(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】光起電力素子および第V族ドーパントを備える半導体層、ならびにそれを形成する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20220325BHJP
H01L 31/0248 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L31/08 K
(21)【出願番号】P 2020531089
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2017114980
(87)【国際公開番号】W WO2019109297
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】510328032
【氏名又は名称】ファースト・ソーラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】シン,チエンチエン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ホンボー
(72)【発明者】
【氏名】グローバー,サチット
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,ウィリアム・ハリンジャー
(72)【発明者】
【氏名】リー,シヤオピーン
(72)【発明者】
【氏名】ル,ディーンユアン
(72)【発明者】
【氏名】マリク,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】プオン,ホーンイーン
(72)【発明者】
【氏名】シアン,ジョセフ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シオーン,ガーン
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0194166(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180579(US,A1)
【文献】特表平08-500209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0337600(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0373908(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126396(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0074914(US,A1)
【文献】特開平06-085297(JP,A)
【文献】特開2000-100834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/119
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体層を含む光起電力素子であって、
該吸収体層がカドミウム、テルル、およびセレンを含み、
該吸収体層が、第V族ドーパントがドープされたp型であり、4×10
15cm
-3より大きい第V族ドーパントのキャリア濃度を有し、
該吸収体層が該吸収体層の中央領域に酸素を含み、
ここで該中央領域は該吸収体層の50%中間であり、該吸収体層の第1の表面および第2の表面のそれぞれから、該吸収体層の厚みの25%だけ差し引かれたものである、
該吸収体層が該吸収体層の該中央領域にアルカリ金属を含み、
該アルカリ金属の原子濃度対該酸素の原子濃度の比率が、該吸収体層の該中央領域で少なくとも0.1である、
光起電力素子。
【請求項2】
該アルカリ金属がカリウムである、請求項1に記載の光起電力素子。
【請求項3】
該アルカリ金属がルビジウムである、請求項1に記載の光起電力素子。
【請求項4】
該第V族ドーパントのキャリア濃度が、8×10
15cm
-3~6×10
16cm
-3の間である、請求項1に記載の光起電力素子。
【請求項5】
該吸収体層の該中央領域での
該第V族ドーパントの原子濃度が、1×10
17cm
-3より大きい、請求項4に記載の光起電力素子。
【請求項6】
該吸収体層と該光起電力素子のエネルギー面の間に配置された、透明な導電性酸化物層を含み、該透明な導電性酸化物層がアルカリ金属を含む、請求項1に記載の光起電力素子。
【請求項7】
該透明な導電性酸化物層における
該アルカリ金属の原子濃度が、該吸収体層の該中央領域での該アルカリ金属の原子濃度より大きい、請求項6に記載の光起電力素子。
【請求項8】
該透明な導電性酸化物層における該アルカリ金属の原子濃度対、
該吸収体層の
該中央領域での
該アルカリ金属の原子濃度のアルカリ金属比率が、1,000未満である、請求項7に記載の光起電力素子。
【請求項9】
キャリア活性化の方法であって、
吸収体層を還元環境に曝露するステップ、ここで
該吸収体層が、カドミウム、テルル、セレン、および第V族ドーパントを含む、
該吸収体層をアニーリング化合物と接触させるステップ、ここで
該アニーリング化合物が塩化カドミウムおよびアルカリ金属塩化物を含み、
該アルカリ金属塩化物がアルカリ金属から形成され、そして
該アニーリング化合物中の
該アルカリ金属対カドミウムの原子比率が、10,000ppm未満である、ならびに
該吸収体層をアニールするステップ、ここで
該第V族ドーパントの少なくとも一部が活性化され、
該吸収体層がアニールされた後、
該吸収体層は4×10
15cm
-3より大きい
該第V族ドーパントのキャリア濃度を有する、
を含む、方法。
【請求項10】
該還元環境が、第V族酸化物の形成を軽減するように構成されたフォーミングガスを含み、
該フォーミングガスが、水素、窒素、またはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該還元環境が、26.7kPa(200Torr)~106.7kPa(800Torr)の間の真空圧力にある、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
該吸収体層が350℃~500℃の間の温度で5分~60分の間アニールされる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
