記載の製剤。
【請求項28】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)-Fタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体、およびイオン性賦形剤を含む製剤であって、
前記モノクローナル抗体が、配列番号9の軽鎖可変領域配列および配列番号10の重鎖可変領域配列を含み;
前記モノクローナル抗体がIgG1モノクローナル抗体であり;
前記モノクローナル抗体が75mg/ml~200mg/mlの濃度で存在し;
前記イオン性賦形剤が75mM~100mMの濃度のアルギニン塩酸塩を含み;
前記製剤が、10mM~50mMのL-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩、またはその組み合わせ、100mM~140mMのスクロース、および0.02%(w/v)~0.04%(w/v)のポリソルベート80をさらに含み;
前記製剤が5.7~6.1のpHを有する、
製剤。
【請求項29】
pH6.0である、請求項1~28のいずれかに記載の製剤。
【請求項30】
医薬製剤である、請求項1~29のいずれかに記載の製剤。
【請求項31】
凍結乾燥される、請求項1~30のいずれかに記載の製剤。
【請求項32】
液体製剤である、請求項1~30のいずれかに記載の製剤。
【請求項33】
必要とする対象におけるRSV感染予防用である、請求項1~32のいずれかに記載の製剤。
【請求項34】
必要とする対象におけるRSV感染予防用の医薬の製造における、請求項1~32のいずれかに記載の製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2017年3月1日に出願された米国仮特許出願第62/465,379号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、2018年2月28日に作成された12キロバイトのサイズの「490-00050201_ST25.txt」という名称のASCIIテキストファイルとして、EFS-Webを介して米国特許商標庁に電子的に送信された配列表を含む。配列表に含まれる情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、抗RSV抗体製剤、特に抗RSVモノクローナル抗体製剤およびその使用に関する。本発明はまた、単離された抗RSVモノクローナル抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、パラミクソウイルスのファミリーに属する一般的な風邪ウイルスである。RSVは毒性があり、容易に伝染し、2歳未満の子供の下部呼吸器疾患の最も一般的な原因である。1つのRSVシーズンで、デイケアに参加している子供の最大98%が感染する。RSVに感染した子供の0.5%~3.2%に入院が必要である。米国では、年間約90,000人の入院と4,500人の死亡が報告されている。RSVによる入院の主な危険因子は、早産、慢性肺疾患、先天性心疾患、免疫力の低下、およびその他が健康な6週齢未満の乳児である。十分な栄養と酸素療法の形での支持療法に加えて、RSV陽性細気管支炎の追加処置も必要である。リバビリンなどの抗ウイルス療法は、RSV感染に有効であることが証明されていない。1つのモノクローナル抗体、パリビズマブ(Synagis(登録商標)とも呼ばれる)は、RSV感染に対する予防薬として登録されている。パリビズマブは、RSVの融合タンパク質に対する遺伝子組み換え(ヒト化)モノクローナル抗体である。パリビズマブは非常に有効な予防薬であるが、RSVに対する追加の適用範囲を提供する代替の抗体および療法が有利であろう。
【0005】
タンパク質にとって好ましい製剤の薬学的pH範囲(pH5.5~pH7.5)であるいくつかの抗RSVモノクローナル抗体の等電点(pI)により、これらの分子は、固有の製剤の課題を提示する。
【0006】
分子のpIにおけるコロイド不安定性は、分子上の静電荷の欠如によるものであり、この静電荷の欠如は、物理的不安定性をもたらすより近いタンパク質-タンパク質相互作用(いわゆる「自己会合」)を可能にする。このため、タンパク質製剤のpHは、典型的にはタンパク質pIから少なくとも1pH単位離れるように選択される。これは、コロイド安定性を提供し、したがって凝集、沈殿、乳光、相分離、および/または粒子形成などの物理的不安定性を防止することが目的である。
【0007】
したがって、「1pH単位離れた」の法則によると、低または中性pI、例えばpH5.5~pH7.5のpIを有する抗体は、5.5~7.5の範囲以外のpHを有する製剤に製剤化されるべきである。しかしながら、この範囲以外では、さらなる不安定性が観察され得る。より酸性のpHでは、断片化率の増大、立体配座安定性の低下、および凝集の増加が観察され得る。より塩基性のpHでは、酸化、脱アミド化、および断片化の増大、ならびにガラス容器との不適合性の可能性が存在する。
【0008】
上記の不安定性は、抗体が商業的に望ましい濃度、例えば50mg/ml以上で存在するような抗RSV抗体製剤において特に問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、低または中性pIを有する抗RSV抗体のための改良された製剤を提供する必要がある。特に、低または中性pIを有する抗RSV抗体のための安定な製剤、特に商業的に望ましい抗体濃度を有するそのような製剤を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、新規の抗RSV抗体製剤、特に新規の抗RSVモノクローナル抗体製剤を提供する。特に、本製剤は、低または中性pIを有する抗体のコロイド安定性を改善するための手段を提供する。したがって、本発明は、コロイド安定性を提供するための「1pH離れた」の法則に対する代替案を提供する。したがって、本発明は、低または中性pIを有する抗体を、抗体pIの1pH単位以内で製剤化することを可能にする。したがって、本発明は、より酸性またはより塩基性のpHに関連する不安定性を実質的に回避しながら、そのような抗体を5.5~7.5のpH範囲内で、商業的に有用な濃度で製剤化することを可能にする。
【0011】
本発明は、新規な抗RSV抗体MEDI8897をさらに提供する。新規な抗RSV抗体MEDI8897の改善された薬学的に適切な製剤化は、本発明の教示に従って抗体を製剤化することにより容易になる。
【0012】
本発明は、特に、低または中性pIを有する抗RSV抗体、特にMEDI8897抗体に関する。MEDI8897は、RSV-Fタンパク質に対するヒトIgG1κ-YTEモノクローナル抗体である。
【0013】
MEDI8897は、図1の完全長重鎖配列(配列番号2)および図2の完全長軽鎖配列(配列番号1)を有する。
【0014】
MEDI8897はCDR配列:QASQDIVNYLNの軽鎖CDR-L1(配列番号3)、VASNLETの軽鎖CDR-L2(配列番号4)、QQYDNLPLTの軽鎖CDR-L3(配列番号5)、DYIINの重鎖CDR-H1(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQGの重鎖CDR-H2(配列番号7)、およびETALVVSETYLPHYFDNの重鎖CDR-H3(配列番号8)を有する。6個のCDRSは、図1および図2に下線が引かれている。
【0015】
MEDI8897は、図1のアミノ酸残基1~107の軽鎖可変配列(配列番号9)および図2のアミノ酸残基1~126の重鎖可変配列(配列番号10)を有する。
【0016】
MEDI8897のpIは、cIEFによって測定すると6.4~6.7であり、6.4に主ピークがあった。したがって、pIは、所望の医薬製剤緩衝剤の範囲と重複し、この範囲内で製剤化される場合は、製造、製剤化、および貯蔵安定性に関する潜在的な問題を示唆する。
【0017】
本発明は:
i.抗RSVモノクローナル抗体;および
ii.イオン性賦形剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0018】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、例えば、約pH5.5~約pH7.5の範囲の低または中性pIを有する。一実施形態では、モノクローナル抗体は、約pH6.0~約pH7.5の範囲のpIを有する。一実施形態では、モノクローナル抗体は、pH約6.3~約pH7.5の範囲のpIを有する。一実施形態では、モノクローナル抗体は、約pH6.4~約pH7.5の範囲のpIを有する。一実施形態では、モノクローナル抗体は、約pH6.4~約pH6.7の範囲のpIを有する。一実施形態では、モノクローナル抗体は、約pH6.4のpIを有する。理論に拘束されることを望むものではないが、低~中性のpIは、タンパク質上の反対に荷電した(正のアミン基および負のカルボキシレート基)アミノ酸側鎖の正味バランスが存在するか、または異なるドメインが、約5.5~約7.5のpH範囲内で全体的に反対の電荷を有する場合にタンパク質で生じ得る。同様に、理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の製剤中のイオン性賦形剤はこれらの反対の引き合う電荷を遮蔽し、したがって、この範囲内のpIを有するタンパク質をコロイド的に安定化させることが可能である。したがって、本発明は、製剤中の抗体の荷電の状態または分布を変化させることを目的とした抗体製剤におけるイオン性賦形剤の使用を提供する。本発明は、製剤中の抗体をコロイド的に安定化させることを目的とした抗体製剤におけるイオン性賦形剤の使用をさらに提供する。
