IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォルシュングスフェアブント・ベルリン・アインゲトラーゲナー・フェラインの特許一覧

特許7046117金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法
<>
  • 特許-金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法 図1
  • 特許-金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法 図2
  • 特許-金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法 図3
  • 特許-金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法 図4
  • 特許-金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法 図5
  • 特許-金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法 図6
  • 特許-金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を成長させる方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20220325BHJP
   C30B 11/00 20060101ALI20220325BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20220325BHJP
   C30B 15/24 20060101ALI20220325BHJP
   C30B 15/08 20060101ALI20220325BHJP
   C30B 17/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B11/00 Z
C30B15/00 Z
C30B15/24
C30B15/08
C30B17/00
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020090661
(22)【出願日】2020-05-25
(62)【分割の表示】P 2017535901の分割
【原出願日】2015-12-16
(65)【公開番号】P2020164415
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】15150582.3
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514270238
【氏名又は名称】フォルシュングスフェアブント・ベルリン・アインゲトラーゲナー・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ガウォンスカ,ズビグネフ
(72)【発明者】
【氏名】ユッカー,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】クリム,デートレフ
(72)【発明者】
【氏名】ビッカーマン,マティアス
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-056098(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068130(WO,A1)
【文献】特開2010-150056(JP,A)
【文献】特表2013-542169(JP,A)
【文献】特開2014-221692(JP,A)
【文献】国際公開第2013/159808(WO,A1)
【文献】Morteza Asadian,The Influence of Atmosphere on Oxides Crystal Growth,Modern Aspects of Bulk Crystal and Thin Film Preparation,2012年,P.123-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属るつぼ内に含まれる溶融物からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga)単結晶を成長させる方法であって、
成長チャンバー内に、Ga出発材料(102、202、302、402、502、602)を含む前記金属るつぼ(101、201、301、401、501、601)、前記金属るつぼ(101、201、301、401、501、601)を囲む断熱材(103、203、303、403、503、603)および前記金属るつぼ(101、201、301、401、501、601)の周囲に配置される加熱装置(104、204、304、404、504、604)を備える熱システムまたは成長炉(100、200、300、400、500、600)を設置するステップと、
前記成長炉(100、200、300、400、500、600)内に結晶種(105、205、305、405、505、605)を供給または作製するステップと、
少なくとも前記成長炉(100、200、300、400、500、600)に、酸素を含有する成長雰囲気(120、220、320、420、520、620)を導入するステップと、
前記加熱装置(104、204、304、404、504、604)により前記金属るつぼ(101、201、301、401、501、601)を加熱し、前記金属るつぼが順に、前記Ga出発材料(102、202、302、402、502、602)を溶融するまで加熱するステップと、
前記結晶種(105、205、305、405、505、605)を、前記金属るつぼ(101、201、301、401、501、601)内に含まれる溶融した前記Ga出発材料(102、202、302、402、502、602)と接触させるステップと、
前記結晶種と溶融物との間の温度勾配により、前記結晶種(105、205、305、405、505、605)上でβ-Ga単結晶(110、210、310、410、510、610)を成長させるステップと、
結晶成長ステップが完了するとすぐに、成長したβ-Ga単結晶(110、210、310、410、510、610)を室温(RT)まで冷却するステップと
を含む方法において、
i)酸素濃度(OC)が、Gaの融解温度(MT)未満(8、9)もしくは融解温度(MP)で(6、7)、またはGa出発材料(102、202、302、402、502、602)の完全溶融後(5)に、5~100体積%の濃度範囲(SC)にある成長酸素濃度値(C2、C2’、C2’’)に達するように可変の酸素濃度(OC)または分圧を有し、金属ガリウム量(CR1、CR2、CR3)の生成およびそれによる前記金属るつぼ(101、201、301、401、501、601)との共晶形成を最小限にし、かつGa出発材料(102、202、302、402、502、602)の化学量論性および結晶成長安定性を改善するように適合させた、酸素分子とAr、N 、He、Xe、NeおよびCO からなる群から選択される少なくとも1つのガスとの混合物を含有する前記成長雰囲気(120、220、320、420、520、620)を、前記成長炉(100、200、300、400、500、600)中に供給するステップと、
ii)成長温度(GT)の前記溶融物からの前記β-Ga単結晶(110、210、310、410、510、610)の前記結晶成長ステップの間、前記成長酸素濃度値(C2、C2’、C2’’)を前記酸素濃度範囲(SC)内に維持するステップと
をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記酸素濃度(OC)が、
iii)室温(RT)から、1000℃とGaの前記融解温度(MT)の間の温度範囲(ST)内にある中間温度値(T1)までの加熱ステップの間に、0~5体積%の範囲にある中間酸素濃度値(C1)を超えず、
iv)前記中間温度値(T1)からGaの融解温度(MT)までの前記加熱ステップの間に、または前記融解温度(MT)で、または前記中間温度値(T1)が前記融解温度(MT)に実質的に等しい場合には前記Ga出発材料(102、202、302、402、502、602)の完全溶融の後に、前記中間酸素濃度値(C1)から5~100体積%の前記酸素濃度範囲(SC)にある前記成長酸素濃度値(C2、C2’、C2’’)に増大する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素濃度(OC)が、
