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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20220325BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G06F1/20 D
G06F1/20 B
H05K7/20 H
H05K7/20 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021004526
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚喜
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0135654(US,A1)
【文献】国際公開第2009/098767(WO,A1)
【文献】特開2020-037936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0227019(US,A1)
【文献】国際公開第2020/217819(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0292261(US,A1)
【文献】特開平07-332284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
インペラ部と、該インペラ部を回転させるモータ部と、外面に空気取込口及び空気吐出口が開口形成され、内部に空気通路が設けられたファン筐体と、を有し、前記筐体内に搭載されたファン装置と、
前記ファン筐体に設けられた第1の空洞部と、該第1の空洞部と前記空気通路との間を連通する第1の連通路と、を有する第1のレゾネータと、
前記ファン筐体に設けられた第2の空洞部と、該第2の空洞部と前記空気通路との間を連通する第2の連通路と、を有する第2のレゾネータと、
前記筐体内での検出温度に基づいて、少なくとも第1及び第2の回転数のうちから一方の回転数を選択し、該選択した一方の回転数で前記モータ部を駆動制御する制御部と、
を備え、
前記第1のレゾネータは、前記インペラ部が前記第1の回転数で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成され、
前記第2のレゾネータは、前記インペラ部が前記第2の回転数で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成されており、
前記ファン筐体は、
前記インペラ部の回転軸の軸方向で一方側に設けられた第1カバー板と、
前記回転軸の軸方向で他方側に設けられた第2カバー板と、
前記第1カバー板と前記第2カバー板との間で起立した側壁部材と、
を有し、
前記側壁部材は、
前記インペラ部を囲むように円弧状に形成された円弧状板部と、
前記空気通路での空気の流通方向で前記円弧状板部の下流側に設けられた下流側壁部と、
前記空気通路での空気の流通方向で前記円弧状板部の上流側に設けられ、前記下流側壁部との間に前記空気吐出口を形成する上流側壁部と、
を有し、
前記空気取込口は、前記第1カバー板及び前記第2カバー板の少なくとも一方に形成され、
前記空気吐出口は、前記下流側壁部と前記上流側壁部との間の間隙に形成され、
前記第1の連通路及び前記第2の連通路は、前記上流側壁部に形成されており、
前記上流側壁部は、
前記インペラ部の外形に沿うように円弧状に形成された第1壁部と、
前記インペラ部から離間する方向へと前記第1壁部から折れ曲がるように設けられ、前記空気吐出口の一壁面を形成する第2壁部と、
を有し、
前記第1の連通路及び前記第2の連通路は、前記第2壁部に形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PC等のような電子機器は、筐体の内部にCPU等の電子部品から発せられた熱を外部に排気するためのファン装置を搭載した構成がある。ファン装置は、特定の周波数成分に突出したノイズレベルが現れる離散周波数音(DTN:Discrete Tone Noise)が発生する場合がある。そこで、ファン筐体内の空気通路にレゾネータを接続し、ファン装置の離散周波数音を低減することが行われている(例えば特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0135654号明細書
【文献】特開2011-149380号公報
【文献】中国特許出願公開第103835999号明細書
【文献】中国特許出願公開第105526193号明細書
【文献】特開2017-118018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなファン装置は、電子機器の筐体内の各部の検出温度により、複数の回転数で駆動制御される場合がある。これにより、例えば筐体内の温度が上昇した場合はファン装置の回転数を増大させて冷却能力を向上させることができる。また、例えば筐体内の温度が低下した場合はファン装置の回転数を低減させてノイズを低減させることができる。
【0005】
