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特許7046099ガスの速度又は流量を測定するための装置
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  • 特許-ガスの速度又は流量を測定するための装置 図1
  • 特許-ガスの速度又は流量を測定するための装置 図2A
  • 特許-ガスの速度又は流量を測定するための装置 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】ガスの速度又は流量を測定するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/684 20060101AFI20220325BHJP
   G01P 5/10 20060101ALI20220325BHJP
   G01F 1/688 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G01F1/684 A
G01P5/10 A
G01F1/688
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019556968
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018059817
(87)【国際公開番号】W WO2018192934
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】1753342
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】タイノフ,ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ブルジョワ,オリヴィエ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4050857(JP,B2)
【文献】米国特許第5231877(US,A)
【文献】特許第3945385(JP,B2)
【文献】特許第2584702(JP,B2)
【文献】特許第5874117(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1
G01P5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度とは異なる温度(Tg)でガス(102)の速度又は流量を測定するための装置であって、その装置が、
周囲温度で維持するのに適した(303)支持体(208)上に第1アーム(204P,204N)によって吊り下げられた第1プラットフォーム(202)であって、前記第1アームが、前記第1プラットフォームと前記支持体との温度差に基づいて第1電圧を供給するように構成された熱電トラック(214P,214N)を含み、前記第1プラットフォーム(202)は加熱要素を有さない、前記第1プラットフォーム;及び
前記第1電圧、前記ガスの温度、及び前記周囲温度に基づいて、速度又は流量の測定結果(F)を提供するのに適した処理ユニット(306);
を含む、前記装置。
【請求項2】
周囲温度センサを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ガス温度センサを更に含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記支持体(208)上で第2アーム(204P’,204N’)によって吊り下げられた第2プラットフォーム(202’)を更に含み、
前記第2アームが、前記第2プラットフォームと前記支持体との温度差に基づいて、第2電圧を供給するように構成された熱電トラック(214P’、214N’)を含み、
前記第1アーム(204P,204N)及び前記第2アーム(204P’,204N’)が異なる熱抵抗を有するか、及び/又は、前記第1プラットフォーム(202)及び前記第2プラットフォーム(202’)が異なる寸法を有し、そして、
前記処理ユニット(306)が、前記第1電圧及び前記第2電圧に基づいて、前記ガスの温度を供給するのに適している、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記プラットフォーム(202,202’)が同じ寸法を有し、平行に配置された前記第1アーム(204N,204P)が熱伝導率Kを有し、そして平行に配置された前記第2のアーム(204N’,204P’)が熱伝導率K’を有し、そして、
前記処理ユニット(306)が、
