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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20220325BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28D9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021022497
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 信雄
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 祐志
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-085044(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109668469(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
F28D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが貫通孔を有し且つ所定方向に重ね合わされる複数の伝熱プレートを有する熱交換器本体を備え、
前記熱交換器本体は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートのプレート間のそれぞれに形成され且つ流体が流通可能な複数の流路空間と、各伝熱プレートの前記貫通孔が前記所定方向に連なることで形成される連通路と、を有し、
前記熱交換器本体における前記連通路の周縁部は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートにおける前記貫通孔の孔周縁部同士が前記所定方向に間隔をあけていることで当該二つの孔周縁部の間の空間を通じて前記連通路と該二つの伝熱プレートのプレート間の前記流路空間とを連通させる流出入許容部を有し、
前記流出入許容部において、前記間隔をあけた二つの孔周縁部のうちの少なくとも一方の孔周縁部が相手側の孔周縁部に向けて突出して該相手側の孔周縁部に当接する少なくとも一つの凸部を有し、
前記凸部は、
前記所定方向から見て前記孔周縁部の内周縁に沿って延びると共に中央部が該凸部の突出方向に凸となるように曲がっている板状の先端部と、
前記先端部の各端部と該孔周縁部における該凸部との隣接部位とを接続する基部と、を有し、
前記先端部の内側の空間は、前記連通路と前記流路空間とに連通し
前記先端部の幅方向において、前記基部における前記隣接部位との境界部の寸法は、前記先端部の寸法より大きい、プレート式熱交換器。
【請求項2】
それぞれが貫通孔を有し且つ所定方向に重ね合わされる複数の伝熱プレートを有する熱交換器本体を備え、
前記熱交換器本体は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートのプレート間のそれぞれに形成され且つ流体が流通可能な複数の流路空間と、各伝熱プレートの前記貫通孔が前記所定方向に連なることで形成される連通路と、を有し、
前記熱交換器本体における前記連通路の周縁部は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートにおける前記貫通孔の孔周縁部同士が前記所定方向に間隔をあけていることで当該二つの孔周縁部の間の空間を通じて前記連通路と該二つの伝熱プレートのプレート間の前記流路空間とを連通させる流出入許容部を有し、
前記流出入許容部において、前記間隔をあけた二つの孔周縁部のうちの少なくとも一方の孔周縁部が相手側の孔周縁部に向けて突出して該相手側の孔周縁部に当接する少なくとも一つの凸部を有し、
前記凸部は、
前記所定方向から見て前記孔周縁部の内周縁に沿って延びると共に中央部が該凸部の突出方向に凸となるように曲がっている板状の先端部と、
前記先端部の各端部と該孔周縁部における該凸部との隣接部位とを接続する基部と、を有し、
前記先端部の内側の空間は、前記連通路と前記流路空間とに連通し
前記基部は、
前記孔周縁部の周方向に間隔をあけて配置され且つそれぞれが前記先端部の各端部と前記隣接部位とを接続する一対の第一部位と、
前記周方向に沿って延び且つ前記一対の第一部位同士を接続する第二部位と、を有し、
前記一対の第一部位及び前記第二部位は、前記隣接部位から一体に立ち上がっている、プレート式熱交換器。
【請求項3】
前記先端部の幅方向における一方の端縁は、前記孔周縁部の内周縁によって構成されている、請求項1又は2に記載のプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の伝熱プレートが重ね合わされたプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の伝熱プレートが重ね合わされたプレート式熱交換器が知られている(特許文献1参照)。このプレート式熱交換器は、図15に示されるように、重ね合わされた複数の伝熱プレート101を備える。各伝熱プレート101は、矩形状であり、四隅に貫通孔102を有する。また、各伝熱プレート101の両面には、熱交換効率を向上させるために複数の凸部101a及び複数の凹部101bが形成され、隣り合う伝熱プレート101の凸部101a同士が当接することによって、隣り合う二つの伝熱プレート101のプレート間(以下、単に「プレート間」とも称する。)に流体が流通可能な流路(流路空間)103、104が形成される。
【0003】
この重ね合わされた複数の伝熱プレート101において、流体が各プレート間に形成された流路103、104を流通することによって、熱交換が行われる。具体的に、重ね合わされた複数の伝熱プレート101では、各プレート間に第一流体が流通可能な第一流路103と、第二流体が流通可能な第二流路104とが、伝熱プレート101の重ね合わせ方向に交互に形成され、第一流体と第二流体とが各流路103、104を流通したときに第一流路103と第二流路104とを隔てる伝熱プレート101を通じて熱交換する。
