(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】建具の操作装置および建具
(51)【国際特許分類】
E05C 17/28 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
E05C17/28
(21)【出願番号】P 2020116569
(22)【出願日】2020-07-06
(62)【分割の表示】P 2016069091の分割
【原出願日】2016-03-30
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 友和
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-261152(JP,A)
【文献】特開2007-170127(JP,A)
【文献】特開2013-221276(JP,A)
【文献】実公昭13-13602(JP,Y1)
【文献】特開2017-179894(JP,A)
【文献】実開昭58-188463(JP,U)
【文献】特開2004-132102(JP,A)
【文献】特開2013-204238(JP,A)
【文献】実開昭63-28756(JP,U)
【文献】特開平4-238976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00
E05C 17/16
E05C 17/26-17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体内に障子を開閉可能に納めた建具の操作装置において、
前記障子が所定開度まで開くことを許容する開口部材と、
前記障子が所定開度位置で停止してロックするように前記開口部材と連結可能な規制部材と、
ロック位置にある前記開口部材をロック位置から解除する作動部材と、
前記作動部材を操作する操作部と、
前記障子を開閉操作するハンドルと、を備えており、
前記障子の框材にハンドル受け部が設けられ、
前記ハンドル受け部に前記ハンドルおよび前記操作部が取り付けられて
おり、
前記規制部材は、前記開口部材との解除状態から連結状態に戻る方向に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする建具の操作装置。
【請求項2】
前記ハンドルは、前記障子の框材の見込み面に取り付けられている請求項1に記載の建具の操作装置。
【請求項3】
枠体内に障子を開閉可能に納めた建具の操作装置において、
前記障子が所定開度まで開くことを許容する開口部材と、
前記障子が所定開度位置で停止してロックするように前記開口部材と連結可能な規制部材と、
ロック位置にある前記開口部材をロック位置から解除する作動部材と、
前記作動部材を操作する操作部と、
前記障子を開閉操作するハンドルと、を備えており、
前記障子の框材にハンドル受け部が設けられ、
前記ハンドル受け部に前記ハンドルおよび前記操作部が取り付けられて
おり、
前記ハンドルは、前記障子の框材の見込み面に取り付けられていることを特徴とする建具の操作装置。
【請求項4】
前記規制部材を操作する連結解除操作部も前記ハンドル受け部に取り付けられており、
前記連結解除操作部を操作することで前記規制部材と前記開口部材との連結が解除され、
前記障子を任意に開閉可能に構成されている請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の建具の操作装置。
【請求項5】
前記連結解除操作部は、キー部材を備え、
前記キー部材の操作により前記規制部材と前記開口部材との連結を解錠可能である請求項
4に記載の建具の操作装置。
【請求項6】
枠体と、
前記枠体内に開閉可能に収められた障子と、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の建具の操作装置と、を備えていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば縦辷り出し窓や開き窓等の開閉作動する障子を備えた建具の建具の操作装置および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、障子が換気や排煙等のために所定角度だけ開くようにした開口部装置が知られている。ビル等では障子が開きすぎると危険であるため所定角度だけ開くように規制している。例えば特許文献1に記載された開口部装置では、躯体に固定した枠体に開閉可能な障子が所定開度以上開くことを規制するカム溝を形成した小開口アームとカム溝に嵌入された規制ピンとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載の開口部装置では、所定角度開いた障子が突風等で勝手に閉じたり開いたりしないように所定角度開いた障子をロックする機構をカム溝に形成している。そして、小開口位置でロックされた障子を閉じる際、ロック解除のために小開口アームの支軸近傍を押動させる作動部とこの作動部を押動させる操作スイッチを設けている。
