(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】光学積層体および該光学積層体の位相差層付偏光板を含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220325BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220325BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220325BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220325BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220325BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220325BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220325BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/02
G09F9/00 313
G09F9/30 365
B32B7/023
B32B7/12
(21)【出願番号】P 2020127534
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2021-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-008934(JP,A)
【文献】特開2016-080830(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026753(WO,A1)
【文献】特開2020-003520(JP,A)
【文献】特開2017-097223(JP,A)
【文献】特開2015-193811(JP,A)
【文献】特開2014-071381(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093474(WO,A1)
【文献】特開2001-033623(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244499(WO,A1)
【文献】特開2019-120951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/0-33/28
G09F 9/00
G09F 9/30
B32B 7/023
B32B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と;
該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと;
該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと;
を備える光学積層体であって、
該粘着剤層の厚みをT
PSA、該位相差層付偏光板の厚みをT
PWR、該光学積層体の厚みをT
OLとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体:
T
PSA/T
PWR≧0.4
T
PSA/T
OL≦0.29。
【請求項2】
偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と;
該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと;
該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと;
を備える光学積層体であって、
該粘着剤層の厚みをT
PSA、該位相差層付偏光板の厚みをT
PWR、該セパレーターの厚みをT
SPとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体:
T
PSA/T
PWR≧0.4
T
SP/T
PSA≧0.8。
【請求項3】
前記セパレーターの厚みをT
SP
としたとき、前記T
PSA、前記T
PWR
および前記T
PS
が下記の関係を満足する、請求項
1に記載の光学積層体:
T
PSA/T
PWR≧0.
4
T
SP/T
PSA≧0.8。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚みT
PSAが20μm以上である、請求項1から3のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項5】
前記偏光子の厚みが8μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項6】
前記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率が1.0×10
4Pa~1.0×10
6Paである、請求項1から5のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項7】
前記位相差層付偏光板の厚みT
PWRが100μm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項8】
前記偏光板が、前記偏光子の視認側のみに保護層を有する、請求項1から7のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第1の位相差層および前記第2の位相差層がそれぞれ、液晶化合物の配向固化層である、請求項1から8のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項10】
前記第1の位相差層のRe(550)が200nm~300nmであり、その遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり、
前記第2の位相差層のRe(550)が100nm~190nmであり、その遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である、
請求項9に記載の光学積層体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の光学積層体の前記位相差層付偏光板を備える、画像表示装置。
【請求項12】