【0004】
また、プレート式熱交換器100では、図15及び図16に示されるように、各伝熱プレート101の貫通孔102が重ね合わせ方向に連なることで、第一流路103のみと連通する第一連通路105と、第二流路104のみに連通する第二連通路106とが形成されている。第一連通路105は、プレート式熱交換器100の外部から第一流体を各第一流路103に流入させ、又は、各第一流路103から第一流体を前記外部に流出させる。また、第二連通路106は、前記外部から第二流体を各第二流路104に流入させ、又は、各第二流路104から第二流体を前記外部に流出させる。
【0005】
以上のように構成されるプレート式熱交換器100では、流体が流通したときの圧力によって連通路105、106の周縁部において応力が集中し易い部位が発生するため、二流体(第一流体、第二流体)が断続的に流通する場合等のように内部で圧力変化(圧力の上昇と下降と)が繰り返されると、この応力が集中し易い部位が疲労破壊し易くなる。
【0006】
そこで、図17図19に示すように、隣り合う伝熱プレート101において連通路105、106から流路(流路空間)103、104への流体の入口(又は流路(流路空間)103、104から連通路105、106への流体の出口)となる部位、詳しくは、重ね合わせ方向に間隔をあけて対向する伝熱プレート101の孔周縁部107に、相手側の孔周縁部107に向けて突出する凸部108をそれぞれ設け、これら二つの凸部108の先端部同士を当接させることによって対向する孔周縁部107同士を支持させ(即ち、連通路105、106の周縁部での強度を確保し)、これにより、連通路105、106の周縁部での応力集中に起因する損傷を抑えることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2015-513656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この凸部108を設けたプレート式熱交換器100では、隣り合う伝熱プレート101において連通路105、106から流路(流路空間)103、104への流体の入口(又は流路(流路空間)103、104から連通路105、106への流体の出口)となる部位に凸部108が形成されているため、流路断面積が減少し、これにより、連通路105、106の周縁部での流通抵抗が増加、即ち、圧力損失が増大する。
【0009】
そこで、本発明は、連通路の周縁部での強度を確保しつつ、連通路付近での圧力損失の増大を抑えることができるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプレート式熱交換器は、
それぞれが貫通孔を有し且つ所定方向に重ね合わされる複数の伝熱プレートを有する熱交換器本体を備え、
前記熱交換
器本体は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートのプレート間のそれぞれに形成され且つ流体が流通可能な複数の流路空間と、各伝熱プレートの前記貫通孔が前記所定方向に連なることで形成される連通路と、を有し、
前記熱交換器本体における前記連通路の周縁部は、前記所定方向に隣り合う二つの伝熱プレートにおける前記貫通孔の孔周縁部同士が前記所定方向に間隔をあけていることで当該二つの孔周縁部の間の空間を通じて前記連通路と該二つの伝熱プレートのプレート間の前記流路空間とを連通させる流出入許容部を有し、
前記流出入許容部において、前記間隔をあけた二つの孔周縁部のうちの少なくとも一方の孔周縁部が相手側の孔周縁部に向けて突出して該相手側の孔周縁部に当接する少なくとも一つの凸部を有し、
前記凸部は、
前記所定方向から見て前記孔周縁部の内周縁に沿って延びると共に中央部が該凸部の突出方向に凸となるように曲がっている板状の先端部と、
前記先端部の各端部と該孔周縁部における該凸部との隣接部位とを接続する基部と、を有し、
前記先端部の内側の空間は、前記連通路と前記流路空間とに連通している。
【0011】
かかる構成によれば、間隔をあけた二つの孔周縁部において少なくとも一方の孔周縁部の凸部を相手側の孔周縁部に当接させることで連通路の周縁部での強度を確保しつつ、該凸部における先端部の内側の空間を通じた連通路と流路空間との間での流体の流通を可能とすることで、凸部を設けたことによる圧力損失の増大を抑えることができる。
【0012】
前記プレート式熱交換器では、
前記先端部の幅方向において、前記基部における前記隣接部位との境界部の寸法は、前記先端部の寸法より大きくてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、先端部の幅方向において該先端部の端部より基部の境界部の寸法が大きいため、相手側の孔周縁部から先端部(凸部)に加わる力が幅方向に分散された状態で基部から隣接部位に伝わることで、凸部(基部)と隣接部位との境界での損傷が抑えられる。
【0014】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記先端部の幅方向における一方の端縁は、前記孔周縁部の内周縁によって構成されてもよい。
【0015】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記基部は、
前記孔周縁部の周方向に間隔をあけて配置され且つそれぞれが前記先端部の各端部と前記隣接部位とを接続する一対の第一部位と、
前記周方向に沿って延び且つ前記一対の第一部位同士を接続する第二部位と、を有し、
前記一対の第一部位及び前記第二部位は、前記隣接部位から一体に立ち上がってもよい。
【0016】
このように、凸部の基部を、一対の第一部及び第二部位が隣接部位から一体に立ち上がる構成とすることで、該凸部の強度が十分に確保される。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明によれば、連通路の周縁部での強度を確保しつつ、連通路付近での圧力損失の増大を抑えることができるプレート式熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態に係るプレート式熱交換器の斜視図である。