該アルカリ金属塩化物が、LiCl、KCl、RbCl、またはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
該アニーリング化合物中の
該アルカリ金属対
該カドミウムの原子比率が、500ppm~6,000ppmの間である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
該アルカリ金属がカリウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該アルカリ金属がルビジウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該吸収体層がアニールされた後、該吸収体層が、8×10
15cm
-3~6×10
16cm
-3の間の
該第V族ドーパントのキャリア濃度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
該吸収体層での
該第V族ドーパントの原子濃度が1×10
17cm
-3より大きい、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書は、一般に効率的な光起電力素子およびそれを形成する方法、より詳細には、光起電力素子および増強されたキャリア濃度を有する第V族を備える半導体層、ならびにそれを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]光起電力素子は、光起電力効果を示す半導体材料を使用して光を電気に変換することによって、電力を発生させる。残念ながら、効率的に光起電力素子を生成するのに必要な製造プロセスは、光起電力素子の望ましくない特性を悪化させるおそれがある。例えば、半導体層は場合により、塩素および酸素含有雰囲気中でのアニーリングプロセスである塩化物熱処理(chloride heat treatment)(CHT)に供される。CHTは、半導体層の結晶品質を改善することができる。例えば、粒子(微結晶)の大きさは増大され得る。さらに、例えば、粒界領域にある欠陥を含む、格子構造の欠陥は修復され得る。格子構造の欠陥はキャリア再結合の原因になり得、光起電力の効率を低減する。
【0003】
[0003]半導体層は、活性化されて半導体層の電荷キャリア濃度を増大させることができる材料、すなわち、ドーパントでドープされ得る。半導体層へのドーパントの添加は、主に負、n型、または正、p型の電荷キャリアを備える材料層を生成することができる。しかしながらドープ半導体層をCHTへ供することは、不十分な電荷キャリア濃度を備えたドープ半導体層をもたらすおそれがあり、すなわち、電荷キャリア濃度が低すぎるおそれがある。例えば、ドーパントの大部分が活性化できず、電力の発生に寄与できないおそれがある。
【0004】
[0004]したがって、代わりの光起電力素子、および増強されたキャリア濃度を有する第V族を備えた代わりの半導体層、ならびにそれを形成する代わりの方法への需要が存在する。
【発明の概要】
【0005】
[0005]本明細書で提供される実施形態は、アルカリおよび還元雰囲気熱処理(alkali and reduced-ambient heat treatment)を実施する方法、ならびにそれによって形成された光起電力素子に関する。本明細書に記載される実施形態によって提供される、これらおよび追加の特徴は、図とともに以下の詳細な記述を考慮して、より完全に理解されるであろう。
【0006】
[0006]図で説明される実施形態は、事実上例示的および代表的であり、特許請求の範囲によって規定される主題を制限することを意図していない。例示的実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示される以下の図と併せて読むと理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】[0007]本明細書で示され記載される1つまたは複数の実施形態による、光起電力素子を模式的に示す図である。
【
図2】[0008]本明細書で示され記載される1つまたは複数の実施形態による、基板を模式的に示す図である。
【
図3】[0009]本明細書で示され記載される1つまたは複数の実施形態による、光起電力素子を模式的に示す図である。
【
図4】[0010]本明細書で示され記載される1つまたは複数の実施形態による、部分的に形成された光起電力素子を模式的に示す図である。
【
図5】本明細書で示され記載される1つまたは複数の実施形態による、部分的に形成された光起電力素子を模式的に示す図である。
【
図6】[0011]本明細書で示され記載される1つまたは複数の実施形態による、アルカリおよび還元雰囲気熱処理を実施する方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0012]光から電力を発生させる光起電力素子の実施形態が、本明細書に記載される。光起電力素子は、一般に半導体材料から形成された吸収体層を含む。吸収体層は、ドーパントを活性化するように構成された、1つまたは複数の処理ステップに供することができる。本明細書で使用する場合、活性化するまたは活性化は、ドーパントが半導体内で電荷キャリアとして作用する、例えば、活性化されたp型ドーパントが、アクセプタとして作用するような、ドーパントの操作を意味し得る。光起電力素子および光起電力素子の吸収体層のドーパントを活性化するための方法の様々な実施形態を、本明細書でより詳細に記載する。
【0009】
[0013]ここで
図1を参照すると、光起電力素子100の実施形態が模式的に描かれている。光起電力素子100は、受光し、光を電気的信号に変換するように構成され得る、例えば、光子が光から吸収され、光起電力効果を介して電気的信号に変換され得る。したがって、光起電力素子100は、例えば、太陽のような光源に曝露されるように構成されたエネルギー面102を規定することができる。光起電力素子102は、エネルギー面102からオフセットされる反対面104も規定することができる。「光」という用語は、電磁スペクトルの様々な波長、例えば、限定されるものではないが、電磁スペクトルの紫外線(UV)、赤外線(IR)、および可視部での波長を指すことができることに留意されたい。光起電力素子100は、エネルギー面102と反対面104の間に配置された、複数の層を含み得る。本明細書で使用する場合、「層」という用語は、表面上に提供される材料の厚みを指す。各層は、表面のすべてまたは任意の部分を覆うことができる。