有機エレクトロルミネセンス表示装置である、請求項11に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および該光学積層体の位相差層付偏光板を含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板と粘着剤層とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられているところ(例えば、特許文献1)、最近、画像表示装置の薄型化への要望が強くなるに伴って、位相差層付偏光板についても薄型化の要望が強まっている。また、近年、湾曲した画像表示装置および/または屈曲もしくは折り畳み可能な画像表示装置に対する要望が高まっている。しかし、このような画像表示装置に適用可能な薄型かつ折り曲げ性に優れた位相差層付偏光板は、所定サイズまたは所定形状に切断する際に糊欠け(粘着剤層の端部が欠落する現象)、糊汚れ(粘着剤層の端部に汚れが発生する現象)および切断不良が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、薄型で、優れた折り曲げ性を有する位相差層付偏光板を含み、かつ、切断の際の糊欠け、糊汚れおよび切断不良が抑制された光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光学積層体は、偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と;該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと;該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと;を備える。この光学積層体は、該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、下記の関係を満足する:
TPSA/TPWR≧0.4
TPSA/TOL≦0.29。
本発明の別の光学積層体は、上記粘着剤層の厚みをTPSA、上記位相差層付偏光板の厚みをTPWR、上記セパレーターの厚みをTSPとしたとき、下記の関係を満足する:
TPSA/TPWR≧0.4
TSP/TPSA≧0.8。
1つの実施形態においては、上記光学積層体は、上記TPSA、上記TPWR、上記TOLおよび上記TSPが下記の関係を満足する:
TPSA/TPWR≧0.4
TPSA/TOL≦0.29
TSP/TPSA≧0.8。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層の厚みTPSAは20μm以上である。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚みは8μm以下である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率は1.0×104Pa~1.0×106Paである。
1つの実施形態においては、上記位相差層付偏光板の厚みTPWRは100μm以下である。
1つの実施形態においては、上記偏光板は、上記偏光子の視認側のみに保護層を有する。
1つの実施形態においては、上記第1の位相差層および上記第2の位相差層はそれぞれ、液晶化合物の配向固化層である。
1つの実施形態においては、上記第1の位相差層のRe(550)は200nm~300nmであり、その遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度は10°~20°であり;上記第2の位相差層のRe(550)は100nm~190nmであり、その遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度は70°~80°である。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記光学積層体の上記位相差層付偏光板を備える。
1つの実施形態においては、上記画像表示装置は、有機エレクトロルミネセンス表示装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、薄型かつ優れた折り曲げ性を有する位相差層付偏光板と表面保護フィルムとセパレーターとを含む光学積層体において、光学積層体の厚み、位相差層付偏光板の厚み、粘着剤層の厚みおよびセパレーターの厚みの相互の関係を最適化することにより、切断の際の糊欠け、糊汚れおよび切断不良が抑制された光学積層体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0010】
A.位相差層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、位相差層付偏光板70と、位相差層付偏光板70の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルム50と、位相差層付偏光板70の視認側と反対側に剥離可能に仮着されたセパレーター60と、を備える。位相差層付偏光板70は、偏光板10と、第1の位相差層21と、第2の位相差層22と、を代表的には視認側からこの順に有する。偏光板10は、偏光子11と偏光子11の視認側に保護層12とを含む。目的に応じて、偏光子11の視認側と反対側に別の保護層(図示せず)が設けられてもよい。第1の位相差層21は、偏光板10の視認側と反対側に第1の接着剤層31を介して貼り合わせられている。第2の位相差層22は、第1の位相差層21の視認側と反対側に第2の接着剤層32を介して貼り合わせられている。実用的には、第2の位相差層22の第1の位相差層21と反対側に(すなわち、視認側と反対側の最外層として)粘着剤層40が設けられ、位相差層付偏光板は画像表示セルに貼り付け可能とされている。セパレーター60は、粘着剤層40の表面に剥離可能に仮着されている。セパレーターを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール形成が可能となる。表面保護フィルム50は、代表的には基材と粘着剤層とを有し(いずれも図示せず)、当該粘着剤層を介して位相差層付偏光板(実質的には、視認側保護層12)に剥離可能に仮着されている。光学積層体(実質的には、位相差層付偏光板)の実際の使用時にはセパレーター60は剥離除去され、位相差層付偏光板70が粘着剤層40を介して画像表示装置(実質的には、画像表示セル)に貼り合わせられる。表面保護フィルム50もまた、光学積層体(実質的には、位相差層付偏光板)の実際の使用時には剥離除去される。
【0011】
第1の位相差層21および第2の位相差層22はそれぞれ、代表的には、液晶化合物の配向固化層である。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、位相差層付偏光板の顕著な薄型化を実現することができる。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1の位相差層21および第2の位相差層22においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1の位相差層または第2の位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。代表的には、第1の位相差層21または第2の位相差層22のいずれか一方はλ/2板として機能し得、他方はλ/4板として機能し得る。例えば、第1の位相差層21がλ/2板として機能し得、第2の位相差層22がλ/4板として機能し得る場合には、第1の位相差層21のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、その遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は好ましくは10°~20°であり;第2の位相差層22のRe(550)は好ましくは100nm~190nmであり、その遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は好ましくは70°~80°である。