他方、ファン装置が複数の回転数で駆動制御される構成では、各回転数でノイズのピーク周波数が異なる。このため、上記従来技術のレゾネータでは、選択された回転数によってはノイズの低減効果が限定的となり、回転数によってファン装置が大きな騒音を発生する懸念がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ファン装置のノイズを低減することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、筐体と、インペラ部と、該インペラ部を回転させるモータ部と、外面に空気取込口及び空気吐出口が開口形成され、内部に空気通路が設けられたファン筐体と、を有し、前記筐体内に搭載されたファン装置と、前記ファン筐体に設けられた第1の空洞部と、該第1の空洞部と前記空気通路との間を連通する第1の連通路と、を有する第1のレゾネータと、前記ファン筐体に設けられた第2の空洞部と、該第2の空洞部と前記空気通路との間を連通する第2の連通路と、を有する第2のレゾネータと、前記筐体内での検出温度に基づいて、少なくとも第1及び第2の回転数のうちから一方の回転数を選択し、該選択した一方の回転数で前記モータ部を駆動制御する制御部と、を備え、前記第1のレゾネータは、前記インペラ部が前記第1の回転数で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成され、前記第2のレゾネータは、前記インペラ部が前記第2の回転数で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、ファン装置のノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るファン装置を備えた電子機器の平面図である。
図2図2は、筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
図3図3は、ファン装置の斜視図である。
図4図4は、ファン装置の平面断面図である。
図5A図5Aは、ファン装置が第1の回転数で駆動されている場合のノイズの大きさ及び周波数と、レゾネータによるノイズ低減効果とを示すグラフである。
図5B図5Bは、ファン装置が第2の回転数で駆動されている場合のノイズの大きさ及び周波数と、レゾネータによるノイズ低減効果とを示すグラフである。
図6図6は、変形例に係るファン装置の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るファン装置10を備えた電子機器12の平面図である。本実施形態では、ノート型PCである電子機器12を例示するが、電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、デスクトップ型PC、ゲーム機等でもよい。
【0012】
図1に示すように、電子機器12は、キーボード装置13を搭載した筐体14と、ディスプレイ16を搭載したディスプレイ筐体18とを備える。ディスプレイ筐体18は、筐体14の後端部に対して左右一対のヒンジ20,20を介して回動可能に連結されている。ディスプレイ筐体18は、ヒンジ20を通過した図示しない配線によって筐体14と電気的に接続されている。ディスプレイ16は、例えば液晶ディスプレイである。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、図1に示すように開いた状態のディスプレイ16を正面から視認する方向を基準とし、手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明することもある。
【0014】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す底面図である。図2は、筐体14の底板を取り外し、筐体14内を下から見た図であり、ファン装置10のみを底面断面図で図示している。図2は、筐体14内での制御系統を示すブロック図も併せて図示している。
【0015】
図2に示すように、筐体14の内部には、マザーボード22と、熱拡散プレート24と、ヒートパイプ26と、ファン装置10とが収容されている。
【0016】
マザーボード22は、CPU(Central Processing Unit)28の他、グラフィックチップ、メモリ、通信モジュール等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。CPU28は、電子機器12の主たる制御や処理に関する演算を行う中央処理装置である。
【0017】
本実施形態のCPU28は、ファン装置10の駆動を制御する制御部28Aの機能を含む。図2では、制御部28AはCPU28との間に実線で示す信号線で接続したように図示しているが、実際の制御部28AはCPU28にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現されるとよい。制御部28Aは、CPU28とは別のIC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0018】
