(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60K 17/06 20060101AFI20220325BHJP
F16H 3/08 20060101ALI20220325BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20220325BHJP
B60K 6/00 20071001ALI20220325BHJP
【FI】
B60K17/06 Z
F16H3/08
B60K17/12
B60K6/00
(21)【出願番号】P 2020503920
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2017101046
(87)【国際公開番号】W WO2019019292
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】201710624209.9
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ピン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジエンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨンウー
(72)【発明者】
【氏名】ジィァン,ヂェァ
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-085765(JP,A)
【文献】中国実用新案第206106913(CN,U)
【文献】中国実用新案第204716884(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/06
F16H 3/08
B60K 17/12
B60K 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対称に設けられた2組の駆動手段を含み、2組の駆動手段が同じ組のアクスルハーフシャフトに連結され、各組の駆動手段ごとに動力源及び自動変速機が設けら
れ、該自動変速機が夫々前記アクスルハーフシャフトのうちの一本のハーフシャフトに連結され
ており、
前記自動変速機には、平行する入力軸、中間軸及び出力軸が設けられ、これらの三つの軸には、異なる伝動比となる複数段のギアが設けられており、前記動力源が前記入力軸に連結され、前記出力軸がアクスルハーフシャフトのうちの左ハーフシャフト又は右ハーフシャフトに連結されており、
前記入力軸に第一のギアが設けられ、前記中間軸に第二のギアが設けられ、前記第一のギアと前記第二のギアとが噛合伝動するか、若しくは前記第一のギアと前記第二のギアとの間にアイドルギアが設けられ、前記第一のギアと、前記アイドルギアと、前記第二のギアとが噛み合ってトリプルギアを形成する、
ことを特徴とする車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【請求項2】
前記中間軸に第三のギア、第六のギアが固定又は遊嵌され、前記出力軸に第四のギア、第五のギアが固定又は遊嵌されており、前記第三のギアと前記第四のギアとは、噛合伝動し、軸への取付方式が異なり、前記第五のギアと前記第六のギアとは、噛合伝動し、軸への取付方式が異なり、
前記入力軸とそれに遊嵌されたギアとの間にクラッチが設けられており、前記中間軸とそれに遊嵌されたギアとの間にクラッチが設けられている
、
ことを特徴とする請求項
1に記載の車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【請求項3】
前記第三のギア及び前記第六のギアのうち何れか一方がニードルベアリングを介して前記中間軸に遊嵌されており、前記第四のギア及び前記第五のギアのうち何れか一方がニードルベアリングを介して前記出力軸に遊嵌されていることを特徴とする請求項
2に記載の車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【請求項4】
前記第三のギア及び前記第六のギアがニードルベアリングを介して前記中間軸に遊嵌されており、前記中間軸には、前記第三のギア及び前記第六のギアと協働するツーウェイクラッチが設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【請求項5】
前記第四のギア及び前記第五のギアがニードルベアリングを介して前記出力軸に遊嵌されており、前記出力軸には、前記第五のギア及び前記第六のギアと協働するツーウェイクラッチが設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【請求項6】
前記第一のギアと前記第二のギアとの噛合伝動比がi1、又は前記トリプルギアの噛合伝動比がi1であり、前記第五のギアと前記第六のギアとの噛合伝動比がi2であり、前記第三のギアと前記第四のギアとの噛合伝動比がi3である場合、前記自動変速機において、噛合伝動比がi1×i2又はi1×i3になることを特徴とする請求項
2に記載の車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【請求項7】