【0019】
一実施形態では、モノクローナル抗体は本明細書に記載の製剤中に約75mg/ml以上(例えば、約75mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在する。一実施形態では、モノクローナル抗体は本明細書に記載の製剤中に約100mg/ml以上の濃度で存在する。一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は本明細書に記載の製剤中に約100mg/ml~約165mg/mlの濃度で存在する。一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は約100mg/mlの濃度で存在する。一実施形態では、イオン性賦形剤は約75mM~約100mMの濃度で存在する。一実施形態では、イオン性賦形剤は約75mMの濃度で存在する。一実施形態では、イオン性賦形剤は約80mMの濃度で存在する。
【0020】
一実施形態では、モノクローナル抗体はIgG1モノクローナル抗体である。
したがって、本発明は、:
i.IgG1抗RSVモノクローナル抗体;および
ii.イオン性賦形剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0021】
一実施形態では、本明細書に記載の製剤は、約pH5.5~約pH6.5の範囲のpHを有する。一実施形態では、本明細書に記載の製剤は、約pH5.7~約pH6.3の範囲のpHを有する。一実施形態では、本明細書に記載の製剤は、約pH5.7~約pH6.1の範囲のpHを有する。好ましい製剤は約5.8のpHを有する。他の好ましい製剤は約6.0のpHを有する。
【0022】
一実施形態では、イオン性賦形剤は荷電アミノ酸である。一実施形態では、イオン性賦形剤はリジンである。他の実施形態では、イオン性賦形剤はアルギニンである。
【0023】
一実施形態では、イオン性賦形剤は塩である。したがって、本発明は:
i.本明細書のどこかで定義される抗RSVモノクローナル抗体;および
ii.塩;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上の濃度で存在し、この塩は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0024】
一実施形態では、塩は、約75mM~約100mMの濃度で存在する。一実施形態では、塩は、約75mMまたは約80mMの濃度で存在する。
【0025】
一実施形態では、塩は、例えば約75mM~約100mMの濃度、適切には約80mMの濃度のアルギニン塩酸塩である。
【0026】
一実施形態では、製剤は糖をさらに含む。他の既知の利点の中でも、糖の存在は、製剤の張性を改善し得る。これは、好ましい製剤が等張またはほぼ等張であるため望ましい。一実施形態では、イオン性賦形剤は塩であり、製剤は糖をさらに含む。
【0027】
したがって、本発明は:
i.本明細書のどこかで定義される抗RSVモノクローナル抗体;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;および
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0028】
一実施形態では、製剤は糖をさらに含み、イオン性賦形剤は約75mM~150mM未満の範囲の濃度で存在する。一実施形態では、製剤は糖をさらに含み、イオン性賦形剤は約75mM~約100mMの範囲の濃度で存在する。一実施形態では、製剤は糖をさらに含み、この糖は、約100mM~約140mMの範囲の濃度で存在し、イオン性賦形剤は約75mM~約100mMの範囲の濃度で存在する。
【0029】
一実施形態では、糖は、例えば約100mM~約140mMの濃度、適切には約120mMの濃度のスクロースである。
【0030】
一実施形態では、製剤は、1つまたは複数の緩衝剤をさらに含む。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、ヒスチジンを含む緩衝剤である。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、コハク酸ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、クエン酸ヒスチジン、塩化ヒスチジン、または硫酸ヒスチジンを含む緩衝剤から選択される。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、またはそれらの組み合わせ(ヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩)である。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、L-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物であり、例えば、約10mM~約50mMの濃度、適切には約30mMの濃度であり得る。緩衝剤は、それ自体がイオン性賦形剤であり得ることを理解されたい。したがって、一実施形態では、緩衝剤はイオン性賦形剤である。この実施形態では、緩衝剤の濃度は、50mMよりも高い、すなわち本明細書に開示されるイオン性賦形剤の濃度と一致するべきである。言い換えれば、一実施形態では、イオン性賦形剤は製剤中の緩衝剤としても作用する。この実施形態では、追加の緩衝剤が存在してもしなくてもよい。
【0031】
一実施形態では、製剤は界面活性剤をさらに含む。一実施形態では、界面活性剤は、例えばポリソルベート80を含むポリソルベートである。
【0032】
一実施形態では、製剤は、糖および1つまたは複数の緩衝剤をさらに含む。一実施形態では、イオン性賦形剤は塩であり、製剤は糖および1つまたは複数の緩衝剤をさらに含む。
【0033】
一実施形態では、製剤は、界面活性剤、糖、および1つまたは複数の緩衝剤をさらに含む。一実施形態では、イオン性賦形剤は塩であり、製剤は界面活性剤、糖、および1つまたは複数の緩衝剤をさらに含む。
【0034】
したがって、本発明は:
i.本明細書のどこかで定義される抗RSVモノクローナル抗体;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;
iv.本明細書のどこかで定義される1つ以上の緩衝剤;および
v.本明細書のどこかで定義される任意選択的に界面活性剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0035】
本発明はまた:
i.MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも70%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも70%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも70%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも70%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも70%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも70%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する抗RSVモノクローナル抗体;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;
iv.本明細書のどこかで定義される1つまたは複数の緩衝剤;および
v.本明細書のどこかで定義される、任意選択の界面活性剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。
【0036】
本発明はまた:
i.MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列とアミノ酸が1個だけ異なる重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列とアミノ酸が1個だけ異なる重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列とアミノ酸が1個だけ異なる重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列とアミノ酸が1個だけ異なる軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列とアミノ酸が1個だけ異なる軽鎖可変領域CDR2、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列とアミノ酸が1個だけ異なる配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する抗RSVモノクローナル抗体;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;
iv.本明細書のどこかで定義される1つまたは複数の緩衝剤;および
v.本明細書のどこかで定義される任意選択の界面活性剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0037】
本発明はまた:
i.MEDI8897の6個のCDRを有する抗RSVモノクローナル抗体;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;
iv.本明細書のどこかで定義される1つまたは複数の緩衝剤;および