【0010】
[0014]光起電力素子100は、光の光起電力素子100への透過を促進するように構成された、基板110を含み得る。基板110は、光起電力素子100のエネルギー面102に配置され得る。
図1および2をまとめて参照すると、基板110は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面112、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面114を有することができる。材料の1つもしくは複数の層は、基板110の第1の表面112と第2の表面114の間に、配置され得る。
【0011】
[0015]基板110は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面122、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面124を有する透明層120を含み得る。いくつかの実施形態では、透明層120の第2の表面124は、基板110の第2の表面114を形成し得る。透明層120は、例えば、ガラスのような、実質的に透明な材料から形成することができる。好適なガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、または低減された鉄含有量を備える任意のガラスが挙げられる。透明層120は、いくつかの実施形態では、約450nm~約800nmを含む、任意の好適な透過率を有し得る。透明層120は、例えば、一実施形態での約50%超、別の実施形態での約60%超、なお別の実施形態での約70%超、さらなる実施形態での約80%超、またはさらにさらなる実施形態での約85%超、を含む、任意の好適な透過パーセントを有し得る。一実施形態では、透明層120は、約90%の透過パーセントを備えるガラスから形成され得る。任意選択で、基板110は、透明層120の第1の表面122に塗布された被膜126を含み得る。被膜126は、光と相互作用する、または基板110の耐久性を改善するように構成されることができ、例えば、限定されるものではないが、反射防止被膜、防汚被膜、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0012】
[0016]
図1を再度参照すると、光起電力素子100は、劣化または剥離をもたらすおそれのある、基板110からの汚染物質(例えば、ナトリウム)の拡散を軽減するように構成された、バリア層130を含むことができる。バリア層130は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面132、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面134を有することができる。いくつかの実施形態では、バリア層130は、基板110に隣接して提供され得る。例えばバリア層130の第1の表面132は、基板100の第2の表面114上に提供され得る。本明細書で使用する場合、「隣接して」という言いまわしは、層の少なくとも一部の間に介在する材料を伴わないで2つの層が接触して配置されることを意味する。
【0013】
[0017]一般に、バリア層130は、実質的に透明であり、熱的に安定であり、低減されたピンホール数を備え、高いナトリウム遮断性能および良好な接着性を有することができる。或いはまたはさらに、バリア層130は、光に色抑制を加えるように構成される得る。バリア層130は、限定されるものではないが、酸化スズ、二酸化ケイ素、アルミニウムドープ酸化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸化アルミニウムを含む、好適な材料の1つもしくは複数の層を含み得る。バリア層130は、例えば、一実施形態での約500Å超、別の実施形態での約750Å超、またはさらなる実施形態での約1200Å未満を含む、第1の表面132および第2の表面134によって境界をつけられた、任意の好適な厚みを有し得る。
【0014】
[0018]
図1をさらに参照すると、光起電力素子100は、光起電力素子100によって発生させた電荷キャリアを輸送するための電気的接触を提供するように構成された、透明な導電性酸化物(TCO)層140を含むことができる。TCO層140は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面142、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面144を有し得る。いくつかの実施形態では、TCO層140は、バリア層130に隣接して提供され得る。例えば、TCO層140の第1の表面142は、バリア層130の第2の表面134上に提供され得る。一般に、TCO層140は、実質的に透明で広いバンドギャップを有するn型半導体材料の1つまたは複数の層から形成され得る。特に、広いバンドギャップは、光の光子のエネルギーと比較してより大きなエネルギー値を有することができ、望ましくない光の吸収を軽減することができる。TCO層140は、限定されるものではないが、二酸化スズ、ドープ二酸化スズ(例えば、F-SnO
2)、酸化インジウムスズ、またはスズ酸カドミウムを含む、好適な材料の1つまたは複数の層を含み得る。
【0015】
[0019]光起電力素子100は、TCO層140と任意の隣接する半導体層の間に絶縁層を提供するように構成された、バッファ層150を含み得る。バッファ層150は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面152、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面154を有し得る。いくつかの実施形態では、バッファ層150は、TCO層140に隣接して提供され得る。例えば、バッファ層150の第1の表面152は、TCO層140の第2の表面144上に提供され得る。バッファ層140は、限定されるものではないが、真正二酸化スズ、酸化マグネシウム亜鉛(例えばZn1-xMgxO)、二酸化ケイ素(SnO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛スズ、酸化亜鉛、スズケイ素酸化物、またはこれらの任意の組み合わせを含む、TCO層140より高い抵抗率を有する材料を含み得る。いくつかの実施形態では、バッファ層140の材料は、隣接する半導体層(例えば、吸収体)のバンドギャップと実質的に一致するように構成され得る。バッファ層150は、第1の表面152と第2の表面154の間に、例えば、一実施形態での約100Å超、別の実施形態での約100Å~約800Åの間、またはさらなる実施形態での約150Å~約600Åの間を含む、任意の好適な厚みを有し得る。