図2図2は、前記プレート式熱交換器の分解斜視図である。
図3図3は、前記プレート式熱交換器が備える熱交換器本体の連通路周縁部を伝熱プレートの積層方向から見た拡大図である。
図4図4は、図3のIV-IV線位置における切断面の端面図である。
図5図5は、図3のV-V線位置における切断面を示す端面図である。
図6図6(a)は、連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路側から見た図であり、図6(b)は、図6(a)のVI-VI位置における凸部の断面図であり、図6(c)は、前記凸部を流路空間側から見た図である。
図7図7(a)は、他実施形態における連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路側から見た図であり、図7(b)は、図7(a)のVII-VII位置における凸部の断面図であり、図7(c)は、前記凸部を流路空間側から見た図である。
図8図8(a)は、他実施形態における連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路側から見た図であり、図8(b)は、図8(a)のVIII-VIII位置における凸部の断面図であり、図8(c)は、前記凸部を流路空間側から見た図である。
図9図9(a)は、他実施形態における連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路側から見た図であり、図9(b)は、図9(a)のIX-IX位置における凸部の断面図であり、図9(c)は、前記凸部を流路空間側から見た図である。
図10図10(a)は、他実施形態における連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路側から見た図であり、図10(b)は、図10(a)のX-X位置における凸部の断面図であり、図10(c)は、前記凸部を流路空間側から見た図である。
図11図11(a)は、他実施形態における連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路側から見た図であり、図11(b)は、図11(a)のXI-XI位置における凸部の断面図であり、図11(c)は、前記凸部を流路空間側から見た図である。
図12図12(a)は、流路から連通路側に向けて凸部を見たときの該凸部における連通路と連通している領域を示す図であり、図12(b)は、凸部の連通路側の端縁位置における該端縁と隣接部位315とに囲まれた領域を示す図である。
図13図13(a)は、他実施形態における連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路の延びる方向から見た図であり、図13(b)は、図13(a)のXIII-XIII位置における凸部の断面図である。
図14図14(a)は、他実施形態における連通路周縁部の流出入許容部の凸部を連通路側から見た図であり、図14(b)は、図14(a)のXIV-XIV位置における凸部の断面図である。
図15図15は、従来のプレート式熱交換器の連通路位置における横断面図である。
図16図16は、前記従来のプレート式熱交換器の連通路周縁部を伝熱プレートの積層方向から見た拡大図である。
図17図17は、従来の他のプレート式熱交換器の連通路周縁部を伝熱プレートの積層方向から見た拡大図である。
図18図18は、図17のXVIII-XVIII線位置における切断面の端面図である。
図19図19は、図17のXIX-XIX線位置における切断面を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図1図6を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係るプレート式熱交換器(以下、単に「熱交換器」とも称する。)は、図1及び図2に示すように、複数の伝熱プレート3を有する熱交換器本体2と、流体A、Bを熱交換器本体2に流入させ又は熱交換器本体2から流出させる筒状のノズル5と、を備える。この熱交換器1は、複数(本実施形態の例では、四つ)のノズル5を備える。
【0021】
詳しくは、熱交換器本体2は、所定方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート3と、複数の伝熱プレート3全体を前記所定方向の両外側から挟み込む複数の補強プレート4A、4Bと、を有する。本実施形態の熱交換器本体2では、重ね合わされた複数の伝熱プレート3において隣り合う二つの伝熱プレート3の互いの当接部同士がろう付け(ブレージング)されている。この熱交換器本体2では、重ね合わされた複数の伝熱プレート3のうちの隣り合う二つの伝熱プレート3のプレート間のそれぞれに、流体A、Bの流通可能な流路Rが形成されている。即ち、熱交換器本体2は、熱交換器本体2は、流体A、Bの流通可能な複数の流路Rを有する。
【0022】
本実施形態の熱交換器本体2は、三つ以上の矩形状の伝熱プレート3を備え、これら三つ以上の伝熱プレート3は、二種類の伝熱プレート3a、3bを含む。熱交換器本体2では、これら二種類の伝熱プレート3a、3bが交互に重ね合わされている。以下の説明では、伝熱プレート3が重ね合わされる方向(所定方向)を直交座標系のX軸方向とし、伝熱プレート3の短辺方向を直交座標系のY軸方向とし、伝熱プレート3の長辺方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0023】