前記第1電圧及び前記周囲温度に基づいて前記第1プラットフォームの温度Tp、及び前記第2電圧及び前記周囲温度に基づいて前記第2プラットフォームの温度Tp’を計算し;そして、
下記関係式:
【数1】
(式中、P及びP’は、下記関係式:
【数2】
及び
【数3】
(式中、Tambは、周囲温度である)を満たす)
を満たす前記ガスの温度Tgを計算するのに適している、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
各プラットフォーム(202,202’)について、平行に配置されたアームの熱伝導率が1~1000nW/Kであり、そして、そのプラットフォームの側面が5~200μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
熱電トラックを含むアームによって前記支持体上に吊り下げられた複数の第1プラッ
トフォーム(202)を含み、種々の第1プラットフォームにおけるその熱電トラックが順番につなげられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記処理ユニット(306)が、前記ガスの温度と前記周囲温度との差に基づいて電力を発生するのに適した熱電供給装置(500)によって提供される、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記熱電供給装置が、熱電トラックを含むアームによって前記支持体(208)上に吊り下げられた第3プラットフォーム(202)のマトリックス(500)であり、全く同一の列における前記第3プラットフォームの熱電トラックが平行につなげられており、複数の列が順番につなげられている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
各プラットフォーム(202)が溝(206)上に位置しており、2個のアーム(204P)のそれぞれが前記プラットフォームの一方の側面を前記溝の一方の端部につなげた第1タイプの熱電トラック(214P)を含み、2個のアーム(204N)のそれぞれが前記プラットフォームの反対側の側面を前記溝の他方の端部につなげた第2タイプの熱電トラック(214N)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記アーム(204P,204N)が、熱電トラック(214P,214N)の下に電気絶縁ストリップ(226)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記熱電トラック(214P、214N)が、ドープされたテルル化ビスマスで作られている、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記支持体(208)が、前記ガス(102)を循環させるための管(302)に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、測定機器、特に、ガスの速度又は流量を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の産業システムでは、又は例えば暖房若しくは空調の装置では、ガスの速度又は流量を測定する必要がある。そのガスは、例えば配管で循環する。
【0003】
図1は、米国特許第6871538号の図8に相当し、そして、左から右へ循環する流体102の流量を測定するための装置100を示している。
【0004】
装置100は、支持体上において、例えばシリコン基板104上において、図の中で点線によって区切られた膜107を形成する絶縁層106を含み、それは、その基板に形成された空洞108を覆う。加熱要素110は、膜の中央部に配置されている。電気的に順番につなげられたアルミニウム112の熱電トラックとシリコン114の熱電トラックとの交互の組み合わせが、加熱要素の左右に対称的に2つ配置されている。順番に並べられた各組み合わせの熱電トラック間の接合部は、膜107(接合部122)上において及び膜の外側の層106(接合部120)上において、交互に配置されている。順番に並べられた各組み合わせの熱電トラックは、端子116Rと118Rとの間の電圧VR、端子116Lと118Lとの間の電圧VLを供給しており、これらの電圧は、接合部120の温度と接合部122の温度との差から生じる。装置100は、支持体の温度センサ124を更に含む。
【0005】
測定すべき流量は、2つの連続する熱電トラックによって供給される電圧VRと電圧VLとの差に基づいて得られる。測定結果は、膜の側面と膜の側面との間の温度差から生じる。実際、ガスの流れがない場合には、膜は、加熱要素の右側の温度と左側の温度とが対称的な温度になる。左から右へのガスの流れにより、膜の温度は非対称になる。