【0016】
[0020]
図1を再度参照すると、光起電力素子100は、別の層と協働し、光起電力素子100内のpn接合を形成するように構成された、吸収体層160を含み得る。したがって、吸収された光の光子は電子正孔対を解放し、キャリア流を発生させることができ、電力を生み出すことができる。吸収体層160は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面162、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面164を有することができる。吸収体層160の厚みは、第1の表面162と第2の表面164の間で規定され得る。吸収体層160の厚みは、約0.5μm~約10μmの間、例えば、一実施形態では約1μm~約7μmの間など、または別の実施形態では約2μm~約5μmの間であり得る。
【0017】
[0021]本明細書に記載される実施形態によれば、吸収体層160は、過剰の正の電荷キャリア、すなわち、正孔またはアクセプタを有する、p型半導体材料から形成され得る。吸収体層160は、任意の好適なp型半導体材料、例えば、第II~VI族半導体を含み得る。具体例としては、限定されるものではないが、カドミウム、テルル、セレン、またはこれらの任意の組み合わせを含む、半導体材料が挙げられる。好適な例としては、限定されるものではないが、テルル化カドミウム、カドミウム、セレン、およびテルルの三元化合物(例えば、CdSexTe1-x)、またはカドミウム、セレン、およびテルルを含む四元化合物が挙げられる。吸収体層160がセレンおよびカドミウムを含む実施形態では、セレンの原子パーセントは約0原子パーセントより大きく、約20原子パーセント未満であり得る。吸収体層160がテルルおよびカドミウムを含む実施形態では、テルルの原子パーセントは約30原子パーセントより大きく、約50原子パーセント未満であり得る。本明細書に記載される原子パーセントは、吸収体層160の全体の代表であり、吸収体層160内の特定の位置での材料の原子パーセントは、吸収体層160の全体的な組成と比較して、厚みとともに変動し得ることに留意されたい。テルル、セレン、または両方の濃度は、吸収体層160の厚みを通して変動し得ることに留意されたい。例えば、吸収体層160がカドミウム、セレン、およびテルルの三元化合物(CdSexTe1-x)を含む場合、xは、吸収体層160の第1の表面162からの距離とともに、吸収体層160内で変動し得る。いくつかの実施形態では、xの値は、吸収体層160の第1の表面162からの距離とともに、吸収体層160内で減少し得る。
【0018】
[0022]本明細書で提供される実施形態によれば、吸収体層160の内のドーパントは、所望の電荷キャリア濃度に活性化され得る。いくつかの実施形態では、吸収体層160は、第V族ドーパント、例えば、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ウンウンペンチウム(Uup)、またはこれらの組み合わせなどでドープされ得る。吸収体層160内のドーパントの全ドーズ量は、制御することができる。いくつかの実施形態では、吸収体層160の中央領域166での第V族ドーパントの原子濃度は、約1×1017cm-3より大きい、例えば、一実施形態では約1×1017cm-3~約5×1020cm-3の間、別の実施形態では約3×1017cm-3~約1×1019cm-3の間、またはさらなる実施形態では約5×1017cm-3~5×1018cm-3の間などであり得る。中央領域166は、吸収体層160の50%中間であり、吸収体層160の第1の表面162および第2の表面164のそれぞれから、吸収体層160の厚みの25%だけ差し引かれたものである。あるいはまたはさらに、第V族ドーパントの濃度プロファイルは、吸収体層160の厚みを通して変動し得る。特に、第V族ドーパントの量は、吸収体層160の第1の表面162からの距離とともに変動し得る。
【0019】
[0023]
図1をさらに参照すると、PN接合は、吸収体層160を、過剰の負電荷キャリア、すなわち、電子またはドナーを有する光起電力素子100の一部に十分接近して提供することによって、形成され得る。いくつかの実施形態では、吸収体層160は、n型半導体材料に隣接して提供され得る。あるいは、1つまたは複数の介在層が、吸収体層160とn型半導体材料の間に提供され得る。いくつかの実施形態では、吸収体層160はバッファ層150に隣接して提供され得る。例えば、吸収体層160の第1の表面162は、バッファ層150の第2の表面154上に提供され得る。
【0020】
[0024]ここで
図3を参照すると、いくつかの実施形態では、光起電力素子200は、n型半導体材料を含む窓層170を含むことができる。窓層170は別にして、光起電力素子200は、光起電力素子100(
図1)と実質的に類似した層構造を有し得る。吸収体層160は、窓層170に隣接して形成され得る。窓層170は、光起電力素子200のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面172、および光起電力素子200の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面174を有することができる。いくつかの実施形態では、窓層170は、吸収体層160とTCO層140の間に配置され得る。一実施形態では、窓層170は、吸収体層160とバッファ層150の間に配置され得る。窓層170は、例えば、硫化カドミウム、硫化亜鉛、カドミウム亜鉛硫化物、酸化マグネシウム亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む、任意の好適な材料を含み得る。
【0021】
[0025]