熱拡散プレート24は、マザーボード22のCPU28等の実装面と対向配置され、実装面の大部分を覆うプレート状部材である。熱拡散プレート24は、例えば銅やアルミニウム等の導電性を有し、且つ高い熱伝導率を有する金属板で形成されている。熱拡散プレート24は、マザーボード22に実装されたCPU28等の電子部品発生する熱を吸熱し、この熱を面内方向に拡散するヒートスプレッダである。
【0019】
ヒートパイプ26は、例えば両端部を接合して内側に密閉空間を形成した金属管を潰した構成であり、その密閉空間内に封入した作動流体の相変化を利用して熱を高効率に輸送可能な熱輸送装置である。ヒートパイプ26の第1端部26aは、銅やアルミニウム等で形成された受熱板30を介してCPU28の頂面と熱伝達可能に接続される。つまりCPU28は、その頂面上に順に、受熱板30、ヒートパイプ26、熱拡散プレート24が積層される。ヒートパイプ26の第2端部26bは、ファン装置10の空気吐出口32を横切るように設けられた冷却フィン34と接合される。受熱板30は、3方に突出した板ばね30aによってCPU28に押し付けられている。
【0020】
図3は、ファン装置10の斜視図である。図4は、ファン装置10の平面断面図である。
【0021】
図2図4に示すように、ファン装置10は、ファン筐体36と、モータ部38と、回転軸40と、インペラ部42と、レゾネータ44,45とを有する。ファン装置10は、回転軸40の外周面に設けたインペラ部42をモータ部38によって回転させる遠心ファンである。レゾネータ44,45は、ファン装置10のノイズを低減するためのものである。
【0022】
先ず、ファン装置10の基本的な構成を説明する。ファン筐体36は、モータ部38、回転軸40及びインペラ部42を収納する。ファン筐体36は、回転軸40の軸方向で一方側に設けられた第1カバー板46と、回転軸40の軸方向で他方側に設けられた第2カバー板47と、第1カバー板46と第2カバー板47との間で起立した側壁部材48とを有する。ファン筐体36は、外面に空気吐出口32及び空気取込口50a,50bが形成され、内部に空気通路52が形成されている。
【0023】
第1カバー板46及び第2カバー板47は、一側面が円弧状に形成され、他の3側面が略直線状に形成された薄板である。側壁部材48は、第1カバー板46及び第2カバー板47の外形に沿って延在した上下方向の壁板であり、空気吐出口32を除いて第1カバー板46と第2カバー板47との間を塞いでいる。
【0024】
側壁部材48は、円弧状板部48aと、下流側壁部48bと、上流側壁部48cとで構成されている。円弧状板部48aは、インペラ部42の外周を囲むように湾曲している。下流側壁部48bは、空気通路52での空気の流通方向で円弧状板部48aの下流側(吐出側)に設けられている。上流側壁部48cは、空気通路52での空気の流通方向で円弧状板部48aの上流側に設けられている。上流側壁部48cは、ファン筐体36の外壁を構成する外壁板54から空気通路52内に張り出すように設けられたブロック部58に形成されている。上流側壁部48cは、空気吐出口32に近接した空気通路52の上流側部分の流路幅を狭めている。外壁板54は、円弧状板部48aの端部から略左右方向に沿って延在している。
【0025】
上流側壁部48cは、第1壁部56aと、第2壁部56bとで構成されている。第1壁部56aは、円弧状の壁部である。第1壁部56aは、インペラ部42の外形に沿うように、円弧状板部48aと同様な曲率で湾曲している。第2壁部56bは、第1壁部56aの上流側端部から外壁板54側、つまりインペラ部42から離間する方向へと折れ曲がるように設けられている。第2壁部56bは、空気吐出口32の一壁面を形成している。第2壁部56bは、空気通路52の最上流部分の通路幅を絞り、インペラ部42による空気の加圧を開始させる部分である。
【0026】
空気吐出口32は、上流側壁部48cの第2壁部56bと下流側壁部48bとの間の間隙に形成されている。空気吐出口32は、2か所以上に設けられてもよい。空気取込口50aは、第1カバー板46の中心に形成された円形の開口部であり、で回転軸40及びインペラ部42の基端側部分を露出させている。空気取込口50bは、円弧状の長孔であり、第2カバー板47の回転軸40に近接した中心付近に形成されている。空気取込口50a,50bは、インペラ部42の回転によって外部の空気を空気通路52へと取り込むものである。空気取込口50a,50bは、いずれか一方のみを設けてもよい。
【0027】
空気通路52は、インペラ部42の回転によって空気取込口50a,50bからファン筐体36内に取り込まれた空気を空気吐出口32まで流通させるダクトである。空気通路52は、第1カバー板46、第2カバー板47、側壁部材48及び回転軸40で囲まれた部分に形成されている。つまり、第1カバー板46、第2カバー板47、側壁部材48(及び回転軸40)が空気通路52を形成する壁部である。空気通路52は、インペラ部42の回転によって空気を送風可能な一巻きの渦巻き形状を成した流路である。
【0028】
図2に示すように、ファン装置10は、制御部28Aによって駆動制御される。制御部28Aは、複数の温度センサT1,T2で得られる筐体14内の各部の温度の測定結果に基づき、モータ部38を駆動制御し、これによりインペラ部42の回転数を制御する。温度センサT1は、例えばCPU28付近での筐体14の温度を検出する。温度センサT2は、例えば冷却フィン34付近での筐体14の温度を検出する。