これにより、操作スイッチで作動部を押して小開口アームの支軸近傍を回動させて、規制ピンをカム溝の最奥部から若干移動させることで小開口アームと規制ピンのロックを解除している。
【0004】
上述した開口部装置は、支軸近傍で小開口アームを作動部で押動することで規制ピンとカム溝とのロックを解除するため小開口アームの移動に大きな力を必要としていた。しかも、小開口アームには支軸の周りにロック解除と反対側に付勢するばねが装着されているために、小開口アームのロック解除のための回動により大きな力を必要としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した開口部装置では、一方の手でハンドルを操作して障子を開放位置から閉鎖位置に回動させる際、他方の手で操作スイッチを操作して小開口アームのロックを解除しなければならなかった。ロック解除と障子の閉鎖作動のために両手を使って操作することは煩雑で面倒であった。
また、障子の清掃等を行う際に障子を大きく開放させるために小開口アームのカム溝と規制ピンとの係合を外す必要があった。また、掃除等の後に小開口アームのカム溝と規制ピンを手作業で係合状態に戻すことが必要であり、作業が煩雑であった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、片手で小開口部材のロック解除と障子の開閉のためのハンドル操作とを行えるようにした建具の操作装置および建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による建具の操作装置は、枠体内に障子を開閉可能に納めた建具の操作装置において、前記障子が所定開度まで開くことを許容する開口部材と、前記障子が所定開度位置で停止してロックするように前記開口部材と連結可能な規制部材と、ロック位置にある前記開口部材をロック位置から解除する作動部材と、前記作動部材を操作する操作部と、前記障子を開閉操作するハンドルと、を備えており、前記障子の框材にハンドル受け部が設けられ、前記ハンドル受け部に前記ハンドルおよび前記操作部が取り付けられており、前記規制部材は、前記開口部材との解除状態から連結状態に戻る方向に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする。
また、本発明の建具の操作装置は、前記ハンドルは、前記障子の框材の見込み面に取り付けられていてもよい。
本発明による建具の操作装置は、枠体内に障子を開閉可能に納めた建具の操作装置において、前記障子が所定開度まで開くことを許容する開口部材と、前記障子が所定開度位置で停止してロックするように前記開口部材と連結可能な規制部材と、ロック位置にある前記開口部材をロック位置から解除する作動部材と、前記作動部材を操作する操作部と、前記障子を開閉操作するハンドルと、を備えており、前記障子の框材にハンドル受け部が設けられ、前記ハンドル受け部に前記ハンドルおよび前記操作部が取り付けられており、前記ハンドルは、前記障子の框材の見込み面に取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明の建具の操作装置は、前記規制部材を操作する連結解除操作部も前記ハンドル受け部に取り付けられており、前記連結解除操作部を操作することで前記規制部材と前記開口部材との連結が解除され、前記障子を任意に開閉可能に構成されていてもよい。
また、本発明の建具の操作装置は、前記連結解除操作部が、キー部材を備え、前記キー部材の操作により前記規制部材と前記開口部材との連結を解錠可能であってもよい。