図1を再度参照すると、光起電力素子100は、ドーパントの望ましくない変更を軽減し、吸収体層160に電気的接触を提供するように構成された、バックコンタクト層180を含むことができる。バックコンタクト層180は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面182、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面184を有し得る。バックコンタクト層180の厚みは、第1の表面182と第2の表面184の間に規定され得る。バックコンタクト層180の厚みは、約5nm~約200nmの間、例えば、一実施形態では約10nm~約50nmの間などであり得る。
【0022】
[0026]いくつかの実施形態では、バックコンタクト層180は、吸収体層160に隣接して提供され得る。例えば、バックコンタクト層180の第1の表面182は、吸収体層160の第2の表面164上に提供され得る。いくつかの実施形態では、バックコンタクト層180は、第I、II、VI族からの材料の2元または3元組み合わせ、例えば、亜鉛、銅、カドミウムおよびテルルを様々な組成で含有する、1つまたは複数の層などを含むことができる。さらに代表的な材料としては、限定されるものではないが、テルル化銅でドープされたテルル化亜鉛、またはテルル化銅で合金化されたテルル化亜鉛が挙げられる。
【0023】
[0027]光起電力素子100は、吸収体層160との電気的接触を提供するように構成された導電性層190を含むことができる。導電性層190は、光起電力素子100のエネルギー面102に実質的に向かい合う第1の表面192、および光起電力素子100の反対面104に実質的に向かい合う第2の表面194を有することができる。いくつかの実施形態では、導電性層190は、バックコンタクト層180に隣接して提供され得る。例えば、導電性層190の第1の表面192は、バックコンタクト層180の第2の表面184上に提供され得る。導電性層190は、任意の好適な導電性材料、例えば、窒素含有金属、銀、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、パラジウム、クロム、モリブデン、金、またはこれに類するものの1つまたは複数の層などを含むことができる。窒素含有金属層の好適な例としては、窒化アルミニウム、窒化ニッケル、窒化チタン、窒化タングステン、窒化セレン、窒化タンタル、または窒化バナジウムを挙げることができる。
【0024】
[0028]光起電力素子100は、基板110と協働して光起電力素子100のハウジングを形成するように構成された、バック支持体196を含み得る。バック支持体196は、光起電力素子100の反対面102に配置することができる。例えば、バック支持体196は、導電性層190に隣接して形成され得る。バック支持体196は、例えば、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)を含む、任意の好適な材料を含み得る。
【0025】
[0029]
図1および3をまとめて参照すると、光起電力素子100、200の製造は、一般に、限定されるものではないが、スパッタリング、噴霧、蒸発、分子線蒸着(molecular beam deposition)、熱分解、近接昇華(closed space sublimation)(CSS)、パルスレーザ堆積(PLD)、化学蒸着(CVD)、電気化学堆積(ECD)、原子層堆積(ALD)、または蒸気輸送堆積(VTD)を含む、1つまたは複数のプロセスを通して、機能的な層または層前駆体を、層の「積層体」に順次配置するステップを含む。いったん、層が形成されると、次の処理プロセスを通して、層の物理的特性を変更することが望ましい可能性がある。
【0026】
[0030]
図4および5をまとめて参照すると、部分的に形成された素子の層は処理され得る。いくつかの実施形態では、部分的に形成された光起電力素子202は、層積層体204に隣接する吸収体層160を含むことができる。層積層体204は、吸収体層160とエネルギー面102の間に配置された、光起電力素子100および200(
図1および3)の層の1つまたは複数を含み得る。あるいは、部分的に形成された光起電力素子206は、層積層体208に隣接する吸収体層160を含み得る。層積層体208は、光起電力素子100、200(
図1および3)の層の1つまたは複数を、吸収体層160と反対面104の間に含み得る。
【0027】
[0031]ここで
図6を参照すると、アルカリおよび還元雰囲気熱処理(ARHT)を実施する方法210が描かれている。ARHTは、化合物および還元雰囲気を用いるアニーリングプロセスである。いくつかの実施形態では、吸収体層160は、ARHTに供される前に、第V族ドーパントでドープされ得る。ARHTは、吸収体層160内のドーパントを活性化するために使用され得る。本明細書で非常に詳細に説明されるように、ARHTは、吸収体層160内での十分な粒子成長を提供しながら、他の熱処理プロセスより多くのドーパントを活性化し、より大きなキャリア濃度を発生させることができる。
【0028】
[0032]
図4、5および6をまとめて参照すると、ARHTを実施する方法200は、吸収体層160を還元環境220に曝露するプロセス212を含むことができる。吸収体層160の第1の表面162または第2の表面164は、還元環境220に供され得る。還元環境220は、酸素および他の酸化性ガスまたは蒸気の除去によって、酸化が軽減される、すなわち、還元環境は、第V族ドーパントを酸化させる傾向がある物質が実質的にあり得ない、雰囲気の状態である。さらに、還元環境220は、第V族酸化物の形成を軽減するように構成されたフォーミングガスを含むことができる。フォーミングガスは、酸化に関して第V族ドーパントよりエネルギー的に有利であり得る、すなわち、ARHT中のフォーミングガスの酸化反応は、第V族ドーパントよりマイナスのギブス自由エネルギー変化(ΔG)を有し得る。
【0029】