前記動力源のロータ軸が前記入力軸と一体的に設計され、前記動力源が電動モータであり、前記アクスルハーフシャフトがリアアクスルハーフシャフトであることを特徴とする請求項
1に記載の車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【請求項8】
前記クラッチが、可動ギアプレートと固定ギアプレートとを含む端面歯クラッチであり、前記可動ギアプレートが前記中間軸及び前記出力軸のうち何れか一方に遊嵌され、前記固定ギアプレートが、遊嵌して取り付けられた任意のギアに固定されており、
前記端面歯クラッチが、電磁駆動型、流体駆動型、空圧駆動型、電気駆動型、又は機械式フォーク駆動型であり、前記可動ギアプレートが軸方向に移動して前記固定ギアプレートと噛み合うように駆動されるか、若しくは、
前記クラッチが、湿式クラッチである
、
ことを特徴とする請求項
2に記載の車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントアクスル又はリアアクスルに連結され、車両を駆動するための車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の純粋な電気自動車又はハイブリッド新エネルギー自動車は、その用いられた電動モータの動力特性と車両全体の要求とに差があるので、変速比及びモーメントの要求を満たすことができない。新エネルギー自動車が益々複雑になる運転状況や道路状況に対応する必要があるので、新エネルギー自動車の快適さ及び航続距離に対するユーザの要求が益々高くなり、単純な電動モータ直接駆動モード、電動モータに減速機を接続したモード、又は燃料-電気ハイブリッドモードの新エネルギー自動車は、新エネルギー自動車産業の発展要求を満たすことができなくなっている。
【0003】
スポーツカーやレーシングカー等、速度に対する要求が高い特殊車両もある。しかし、これらの特殊車両は比較的平坦な道路では高速を達成できるが、複雑な道路では速度を上げることが困難である。従来の純粋な電気駆動システム又はハイブリッド駆動システムでは、車両加速性、登坂性及び最高速度のニーズを満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術における上記問題について、本発明は、従来の動力アセンブリが単一の変速比で伝動し、車両の加速性、登坂性及び最高速度のニーズを満たすことができず、複雑な道路状況や運転状況に適応できないという問題を解決するための車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリを提供している。
【0005】
同時に、モータと変速機と統合をした一体構造では、従来の動力アセンブリの軸方向の寸法が大きくて車両に配置し難いこと、及び変速機のギア数が多くて伝動構造が複雑であるという問題が解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達するために、本発明は、車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリを提供しており、前記車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリは、対称に設けられた2組の駆動手段を含み、2組の駆動手段が同じ組のアクスルハーフシャフトに連結され、各組の駆動手段ごとに動力源及び自動変速機が設けられており、前記自動変速機が夫々前記アクスルハーフシャフトのうちの一本のハーフシャフトに連結される。
【0007】
また、前記自動変速機には、平行する入力軸、中間軸及び出力軸が設けられており、これらの三つの軸には、異なる伝動比となる複数段のギアが設けられており、前記動力源が入力軸に連結され、前記出力軸がアクスルハーフシャフトのうちの左ハーフシャフト又は右ハーフシャフトに連結されるようにしてもよい。
【0008】
また、前記入力軸に第一のギアが設けられ、前記中間軸に第二のギアが設けられ、前記第一のギアと前記第二のギアとが噛合伝動するか、若しくは前記第一のギアと前記第二のギアとの間にアイドルギアが設けられ、前記第一のギアと、前記アイドルギアと、前記第二のギアとが噛み合ってトリプルギアを形成するようにしてもよい。
【0009】
また、前記中間軸に第三のギア、第六のギアが固定又は遊嵌され、前記出力軸に第四のギア、第五のギアが固定又は遊嵌されており、前記第三のギアと前記第四のギアとは、噛合伝動し、軸への取付方式が異なり、前記第五のギアと前記第六のギアとは、噛合伝動し、軸への取付方式が異なり、
【0010】
前記入力軸とそれに遊嵌されたギアとの間にクラッチが設けられており、前記中間軸とそれに遊嵌されたギアとの間にクラッチが設けられているようにしてもよい。
【0011】
また、前記第三のギア及び/又は前記第六のギアがニードルベアリングを介して前記中間軸に遊嵌されており、前記第四のギア及び/又は前記第五のギアがニードルベアリングを介して前記出力軸に遊嵌されているようにしてもよい。
【0012】
また、前記第三のギア及び前記第六のギアがニードルベアリングを介して前記中間軸に遊嵌されており、前記中間軸には、前記第三のギア及び前記第六のギアと協働するツーウェイクラッチが設けられているようにしてもよい。
