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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】射出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/74 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
B29C45/74
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021052922
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2021194912
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2020101401
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】常田 聡
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 七重
(72)【発明者】
【氏名】湯本 貴大
(72)【発明者】
【氏名】半田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】荻原 春雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利美
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-199526(JP,A)
【文献】特開平02-055114(JP,A)
【文献】特開2012-218418(JP,A)
【文献】特開2006-075846(JP,A)
【文献】特開2003-025404(JP,A)
【文献】特開2003-205541(JP,A)
【文献】国際公開第2021/251039(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
H05B 3/00- 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルを有する加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒に巻き付けられる加熱機構とを備える射出装置において、
前記加熱機構は、前記加熱筒の基部に配置される予熱部と、この予熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される加熱部と、この加熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される保温部とを有し、
前記予熱部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が高く構成され、
前記保温部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が低く構成されている射出装置であって、
前記加熱部は、前記加熱筒に巻く内ケースと、この内ケースの外周面に被せる内側電気絶縁材と、この内側電気絶縁材の外周面に被せる発熱体と、この発熱体の外周面に被せる外側電気絶縁材と、この外側電気絶縁材の外周面に被せる外ケースと、この外ケースの外周面に被せるバンドとからなり、
前記予熱部は、前記加熱部に対して前記外側電気絶縁材を厚くし、その他は前記加熱部と同じ構成とし、
前記保温部は、前記加熱部に対して前記外ケースと前記バンドの少なくとも一方は熱伝導率が高い材料で構成し、その他は前記加熱部と同じ構成としたことを特徴とする射出装置。
【請求項2】
請求項記載の射出装置であって、
前記予熱部の前記外側電気絶縁材は、前記加熱部の前記外側電気絶縁材を重ねることで、厚くしたことを特徴とする射出装置。
【請求項3】
先端にノズルを有する加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒に巻き付けられる加熱機構とを備える射出装置において、
前記加熱機構は、前記加熱筒の基部に配置される予熱部と、この予熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される加熱部と、この加熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される保温部とを有し、
前記予熱部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が高く構成され、
前記保温部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が低く構成されている射出装置であって、
前記加熱部は、前記加熱筒に巻く内ケースと、この内ケースの外周面に被せる内側電気絶縁材と、この内側電気絶縁材の外周面に被せる発熱体と、この発熱体の外周面に被せる外側電気絶縁材と、この外側電気絶縁材の外周面に被せる外ケースと、この外ケースの外周面に被せるバンドとからなり、
前記予熱部は、前記加熱部に対して単位面積当たりの出力が大きな発熱体を採用し、その他は前記加熱部と同じ構成とし、
前記保温部は、前記加熱部に対して単位面積当たりの出力が小さな発熱体を採用し、その他は前記加熱部と同じ構成としたことを特徴とする射出装置。
【請求項4】
請求項のいずれか1項記載の射出装置であって、
前記内ケース、前記内側電気絶縁材、前記発熱体、前記外側電気絶縁材、前記外ケース及び前記バンドは、各々少なくとも1箇所で割られており、外から加熱筒が見えるように割りの位置が揃えられていることを特徴とする射出装置。
【請求項5】
請求項記載の射出装置であって、
前記保温部における前記割りは、前記加熱筒の真上に位置決めされていることを特徴とする射出装置。
【請求項6】
請求項記載の射出装置であって、
前記予熱部における前記割りは、前記加熱筒の真下に位置決めされていることを特徴とする射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱筒に加熱機構を備えている射出装置に関する。なお、本書で、アルミニウムはアルミニウム合金を含む。
【背景技術】
【0002】
溶融樹脂材料を、先端のノズルから射出する射出装置が、各種知られている(例えば、特許文献1(図1)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図14は従来の射出装置の構造を説明する図である。
図14に示されるように、従来の射出装置100は、先端にノズル101を有する加熱筒102と、この加熱筒102に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリュー103とを備えている。
【0004】
基部側のホッパ104と先端のノズル101との間において、加熱筒102に4個の温度センサ104~107が埋設され、温度センサ104~107に対応して加熱機構111~114が各々配置されている。
【0005】
加熱機構111~114は、各々、加熱筒102に巻かれたバンドヒータ115と、このバンドヒータ115に巻かれた通気層116と、この通気層116に巻かれた断熱層117とからなる。
温度センサ104が設定温度になるように、バンドヒータ115の出力が制御される。
同様に、温度センサ105~107が設定温度になるように、各々のバンドヒータ115の出力が制御される。
【0006】
従来から加熱筒102の軸方向(長手方向)に、加熱機構111~114が配置され、加熱筒102の温度制御が実施されてきたが、加熱機構111と加熱機構112と加熱機構113と加熱機構114は、相互に同じ構造であった。