v)前記成長したβ-Ga 単結晶(110、210、310、410、510、610)を室温(RT)まで冷却するステップの間に、前記成長酸素濃度値(C2、C2’、C2’’)から、前記成長酸素濃度値(C2、C2’、C2’’)より低い最終酸素濃度値(C3)に減少する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記成長酸素濃度値(C2)が、全結晶成長ステップの間の前記成長温度(GT)で、前記酸素濃度範囲(SC)内で実質的に一定(10)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成長酸素濃度値(C2)が、前記結晶成長ステップの初期段階後の前記成長温度(GT)で、前記酸素濃度範囲(SC)内の第2の成長酸素濃度値(C2’)に減少する(10’)、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記成長酸素濃度値(C2)が、前記結晶成長ステップの後期段階の前記成長温度(GT)で、前記酸素濃度範囲(SC)内の第3の成長酸素濃度値(C2’’)に増加する(10’’)、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記成長酸素濃度値(C2)が、前記結晶成長ステップの初期段階後の前記成長温度(GT)で、前記酸素濃度範囲(SC)内の第2の成長酸素濃度値(C2’)に最初に減少し(10’)、かつ前記結晶成長ステップの後期段階の前記成長温度(GT)で、前記酸素濃度範囲(SC)内の第3の成長酸素濃度値(C2’’)に増大する(10’’)、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記成長雰囲気(120、220、320、420、520、620)が、酸素に加えてCO、H Oまたはその任意の組み合わせを含有し、β-Ga 単結晶の電気的特性をさらに調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記成長雰囲気(120)が、チョクラルスキー法(100)に適用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記成長雰囲気(220)が、キロポーラス法(200)に適用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記成長雰囲気(320)が、垂直ブリッジマン法または垂直勾配凍結法(300)に適用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記成長雰囲気(420)が、水平ブリッジマン法(400)に適用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記成長雰囲気(520)が、ステパノフ法、非毛細管形状制御法およびエッジデファインドフィルムフェッドグロース法(500)からなる群から選択される形状制御結晶成長技術に適用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記成長雰囲気(620)が、浮上支援自己種形成結晶成長法(600)に適用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記成長雰囲気が、マイクロ引き下げ法に適用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属るつぼ内に含まれる金属から酸化物単結晶を成長させる方法、特に金属るつぼ内に含まれる金属からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga)単結晶を成長させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベータ相の酸化ガリウム(β-Ga)は、透明半導体酸化物の群に属する。それは、4.8eVの広い光学バンドギャップを有する半導体であるため、可視から深紫外のスペクトル(DUV)で透明である。このような特異な特性から、電子工学(例えば、電解効果トランジスタ)および光電子工学(例えば、発光ダイオード)、ならびに環境モニタリング(例えば、ガスセンサ)の分野で多くの用途を開発する機会が得られる。このような用途の大部分では、電子工学または光電子光学の構成品または薄膜堆積用の基板を製造できるバルク単結晶が要求される。
【0003】
工業用途には、高品質の大型の単結晶が要求される。酸化物単結晶の場合、一般に金属るつぼ内に含まれる溶融物から成長されるが、そのようなるつぼは、例えば、低および中融点(1500℃未満)に対しては白金、高融点(おおむね1500~2200℃の間)に対してはイリジウム、および超高融点の酸化物に対しては(2200℃超)モリブデン、タングステンまたはレニウムを含む。金属るつぼを使用して操作する数種の結晶成長技術があり、ステパノフ法、非毛細管形状制御(NCS)およびエッジデファインドフィルムフェッドグロース法(Edge-Defined Film-Fed Growth(EFG)method)および浮上支援自己種形成結晶成長法(Levitation Assisted Self-Seeding Crystal Growth method)(LASSCGM)のようなチョクラルスキー法、キロポーラス法、垂直または水平ブリッジマン法、垂直勾配凍結法、形状制御結晶成長法が挙げられる。
【0004】
酸化ガリウムは、高温で熱力学的に不安定であり、高融点(約1820℃)と相俟って、強い分解を起こす。この化合物を安定化するために、高い酸素分圧(または濃度)が要求される。しかし、これは、小さな酸素濃度を使用できる(一般に最大2%)が、特に低・中温で強く酸化される傾向を有する、イリジウムまたはイリジウム合金るつぼを使用しなければならないので、さらなる困難を生じる。他の金属るつぼは、非常に小さな酸素濃度にさえ耐えることができず、一方白金は、酸化ガリウムのために使用するには融点が低すぎる。
【0005】
β-Ga単結晶を成長させるための高い酸素濃度は、るつぼなしで操作される成長法に対して適用することができる。β-Ga単結晶のために適用されるこのような方法の例は、光学式浮上帯域(OFZ)法であり、例えば、Ueda et al.,Appl.Phys.Lett.70(1997)3561, Appl.Phys.Lett.71(1997)933、Tomm et al.,Sol.Cells66(2001)369、Villora et al.,J.Cryst.Growth270(2004)420,Appl.Phys.Lett.92(2008)202120および米国特許第8,747,553B2号により出版物で記載されるとおりである。この方法ではGa供給ロッドの非常に小さな部分が、供給ロッドの先端に焦点を合わせた光ビームにより溶融される。供給ロッドの溶融部分は、種(seed)と接触し、その上で、結晶が、光ビームに対する種の並進(translation)中に成長する。供給ロッドの非常に小さな溶融領域(光ビームの異常に小さな断面領域)のため、得られた結晶の直径も小さく、一般に5~6mmを越えない。大きな結晶(直径約25mm)が示されたが、これは、結晶サイズの限界であると思われ、その品質は、非常に小さな断面の結果が、成長界面の断面に対する光ビームの結果であるように、固液成長界面を貫く温度勾配の不均質性のため非常に低下している。今までのところ、OFZ法では、結晶体積が小さすぎるため、酸化物結晶についてなんらの工業用途も見出されていない。
【0006】
β-Ga結晶に適用される別のるつぼなしの方法は、Chase、J.Am.Ceram.Soc.47(1964)470により記載されるVerneuil法である。ここで、Gaの粉末化出発材料は、H-Oフレームで溶融され、液滴は、種の上に落下し、固化して、結晶を形成する。構造的品質が乏しく、結晶サイズが小さいため、この方法は、β-Ga成長の研究で継続されなかった。
【0007】
β-Ga単結晶は、Tomm et al.,J.Cryst.Growth220(2000)510およびGalazka et al.,Cryst.Res.Technol.45(2010)1229およびGalazka et al.,J.Cryst.Growth404(2014)184による刊行物で記載されるとおり、チョクラルスキー法の使用でイリジウムるつぼに含まれる溶融物からすでに成長された。チョクラルスキー法では、結晶は、イリジウムるつぼ内に含まれる露出した溶融物表面から直接的に引き出される。両方の場合に、COを含有する動的な自己調整成長雰囲気が使用された。COは、大気温で分解し、温度が上昇したときさらに酸素を放出する。このようにして、イリジウムがほとんどを酸化する低いおよび中程度の温度で、酸素濃度が、非常に低いレベルに保たれるので、約1.2体積%の酸素は、イリジウムるつぼに害なくGaの融点で供給されうる。数バールのレベルで過圧のCOを適用することにより、さらに多くの酸素(4%まで)が供給された。COにより供される酸素濃度は、直径40mmのイリジウムるつぼから約20~22mmの直径を有する円柱状β-Ga単結晶を成長させるのに十分である。
【0008】
イリジウムるつぼに含まれる溶融物からβ-Ga単結晶を成長させるために適用される別の方法は、EFG法であり、それは、Aida et al.,Jpn.J.Appl.Phys.47(2008)8506に対する刊行物、および特許出願書類JP2013082587A、JP2013103863A、JP2013124216A、JP2013227160A、JP2013237591A、JP2013241316A、WO2013073497A1およびWO2014073314A1で記載されるとおりである。この方法では、イリジウムダイが、イリジウムるつぼに備えられ、それは、開口部と連通する頂部に小さな開口部およびスリットを有する。溶融物は、頂部スリットに毛細管力によりダイを通して輸送され、そこから結晶シートがダイから引き出される。ダイスリット中の溶融物表面積および溶融物体積は一般に小さく、したがって、小さな酸素濃度で、安定な結晶成長をするのにおそらく十分であるが、これらの文書は、イリジウム構成品を使用したときの酸素濃度に全く言及していない。結晶シートは、比較的大きな長手方向の断面を有するが、一般に小さな厚み(数ミリメートルのような)を有しうるので、工業用途にとって決定的な特徴となる総結晶体積が限定される。
【0009】