【0006】
加熱要素で速度又は流量を測定するための装置、例えば装置100のタイプの装置は、加熱要素による高いエネルギー消費、通常1mWより大きく、場合によっては最大100mWのエネルギーを消費するという欠点がある。速度又は流量を測定するための他の既知のタイプの装置には、例えば、ガスの流れを妨げる可能性のある可動部品又は大きな全体寸法といった種々の欠点がある。
【概要】
【0007】
一実施形態は、上述のいくつかの欠点又はすべての欠点を克服することを可能にするガスの速度又は流量を測定するための装置を提供する。
【0008】
一実施形態は、特にエネルギー消費が低いものであるガスの速度又は流量を測定するための装置を想定している。
【0009】
一実施形態は、ガスの速度又は流量を測定するために、エネルギーに関して自律型の装置を提供する。
【0010】
したがって、一実施形態は、周囲温度とは異なる温度でガスの速度又は流量を測定するための装置を想定しており、これは、周囲温度に維持するのに適した支持体上で第1アームによって吊り下げられた第1プラットフォーム(この第1のアームは、第1のプラットフォームと支持体との温度差に基づいて第1の電圧を供給するように構成された熱電トラックを含む);及び、第1電圧、ガス温度、及び周囲温度に基づいて速度又は流量の測定値を供給するのに適した処理ユニット;を含む。
【0011】
一実施形態によれば、装置は周囲温度センサを更に含む。
【0012】
一実施形態によれば、装置はガス温度センサを更に含む。
【0013】
一実施形態によれば、装置は、支持体上で第2アームによって吊り下げられた第2プラットフォーム、第2プラットフォームと支持体との温度差に基づいて第2の電圧を供給するように構成された熱電トラックを含む第2アーム、異なる熱抵抗を有する第1及び第2アーム、及び/又は異なる寸法を有する第1及び第2プラットフォーム、及び第1及び第2の電圧に基づいてガス温度を供給するのに適した処理ユニットを含む。
【0014】
一実施形態によれば、プラットフォームの寸法は同じであり、平行に配置された第1アームは熱伝導Kを有し、平行に配置された第2アームは熱伝導K’を有し処理ユニットは、第1電圧と周囲温度に基づいて第1プラットフォームの温度Tpを計算し、そして、第2電圧及び周囲温度に基づいて第2プラットフォームの温度Tp’を計算し、そして、下記の関係式:
【数1】
(式中、P及びP’が、
【数2】
及び
【数3】
の関係を満たしており、そして、Tambは周囲温度である)
を満たすガス温度Tgを計算するのに適している。
【0015】
一実施形態によれば、各プラットフォームについて、平行に配置されたアームの熱伝導率は、1~1000nW/Kであり、プラットフォームの側面は5~200μmである。
【0016】
一実施形態によれば、装置は、熱電トラックを含むアームによって支持体上に吊り下げられた複数の第1プラットフォームを含み、種々の第1プラットフォームにおける熱電トラックが順番につなげられている。
【0017】
一実施形態によれば、処理ユニットは、ガス温度と周囲温度との差に基づいて電力を生成するのに適した熱電供給装置によって供給される。
【0018】
一実施形態によれば、熱電供給装置は、熱電トラックを含むアームによって支持体上に吊り下げられた第3プラットフォームのマトリックスであり、全く同一の列の第3プラットフォームの熱電トラックは、平行につなげられ、そしてその列は順番につなげられている。
【0019】
一実施形態によれば、各プラットフォームは溝上に配置され、2個のアームのそれぞれは、溝の端部の一方にプラットフォームの側面をつなげる第1タイプの熱電トラックを含み、そして、2個のアームのそれぞれは、溝のもう一方の端部にプラットフォームの反対側をつなげる第2タイプの熱電トラックを含む。
【0020】
一実施形態によれば、アームは、熱電トラックの下に電気絶縁ストリップを含む。
【0021】
一実施形態によれば、熱電トラックはドープされたテルル化ビスマスである。
【0022】
一実施形態によれば、支持体は、ガスを循環させるための管内に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
これらの特徴及び利点、並びにその他は、添付の図面を参照して、以下における特定の実施形態の非限定的な説明において詳細に説明される:
図1は、既に上述しており、流体の流量を測定するための装置を表している;
図2A及び2Bは、それぞれ、ガス速度センサの実施形態についての上面図及び断面図である;
図3は、図2A及び図2Bのセンサを使用して流量を測定するための装置の実施形態についての断面図である;