[0033]いくつかの実施形態では、フォーミングガスは、水素、窒素、またはこれらの組み合わせを含むことができる。一実施形態では、フォーミングガスは、H2とN2の混合物から本質的になる。例えば、フォーミングガスは、約50.0~99.4%のN2と約0.6~3.0%のH2の混合物を含むことができる。あるいは、フォーミングガスは、0.5~100%の範囲の原子分率でH2を含むことができる。したがって、還元環境220は、100%のH2から本質的になるフォーミングガスを含むことができる。他の好適な還元剤としては、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、硫化水素(H2S)、およびアンモニア化合物(NH3)を挙げることができる。いくつかの実施形態では、還元環境220は、第V族ドーパントを酸化させる傾向がある物質の、還元環境220内への混入を実質的に防ぐように構成された、処理チャンバー222の内に提供され得る。したがって、いくつかの実施形態では、還元環境220は、本質的にフォーミングガスからなることができる。あるいはまたはさらに、処理チャンバー222は、部分的真空圧力を維持するように構成され得る。したがって、還元環境220は、約26.7kPa(200Torr)~約106.7kPa(800Torr)の範囲、例えば、約0.4kPa(3Torr)~約6.67kPa(50Torr)の範囲などの真空圧力で提供され得る。
【0030】
[0034]ARHTを実施する方法200は、吸収体層160をアニーリング化合物224と接触させるプロセス214を含み得る。いくつかの実施形態では、アニーリング化合物224は、吸収体層160の第1の表面162または第2の表面164へ溶液として塗布され得る。例えば、アニーリング化合物224は、吸収体層160上に、噴霧、スピンコート、ロールコートされ得る。あるいはまたはさらに、アニーリング化合物224は、処理チャンバー222に蒸気として供給され得る。アニーリング化合物224は、塩化カドミウム(CdCl2)と1つまたは複数のアルカリ金属塩化物の組み合わせを含む。アルカリ金属塩化物は、アルカリ金属、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、およびフランシウム(Fr)などから形成され得る。好適なアルカリ金属塩化物としては、限定されるものではないが、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、またはこれらの組み合わせが挙げられる。アニーリング化合物224の組成は、カドミウム対アルカリ金属の所望の比率が維持されるように制御される。一般に、アニーリング化合物224は、原子比率によって測定されて、アルカリ金属よりはるかに多くのカドミウムを含む。例えば、アルカリ金属対カドミウムの望ましい比率は、約10,000百万分率(ppm)未満、例えば、一実施形態では約500ppm~約6,000ppmの間、別の実施形態では約750ppm~約4,500ppmの間、またはさらなる実施形態では約1,000ppm~約3,000ppmの間などである。
【0031】
[0035]ARHTを実施する方法200は、吸収体層160を還元環境220でアニールするプロセス216を含み得る。一般に、アニーリングは、吸収体層160の再結晶化を促進するのに十分な時間および十分な温度にわたって、吸収体層160(例えば、多結晶半導体材料)を加熱することを含む。例えば、吸収体層160は、約350℃~約500℃の間の温度で約5分~約60分の間、例えば、一実施形態では、約400℃~約500℃の範囲の温度で約10分~約55分の期間、または別の実施形態では、約400℃~約450℃の範囲の温度で、約15分~約50分の期間など、処理され得る。
図6で、プロセス212、プロセス214、およびプロセス216は、逐次的な様式で描かれ得るが、本明細書で提供される実施形態は、プロセス212、プロセス214、およびプロセス216の任意の特定の順序に限定されないことに留意されたい。いくつかの実施形態では、吸収体層160の表面は、還元環境220にある間で、アニーリング中に、最初にアニーリング化合物224と接触され得る。他の実施形態では、吸収体層160の表面は、アニーリング化合物224と接触され、続いて還元環境220に置かれ、アニールされ得る。いくつかの実施形態では、プロセス212、プロセス214、およびプロセス216のそれぞれは、同時に実施され得る、すなわち、還元環境220でのアニーリングの少なくとも一部にわたって、アニーリング化合物224は吸収体層160と接したままであり得る。
【0032】
[0036]多結晶半導体から形成され得る、吸収体層160の再結晶化に加えて、ARHTは、吸収体層160での粒子成長をもたらすことができる。そのうえ、アニーリング化合物224の成分(例えば、アルカリ金属、塩素、または両方)は、吸収体層160の中へ拡散し、吸収体層中に存在する第V族ドーパントの活性化に影響を与えることができる。本明細書で非常に詳細に説明するように、アニーリング化合物224の成分の層積層体204、206の他の層の中への拡散は、全体的な素子効率に影響を与え得る。
【0033】
[0037]
図1および3を再度参照すると、ARHTの後に、吸収体層160は、例えばCHTなどの、以前に公知のプロセスと比較して、比較的高いキャリア濃度を含み得る。CHTに供されたCuドープCdTe吸収体素子の場合、公称のキャリア濃度は、多くの場合約1×10
15cm
-3未満であり得る。対照的に、本開示の吸収体層160、例えば、第V族ドーパントを備え、カドミウムおよびテルル、またはカドミウム、セレンおよびテルルを含む吸収体層160などは、約4×10
15cm
-3より大きい吸収体層160でのキャリア濃度を達成する。いくつかの実施形態では、吸収体層160のキャリア濃度は、約8×10
15cm
-3より大きく、例えば、一実施形態では約1×10
16cm
-3より大きく、または別の実施形態では、約8×10
15cm
-3~6×10
16cm
-3の間などである。
【0034】
[0038]上で留意したように、酸素の存在を低減するために、ARHTは還元環境220で実施される。しかしながら、いくつかの実施形態では、酸素は吸収体層160の中央領域166の中へ拡散することができる。こうした実施形態では、吸収体層160の中央領域166は、アルカリ対酸素の比率、すなわち、測定深さでのアルカリ金属の原子濃度対酸素の原子濃度の比率を望ましい範囲で有し得る。アルカリ対酸素の比率は、吸収体層160の中央領域166で少なくとも0.1、例えば、一実施形態では、少なくとも0.75のアルカリ対酸素の比率、別の実施形態では、少なくとも5のアルカリ対酸素の比率、さらなる実施形態では、約10~約1,000の間のアルカリ対酸素の比率、またはなお別の実施形態では、約10~約100の間のアルカリ対酸素の比率などであり得る。
【0035】