重量で1kgを越えるような、より大きな結晶を成長させるために(例えば、チョクラルスキー法の場合には、直径2インチで長さ4~5インチ)、大きなるつぼを使用しなければならない。これは、酸素を供給する成長雰囲気と直接接触する、露出した溶融表面がはるかに大きいこと、成長雰囲気からの酸素を分配しなければならない結晶体積がはるかに大きいこと、および液体Gaとイリジウムるつぼとの接触面積がはるかに大きいことを意味する。Gaの分解が、気相中に様々な化学種を生成して、強い蒸発に至るが、液相中に金属ガリウムも生じる(酸素ロスによる)。このような液体金属ガリウムは、溶融物表面および溶融物バルク中に生成し、溶融物の化学量論性および温度を変化させ、したがって、このような影響を受けた溶融物表面から結晶を成長させることは、実質的に不可能である。成長の開始が首尾よくいった場合でさえ、金属ガリウムは、結晶表面に膜を形成し、その膜は、成長中の結晶を介した熱移動を遮断し、それが使用可能な結晶体積を減少させる、成長の不安定性を誘発する。結晶表面に付着し、結晶格子中にできる金属ガリウム粒子は、結晶品質を顕著に劣化させ、ほとんどの用途に利用可能でない恐れがある。さらに、対流フローを介して溶融物内に輸送される金属ガリウムは、固体イリジウムるつぼ(および形状制御技術の場合には、ダイ)と反応し、共晶を形成し、重大なるつぼ損傷に至り、結果的に高い経済的ロスになる。共晶形成は、溶融体積およびるつぼサイズの増大と共に高度に増大する。これらの負の効果は、全てが製造収率および費用を規定する、妥当な生産量、結晶品質、成長安定性およびイリジウムるつぼの寿命から見て、大きなβ-Ga単結晶の成長を制限する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、溶融物からβ-Ga単結晶を成長させる条件であり、Ga分解を最小限にし、イリジウムと共晶を形成する金属ガリウム形成の結果として金属るつぼの損傷を排除する条件を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、溶融物からβ-Ga単結晶を成長させる条件であり、安定な結晶成長過程を確実にする条件を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、エピタキシー用の基板を含めて、電子工学および光電子工学用途についての必要条件に見合うであろう高品質β-Ga単結晶を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、金属るつぼを利用する様々な成長技術により溶融物からβ-Ga単結晶を成長させる条件を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、少なくとも0.5kg、特に1kgをいっそう越える大きな結晶を得ることが可能になるであろう、金属るつぼ内に含まれる溶融物からβ-Ga単結晶を成長させる方法を提供することである。
【0015】
より一般的な態様では、本発明のまたさらなる目的は、高温で熱的に不安定である他の酸化物化合物、特にそれに限定されないが、ZnO、In、NiO、SnO、BaSnOなどの他の透明半導体酸化物を成長させる方法を提供することである。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、金属るつぼ内に含まれる溶融物からベータ相の酸化ガリウム(β-Ga)単結晶を成長させる方法が提供され、それは、
成長チャンバーに、Ga出発材料を含む金属るつぼ、金属るつぼを囲む断熱材、および上記金属るつぼの周囲に配置される加熱装置を含む熱システムまたは成長炉を供給するステップ、
成長炉内に結晶種を供給または作製するステップ、
少なくとも、成長炉に、酸素を含む成長雰囲気を導入するステップ、
加熱装置により、金属るつぼを加熱し、順に、溶融するまでGa出発材料を加熱するステップ、
結晶種を、金属るつぼ内に含まれる溶融したGa出発材料と接触させるステップ、
結晶種と溶融物との温度勾配により結晶種上のβ-Ga単結晶を成長させるステップ、および
結晶成長ステップが完了するとすぐに、成長したβ-Ga単結晶を室温に冷却するステップ
を含み、
ここで、本方法は、
i)酸素濃度が、Gaの融解温度未満もしくは融解温度で、またはGa出発材料の完全溶融後に、5~100体積%の濃度範囲にある成長酸素濃度値に達するように可変の酸素濃度または分圧を有し、金属ガリウム量の生成およびそれによる金属るつぼとの共晶形成を最小限にし、かつGa出発材料の化学量論性および結晶成長安定性を改善するように適合させた成長雰囲気を、成長炉中に供給するステップ、および
ii)成長温度の溶融物からのβ-Ga単結晶の結晶成長ステップの間、成長酸素濃度値を前記酸素濃度範囲内に維持するステップ
をさらに含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、酸素濃度が、
iii)室温から、1000℃とGaの融解温度の間の温度範囲内にある中間温度値までの加熱ステップの間に、0~5体積%の範囲にある中間酸素濃度値を超えず、
iv)中間温度値からGaの融解温度までの加熱ステップの間に、または融解温度で、または中間温度値が融解温度に実質的等しい場合にはGa出発材料の完全溶融の後に、中間酸素濃度値から5~100体積%の濃度範囲にある成長酸素濃度値に増大する。
【0018】
有利には、酸素濃度は、
v)成長温度から室温までの冷却ステップの間に、成長酸素濃度値から、成長酸素濃度値より低い最終酸素濃度値に減少する。
【0019】
好ましくは、成長酸素濃度値は、全結晶成長ステップの間に成長温度で酸素濃度範囲内で実質的に一定である。代わりに、成長酸素濃度値は、上記結晶成長ステップの初期段階後、成長温度で酸素濃度範囲内の第2の酸素成長濃度値に減少する。さらに代わりの実施形態では、成長酸素濃度値は、結晶成長ステップの後期段階で、成長温度での酸素濃度範囲内の第3の成長酸素濃度値に増大する。さらに代わりの実施形態では、成長酸素濃度値は、最初に、上記結晶成長ステップの初期段階後、成長温度で酸素濃度範囲内の第2の成長酸素濃度値に減少し、結晶成長ステップの後期段階で、成長温度で酸素濃度範囲内の第3の成長酸素濃度値に増大する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、成長雰囲気は、酸素に加えて、Ar、N、He、Ne、CO、CO、HおよびHO、またはその任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの気体を含む。
【0021】
有利には、成長雰囲気が、チョクラルスキー法、キロポーラス法、垂直ブリッジマン法、垂直勾配凍結法、水平ブリッジマン法に適用され、ステパノフ法、非毛細管形状制御およびエッジデファインドフィルムフェッドグロース法、浮上支援自己種形成結晶成長法およびマイクロ引き下げ法のような形状制御結晶成長技術に適用されうる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、バルクβ-Ga単結晶が提供されるが、それは、上述の方法により得られる。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、バルクβ-Ga単結晶の使用が提供されるが、それは、エピタキシャル膜または層のために製造されたウエハーまたは基板の形態にある。
【0024】
発明者らは、非常に高い酸素濃度が、高温で、イリジウムるつぼまたはその合金に関して使用されうることを一連の包括的実験を通して予想外に見出した。この発見は、酸素濃度が、イリジウムに関連して約2~5体積%を超えるべきではないという文献および実験に反映されている、共通した長年の信念(believe)と非常に対照的である。本方法の基本的特徴は、イリジウム酸化速度が、高温と比較して非常に高い場合、加熱/冷却ステップの間低い酸素濃度を低温で維持しつつ、結晶成長(5~100体積%)の間、イリジウム(またはその合金)るつぼ内に含まれる溶融物から、非常に高い酸素濃度を維持することである。さらに、その酸化イリジウムは、簡単に蒸発し、るつぼの内側で溶融物を混入しないように、さらに、酸化イリジウムが、一般に溶融物に混入する場合、加熱の間に低程度および中程度の温度で提供される高い酸素濃度と対称的に、高温での酸化イリジウムの分圧は、非常に高い。さらに、高い酸素濃度により、酸素空孔、双晶および結晶粒界の形成が、成長中の酸化物結晶において減少し、したがって、結晶品質が顕著に改善する。最も重要なことは、そのような成長条件は、工業上の観点から重要である大きな結晶(重量で1kgを超える)を得ることを可能にし、一般に分解過程の間に形成されるイリジウムと金属ガリウムとの共晶形成をなくすことにより、イリジウムるつぼの寿命をも延ばすことである。さらに、本発明の教示は、一般的な意味を有し、熱化学的に不安定なものを含めて、高い酸素分圧を必要とする任意の高融点酸化物に首尾よく適用できる。
【0025】
バルクのβ-Ga単結晶または他の熱的に不安定な酸化物結晶を成長させる本発明の方法のさらなる利点および他の特徴は、図面に関する実施形態の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1Aおよび図1Bは、その融解温度でGaの分解中にそれぞれ生成される液体金属ガリウムおよびガス状ガリウム亜酸化物(GaO)の量のプロットを示すグラフである。
図2図2Aおよび図2Bは、加熱/成長および成長/冷却の各ステップの間の成長雰囲気中酸素濃度対温度のプロットであり、本発明の原理を示すグラフである。
図3】本発明が適用されうるチョクラルスキー法の原理を模式的に示す図である。
図4】本発明が適用されうるキロポーラス法の原理を模式的に示す図である。
図5図5Aおよび図5Bは、本発明が適用されうる、垂直および水平ブリッジマン法または垂直勾配凍結法の原理を模式的に示す図である。
図6】本発明が適用されうる形状制御結晶成長法の原理を模式的に示す図である。