図4は、図2A及び図2Bにおける2個のタイプのセンサについての上面図である;そして、
図5は、図2A及び2Bにおけるタイプのセンサのマトリックスを含む熱電装置の線図である。
【詳細な説明】
【0024】
異なる図における同じ参照番号は、同じ構成要素を示しており、更に、種々の図は縮尺通りに描かれていない。明確にするために、説明される実施形態を理解するのに有用な構成要素のみを表して詳細に説明される。
【0025】
以下の説明では、絶対的な位置の用語(例えば、「左」、「右」など)に言及する場合には、問題となる図では、問題となる構成要素の向きに言及しており、実際には、説明されている装置の向きが異なる場合となる可能性があることを理解されたい。特に明記しない限り、「実質的に」という用語は、10%以内、好ましくは5%以内を意味する。
【0026】
図2A及び2Bは、それぞれ、ガス102の速度のセンサ200の実施形態の上面図及び断面図である。ガス102は、図2Aの左から右へ、図2Bの平面に対して直交して、移動している。センサ200は、図3に関する以下で説明するタイプにおける、速度又は流量を測定するための装置で使用されることを意図している。
【0027】
センサ200は、例えばシリコン製の基板208の正面においてくり抜かれた溝206の上方で、アーム204P及び204Nによって吊り下げられた例えば長方形のプラットフォーム202を含む。実施例として、2個のアーム204Pによって、プラットフォームの側方が溝の縁部につなげられ、そして、2個のアーム204Nによって、プラットフォームの反対側の側方が他方の溝の縁部につなげられている。溝206は、ガスの流れの方向に延びている。
【0028】
各アーム204P又は204Nは、例えばテルル化ビスマスで作られた熱電トラック214P、アーム204Pのドープされたp型及びアーム204Nのn型を含む。トラックは、プラットフォームと溝の端部を超えて延びている。プラットフォーム上に位置する金属アイランド216は、2つの組み合わせ214P~214Nのトラックを順番につなげている。214P~214Nの組み合わせは、端子222及び224のそれぞれにつなげられた2個の金属接点218及び220を平行につなげている。
【0029】
プラットフォーム202は、例えば、溝206の外側の基板208を更に覆う絶縁層226の一部である。実施例として、絶縁層226は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は酸化アルミニウムとしてもよい。実施例として、各アームにおいて、絶縁層226のストリップは、アームの熱電トラックを支持する。溝206は、使用される製造プロセスに応じて、溝の端部近くの絶縁層の部分228の下に延ばすことができる。
【0030】
作動中、ガスはプラットフォーム202の周りを循環する。基板は、ガスの温度とは異なる温度に維持される。実施例として、ガスと基板との温度差は0.5°Cを超えている。例えば、基板は周囲温度に維持され、ガスは周囲温度とは異なる温度となる。プラットフォームの温度と基板の温度との差に関連する電圧が、端子222と224の間に発生する。この電圧はガスの速度に関連する。
【0031】
実際、ガスの移動がない場合には、アームの熱伝導性によって、プラットフォームの温度は基板の温度に近づき、端子222と224との間の電圧はゼロと大きな差はない。アームの熱抵抗によってガスの速度が増加すると、プラットフォームの温度が基板の温度から離れて更にガスの温度に近づき、端子222と端子224との間の電圧が増加する。
【0032】
実質的に均一なプラットフォーム温度を得るために、アームの耐熱性とプラットフォームの寸法とが提供されることが好ましい。アームの耐熱性とプラットフォームの寸法とは、例えば、基板温度とガス温度との間に含まれるプラットフォーム温度が、基板温度とガス温度とが実質的に異なるように、ガス速度が例えば0.1~10m/sの場合において、例えば、ガスと基板との温度差が10%を超えて異なるように提供される。実施例として、プラットフォームの側辺は5~200μmである。好ましくは、プラットフォームと基板との間に平行に配置されたすべてのアームの熱伝導率は、1~1000nW/Kである。
【0033】
実施例として、アームの長さと幅との比は10~50である。アームの幅は、例えば、0.5~3μmに含まれる。絶縁層226の厚さは、例えば、50~500nmである。熱電トラックの厚さは、例えば100~300nmである。実施例として、金属アイランド216及び金属接点218及び220は、ニッケル、パラジウム又はチタン金から作られる。実施例として、金属アイランド216の厚さ及び金属接点218及び220の厚さは、50~500nmである。