【0013】
また、前記第四のギア及び前記第五のギアがニードルベアリングを介して前記出力軸に遊嵌されており、前記出力軸には、前記第五のギア及び前記第六のギアと協働するツーウェイクラッチが設けられているようにしてもよい。
【0014】
また、前記第一のギアと前記第二のギアとの噛合伝動比がi1、又は前記トリプルギアの噛合伝動比がi1であり、前記第五のギアと前記第六のギアとの噛合伝動比がi2であり、前記第三のギアと前記第四のギアとの噛合伝動比がi3である場合、前記自動変速機において、噛合伝動比がi1×i2又はi1×i3になるようにしてもよい。
【0015】
また、前記動力源のロータ軸が前記入力軸と一体的に設計され、前記動力源が電動モータであり、前記アクスルハーフシャフトがリアアクスルハーフシャフトであるようにしてもよい。
【0016】
また、前記クラッチが、可動ギアプレートと固定ギアプレートとを含む端面歯クラッチであり、前記可動ギアプレートが前記中間軸及び/又は前記出力軸に遊嵌され、前記固定ギアプレートが、遊嵌して取り付けられた任意のギアに固定されているようにしてもよい。
【0017】
また、前記端面歯クラッチが、電磁駆動型、流体駆動型、空圧駆動型、電気駆動型、又は機械式フォーク駆動型であり、前記可動ギアプレートが軸方向に移動して前記固定ギアプレートと噛み合うように駆動されるようにしてもよい。
又は、前記クラッチが湿式クラッチであるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記構造配置を用いた本発明は、以下の利点を有する。
本発明による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリは、対称に設けられた2組の駆動手段を含み、2組の駆動手段が同じ組のアクスルハーフシャフトに連結され、各組の駆動手段ごとに動力源及び自動変速機が設けられており、これにより、車両に大きな駆動力を提供し、その速度を大幅に向上させることができ、スポーツカーやレーシングカーなどの特殊車両に適用可能である。
【0019】
本発明による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリは、車両のリアアクスルハーフシャフト又はフロントアクスルハーフシャフトに連結され、2つの変速比での伝動を実現することができ、伝動方式が柔軟であり、異なった道路状況での車両全体の運転ニーズが満たされ、車両が速く加速したり、重い負荷で坂を登ったりする必要がある場合、車両全体の駆動力を向上させ、車両全体の駆動力不足という欠陥を補うためには、デュアル動力入力、大きい変速比での伝動を選択することができ、車両全体が巡航している場合、車両全体の高速運転要求を満たし、エネルギーを節約し、車両の航続距離を向上させるためには、小さい変速比での伝動を選択することができる。
【0020】
本発明による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリは、駆動アセンブリの軸方向の寸法を短くして、車両全体の配置を有利にする一方で、使用されるギアの数が少ないため、伝動構造を簡素化した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例1による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリの構造模式図である。
【
図2】本発明の実施例1による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリの構造模式図(アイドルギアが設けられず)。
【
図3】本発明の実施例2による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリの構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例3による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリの構造模式図である。
【
図5】本発明の実施例4による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリの構造模式図である。
【
図6】本発明の実施例5による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリの構造模式図である。
【
図7】本発明の実施例6による車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、図面を参照して、本発明の実施形態について更に詳しく説明する。
【0023】
(実施例1)
図1に、本発明の実施例1が示されており、この実施例において、車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリは、対称に設けられた2組の駆動手段を含み、2組の駆動手段が同じ組のアクスルハーフシャフトに連結され、各組の駆動手段ごとに動力源1及び自動変速機2(
図1で破線に示すように)が設けられており、自動変速機2が夫々アクスルハーフシャフトのうちの一本のハーフシャフトに連結される。
