IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青島海爾洗衣机有限公司の特許一覧 ▶ 青島海爾智能技術研発有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-洗濯機の排水構造及び排水方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】洗濯機の排水構造及び排水方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/08 20060101AFI20220325BHJP
   D06F 37/04 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
D06F39/08 311C
D06F37/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019558717
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2018084808
(87)【国際公開番号】W WO2018196846
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】201710293370.2
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】518357782
【氏名又は名称】青島海爾智能技術研発有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】李以民
(72)【発明者】
【氏名】労春峰
(72)【発明者】
【氏名】呉迪
(72)【発明者】
【氏名】▲ハォ▼興慧
(72)【発明者】
【氏名】許升
(72)【発明者】
【氏名】呂艶芬
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19961462(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03935382(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/00-39/10
D06F 58/02-58/08
D06F 58/20-58/26
D06F 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機のハウジングの内部には内槽が装着され、前記内槽は、、開口から内槽底に向かって徐々に直径が拡大するテーパー状の槽であり、前記内槽複数の排水流路が設けられ、前記排水流路は、一端が等しい角度を隔てて内槽底の外周に均一に配置されるとともに内槽の内部と連通し、他端が内槽底の中心と交差するとともに、内槽底の中心を貫通して洗濯機の排水管に連通することを特徴とする洗濯機の排水構造。
【請求項2】
前記内槽底の中心が回転軸を介して内槽支持部材に装着され、
前記排水流路は内槽底の内側面に設けられ、排水流路は他端が内槽底の中心を貫通して軸線沿いにモータ軸に挿通され洗濯機の排水管と連通することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機の排水構造。
【請求項3】
少なくとも1つの排水流路は、一端が内槽底の中央部に設けられて内槽の内部と連通し、他端が内槽底の中心を貫通して洗濯機の排水管と連通することを特徴とする請求項に記載の洗濯機の排水構造。
【請求項4】
各排水流路は、内槽底の内側面から突出する中空の突出リブから構成され、内槽の回転過程では、中空の突出リブが内槽内の水流及び衣類を持ち上げ、打ち付けることで衣類を洗浄することを特徴とする請求項に記載の洗濯機の排水構造。
【請求項5】
洗濯機の内槽底に流れ込んだ水流に圧力を付与することで、排水流路及び排水管に沿って洗濯機の外部へ排水すべく、前記排水流路及び/又は排水管には排水ポンプが設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の洗濯機の排水構造。
【請求項6】
上記請求項1~のいずれかに記載の洗濯機に適用される排水方法であって、