【0034】
1つの利点によれば、図1の装置100の膜107とは対照的に、センサ200のプラットフォーム202は加熱要素を有さず、すなわち、センサ200はエネルギーを消費しない。
【0035】
センサ200の非常に特別な利点は、膜の両側の間での異なる温度に起因する2個の電圧VR及びVLを供給する図1の装置100とは対照的に、プラットフォーム202の温度に起因する単一の電圧をセンサ200が供給するという事実から生じることである。すなわち、図1の装置100とは対照的に、センサ200によって、特に正確な測定が可能となる。この装置100では、測定のための十分な電圧差を得るために、非常に強い加熱(通常、最大150°Cの温度への加熱)が実際には必要であるので、電圧VRとVLとの電圧差の結果が、正確な測定するのに十分に高い値を提供することができない。
【0036】
図3は、図2A及び図2Bのセンサ200を使用して、ガス102の流量を測定するための装置300の一例の断面図である。
【0037】
装置300は、ガス102が循環する管302を含む。センサ200は、周囲温度の熱源、例えば、管の壁に作られた開口部304を通して周囲空気と接触するフィン303を備えたラジエータに熱的につなげられている。管302は、例えば、円錐若しくはオリーブのコネクタ、又はフランジなどの図示されていない構成要素によってガスを循環させるための配管につなげられることが意図されている。例えば、配管は、産業システムや空調システムなどの完全なシステムの一部を形成する。
【0038】
センサ200の端子222及び端子224(図3では隠れている)は、供給源308によって供給される処理ユニット306(PROC)につなげられている。実施例として、処理ユニットは、メモリとプログラムを実行するために提供されるプロセッサとを含む。
【0039】
作動中において、前述のように、ガスの温度は周囲温度とは異なる。装置300の実施例では、周囲温度、ガス温度、並びに、ガスの性質及び圧力に関連するガスの特性(密度、比熱容量、熱伝導率又は粘度など)は、例えば完全なシステムの制御ユニットなどのユーザによって処理ユニット306に供給される。変形例として、装置300は、周囲温度及び/又はガス温度及び/又はガスの特性を測定することを目的とした追加のセンサを装備することができる。周囲温度及び/又はガス温度の追加のセンサは、例えば、白金抵抗サーミスターなどのサーミスター、又は熱電対センサなどの熱電装置とすることができる。追加のガス温度センサの一例については、図4を参照して以下に説明する。
【0040】
処理ユニットは、センサ200によって供給される電圧、ガス温度、周囲温度、及びガスの特性に基づいて、ガスの流量の測定値Fを提供する。測定値Fは、有線リンク又は無線リンクによってユーザに送信することができる。
【0041】
1つの利点によれば、センサ200はエネルギーを消費しないために、処理ユニットの作動に必要な電力のみが供給源308によって供給される。したがって、流量測定装置は、例えば100μW未満の消費電力で特にエネルギー効率が高くなる。次いで、装置300は電池によって供給されてもよく、流量測定装置は、電池を交換することなく数年間作動することができる。
【0042】
別の利点によれば、プラットフォームの寸法が小さいので、ガス流量の変動は、特に、プラットフォームの温度の急速な変動に反映される。特に迅速な装置、例えば1秒未満の流量変化を検出できる装置が得られる。
【0043】
別の利点によれば、センサ200の寸法は特に小さいためにその存在管内のガスの流れに著しい影響を及ぼさないので、装置によって生成される圧力損失は特に低いものとなる。
【0044】
流量測定の前に、較正段階が実行されることが好ましい。この較正段階は、測定すべきガスと同じ性質及び同じ圧力のガスをパイプ302内で循環させることからなる。注入されたガスは、周囲温度Tamb0とは異なり、例えば周囲温度を超える所与の較正温度Tg0である。ガスの流量Fg0を変化させて、センサ200から供給される電圧Vth0が測定される。したがって、電圧Vth0の値は、ガス流量Fg0の関数として較正され、処理ユニット306のメモリに格納することができる。
【0045】
ガスの温度と周囲温度が較正段階中に同じ場合において、ガスの流量を測定することができる。この目的のために、処理ユニットは、センサ200の電圧Vthを測定し、そして、測定値Fとして、較正値Vth0が測定値Vthに等しい値を提供する。次いで、異なるガス温度毎に、異なる較正温度を提供することができる。
【0046】