【0024】
図1に示すように、自動変速機2には、平行する入力軸3、中間軸8及び出力軸12が設けられており、動力源1が入力軸3に連結され、出力軸3がアクスルハーフシャフトのうちの左ハーフシャフト又は右ハーフシャフトに連結される。
【0025】
そのうち、左側の自動変速機2がアクスルハーフシャフトのうちの左ハーフシャフトに連結され、右側の自動変速機2がアクスルハーフシャフトのうちの右ハーフシャフトに連結される。
【0026】
以下、左側の駆動手段を例としてその詳細構造を詳しく説明する。
図1に示すように、入力軸3に第一のギア4が設けられ、中間軸8に第二のギア6が設けられ、第一のギア4と第二のギア6との間にアイドルギア5が設けられており、アイドルギア軸15が入力軸3に平行しており、第一のギア4と、アイドルギア5と、第二のギア6とが噛み合ってトリプルギアを形成する。
【0027】
アイドルギア5は、構造上の寸法に合わせて取り付けられたものであり、第一のギア4と第二のギア6との間の伝動比の大きさを変えない。また、アイドルギア5が設けられなくてもよく、そうした場合は、第一のギア4と第二のギア6とが、
図2に示すように直接に噛合伝動する。
【0028】
中間軸8には、第三のギア10が遊嵌して取り付けられ、第六のギア7が固定的に取り付けられており、出力軸12には、第四のギア11が固定的に取り付けられ、第五のギア14が遊嵌して取り付けられており、第三のギア10と第四のギア11とは、噛合伝動し、軸への取付方式が異なり、第五のギア14と第六のギア7とは、噛合伝動し、軸への取付方式が異なる。
【0029】
中間軸8とそれに遊嵌された第三のギア10との間に2速クラッチ9が設けられており、出力軸12とそれに遊嵌された第五のギア14との間に1速クラッチ13が設けられている。
【0030】
第三のギア10がニードルベアリングを介して中間軸8に遊嵌され、第五のギア14がニードルベアリングを介して出力軸12に遊嵌されている。第三のギア10も第五のギア14も、遊嵌して取り付けられているが、軸方向に移動しない。
【0031】
第一のギア4と第二のギア6との噛合伝動比がi1、又は、第一のギア4と、アイドルギア5と、第二のギア6とからなる1組のトリプルギアの噛合伝動比がi1であり、第五のギア14と第六のギア7との噛合伝動比がi2であり、第三のギア10と第四のギア11との噛合伝動比がi3である場合、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i2又はi1×i3になる。
【0032】
図1に示すように、右側の駆動手段は、左側の駆動手段の構造と鏡像関係にあるので、ここでは詳しく説明しない。
【0033】
1速クラッチ13がオンされ、2速クラッチ9がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、第六のギア7、第五のギア14、1速クラッチ13及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i2になる。これは、運転状況一である。
【0034】
2速クラッチ9がオンされ、1速クラッチ13がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、2速クラッチ9、第三のギア10、第四のギア11及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i3になる。これは、運転状況二である。
【0035】
1速クラッチ13も2速クラッチ9もオフされている場合、ニュートラルが実現され、この時、アクスルハーフシャフトに動力が出力されない。
【0036】
そのうち、伝動比i1、i2及びi3の大きさは、ギアの寸法や歯数を変えることで変更可能であり、これにより、自動変速機の伝動比が変更される。
【0037】
好ましくは、右側の駆動手段のシフト順序は左側の駆動手段のシフト順序と同じであり、車両の内側および外側の車輪の回転速度も同じである。一般的に、車両の旋回時には、内輪と外輪の回転速度を異ならせることが必要であり、こういうときには、動力源1の回転速度を変更することでそのように調整することができる。
【0038】
上記から分かるように、この車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリは、2つの変速比での伝動を実現することができ、自動変速機が、制御戦略プログラムに従って、電子制御による2つの変速段の自動シフトを実現することができ、伝動方式が柔軟であり、異なった道路状況での車両全体の運転ニーズが満たされ、車両が、始動時に加速している場合、及び重い負荷で坂を登っている場合、車両全体の駆動力を向上させ、車両全体の駆動力不足という欠陥を補うためには、大きい変速比での伝動を選択することができ、車両全体が巡航している場合、車両全体の高速運転要求を満たし、エネルギーを節約し、車両の航続距離を向上させるためには、小さい変速比での伝動を選択することができる。
【0039】
動力源1のロータ軸が入力軸3と一体的に設計されることにより、ロータ軸による自動変速機2への衝撃を低減することができる。
【0040】
動力源1が電動モータであるが、エンジンであってもよい。