複数の伝熱プレート3のそれぞれは、X軸方向と直交する方向に広がり且つX軸方向に厚みを有する板状の伝熱部31と、伝熱部31の外周縁の全域から該伝熱部31と面交差する方向に延出する環状の嵌合部32と、を備える。伝熱プレート3は、例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属プレート(薄板)がプレス成型されることによって形成されており、本実施形態の伝熱プレート3は、ステンレス製である。
【0024】
伝熱部31は、X軸方向から見てZ軸方向に長尺な矩形状であり、両面にそれぞれ配置される複数の凹部35及び複数の凸部36と、複数の貫通孔311と、を有する。本実施形態の伝熱部31は、四つの貫通孔311を有し、これら四つの貫通孔311は、それぞれ円形の孔であり、伝熱部31の四隅に配置されている。
【0025】
以上のように構成される複数の伝熱プレート3のそれぞれは、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3のうちの一方の伝熱プレート3a、3bの嵌合部32が、他方の伝熱プレート3b、3aの嵌合部32に外嵌されるようにX軸方向に重ね合わされることで、熱交換器本体2を構成している。このとき、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3a、3bの各伝熱部31の対向する面に形成されている凸部36同士がそれぞれ当接することにより、該二つの伝熱プレート3a、3bのプレート間に流体A、Bの流通可能な流路(流路空間)Rが形成される(図4及び図5参照)。
【0026】
この熱交換器本体2では、外嵌された嵌合部32同士、及び、伝熱部31における互いの当接部(凸部36等)同士が、例えば、銅ろう等のろう材によってろう付けされており、隣り合う二つの伝熱プレート3のプレート間は、貫通孔311を除いて密封されている。
【0027】
これにより、熱交換器本体2では、第一流体AをZ軸方向に流通させる流路R(第一流路Ra)が、隣り合う二つの伝熱プレート3b、3aのプレート間に形成され、第二流体BをZ軸方向に流通させる流路R(第二流路Rb)が、隣り合う二つの伝熱プレート3a、3bのプレート間に形成される。また、熱交換器本体2において、各貫通孔311がX軸方向に連なることで連通路Pを形成する。具体的に、熱交換器本体2では、対応する(X軸方向から見て重なる位置の)貫通孔311がX軸方向に連なることで、それぞれがX軸方向に延びる第一流入路(連通路)Pa1、第一流出路(連通路)Pa2、第二流入路(連通路)Pb1、及び第二流出路(連通路)Pb2が形成されている。
【0028】
第一流入路Pa1は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第一流路Raのみと連通し、熱交換器本体2の外部から供給された第一流体Aを各第一流路Raに案内する。また、第一流出路Pa2は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第一流路Raのみと連通し、各第一流路Raを流れた第一流体Aを熱交換器本体2の外部に案内する。また、第二流入路Pb1は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第二流路Rbのみと連通し、熱交換器本体2の外部から供給された第二流体Bを各第二流路Rbに案内する。また、第二流出路Pb2は、熱交換器本体2の各流路Ra、Rbのうちの第二流路Rbのみと連通し、各第二流路Rbを流れた第二流体Bを熱交換器本体2の外部に案内する。
【0029】
複数の補強プレートは、複数の伝熱プレート3に対してX軸方向の一方側から重ね合わされる第一補強プレート4Aと、複数の伝熱プレート3に対してX軸方向の他方側から重ね合わされる第二補強プレート4Bと、を含む。即ち、熱交換器本体2は、複数の伝熱プレート3をX軸方向の外側から挟み込む少なくとも一対の補強プレート4A、4Bを備える。
【0030】
本実施形態の熱交換器本体2では、複数の伝熱プレート3におけるX軸方向の一方側においてZ軸方向に間隔をあけて二つの第一補強プレート4Aが配置され、複数の伝熱プレート3におけるX軸方向の他方側においてZ軸方向に間隔をあけて二つの第二補強プレート4Bが配置されている。即ち、本実施形態の熱交換器本体2は、二対の補強プレート4A、4Bを有する。
【0031】
これら二つの第一補強プレート4Aのそれぞれは、伝熱プレート3の各貫通孔311と対応する位置(具体的には、X軸方向から見て重なる位置)に貫通孔41Aを有する。
【0032】
複数のノズル5は、熱交換器本体2の各連通路(第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2)と対応する位置に配置される。本実施形態の熱交換器では、四つのノズルが、二つの第一補強プレート4Aにおける各貫通孔41Aと対応する位置からX軸方向の一方側に延びている。各ノズル5は、X軸方向に延びる中空部Sを囲む筒状であり、該中空部Sは、対応する連通路(第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2)と連通する。
【0033】
以上のように構成される熱交換器1(熱交換器本体2)の連通路Pの周縁部(連通路周縁部)6では、図3図5に示すように、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3の各孔周縁部310(貫通孔311の周縁部)によって構成される複数の流出入許容部7がX軸方向に並んでいる。本実施形態の連通路周縁部6では、流出入許容部7と流出入阻止部8とがX軸方向に交互に配置されている。即ち、連通路周縁部6は、複数の流出入許容部7と、複数の流出入阻止部8と、を有している。
【0034】
本実施形態の熱交換器1(熱交換器本体2)では、流出入許容部7の一部を構成する部材(部位)と、該流出入許容部7と隣り合う流出入阻止部8の一部を構成する部材(部位)とは、共通の部材(部位)によって構成されている。
【0035】
具体的には、流出入許容部7を構成する二つの伝熱プレート3(孔周縁部310)のうちの流出入阻止部8側の伝熱プレート3(孔周縁部310)が、流出入阻止部8を構成する二つの伝熱プレート3(孔周縁部310)のうちの流出入許容部7側の伝熱プレート3(孔周縁部310)である。