ガスの流量は、その温度Tg及び周囲温度Tambが較正段階における温度Tg0及びTamb0と異なる場合に測定することもできる。この目的のために、センサによって供給される電圧Vthを測定した後に、処理ユニットは、測定値Fとして、較正された電圧値Vth0が以下の関係式:
【数4】
を満たす値を提供する。
したがって、異なる温度でのガス流量を1つだけの較正温度で測定することができ、これによって較正操作が簡単になる。
【0047】
更に、同様の装置(この装置の速度センサが、同じ寸法を備え異なるアームも備えたプラットフォームを有する)に対して、一般的な較正が可能である。これらのセンサは、ガスの速度に対して異なる感度を持っており、これは、例えば異なる測定範囲に相当する。較正は、センサ(このセンサのアームは、センサ200のアームの熱伝導率Kとは場合により異なる熱伝導率K0を有する)を使用して行われる。ここで、熱伝導率は、プラットフォームと基板との間の平行なアームによって表されると考えられる。
流量Fg0の各値について、較正中にプラットフォームから基板へのアームによって伝導される熱力P0は、次の関係式:
【数5】
(式中、Snpは、熱電対214N~214Pのゼーベック係数である)
に基づいて、電圧値Vth0に基づいて計算される。更に、較正中のプラットフォームの温度Tp0は、次の関係式:
【数6】
により計算される。
【0048】
これから、プラットフォームとガスとの間の熱交換係数の値h0が推定され、次の関係式:
【数7】
(式中、Sはプラットフォームの表面積である)
で定義される。こうして、流量Fg0の関数としての交換係数の較正値h0が得られた。流量測定段階中においてセンサによって供給される電圧Vthが測定され、そして、測定中においてプラットフォームから基板へのアームによって伝導される電力Pが決定され、下記の関係式:
【数8】
によって提供される。
プラットフォームの測定温度Tpは、次の関係式:
【数9】
によって計算される。
【0049】
これから、プラットフォームとガスとの間の測定熱交換係数hが推定され、下記の関係式:
【数10】
によって定義される。
【0050】
すなわち、流量の測定値Fは、較正値h0が測定値hに等しい値である。したがって、較正装置と測定装置のプラットフォームが同じ寸法を有し、更にこれらの装置はガスとプラットフォームとの熱交換係数が等しいと考えられるので、流量を測定することができる。したがって、1つだけの較正作動の後に、装置300のタイプについてのさまざまな装置(これは、異なる測定範囲及び/又は異なる感度を有する)を使用することが可能である。
【0051】
変形例として、較正によって決定される代わりの値h0は、ガスの特性とプラットフォームの寸法に基づいて理論的に取得することができる。この目的のために、ガスのプラントル(Pr)数が決定される。各流量値Fg0(プラットフォームのレベルでのガスの速度)について、次いで、プラットフォーム周囲のガス流量についてのレイノルズ数Reが決定され、そして、熱交換を特徴付けるヌッセルト数Nuは、当業者に知られている相関関係によりPr及びRe数から計算される。実施例として、下記の相関関係:
【数11】
を使用することができる。
【0052】
h0値は、Nuの数値、プラットフォームの寸法、及びガスの熱伝導率から従来のように推定される。すなわち、Tg値及びTamb値を処理ユニットに供給することによって、使用される相関関係の有効範囲内で、較正操作なしで流量を測定することが可能である。
【0053】
図4は、図2A及び図2Bのセンサ200の上面図、及びセンサ200と同じ構造を有する追加のセンサ200’の上面図である。センサ200及び200’は、同じ基板208上に配置され、同じ溝206の上に位置されるそれらのアーム及びそれらのプラットフォームを有する。センサ200及び200’は、同じ寸法のプラットフォームを有している。センサ200及び200’は、それらのそれぞれのアーム204P、204Nと204P’、204N’との寸法が異なり、すなわち、センサ200及び200’のアームは、それぞれ異なる熱伝導率K及びK’を有する。
【0054】
1組のセンサ200及び200’は、図3の装置300で使用されてもよい。その後、センサ200'の端子222'及び224'は、処理ユニット306につなげられる。
【0055】
作動中、センサ200及び200'は、それらの端子222、224と222'、224'との間に、アームの熱伝導率に違いがあるので、異なる電圧Vth及びVth'を供給する。処理ユニットは、ガスの温度Tgを計算し、下記の関係式:
【数12】
(式中、P及びP'はアームによって伝導される熱力であり、下記の関係式:
【数13】
及び
【数14】