【0041】
出力軸12と左ハーフシャフト又は右ハーフシャフトとの連結構造については、両者がスプラインで連結されてもよいし、カップリングで連結されてもよいし、一体的に形成されてもよい。
【0042】
1速クラッチ13及び2速クラッチ9が、可動ギアプレートと固定ギアプレートとを含む端面歯クラッチである。1速クラッチ13の可動ギアプレートが出力軸12に遊嵌され、その相手となる固定ギアプレートが第五のギア14に固定されている。2速クラッチ9の可動ギアプレートが中間軸8に遊嵌され、その相手となる固定ギアプレートが第三のギア10に固定されている。
【0043】
1速クラッチ13、2速クラッチ9において、可動ギアプレートがスプラインを介して軸を摺動可能である。可動ギアプレートの中心孔に雌スプラインが設けられ、それに応じて、出力軸12及び中間軸8に雄スプラインが設けられている。また、可動ギアプレートが軸へ挿通可能で且つ軸方向に摺動してモーメントを出力できるように、雄スプラインの長さは雌スプラインよりも長くしなければならない。
【0044】
可動ギアプレートに端面伝達歯又は端面歯溝が設けられており、それに対応して、固定ギアプレートに端面歯溝又は端面伝達歯が設けられている。端面歯クラッチは、摩擦クラッチと比較して、運動エネルギー損失を最大限に低減することが可能であり、従来の摩擦クラッチが電動モータのパワーショックに耐えることができないため、寿命が短すぎるという欠陥を埋めた。
【0045】
端面歯クラッチの駆動方式は、電磁駆動型(電磁吸引による駆動)、流体駆動型(液圧機構による駆動)、空圧駆動型(空圧機構による駆動)、電気駆動型(電動モータによる駆動)、機械式フォーク駆動型(フォークによる駆動)のいずれかであってもよく、可動ギアプレートが軸方向に移動して固定ギアプレートと噛み合うように駆動される。
【0046】
1速クラッチ13及び2速クラッチ9が電磁ドグクラッチである場合、車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリが動力入力状態にあるとき、電磁ドグクラッチによって、動力が随時に車両全体と瞬時に解除されたり結合されたりすることができ、動力の円滑な切換えが達成され、車両の走行安定性が向上する。
【0047】
又は、1速クラッチ13と2速クラッチ9は、ともに湿式クラッチを使用している。湿式クラッチの内部には対偶となる摩擦シートと鋼シートが設けられており、摩擦シートを鋼シートと接触または分離するように、液圧油を使用して駆動することで、クラッチングを実現する。湿式クラッチを取り付けるには、中間軸8とそれに遊嵌された第三のギア10との間のクラッチング、及び出力軸12とそれに遊嵌された第五のギア14との間のクラッチングを実現する必要がある。
【0048】
本発明の実施例において、アクスルハーフシャフトは、リアアクスルハーフシャフトであるが、フロントアクスルハーフシャフトであってもよい。車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリがフロントアクスルハーフシャフトに連結された場合、車両が前輪駆動モードとなり、車両用デュアル動力源デュアル駆動アセンブリがリアアクスルハーフシャフトに連結された場合、車両が後輪駆動モードとなる。
【0049】
アクスルハーフシャフトの構造は、
図1、
図2には示されていないが、実際の構造には左ハーフシャフトと右ハーフシャフトとが含まれており、二つのハーフシャフトの間に差動装置を設ける必要がない。
【0050】
(実施例2)
図3には、本発明の実施例2が示されており、本発明の実施例2は、実施例1に基づいて改良されたものである。本発明の実施例2は、実施例1と比べると、下記の点で異なっている。
図3に示すように、左側の駆動手段において、1速クラッチ13が中間軸8に遊嵌され、その相手となる固定ギアプレートが第六のギア7に固定されており、第六のギア7が中間軸8に遊嵌して取り付けられ、第五のギア14が出力軸12に固定的に取り付けられている。2速クラッチ9が出力軸12に遊嵌され、その相手となる固定ギアプレートが第四のギア11に固定されており、第四のギア11が出力軸12に遊嵌して取り付けられ、第三のギア10が中間軸8に固定的に取り付けられている。
【0051】
図3に示すように、右側の駆動手段は、左側の駆動手段の構造と鏡像関係にあるので、ここでは詳しく説明しない。
【0052】
第一のギア4と第二のギア6との噛合伝動比がi1、又は前記トリプルギアの噛合伝動比がi1であり、第五のギア14と第六のギア7との噛合伝動比がi2であり、第三のギア10と第四のギア11との噛合伝動比がi3であるとする。
【0053】
1速クラッチ13がオンされ、2速クラッチ9がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、1速クラッチ13、第六のギア7、第五のギア14及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i2になる。これは、運転状況一である。
【0054】