【0012】
本発明の1つの実施形態においては、光学積層体100の厚みをTOL、位相差層付偏光板70の厚みをTPWR、粘着剤層40の厚みをTPSA、セパレーター60の厚みをTSPとしたとき、光学積層体は、下記の関係を満足する:
TPSA/TPWR≧0.4
TPSA/TOL≦0.29。
TPSA/TPWRが0.4以上であるということは、代表的には、全体厚みが薄い位相差層付偏光板において粘着剤層の厚みが大きいことを意味する。例えば屈曲または折り畳み可能な画像表示装置に位相差層付偏光板を適用しようとする場合、従来の位相差層付偏光板ではこのような画像表示装置での使用に耐え得る折り曲げ性が確保できなかった。これに対し、全体厚みを薄く、かつ、粘着剤層を比較的分厚くすることにより、所定の折り曲げ性を有する位相差層付偏光板が実現され得る。本発明者らは、このような位相差層付偏光板を所定サイズまたは所定形状に切断する際に糊欠け、糊汚れおよび/または切断不良が発生し得るという新たな課題を発見した。本発明者らは、フィルムに比べて弾性率が低い粘着剤の割合が大きいことにより、切断の際の粘着剤層の変形が当該課題に関係し得ることを推察し、当該推察に基づいて鋭意検討した結果、位相差層付偏光板に仮着する表面保護フィルムおよびセパレーターの厚みを制御してTPSA/TOLを0.29以下とすることにより当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、表面保護フィルムおよびセパレーターの厚みを制御して光学積層体全体の(すなわち、見かけの)弾性率を大きくして切断時に粘着剤層にかかる力を小さくすることにより(結果として、切断時の粘着剤層の変形を小さくすることにより)、実際に使用される位相差層付偏光板の好ましい構成を変更することなく、位相差層付偏光板を切断する際の糊欠け、糊汚れおよび切断不良を抑制することができる。さらに、実施例で後述するように、例えば糊汚れに関しては、TPSA/TOLが約0.3では糊汚れが100%発生するのに対し、TPSA/TOLが約0.28では糊汚れの発生率が20%に激減することが確認されている。すなわち、TPSA/TOLが0.29近辺において臨界値が存在することがわかる。以上のように、本発明の実施形態による光学積層体は、位相差層付偏光板について新たに発見された課題を解決するものであり、かつ、その効果は臨界的意義を有する予期せぬ優れた効果である。
【0013】
本発明の別の実施形態においては、光学積層体は、下記の関係を満足する:
TPSA/TPWR≧0.4
TSP/TPSA≧0.8。
本発明者らは、上記と同様の推察および検討に基づいて、TSP/TPSAを0.8以上とすることによっても、例えば屈曲または折り畳み可能な画像表示装置に適用される薄型でかつ優れた折り曲げ性を有する位相差層付偏光板について新たに発見された上記課題(切断時の糊欠け、糊汚れおよび/または切断不良)を解決できることを見出した。より詳細には、粘着剤層に隣接するセパレーターの厚みを大きくすることにより、切断時の粘着剤の変形防止に大きく寄与することができ、結果として、切断時の糊欠け、糊汚れおよび切断不良を抑制することができる。
【0014】
好ましくは、光学積層体は、上記TPSA、上記TPWR、上記TOLおよび上記TSPが下記の関係を満足する:
TPSA/TPWR≧0.4
TPSA/TOL≦0.29
TSP/TPSA≧0.8。
TPSA/TPWRは、好ましくは0.42~0.75であり、より好ましくは0.45~0.65である。TPSA/TOLは、好ましくは0.25以下であり、より好ましくは0.20以下であり、さらに好ましくは0.18以下である。TPSA/TOLは、例えば0.10以上であり得る。TSP/TPSAは、好ましくは0.9以上であり、より好ましくは1.2以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。TSP/TPSAは、例えば3.0以下であり得る。
【0015】
位相差層付偏光板の総厚みは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは85μm以下であり、さらに好ましくは70μm以下であり、特に好ましくは60μm以下である。総厚みの下限は、例えば42μmであり得る。このような総厚みを有する位相差層付偏光板は、きわめて優れた可撓性および折り曲げ性を有し得る。その結果、位相差層付偏光板は、湾曲した画像表示装置および/または屈曲もしくは折り曲げ可能な画像表示装置に特に好適に適用され得る。
【0016】
位相差層付偏光板は、その他の光学機能層をさらに含んでいてもよい。位相差層付偏光板に設けられ得る光学機能層の種類、特性、数、組み合わせ、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、位相差層付偏光板は、導電層または導電層付等方性基材をさらに有していてもよい(いずれも図示せず)。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、第2の位相差層22の外側(偏光板10と反対側)に設けられる。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、必要に応じて設けられる任意の層であり、省略されてもよい。なお、導電層または導電層付等方性基材が設けられる場合、位相差層付偏光板は、画像表示セル(例えば、有機ELセル)と偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。また例えば、位相差層付偏光板は、その他の位相差層をさらに含んでいてもよい。その他の位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0017】
上記の実施形態は適宜組み合わせてもよく、上記の実施形態における構成要素に当業界で自明の改変を加えてもよく、上記の実施形態における構成を光学的に等価な構成に置き換えてもよい。
【0018】
光学積層体は、枚葉状であってもよく長尺状であってもよい。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の位相差層付偏光板は、ロール状に巻回可能である。
【0019】
以下、位相差層付偏光板の構成要素について、より詳細に説明する。
【0020】
B.偏光板