また、本発明の建具は、枠体と、前記枠体内に開閉可能に収められた障子と、上述のいずれかに記載の建具の操作装置と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による建具の操作装置および建具は、障子が所定開度開いた状態で操作者は片手だけでハンドルを把持しながら操作部を操作することができる。そのため、片手で、操作部を操作して開口部材を規制部材とのロック位置から解除させると共にハンドルを操作して障子を閉鎖させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による縦辷り出し窓の要部縦断面図である。
【
図2】
図1に示す縦辷り出し窓の要部水平断面図である。
【
図3】金属縦框の見込み面に設けたハンドルを示す正面図である。
【
図4】
図3の金属縦框におけるA-A線断面図を示すものであり、(a)はハンドル操作前の障子の閉鎖位置を示す図、(b)はハンドル操作後の障子の開放位置を示す図である。
【
図5】閉鎖位置と開放位置における小開口規制アームの位置と開放位置の金属縦框とを示す模式図である。
【
図6】金属縦框における見込み面と反対側の面に設けたスライドバーの要部を示す図である。
【
図7】金属縦框に設けたスライドバーの穴部及びトリガー部材と縦枠に設けた受け部とを示すロック装置の分解説明図である。
【
図8】スライドバーの穴部とトリガー部材の進退位置を示す図であり、(a)はハンドルの閉鎖位置における穴部とトリガー部材の要部斜視図、(b)はハンドルの開放位置における穴部とトリガー部材の要部斜視図である。
【
図10】キー部
材を作動部材の保持枠の嵌合溝に挿入した状態を示す断面図と90度異なる角度の断面図を示すものであり、(a)はキー部材を保持枠に差し込んだ状態の図、(b)はキー部材を90度回転させた状態の図、(c)はキー部材を引き込んだ状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による建具の一例として縦辷り出し窓について添付図面により説明する。
本発明の実施形態による縦辷り出し窓1は障子の開放位置を所定角度の小開口に制限する小開口制限機構を備えている。この縦辷り出し窓1は、例えばアルミ合金等の金属部材と樹脂部材の複合建具からなっているが、金属部材製の建具や樹脂部材製の建具でもよい。
図1及び
図2に示す縦辷り出し窓1は、躯体の開口部にそれぞれアルミ合金及び合成樹脂からなる上枠3及び下枠4と左右の縦枠5、6とが四角形枠状に形成された枠体7を取り付けている。
【0015】
枠体7内に開閉可能に納めた障子9は、それぞれアルミ合金と樹脂からなる上框10及び下框11と左右の縦框12,13とが略四角形枠状に形成された框体14を有している。框体14の内部にはパネルとして例えば二層ガラス等の複層ガラスからなるガラスパネル15を納めている。障子9の吊元は枠体7の見付け方向の一端部である縦枠6近傍に設けられ、その軸線は上下方向に延びて上枠3と下枠4に支持されている。
【0016】
図1に示す縦辷り出し窓1の縦断面図において、枠体7の上枠3は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属上枠3aと屋内側に設けた樹脂上枠3bとが互いに係合されている。下枠4は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属下枠4aと屋内側に設けた樹脂下枠4bとが互いに係合されている。
図2に示す横断面図において、吊先側(
図2において左側)に設けた縦枠5は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属縦枠5aと屋内側に設けた樹脂縦枠5bとが互いに係合されている。吊元側(
図2において右側)に設けた縦枠6は屋外側に設けたアルミ合金からなる金属縦枠6aと屋内側に設けた樹脂縦枠6bとが互いに係合されている。
【0017】
枠体7に納められた障子9の框体14はそれぞれ屋外側に設けたアルミ合金からなる金属上框17及び金属下框18と左右の金属縦框19,20とで四角形枠状に形成されている。
図1に示す金属上框17と金属下框18にはガラスパネル15の上端部と下端部を嵌合するための断面略L字状のパネル嵌合溝17a、18aが形成され、それぞれパッキン22によってガラスパネル15の上端部と下端部の両面を保持している。
金属上框17と金属下框18に形成したパネル嵌合溝17a、18aの屋内側にはパッキン22を介してガラスパネル15の屋内側の側面を押圧保持するための上部押縁24、下部押縁25がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