2速クラッチ9がオンされ、1速クラッチ13がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、第三のギア10、第四のギア11、2速クラッチ9及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i3になる。これは、運転状況二である。
【0055】
1速クラッチ13も2速クラッチ9もオフされている場合、ニュートラルが実現され、この時、アクスルハーフシャフトに動力が出力されない。
【0056】
右側の駆動手段のシフト順序は、左側の駆動手段と同じである。
本発明の実施例2は、その他の内容が実施例1と同じであり、ここで繰り返して説明しない。
【0057】
(実施例3)
図4には、本発明の実施例3が示されており、本発明の実施例3は、実施例1に基づいて改良されたものである。本発明の実施例3は、実施例1と比べると、下記の点で異なっている。
図4に示すように、左側の駆動手段の構造において、2速クラッチ9が出力軸12に遊嵌され、その相手となる固定ギアプレートが第四のギア11に固定されており、第四のギア11が出力軸12に遊嵌して取り付けられ、第三のギア10が中間軸8に固定的に取り付けられている。
【0058】
図4に示すように、右側の駆動手段は、左側の駆動手段の構造と鏡像関係にあるため、ここでは詳しく説明しない。
【0059】
第一のギア4と第二のギア6との噛合伝動比がi1、又は前記トリプルギアの噛合伝動比がi1であり、第五のギア14と第六のギア7との噛合伝動比がi2であり、第三のギア10と第四のギア11との噛合伝動比がi3であるとする。
【0060】
1速クラッチ13がオンされ、2速クラッチ9がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、第六のギア7、第五のギア14、1速クラッチ13及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i2になる。これは、運転状況一である。
【0061】
2速クラッチ9がオンされ、1速クラッチ13がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、第三のギア10、第四のギア11、2速クラッチ9及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i3になる。これは、運転状況二である。
【0062】
1速クラッチ13も2速クラッチ9もオフされている場合、ニュートラルが実現され、この時、アクスルハーフシャフトに動力が出力されない。
【0063】
右側の駆動手段のシフト順序は、左側の駆動手段と同じである。
本発明の実施例3は、その他の内容が実施例1と同じであり、ここで繰り返して説明しない。
【0064】
(実施例4)
図5には、本発明の実施例4が示されており、本発明の実施例4は、実施例1に基づいて改良されたものである。本発明の実施例4は、実施例1と比べると、下記の点で異なっている。
図5に示すように、左側の駆動手段の構造において、1速クラッチ13が中間軸8に遊嵌され、その相手となる固定ギアプレートが第六のギア7に固定されており、第六のギア7が中間軸8に遊嵌して取り付けられ、第五のギア14が出力軸12に固定的に取り付けられている。
【0065】
図5に示すように、右側の駆動手段は、左側の駆動手段の構造と鏡像関係にあるため、ここでは詳しく説明しない。
【0066】
第一のギア4と第二のギア6との噛合伝動比がi1、又は前記トリプルギアの噛合伝動比がi1であり、第五のギア14と第六のギア7との噛合伝動比がi2であり、第三のギア10と第四のギア11との噛合伝動比がi3であるとする。
【0067】
1速クラッチ13がオンされ、2速クラッチ9がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、1速クラッチ13、第六のギア7、第五のギア14及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i2になる。これは、運転状況一である。
【0068】
2速クラッチ9がオンされ、1速クラッチ13がオフされている場合、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、2速クラッチ9、第三のギア10、第四のギア11及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i3になる。これは、運転状況二である。
【0069】
1速クラッチ13も2速クラッチ9もオフされている場合、ニュートラルが実現され、この時、アクスルハーフシャフトに動力が出力されない。
【0070】
右側の駆動手段のシフト順序は、左側の駆動手段と同じである。
本発明の実施例4は、その他の内容が実施例1と同じであり、ここで繰り返して説明しない。
【0071】
(実施例5)
図6には、本発明の実施例5が示されており、本発明の実施例5は、実施例1に基づいて改良されたものである。本発明の実施例5は、実施例1と比べると、下記の点で異なっている。
図6に示すように、左側の駆動手段の構造において、ツーウェイクラッチ16が中間軸8に遊嵌され、ツーウェイクラッチ16の左右両側ともに端面歯が設けられており、これらの端面歯が、二つの可動ギアプレートに相当し、第三のギア10も第六のギア7も中間軸8に遊嵌して取り付けられ、二つのギアの夫々に、その相手となる固定ギアプレートが固定されており、第四のギア11も第五のギア14も出力軸12に固定的に取り付けられている。