内槽が一定の回転速度で回転することで、内槽内の洗浄水が遠心力の作用でテーパー状の内槽の内壁に密着しつつ大径端に向かって流動し、水流は、内槽の大径端に到達すると、大径端に設けられた排水流路に沿って内槽から流出し、排水管に沿って洗濯機から流出することで内槽内の洗浄水の排出が実現されることを特徴とする洗濯機の排水方法。
【請求項7】
具体的な排水ステップとして、
ステップ1:洗濯機の内槽が一定の回転速度で回転することで、内槽内の水流が遠心力の作用により内槽の側壁と密着するまで流動し、
ステップ2:テーパー状の内槽の作用によって、内槽の側壁に密着した水流が内槽の側壁により案内されるとともに、内槽の回転過程における遠心力の作用を受けて、内槽内の水流が大径の内槽底へと向かい、
ステップ3:内槽底まで流動した水流が内槽底に設けられた排水流路に流入し、排水流路に沿って内槽の中心経由で内槽から流出するとともに、排水管に沿って洗濯機から排出されることを特徴とする請求項に記載の洗濯機の排水方法。
【請求項8】
具体的な排水ステップとして、
上記ステップ3において、排水流路及び/又は排水管の排水ポンプが動作を開始することで、内槽底まで流動した水流に圧力が付与されて、水が排水流路及び排水管に沿って流
動し、洗濯機の外部に排出されることを特徴とする請求項に記載の洗濯機の排水方法。
【請求項9】
洗濯機の排水過程において、内槽が中高速で回転することで、内槽内の水が遠心力の作用によって内槽の側壁に密着しつつ、内槽の大径端に向かって流動することを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の洗濯機の排水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗濯機の技術分野に属し、具体的には、回転可能且つ貯水可能な内槽のみが設けられる洗濯機に関し、特に、洗濯機の排水構造に関し、更には、洗濯機の排水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、一般的に、ドラム洗濯機は互いに嵌装される内槽と外槽を含む。外槽は密封されて貯水に用いられる。また、内槽には衣類が投入され、内槽を回転させることで衣類を打ち付けて洗浄を実施する。且つ、内槽には脱水孔が設けられる。これにより、外槽内の水が脱水孔から内槽に流入して内槽内の衣類を浸漬する。また、内槽内の水は脱水孔から外槽に流出する。且つ、内槽内の衣類の水分は内槽の高速回転時に脱水孔から外槽に排出される。こうして、衣類を洗浄するとの目的が実現される。
【0003】
しかし、内槽と外槽は互いに嵌装されるため、洗濯機の使用過程で内槽と外槽の間に汚れが溜まりやすい。また、内槽と外槽が互いに嵌装されることから、ユーザは内槽の外壁と外槽の内壁をクリーニングする術がない。よって、洗濯機内部の細菌が増殖し、洗濯機の洗濯効率や衣類洗浄後の清潔度が低下する。
【0004】
また、上述した従来の洗濯機では、内槽の外部に外槽が嵌装されており、洗濯機の洗浄過程では内槽が回転することで衣類を打ち付けて洗浄する。そのため、洗濯機の洗浄容量は内槽が基準となり、洗濯機の内部空間の利用率が低い。よって、従来をベースにした場合、洗濯機の洗浄容量を拡大することは不可能である。
【0005】
上記に鑑みて、内槽と外槽を一体化し、内槽を密封容器とすることで水と衣類を投入可能としつつ、回転により衣類を打ち付けて洗浄を実施可能な洗濯機を如何にして設置するか、及び、洗濯機に外槽を設けないか、外槽と洗濯機のハウジングを一体的に設けることで、洗濯機の内槽を拡大して洗濯機の洗浄容量を増大可能とすることが、研究開発の焦点となっている。
【0006】
しかし、内槽は洗浄水を貯めるだけでなく、回転により槽内の衣類を打ち付けて洗浄を実施する必要がある。そのため、上記洗濯機に適用される排水構造を如何に設置するかもまた喫緊に解決を要する難題となっている
【0007】
上記の技術的欠点に鑑みて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術に存在する上記の瑕疵を解消するために、洗濯機の排水構造を提供することを目的とする。本発明で記載する洗濯機の排水構造は、内槽の大径端に、外周から中心に向かって流動する排水流路が設けられる。そのため、内槽が中高速で回転する際に、内槽内の水は遠心力の作用によって大径端へ集まるよう流動するとともに、排水流路に沿って内槽の大径端の中心から排出されるため、内槽内に貯えられた洗浄水を排出するとの課題が解決される。これにより、回転可能な内槽槽口を密封するとともに、洗濯機の正常な動作過程では内槽内の水を排出せず、洗濯機の排水時には内槽内の洗浄水を排水流路経由で排出するとの目的が達せられる。且つ、ドラム洗濯機の内槽と外槽を一体化することで、洗濯機の洗浄容量を拡大するとの目的が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決し、上記の技術的効果を達成するために、本発明が採用する技術方案の基本的設計思想は次の通りである。