上部押縁24は互いに係合する金属押縁片24aと樹脂押縁片24bとが一体化されている。金属押縁片24aはパッキン22を介してガラスパネル15を押圧し、パネル嵌合溝17aと共に断面略コの字状を形成してガラスパネル15を保持する。同様に下部押縁25も金属押縁片25aと樹脂押縁片25bが互いに係合して一体化されている。パネル嵌合溝18aと金属押縁片25aとで断面略コの字状とされてガラスパネル15を保持する。そのため、上框10は金属上框17と上部押縁24で構成され、下框11は金属下框18と下部押縁25で構成されている。
【0019】
図2において、左側の金属縦框19にはガラスパネル15の左側端部を受けるための断面略コの字状のパネル嵌合溝19aが形成され、パッキン22を介してガラスパネル15の左側端部の両面を保持している。
右側の金属縦框20にはガラスパネル15の右側端部を嵌合するための断面略L字状のパネル嵌合溝20aが形成され、パッキン22によってガラスパネル15の右側端部の両面を保持している。金属縦框20に形成した断面略L字状のパネル嵌合溝20aの屋内側にはパッキン22を介してガラスパネル15を押圧保持するための縦部押縁28が取り付けられている。
この縦部押縁28も金属押縁片28aと樹脂押縁片28bが互いに係合して一体化されている。パネル嵌合溝20aと金属押縁片28aとで断面略コの字状とされてガラスパネル15を保持する。
【0020】
図2で、左側の金属縦框19に形成した断面略コの字状のパネル嵌合溝19aの屋内側には複数のホロー部を有する金属縦框19が平面視略L字状に屈曲して延びてハンドル受け部19bが形成されている。このハンドル受け部19bの見込み面19baにはグレモン錠のハンドル30が取り付けられている。ハンドル受け部19bには見込み面19baを除いて屋内側見付け面を覆う樹脂縦框27が係合されている。
【0021】
図3は吊先側の縦框12におけるハンドル受け部19bの正面図であり、
図4(a)、(b)は
図3における金属縦框19のA-A線断面図である。なお、
図4において
図2に示すハンドル受け部19bの肉厚部分は省略されている。
図2及び
図4に示す金属縦框19において、屋内側に設けたハンドル受け部19bの見込み面19ba側に上下方向に延びる略四角形筒状をなす中空ホロー部32と中空枠部33とが配列されている。
中空枠部33は
図2及び
図4に示すように金属縦框19の断面略コの字状の枠部19cに断面略コの字状のスライドバー31が対向して摺動可能に嵌合されて中空に構成されている。スライドバー31のハンドル30に対向する位置には断面略コの字状のスライダー34が嵌合されて中空に構成されている。スライダー34については後述する。
なお、金属縦框19において、ハンドル30側に設置された中空ホロー部32は室内側に連通して内圧で満たされた内圧空間Pを形成し、中空枠部33は縦枠5に連通して外気で満たされた外圧空間Qを形成している。
【0022】
図4において、ハンドル30は操作部30aに対して屈曲する基部30bを備えており、中空ホロー部32内に設けた基板36にはハンドル30を上下方向に回動可能に支持する支軸37が基部30bの先端部30cに設置されている。ハンドル30は支軸37を中心に上下方向に回動可能であり、ハンドル受け部19bの見込み面19baにはハンドル30の回動を許容する開口部38が形成されている。開口部38は断面ラッパ状に形成されており、ハンドル30は開口部38の範囲で回動可能である。
【0023】
ハンドル30に形成された先端部30cは、中空ホロー部32から枠部19cに形成した挿通穴部19dを通って中空枠部33内に突出している。
また、中空ホロー部32はハンドル30の取付部に設けた開口部38を通して室内側に連通しており、しかもその上下端部が図示しないシール部材で気密にシールされるか金属上框17と金属下框18の面に当接していること等で屋内側空気の圧力で満たされた内圧空間Pに保持される。
【0024】
スライダー34は枠部19c内をスライドバー31と一体に摺動可能であり、その上下方向の中央部には、ハンドル30の先端部30cを受け入れる凹部を形成した連動突部34aが突出形成されている。そのため、ハンドル30を回動させると先端部30cで係合する連動突部34aを介してスライダー34がスライドバー31と一体に連動して上下動する。しかも、先端部30cを挟むスライダー34の上下両側には枠部19cを封止する気密ピース40がそれぞれ取り付けられている、気密ピース40は例えばスポンジやゴム等の弾性体で構成されている。