v.本明細書のどこかで定義される任意選択の界面活性剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤が約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0038】
したがって、本発明は:
i.MEDI8897のVHおよびVL配列を有する抗RSVモノクローナル抗体;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;
iv.本明細書のどこかで定義される1つまたは複数の緩衝剤;および
v.本明細書のどこかで定義される任意選択の界面活性剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0039】
したがって、本発明は:
i.MEDI8897の完全長重鎖および軽鎖配列を有する抗RSVモノクローナル抗体;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;
iv.本明細書のどこかで定義される1つまたは複数の緩衝剤;および
v.本明細書のどこかで定義される任意選択の界面活性剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0040】
したがって、本発明は:
i.抗RSVモノクローナル抗体MEDI8897;
ii.本明細書のどこかで定義されるイオン性賦形剤(例えば、塩);
iii.本明細書のどこかで定義される糖;
iv.本明細書のどこかで定義される1つまたは複数の緩衝剤;および
v.本明細書のどこかで定義される任意選択の界面活性剤;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0041】
本発明は:
i.抗RSVモノクローナル抗体;
ii.アルギニン塩酸塩;
iii.スクロース;
iv.L-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物;および
v.ポリソルベート80;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このアルギニン塩酸塩は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の6個のCDRを有する。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897のVHおよびVL配列を有する。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の完全長重鎖および軽鎖配列を有する。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体はMEDI8897である。
【0042】
本発明は:
i.抗RSVモノクローナル抗体;
ii.アルギニン塩酸塩;
iii.スクロース;
iv.L-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物;および
v.ポリソルベート80;
を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約100mg/mlの濃度で存在し、このアルギニン塩酸塩は約80mMの濃度で存在し、この製剤は約6.0のpHを有する。スクロースは、好ましくは約120mMの濃度を有する。L-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物は、好ましくは約30mMの濃度を有する。ポリソルベートは、好ましくは0.02%~0.04%の濃度を有し、より好ましくは、この濃度は0.02%である。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の6個のCDRを有する。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897のVHおよびVL配列を有する。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の完全長重鎖および軽鎖配列を有する。一実施形態では、RSVモノクローナル抗体はMEDI8897である。
【0043】
本明細書に記載の製剤は、例えば、1つまたは複数の糖、塩、アミノ酸、ポリオール、キレート剤、乳化剤、および/または保存剤を含む1つまたは複数の追加の賦形剤も含み得る。
【0044】
本発明の製剤は、好ましくは医薬製剤である。
【0045】
本発明は、軽鎖CDR配列:配列番号3のCDR-L1、配列番号4のCDR-L2、配列番号5のCDR-L3、および重鎖CDR配列:配列番号6のCDR-H1、配列番号7のCDR-H2、配列番号8のCDR-H3を有する単離されたモノクローナル抗体を提供する。本発明は、配列番号9の軽鎖可変領域配列および配列番号10の重鎖可変領域配列を有する単離されたモノクローナル抗体を提供する。本発明は、配列番号9の配列の軽鎖可変領域の3個のCDRおよび配列番号10の配列の重鎖可変領域の3個のCDRを有する単離されたモノクローナル抗体を提供する。本発明は、配列番号1の軽鎖配列および配列番号2の重鎖配列を有する単離されたモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、抗体はIgG1抗体である。本発明は、本明細書に開示される新規の独創的なモノクローナル抗体MEDI-8897に基づくそれ自体が新規の独創的なモノクローナル抗体を提供する。本発明は、本発明による単離されたモノクローナル抗体を発現することができるハイブリドーマを提供する。本発明は、本発明による単離されたモノクローナル抗体をコードする核酸を提供する。本発明は、本発明による核酸を含む発現ベクターを提供する。本発明は、本発明による発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明は、抗体が発現されるような条件下で宿主細胞を培養することを含む、本発明による単離されたモノクローナル抗体を組換え生産するためのプロセスを提供する。本発明は、薬剤として使用するための、本明細書で定義される単離されたモノクローナル抗体を提供する。本発明は、疾患の治療に使用するための、本明細書で定義される単離されたモノクローナル抗体を提供する。本発明は、本明細書で定義される単離されたモノクローナル抗体を対象に投与することを含む、対象の疾患を処置する方法を提供する。本発明は、本明細書で定義される単離されたモノクローナル抗体を含む医薬組成物を提供する。本発明は、薬剤として使用するための本明細書で定義される医薬組成物を提供する。本発明は、疾患の処置に使用するための本明細書で定義される医薬組成物を提供する。本発明は、本明細書で定義される医薬組成物を対象に投与することを含む、対象の疾患を処置する方法を提供する。
【0046】
本発明は、薬剤として使用するための本明細書のどこかに記載されるような医薬製剤を提供する。
【0047】
本発明は、疾患の処置または予防に使用するための、本明細書のどこかに記載されるような医薬製剤を提供する。
【0048】
本発明は、本明細書のどこかに記載されるような医薬製剤を対象に投与することを含む、対象の疾患を処置または予防する方法を提供する。また、本明細書のどこかに記載されるような治療有効量の医薬製剤を対象に投与することによって対象の疾患を処置または予防する方法も本明細書で提供される。
【0049】
一実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、対象は2歳未満のヒトである。一実施形態では、対象は6週齢未満の未熟児である。
【0050】
一実施形態では、疾患は下部呼吸器疾患である。
【0051】
一実施形態では、疾患はRSV感染である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、MEDI8897の重鎖ヌクレオチド配列および翻訳を示す。
図2図2は、MEDI8897の軽鎖ヌクレオチド配列および翻訳を示す。
図3図3は、5℃、25℃、および40℃での3ヶ月間にわたるMEDI8897製剤の安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
いくつかのモノクローナル抗体が、生理的pH、すなわちヒト投与に一般的に望ましいpHに近いpIを有するという事実は、これらのモノクローナル抗体の製剤化に困難をもたらす。そのようなモノクローナル抗体について初めて、本発明は、これらの「困難な」抗体を医薬品として製剤化する動機を提供する。本発明以前には、そのような抗体は、商業的に有用な濃度および商業的に有用なpH範囲内で製剤化するための適切な製剤戦略の欠如のために、薬物候補とみなされなかったのであろう。
【0054】
本発明は、新規のモノクローナル抗体製剤を提供する。適切には、製剤は、モノクローナル抗体の等電点よりも1.0pH単位低い範囲内のpHを有する。
【0055】
本発明は:(i)抗RSVモノクローナル抗体;(ii)イオン性賦形剤(例えば、塩);を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は50~150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。
【0056】
本発明は:(i)抗RSVモノクローナル抗体;(ii)イオン性賦形剤(例えば、塩);を含む製剤をさらに提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有し;この製剤中のモノクローナル抗体の凝集率は、イオン性賦形剤を含まない同じ製剤中の同じ抗体の凝集率と比較して低い。