【0010】
洗濯機の排水構造であって、洗濯機のハウジングの内部には内槽が装着され、内槽は、一端の直径が小さく、一端の直径が大きなテーパー状の槽であり、内槽の大径端に排水流路が設けられ、排水流路は、一端が内槽の大径端に連通するとともに、他端が大径端の中心を経由して内槽を貫通し、洗濯機の排水管に連通する。
【0011】
更に、内槽は、開口から内槽底に向かって徐々に直径が拡大するテーパー状の槽であり、内槽底の中心が回転軸を介して内槽支持部材に装着される。排水流路は内槽底の内側面に設けられ、排水流路は、一端が内槽底と内槽の側壁との交差箇所に設けられ、他端が内槽底の中心を貫通して軸線沿いにモータ軸に挿通され、排水流路の挿通端は洗濯機の排水管と連通する。
【0012】
更に、内槽底には複数の排水流路が設けられ、各排水流路は、一端が等しい角度を隔てて内槽底の外周に均一に配置されるとともに内槽の内部と連通し、他端が内槽底の中心と交差するとともに、内槽底の中心を貫通して洗濯機の排水管に連通する。
【0013】
更に、少なくとも1つの排水流路は、一端が内槽底の中央部に設けられて内槽の内部と連通し、他端が内槽底の中心を貫通して洗濯機の排水管と連通する。好ましくは、隣接する排水流路の端部は、内槽底の中央部又は外周部に互い違いに設けられる。
【0014】
更に、各排水流路は、内槽底の内側面から突出する中空の突出リブから構成され、内槽の回転過程では、中空の突出リブが内槽内の水流及び衣類を持ち上げ、打ち付けることで衣類を洗浄する。
【0015】
更に、洗濯機の内槽底に流れ込んだ水流に圧力を付与することで、排水流路及び排水管に沿って洗濯機の外部へ排水すべく、前記排水流路及び/又は排水管には排水ポンプが設けられている。
【0016】
本発明におけるその他の重要な目的は、貯水及び回転という2つの効果を有する内槽の洗濯機について、動作時に如何にして密封し、且つ内槽内の洗浄水を排出するかとの課題を解決すべく、上記洗濯機に適用される排水方法を提供することである。
【0017】
上記の発明の目的を実現するために、以下の具体的技術方案を用いる。
【0018】
上記いずれかに記載の洗濯機に適用される排水方法であって、内槽が一定の回転速度で回転することで、内槽内の洗浄水が遠心力の作用でテーパー状の内槽の内壁に密着しつつ大径端に向かって流動し、水流は、内槽の大径端に到達すると、大径端に設けられた排水流路に沿って内槽の大径端の中心から流出し、排水管に沿って洗濯機から流出することで内槽内の洗浄水の排出が実現される。
【0019】
更に、具体的な排水ステップは以下の通りである。
【0020】
ステップ1:洗濯機の内槽が一定の回転速度で回転することで、内槽内の水流が遠心力の作用により内槽の側壁と密着するまで流動する。
【0021】
ステップ2:テーパー状の内槽の作用によって、内槽の側壁に密着した水流が内槽の側壁により案内されるとともに、内槽の回転過程における遠心力の作用を受けて、内槽内の水流が大径の内槽底へと向かう。
【0022】
ステップ3:内槽底まで流動した水流が内槽底に設けられた排水流路に流入し、排水流路に沿って内槽の中心経由で内槽から流出するとともに、排水管に沿って洗濯機から排出される。
【0023】
更に、上記ステップ3において、排水流路及び/又は排水管の排水ポンプが動作を開始することで、内槽底まで流動した水流に圧力が付与されて、水が排水流路及び排水管に沿って流動し、洗濯機の外部に排出される。
【0024】
更に、洗濯機の排水過程において、内槽が中高速で回転することで、内槽内の水が遠心力の作用によって内槽の側壁に密着しつつ、内槽の大径端に向かって流動する。
【発明の効果】
【0025】
本発明で記載する洗濯機は、従来技術の洗濯機と比較して以下の有益な効果を有する。
【0026】