また、中空枠部33内にはハンドル30で解錠操作するグレモン錠の連動棒(図示せず)が挿通され、この連動棒にスライダー34及び一対の気密ピース40を連結して一体化してもよい。
【0025】
枠部19cとスライドバー31を備えた中空枠部33は外圧空間Qを形成するが、スライダー34とその上下の気密ピース40と枠部19cで囲われた領域はハンドル30の先端部30cが挿通している挿通穴部19dを通して中空ホロー部32と屋内に連通する内圧空間Paを形成している。この場合、スライダー34で形成する内圧空間Paは厳密に屋内側の気圧である必要はなく外気が混入した内圧と外圧の中間の圧力であってもよい。中空ホロー部32内の内圧空間Pも同様である。また、内圧空間Paと内圧空間Pはほぼ同一圧力であり外気の圧力より小さい。
また、金属縦框19のスライダー34の上方には、後述する小開口規制アーム42の開閉カム溝45に摺動可能に嵌合して障子9の閉鎖位置と開放位置を規制する規制部材として規制ピン43が設置されている。
【0026】
図5において、吊先側の縦框12の枠部19cに対向する金属縦枠5aには回転軸44が植設され、この回転軸44には障子9の開放角度を規制する開口部材として小開口規制アーム42が回動可能に支持されている。回転軸44と小開口規制アーム42には小開口規制アーム42を実線で示す垂直位置に付勢するばね41が取り付けられている。
小開口規制アーム42には規制ピン43を嵌合させる開閉カム溝45が形成されている。開閉カム溝45は例えば略逆Z型に形成されており、規制ピン43が上側の拡幅溝45a内に位置する場合には障子9は閉鎖位置にあり、下端の終端溝部45bに位置する場合には障子9は所定の小開口位置にある。小開口規制機構は小開口規制アーム42と規制ピン43とを備えている。
【0027】
障子9が小開口位置に開口した状態で規制ピン43が開閉カム溝45の下端の終端溝部45bにおける最奥部に位置すると障子9はロック状態に保持される。この状態で小開口規制アーム42は一点鎖線で示すように斜めに保持されるため規制ピン43が最奥部から開閉カム溝45の終端溝部45b内を移動したりすることなく保持される。ハンドル30を動かしたり強風等が障子9に吹き付けたりしたとしてもずれたり回動したりすることはない。
【0028】
また、
図4(a)及び(b)において、吊先側の金属縦框19におけるスライダー34と規制ピン43の間には、中空ホロー部32の長手方向に直交する方向に進退可能な作動部材48が中空ホロー部32に設置されている。作動部材48は規制ピン43の近傍に位置する。この作動部材48の側部には作動ピン49が突出している。作動部材48は枠部19cとスライドバー31に形成された開口を通して中空枠部33の外側に突出可能である。
作動部材48の側部には解除プレート50が昇降可能に取り付けられ、この解除プレート50に形成した斜め方向の摺動ガイド溝50aには作動ピン49が摺動可能に嵌合している。しかも、解除プレート50には弾性部材としてコイルばね52が取り付けられていて解除プレート50を上方位置に付勢している。
【0029】
解除プレート50には操作レバー50bが形成され、操作レバー50bはハンドル受け部19bの見込み面19baに形成された開口溝51内から突出して手動で上下動可能とされている。操作レバー50bは摺動ガイド溝50aと作動ピン49によって、開口溝51の上端位置で作動部材48を後退位置に保持している(
図4(a)参照)。開口溝51の下端位置で作動部材48を小開口規制アーム42の下部と干渉する位置に突出させる(
図4(b)参照)。
【0030】
また、開口溝51の上端位置にある操作レバー50bは、上方位置に回動させたハンドル30の近傍に位置している。そのため、操作者は片手でハンドル30を把持しながら操作レバー50bを開口溝51の上端位置から下端位置まで押し下げ可能である。操作レバー50bが開口溝51の下端位置にあると作動部材48は前方に突出してその先端テーパ部48aが小開口位置でロックされた小開口規制アーム42の下端部をわずかに押動する。これによって、規制ピン43は開閉カム溝45の終端溝部45bの最奥部から離れてロック位置を外れる。この状態で障子9を閉鎖作動することができる。
これら作動部材48、操作レバー50b、小開口規制アーム42等はロック解除装置を構成する。
【0031】
図4(a)に示すハンドル30の降下位置で障子9が閉鎖位置にあり、
図4(b)に示すハンドル30の上方位置で障子9が開放可能位置にある。
そのため、
図4(a)において、ハンドル30を降下位置から