B-1.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0021】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0022】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0023】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0024】
偏光子の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~12μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、上記所望のTPSA/TPWRおよびTPSA/TOLの実現が容易であり得る。さらに、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0025】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは41.5%~46.0%であり、より好ましくは43.0%~46.0%であり、さらに好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0026】
B-2.保護層
保護層12および別の保護層(存在する場合)は、それぞれ、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0027】
位相差層付偏光板は、後述するように代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、その視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、位相差層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0028】
保護層12の厚みは、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは10μm~30μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層12の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0029】
別の保護層(存在する場合)は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。別の保護層の厚みは、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは10μm~30μmである。薄型化の観点からは、別の保護層は好ましくは省略され得る。
【0030】
C.第1の位相差層および第2の位相差層
上記のとおり、第1の位相差層21および第2の位相差層22(以下、まとめて位相差層と称する場合がある)はそれぞれ、液晶化合物の配向固化層(以下、液晶配向固化層)である。液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
【0031】
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0032】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0033】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0034】
液晶配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。1つの実施形態においては、基材は任意の適切な樹脂フィルムであり、当該基材上に形成された液晶配向固化層(第1の位相差層21)は、第1の接着剤層31を介して偏光板10の表面に転写され得る。同様に、基材上に形成された液晶配向固化層(第2の位相差層22)は、第2の接着剤層32を介して第1の位相差層21の表面に転写され得る。
【0035】
上記配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0036】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0037】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0038】
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0039】
位相差層は、代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。なお、「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。
【0040】
上記のとおり、第1の位相差層21または第2の位相差層22のいずれか一方はλ/2板として機能し得、他方はλ/4板として機能し得る。ここでは、第1の位相差層21がλ/2板として機能し得、第2の位相差層22がλ/4板として機能し得る場合を説明するが、これらは逆であってもよい。第1の位相差層21の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得、例えば2.0μm~4.0μmであり得る。第2の位相差層22の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得、例えば1.0μm~2.5μmであり得る。第1の位相差層の面内位相差Re(550)は、上記のとおり好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは250nm~280nmである。第2の位相差層の面内位相差Re(550)は、上記のとおり好ましくは100nm~190nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。第1の位相差層21の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は、上記のとおり好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは約15°である。第2の位相差層22の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は、上記のとおり好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは約75°である。このような構成であれば、理想的な逆波長分散特性に近い特性を得ることが可能であり、結果として、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0041】
位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる位相差層付偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0042】