[0039]本明細書で提供される実施形態によれば、吸収体層でのアルカリ金属の原子濃度は、約1×1016cm-3より大きくあり得る。いくつかの実施形態では、吸収体層160でのアルカリ金属の原子濃度は、約2×1016cm-3より大きい、例えば、一実施形態では、約1×1017cm-3より大きい、または別の実施形態では、約5×1016cm-3~約1×1019cm-3の間などである。アルカリ金属は、光起電力素子100、200の他の層の中へさらに拡散することができる。いくつかの実施形態では、アルカリ金属はTCO層140の中へ拡散することができる。一般に、TCO層140でのアルカリ金属の原子濃度は、吸収体層160でのアルカリ金属の原子濃度より大きい。
【0036】
[0040]出願者は、アルカリ金属の過度の濃度は、TCO層140のシート抵抗の劣化に関係することを発見した。したがって、TCO層140と吸収体層160の間のアルカリ金属の比率、すなわち、TCO層140でのアルカリ金属の原子濃度対吸収体層160でのアルカリ金属の原子濃度の比率は、制御され得る。いくつかの実施形態では、TCO層140と吸収体層160の間のアルカリ金属の比率は、約1,000未満、例えば、一実施形態では、約500未満、または別の実施形態では、約100未満などであり得る。出願者は、カリウム(K)およびルビジウム(Rb)が、他のアルカリ金属と比較して、シート抵抗に関して改善された性能を示すことをさらに発見した。実際、カリウム(K)およびルビジウム(Rb)の存在は、アルカリ金属を伴わない塩化カドミウム系アニーリング化合物と比較して、改善された性能を示した。したがって、いくつかの実施形態では、アルカリ金属は、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、または両方からなることが可能である。
【0037】
【0038】
[0041]上の表1を参照すると、表1のアニーリング化合物の列は、アニーリング化合物中の塩化カドミウムおよびアルカリ金属塩化物の存在を要約している。アルカリ濃度の列は、アニーリング化合物中のアルカリ金属対カドミウムの原子比率を百万分率で要約している。比較例および実施例1~7のそれぞれは、表1のアニーリング化合物およびアルカリ濃度の列で要約されている違いを備えて、類似のアニーリング化合物で処理された。したがって、実施例1~7は、本明細書に記載されるARHTプロセスによって処理された。比較例1は、CHTが還元雰囲気で実施された以外は、CHTプロセスと類似していると考えることができる。効率の列は、吸収体層が表1に要約されるように処理され、素子に統合された後の、光起電力素子の測定された効率を要約している。化合物の吸収体層は実質的に類似し、カドミウムおよびテルルからなるものであった。各吸収体層は、約1×1018cm-3のヒ素(As)がドープされ、それは動的二次イオン質量分析(SIMS)を使用して確認された。キャリア濃度の列は、表1に要約されるように処理され、素子に統合された後の、吸収体層のキャリア濃度を要約している。キャリア濃度の数値は、キャパシタンス-電圧(C-V)測定から導き出された。
【0039】
[0042]上の表1に要約するように、実施例1~7のそれぞれは、比較例1と比較して、効率およびキャリア濃度の改善を示した。さらに、カリウム(K)を含む実施例3~4は、リチウム(Li)を含む実施例1および2と比較して、改善された効率およびキャリア濃度を示した。同様に、ルビジウム(Rb)を含む実施例6~7は、実施例1および2と比較して、改善された効率およびキャリア濃度を示した。
【0040】
[0043]本明細書で提供される実施形態が、第V族ドーピング活性化を増強するARHT法に関することを、ここで理解すべきである。本明細書に記載されるARHT法を使用して形成された光起電力素子は、比較的高いキャリア濃度を示した。したがって、本明細書で提供される実施形態は、カドミウムおよびテルルを含む吸収体層を有する、光起電力素子に付随するいくつかの課題を解決する。こうした素子は、高いp型キャリア濃度を達成しようと苦闘するおそれがある。CuドープCdTe系素子の場合、公称のキャリア濃度は3×1015cm-3未満であり得、これは不十分な素子性能(例えば、効率)をもたらす。
【0041】
[0044]そのうえ、本明細書に記載されるARHT法は、吸収体層中に十分な粒子成長を有する素子をもたらす。例えば、例えばCHTのような以前に公知のプロセスは、還元環境で実施される場合、十分な粒子成長がない。理論に束縛されるものではないが、酸素の欠如に起因して、以前に公知のプロセスは、吸収体層に小さな粒子および不十分なキャリア濃度安定性をもたらすと考えられる。本明細書に記載されるARHT法は、望ましい粒子成長をもたらす。
【0042】
[0045]本明細書で提供される実施形態によれば、光起電力素子は吸収体層を含み得る。吸収体層は、カドミウム、テルル、およびセレンを含み得る。吸収体層は第V族ドーパントがドープされたp型であり得、4×1015cm-3より大きい第V族ドーパントのキャリア濃度を有し得る。吸収体層は、吸収体層の中央領域に酸素を含むことができる。吸収体層は、吸収体層の中央領域にアルカリ金属を含み得る。アルカリ金属の原子濃度対酸素の原子濃度の比率は、吸収体層の中央領域で少なくとも0.1であり得る。
【0043】
[0046]複数の実施形態によれば、キャリア活性化の方法は、吸収体層を還元環境に曝露することを含み得る。吸収体層はカドミウム、テルル、セレン、および第V族ドーパントを含むことができる。キャリア活性化の方法は、吸収体層をアニーリング化合物と接触させることを含み得る。アニーリング化合物は、塩化カドミウムおよびアルカリ金属塩化物を含み得る。アルカリ金属塩化物は、アルカリ金属から形成され得る。アニーリング化合物中のアルカリ金属対カドミウムの原子比率は、10,000百万分率未満であり得る。キャリア活性化の方法は、吸収体層をアニールすることを含み得、それによって第V族ドーパントの少なくとも一部は活性化される。吸収体層がアニールされた後、吸収体層は、4×1015cm-3より大きい第V族ドーパントのキャリア濃度を有し得る。
【0044】
[0047]「実質的に」および「約」という用語は、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に起因し得る、不確実性の固有の度合を表すために、本明細書で利用され得ることに留意されたい。これらの用語はまた、課題の主題の基本機能に変化をもたらすことなく、明示された基準から定量的表現が変動し得る度合を表すためにも、本明細書で利用される。