【0029】
表1は、温度センサT1,T2による検出温度(℃)と、ファン装置10の回転数(rpm)との関係を例示する表である。表1に示す表データは、例えば制御部28Aに内蔵されたメモリ或いは別のメモリに記憶されている。表1に示すように、制御部28Aは、例えば温度センサT1,T2の検出温度に基づき、モータ部38を2つの回転数から選択した一方の回転数で制御する。
【0030】
制御部28Aは、例えば温度センサT1の検出温度が50(℃)以上であるか、又は温度センサT2の検出温度が60(℃)以上である場合に、モータ部38を5000(rpm)で駆動制御する。また制御部28Aは、例えば温度センサT1の検出温度が30(℃)から50(℃)の範囲にあるか、又は温度センサT2の検出温度が40(℃)から60(℃)の範囲にある場合に、モータ部38を3500(rpm)で駆動制御する。さらに制御部28Aは、例えば温度センサT1の検出温度が30(℃)未満であるか、又は温度センサT2の検出温度が40(℃)未満である場合に、ファン装置10を停止する。
【0031】
なお、制御部28Aは、温度センサT1及び温度センサT2のいずれもが表1の閾値を満たした際に、回転数を所定の回転数に設定するように制御としてもよい。すなわち制御部28Aは、例えば温度センサT1の検出温度が50(℃)以上であり、且つ温度センサT2の検出温度が60(℃)以上である場合に、モータ部38を5000(rpm)で駆動制御するようにしてもよい。
【0032】
表1に示すように、電子機器12は、温度センサT1,T2以外の温度センサを搭載していてもよい。すなわち表1に示すように、電子機器12は、1又は2以上の温度センサTnをさらに用いてファン装置10を駆動制御してもよい。また、例えばファン装置10は2つの回転数ではなく、3以上の回転数、例えば5000、4500、3500(rpm)のいずれかで選択的に駆動制御されてもよい。
【0033】
【表1】
【0034】
次に、レゾネータ44,45の構成を説明する。図4に示すように、レゾネータ44,45は、ファン筐体36の側壁部材48に形成されている。具体的には、レゾネータ44,45は、上流側壁部48cと外壁板54との間に設けられた樹脂製のブロック部58に形成されている。
【0035】
一方のレゾネータ44は、上流側壁部48cの第2壁部56bを貫通する連通路44aと、連通路44aを介して空気通路52と連通した空洞部44bとを有する。連通路44aは、第1壁部56aから第2壁部56bへの屈曲点と、空気吐出口32との間となる位置で第2壁部56bに設けられた孔部である。空洞部44bは、所定の容積を有する空間であり、連通路44aのみで外部と連通している。
【0036】
他方のレゾネータ45は、上流側壁部48cの第2壁部56bを貫通する連通路45aと、連通路45aを介して空気通路52と連通した空洞部45bとを有する。レゾネータ45は、レゾネータ44と隣接している。連通路45aは、第1壁部56aから第2壁部56bへの屈曲点と、レゾネータ44の連通路44aとの間となる位置で第2壁部56bに設けられた孔部である。空洞部45bは、所定の容積を有する空間であり、連通路45aのみで外部と連通している。
【0037】
レゾネータ44,45は、ファン筐体36の上下方向厚み、つまり第1カバー板46と第2カバー板47との間の間隔の範囲内に収まる形状を有する。レゾネータ44,45は、側壁部材48の上流側壁部48c以外の位置に配置してもよい。
【0038】
このようなレゾネータ44,45は、ヘルムホルツの共鳴原理を応用して連通路44a,45aで生じる空気の摩擦で音を吸収し、所定周波数成分を低減させる消音器であり、ファン装置10のノイズを低減するものである。本実施形態の場合、レゾネータ44は、ファン装置10が回転数3500(rpm)(以下、「低回転数」とも呼ぶ)で駆動されている場合のノイズのピーク周波数を低減するために最適化されている。レゾネータ45は、ファン装置10が回転数5000(rpm)(以下、「高回転数」とも呼ぶ)で駆動されている場合のノイズのピーク周波数を低減するために最適化されている。
【0039】
一般的にヘルムホルツの共鳴原理を利用したレゾネータ44,45の固有振動数(共鳴周波数)ω0は、音速をC(m/s)、連通路44a,45aの断面積をS(m)、空洞部44b,45bの容積をV(m)、連通路44a,45aの長さをL(m)と称すると、次式(1)によって求められる。
【0040】
ω0=C×√(S/(V×L))・・・(1)
【0041】
そこで、レゾネータ44,45は、例えばファン装置10が各回転数(低回転数、高回転数)でそれぞれ駆動されているときのノイズの周波数を実験による測定又はシミュレーションで取得し、それぞれのピーク周波数を低減するための寸法を上記式(1)で算出して各寸法を設計するとよい。
【0042】
図5Aは、ファン装置10が低回転数で駆動されている場合のノイズの大きさ及び周波数と、レゾネータ44によるノイズ低減効果とを示すグラフである。図5Bは、ファン装置10が高回転数で駆動されている場合のノイズの大きさ及び周波数と、レゾネータ45によるノイズ低減効果とを示すグラフである。図5A及び図5Bは、縦軸がノイズの大きさ(dB/20μPa)、横軸が周波数(Hz)を示している。図5A及び図5Bにおいて、破線のグラフはレゾネータ44,45を有していない構成でのノイズの特性を示し、実線のグラフはレゾネータ44,45を有した構成でのノイズの特性を示している。