上記の設置及び方法によって、洗濯機の正常な洗浄状態では、内槽内の水流が遠心力の作用を受けず、内槽の大径端に集まるよう流動することがない。一方、洗濯機の排水状態では内槽が高速回転するため、内槽内の水流が遠心力の作用を受けて内槽の大径端における排水流路に向かって流動し、排出される。よって、内槽の正常な回転時に内槽内に貯えられた水が排水口から流出することはない。これにより、内槽の回転過程では内槽を密封し、排水時には、内槽内の水流が遠心力によって排水流路に押し込まれるため、内槽内に貯えられた水を正常に排出するとの効果が実現される。従って、内槽の回転及び貯水という2つの効果を有する洗濯機による正常な排水との目的が達せられる。且つ、内槽の外部に外槽を嵌装する必要がなく、内槽の容積が大きくなるため、洗濯機の洗浄容量が増加する。
【0027】
本発明の技術方案の設計思想をより明確とすることで、これによりもたらされる有益な効果をより容易に理解できるよう、以下に、図面を組み合わせて本発明の一部具体的実施形態につき詳細に記載する。
【0028】
図面は本発明の一部として、本発明の更なる理解のために提供される。本発明の概略的実施例及びその説明は本発明の解釈のために用いられるが、本発明を不当に限定するものではない。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要することなくこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施例における洗濯機の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記の図面及び文字記載は何らかの方式で本発明の構想の範囲を制限するとの意図ではなく、特定の実施例を参照して当業者に本発明の概念を説明するためのものである。
【0031】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明確とすべく、以下に、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0032】
本発明の記載において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であり、本発明の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、且つ特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0033】
本発明の記載において、別途明確に規定及び限定しない限り、「装着する」、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体接続であってもよい。また、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよい。更には、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【0034】
図1に示すように、本発明の実施例では洗濯機について説明する。洗濯機はハウジング2を含み、ハウジング2の内部には内槽1が設けられている。内槽1の軸線は水平に延伸するか、前方から後方へ徐々に下方に傾斜して設けられる。内槽1の前端は開口が設けられた内槽槽口101であり、後端は密封して設けられる内槽底102である。内槽1の内部が前部にのみ開口が設けられる密封容器を構成するよう、内槽1の槽壁には貫通孔が設けられない。また、洗濯機のハウジング2の前端には、外側に開放可能な扉4が装着されている。そのため、扉4を閉止することで内槽槽口101を封止し、扉4を開放することで内槽槽口101から内槽1内に衣類を投入するとの目的が達せられる。内槽1の後端は、内槽支持部材3を介して洗濯機のハウジング2内に装着される。前記内槽支持部材3は内槽1の後端に同軸に設けられる。内槽支持部材3の上下両端は、それぞれ内槽1の前端の槽口方向に屈曲している。屈曲部は少なくとも内槽1の中央部まで延伸し、上下の屈曲部がそれぞれ制震吊りバネ6と制震支持ロッド7を介して洗濯機のハウジング2に接続される。これにより、内槽支持部材3を震動可能に洗濯機のハウジング2内に装着するとの目的が実現される。且つ、内槽底102の中心は、内槽1が回転駆動するよう洗濯機の駆動モータ5のモータ軸に同軸に設置される。内槽1と駆動モータ5はいずれも内槽支持部材3に固定装着される。好ましくは、内槽底102と駆動モータ5は、それぞれ内槽支持部材3の両側に設けられ、駆動モータ5が内槽支持部材3に固定接続される。駆動モータ5のモータ軸は、軸受を介して内槽支持部材3に挿通され、内槽底102に同軸に固定接続される。且つ、駆動モータ5の軸は、内槽支持部材3に対し回転可能である。これにより、内槽1と駆動モータ5を内槽支持部材3に装着し、内槽1を駆動モータ5の作用によって単独で回転させることで、内部の衣類を洗浄するとの目的を実現する。