位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0043】
D.接着剤層
第1の接着剤層31および第2の接着剤層32をまとめて接着剤層として説明する。なお、第1の接着剤層および第2の接着剤層は、同一の構成を有していてもよく、互いに異なる構成を有していてもよい。接着剤層を構成する接着剤としては、任意の適切な接着剤が採用され得る。接着剤としては、代表的には活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、硬化メカニズムの観点からは、活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型とカチオン硬化型とのハイブリッドが挙げられる。代表的には、ラジカル硬化型の紫外線硬化型接着剤が用いられ得る。汎用性に優れ、および、特性(構成)の調整が容易だからである。
【0044】
接着剤は、代表的には、硬化成分と光重合開始剤とを含有する。硬化成分としては、代表的には、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基などの官能基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーが挙げられる。硬化成分の具体例としては、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、アクリロイルモルホリン、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミドが挙げられる。これらの硬化成分は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
好ましくは、接着剤は、複素環を有する硬化成分を含む。複素環を有する硬化成分としては、例えば、アクリロイルモルホリン、γ-ブチロラクトンアクリレート、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドンが挙げられる。より好ましい硬化成分は、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトンおよびアクリロイルモルホリンであり、特に好ましい硬化成分は、アクリロイルモルホリンである。複素環を有する硬化成分は、硬化成分(後述のオリゴマー成分が存在する場合には硬化成分とオリゴマー成分との合計)100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部~95重量部の割合で接着剤に含有され得る。アクリロイルモルホリンは、硬化成分(オリゴマー成分が存在する場合には硬化成分とオリゴマー成分との合計)100重量部に対して、好ましくは5重量部~60重量部、より好ましくは10重量部~50重量部の割合で接着剤に含有され得る。
【0046】
接着剤は、上記の硬化成分に加えてオリゴマー成分をさらに含有してもよい。オリゴマー成分を用いることにより、硬化前の接着剤の粘度を低減し、操作性を高めることができる。オリゴマー成分の代表例としては、(メタ)アクリル系オリゴマーが挙げられる。(メタ)アクリル系オリゴマーを構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(炭素数1~20)アルキルエステル類、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)が挙げられる。(メタ)アクリル酸(炭素数1~20)アルキルエステル類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
光重合開始剤は、業界で周知の光重合開始剤が業界に周知の配合量で用いられ得るので、詳細な説明は省略する。
【0048】
接着剤層(接着剤硬化後)の厚みは、好ましくは0.1μm~3.0μmである。接着剤層がこのような厚みであれば、上記所望のTPSA/TPWRおよびTPSA/TOLの実現が容易であり得る。
【0049】
接着剤の詳細は、例えば、特開2018-017996号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0050】
E.粘着剤層
粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率が、好ましくは1.0×104Pa~1.0×106Paであり、より好ましくは1.0×104Pa~1.0×105Paである。粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、上記のTPSA/TPWR、TPSA/TOLおよびTSP/TPSAを最適化することによる効果との相乗的な効果により、光学積層体(実質的には、位相差層付偏光板)を切断する際の糊欠け、糊汚れおよび切断不良を抑制することができる。なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により得られ得る。
【0051】
粘着剤層は、70℃におけるクリープ量ΔCrが、例えば65μm以下であり、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、さらには15μm以下であってもよい。クリープ量ΔCrの下限は、例えば0.5μmである。クリープ量がこのような範囲であれば、貯蔵弾性率の場合と同様に、光学積層体(実質的には、位相差層付偏光板)を切断する際の糊欠け、糊汚れおよび切断不良を抑制することができる。なお、クリープ値は、例えば以下の手順で測定され得る:縦20mm×横20mmの接合面にてステンレス製試験板に貼り付けた粘着剤層に対して、試験板を固定した状態で500gfの荷重を鉛直下方に加える。荷重を加え始めてから100秒後及び3600秒後の各時点における試験板に対する粘着剤層のクリープ量(ずれ量)を測定し、それぞれCr100及びCr3600とする。測定したCr100及びCr3600から、式ΔCr=Cr3600-Cr100によりクリープ量ΔCrが求められ得る。