【0043】
図5Aに示すように、一方のレゾネータ44は、式(1)の固有振動数ω0が低回転数でのノイズのピーク周波数P1に対応する形状で設計されている。図5Bに示すように、他方のレゾネータ45は、式(1)の固有振動数ω0が高回転数でのノイズのピーク周波数P2に対応する形状で設計されている。その結果、図5A及び図5Bに示すように、ファン装置10は、レゾネータ44,45を有することで、低回転数及び高回転数のいずれでもほとんどの周波数のノイズを低減する効果があり、特にそれぞれのピーク周波数P1,P2のノイズを大幅に低減できる。
【0044】
図6は、変形例に係るファン装置10Aの平面断面図である。
【0045】
図6に示すファン装置10Aは、図4に示すファン装置10と比べて、レゾネータ45の配置が異なる。レゾネータ45は、連通路45aが上流側壁部48cの第1壁部56aに開口している点が図4の構成例と相違する。なお、レゾネータ44は、連通路44aが第2壁部56bに開口しており、図4の構成例と同様である。
【0046】
以上のように、本実施形態の電子機器12は、制御部28Aによって複数の回転数で駆動制御されるファン装置10と、ファン装置10に設けられた複数のレゾネータ44,45とを備える。ここで、一方のレゾネータ44は、ファン装置10が第1の回転数(低回転数)で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成されている。また、他方のレゾネータ45は、ファン装置10が第2の回転数(高回転数)で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成されている。
【0047】
従って、電子機器12は、筐体14内の温度状態に応じて設定されるファン装置10の各回転数でのノイズを各レゾネータ44,45で効果的に低減することができる。つまり電子機器12は、ファン装置10の駆動回転数に関わらず、そのノイズを効率よく低減できる。
【0048】
なお、上記した通り、ファン装置10の駆動回転数は、3以上でもよい。この場合、各回転数で最もノイズが大きな2つの回転数のピーク周波数に適したレゾネータ44,45を設計するとよい。レゾネータは、ファン装置10の駆動回転数と同数設置してもよく、例えば3つ以上設けてもよい。また、レゾネータは、複数が1組で1つの回転数に対応させた構成としてもよい。例えばレゾネータ44を2つ設け、これら2つのレゾネータ44で低回転数のピークノイズを低減する構成としてもよい。さらに例えばレゾネータ44を2つ設け、それぞれが低回転数の2つのピーク周波数(例えば図5A中の5250(Hz)付近、及び5450(Hz)付近)に対応した構成としてもよい。
【0049】
図4に示すファン装置10では、レゾネータ44,45は、空気通路52での空気の流通方向で上流側に設けられた上流側壁部48cの第2壁部56bに面している。このためファン装置10は、インペラ部42によって送り出される空気が直接的に連通路44a,45aに衝突することを抑制できる。その結果、ファン装置10は、連通路44a,45aが送風される空気の障害物となって風量が変動し、或いはこの衝突による騒音を生じることを抑制できる。その結果、ファン装置10は、レゾネータ44,45による消音効果が一層向上し、さらに風量の変動も一層抑制できる。
【0050】
一方、図6に示すファン装置10Aでは、レゾネータ44,45は、一方のレゾネータ45が上流側壁部48cの第1壁部56aに面している。しかしながら、この場合でも、インペラ部42によって送り出される空気が直接的に連通路44aに衝突することで生じる問題は実際上僅かである。このためファン装置10Aは、例えば第2壁部56bに2つの連通路44a,45aを開口させるスペースがないとき等に有効に用いることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10,10A ファン装置
12 電子機器
14 筐体
28A 制御部
36 ファン筐体
38 モータ部
42 インペラ部
44,45 レゾネータ
44a,45a 連通路
44b,45b 空洞部
52 空気通路
【要約】
【課題】ファン装置のノイズを低減することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、ファン装置と、第1のレゾネータと、第2のレゾネータと、筐体内での検出温度に基づいて、第1及び第2の回転数のうちから一方の回転数を選択し、該選択した一方の回転数で前記モータ部を駆動制御する制御部と、を備える。第1のレゾネータは、前記インペラ部が前記第1の回転数で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成され、第2のレゾネータは、前記インペラ部が前記第2の回転数で回転制御されている場合のノイズのピーク周波数を低減するように形成されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6