図7】本発明が適用されうる浮上支援自己種形成結晶成長法の原理を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1Aは、Ga溶融物と相互作用するGa分解対酸素濃度の結果としてGa溶融物(1820℃であるGaの融点である)中の液体金属ガリウム(Ga)の量の変化を示す。金属Ga量CR1は、直径および高さ50mmのイリジウムるつぼ内に含まれる2.3モルのGa出発材料内で形成されて、1インチ直径の単結晶を成長させる。金属Ga量CR2は、直径および高さ100mmのイリジウムるつぼ内に含まれる18モルのGa出発材料内で形成されて、2インチ直径の単結晶を成長させる一方で、金属Ga量CR3は、直径および高さ150mmのイリジウムるつぼ内に含まれる63モルのGa出発材料内で形成されて、3インチ直径の単結晶を成長させる。金属Gaは、イリジウム(Ir)と、Ga溶融物を含有するるつぼを破壊する共晶を形成する。液体金属Gaに加えて、ガス状金属Gaも、溶融物中に形成され、それは、るつぼ壁に隣接する領域で、Ga-Ir共晶も形成する。さらに、Ga溶融物中に金属Gaが存在すると、溶融物の化学および融解温度が変化するために、β-Ga単結晶を成長させる上で、および/またはその優れた構造的品質を得る上で困難が生じる。金属Gaから生じるこれらの負の効果は、金属Gaの高い濃度が生じる場合、溶融物体積と共に増加する。例えば、1体積%の酸素を含む成長雰囲気の場合には、金属Ga量CR2は、約23倍CR1に対して増加する一方で、金属Ga量CR3は、約79倍CR1に対して増加する。言い換えると、1体積%の酸素を使用して、2または3インチの直径の単結晶を成長させることは、Irるつぼ損傷を生じ、単結晶を得る可能性がない。金属Gaの量は、少なくとも5体積%のレベルで、酸素濃度OCを増大させることにより少なくとも数回まで、顕著に減少されうる。その最下値(5体積%)の場合に、金属Ga量CR2は、8倍だけCR1に対して増加する一方で、金属Ga量CR3の場合には、約27倍増加する。金属Ga量の減少を考慮すると、1体積%の酸素に対して5体積%の酸素を使用した場合、それは、CR1およびCR2、CR3について、それぞれ1/3および1/9に減少する。図1Aで明確に示されるとおり、5~100体積%の範囲で高い酸素濃度については、金属Ga量の減少は、いっそう言明される。プロットCR1、CR2およびCR3では、金属Ga量を最小にするために、いっそう高い酸素濃度が使用されるべきであり、育成されるべき結晶サイズの増加を伴うことを示す。
【0028】
本発明の別の基本的な知見は、高温でのイリジウムの酸化から得られる酸化イリジウムが、Ga溶融物および成長中の結晶に混入しないことである。これは、高温での酸化イリジウムの非常に高い分圧のためであり、それは、るつぼ壁で生成した直後に周囲へ簡単に蒸発する。
【0029】
金属Gaに加えて、Ga溶融物の分解により、周囲へ蒸発する酸素、GaO、GaOおよびGaを含めて、気相中にいくつもの揮発性化学種を生じる。酸素に加えて最も揮発性の化学種は、GaOであり、その量対酸素濃度は、図1Bで示される。少なくとも5体積%の酸素濃度OCを使用することは、1桁の規模以上までGaOの量(および散逸性)を減少させ、したがって成長過程の間のGaの蒸発を減少させる。金属Gaに加えて、GaO蒸発を最小限にすることは、溶融物を、いっそう化学量論的に保ち、結晶成長過程を安定化するのに重要である。
【0030】
したがって、5~100体積%の間の範囲で酸素濃度OCを適用することにより、Ga溶融物は、溶融物表面から蒸発するGa溶融物およびGaO蒸気中の金属Gaの形成を最小限にすることにより有意に安定化されうる。したがって、それは、結晶成長安定性およびイリジウム(またはその合金)るつぼ耐久性の両方にとって十分である。溶融物からGa単結晶を成長させるのに適切であるイリジウムるつぼに関連して、このような高い酸素濃度(5~100体積%)は、数十年間種々の酸化物単結晶を成長させるためにイリジウムるつぼを利用するにもかかわらず、先行技術で報告、明記または示唆されてこなかったということが強調されるべきである。
【0031】
本発明の本質は、低程度および中程度の温度で、比較的低い酸素濃度を維持しつつ、1820℃であるGaの融点付近でイリジウム(またはその合金)るつぼ内に含まれる溶融物からβ-Ga単結晶を成長させるために、非常に高い酸素濃度(5~100体積%)を使用することであり、ここで、イリジウムは、ほとんどを酸化し、Ga分解は軽微である。この攻略法(strategy)は、結晶成長炉を加熱し、β-Ga単結晶を成長させることについて、図2Aに記載され、β-Ga単結晶を成長させ、結晶成長過程が完了した後に結晶成長炉を冷却することについて、図2Bに記載されている。
【0032】
図2Aで示されるとおり、当初の酸素濃度値C0は、一般に室温RTで小さく、通常には0から約3体積%の範囲にある。酸素濃度OCは、任意の方法、例えば、線状で(プロファイル1)、指数関数的に(プロファイル2)、漸近的に、段階的手段で、またはそれらの任意の組み合わせで、室温RTおよび中間温度値T1の間の温度範囲で、当初の酸素濃度値C0から中間酸素濃度値C1まで増加する。中間温度値T1は、本実施例で1400℃であるが、それは、1000℃とGa出発材料の融解温度MTとの間の温度範囲STで任意の値を有しうる。1400℃のこの例示の値は、加熱ステップの間のイリジウムるつぼ酸化(それはGa出発材料を混入しうる)の最小化とGa分解の回避との妥協(compromise)である。代わりに、室温RTと中間温度値T1との間の温度範囲では、酸素濃度OCは、プロファイル3および4により示されるとおり一定(すなわち、C0=C1)でありうる。C0は、一般に小さな値を示すが、いくつかの用途では、それは、35%(プロファイル4)のような非常に高い値を示しうる。これは、イリジウムにとって重要な温度を通過するのが、非常に速い場合、速い加熱速度(例えば、300~500K/h)での成長稼働に適用可能である。高温で、すなわち、T1より上で、Ga出発材料は、分解にいっそう影響を受けやすい一方で、イリジウム酸化は減少する。したがって、酸素濃度は、高い値、すなわち、Ga出発材料の融解温度MT周辺の成長酸素濃度値C2まで増大されうる。その酸素濃度は、その後、結晶成長ステップ中で酸素濃度範囲SC内に維持される。この移行領域では、酸素濃度OCは、様々なプロファイル5から9または任意のその組み合わせにより示されるとおり、任意の方法で増大されうる。例えば、酸素濃度OCは、融解温度MT付近またはその温度で、またはすぐ上の温度まで実質的に低い値のC1で維持される可能性があり、その後その酸素濃度は、プロファイル5により示されるとおり、唐突に値C2に増大されうる。代わりに、酸素濃度OCは、プロファイル8により示されるとおり、温度範囲ST中で、融解温度MTで、および結晶成長ステップ(C2=C1)中で高い一定の値のC1で維持されうる。酸素濃度OCは、線状に(プロファイル6)、指数関数的に(プロファイル7)、段階的手段(manner)で(プロファイル9)、漸近的にまたは任意の他の手段で、温度範囲STで増大されうる。酸素濃度を増加または一定に維持する方法は、必須ではなく、任意のプロファイルは、5~100体積%の間の成長酸素濃度値C2を達成するために使用されうる。プロファイル1~9は、例示のためのみであり、実際には、それらのプロファイルは、拡散過程、比較的大きな体積の結晶成長チャンバー(数百リットル)、気体フロー速度および気体対流(例えば、温度勾配のため)のため異なる可能性がある。さらに、室温RTから融解温度MTまでの加熱時間は、結晶成長法および成長炉のサイズに適切に適合しうる。それは、例えば、5~30時間の間でありうる。
【0033】
本発明により、Ga出発材料の溶融前に、溶融中に、または溶融直後に、酸素濃度は、図1Aおよび1Bに関連して説明される理由のため、5~100体積%の間の酸素濃度範囲SCでの成長酸素濃度値C2に達することが必須である。全てのGa出発材料が溶融される(すなわち、液相で)とすぐ、β-Ga単結晶は、成長酸素濃度値C2で溶融物から成長されうる。値C2は、図2Aおよび2Bでのプロファイル10により示されるとおり、全ての結晶成長ステップ中に成長温度GTで実質的に一定でありうる。代わりに、成長酸素濃度値C2は、図2Aでプロファイル10’により示されるとおり、成長温度GTで第2の成長酸素濃度値C2’まで減少されうる。この変化は、常に、酸素濃度範囲SC内で起こる。結晶成長段階中に酸素濃度を減少させるいくつかの理由がある。それは、
a)溶融時、種晶添加中、および結晶成長ステップの初期段階中に、露出した溶融物表面がはるかに小さく、温度勾配がより低く、より小さい酸素濃度が使用できる結晶成長ステップの後期段階と比較した場合に、露出した溶融物表面の分解速度が高いこと、
b)高い酸素濃度(およそ25体積%より上)により、得られた結晶の電気的抵抗性が高くなりうること(これは、半絶縁または絶縁結晶が要求される場合には問題でない);および
c)低い酸素濃度は、イリジウムのロスを減少させること
である。他方では、自由電子濃度を減少させること、およびこのように近赤外スペクトルでの自由担体吸着を低下させることにより成長中の結晶を通して熱移行を改善するために、酸素濃度は、成長酸素濃度値C2から第3の成長酸素濃度値C2’’への結晶成長ステップの後期段階で増大しうる(図2Bでプロファイル10’’により示されるとおり)が、このことは、結晶の長さがいっそう重大になる。結晶成長ステップ間、両方の変化は、同様に適用されうる。このような場合には、酸素濃度OCは、結晶成長ステップの初期段階で値C2からC2’に減少され、次に、上記結晶成長ステップの後期段階で値C2’からC2’’に増大される。
【0034】
固液界面で、融解温度MTおよび成長温度GTが同じであることに留意すべきである。しかし、MTおよびGTは、広範な範囲(broader scope)でこの説明で理解される。金属るつぼ内の放射状の温度勾配(例えば、温度は、一般に中心に向かってるつぼ壁から低下する)のために、るつぼ中の溶融物は、中心より、るつぼ壁付近での方がより熱い(例えば、50~100Kまで)。したがって、MTは、るつぼ内の全ての温度を網羅し、Ga出発材料の完全な溶融を導く。他方では、結晶成長ステップ中で、溶融物中の温度は、成長中の結晶を通して輸送されるべき液体-固体相転移のため発生された結晶化の潜熱を除去するために(溶融の間存在せず)、および成長界面で一定な温度を維持する方法で形状(溶融レベルの液滴、結晶サイズの増加など)での変化に適合させるために変化する。したがって、本説明の目的のために、GTは、結晶成長ステップの間の成長炉での全ての温度変化を網羅する。