【0052】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、任意の適切な構成が採用され得る。粘着剤層を構成する粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性および耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が好ましい。アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分中、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で含有され得る。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートである。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー(共重合モノマー)としては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマー等が挙げられる。共重合モノマーの代表例としては、アクリル酸、4-ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N-ビニル-2-ピロリドンが挙げられる。アクリル系粘着剤組成物は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。さらに、アクリル系粘着剤組成物は、酸化防止剤および/または導電剤を含有してもよい。粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば、特開2006-183022号公報、特開2015-199942号公報、特開2018-053114号公報、特開2016-190996号公報、国際公開第2018/008712号に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0053】
粘着剤層の厚みは、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは20μm~70μmであり、さらに好ましくは20μm~65μmであり、特に好ましくは25μm~55μmである。粘着剤層の厚みがこのような範囲であれば、上記所望のTPSA/TPWR、TPSA/TOLおよびTSP/TPSAの実現が容易であり得る。
【0054】
F.表面保護フィルム
表面保護フィルム50は、上記のとおり、代表的には基材と粘着剤層とを有する。なお、粘着剤層40と区別するために、表面保護フィルムの粘着剤層をPF粘着剤層と称する場合がある。基材は、任意の適切な材料で構成され得る。構成材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系ポリマー;が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
基材の引張弾性率は、好ましくは1.0×108Pa~1.0×1010Paであり、より好ましくは1.0×109Pa~1.0×1010Paである。基材の引張弾性率がこのような範囲であれば、TPSA/TPWR、TPSA/TOLおよびTSP/TPSAを上記所定範囲とすることによる効果が顕著なものとなる。なお、引張弾性率は、JIS K 7161に準拠して測定される。
【0056】
PF粘着剤層としては、任意の適切な構成が採用され得る。具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂は好ましくはアクリル樹脂である(すなわち、PF粘着剤層は、好ましくはアクリル系粘着剤で構成される)。PF粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、例えば1.0×105Pa~1.0×107Paであり得る。
【0057】
表面保護フィルムの厚みは、好ましくは30μm~80μmであり、より好ましくは40μm~60μmである。表面保護フィルムの厚みがこのような範囲であれば、上記所望のTPSA/TOLの実現が容易であり得る。なお、表面保護フィルムの厚みとは、基材とPF粘着剤層の合計厚みをいう。
【0058】
G.セパレーター
セパレーター60としては、任意の適切なセパレーターが採用され得る。具体例としては、剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルム、不織布または紙が挙げられる。剥離剤の具体例としては、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。
【0059】
セパレーターの厚みは、好ましくは20μm~80μmであり、より好ましくは35μm~55μmである。セパレーターの厚みがこのような範囲であれば、上記所望のTPSA/TOLの実現が容易であり得る。
【0060】
H.画像表示装置
上記A項からG項に記載の光学積層体(実質的には、位相差層付偏光板)は、画像表示装置に適用され得る。したがって、光学積層体(実質的には、位相差層付偏光板)を含む画像表示装置もまた、本発明の実施形態に包含される。画像表示装置は、代表的には、画像表示セルと、画像表示セルに粘着剤層を介して貼り合わせられた位相差層付偏光板と、を含む。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。1つの実施形態においては、画像表示装置は、有機EL表示装置である。1つの実施形態においては、画像表示装置は、湾曲した形状(実質的には、湾曲した表示画面)を有し、および/または、屈曲もしくは折り曲げ可能である。このような画像表示装置においては、本発明の実施形態による光学積層体(実質的には、位相差層付偏光板)の効果が顕著となる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚み
10μm以下の厚みは、干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)糊汚れ
実施例、比較例および参考例で得られた光学積層体を、裁断機を用いて100mm×50mmサイズに押し切りした。切り出した光学積層体の端部における粘着剤による汚染の有無を目視および光学顕微鏡により観察した。50個の切り出した光学積層体について同様に観察し、糊汚れの発生割合を算出した。
【0062】
[実施例1]
1.偏光板の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
さらに、得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護基材(保護層)としてアクリル系フィルム(東洋鋼鈑社製「RV-20UB」、厚み20μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をシクロオレフィン系フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離してシクロオレフィン系フィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0063】
2.第1の位相差層および第2の位相差層の作製
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
【化1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cm
2の光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層Aを形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。液晶配向固化層Aを第1の位相差層として用いた。