【0057】
凝集率は、本明細書に記載されるような標準的な技術に従って測定することができる。驚くべきことに、本発明による製剤は、良好な安定性を有すること、および自己凝集の減少、例えば室温で3ヶ月間保存したときに≦2.0%の凝集を有することを示すことが示された。したがって、本発明は、製剤中の抗体の安定性を高めることを目的とした、抗体製剤におけるイオン性賦形剤の使用を提供する。本発明は、製剤中の抗体の自己凝集を減少させることを目的とした、抗体製剤におけるイオン性賦形剤の使用をさらに提供する。
【0058】
抗体
本発明の製剤は、例えば、約pH5.5~約pH7.5、約pH6.0~約pH7.5、約pH6.3~約pH7.5、または約pH6.4~約pH7.5の範囲の低または中性pIを有する抗RSV抗体に特に有用である。抗体のpIは、標準的な技術、例えば、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)に従って測定することができる。したがって、本発明は:(i)低または中性pIを有するモノクローナル抗体;および(ii)イオン性賦形剤;を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。したがって、本発明は:(i)低または中性pIを有するモノクローナル抗体;および(ii)イオン性賦形剤;を含む製剤をさらに提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有し;製剤中のモノクローナル抗体の凝集率は、イオン性賦形剤を含まない同じ製剤中の同じ抗体の凝集率と比較して低い。
【0059】
一実施形態では、モノクローナル抗体は、pH6.4~pH7.5の範囲のpIを有する。
【0060】
一実施形態では、モノクローナル抗体は、IgG1またはIgG4モノクローナル抗体である。最も好ましくは、モノクローナル抗体は、IgG1モノクローナル抗体である。したがって、本発明は:(i)低または中性のpIを有するIgG1モノクローナル抗RSV抗体;および(ii)イオン性賦形剤;を含む製剤を提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する。したがって、本発明は:(i)低または中性のpIを有するIgG1モノクローナル抗体;および(ii)イオン性賦形剤;を含む製剤をさらに提供し、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有し、この製剤中のモノクローナル抗体の凝集率は、イオン性賦形剤を含まない同じ製剤中の同じ抗体の凝集率と比較して低い。
【0061】
本発明は、特に、抗体MEDI-8897またはその変異体を含む製剤に関する。一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも70%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも70%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも70%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも70%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも70%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも70%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。
【0062】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。
【0063】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。
【0064】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列と少なくとも95%同一である配列を含む重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列と少なくとも95%同一である配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。
【0065】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の重鎖可変領域CDR1配列とアミノ酸が1個だけ異なる重鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR2配列とアミノ酸が1個だけ異なる重鎖可変領域CDR2配列、およびMEDI8897の重鎖可変領域CDR3配列とアミノ酸が1個だけ異なる重鎖可変領域CDR3配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR1配列とアミノ酸が1個だけ異なる軽鎖可変領域CDR1配列、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR2配列とアミノ酸が1個だけ異なる軽鎖可変領域CDR2、およびMEDI8897の軽鎖可変領域CDR3配列とアミノ酸が1個だけ異なる配列を含む軽鎖可変領域CDR3配列を有する。
【0066】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の6個のCDRを有する。
【0067】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897のフレームワーク領域配列との70%の同一性と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する。
【0068】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897のフレームワーク領域配列との80%の同一性と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する。
【0069】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897のフレームワーク領域配列との90%の同一性と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する。
【0070】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897のフレームワーク領域配列との95%の同一性と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する。
【0071】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表1に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0072】
【表1】
【0073】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表2に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0074】
【表2】
【0075】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表3に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0076】
【表3】
【0077】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表4に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0078】
【表4】
【0079】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表5に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0080】
【表5】
【0081】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表6に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0082】
【表6】
【0083】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表7に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0084】
【表7】
【0085】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表8に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0086】
【表8】
【0087】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表9に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0088】
【表9】
【0089】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、以下の表10に示すものから選択されるMEDI8897の重鎖領域の変更と組み合わせられたMEDI8897の6個のCDRを有する:
【0090】
【表10】
【0091】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897のVHおよびVL配列を有する。
【0092】
好ましくは、抗体はIgG1抗体である。
【0093】
好ましくは、本明細書のどこかで定義される抗RSVモノクローナル抗体は、重鎖可変領域CDR3配列ETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を有する。
【0094】
本明細書のどこかで定義される抗RSVモノクローナル抗体の一実施形態では、重鎖のCDR3は、配列ETALVVSTTYLPHYFDNを含まない。好ましくは、本明細書のどこかで定義される抗RSVモノクローナル抗体の任意の変異重鎖可変領域CDR3配列(すなわち、配列番号8の変異体)は、ETALVVSTYLPHYFDNのでマークされた位置にEを保持する。好ましくは、本明細書のどこかで定義される抗RSVモノクローナル抗体の任意の変異重鎖可変領域CDR3配列(すなわち、配列番号8の変異体)は、ETALVVSTYLPHYFDNのでマークされた位置にTを有していない。
【0095】
一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、抗体の半減期を延長するために1つまたは複数のアミノ酸が挿入、欠失、または置換された改変Fc領域を有する。一実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、FcドメインのCH2領域の3個のアミノ酸置換(M252Y/S254T/T256E;YTEと呼ばれる)を有する。
【0096】
別の実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、MEDI8897の完全長重鎖および軽鎖配列を有する。抗RSV抗体には、抗体機能部分、例えば抗体またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体が含まれる。抗RSV抗体には、限定されるものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、エピトープ結合断片、例えばFab、Fab’、およびF(ab’)2、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって作製された断片がさらに含まれる。ScFv分子は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号明細書に記載されている。本開示に包含される免疫グロブリンまたは抗体分子は、あらゆる種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。
【0097】
抗体濃度
適切には、モノクローナル抗体は、本明細書に記載の製剤中に、約50mg/ml~約300mg/ml、約50mg/ml~約200mg/ml、約100mg/ml~約200mg/ml、約100mg/ml~約165mg/ml、約100mg/ml~約150mg/ml、または約50mg/ml、約75mg/ml、約100mg/ml、約105mg/ml、約110mg/ml、約115mg/ml、約120mg/ml、約125mg/ml、約130mg/ml、約135mg/ml、約140mg/ml、約145mg/ml、約150mg/ml、約155mg/ml、約160mg/ml、約165mg/ml、約170mg/ml、約175mg/ml、約180mg/ml、約185mg/ml、約190mg/ml、約195mg/ml、または約200mg/ml(これらの範囲内の値および範囲を含む)の濃度で存在する。
【0098】
適切には、モノクローナル抗体は、本明細書に記載の製剤中に約100mg/ml~約165mg/mlの濃度で存在する。適切には、モノクローナル抗体は、本明細書に記載の製剤中に約100mg/mlの濃度で存在する。
【0099】
pH
適切には、本明細書に記載の製剤は、ほぼ最適または最適な化学的安定性(加水分解、脱アミド化、異性化)を提供するために約pH5.5~約pH6.5の範囲のpHを有する。一実施形態では、本明細書に記載の製剤は約pH5.7~約pH6.3の範囲のpHを有する。一実施形態では、本明細書に記載の製剤は約5.7~約pH6.1の範囲のpHを有する。好ましい製剤は約5.8のpHを有する。他の好ましい製剤は約6.0のpHを有する。
【0100】
適切には、本明細書に記載の製剤は、約pH5.5~約pH6.0、約pH5.7~約pH6.0の範囲、または約pH5.5、約pH5.6、約pH5.7、約pH5.8、約pH5.9、約pH6.0、約pH6.1、約pH6.2、約pH6.3、約pH6.4、または約pH6.5のpHを有する。実施形態では、本明細書で提供される製剤のpHは5.7~6.0であり、より適切には製剤は約5.8のpHを有する。
【0101】
また、約pH7.4に近い製剤pHも注射部位の耐容性のために望ましい可能性がある。
【0102】
イオン性賦形剤
製剤に使用するための例示的なイオン性賦形剤には、塩および荷電アミノ酸が含まれる。イオン性賦形剤には、塩と荷電アミノ酸との組み合わせが含まれる可能性がある。
【0103】
例示的な荷電アミノ酸には、アルギニンおよびリジンが含まれる。
【0104】
例示的な塩としては、荷電アミノ酸の塩、例えば、アルギニンおよびリジンのコハク酸塩、酢酸塩、および硫酸塩が挙げられる。
【0105】
さらなる例示的な塩は、限定されるものではないが、塩化ナトリウム、ならびにナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムなどとの他の塩、例えば、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、および非経口投与の分野で常用の他の助剤などを含む、本明細書に記載の塩である。適切には、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、リジン塩酸塩、およびアルギニン塩酸塩から選択される。一実施形態では、塩はNaClである。別の実施形態では、塩はアルギニン塩酸塩である
【0106】
本明細書に記載の医薬製剤中のイオン性賦形剤、適切には塩の濃度は、一般に約50mM~約300mM、より適切には約50mM~約200mM、約50mM~約150mM、約50mM~約100mM、約60mM~約80mMの範囲、または約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、または約100mM(これらの範囲内のあらゆる範囲または値を含む)である。一実施形態では、イオン性賦形剤は約50mM~約125mMの濃度で存在する。
【0107】
一実施形態では、イオン性賦形剤は約50mM~約100mMの濃度で存在する。
【0108】
一実施形態では、イオン性賦形剤は約75mM~約100mMの濃度で存在する。
【0109】
適切な実施形態では、塩は、例えば約50mM~約100mMの濃度、適切には約70mMの濃度のNaClである。
【0110】
適切な実施形態では、塩は、例えば約50mM~約100mMの濃度、適切には約80mMの濃度のアルギニン塩酸塩である。
【0111】
緩衝剤
本明細書に記載の製剤は、適切には1つまたは複数の緩衝剤を含む。本明細書で使用される「緩衝剤」は、製剤のpHを維持するための賦形剤を指す。本明細書で提供される製剤に使用するための例示的な緩衝剤としては、限定されるものではないが、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩(ヒスチジンHCl)、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム/酢酸、リン酸ナトリウム、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、グリジン、および酢酸塩が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載の製剤に使用するための緩衝剤は、酢酸ナトリウム/酢酸である。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤はヒスチジンを含む緩衝剤である。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、コハク酸ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、クエン酸ヒスチジン、塩化ヒスチジン、または硫酸ヒスチジンを含む緩衝剤から選択される。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、またはそれらの組み合わせ(ヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩)である。一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤はL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物である。
【0112】
本明細書に記載の医薬製剤中の緩衝剤、適切には酢酸ナトリウム/酢酸の濃度は、一般に約10mM~約100mM、より適切には約15mM~約80mM、約25mM~約75mM、約30mM~約60mM、約40mM~約60mM、約40mM~約50mM、または約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、または約75mMの範囲(これらの範囲内のあらゆる範囲または値を含む)である。