【0035】
本発明の実施例では、洗濯機の内槽内に供給された水を排出するとともに、洗濯機の動作過程では、内槽を密封して貯水することで正常な洗浄を行うべく、以下のように設置する。
【0036】
洗濯機の排水構造において、洗濯機のハウジング2の内部には内槽1が装着されている。内槽1は、一端の直径が小さく、一端の直径が大きなテーパー状の槽であり、内槽1の大径端に排水流路32が設けられている。排水流路32は、一端が内槽1の大径端に連通するとともに、他端が大径端の中心を経由して内槽1を貫通し、洗濯機の排水管31に連通する。
【0037】
本発明の実施例では、洗濯機の排水方法について更に説明する。内槽が一定の回転速度で回転することで、内槽内の洗浄水は、遠心力の作用でテーパー状の内槽の内壁に密着しつつ、大径端に向かって流動する。水流は、内槽の大径端に到達すると、大径端に設けられた排水流路に沿って内槽の大径端の中心から流出し、排水管に沿って洗濯機から流出する。これにより、内槽内の洗浄水の排出が実現される。
【0038】
ドラム洗濯機の正常な洗浄過程において、内槽1は一般的に低速で回転するため、内槽1内の水はあまり遠心力の作用を受けない。よって、内槽1内の衣類と水流が内槽の低速回転に伴い打ち付け合うことで、洗浄効果が奏される。且つ、内槽1内の水流は、大径端に集まるよう流動することも、洗濯機から排出されることもない。一方、ドラム洗濯機の排水過程において、内槽1は中高速で回転するため、内槽1内の水は内槽の回転に伴う遠心力の作用を受ける。これにより、内槽1内の水流は、内槽壁に密着しつつ内槽の大径端に集まるよう流動する。そして、内槽の大径端に設けられた排水流路32に流入し、内槽の大径端の中心を経由して内槽1から流出するとともに、排水管31を通じて洗濯機から排出される。
【0039】
上記のように設けることで、洗濯機の正常な洗浄状態では、内槽内の水流が遠心力の作用を受けず、内槽の大径端に集まるよう流動することがない。一方、洗濯機の排水状態では、内槽が高速回転するため、内槽内の水流が遠心力の作用を受けて内槽の大径端における排水流路に向かって流動し、排出される。よって、内槽の正常な回転時に内槽内に貯えられた水が排水口から流出することはない。これにより、内槽の回転過程では内槽を密封し、排水時には、排水弁を開放することで内槽内に貯えられた水を正常に排出するとの効果が実現される。従って、内槽の回転及び貯水という2つの効果を有する洗濯機による正常な排水との目的が達せられる。且つ、内槽の外部に外槽を嵌装する必要がなく、内槽の容積が大きくなるため、洗濯機の洗浄容量が増加する。
【実施例1】
【0040】
本実施例では、洗濯機の排水構造について説明する。洗濯機のハウジング2の内部には内槽1が装着されている。内槽1は、一端の直径が小さく、一端の直径が大きなテーパー状の槽であり、内槽1の大径端に排水流路32が設けられている。排水流路32は、一端が内槽1の大径端に連通するとともに、他端が大径端の中心を経由して内槽1を貫通し、洗濯機の排水管31に連通している。
【0041】
本実施例において、内槽1は、前端が内槽槽口101であり、後端が内槽底102である。内槽槽口101と内槽底102は内槽の側壁を介して接続される。内槽の側壁は、テーパー状の内槽1を構成するよう、内槽槽口101から内槽底102に向かって徐々に直径が拡大するテーパー状をなしている。内槽底102の中心は、回転軸を介して内槽支持部材3に装着される。排水流路32は、内槽底102の内側面に設けられる。排水流路32は、一端が内槽底102と内槽の側壁との交差箇所に設けられ、他端が内槽底102の中心を貫通して軸線沿いにモータ軸に挿通される。また、排水流路32の挿通端は洗濯機の排水管31と連通する。
【0042】
本実施例において、内槽底102には複数の排水流路32が設けられている。各排水流路32の一端は、等しい角度を隔てて内槽底102の外周に均一に配置されるとともに、内槽1の内部と連通する。また、他端は内槽底102の中心と交差するとともに、内槽底102の中心を貫通して洗濯機の排水管31に連通する。
【0043】