によって提供され、Tp及びTp'は、Tp=Vth*Snp+Tamp、及びTp'=Vth'*Snp+Tambの関係式によって提供されるプラットフォーム温度である)
によって提供される。
【0056】
したがって、1組のセンサ200及び200'は、エネルギーの点で自律的であり、センサ200と同時に製造するのが特に簡単である、ガスの温度Tgのセンサを構成する。
【0057】
図5は、共通基板208上における、図2A及び図2Bのセンサ200のタイプのセンサのマトリックス500を示す。マトリックスは、センサ200の位置において、図3のタイプの装置が使用されることを意図している。
【0058】
マトリックス500の各列において、プラットフォームは、列の方向に正しく合わせて、全く同一の溝206の上方に配置され、そして、ガスの流れにさらされる。
【0059】
最初の縦列のセンサ200'(左側)と2番目の縦列のセンサ200は、図4のセンサ200'及び200と同様に、同じ寸法のプラットフォームと異なる熱伝導率のアームを有している。第1列のプラットフォームは、隣接するセンサに共通の金属接点501'によって、端子502'と504'との間で順番につなげられている。第2縦列のプラットフォームは、隣接するセンサに共通の金属接点501によって、端子502と端子504との間で順番につなげられている。
【0060】
マトリックスの右側部分では、各列のプラットフォームが、その列のセンサに共通の金属接点505と金属接点505との間で並行につなげられている。それらの列は、端子506と端子508との間で順番につなげられており、端子505は、隣接する列に共通である。
【0061】
図3のタイプの装置では、マトリックス500が、センサ200及び供給源308に取って代わる。端末502、504及び502'、504'は、処理ユニット306につなげられている。端子506及び508は、処理ユニット306の供給端子につなげられている。
【0062】
作動中、マトリクスの右側部分は、処理ユニットを供給するのに十分な電力、例えば約100μW程度の電力を端子506と端子508との間に供給する。実際、右側の部分の列が順番であるので、生成される電圧は一緒に加えられ、そして、プラットフォームは各列において平行であるので、それらの電流が一緒に加えられる。更に、端末506と508との間で構成要素に障害が発生した場合には、送られる電力は処理ユニットを供給するのに十分な電力のままである。障害の影響を受けるのはセンサの1つだけであり、他のセンサは処理ユニットを供給するのに十分である。
【0063】
処理ユニットは、端子502と504との間の電圧n*Vth及び端子502'と504'との間の電圧n*Vth'に基づいてガス流量の測定値Fを決定する。なお、nは、1列目と2列目のセンサ数である。この目的のために、実施例として、処理ユニットは、電圧n*Vth及び電圧n*Vth’に基づいて、第2及び第1縦列のそれぞれのセンサによって平均的に供給される電圧Vth及びVth'を決定し、図4において説明した方法で、電圧Vth及び電圧Vth'に基づいて、ガスの温度Tgを決定し、次に、例えばガスの流量の関数として平均電圧Vthを較正段階の後に、図3において説明した方法で、平均電圧Vthに基づいて、ガスの流量を決定する。
【0064】
1つの利点によれば、こうして得られた流量測定装置は、それ自体のエネルギー源を構成する。更に、マトリックス500の異なる構成要素は、同時に製造し、装置内で一緒に利用するのが特に容易である。
【0065】
特定の実施形態が説明されてきた。種々の変形例及び改変が当業者には明らかになるであろう。特に、ガスの流量を測定するための装置が上述されているが、ガスの速度を測定するために同様の装置が得られ、この装置において、実施例として、ガスの流量とセンサ200、センサ200及び200’、又はマトリックス500の周りのガスの速度との間での当業者に明らかであろう関係式が使用される。変形例として、管302は速度測定装置から省略することができる。速度測定装置では、ガスの速度の関数としてセンサ200によって供給される電圧の較正のための段階が提供することができ、これは、図3について上述した較正段階に相当しており、この装置において、異なるフロー値Fg0がガスの速度値に置き換えられる。
【0066】
図4に関して、アームの熱伝導率が異なるセンサ200及び200’について説明を行ってきた。他の特性、例えば、それらのプラットフォームの寸法などが異なる2個のセンサを使用することが可能である。実施例として、較正段階中において、2個のセンサによって供給される電圧の較正値Vth0及びVth0’は、それぞれのガス流Fg0及びFg0’の関数として得られる。測定段階中において、処理ユニットは電圧Vth及びVth’を測定する。Vth値及びVth’値に基づいて、ガスの温度を決定することができる。実施例として、ガスの温度は、1組のTgtest値の間で決定される。各Tgtest値について、ガスが温度Tgtestにあると仮定して、図3で説明した方法で、2個のセンサのそれぞれについて、測定された流量(F値及びF’)値が決定される。すなわち、測定されたガスの温度Tgは、流量値F及びF’が等しいものであるTgtest値である。