【0036】
より具体的には、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの流出入許容部7A、7Bのうちの一方の流出入許容部7Aを構成する二つの孔周縁部310のうちの他方の流出入許容部7B側の孔周縁部310と、前記二つの流出入許容部7A、7Bのうちの他方の流出入許容部7Bを構成する二つの孔周縁部310のうちの一方の流出入許容部7A側の孔周縁部310とが重なることによって、これら二つの流出入許容部7A、7Bの間の流出入阻止部8が構成されている。また、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの流出入阻止部8A、8Bのうちの一方の流出入阻止部8Aを構成する二つの孔周縁部310のうちの他方の流出入阻止部8B側の孔周縁部310と、前記二つの流出入阻止部8A、8Bのうちの他方の流出入阻止部8Bを構成する二つの孔周縁部310のうちの一方の流出入阻止部8A側の孔周縁部310とが間隔をあけて対向することによって、これら二つの流出入阻止部8A、8Bの間の流出入許容部7が構成されている。即ち、本実施形態の連通路周縁部6において、流出入許容部7と流出入阻止部8とが隣り合うとは、相手側の孔周縁部310(伝熱プレート3)を共有した状態で隣り合っていることをいう。
【0037】
また、本実施形態の熱交換器1における四つの連通路P(第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2)の各連通路周縁部6は、同じ構成である。このため、以下では、第一流入路Pa1の周縁部6の構成を示す図3図5を参照しつつ、各連通路周縁部6の構成について説明する。
【0038】
複数の流出入許容部7のそれぞれは、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3の孔周縁部310同士がX軸方向に間隔をあけている部位である。これら複数の流出入許容部7のそれぞれは、該流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の間の空間S1を通じて、連通路P(図3図5に示す例では、第一流入路Pa1)と該孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路R(流路空間:図3図5に示す例では、第一流路Ra)とを連通させている。即ち、各流出入許容部7は、前記空間S1を通じて、連通路Pから、該空間S1を規定する孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路R(流路空間)への流体の流入を許容する、又は、前記空間S1を通じて、該空間S1を規定する孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路Rから、連通路Pへの流体の流出を許容する。
【0039】
各流出入許容部7は、該流出入許容部を構成する二つの孔周縁部(間隔をあけた二つの孔周縁部)310のうちの少なくとも一方の孔周縁部310が相手側の孔周縁部310に向けて突出して該相手側の孔周縁部310に当接する少なくとも一つの凸部72を有する。本実施形態の流出入許容部7では、二つの孔周縁部310のうちの他方の孔周縁部は、一方の孔周縁部310の少なくとも一つの凸部72と対向する位置から突出する少なくとも一つの凸部72を有する。即ち、各流出入許容部7は、該流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の対向する位置から互いに接近する方向に突出し且つ突出方向の先端部同士を当接させた二つの凸部72を有する。
【0040】
この各流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310のうちの一方の孔周縁部310の凸部72と、該凸部72と先端部同士を当接させている他方の孔周縁部310の凸部72とは、同じ構成であり、間隔維持部71を構成している。この間隔維持部71では、二つの凸部72の先端部同士が接続されている。本実施形態の間隔維持部71では、二つの凸部72の先端部同士は、ろう付けによって接続されている。
【0041】
この間隔維持部71は、流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の間隔を維持するための部位であり、本実施形態の複数の流出入許容部7のそれぞれは、複数の間隔維持部71を有する。これら複数の間隔維持部71は、流出入許容部7において連通路Pの周方向(以下、単に「周方向」と称する。)に間隔をあけて配置されている。本実施形態の複数の間隔維持部71は、周方向に等間隔に配置されている。これら複数の間隔維持部71のそれぞれは、同じ形状を有する。また、連通路周縁部6において流出入阻止部8を介してX軸方向に並ぶ複数の流出入許容部7は、複数の間隔維持部71を周方向の同じ位置にそれぞれ有している。
【0042】
具体的に、各凸部72は、図6(a)~図6(c)にも示すように、対向する凸部72と当接する先端部73と、先端部73と孔周縁部310における該凸部72との隣接部位315とを接続する基部74と、を有する。本実施形態の各凸部72は、連通路Pの中心から径方向外側に向かって見て(以下、単に「連通路Pの径方向に見て」と称する。)、台形状である(図6(a)参照)。また、各凸部72の連通路P側の端縁72aは、孔周縁部310の内周縁310aによって構成されている。即ち、先端部73の連通路P側の端縁と、基部74の連通路P側の端縁とのそれぞれは、孔周縁部310の内周縁310aによって構成されている。そして、各凸部72の連通路側の端縁72aは、周方向から見て隣接部位315からX軸方向に沿って立ち上がっている(図6(b)参照)。
【0043】