【0045】
[0048]本明細書で特定の実施形態が説明され、記載されてきたが、権利を主張する主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な他の変化および変更が行なわれ得ることを理解すべきである。そのうえ、権利を主張する主題の様々な態様が本明細書に記載されてきたが、こうした態様は組み合わせて利用される必要はない。したがって、添付された特許請求の範囲が、権利を主張する主題の範囲内にある、こうした変化および変更をすべて包含することを意図している。
[発明の態様]
[1]
吸収体層を含む光起電力素子であって、
該吸収体層がカドミウム、テルル、およびセレンを含み、
該吸収体層が、第V族ドーパントがドープされたp型であり、4×10
15
cm
-3
より大きい第V族ドーパントのキャリア濃度を有し、
該吸収体層が該吸収体層の中央領域に酸素を含み、
該吸収体層が該吸収体層の該中央領域にアルカリ金属を含み、
該アルカリ金属の原子濃度対該酸素の原子濃度の比率が、該吸収体層の該中央領域で少なくとも0.1である、
光起電力素子。
[2]
該アルカリ金属がカリウムである、1に記載の光起電力素子。
[3]
該アルカリ金属がルビジウムである、1に記載の光起電力素子。
[4]
該第V族ドーパントのキャリア濃度が、8×10
15
cm
-3
~6×10
16
cm
-3
の間である、1に記載の光起電力素子。
[5]
該吸収体層の該中央領域での第V族ドーパントの原子濃度が、1×10
17
cm
-3
より大きい、4に記載の光起電力素子。
[6]
該吸収体層と該光起電力素子のエネルギー面の間に配置された、透明な導電性酸化物層を含み、該透明な導電性酸化物層がアルカリ金属を含む、1に記載の光起電力素子。
[7]
該透明な導電性酸化物層におけるアルカリ金属の原子濃度が、該吸収体層の該中央領域での該アルカリ金属の原子濃度より大きい、6に記載の光起電力素子。
[8]
該透明な導電性酸化物層における該アルカリ金属の原子濃度対、吸収体層の中央領域でのアルカリ金属の原子濃度のアルカリ金属比率が、1,000未満である、7に記載の光起電力素子。
[9]
キャリア活性化の方法であって、
吸収体層を還元環境に曝露するステップ、ここで吸収体層が、カドミウム、テルル、セレン、および第V族ドーパントを含む、
吸収体層をアニーリング化合物と接触させるステップ、ここで
アニーリング化合物が塩化カドミウムおよびアルカリ金属塩化物を含み、
アルカリ金属塩化物がアルカリ金属から形成され、そして
アニーリング化合物中のアルカリ金属対カドミウムの原子比率が、10,000ppm未満である、ならびに
吸収体層をアニールするステップ、ここで第V族ドーパントの少なくとも一部が活性化され、吸収体層がアニールされた後、吸収体層は4×10
15
cm
-3
より大きい第V族ドーパントのキャリア濃度を有する、
を含む、方法。
[10]
還元環境が、第V族酸化物の形成を軽減するように構成されたフォーミングガスを含み、フォーミングガスが、水素、窒素、またはこれらの組み合わせを含む、9に記載の方法。
[11]
還元環境が、26.7kPa(200Torr)~106.7kPa(800Torr)の間の真空圧力にある、9に記載の方法。
[12]
吸収体層が350℃~500℃の間の温度で5分~60分の間アニールされる、9に記載の方法。
[13]
アルカリ金属塩化物が、LiCl、KCl、RbCl、またはこれらの組み合わせを含む、9に記載の方法。
[14]
アニーリング化合物中のアルカリ金属対カドミウムの原子比率が、500ppm~6,000ppmの間である、9に記載の方法。
[15]
アルカリ金属がカリウムである、14に記載の方法。
[16]
アルカリ金属がルビジウムである、14に記載の方法。
[17]
吸収体層がアニールされた後、吸収体層が、8×10
15
cm
-3
~6×10
16
cm
-3
の間の第V族ドーパントのキャリア濃度を有する、9に記載の方法。
[18]
吸収体層での第V族ドーパントの原子濃度が1×10
17
cm
-3
より大きい、17に記載の方法。
[19]
第V族ドーパントのキャリア濃度が8×10
15
cm
-3
~6×10
16
cm
-3
の間である、1~3のいずれかに記載の光起電力素子。
[20]
吸収体層の中央領域での第V族の原子濃度が1×10
17
cm
-3
より大きい、1~3および19のいずれかに記載の光起電力素子。
[21]
吸収体層と光起電力素子のエネルギー面の間に配置された透明な導電性酸化物層を含み、透明な導電性酸化物層がアルカリ金属を含む、1~3、19および20のいずれかに記載の光起電力素子。
[22]
透明な導電性酸化物層でのアルカリ金属の原子濃度が、吸収体層の中央領域でのアルカリ金属の原子濃度より大きい、21に記載の光起電力素子。
[23]
透明な導電性酸化物層でのアルカリ金属の原子濃度対、吸収体層の中央領域でのアルカリ金属の原子濃度のアルカリ金属比率が、1,000未満である、22に記載の光起電力素子。
[24]
還元環境が26.7kPa(200Torr)~106.7kPa(800Torr)の間の真空圧力にある、9または10に記載の方法。
[25]
吸収体層が、350℃~500℃の間の温度で5分~60分の間アニールされる、9,10および24のいずれかに記載の方法。
[26]
アルカリ金属塩化物が、LiCl、KCl、RbCl、またはこれらの組み合わせを含む、9~10、24~25のいずれかに記載の方法。
[27]
アニーリング化合物中のアルカリ金属対カドミウムの原子比率が、500ppm~6,000ppmの間である、9~10および24~26のいずれかに記載の方法。
[28]
アルカリ金属がカリウムである、9~10および24~27のいずれかに記載の方法。
[29]
アルカリ金属がルビジウムである、9~10および24~27のいずれかに記載の方法。
[30]
吸収体層がアニールされた後、吸収体層が8×10
15
cm
-3
~6×10
16
cm
-3
の間の第V族ドーパントのキャリア濃度を有する、9~10および24~29のいずれかに記載の方法。
[31]
吸収体層での第V族の原子濃度が1×10
17
cm
-3
より大きい、9~10および24~30のいずれかに記載の方法。
[32]
第V族ドーパントのキャリア濃度が8×10
15
cm
-3
~6×10
16
cm
-3
の間である、31に記載の方法。