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層Bを形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。液晶配向固化層Bを第2の位相差層として用いた。
【0064】
3.位相差層付偏光板の作製
上記1.で得られた偏光板の偏光子表面に、上記2.で得られた液晶配向固化層A(第1の位相差層)および液晶配向固化層B(第2の位相差層)をこの順に転写した。このとき、偏光子の吸収軸と配向固化層Aの遅相軸とのなす角度が15°、偏光子の吸収軸と配向固化層Bの遅相軸とのなす角度が75°になるようにして転写(貼り合わせ)を行った。なお、それぞれの転写(貼り合わせ)は、紫外線硬化型接着剤(厚み1.0μm)を介して行った。最後に、配向固化層B(第2の位相差層)の表面にアクリル系粘着剤層(厚みTPSA:25μm)を配置した。このようにして、保護層/接着剤/偏光子/第1の接着剤層/第1の位相差層/第2の接着剤層/第2の位相差層/粘着剤層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板の厚みTPWRは56μmであった。
【0065】
4.光学積層体の作製
上記3.で得られた位相差層付偏光板の保護層表面に表面保護フィルム(厚み48μm)を貼り合わせ、さらに、粘着剤層表面にセパレーター(厚みTSP:38μm)を貼り合わせ、光学積層体を得た。得られた光学積層体の厚みTOLは142μmであった。得られた光学積層体を上記(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0066】
[実施例2]
粘着剤層の厚みTPSAを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を作製した。この位相差層付偏光板を用いたこと、および、セパレーターのTSPを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例3]
実施例1と同様にして位相差層付偏光板を作製した。セパレーターのTSPを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例1]
粘着剤層の厚みTPSAを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を作製した。この位相差層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0069】
[参考例1]
保護層として厚み27μmのHC-COPフィルムを用いたこと、および、粘着剤層の厚みTPSAを15μmとしたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板を作製した。なお、HC-COPフィルムは、厚み25μmのシクロオレフィン系樹脂(COP)フィルムに厚み2μmのハードコート(HC)層が形成されたものであり、HC層が視認側となるようにして貼り合わせた。この位相差層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0070】
[参考例2]
保護層として厚み27μmのHC-COPフィルムを用いたこと、および、粘着剤層の厚みTPSAを15μmとしたこと以外は実施例2と同様にして位相差層付偏光板を作製した。なお、HC-COPフィルムは、厚み25μmのシクロオレフィン系樹脂(COP)フィルムに厚み2μmのハードコート(HC)層が形成されたものであり、HC層が視認側となるようにして貼り合わせた。この位相差層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0071】
[参考例3]
厚み30μmのPVA系樹脂フィルムの長尺ロールを、ロール延伸機により総延伸倍率が6.0倍になるようにして長尺方向に一軸延伸しながら、同時に膨潤、染色、架橋および洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。得られた偏光子の一方の面に、PVA系接着剤(厚み1μm)を介してCOP-HCフィルムを視認側保護層として貼り合わせた。なお、COP-HCフィルムは、厚み25μmのシクロオレフィン系樹脂(COP)フィルムに厚み7μmのハードコート(HC)層が形成されたものであり、HC層が視認側となるようにして貼り合わせた。さらに、偏光子のもう一方の面に、PVA系接着剤を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、保護層(COP-HCフィルム)/偏光子/保護層(TACフィルム)の構成を有する偏光板を得た。以下、粘着剤層の厚みTPSAを30μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、視認側保護層/接着剤/偏光子/接着剤/保護層/第1の接着剤層/第1の位相差層/第2の接着剤層/第2の位相差層/粘着剤層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板の厚みTPWRは105μmであった。この位相差層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0072】
[参考例4]
参考例3と同様にして位相差層付偏光板を作製した。この位相差層付偏光板を用いたこと、および、セパレーターのTSPを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、TPSA/TPWRが0.4以上である位相差層付偏光板においてTPSA/TOLを所定値以下とすることにより、または、TSP/TPSAを所定値以上とすることにより、位相差層付偏光板を切断する際の糊汚れが顕著に抑制されることがわかる。さらに、実施例2と比較例1とを比較すると明らかなように、TPSA/TOLが約0.3では糊汚れが100%発生するのに対し、TPSA/TOLが約0.28では糊汚れの発生率が20%に激減する。すなわち、TPSA/TOLが0.29近辺において臨界値が存在することがわかる。加えて、参考例から明らかなように、TPSA/TPWRが0.4より小さい位相差層付偏光板において糊汚れは発生せず、糊汚れはTPSA/TPWRが0.4以上である位相差層付偏光板における新たな課題であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の光学積層体から得られる位相差層付偏光板は、液晶表示装置、有機EL表示装置および無機EL表示装置用の円偏光板として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0076】
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
21 第1の位相差層
22 第2の位相差層
31 第1の接着剤層
32 第2の接着剤層
40 粘着剤層
50 表面保護フィルム
60 セパレーター
70 位相差層付偏光板
100 光学積層体