本実施例において、少なくとも1つの排水流路32は、一端が内槽底102の中央部に設けられて内槽1の内部と連通し、他端が内槽底102の中心を貫通して洗濯機の排水管31と連通する。好ましくは、隣接する排水流路32の端部は、内槽底102の中央部又は外周部に互い違いに設けられる。内槽底の各部分における水流を吸着して排出するよう、内槽底には、端部が中央部又は外周部にそれぞれ設けられる均一に配置された複数の排水流路が設けられるため、内槽内の水流の排水効率が向上する。
【0044】
本実施例において、各排水流路32は、内槽底102の内側面から突出する中空の突出リブから構成される。内槽1の回転過程では、中空の突出リブが内槽1内の水流及び衣類を持ち上げ、打ち付けることで衣類を洗浄する。そのため、内側に突出する排水流路32は、内槽1内の衣類を持ち上げ、打ち付けることで洗浄するという補助的リフティングリブ機能を有する。
【0045】
本実施例では、洗濯機の内槽底102に流れ込んだ水流に圧力を付与することで、排水流路32及び排水管31に沿って洗濯機の外部へ排水すべく、前記排水流路32及び/又は排水管31に排水ポンプ33が設けられている。排水ポンプ33は、ドラム洗濯機の正常な洗浄状態では動作せず、ドラム洗濯機の排水プログラム実行中に起動する。これにより、洗濯機の内槽からの水流排出を制御するとともに、水流に駆動力を付与可能となる。
【実施例2】
【0046】
本実施例では、上記実施例1で記載した洗濯機に基づく排水方法について説明する。内槽が一定の回転速度で回転することで、内槽内の洗浄水が遠心力の作用でテーパー状の内槽の内壁に密着しつつ、大径端に向かって流動する。水流は、内槽の大径端に到達すると、大径端に設けられた排水流路に沿って内槽の大径端の中心から流出し、排水管に沿って洗濯機から流出する。これにより、内槽内の洗浄水の排出が実現される。
【0047】
上記の方法によれば、洗濯機の正常な洗浄状態では、内槽内の水流が遠心力の作用を受けず、内槽の大径端に集まるよう流動することがない。一方、洗濯機の排水状態では内槽が高速回転するため、内槽内の水流が遠心力の作用を受けて内槽の大径端における排水流路に向かって流動し、排出される。よって、内槽の正常な回転時に内槽内に貯えられた水が排水口から流出することはない。これにより、内槽の回転過程では内槽を密封し、排水時には、排水弁を開放することで内槽内に貯えられた水を正常に排出するとの効果が実現される。従って、内槽の回転及び貯水という2つの効果を有する洗濯機による正常な排水との目的が達せられる。
【0048】
本実施例において、前記洗濯機の排水方法の具体的ステップは次の通りである。
【0049】
ステップ1:洗濯機の内槽が一定の回転速度で回転することで、内槽内の水流が遠心力の作用により内槽の側壁と密着するまで流動する。
【0050】
ステップ2:テーパー状の内槽の作用によって、内槽の側壁に密着した水流が内槽の側壁により案内されるとともに、内槽の回転過程における遠心力の作用を受けて、内槽内の水流が大径の内槽底へと向かう。
【0051】
ステップ3:内槽底まで流動した水流が内槽底に設けられた排水流路に流入し、排水流路に沿って内槽の中心経由で内槽から流出するとともに、排水管に沿って洗濯機から排出される。
【0052】
本実施例では、上記ステップ3において、排水流路及び/又は排水管の排水ポンプが動作を開始することで、内槽底まで流動した水流に圧力が付与されるため、水が排水流路及び排水管に沿って流動し、洗濯機の外部に排出される。また、洗濯機がその他のプログラムを実行する場合、排水流路及び/又は排水管の排水ポンプは動作しないため、内槽内の水が排水ポンプの吸引により排出されることはない。よって、内槽内に水が保持されて、衣類を正常に洗浄する。
【0053】
本実施例では、洗濯機の排水過程において、内槽が中高速で回転するため、内槽内の水が遠心力の作用によって内槽の側壁に密着しつつ、内槽の大径端に向かって流動する。
【実施例3】
【0054】
本実施例では、洗濯機の動作時に内槽槽口101の密封を実現するために、以下のように設置する。
【0055】
図1に示すように、洗濯機は、洗濯機のハウジング2に扉4が装着されている。扉4は、弾性機構を介して相対的に回転可能に内槽蓋8に接続される。扉4が閉止されると、弾性機構が内槽蓋8に対しロック弾性力を付与することで、内槽蓋8と内槽槽口101が密封状に接触するとともに、内槽蓋8が内槽1に付随して回転するようになる。これにより、扉4の閉止後に内槽蓋8が内槽槽口101に掛合し、内槽1を密封するとの目的が実現される。
【0056】