【0113】
一実施形態では、1つまたは複数の緩衝剤は、例えば約10mM~約50mMの濃度、適切には約30mMの濃度のL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物である。
【0114】
緩衝剤のpHは、好ましくはpH5.5~pH6.0の範囲である。
【0115】
緩衝剤は、それ自体がイオン性賦形剤であり得ることを理解されたい。したがって、一実施形態では、緩衝剤はイオン性賦形剤である。この実施形態では、緩衝剤の濃度は、50mMよりも高い、すなわち本明細書に開示されるイオン性賦形剤の濃度と一致するべきである。この実施形態における緩衝剤の好ましい濃度は、イオン性賦形剤に関して本明細書のどこかで論じられる通りである。
【0116】
別の言い方をすれば、一実施形態では、イオン性賦形剤は製剤中の緩衝剤としても作用する。この実施形態では、追加の緩衝剤が存在してもしなくてもよい。
【0117】
糖および界面活性剤
本明細書に記載の製剤には、糖、例えば、限定されるものではないが、トレハロース、ラクトース、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、およびスクロースが適切に含まれる。他の実施形態では、三価以上の分子量の糖アルコール、例えば、グリセリン、デキストラン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどのポリオールを使用することができる。還元糖の例としては、限定されるものではないが、グルコース、マルトース、マルツロース、イソマルツロース、およびラクツロースが挙げられる。非還元糖の例としては、限定されるものではないが、糖アルコールおよび他の直鎖ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドであるトレハロースが挙げられる。糖アルコールの例としては、限定されるものではないが、ラクトース、マルトース、ラクツロース、およびマルツロースなどの二糖の還元によって得られる化合物であるモノグリコシドが挙げられる。グリコシド側基は、グルコシドまたはガラクトシドのいずれかであり得る。糖アルコールのさらなる例としては、限定されるものではないが、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、およびイソマルツロースが挙げられる。一実施形態では、糖は、トレハロース、ラクトース、マンニトール、ラフィノース、およびスクロースからなる群から選択される。特定の実施形態では、トレハロースは本明細書に記載の製剤中の糖として使用される。特定の実施形態では、スクロースは本明細書に記載の製剤中の糖として使用される。
【0118】
適切には、本明細書に記載の製剤中の糖、例えばトレハロースの量は、約1%(w/v)~約10%(w/v)である。特記しない限り、本明細書で使用される成分の百分率(%)は重量/容量(w/v)%を意味する。例示的な実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤中の糖の量は、約1%(w/v)~約8%(w/v)、または約2%(w/v)~約6%(w/v)、約2%(w/v)~約5%(w/v)、約3%(w/v)~約5%(w/v)、または約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、約4%(w/v)、約5%(w/v)、約6%(w/v)、約7%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、または約10%(w/v)(これらの範囲内のあらゆる値および範囲を含む)である。
【0119】
本明細書に記載の製剤は界面活性剤を適切に含む。
【0120】
本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する有機物質を指す;すなわち、この両親媒性構造は、反対の溶解傾向の基、典型的には油溶性炭化水素鎖基および水溶性イオン基からなる。界面活性剤は、界面活性部分の電荷に応じて、アニオン性、カチオン性、および非イオン性界面活性剤に分類することができる。界面活性剤は、様々な医薬製剤および生物学的材料の調製物のための湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、および分散剤としてよく使用される。ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、40、60、または80);ポリオキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアルアミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアルアミドプロピル-ジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウムまたはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウムのような薬学的に許容される界面活性剤;ならびにMONAQUA(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピレングリコール、およびエチレンとプロピレングリコールとのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)を本明細書に記載の医薬製剤に使用することができる。適切には、界面活性剤は、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80を含むポリソルベートである。一実施形態では、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0121】
適切には、本明細書に記載の製剤は、約0.001%~約0.5%(w/v)の界面活性剤(適切にはポリソルベート80)、より適切には約0.002%~約0.1%の界面活性剤、例えば、約0.01%~約0.2%、約0.02%~約0.1%、約0.02%~約0.07%、約0.03%~約0.06%、約0.04%~約0.06%、または約0.02%、約0.025%、約0.03%、約0.035%、約0.04%、約0.045%、約0.05%、約0.055%、約0.060%、約0.065%、約0.07%、約0.075%、約0.08%、約0.085%、約0.09%、約0.095%、または約0.1%(これらの範囲内のあらゆる範囲または値を含む)の界面活性剤を含む。
【0122】
本明細書に記載の製剤は、界面活性剤および糖を適切に含む。本明細書に記載の製剤は、界面活性剤および1つまたは複数の緩衝剤を適切に含む。本明細書に記載の製剤は、糖および1つまたは複数の緩衝剤を適切に含む。本明細書に記載の製剤は、界面活性剤、糖、および1つまたは複数の緩衝剤を適切に含む。
【0123】
本明細書に記載の製剤はまた、例えば、1つまたは複数の糖、塩、アミノ酸、ポリオール、キレート剤、乳化剤、および/または保存剤を含む1つまたは複数の追加の賦形剤も含み得る。
【0124】
医薬的使用
本発明の製剤は、好ましくは医薬製剤である。適切には、本明細書に記載の医薬製剤は、「薬学的に許容される」ものであり、したがって、連邦政府または州政府の規制当局によって要求された、または米国薬局方、欧州薬局方、もしくはその他の一般に認められている薬局方に記載されている必要な承認要件を満たしているため、動物、特にヒトに使用することができる。
【0125】
本発明は、医薬として使用するための、本明細書のどこかに記載されるような医薬製剤を提供する。本発明は、疾患の処置に使用するための、本明細書のどこかに記載されるような医薬製剤を提供する。本発明は、本明細書のどこかに記載されるような医薬製剤を対象に投与することを含む、対照の疾患を処置する方法を提供する。本明細書のどこかに記載されるような処置有効量の医薬製剤を対象に投与することによって対象を処置する方法も本明細書で提供される。
【0126】
本明細書で使用される「対象」という用語は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば、限定されるものではないが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物を含む。一実施形態では、対象はヒトである。
【0127】
本発明は、本明細書のどこかに記載される医薬製剤を対象に投与することを含む、対象の疾患を処置または予防する方法を提供する。また、本明細書のどこかに記載される治療有効量の医薬製剤を対象に投与することによって対象の疾患を処置または予防する方法も本明細書で提供される。
【0128】
一実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、対象は2歳未満のヒトである。一実施形態では、対象は6週齢未満の未熟児である。
【0129】
実施形態では、製剤は、皮下投与または注射によって対象に投与される。
【0130】
適切には、製剤は液体製剤または凍結製剤である。
【0131】
また、本明細書に記載されるような医薬製剤を調製すること、およびこの医薬製剤をシリンジに適切に充填して充填済みシリンジにすることを含む医薬製剤の調製方法も本明細書で提供される。
【0132】
適切には、本明細書に記載の医薬製剤は、滅菌水中で調製される、または注射用の滅菌水中に所望の量で再懸濁される。
【0133】