先端部73は、X軸方向から見て孔周縁部310の内周縁310aに沿って延びると共に、連通路Pの径方向から見て中央部が該凸部72の突出方向(X軸方向)に凸となるように曲がっている板状の部位である。この先端部73の延びる方向の各位置における幅(連通路Pの径方向の寸法)は、略一定である。即ち、先端部73は、中央部が突出方向に凸となるように曲がっている帯板状の部位である。
【0044】
基部74は、周方向に間隔をあけて配置され且つそれぞれが先端部73の各端部と隣接部位315とを接続する一対の第一部位741と、周方向に沿って延び且つ一対の第一部位741同士を接続する第二部位742と、を有する。また、基部74は、第二部位742と異なる位置で周方向に延び且つ一対の第一部位741同士を接続する第三部位743も有する。本実施形態の一対の第一部位741と第二部位742と第三部位743とは、一体である。
【0045】
一対の第一部位741のそれぞれは、隣接部位315から一体に立ち上がり、該隣接部位315からX軸方向に離れるに伴って相手側の第一部位741に接近する傾斜方向に延びると共に連通路Pの径方向に沿って延びる板状の部位である。
【0046】
先端部73の幅方向(図6(b)における左右方向)において、この第一部位741の先端(先端部73側の端)の寸法α1は、先端部73の端部の寸法α2より大きい。また、先端部73の幅方向において、第一部位741の先端の寸法α1は、第一部位741の基端(隣接部位315との境界部)の寸法α3より小さい。即ち、第一部位741における隣接部位315との境界部の寸法α3は、先端部73の端部の寸法α1より大きい。
【0047】
ここで、凸部72の連通路P側の端縁72aは、上述のように、隣接部位315からX軸方向に立ち上がっている。このため、第一部位741における連通路Pから遠い側の端縁(図6(b)における右側の端縁)は、周方向から見て、隣接部位315からX軸方向に離れるに伴って連通路Pに接近する傾斜方向に延びている。
【0048】
第二部位742は、隣接部位315から一体に立ち上がり、各第一部位741の連通路Pから遠い側の端縁同士を接続している板状の部位である。即ち、第二部位742は、周方向に沿って延びると共に隣接部位315から第一部位741の連通路Pから遠い側の端縁と同方向(即ち、隣接部位315からX軸方向に離れるに伴って連通路Pに接近する傾斜方向)に延びる板状の部位である。
【0049】
第三部位743は、一対の第一部位741の各先端と第二部位742の先端とを接続し且つ隣接部位315と略平行に広がる板状の部位である。
【0050】
以上のように構成される各凸部72では、先端部73の内側の空間S2が連通路Pと流路(流路空間)Rとに連通している。本実施形態の各凸部72は、板状の孔周縁部310の一部によってそれぞれ構成されている。
【0051】
複数の流出入阻止部8のそれぞれは、連通路周縁部6において、X軸方向に隣り合う二つの伝熱プレート3の孔周縁部310同士が互いに重なった状態でX軸方向と直交する仮想面(Y軸方向とZ軸方向とを含む面)Kに沿って広がる部位である。これら複数の流出入阻止部8のそれぞれは、連通路P(図3図5に示す例では、第一流入路Pa1)から該流出入阻止部8を構成する孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路R(流路空間:図3図5に示す例では、第二流路Rb)への流体(図3図5に示す例では、第一流体A)の流入を阻止する、又は、該流出入阻止部8を構成する孔周縁部310を含む二つの伝熱プレート3のプレート間に形成される流路Rから連通路Pへの流体の流出を阻止する。
【0052】
各流出入阻止部8は、該流出入阻止部8を構成する孔周縁部310の内周縁310aから外側に所定間隔αをあけた位置で連通路Pを囲むシール部81を有する。このシール部81では、重なった状態の二つの孔周縁部310における該シール部81と対応する部位同士が液密状態で接続されている。本実施形態のシール部81では、周方向の各位置の幅(連通路Pの径方向の寸法)が一定又は略一定であり、重なった状態の孔周縁部310がろう付けによって接続されている。また、シール部81は、X軸方向から見て、各間隔維持部71より外側(連通路Pの径方向外側)に配置されている。
【0053】
ここで、本実施形態の連通路周縁部6では、X軸方向に隣り合う二つの流出入許容部7によって流出入阻止部8が構成されているため、流出入阻止部8を構成する孔周縁部310同士を液密状態で接続しているシール部81は、前記二つの流出入許容部7における相手側の孔周縁部310同士を液密状態で接続していることになる。
【0054】
また、本実施形態の連通路周縁部6では、X軸方向に隣り合う二つの流出入許容部7によって流出入阻止部8が構成されているため、各流出入許容部7の間隔維持部71を構成する凸部72が流出入阻止部8にも形成されていることになる。詳しくは、流出入阻止部8を構成する二つの孔周縁部310のそれぞれは、周方向の同じ位置において互いに離間する方向に突出する凸部72を有し、これら二つの凸部72は、該凸部72を有する流出入阻止部8と隣り合う流出入阻止部8の対向する位置から突出する凸部72と先端同士を当接させている。
【0055】
以上の熱交換器1によれば、連通路周縁部6の流出入許容部7において、間隔をあけた二つの孔周縁部310における少なくとも一方の孔周縁部310の凸部72を相手側の孔周縁部310に当接させることで、該連通路周縁部6の強度を確保することができる。しかも、該凸部72における先端部73の内側の空間S2を通じた連通路Pと流路(流路空間)Rとの間での流体の流通を可能とすることで、連通路周縁部6における凸部72を設けたことによる圧力損失の増大を抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態の熱交換器1では、先端部73の幅方向において、基部74(第一部位741)における隣接部位315との境界側の端部(境界部)の寸法α3が、先端部73の寸法α2より大きい(図6(b)参照)。このように、先端部73の幅方向において該先端部73の端部の寸法α2より基部74の境界部の寸法α3が大きいため、相手側の孔周縁部310から先端部73(凸部72)に加わる力が幅方向に分散された状態で基部74から隣接部位315に伝わることで、凸部72(基部74)と隣接部位315との境界での割れや裂け等の損傷が抑えられる。より詳しくは、一定幅の帯状の部位によって凸部が形成されている場合、即ち、凸部における先端部の幅と基部における隣接部位315との境界部の幅とが同じ寸法の場合、前記境界部の幅方向の端縁と隣接部位315との境界に応力が集中し易く、該凸部にX軸方向の力が加わったときに前記境界から割れ(裂け)やすいが、本実施形態の基部74のように、先端部73の幅(寸法α2)より基部74の境界部の幅(寸法α3)を大きくすることで、X軸方向の力が先端部73に加わっても、基部74において幅方向に分散された状態で隣接部位315に伝わるため、前記割れ(裂け)が生じ難い。