上記のように設けることで、弾性力で圧着する内槽蓋により内槽槽口の密封が実現される。洗濯機の洗浄過程では、内槽蓋が内槽槽口に密封状に接触するとともに、内槽に付随して回転する。これにより、内槽の回転時に槽口を動的に密封するとの目的が達せられるため、内槽に回転及び貯水という2つの機能を持たせられる。且つ、内槽の外部に外槽を嵌装する必要がなく、内槽の容積が大きくなるため、洗濯機の洗浄容量が増加する。
【0057】
本実施例において、扉4と内槽蓋8は同軸に設けられる。扉4と内槽蓋8は弾性機構を介して接続されるため、扉4を閉止すると、内槽蓋8が圧縮状態の弾性機構の作用によって内槽槽口101に圧着する。
【0058】
本実施例において、内槽蓋8は扉4の開閉に伴って動作するよう扉4に固定接続されるため、内槽蓋8により内槽槽口101を開閉するとの目的が達せられる。且つ、洗濯機を閉止したあと、内槽蓋8と内槽1が密閉状に固定接続されるとともに、内槽蓋8が内槽1に付随して回転するよう、内槽蓋8と扉4は中心軸線周りに相対的に回転可能とする。
【0059】
好ましくは、本実施例において、内槽蓋8の掛合後に内槽蓋8と内槽槽口101との密封性が強化されるよう、内槽蓋8と内槽槽口101を弾性的に係接してもよい。これにより、扉4を閉止すると、内槽蓋と内槽槽口101が固定的に係接される一方、扉4を開放すると、内槽蓋が扉4とともに移動して内槽槽口101から離脱する。従って、内槽蓋8と内槽槽口101との密封接触箇所を係接及び固定し、内槽槽口101の密封性を強化するとの目的が実現される。
【0060】
本実施例において、内槽蓋8の中心には、内槽1の軸線方向に沿って内槽の外部へと延伸する回転軸12が接続されており、内槽蓋8が回転軸周りに回転可能である。回転軸12は一端が内槽蓋8に回転可能に接続され、他端が弾性機構を介して扉4に接続される。弾性機構は内槽蓋8に弾性力を付与することで、内槽蓋8を内槽槽口101方向へと移動させる。これにより、内槽蓋8が内槽槽口101に密封状に掛合し、内槽槽口101の密封を実現する。
【0061】
本実施例において、内槽蓋8の外側の中心には、外側に突出するよう延伸する装着槽11が設けられており、装着槽11には、軸受を介して装着される回転軸12が設けられている。回転軸12は内槽1の軸線方向に延伸しており、内槽蓋8が回転軸12周りに相対的に回転可能である。また、回転軸12の端部は、バネ9を介して扉4に固定接続される。よって、扉4が閉止すると、バネ9が圧縮状態となって内槽蓋8を内槽槽口101に密封状に接触させるとともに、内槽蓋8が回転軸周りに扉4に対し相対的に回転可能となる。好ましくは、回転軸12のうち内槽蓋8の装着槽11に挿入される挿入端には、内槽蓋8の装着槽11と係接することで回転軸12と内槽蓋8を軸方向に固定するよう、外径方向に突出する突出部が設けられている。
【0062】
本実施例では、バネによる圧着力及び内槽蓋の掛合後の安定性を高めるために、特に以下のように設置する。即ち、図1に示すように、内槽蓋8の外側の中心には、外側に突出するよう延伸する装着槽11が設けられており、装着槽11には、軸受を介して装着される回転軸12が設けられている。回転軸12は内槽1の軸線方向に延伸しており、内槽蓋8が回転軸12周りに相対的に回転可能である。また、回転軸12の端部には、回転軸12の軸線に対し垂直な支持プレート10が装着されており、支持プレート10の外周部が複数のバネ9を介して扉4に固定接続される。
【0063】
本実施例において、支持プレート10の直径は内槽槽口101の直径以上である。また、支持プレート10と内槽1は同軸に設けられる。各バネ9は、内槽1の軸線に対して対称に支持プレート10の外周部に配置される。また、各バネ9は、内槽1の軸線に対し平行な方向に設けられる。
【0064】
回転軸に接続される支持プレートを洗濯機の扉と内槽蓋との間に追加するとともに、外周に均一に配置される複数のバネを介して支持プレートを扉に接続することで、内槽蓋は複数方向の異なるバネによる位置規制の弾性力を受けることになる。これにより、内槽蓋は、安定的且つ傾斜することなく内槽槽口に密封状に接触するため、洗濯機における内槽槽口の密封の確実性が向上する。
【0065】