図4(b)に示す上昇位置に回動させると、ハンドル30の先端部30cが下方に回動して先端部30cに係合するスライダー34がスライドバー31と一体に下方に移動する。
【0032】
図4、
図6乃至
図8において、スライドバー31におけるスライダー34の下方側には略鍵穴型の穴部55が形成されており、この穴部55の裏側(見込み面19ba側)には穴部55に進退可能なトリガー部材56が設置されている。穴部55はスライダー34に近い側が正方形に近い略四角形状の拡幅穴部55aであり、その下側中央に細溝状の縮幅穴部55bが連通して一体に形成されている。
そしてトリガー部材56は先端側に縮幅穴部55bに嵌入可能な略板状の縮幅凸部56aが形成され、その後部には拡幅穴部55aに嵌入可能な拡幅凸部56bが一体形成されている。トリガー部材56の後部には略柱状の凹溝57が形成されている。この凹溝57内に弾性体として圧縮状態のコイルばね58が装着されているため、トリガー部材56はスライドバー31の穴部55に嵌入する方向に付勢されている。
【0033】
そして、ハンドル30が下方位置にある場合、スライドバー31は
図4(a)に示す上方位置(基準位置)にあり、
図8(a)に示すように穴部55の縮幅穴部55bがトリガー部材56の縮幅凸部56aに対向する位置にあるため、縮幅凸部56aが嵌入する。また、ハンドル30を
図4(b)に示す上方位置に回動させると、スライドバー31は下方位置に降下する。そのため、
図8(b)に示すように穴部55の拡幅穴部55aがトリガー部材56の縮幅凸部56aに対向する位置にあるため、縮幅凸部56aと拡幅凸部56bが拡幅穴部55aに嵌合する。
しかも、トリガー部材56の拡幅凸部56bが穴部55の拡幅穴部55a内に嵌入しているとスライドバー31は下方位置から移動できないため、ハンドル30は上方位置に保持される。
【0034】
また、
図4及び
図7において、吊先側の縦框12に対向する縦枠5の金属縦枠5aには、金属縦框19に設置されたトリガー部材56に対向する位置にトリガー受け部60が固定されている。トリガー受け部60はトリガー部材56の縮幅凸部56aに対向する面にテーパ面60aが形成されている。テーパ面60aは屋外側から屋内側に向けて次第に肉厚が増大するようにトリガー部材56側に傾斜している。
そのため、
図8(b)に示すように障子9の開放位置でスライドバー31の穴部55の拡幅穴部55aにトリガー部材56の拡幅凸部56bが嵌合した状態で、障子9を
図7の矢印A方向に閉鎖作動させると、縮幅凸部56aがトリガー受け部60のテーパ面60aに当接して次第に後退して拡幅凸部56bが拡幅穴部55aから外れるため、スライドバー31が上方移動可能となる。
なお。縦框12に設けたスライドバー31に形成した穴部55とトリガー部材56と縦枠5に設けたトリガー受け部60はロック装置を構成する。
【0035】
また、
図4及び
図10に示すように、規制ピン43は略有底筒状の保持枠63内に保持されており、その底部はハンドル受け部19bの見込み面19baに規制ピン調整部64として露出している。この規制ピン調整部64には薄板状で前後に延びる嵌合溝64aが形成されている。嵌合溝64aには
図9に示すキー部材65が挿入可能とされている。キー部材65は拡径した拡径キー部65aとその基端側に形成されていて階段状に拡径された支持部65bとを有している。
また、
図10に示す保持枠63は略筒状であり、規制ピン43の基部は細径部43aを介して拡径柱状の本体部43bを有しており、本体部43bは保持枠63の内部に進退可能に嵌挿されている。本体部43bの基部は規制ピン調整部64に装着された進退受け部67に装着され、本体部43bに対して進退受け部67が例えば略90度回転可能とされている。進退受け部67には規制ピン調整部64との間に付勢手段としてのコイルばね68が圧縮状態で装着されており、進退受け部67は例えば略90度回転可能とされている。
【0036】
規制ピン43の本体部43b内には保持枠63の内面に対向して形成された小幅の溝部63aに嵌挿された軸体69が装着され、その後方には軸体69に平行な貫通孔70と受け面70aが形成されている。規制ピン43は保持枠63に対して軸体69と溝部63aにガイドされて直線的に進退可能とされている。また、規制ピン調整部64に形成された嵌合溝64aは受け面70aを介して貫通孔70まで連通している。
【0037】
そして、規制ピン調整部64から嵌合溝64aにキー部材65の拡径キー部65aを挿入した後、