【0072】
図6に示すように、右側の駆動手段は、左側の駆動手段の構造と鏡像関係にあるため、ここでは詳しく説明しない。
【0073】
第一のギア4と第二のギア6との噛合伝動比がi1、又は前記トリプルギアの噛合伝動比がi1であり、第五のギア14と第六のギア7との噛合伝動比がi2であり、第三のギア10と第四のギア11との噛合伝動比がi3であるとする。
【0074】
ツーウェイクラッチ16が右へ移動すると、第六のギア7における固定ギアプレートに結合することができ、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、ツーウェイクラッチ16、第六のギア7、第五のギア14及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i2になる。これは、運転状況一である。
【0075】
ツーウェイクラッチ16が左へ移動すると、第三のギア10における固定ギアプレートに結合することができ、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、ツーウェイクラッチ16、第三のギア10、第四のギア11及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i3になる。これは、運転状況二である。
【0076】
ツーウェイクラッチ16がセンタリングされ、第六のギア7及び第三のギア10の両方から切断されている場合、ニュートラルが実現され、この時、アクスルハーフシャフトに動力が出力されない。
【0077】
右側の駆動手段のシフト順序は、左側の駆動手段と同じである。
本発明の実施例5は、その他の内容が実施例1と同じであり、ここで繰り返して説明しない。
【0078】
(実施例6)
図7には、本発明の実施例6が示されており、本発明の実施例6は、実施例5に基づいて改良されたものである。本発明の実施例6は、実施例5と比べると、下記の点で異なっている。
図7に示すように、左側の駆動手段の構造において、ツーウェイクラッチ16が出力軸12に遊嵌され、ツーウェイクラッチ16の左右両側ともに端面歯が設けられており、これらの端面歯が、二つの可動ギアプレートに相当し、第四のギア11も第五のギア14も出力軸12に遊嵌して取り付けられ、二つのギアの夫々に、その相手となる固定ギアプレートが固定されており、第三のギア10も第六のギア7も中間軸8に固定的に取り付けられている。
【0079】
図7に示すように、右側の駆動手段は、左側の駆動手段の構造と鏡像関係にあるため、ここでは詳しく説明しない。
【0080】
第一のギア4と第二のギア6との噛合伝動比がi1、又は前記トリプルギアの噛合伝動比がi1であり、第五のギア14と第六のギア7との噛合伝動比がi2であり、第三のギア10と第四のギア11との噛合伝動比がi3であるとする。
【0081】
ツーウェイクラッチ16が右へ移動すると、第五のギア14における固定ギアプレートに結合することができ、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、第六のギア7、第五のギア14、ツーウェイクラッチ16及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i2になる。これは、運転状況一である。
【0082】
ツーウェイクラッチ16が左へ移動すると、第四のギア11における固定ギアプレートに結合することができ、動力源1が、入力軸3、第一のギア4、アイドルギア5、第二のギア6、中間軸8、第三のギア10、第四のギア11、ツーウェイクラッチ16及び出力軸12を順番に介して、動力をアクスルハーフシャフトに伝達し、自動変速機2において、噛合伝動比がi1×i3になる。これは、運転状況二である。
【0083】
ツーウェイクラッチ16がセンタリングされ、第五のギア14及び第四のギア11の両方から切断されている場合、ニュートラルが実現され、この時、アクスルハーフシャフトに動力が出力されない。
【0084】
右側の駆動手段のシフト順序は、左側の駆動手段と同じである。
本発明の実施例6は、その他の内容が実施例1と同じであり、ここで繰り返して説明しない。
【0085】
以上は、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施例に基づいて他の改良又は変形を行うことができる。当業者であれば、上記特定の記載は本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲が特許請求の範囲の保護範囲に基づくものであることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0086】
1…動力源、2…自動変速機、3…入力軸、4…第一のギア、5…アイドルギア、6…第二のギア、7…第六のギア、8…中間軸、9…2速クラッチ、10…第三のギア、11…第四のギア、12…出力軸、13…1速クラッチ、14…第五のギア、15…アイドルギア軸、16…ツーウェイクラッチ、17…ツーウェイクラッチ