【0057】
また、本実施形態の熱交換器1では、先端部73の幅方向における連通路P側(一方)の端縁、即ち、凸部72の連通路P側の端縁72aが、孔周縁部310の内周縁310aによって構成されている。このように、先端部73(凸部72)の連通路P側の端縁72aが孔周縁部310の内周縁310aによって構成される位置まで凸部72を孔周縁部310の内周縁310a側(連通路P側)に寄せることで、該凸部72を有する伝熱プレート3における熱交換領域(主に熱交換に使用される領域)の面積をより大きくすることができる。即ち、伝熱プレート3の伝熱部31における凹部35や凸部36の配置領域をより広くすることができる。
【0058】
また、本実施形態の熱交換器1では、凸部72の基部74が、周方向に間隔をあけて配置され且つそれぞれが先端部73の各端部と隣接部位315とを接続する一対の第一部位741と、周方向に沿って延び且つ一対の第一部位741同士を接続する第二部位742と、を有する。そして、一対の第一部位741及び第二部位742が、隣接部位315から一体に立ち上がっている。このように、凸部72の基部74を、一対の第一部位741及び第二部位742が隣接部位315から一体に立ち上がる構成とすることで、該凸部72の強度を十分に確保することができる。
【0059】
尚、本発明のプレート式熱交換器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0060】
凸部72の具体的な形状は限定されない。例えば、上記実施形態の熱交換器1では、連通路周縁部6の流出入許容部7において、先端部73の内側の空間(連通路Pの中心部から凸部72を見たときに先端部73と基部74の第三部位743とに囲まれた領域)S2が、連通路Pの中心部から凸部72を見たときに流路Rと連通し、基部74の内側の空間(凸部72の内側において第三部位743より隣接部位315側の領域:図6(a)及び図6(b)参照)S3が連通路Pの中心部から凸部72を見たときに第二部位742等によって流路Rと遮られているが、この構成に限定されない。図7(a)~図9(c)に示すように、基部74の内側の領域S3の全部又は一部が、連通路Pの中心部から凸部72を見たときに流路Rと連通する構成でもよい。
【0061】
この構成の場合、図8(a)~図9(c)に示すように、基部74の内側の領域S3が、連通路Pの中心部から凸部72を見たときに、複数に分割された状態で流路Rと連通してもよい。また、第三部位743は、連通路Pの中心部から凸部72を見たときに、隣接部位315と平行又は略平行でなく、図9(a)~図10(c)に示すように、中央部が隣接部位315側に凹となるように曲がっていてもよい。
【0062】
また、図7(a)~図8(c)に示すように、凸部72において、基部74の内側の空間S3が、連通路Pの中心部から凸部72を見たときに、先端部73の内側の空間S2と分離した状態で流路Rと連通する構成に限定されず、図9(a)~図10(c)に示すように、基部74の内側の空間S3が、連通路Pの中心部から凸部72を見たときに、先端部73の内側の空間S1と一体となった状態で流路Rと連通する構成でもよい。
【0063】
また、凸部72を形成する具体的な方法は、限定されない。例えば、図7(a)~図7(c)に示す凸部72のように、先端部73が、いわゆる切り起しによって形成されてもよい。詳しくは、孔周縁部310における凸部72の形成が予定されている部位において、先端部73と基部74(第三部位743)との境界位置に相当する位置に切り込みが入れられた状態で、プレス成型によって凸部72が形成されてもよい。
【0064】
また、連通路Pの中心部から凸部72を見たときに流路Rと連通する開口は、上記のように、凸部72の形成前の平らな孔周縁部310に切り込みを入れ、この切れ込みによって形成された帯状の部位(両端が隣接部位315と連接した状態の帯状の部位)をプレス成型等によって凸部形状に持ち上げるいわゆる切り起しによって形成されるが、この構成に限定されない。前記開口は、プレス成型等によって形成された凸部72の一部がレーザ等によって切り取られる、又は削り取られることによって形成される構成等でもよい(図11(a)~図11(c)参照)。
【0065】
以上のように、凸部72において、流路Rから連通路Pの中心部側に向けて凸部72を見たときの該凸部72における連通路Pと連通している領域(図12(a)におけるスモークで示す領域)の面積が、凸部72の連通路P側の端縁72aの位置における該端縁(内周縁310aの一部により構成される端縁)72aと隣接部位315とに囲まれた領域(図12(b)におけるスモークで示す領域)の面積より小さくなっている構成であればよい。
【0066】
また、上記実施形態の連通路周縁部6の流出入許容部7では、凸部72の連通路P側の端縁72aが、孔周縁部310の内周縁310aによって構成されている、即ち、凸部72が孔周縁部310における連通路P側の端縁(内周縁)310aを含む位置に配置されているが、この構成に限定されない。凸部72は、図13(a)及び図13(b)に示すように、孔周縁部310の内周縁310aと間隔をあけた位置に配置(形成)されていてもよい。この場合、図14(a)及び図14(b)に示すように、基部74は、先端部73の幅方向において、基部74の隣接部位315との境界位置における連通路P側の端部が先端部73より連通路P側に位置する構成でもよい。