図10(b)に示すように、キー部材65を貫通孔70内で90度回転させる。すると、進退受け部67はキー部材65と共に回転するが、本体部43bの受け面70aは回転しない。そのため、嵌合溝64aは受け面70aと進退受け部67とで略90度ずれることになる。
そして、キー部材65を引き込むと、拡径キー部65aは貫通孔70の受け面70aに当接して本体部43bを含む規制ピン43が保持枠63側に引き込まれ、規制ピン43は小開口規制アーム42の開閉カム溝45から外れる。この状態で、障子9は小開口の所定角度を超えて任意の角度、例えば90度まで開放できる。
【0038】
また、規制ピン43は開閉カム溝45を外れた後退位置からキー部材65を離すと、コイルばね68の付勢力で規制ピン43は進退受け部67と共に前方に突出して開閉カム溝45に挿入されることになる。規制ピン43を開閉カム溝45に再度挿入させるには障子9を所定角度の小開口位置に戻すか、あるいは障子9を閉鎖位置に戻すことが好ましい。
このようなキー部材65、進退受け部67、嵌合溝64a、保持枠63、規制ピン43、小開口規制アーム42等は係脱装置を構成する。
【0039】
本実施形態による縦辷り出し窓1は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。
図4(a)に示すように、障子9を閉鎖させた状態でハンドル30は下方に位置しており、スライドバー31は上方位置(基準位置)にある。そのため、
図8(a)に示すように、穴部55の下側の縮幅穴部55bにトリガー部材56の縮幅凸部56aがコイルばね58の付勢力で嵌入して拡幅凸部56bで停止している。この状態で小開口規制アーム42は
図5で実線で示す閉鎖位置に垂下している。
【0040】
この状態から、
図4(b)に示すように障子9を開放させるためにハンドル30を上方に回動させる。すると、ハンドル30の連動棒は上枠3及び下枠4から後退し、先端部30cに押されてスライダー34が下方に連動させられ、スライドバー31と一体に下方位置に移動する。これによって、
図8(b)に示すように、穴部55がトリガー部材56の縮幅凸部56aに沿って降下し、縮幅凸部56aが拡幅穴部55aの位置に至る。そのため、トリガー部材56はコイルばね58の付勢力で前進し、拡幅凸部56bが拡幅穴部55a内に嵌合する。
これによって、スライドバー31は下方位置で固定保持され、ハンドル30も
図4(b)に示す上方位置に固定保持される。
【0041】
そして、障子9を開放作動させると、
図5に示すように、障子9に設けた規制ピン43で開閉カム溝45に沿って摺動しながら小開口規制アーム42を押して回転軸44周りに回動させて障子9を小開口位置まで開放作動させる。小開口位置で規制ピン43は開閉カム溝45の下方の終端溝部45bの最奥部でロックされる。この小開口位置で障子9は保持され、閉鎖方向に戻ることはできない。
【0042】
次に障子9を閉鎖させるために、ハンドル30を握る片手で握ると共にその手の指で解除プレート50の操作レバー50bを開口溝51内で下方に降下させる。解除プレート50の降下に従って作動ピン49が摺動ガイド溝50aに沿って移動して作動部材48を突出させる。そして、
図5に示すように、作動部材48は小開口規制アーム42の下端部を押すことで小開口規制アーム42をロック状態の一点鎖線位置からロック解除された二点鎖線位置に移動させ、規制ピン43を開閉カム溝45の終端溝部45bの最奥部からずらす。
これによって規制ピン43が開閉カム溝45のロック位置から外れ、障子9を閉鎖作動させることができる。連動棒はハンドル30がトリガー部材56と穴部55によってロックされているため、障子9の開閉操作の間、引っ込んだ状態に保持される。
【0043】
障子9が閉鎖作動で枠体7の縦枠5の近傍に至ると、スライドバー31の穴部55から突出しているトリガー部材56は先端の拡幅凸部56bが金属縦枠5aに設けたトリガー受け部60のテーパ面60aに当接する。更に障子9を閉鎖作動させるとテーパ面60aで押されたトリガー部材56はコイルばね58の付勢力に抗して後退し、拡幅凸部56bが穴部55の拡幅穴部55aから外れることでロックが外れ、障子9は閉鎖位置に至る。
これにより、ハンドル30を上昇位置から下方に回動させることでスライドバー31が上昇し、連動棒も上下方向に突出して上枠3と下枠4に係止する。こうして障子9の開閉作動を行える。
【0044】
次に障子9を掃除等するために小開口位置から更に大きく開放させて例えば90度の角度に開放させる。そのため、小開口位置にある障子9に対して、