【0035】
結晶成長ステップについての期間は、主に適用される成長方法、成長速度、結晶の長さなどに依存し、約1~100時間の間継続しうる。結晶成長ステップが完了されるとすぐに、結晶とともに成長炉は、成長方法、炉および結晶サイズに伴って、予め規定した期間、典型的には数時間~10時間の間、室温RTに冷却される。冷却の間、酸素濃度OCは、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3に低下され、それは、図2Bで示されるとおり、典型的には、成長酸素濃度値C2、C2’、C2’’より低い。結晶はすでに成長したので、冷却ステップでの酸素濃度OCは、図2Aで示される加熱の間の場合のような厳密な手段で変化させる必要はない。最終の値C3は、非常に小さい必要はなく、例えば得られた結晶の電気的特性を調整するために、3体積%を超過してもよい。しかし、冷却ステップの間に低温でのイリジウムの高い酸化を避けるために小さな値を達成することが好ましい。酸素濃度OCは、プロファイル11から15またはそれらの任意の組み合わせにより示されるとおり、任意の方法で、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3に減少されうる。代わりに、最終酸素濃度値C3は、図2Bでプロファイル13により示されるとおり、成長酸素濃度値C2、C2’、C2’’に実質的に等しい可能性がある。
【0036】
成長過程の様々な段階で提議される酸素濃度OCが、溶融物および結晶を囲む成長雰囲気内の成長炉に供される。成長雰囲気は、可変の濃度の酸素、およびAr、N、He、Xe、Ne、CO、COおよび微量のHまたはHOを含めた1つまたは複数の他の気体、またはその任意の組み合わせからなる。Ar、N、He、XeおよびNeは、中性ガスであり、COは、酸化剤である一方で、CO、HおよびHOは、β-Ga単結晶の電気的特性をさらに調整する還元剤である。初期加熱および冷却ステップの間に、COのみが、酸素源として使用されうる。さらに、1~70バールのような外部過圧が使用されうる。
【実施例
【0037】
(成長技術)
ここで、イリジウム(またはその合金)るつぼを利用し、上述の発明が、高い酸素濃度を必要とするβ-Ga単結晶または他の高い融点酸化物(>1500℃)、特に高温で不安定なものを成長させるために適用されうる、溶融物からの様々な結晶成長技術が、例示で記載される。
【0038】
[実施例1]
図3は、水冷式の成長チャンバー(示されず)内に入れられているチョクラルスキー法の成長炉100を模式的に示す。成長炉100は、断熱材103により囲まれるGa出発材料102を含有するイリジウムるつぼ101を含む。るつぼ101は、一般に誘導性または抵抗性加熱装置である加熱装置104により加熱される。加熱装置104は、発熱体(示されず)および制御装置(示されず)に繋げられている。成長炉100の内側で、変換および回転機構(示されず)を有する引っ張りロッド107を介して結合される種晶保持部106内に積載されている結晶種105を備える。成長炉100の内側に、るつぼ101を含めた全ての炉の部品およびGa出発材料102に連通している、成長雰囲気120を備える。加熱ステップの間に、成長雰囲気120内に含有される酸素濃度は、図2Aに関連して記載される方法(または代わりに、C2=C1)で、当初の酸素濃度値C0から、中間酸素濃度値C1(または代わりに、C1=C0)に変化し、次に、Ga出発材料102の溶融付近で成長酸素濃度値C2に達する。出発材料102が、溶融および安定化されるとすぐ、結晶種105は、溶融した出発材料102と接触し、引っ張り速度V(例えば、0.5~10mm/hの間)でゆっくりと引き上げられる一方で、角速度R(例えば、2~30rpmで)で回転する。そのように行うことにより、Ga出発材料102の溶融物は、結晶種105上で固化して、バルク単結晶110を形成する。結晶の直径は、種直径から、予め規定された円柱直径に増加し、それは、その後、制御装置を介して溶融温度を制御することにより、結晶成長ステップの残りの間維持される。結晶成長ステップの間に、酸素濃度は、実質的に一定なレベル(プロファイル10)の成長酸素濃度値C2で維持される。代わりに、成長酸素濃度値C2は、予め規定された円柱の直径が達成されるとすぐに低下されうる(プロファイル10’)。成長酸素濃度値C2は、結晶成長ステップの後期段階で増大もされうる(プロファイル10’’)。予め規定された結晶の長さ(または質量)が、達成されるとすぐ、結晶110を溶融物から分離し、ゆっくりと冷却される。冷却ステップの間に、成長雰囲気120内の酸素濃度は、図2Bに関連して記載される方法で、成長の酸素濃度C2から、最終酸素濃度値C3に(または代わりに、C3=C2)に減少する。
【0039】
[実施例2]
図4は、キロポーラス法の成長炉200を模式的に示し、それは、水冷式の成長チャンバー(示されず)内に配置される。キロポーラス法は、チョクラルスキー法の変異形であり、ここで単結晶210は、むしろ、溶融物から外の大きな表面から、および溶融した出発材料202内で部分的に成長している。この方法では、非常に小さな引っ張り速度(pulling rate)V(チョクラルスキー法でのものより小さい)は、可能であれば回転Rで一般に適用される。成長炉200の全ての構成品は、チョクラルスキー法のものと非常に類似している(同一でありうる)。加熱ステップの間に、成長雰囲気220内に含まれる酸素濃度は、図2Aに関連して記載される方法で、当初の酸素濃度値C0から中間酸素濃度値C1(または代わりにC1=C0)に変化し、次に、Ga出発材料202の溶融周辺の成長酸素濃度値C2(または代わりに、C2=C1)に達する。結晶成長段階の間に、酸素濃度は、成長酸素濃度値C2のレベルで維持されるか、またはそれは、酸素濃度範囲SC内の成長の間に変化されうる(例えば、減少および/または増加される)。冷却ステップの間に、成長雰囲気220内の酸素濃度は、図2Bに関連して記載される方法で、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3(または代わりに、C3=C2)に減少する。
【0040】
[実施例3]
図5Aは、垂直ブリッジマン法または垂直勾配凍結法の成長炉300を模式的に示し、その炉は、水冷式の成長チャンバー(示されず)内に入れられている。成長炉300は、Ga出発材料302を含有するイリジウムるつぼ301を含み、それは、断熱材303により囲まれている。るつぼ301は、成長雰囲気320がGa出発材料302と連通する仲介となる開口部309を有する、好ましくはイリジウム製の蓋308に囲まれている。るつぼ301は、加熱装置304(誘導性または抵抗性)により加熱される。加熱装置304は、発熱体(示されず)および制御装置(示されず)に繋がっている。加熱ステップで、成長雰囲気320内に含まれる酸素濃度は、図2Aに関連して記載される方法で、当初の酸素濃度値C0から中間酸素濃度値C1(または代わりに、C1=C0)に変化し、次に、Ga出発材料302の溶融周辺で、成長酸素濃度値C2(または代わりに、C2=C1)に達する。るつぼ301の底部は、先細になり、結晶種305が収容されている種晶保持部306として機能する小さな直径の管まで続く。全てのGa出発材料302が溶融されるとすぐ、結晶種305に沿って種晶保持部306が、るつぼ301の他の部分より低い温度に維持されて、種305の溶融を防止するような方法で、イリジウムるつぼ301は、垂直温度勾配内に配置される。るつぼ301内の温度は、一般に、種晶保持部306から、るつぼ301の頂部に向かって増大する。るつぼ壁で温度を低下させること(垂直勾配凍結法)により、溶融したGa出発材料302は、結晶種305で上向きにゆっくりと固化して、単結晶310を形成する。るつぼ壁で温度を低下させる代わりに、るつぼ301または全成長炉300は、低い温度の方向に低下されうる(ブリッジマン法)か、または加熱装置304は、結晶種305に対峙する方向に移動される。代わりに、るつぼ301/加熱装置304の温度および移動を共に低下させることが、適用されうる。結晶成長ステップの間に、酸素濃度は、成長酸素濃度値C2のレベルで維持されるか、または酸素濃度は、酸素濃度範囲SC内で変化されうる。結晶成長ステップが完了されるとすぐ(すなわち、全ての溶融物が固化されるとすぐ)、成長炉300は冷却され、成長雰囲気320内の酸素濃度は、図2Bに関連して記載される方法で、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3に(または代わりに、C3=C2)減少する。
【0041】
[実施例4]
図5Bは、水平ブリッジマン法の成長炉400を模式的に示す。この方法の原理は、垂直ブリッジマン法の場合と同じであるが、しかしその固化は、垂直方向の代わりに水平方向で進行する。加熱ステップの間に、成長雰囲気420内に含まれる酸素濃度は、当初の酸素濃度値C0から中間酸素濃度値C1に(または、代わりに、C1=C0)に変化し、次に、図2Aに関連して記載される方法で、Ga出発材料402の溶融の周辺で成長酸素濃度値C2(または、代わりに、C2=C1)に達する。結晶成長ステップの間、酸素濃度は、成長酸素濃度値C2のレベルに維持されるか、または酸素濃度は、酸素濃度範囲SC内の成長の間に変化されうる一方で、冷却ステップの間、成長雰囲気420内の酸素濃度は、図2Bに関連して記載される方法で、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3に(または、代わりに、C3=C2)減少する。
【0042】
[実施例5]