【0067】
また、上記実施形態の連通路周縁部6の流出入許容部7において、連通路Pの中心部から凸部72を見たときの形状が台形状であるが、この構成に限定されない。連通路Pの中心部から凸部72を見たときの凸部72の形状は、三角状、半円状等の他の形状でもよい。
【0068】
また、上記実施形態の熱交換器1では、連通路周縁部6が有する複数の流出入許容部7のそれぞれが、少なくとも先端部73の内側の空間S1が連通路Pと流路Rとに連通する少なくとも一つの凸部72を有しているが、この構成に限定されない。連通路周縁部6が有する複数の流出入許容部7のうちの少なくとも一つの流出入許容部7が、前記少なくとも一つの凸部72を有していればよい。
【0069】
また、上記実施形態の熱交換器1では、各連通路周縁部6において、流出入許容部7が、少なくとも先端部73の内側の空間S1が連通路Pと流路Rとに連通する少なくとも一つの凸部72を有しているが、この構成に限定されない。複数の連通路周縁部6のうちの少なくとも一つの連通路周縁部6において、流出入許容部7が、前記少なくとも一つの凸部72を有していればよい。この場合、流路Rから連通路Pに流体が流出する側の連通路周縁部6において、流出入許容部7が、前記少なくとも一つの凸部72を有していることが好ましい。これにより、熱交換器1の圧損が効果的に抑えられる。
【0070】
また、上記実施形態の連通路周縁部6の流出入許容部7では、該流出入許容部7を構成する二つの孔周縁部310の対向する位置のそれぞれから凸部72が突出し、これら二つの凸部72が先端部73同士を当接させているが、この構成に限定されない。流出入許容部7において、前記二つの孔周縁部310における一方の孔周縁部310に凸部72が設けられ、該凸部72の先端部73が他方の孔周縁部310の平坦な面に当接する構成であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態の熱交換器本体2では、伝熱部31の凹部35及び凸部36の配置パターンの異なる二種類の伝熱プレート3が重ね合わされているが、この構成に限定されない。熱交換器本体2では、伝熱部31に配置された凹部35及び凸部36の配置パターンの異なる三種類以上の伝熱プレート3が重ね合わされる構成でもよい。また、熱交換器本体2において一種類の伝熱プレート3が重ね合わされる構成でもよい。
【0072】
また、上記実施形態の熱交換器本体2は、複数の伝熱プレート3と、補強プレート4A、4Bとを有しているが、補強プレート4A、4Bを有していなくてもよい。即ち、熱交換器本体2は、伝熱プレートのみで構成されていてもよい。この場合、各ノズル5は、X軸方向の最も外側の伝熱プレート3の貫通孔311と該ノズル5の中空部Sとが連通するように前記最も外側の伝熱プレート3の各孔周縁部310にそれぞれ接続される。
【0073】
また、上記実施形態の熱交換器本体2のX軸方向の一方の端部に、二つの第一補強プレート4AがZ軸方向に間隔をあけて配置され、熱交換器本体2のX軸方向の他方の端部に、二つの第二補強プレート4BがZ軸方向に間隔をあけて配置されているが、この構成に限定されない。熱交換器本体2のX軸方向の各端部に、伝熱プレート3の伝熱部31全体を覆う一つの補強プレートがそれぞれ配置された構成でもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…熱交換器、2…熱交換器本体、3、3a、3b…伝熱プレート、31…伝熱部、310…孔周縁部、310a…内周縁、311…貫通孔、315…隣接部位、32…嵌合部、35…凹部、36…凸部、4A…第一補強プレート(補強プレート)、41A…貫通孔、4B…第二補強プレート(補強プレート)、5…ノズル、6…連通路周縁部(周縁部)、7…流出入許容部、7、7A、7B…流出入許容部、71…間隔維持部、72…凸部、73…先端部、74…基部、741…第一部位、742…第二部位、743…第三部位、8、8A、8B…流出入阻止部、81…シール部、100…プレート式熱交換器、101…伝熱プレート、101a…凸部、101b…凹部、102…貫通孔、103…第一流路(流路)、104…第二流路(流路)、105…第一連通路(連通路)、106…第二連通路(連通路)、107…孔周縁部、108…凸部、A…第一流体(流体)、B…第二流体(流体)、P…連通路、Pa1…第一流入路(連通路)、Pa2…第一流出路(連通路)、Pb1…第二流入路(連通路)、Pb2…第二流出路(連通路)、R…流路(流路空間)、Ra…第一流路(流路、流路空間)、Rb…第二流路(流路、流路空間)、S…中空部、S1…先端部の内側の空間(領域)、S2…基部の内側の空間(領域)、α…内周縁とシール部との間隔、α1…第一部位の先端部の寸法、α2…先端部の端部の寸法、α3…第一部位の隣接部位側の端部の寸法、γ…凸部の連通路側の端縁位置
【要約】
【課題】連通路の周縁部での強度を確保しつつ、連通路付近での圧力損失の増大を抑えることができるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、複数の伝熱プレートを有する熱交換器本体は、各伝熱プレート間に形成される流路空間と伝熱プレートの貫通孔が連なった連通路とを有し、熱交換器本体における連通路周縁部は、隣り合う伝熱プレートにおける貫通孔の孔周縁部同士が間隔をあけている流体流出入部を有し、該流体流出入部において、二つの孔周縁部のうちの少なくとも一方が相手側の孔周縁部に向けて突出する凸部を有し、該凸部は、中央部が該凸部の突出方向に凸となるように曲がる板状の先端部と、先端部の各端部と該孔周縁部における該凸部との隣接部位とを接続する基部と、を有し、先端部の内側の空間は、連通路と流路空間とに連通している、ことを特徴とする。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
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