図10(a)に示すように、ハンドル受け部19bの見込み面19baに設けた規制ピン調整部64の嵌合溝64aにキー部材65を挿入する。
キー部材65の拡径キー部65aが本体部43bの貫通孔70の内壁に当接した後、
図10(b)に示すようにキー部材65を嵌合溝64aで進退受け部67と共に90度回転させる。この場合、本体部43bは回動しないため、嵌合溝64aは受け面70aと進退受け部67とで角度が略90度異なる。
【0045】
そして、引き出し方向にキー部材65を引っ張ると拡径キー部65aは貫通孔70の受け面70aに当接して本体部43bをコイルばね68の付勢力に抗して引き込む。これによって、
図10(c)に示すように、本体部43bを有する規制ピン43も引き込まれて小開口規制アーム42の開閉カム溝45から外れる。この状態で障子9を小開口位置から更に開放作動できる。そして、障子9を例えば90度開放させて枠体7や障子9等の掃除を行う。
【0046】
そして、掃除等の終了後に障子9を例えば小開口位置に戻してキー部材65を離せば規制ピン43はコイルばね68の付勢力で元の位置に戻り、規制ピン43は開閉カム溝45内に挿入される。その後、キー部材65を90度回転させて元の位置に戻して引き出せば嵌合溝64aから引き出すことができる(
図4(a)参照)。
【0047】
上述のように本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、障子9が小開口の所定開度開いた状態で、ハンドル30と操作レバー50bは近接する位置にあるため、操作者は片手だけでハンドル30を把持しながら操作レバー50bを操作することができる。そのため、片手で操作レバー50bを操作して小開口規制アーム42を規制ピン43とのロック位置から解除させると共にハンドル30で障子9を閉鎖作動できる。
また、作動部材48は小開口規制アーム42の開閉カム溝45の最奥部に保持された規制ピン43の近傍で回転軸44から離間した小開口規制アーム42の下部を押動して、規制ピン43をロック位置から解除できる。そのため、小開口規制アーム42の作動に要する力が小さくて済むためロックの解除が容易である。
【0048】
また、キー部材65を保持枠63に装着し回動して引き抜くことで規制ピン43を開閉カム溝45から離脱させることができて、障子9をより大きく開放作動できる。しかも、キー部材65を離すことでコイルばね68の付勢力によって規制ピン43を開閉カム溝45内に係合する位置に戻すことができて、開閉カム溝45と規制ピン43との係脱操作が容易である。しかも、キー部材65を用いてことで規制ピン43の開閉カム溝45からの係脱操作を行う人を規制できる。
しかもキー部材65によって規制ピン43と開閉カム溝45との係脱を切り換えできるため、キー部材65を操作する人を制限してキー部材65の管理が容易である。
【0049】
なお、本発明による縦辷り出し窓1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述した実施形態で説明した部品や部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を省略する。
【0050】
例えば、上述した各実施形態では縦辷り出し窓1について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、横辷り出し窓等の各種の建具のロック解除装置に本発明を適用してもよい。
小開口規制アーム42は障子と枠体のいずれか一方に設置可能であり、規制ピンは他方に設置可能である。また、小開口規制アーム42は開口部材に含まれる。
なお、キー部材65に代えて適宜の操作部材を規制ピン調整部64の嵌合溝64aに装着して、規制ピン43の開閉カム溝45への挿脱を行うようにしてもよい。
なお、本発明による縦辷り出し窓1等の建具はビル用に限らず一般住宅用の建具等にも採用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 縦辷り出し窓
5 縦枠
5a 金属縦枠
7 枠体
9 障子
12、13 縦框
19 金属縦框
19c 枠部
30 ハンドル
32 中空ホロー部
31 スライドバー
33 中空枠部
42 小開口規制アーム
43 規制ピン
43b 本体部
45 開閉カム溝
48 作動部材
50 解除プレート
50b 操作レバー
55 穴部
56 トリガー部材
63 保持枠
64 規制ピン調整部
64a 嵌合溝
65 キー部材
67 進退受け部
68 コイルばね
70 貫通孔