例示的実施形態では、医薬製剤は、約0.1mL~約20.0mL、より適切には約0.5mL~約15.0mL、約0.5mL~約12.0mL、約1.0mL~約10.0mL、約1.0mL~約5.0mL、約1.0mL~約2.0mL、または約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1.0mL、約1.1mL、約1.2mL、約1.3mL、約1.4mL、約1.5mL、約1.6mL、約1.7mL、約1.8mL、約1.9mL、約2.0mL、約2.1mL、約2.2mL、約2.3mL、約2.4mL、約2.5mL、約2.6mL、約2.7mL、約2.8mL、約2.9mL、または約3.0mL(これらの範囲内のあらゆる範囲または値を含む)の容量を有する。
【0134】
適切な実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤は、液体製剤、すなわち滅菌水または注射用水(WFI)中で調製される医薬製剤であるが、この医薬製剤は、凍結製剤または予め凍結乾燥された製剤であってもよい。
【0135】
本発明はまた、滅菌水のみを使用して本明細書に記載されるような本発明による製剤に再構成することができる凍結乾燥ケーキを提供する。抗体:イオン性賦形剤の比率は、凍結乾燥ケーキにおいても凍結乾燥後の製剤と同じであることを理解されたい。一実施形態では、抗体:イオン性賦形剤の比は、450:1~40:1の範囲内である。製剤が凍結乾燥されている場合、本明細書で提供される製剤の濃度は再構成後の濃度であり、したがって、いわゆる「医薬品」の濃度である。例として、半再構成法が使用される場合(凍結乾燥中に除去された水の量の半分が再構成中に戻される場合)、再構成後、抗体の濃度は、凍結乾燥前の2倍、すなわちいわゆる凍結乾燥前の「薬物-物質」組成物中に存在したときの2倍である。したがって、本発明は、凍結乾燥させて凍結乾燥ケーキを形成することができる組成物をさらに提供し、この凍結乾燥ケーキは、滅菌水のみを使用して本明細書に記載されるような本発明による製剤に再構成することができることを理解されたい。適切な再構成法は当業者には公知であろう。実施形態では、本明細書に記載されるような液体医薬製剤を提供し、適切な条件下で製剤を凍結することによって凍結製剤を調製することが望ましい。例えば、凍結製剤は、液体製剤を0℃未満、より適切には約-20℃、約-40℃、約-60℃、または適切には約-80℃に凍結することによって提供することができる。医薬製剤はまた、液体製剤として適切に調製され、約2℃~約8℃、または約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、または約8℃で保存される。
【0136】
液体製剤および/または凍結製剤から凍結乾燥医薬製剤を調製するための適切なプロトコルおよび方法は当技術分野において公知である。
【0137】
製剤の安定性
例示的な実施形態では、本明細書に記載の製剤は、室温または約2℃~約8℃の温度範囲、適切には約5℃での長期保存で安定である。本明細書で使用される室温は、一般に約22℃~約25℃の範囲内である。適切には、医薬製剤は、約2℃~約8℃(例えば、5℃)で少なくとも6ヶ月間保存した後も安定である。本明細書で使用される、保存期間での「安定な」(または「安定性」)という用語は、製剤が凝集、分解、半抗体形成、および/または断片化に抵抗することを示すために使用される。モノクローナル抗体の安定性は、基準と比較して、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、円偏光二色性(CD)、尿素変性技術(urea unfolding technique)、内在性トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、および/またはANS結合技術によって測定される凝集度、分解、半抗体の形成、または断片化によって評価することができる。
【0138】
モノクローナル抗体を含む医薬製剤の全体的な安定性は、例えば、単離された抗原分子を用いるELISAおよびラジオイムノアッセイを含む様々な免疫学的アッセイによって評価することができる。
【0139】
本明細書で使用される「低レベルから検出不可能なレベルの凝集」という句は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)または静的光散乱(SLS)技術によって測定される、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、または約0.5重量%以下のタンパク質の凝集を含有する医薬製剤を指す。適切には、医薬製剤は、≦5.0%の凝集、より適切には≦4.0%の凝集、≦3.0%の凝集、≦2.0%の凝集、≦1.0%の凝集、または0.5%の凝集を示す。適切には、液体医薬製剤および/または凍結医薬製剤は、≦5.0%の凝集、より適切には≦4.0%の凝集、≦3.0%の凝集、≦2.0%の凝集、≦1.0%の凝集、または0.5%の凝集を示す。
【0140】
本明細書で使用される「低レベルから検出不可能なレベルの断片化」という語句は、例えば、HPSECまたは還元キャピラリーゲル電気泳動(rCGE)によって決定されるような単一ピークでは、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、または約99%以上の全モノクローナル抗体を含有する医薬製剤を指し、非分解モノクローナル抗体またはその非分解断片を表し、全モノクローナル抗体の約5%超、約4%超、約3%超、約2%超、約1%超、または約0.5%超を有する他の単一ピークを含まない。断片化は、IgG4モノクローナル抗体において適切に測定することができる。
【0141】
理論に拘束されることを望むものではないが、自己凝集の減少は、kD値の増加によって証明されるように、コロイド安定性の改善によるものと考えられる。
【0142】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の製剤は、目視観察、光散乱、ネフェロメトリー、および比濁法のように乳光の減少および相分離の減少を有する。
【0143】
さらなる実施形態、実施形態の特徴、および利点、ならびに様々な実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【実施例
【0144】
実施例1-IgG1製剤
MEDI8897は、RSV-Fタンパク質に対するヒトIgG1κ-YTEモノクローナル抗体である。FcドメインのCH2領域における3つのアミノ酸置換(M252Y/S254T/T256E;YTEと呼ばれる)を導入して、MEDI8897の血清半減期を延ばした。MEDI8897の配列情報を図1および2に示す。MEDI8897のpIをcIEFによって測定すると、6.4~6.7であり、6.4に主ピークがあった。pIは、製造、製剤、および保存安定性に関する潜在的な問題を示唆する製剤緩衝剤の範囲(5.5~6.5)と重複する。
【0145】
MEDI8897の熱安定性を示差走査熱量測定によって測定した。Tm2が82℃であるのに対し、Tmlは61℃であることが分かった。61℃のTmlは、Tml>50℃のCDTP基準を満たしている。
【0146】
安定性の概要
MEDI8897をデフォルトの開発可能な緩衝剤(developability buffer)(25mMヒスチジン、7%スクロース、pH6.0)に入れると、相分離が2~8℃で観察された。上層は75mg/mlのタンパク質濃度を有する一方、底層は125mg/mlであった。25℃で平衡化すると、2つの異なる相が消失し、1つの単相のみが観察された。2~8℃での相分離は、製剤のpH6.0に近いMEDI8897のpIに起因すると考えられる。溶解性を維持し、100mg/mlでのMEDI8897の相分離を防止する条件を目標とした、MEDI8897安定性評価にとってより適切な製剤緩衝剤を見出すために探索試験を開始した。
【0147】
5.9未満または6.7超のpHのデフォルトの開発可能な緩衝剤(25mMヒスチジン、7%スクロース)での製剤化は相分離を緩和した。pH5.0~6.7の間の開発可能な緩衝剤への75mMのNaClの添加もまた相分離を緩和した。最後に、pIから離れたpH値の酢酸緩衝剤およびリン酸緩衝剤も相分離を緩和した。これらのスクリーニング試験および製剤空間内のpIを有するmAbの予備知識に基づいて、評価のために代替の開発可能な緩衝剤(25mM His/HisHCl、75mM NaCl、4%スクロース、0.02%PS80、pH6.0)を選択した。
【0148】
kD試験
最初のkDスクリーニングでは、すべての試料を、25℃で2~10mg/mlの25mMのヒスチジン(pH5.5)ベースの緩衝剤中で評価した。MEDI8897はpH5.5でより可溶性であり、不溶性粒子に敏感なDLS測定を容易にするため、この緩衝剤をpH6.0の代わりに選択した。アルギニン-HCl、リジン-HCl、およびNaClを含むイオン性賦形剤を10mM、25mM、50mM、75mM、および100mMの濃度で評価した。さらに、プロリン、アラニン、NaSO、およびヒスチジンを、100mMの濃度のみで評価した。最後に、2%、4%、および6%スクロースを評価して、スクロースがタンパク質-タンパク質相互作用に影響を与えるかどうかを決定した。すべての条件を緩衝剤対照(25mM ヒスチジン、pH5.5)と比較した。
【0149】