【0067】
更に、測定すべきガスと同じ圧力で同じガスを用いた較正段階について上述してきたが、装置は、測定すべきガスとは異なるガス及び/又は異なる圧力で較正することができる。特に、装置は、プラントル数が測定すべきガスのプラントル数と実質的に同じであるガスで較正することができる。この目的のために、較正値Vth0は、流量Fg0の代わりに、流量のレイノルズ数の関数として取得することができる。測定段階中に得られた電圧Vthは、測定値Fを決定するための図3において説明した方法と同様の方法で、測定されたレイノルズ数を決定することを可能にする。次に、測定値Fは、測定されたレイノルズ数、ガスの特性、及び装置の寸法から既知の方法で決定される。
【0068】
説明された実施形態は、図2の特定のタイプの速度センサを使用しているが、支持体上でアームによって吊り下げられたプラットフォームを含む任意のタイプの熱電装置を使用することが可能であり、ここで、第1アームは、第1プラットフォームと支持体との温度差に基づいて電圧を供給するように構成された熱電トラックを含んでいる。したがって、プラットフォームは、4個を超えるアームを含むことができ、このアームは、順番につなげられた交互タイプの熱電トラックを含み、そしてプラットフォーム上及び基板上で連続して配置される接合部を形成する。
【0069】
更に、説明されたセンサは、平行につなげられた2組の214N~214Pを含んでいるがそのセンサは、交互タイプの少なくとも2個の熱電トラックの単一の順番の組み合わせ、又は平行につなげられた2個を超えるそのような順番の組み合わせを含むことができる。
【0070】
更に、熱電トラックについての特定の組の熱電材料が説明されたが、任意の適切な組の熱電材料を使用することができる。
【0071】
更に、説明されたセンサでは、プラットフォームは溝上に位置しているが、プラットフォームは、プラットフォームを基板から熱的に分離できるようにすることが可能な任意の空洞上に位置させることができる。
【0072】
更に、説明されたプラットフォームは長方形であるが、各プラットフォームは、吊り下げられるのに適した他の形状を有することが可能であり、特に、プラットフォームとガスとの間の熱交換を改善することを目的とし、そしてプラットフォームの下に空洞を製造する工程を促進することを目的としている1つ以上の開口部を含むことができる。
【0073】
更に、説明されたアームは、熱電トラックを支持する絶縁層の部分を含むが、絶縁層のこの部分は省略することができる。説明された実施形態では、各アームは単一の熱電トラックを含んでいるが、アームが熱電トラックを有しない及び/又はアームがいくつかの熱電トラックを含む他の実施形態にすることが可能である。
【0074】
更に、図5について説明した実施形態では、処理ユニットに提供するために、特定の熱電装置が処理ユニットに提供したが、ガスの温度と周囲温度との差に基づいて電力供給を作り出すのに適した任意のタイプの熱電装置を使用することができる。特に、センサ200のタイプについてのセンサの任意の順番/平行の組み合わせは、例えば、マトリックス(その各縦列のセンサが順番であり、そしてその縦列が平行である)を使用することができる。
【0075】
様々な変形例を伴う様々な実施形態を上述してきた。当業者は、進歩性を示すことなく、こうした種々の実施形態及び変形例の種々の構成要素を組み合わせることができることに留意されたい。特に、図2のセンサは、図5のマトリックス500の第1縦列又は第1縦列に置き換えられるか、又は、順番につなげられた平行なセンサの種々の列を含むマトリックスに置き換えられるか、又は、センサ200のタイプのセンサの任意の順番/平行の組み合わせを含むマトリックスに置き換えられる。縦列が存在することによって、供給される電圧が増加し、それによって、S/N比が向上する。種々の縦列が存在することによって、縦列の1つの構成要素が故障した場合において、装置の構造安定性を高めることができる。
【0076】
更に、図4のセンサの1つ及び/又は別のものは、図5のマトリクス500の縦列の1個に置き換えられるか、又はセンサのマトリクスで置き換えることができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5