この実施例は、一般に、ステパノフ法、非毛細管形状制御(NCS)およびエッジデファインドフィルムフェッドグロース(EFG)法のような形状制御結晶成長技術に関する。図6は、EFG法の成長炉500を模式的に示し、それは、水冷式の成長チャンバー(示されず)内に配置される。イリジウムるつぼ501内で、イリジウムダイ511は、配置される。ダイ511は、溶融されたGa出発材料502および小さな直径の中心チャネル512と連通している少なくとも1つの開口部を有し、それを通して、溶融物は、毛細管力(毛細管チャネル)を介して、一般に非常に小さな幅(数ミリメートル)であるが、非常に大きな長さ(数cmさえ)を有する頂部表面513に輸送される。中心チャネル512が、毛管常数(非毛細管チャネル)より大きい場合、溶融物は、圧力差によりチャネルを通して輸送される(ステパノフ法およびNCS法)。Ga出発材料502が溶融されるとすぐに、結晶種505は、頂部表面513で溶融物と接触し、引っ張り速度Vで上向きに引き上げられて、単結晶510を形成する。引っ張り速度Vは、チョクラルスキー法のものより一般に大きい。結晶回転は、一般にこの方法で適用されない。結果として得られる結晶形状は、異なっている(例えば、長方形または円形)可能性がある頂部表面513の幾何学に対応する。結晶成長が完了されるとすぐ、それは、溶融物から分離され、冷却される。加熱ステップの間に、成長雰囲気520内に含まれる酸素濃度が、図2Aに関連して記載される方法で、当初の酸素濃度値C0から中間酸素濃度値C1(または代わりに、C1=C0)に変化し、次に、Ga出発材料502の溶融周辺の成長酸素濃度値C2(または代わりにC2=C1)に達する。結晶成長ステップの間に、酸素濃度は、成長酸素濃度値C2のレベルで維持されるか、またはその酸素濃度は、酸素濃度範囲SC内の成長の間に変化されうる一方で、冷却ステップの間に、成長雰囲気520内の酸素濃度は、図2Bに関連して記載される方法で、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3(または代わりに、C3=C2)に減少する。
【0043】
[実施例6]
図7は、浮上支援自己種形成結晶成長法(LASSCGM)の成長炉600を模式的に示し、それは、水冷式の成長チャンバー(示されず)内に配置される。Ga出発材料602を含むイリジウムるつぼ601は、断熱材603内に配置される。るつぼ601は、Ga出発材料602を有する成長雰囲気620の連通のための開口部609で蓋608により覆われる。加熱装置604は、この場合には、誘導性加熱装置でなければならない。この方法では、Ga出発材料は、その後、るつぼ壁を通して誘導性加熱装置604の電磁場で結合される液相で高度に伝導し、それが浮上(levitate)することが必要とされる。溶融物の一部を浮上させることにより、液体首605が形成され、それは、固化の間に種として作用する。溶融し、溶融物の一部を浮上させた後、炉600を冷却し、溶融したGa出発材料は、首部605で固化して、自己生成した首部605の両側に2つの単結晶610を形成する。LASSCGMのさらなる詳細は、Galazkaらに対する文書WO2013/159808号で見出されうるが、それは、参照してここに組み込まれる。加熱ステップの間に、成長雰囲気620内に含まれる酸素濃度は、図2Aに関連して記載される方法で、当初の酸素濃度値C0から、中間酸素濃度値C1に(または代わりに、C1=C0)に変化し、次に、Ga出発材料602の溶融時に、または好ましくは後に成長酸素濃度値C2(または代わりに、C2=C1)に達する。高い電気伝導率の液体Ga出発材料602を得るために、結晶成長ステップの間、成長酸素濃度値C2は、むしろ低いレベル、例えば5~10体積%に保持されるべきである。さらに、四価イオン(Si、Sn)を用いた意図的なドーピングを使用しうる。結晶成長ステップの間に、酸素濃度は、成長酸素濃度値C2(または代わりに、C2=C1)のレベルで維持される一方で、冷却ステップの間に、成長雰囲気620内の酸素濃度は、図2Bに関連して記載される方法で、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3(または代わりに、C3=C2)まで減少する。
【0044】
[実施例7]
上述の技術に加えて、本発明は、マイクロ引き下げ技術にも適用されうる。この技術は、底部に小さな直径の開口を有する小さな直径の金属(例えば、イリジウム)るつぼを含み、その開口は、それ(出発材料)を毛細管力を介して保持することにより溶融後に出発材料がるつぼから流れ出すことを防止する。その後、種は、開口で溶融物と接触され、引き下げられる。このようにして、直径約1~2mmの結晶ファイバーが成長されうる。加熱ステップの間に、成長雰囲気内に含まれる酸素濃度は、図2Aに関連して記載される方法で、当初の酸素濃度値C0から中間酸素濃度値C1(または代わりに、C1=C0)に変化し、次に、Ga出発材料の溶融周辺の成長酸素濃度値C2(または代わりに、C2=C1)に達する。結晶成長ステップの間に、酸素濃度は、図2Bに関連して記載される方法で、成長酸素濃度値C2のレベルで維持されるか、または酸素濃度は、結晶成長ステップの間、酸素濃度範囲SC内で変化されうる一方で、冷却ステップの間に、成長雰囲気420内の酸素濃度は、成長酸素濃度値C2から最終酸素濃度値C3(または代わりに、C3=C2)に減少する。小さなるつぼ寸法、可能性がある高速加熱および高速結晶成長速度のため、酸素濃度は、全成長過程の間100体積%と同程度高い可能性がある(すなわち、C0=C1=C2=C3=100体積%)。
【0045】
(実施例-酸素濃度)
[実施例8(比較例)]
チョクラルスキー法100(図3、実施例1)は、直径および高さ40mmのイリジウムるつぼで使用された(Gaの量は、1モルのみであった)。成長雰囲気は、融解温度MTで約1.2体積%のレベルで酸素濃度を供給するCOであった。これは、酸素濃度が、室温RTから融解温度MTに、実質的には0体積%から約1.2体積%に増大され、その酸素濃度は、その後、成長温度GTでの結晶成長ステップの間一定に維持されたことを意味する。冷却ステップの間、酸素濃度は、成長温度GTで1.2体積%から室温RTで約0体積%まで減少された。得られた結晶は、直径20mmおよび長さ60mmのものであった。結晶品質は、結晶学的双晶形成(crystallographic twins)および中程度の転位密度を含んでいたが、比較的優れていた。さらに、結晶表面は、注目に値するGa分解の結果として粗かった。比較的高いGa分解のため、溶融物は不安定であり、上記結晶成長ステップの種晶添加および初期段階での困難さをもたらした。さらに、GaおよびIr金属の間に形成される共晶のため、るつぼ分解の兆候(sings)がある程度目に見えた。類似の結果が、O=2体積%およびN=98体積%で構成される成長雰囲気の場合に得られた。この実施例は、出発材料の量が、非常に小さい場合(1モル)、比較的優れた結晶のβ-Gaが、非常に低い酸素濃度で育成されうることを示す。図1Aに関して、Ga分解の間に製造される金属Gaの量は、非常に小さく、CR1曲線よりさらに下であり、したがって、全く重要でない。しかし、成長の安定性、結晶品質およびるつぼ耐久性に関連した問題の最初の兆候が、認識された。
【0046】
[実施例9(比較例)]
チョクラルスキー法100(図3、実施例1)が、直径および高さが100mmのはるかに大きなイリジウムるつぼで使用された。成長雰囲気は、実施例8と同じCOであった。唯一の違いは、はるかに大きなイリジウムるつぼ、および18倍のGa出発材料の量(18モルのGa)であった。この場合に、Ga出発材料の量に関連して不十分な酸素濃度のために作り出された高濃度の金属Gaのせいで、結晶の成長が開始するのはほとんど不可能であった。高い濃度の金属Gaが、溶融温度および溶融化学を変化させる。成長が最終的に開始された場合でさえ、大きな直径(50mm)であるが、短い結晶(30mm)のみを得ることができた。これは、Ga金属により引き起こされる成長不安定性が高いためであった。この負の効果のため、結晶品質は、実施例8の小さな結晶のものよりさらに悪かった。さらに重要なことには、通常には最初の成長操作の後、るつぼは、GaおよびIr金属の間で形成される共晶のため酷く損傷を受け、再使用できなかった。るつぼ損傷および妥当なサイズおよび品質の結晶の欠如が、高い経済的ロスに至る。この実施例は、Ga出発材料の量を増加するにしたがって、低レベルのGa分解(すなわち、低い密度の金属Gaおよび低い蒸発速度)、安定な溶融物フロー、高い構造的品質の非常に大きな結晶サイズ、およびイリジウムるつぼ損傷の危険が低いこととなるために、酸素濃度は、相当に増加しなければならないことを明らかに示す。
【0047】
[実施例10]
チョクラルスキー法100(図3、実施例1)が、実施例9でと同様に、直径および高さ100mmのイリジウムるつぼで使用されたが、異なる成長雰囲気が使用された。加熱ステップの間に、酸素濃度が、室温RTおよび約1300℃の中間温度値T1の間で、実質的に0体積%(当初の酸素濃度値C0)から約1体積%(中間酸素濃度値C1)に増大された。これは、COのみを使用することにより達成された。その後、CO成長雰囲気を、成長雰囲気としてAr=95体積%+O=5体積%の混合物に、次にGa出発材料の溶融の開始時にAr=92体積%+O=8体積%(成長酸素濃度値C2)に交換したが、それは、Ga出発材料(融解温度MT)が完全溶融するまでの加熱ステップの残りの間、かつ成長温度GTでの全結晶成長ステップの間、一定に維持された。結晶成長ステップが完了するとすぐ、Ar(92体積%)+O(8体積%)の成長雰囲気は、再度COに交換された。CO分解中に生成される酸素は、室温RTで0~1体積%(最終酸素濃度値C3)に減少された。結果として、非常に小さな濃度の金属Gaのみが、溶融物表面に存在し、それが、結晶成長開始をさらに容易にした。得られた結晶は、6×1017cm-3の自由電子濃度を有する半導体であった。それは、直径50mmおよび長さ125mmである、すなわち、比較例9のもの、およびいっそう優れた構造的品質のものよりいっそう長い。結晶は、平滑な表面で透明であり、イリジウム粒子はそこになかった。さらに、イリジウムるつぼは、Ga-Ir共晶により損傷されず、それは、数回再使用されうる。