対照試料は、2~10mg/mlで6.2~7.8nmに増加する流体力学的半径を有する、異なるタンパク質-タンパク質相互作用を示した。アルギニン-HCl、リジン-HCl、およびNaClは、2~10mg/mlの濃度範囲にわたって流体力学的サイズの増加がないことによって証明されるように、25mMの濃度で開始するタンパク質-タンパク質相互作用の減少を示した。25~100mMの間ではさらなる効果は見られなかった。100mMの濃度で、プロリンおよびアラニンは対照と同様のPPIを示したが、NaSOおよびヒスチジンはPPIを軽減した。最後に、スクロース濃度はPPIに影響を与えなかった。このデータは、荷電賦形剤(Arg-HCl、Lys-HCl、ヒスチジン、およびNaSO)はタンパク質-タンパク質相互作用を軽減するが、中性賦形剤(スクロース、プロリン、アラニン)はPPIを軽減しないことを例証している。したがって、pH5.5のイオン性賦形剤の添加により、100mg/mlでの相分離が減少した。
【0150】
40℃での安定性評価
kDスクリーニングに基づいて、40℃での安定性評価のためにいくつかの条件を選択した。表11は、製剤条件および40℃で見られた1ヶ月の分解率を要約する。
【0151】
【表11】
【0152】
この試験は、アルギニンおよびリジンがNaClよりも安定化していることを例証する。さらに、75mM以上は、凝集に対して安定化するようである。この試験に基づいて、アルギニンを、最も安定化させる凍結乾燥が容易な(lyo-friendly)賦形剤として選択し、次の一連の試験に進んだ。
【0153】
最後の凍結乾燥サイクル/代表的な物質に対する医薬品の安定性
これは、凍結乾燥ステップを完了させるための第1の代表的な材料であるため、安定性を、IND対応の安定性研究を補完するために製剤科学で評価した。30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、80mMのL-アルギニン塩酸塩、120mMのスクロース、0.04%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0中での100mg/mlの再構成後の製剤について3ヶ月間のデータを収集した。結果を図3に示す。2~8℃での保存は、3ヶ月の期間中に実質的に変化を示さず、臨床使用での製剤および乾燥凍結サイクルの適合性を裏付けている。したがって、これらのデータは、製剤が適切な安定性および溶解性を提供し、かつサイクル1製剤として適していることを実証する。
【0154】
【表12】
【0155】
本出願で引用したすべての文献、特許、雑誌記事、および他の資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
本発明は、添付の図面を参照しながらそのいくつかの実施形態に関連して十分に記載したが、当業者には様々な変更および修正が明らかであり得ることを理解されたい。そのような変更および修正は、本発明の範囲から逸脱しない限り、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれると理解されるべきである。
【0157】
本発明は、以下の付番された項を参照することによりさらに定義することができる。
項1.製剤であって、
i.抗RSVモノクローナル抗体;および
ii.イオン性賦形剤;
を含み、このモノクローナル抗体は約50mg/ml以上(例えば、約50mg/ml~約200mg/ml、約175mg/ml、約165mg/ml、約150mg/ml、または約125mg/ml)の濃度で存在し、このイオン性賦形剤は約50~約150mMの濃度で存在し、この製剤は約5.5~約7.5のpHを有する、製剤。
項2.モノクローナル抗体が、pH6.4~pH7.5の範囲のpIを有する、項1に記載の製剤。
項3.モノクローナル抗体が、約pH6.4の範囲のpIを有する、項1または項2に記載の製剤。
項4.モノクローナル抗体がIgG1モノクローナル抗体である、項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
項5.モノクローナル抗体が、軽鎖CDR配列:
配列番号3のCDR-L1
配列番号4のCDR-L2
配列番号5のCDR-L3
および重鎖CDR配列:
配列番号6のCDR-H1
配列番号7のCDR-H2
配列番号8のCDR-H3を有する、項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
項6.モノクローナル抗体が、配列番号9の軽鎖可変領域配列および配列番号10の重鎖可変領域配列を有する、項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
項7.モノクローナル抗体が、配列番号1の軽鎖配列および配列番号2の重鎖配列を有する、項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
項8.モノクローナル抗体が、約100mg/ml~約165mg/mlの濃度で製剤中に存在する、項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
項9.モノクローナル抗体が、約100mg/mlの濃度で製剤中に存在する、項8に記載の製剤。
項10.約pH5.7~約pH6.1の範囲のpHを有する、項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
項11.約pH6.0のpHを有する、項10に記載の製剤。
項12.イオン性賦形剤が塩である、項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
項13.塩がアルギニン塩酸塩である、項12に記載の製剤。
項14.イオン性賦形剤が、約75mM~約100mMの濃度で存在する、項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
項15.イオン性賦形剤が約80mMの濃度で存在する、項14に記載の製剤。
項16.糖をさらに含む、項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
項17.糖がスクロースである、項16に記載の製剤。
項18.糖が約100mM~約140mMの濃度で存在する、項16または17に記載の製剤。
項19.糖が約120mMの濃度で存在する、項18に記載の製剤。
項20.1つまたは複数の緩衝剤をさらに含む、項1~19のいずれか一項に記載の製剤。
項21.1つまたは複数の緩衝剤が、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、およびヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩から選択される、項20に記載の製剤。
項22.1つまたは複数の緩衝剤が、L-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩一水和物である、項21に記載の製剤。
1つまたは複数の緩衝剤が、約10mM~約50mMの濃度で存在する、項20~23のいずれか一項に記載の製剤。
項23.1つまたは複数の緩衝剤が、約30mMの濃度で存在する、項23に記載の製剤。
項24.界面活性剤をさらに含む、項1~23のいずれか一項に記載の製剤。
項25.界面活性剤がポリソルベートである、項25に記載の製剤。
項26.界面活性剤がポリソルベート-80である、項26に記載の製剤。
項27.界面活性剤が、約0.001%(w/v)~約0.07%(w/v)の濃度で製剤中に存在する、項25~27のいずれか一項に記載の製剤。
項28.界面活性剤が、約0.02%(w/v)の濃度で製剤中に存在する、項28に記載の製剤。
項29.例えば、1つまたは複数の糖、塩、アミノ酸、ポリオール、キレート剤、乳化剤、および/または保存剤を含む、1つまたは複数の追加の賦形剤をさらに含む、項1~28のいずれか一項に記載の製剤。
項30.医薬製剤である、項1~29のいずれか一項に記載の製剤。
項31.薬剤として使用するための項30に記載の医薬製剤。
項32.疾患の処置に使用するための項31に記載の医薬製剤。
項33.項31に記載の医薬製剤を対象に投与することを含む、対象の疾患を処置または予防する方法。
項34.軽鎖CDR配列:
配列番号3のCDR-L1
配列番号4のCDR-L2
配列番号5のCDR-L3
および重鎖CDR配列:
配列番号6のCDR-H1
配列番号7のCDR-H2
配列番号8のCDR-H3
を有する単離されたモノクローナル抗体。
項35.モノクローナル抗体が、配列番号9の軽鎖可変領域配列および配列番号10の重鎖可変領域配列を有する、項35に記載の単離されたモノクローナル抗体。
項36.モノクローナル抗体が、配列番号1の軽鎖配列および配列番号2の重鎖域配列を有する、項35または項36に記載の単離されたモノクローナル抗体。
項37.抗体はIgG1抗体である、項35~37のいずれか一項に記載の単離されたモノクローナル抗体。
項38.項35~38のいずれか一項で定義された単離された抗体を含む医薬組成物。
項39.薬剤として使用するための項35~38のいずれか一項に記載の単離されたモノクローナル抗体または項39に記載の医薬組成物。
項40.疾患の処置に使用するための項35~38のいずれか一項に記載の単離されたモノクローナル抗体または項39に記載の医薬組成物。
項41.項35~38のいずれか一項に記載の単離されたモノクローナル抗体または項39に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象の疾患を処置または予防する方法。
項42.項1~31のいずれか一項で定義された製剤中で、滅菌水のみを使用して再構成することができる凍結乾燥ケーキ。
項43.凍結乾燥させて凍結乾燥ケーキを形成することができる組成物であって、この凍結乾燥ケーキが、項1~31のいずれか一項で定義された製剤中で、滅菌水のみを使用して再構成することができる、組成物。
図1
図2
図3
【配列表】
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