バネが装着された回転軸を介して内槽蓋と扉を接続することで、扉が閉止されると、内槽蓋が内槽槽口に接触してバネを圧縮する。バネは内槽蓋に対し内槽方向に移動する弾性力を付与するため、内槽蓋は内槽槽口に密封状に密着する。これにより、扉の閉止後に内槽蓋を規制し、内槽蓋と内槽槽口を密封状に接触させるとの目的が実現される。且つ、内槽蓋と回転軸は相対的に回転可能なため、内槽が洗濯機の駆動モータにより回転する際に、内槽蓋は摩擦力の作用によって内槽とともに回転可能である。これにより、内槽槽口を密封処理するとの目的が実現される。更に、内槽の前端は、内槽蓋、回転軸、バネを介して扉に接続されるため、震動可能に弾性をもって洗濯機のハウジング内に装着される。これにより、内槽の前端と洗濯機のハウジングが互いに支持するよう装着されることから、内槽に対する支持の作用点が強化され、内槽の運転過程における安定性が向上する。
【0066】
本実施例において、回転軸12には同軸に設けられる給水管17が装着されている。給水管17は、一端が内槽蓋8を介して内槽1に挿入されるとともに、他端が回転軸12を貫通して上方へと屈曲し、洗濯機の給水構造と連通するまで延伸している。これにより、洗濯機に対する給水は、内槽槽口101の中心から内槽1へと流入するため、洗濯機の内槽1に対し前端の内槽蓋8の中心から給水するとの目的が実現される。好ましくは、内槽1の密封性を保証すべく、内槽蓋8と回転軸12とのヒンジ接続箇所が水封される。
【0067】
本実施例において、内槽蓋8の外周には外側に傾斜する傾斜部15が設けられている。前記傾斜部15は、内槽1の外周から扉4に向かって徐々に直径が大きくなるテーパー状面をなしている。また、内槽槽口101には、傾斜部15に対し密着状に接触する固定部16が設けられている。好ましくは、固定部16の外端に、外側へと屈曲する面取り部が設けられる。これにより、内槽蓋8が内槽槽口101内に滑り込むよう案内され、固定部16と傾斜部15が互いに密着することで密封が実現される。
【0068】
より好ましくは、内槽蓋8の外周に、扉4に向かって徐々に直径が拡大する曲率の異なる2つのテーパー状面が設けられている。第1のテーパー状面の両側は、扉4の外周と第2のテーパー状面の一方の側にそれぞれ接続される。第1のテーパー状面は、内槽槽口101における水平屈曲面に対応している。水平屈曲面は、内槽槽口101から内槽1の外部に向かって水平に屈曲する円筒面である。水平屈曲面の内径は、第1のテーパー状面の最大直径と等しいか、やや小さく設けられる。水平屈曲面の端部は、外側に向かって徐々に傾斜することでテーパー状の固定部16を構成する。また、第2のテーパー状面は傾斜部15を構成するとともに、固定部16に対し密着状に接触する。
【0069】
本実施例では、内槽蓋8と扉4の間に、径方向に伸縮可能な管状のシールパイプ14が更に設けられている。弾性機構がシールパイプ14の内部に密封状に装着され、シールパイプ14の伸縮に伴って内槽蓋8が扉4に対して相対的に移動するよう、シールパイプ14は一端が扉4の外周に密封接続され、他端が扉4に固定接続される。前記シールパイプ14は、弾性ゴム材質のコルゲートパイプから構成される。好ましくは、扉4が内槽1に付随して回転する際にシールパイプ14が共に回転しないよう、シールパイプ14の端部と扉4は、内槽1の軸線周りに相対的に回転可能に嵌接される。
【実施例4】
【0070】
本実施例は、洗濯機が上記の排水構造と排水方法を用いて洗濯機の脱水を制御する点で上記の実施例1及び2と異なる。これにより、洗濯機の内槽内の衣類から離脱した水流が上記の構造及び方法により洗濯機から排出され、孔無しの内槽内の衣類を脱水処理するとの目的が達せられる。
【0071】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を何らかの形式に限定するものではない。本発明については好ましい実施例によって上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではない。本発明の技術方案を逸脱しない範囲において、当業者が上記で提示した技術内容を用いて行うわずかな変形或いは補足は、同等に変形された等価の実施例とみなされ、いずれも本発明の技術方案の内容を逸脱するものではない。また、本発明の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えられる簡単な修正、同等の変形及び補足は、いずれも本発明の方案の範囲内とされる。
【符号の説明】
【0072】
1 内槽
2 ハウジング
3 内槽支持部材
4 扉
5 駆動モータ
6 制震吊りバネ
7 制震支持ロッド
31 排水管
32 排水流路
33 排水ポンプ
101 内槽槽口
102 内槽底
図1