【0048】
[実施例11]
この実施例は、実施例10(チョクラルスキー法100、直径および高さ100mmのイリジウムるつぼ)のものに非常に類似しているが、異なる酸素濃度が使用された。当初の酸素濃度値C0は、約0体積%であり、その当初の酸素濃度値は、加熱ステップの間に、約1700℃(中間温度値T1)で、約1.1体積%に増大された(中間酸素濃度値C1)。これは、CO成長雰囲気を使用することにより達成された。その後、酸素濃度は、成長雰囲気として、CO成長雰囲気を、Ar=88体積%+O=12体積%の混合物に交換することにより、Gaの溶融(融解温度MT)の開始時に、12体積%(成長酸素濃度値C2)に増大された。12体積%の成長酸素濃度値C2が、成長温度GTとして、全結晶成長ステップの間で一定に維持された。冷却ステップの間に、酸素濃度は、室温RTで0~1体積%(最終酸素濃度値C3)に減少された。金属Ga濃度は、実施例9でのものよりさらに低く、結晶種晶添加および成長を開始するのが全く容易であった。得られた結晶は、2×1017cm-3の自由電子濃度を有する半導体であったが、それは、高い酸素濃度のため、実施例10でのものより低かった。結晶は、直径50mmおよび長さ100mmであった。それは、非常に平滑な表面と共に透明であった。全体の結晶品質は、低い酸素濃度下で成長した結晶(比較例9)と比較した場合、いっそう優れていた。結晶の内側にイリジウム粒子は存在しておらず、るつぼの損傷兆候で、目に見えるものはなかった。
【0049】
[実施例12]
この実施例は、実施例10および11(100mmイリジウムるつぼを有するチョクラルスキー法100)に非常に類似している。当初の酸素濃度値C0は、約0体積%であったが、それは、次に、約1500℃(中間温度値T1)で約1体積%の中間酸素濃度値C1に増大され、その後、融解温度MTのすぐ下で20体積%の成長酸素濃度値C2に増大された。実施例11と同様に、最初にCOが、成長雰囲気として使用されたが、それは、その後、成長雰囲気としてAr=80体積%+O=20体積%の混合物に交換された。20体積%の成長酸素濃度値C2は、成長温度GTで全結晶成長ステップの間、一定に保持された。冷却ステップの間に、酸素濃度は、室温RTで、20体積%の成長酸素濃度値C2から、0~1体積%の最終酸素濃度値C3に減少された。これは、冷却ステップの間に、Ar+O成長雰囲気を、CO成長雰囲気に交換することにより達成された。得られた結晶は、7×1016cm-3の自由電子濃度を有する半導体であったが、それは、さらに高い酸素濃度のため、実施例10および11でのものより低かった。結晶サイズ、外観および品質、ならびにるつぼ安定性に関する結果は、実施例10および11のものと類似していた。
【0050】
[実施例13]
この実施例は、実施例8(チョクラルスキー法100)と類似しているが、異なる成長雰囲気が使用された。るつぼの直径および高さは、40mmであった。さらに、Ga出発材料は、非常に低いレベルの0.05mol%で、Mgでドープされた。室温RTでの当初の酸素濃度値C0は、約0体積%であったが、それは、次に、1460℃の中間温度値T1で約1体積%の中間酸素濃度値C1(COを使用することにより)に増大され、その後、融解温度MT未満の温度で、成長雰囲気としてN=65体積%+O=35体積%の混合物を使用することにより35体積%の成長酸素濃度値C2に増大され、その後、全結晶成長ステップの間、成長温度GTで一定に維持された。加熱ステップの間の酸素濃度変化は、段階的であった(酸素は、N/O比を変えることにより、約50~100Kの温度間隔で約5体積%のステップで増大された)。冷却ステップの間に、酸素濃度は、N/O比を変化させることにより、段階的手段で、成長温度GTで35体積%の成長酸素濃度値C2から、室温RTで約1体積%の最終酸素濃度値C3に減少された。直径20mmおよび長さ60mmの得られた結晶は、電気的絶縁体であった。結晶の構造的品質は、実施例10~12でのものと同程度に優れていた。
【0051】
[実施例14]
この実施例は、実施例13(チョクラルスキー法100)に類似するが、異なる成長雰囲気が使用された。るつぼの直径および高さは、40mmであった。室温RTでの当初の酸素濃度値C0は、融解温度MT(T1=MT)に等しい1820℃の中間温度値T1まで、中間酸素濃度値C1(C1=C0)として一定に維持された3体積%(Ar=97体積%+O=3体積%の混合物)であったが、それは、全てのGa出発材料が液相にあったときである。次に、融解温度MTでの酸素濃度は、Arフローに対するOフローの増加により、中間酸素濃度値C1から、12.5体積%の成長酸素濃度値C2に唐突に増大された。成長酸素濃度値C2は、種晶添加、結晶肩(crystal shoulder)の成長および結晶円柱の開始の間に.成長温度GTで一定に維持された。次に、成長酸素濃度値C2は、9.7体積%の第2の成長酸素濃度値C2’(C2’<C2)に減少され(図2Aでプロファイル10’により示されるとおり)、それは、結晶円柱のほとんどの成長の間一定に維持された。結晶円柱が、最終長の約2/3に達した場合、第2の成長酸素濃度値C2’は、(図2Bでプロファイル10’’により示されるとおり)13.8体積%の第3の成長酸素濃度値C2’’に増大された(C2’’>C2)。冷却ステップの間に、結晶成長ステップが完了した直後に、Ar+Oからなる成長雰囲気は、COに交換され、最終酸素濃度値C3は、室温RTで0~1体積%であった。直径20mmおよび長さ60mmの得られた結晶は、6×1017cm-3の自由電子濃度を有する半導体であった。他の特徴は、先の実施例10~13でのものと非常に類似していた。
【0052】
[実施例15]
この実施例で、キロポーラス(Kyropoluos)法200は、図4に模式的に示されるとおり利用された。イリジウムるつぼの直径および高さは、40mmであった。当初の酸素濃度値C0は、室温RTで約0体積%であった。それは、次に、1630℃の中間温度値T1で約1.1%(COから)の中間酸素濃度値C1に、その後、融解温度MTのすぐ下で16体積%の成長酸素濃度値C2に増大される。これは、COを、N=84体積%+O=16体積%の混合物に交換することにより得られた。16体積%の成長酸素濃度値C2は、成長温度GTでの結晶成長の最初の段階の間一定に維持された。結晶成長の最初の段階が完了する(種晶添加および結晶肩)とすぐ、16体積%の成長酸素濃度値C2が、8%の第2の酸素濃度値C2’に減少され、それは、成長温度GTでの結晶成長ステップの終わりまで一定に維持された。室温RTでの最終酸素濃度値C3は、3体積%であったが、それは、Nフローに関連してOフローの減少(段階的手段で成長酸素濃度値C2から)により得られた。得られた結晶は、直径32mmおよび長さ20mmのものであった。上述の実施例9~14と類似して、得られた結晶は、1×1017cm-3の自由電子濃度および高い構造的品質を有する透明半導体であった。るつぼ損傷の兆候は、観察されなかった。
【0053】
[実施例16]
この実施例では、垂直ブリッジマン法またはVGF法300が、図5Aで模式的に示されるとおり利用された。るつぼの円柱部分では、直径および長さが、それぞれ60mmおよび80mmであった。長さ25mmのるつぼの円錐底部は、最後に種晶保持部として作用する5mm管が着いている。この実験で、Sn(Ga出発材料中に0.1mol%のSnO)は、非常に高い酸素濃度にもかかわらず、得られた結晶の高い電気伝導率を得るために意図的なドーパントとして使用された。当初の酸素濃度値C0は、室温RTで0体積%であった。それは、その後、1430℃の中間温度値T1で約1体積%の中間酸素濃度値C1(CO成長雰囲気から)に増大された。加熱ステップの次の段階の間に、1体積%の中間酸素濃度値C1は、融解温度MTより下で17体積%の成長酸素濃度値C2(COを、N=83体積%+O=17体積%の混合物に置換することにより)に増大された。17体積%の値C2は、成長温度GTでの結晶成長ステップの間に溶融の間一定に維持された。結晶成長ステップが完了されるとすぐ、および冷却ステップの最初の段階後、成長酸素濃度値C2は、冷却ステップの次の段階の間に、室温RTで約0~1体積%の最終酸素濃度値C3(N+OをCOに交換することにより)に減少された。得られた結晶は、直径50mmおよび長さ35mmであった。それは、5×1018cm-3の自由電子濃度を有する透明半導体であった。るつぼ損傷の兆候は観察されなかった。
【0054】
[実施例17]
この実施例では、2つの形状制御結晶成長技術が使用された。これは、図6に模式的に示されるとおりNCSおよびEFG法500であった。円柱状イリジウムるつぼの直径および高さは、40mmであった。ダイは、イリジウムから製造され、同じ直径の円柱状結晶を得るために16mmの円錐形状の円形頂部表面を有した。中心チャネル512は、NCS変異形の場合には直径12mmのものであり、EFG変異形の場合には直径1mmのものであった。当初の酸素濃度値C0は、室温RTで約0%であり、それは次に、1400℃の中間温度値T1で1%の中間酸素濃度値C1(COから)に、その後、融解温度MTのすぐ下で12%の成長酸素濃度値C2に増大された。これは、COを、Ar=88体積%+O=12体積%の混合物と交換することにより得られた。12%の成長酸素濃度値C2は、成長温度GTでの全結晶成長ステップの間一定に維持された。室温RTでの最終酸素濃度値C3は、約0~1体積%であり、N+OをCOに交換することにより得られた。得られた単結晶は、直径16mmおよび長さ50mmの半導体であった。イリジウムるつぼおよびダイ損傷で観察されたものはなかった。
【0055】
[実施例18]
この実施例では、浮上支援自己種形成結晶成長法600が、図7に模式的に示されるとおり利用された。イリジウムるつぼは、直径および高さ40mmのものであった。液相でのGaの非常に高い電子伝導性を得るために、Snを用いた意図的なドーピング(Ga出発材料での0.2mol%のSnO)が使用された。当初の酸素濃度値C0は、室温RTで2体積%であり、それは、1500℃の中間温度値T1に一定なまま、すなわちC1=C0であった。次に、2体積%の中間酸素濃度値C1(N=98体積%+O=2体積%の混合物)は、融解温度MTより下で5体積%の成長酸素濃度値C2(Nフローに対するOフローの増加により)に増大された。5体積%の値C2は、成長温度GTでの溶融の間、および結晶成長ステップの間、一定に維持された。結晶成長ステップが完了され、冷却ステップの最初の段階の後すぐ、成長酸素濃度値C2は、室温RTで、約1体積%の最終酸素濃度値C3(Nフローに対するOフローの増加により)まで次の段階の冷却ステップの間減少された。得られた結晶は、比較的優れた構造的品質を有し、直径35mmおよび長さ20mmであった。それは、1×1019cm-3の自由電子濃度を有する透明な半導体であった。るつぼ損傷の兆候は観察されなかった。
【0056】
主要な構成成分(O、CO、N、Ar)に加え、含まれる成長過程により、成長雰囲気は、0~1.5体積%の間のHO、0~0.1体積%の間のH、0~2体積%の間のCO(主にCO分解から)および0~100vol.ppmの間のHeのような他の気体も含有した。一般に、成長雰囲気は、数種の気体、特に、1つの雰囲気を互いに置換する場合に数種の気体を含有した。
【0057】
本発明の教示による成長雰囲気を使用すると、Gaの分解の間に形成される固体イリジウムるつぼと金属ガリウムとの共晶形成が顕著に減少する。これは、工業的レベルで要求される、重量で数kgの大型単結晶を得るために大きな成長システムを使用する場合(例えば、チョクラルスキー法により成長した直径2~4インチの円柱状結晶)、特に重要である。同時に、Gaの揮発性化学種の蒸発も、最小化または排除された。第2に、得られた結晶は、小さいまたは大きいにかかわらず、発明の成長雰囲気を使用する場合に、高い構造的品質を有していた。ロッキング曲線の半値幅(FWHM)(構造的品質を決定する)は、低い酸素濃度(100~150arcsec周辺)での結晶成長と比較したとき、2または3の因数(factor)により改善を示す新規成長雰囲気を使用する場合、約50arcsecまたは未満であった。さらに、新規な成長雰囲気下で得られる結晶は、より低い酸素濃度を含む雰囲気の使用で成長する結晶と比較した場合、10~100倍低い転移密度(cm当たり数千を越えない)を示した。さらに、本発明の成長雰囲気は、結晶学的双晶形成、切断および亀裂を最小限または排除さえした。さらに、結晶表面は、Gaの分解が、顕著に減少されたとき、平滑および光沢があるものになった。非常に改善された結晶品質に加えて、金属るつぼ内に含まれる液体Gaでの高い酸素濃度は、非常に容易な種晶添加およびさらに安定な結晶成長過程を可能にした。本発明の上述の利点の組み合わせは、結晶の高い総生産収率(結晶サイズおよび品質ならびにイリジウムるつぼの延長された寿命の組み合わせ)をもたらした。本発明のさらに別の利点は、成長および/または冷却ステップ中に様々な酸素濃度を使用することにより、結晶の電気的および光学的特性を調整できることである。例えば、非常に高い酸素濃度(>25体積%)で成長した結晶は、半絶縁または絶縁状態になりうる一方で、低い値の酸素濃度で、結晶は、半導体性のままである。したがって、必要により、結晶は、絶縁体、半絶縁体または半導体のいずれかとして成長され得たが、なお異なる電気的特性を有した。
【0058】
予想外で驚くべきことに、得られた結晶は、なんらイリジウム粒子を含有しなかった。低い酸素濃度のときに、イリジウム粒子が得られた結晶にしばしば存在する場合と対称的である。これは、高温での非常に高い酸化イリジウム分圧のためであり、生成直後に非常に効果的に蒸発する。高い酸素濃度が、中程度の温度(600~1000℃)で使用される場合、酸化イリジウム分圧は、非常に低く、イリジウムるつぼに接触に接触する出発材料を簡単に混入しうる。高温での本発明による極度に高い酸素濃度(100体積%まで)にもかかわらず、酸化および蒸発が原因のイリジウムロスは、全く低く、許容でき、酸素濃度および成長稼働の期間により、成長稼働当たり2~9重量%の間である。100体積%の酸素の場合には、9重量%のイリジウムロスは、1日の成長稼働に影響する(relates)一方で、低い酸素濃度で、数重量%のイリジウムロスは、数日の成長稼働に影響する。
【0059】
本発明は、結晶の酸素濃度に加えて、電気的および光学的特性をさらに調整する(必要とされる場合)多数の要素で未ドープ化または意図的にドープ化されているβ-Ga単結晶を得ることについて適用されうる。実施例10~18に関して記載される結晶のいくつかは、非ドープである一方で、他のものは、得られた絶縁性結晶に対する二価イオン(Mg)、または高い酸素濃度にもかかわらず、結晶の電気伝導率を増加する三価イオン(Sn)のいずれかでドープされた。発明の成長雰囲気に関連して、必要な場合、任意のドーパントを使用しうる。
【0060】
本発明による結晶成長雰囲気は、イリジウムまたはその合金を含む金属るつぼを利用する任意の結晶成長法に適用されうる場合、非常に広範なスペクトルの使用を有する。これらの方法は、実施例1~18および図3~7に関連して記載されている。金属るつぼが、高温で使用される限り、これらの方法の任意の修正または適用も含まれる(>1500℃)。
【0061】
β-Ga結晶の高い構造的品質は、種々のエピタキシャル技術を使用してホモまたはヘテロエピタキシャル膜または層をその上に堆積するための高品質ウエハーまたは基板の製作を可能にする。ホモエピタキシャル膜または層は、基板と異なる伝導率のβ-Ga単結晶膜を含みうる一方で、ヘテロエピタキシャル膜は、様々な酸化物または窒化物(GaN、AlN、AlGaN、InN、InGaNなど)などの他の化合物を含む。エピタキシャル技術は、これらに限定されないが、分子線エピタキシー(MBE)、有機金属相成長法(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)(MOCVD)、パルスレーザー蒸着(Pulsed Laser deposition)(PLD)、スパッタリング、電子ビーム蒸着(Electron Beam Evaporation)などを含む。β-Ga単結晶から作製されるウエハーまたは基板は、それに限定されないが、化学蒸気輸送法(CVT)、物理的気相輸送(PVT)などのような他の成長技術のための種としても使用されうる。
【0062】
本発明によるβ-Ga単結晶は、それに限定されないが、発光ダイオード、固体レーザー、透明または高電力用電界効果トランジスタ(MISFETおよびMOSFETなどの)、ショットキーダイオードおよび高温度用ガスセンサ(高温での酸化および還元条件での電気的特性変化)などの多様な用途で使用されうる。
【0063】
本発明の本質は、高温(>1500℃)でのイリジウムるつぼ(またはその合金)に関連した非常に高い酸素濃度(5~100体積%)の使用である。これは、一般的な知見であるが、イリジウムるつぼ内に含まれる溶融物から育成される任意の酸化物結晶に適用でき、高い酸素濃度を要求する。特に、本発明は、熱的に不安定であり、高い酸素分圧または濃度を要求する他の透明導体または半導体酸化物に適切である。このような酸化物の例としては、これらに限定されないが、ZnO、In、NiO、SnO、BaSnO、それらの化合物などを含む。本発明の成長雰囲気は、それに限定されないが、シンチレータ、レーザー材料(第2高調波発生(second harmonic generation)を含めて)、圧電体などの電子的および光学的酸化物単結晶の他の群にも適切である。
【0064】
種々の実施形態で示されるとおりの操作条件、配列(arrangement)および設計は、例示のみであることに留意することは重要である。本発明の例示の実施形態のみが、本開示で詳細に記載されたが、当業者は、特許請求の範囲で規定される発明の主題の新規教示および利点から実質的に逸脱することなく、例えば、結晶成長パラメーターの値での変動、結晶成長雰囲気組成物、材料の使用、結晶成長技術の使用、プロセス設計など多くの変法が可能であることは容易に理解する。したがって、このような変法は全て、付随の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。他の置換、変法、変化および排除は、本発明の範囲から逸脱することなく好ましいおよび他の例示の実施形態の操作条件および配列で行われうる。
【0065】
参照番号のリスト
1~9 加熱ステップ中の温度に対する酸素濃度プロファイル
10、10’、10’’ 結晶成長ステップ中の酸素濃度プロファイル
11~15 冷却ステップ中の温度に対する酸素濃度プロファイル
100、200、300、400、500、600 結晶成長炉
101、201、301、401、501、601 金属るつぼ
102、202、302、402、502、602 Ga出発材料
103、203、303、403、503、603 断熱材
104、204、304、404、504、604 加熱装置
105、205、305、405、505、605 結晶種
106、206、306、406、506 種晶保持部
107、207、507 引っ張りロッド
110、210、310、410、510、610 単結晶
120、220、320、420、520、620 成長雰囲気
308、408、608 るつぼ301、401、601を覆う蓋
309、409、609 蓋308、408、308の開口部
511 金属るつぼ501のダイ
512 ダイ511の中心チャネル
513 ダイ511の頂部表面
OC 酸素濃度
C0、C1、C2、C2’、C2’’、C3酸素濃度値:初期、中間、成長および最終
T1 中間温度値
ST 温度値T1の範囲
SC 成長温度での酸素濃度の範囲
MT 融解温度
GT 成長温度
RT 室温
V 引っ張り速度
R 回転速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7