【0007】
同じ構造であれば、部品の調達コストが下げられると共に誤組みの心配がない。反面、樹脂材料の温度変化を考慮すると、改良の余地はある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6258250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、樹脂材料の温度変化により適合した射出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは樹脂材料の変化を詳細に検証した。
先ず、加熱筒102の基部では、樹脂材料がペレットの形態でホッパ104を介して加熱筒102に供給される。ペレットは塊であり、塊同士が点接触するため、加熱機構114で供給した熱は、ある塊から隣の塊へ小さな伝熱面積で伝えられる。そのため、加熱機構114では伝熱効率が低いことが分かった。
【0011】
一方、加熱筒102の中間部では、樹脂材料が液状化し、伝熱面積が増大する。そのため、加熱機構112、113では伝熱効率が高いことが分かった。
また、加熱筒102の先端では、樹脂材料が所定の温度に達しており、加熱はあまり必要でない。そのため、加熱機構111では温度制御が重要であることが分かった。
以上の知見に基づいて、射出装置の構造を改良したところ、課題を解決することができた。
【0013】
すなわち、請求項に係る発明は、先端にノズルを有する加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒に巻き付けられる加熱機構とを備える射出装置において、
前記加熱機構は、前記加熱筒の基部に配置される予熱部と、この予熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される加熱部と、この加熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される保温部とを有し、
前記予熱部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が高く構成され、
前記保温部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が低く構成されている射出装置であって、
前記加熱部は、前記加熱筒に巻く内ケースと、この内ケースの外周面に被せる内側電気絶縁材と、この内側電気絶縁材の外周面に被せる発熱体と、この発熱体の外周面に被せる外側電気絶縁材と、この外側電気絶縁材の外周面に被せる外ケースと、この外ケースの外周面に被せるバンドとからなり、
前記予熱部は、前記加熱部に対して前記外側電気絶縁材を厚くし、その他は前記加熱部と同じ構成とし、
前記保温部は、前記加熱部に対して前記外ケースと前記バンドの少なくとも一方は熱伝導率が高い材料で構成し、その他は前記加熱部と同じ構成としたことを特徴とする。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項記載の射出装置であって、
前記予熱部の前記外側電気絶縁材は、前記加熱部の前記外側電気絶縁材を重ねることで、厚くしたことを特徴とする。
【0015】
請求項に係る発明は、先端にノズルを有する加熱筒と、この加熱筒に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリューと、前記加熱筒に巻き付けられる加熱機構とを備える射出装置において、
前記加熱機構は、前記加熱筒の基部に配置される予熱部と、この予熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される加熱部と、この加熱部よりも前記加熱筒の先端寄りに配置される保温部とを有し、
前記予熱部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が高く構成され、
前記保温部は、前記加熱部より前記加熱筒への加熱性能が低く構成されている射出装置であって、
前記加熱部は、前記加熱筒に巻く内ケースと、この内ケースの外周面に被せる内側電気絶縁材と、この内側電気絶縁材の外周面に被せる発熱体と、この発熱体の外周面に被せる外側電気絶縁材と、この外側電気絶縁材の外周面に被せる外ケースと、この外ケースの外周面に被せるバンドとからなり、
前記予熱部は、前記加熱部に対して単位面積当たりの出力が大きな発熱体を採用し、その他は前記加熱部と同じ構成とし、
前記保温部は、前記加熱部に対して単位面積当たりの出力が小さな発熱体を採用し、その他は前記加熱部と同じ構成としたことを特徴とする。
【0016】
請求項に係る発明は、請求項のいずれか1項記載の射出装置であって、
前記内ケース、前記内側電気絶縁材、前記発熱体、前記外側電気絶縁材、前記外ケース及び前記バンドは、各々少なくとも1箇所で割られており、外から加熱筒が見えるように割りの位置が揃えられていることを特徴とする。
【0017】
請求項に係る発明は、請求項記載の射出装置であって、
前記保温部における前記割りは、前記加熱筒の真上に位置決めされていることを特徴とする。
【0018】
請求項に係る発明は、請求項記載の射出装置であって、
前記予熱部における前記割りは、前記加熱筒の真下に位置決めされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、予熱部は、加熱部より加熱筒への加熱性能が高くなるようにしたので、ペレットの温度をより高めることができる。
また、保温部は、加熱部より加熱筒への加熱性能が低くなるようにしたので、樹脂材料を加熱し過ぎることがなく、所望の温度に容易に制御することができる。
よって、請求項1によれば、樹脂材料の温度変化により適合した射出装置が提供される。
【0020】
加えて、請求項に係る発明では、予熱部は、加熱部に対して外側電気絶縁材を厚くし、保温部は、加熱部に対して外ケースとバンドの少なくとも一方は熱伝導率が高い材料で構成した。すなわち、予熱部と加熱部と保温部は、構成要素の大部分が共通であり、部品の調達コストを抑えつつ、組み立ての容易さが維持される。
【0021】
請求項では、予熱部の外側電気絶縁材は、加熱部の外側電気絶縁材を重ねたものである。外側電気絶縁材の単品は、予熱部と加熱部と保温部とで共用できる。
【0022】
請求項3に係る発明では、予熱部は、加熱部より加熱筒への加熱性能が高くなるようにしたので、ペレットの温度をより高めることができる。
また、保温部は、加熱部より加熱筒への加熱性能が低くなるようにしたので、樹脂材料を加熱し過ぎることがなく、所望の温度に容易に制御することができる。
よって、請求項3によれば、樹脂材料の温度変化により適合した射出装置が提供される。
加えて、請求項では、予熱部と加熱部と保温部とで発熱体を異ならせた。その他の構成要素は共通であるため、部品の調達コストを抑えることができ、部品の管理が容易になる。
【0023】
請求項では、内ケース、内側電気絶縁材、発熱体、外側電気絶縁材、外ケース及びバンドは、各々少なくとも1箇所で割られており、外から加熱筒が見えるように割りの位置が揃えられている。割りの位置を揃えることにより、バンド締め付け時の密着性が高まり、伝熱性を高めることができ、省エネルギーが図れる。
【0024】
請求項に係る発明では、保温部における割りは、加熱筒の真上に位置決めされている。対流伝熱は上向きで最大となるため、保温部の割りから熱が盛んに大気へ放出され、保温部の温度制御性能がさらに高まる。
【0025】
請求項に係る発明では、予熱部における割りは、加熱筒の真下に位置決めされている。対流伝熱は下向きで最小となるため、予熱部の割りから熱がほとんど大気へ放出されない。結果、予熱部の加熱性能がさらに高まると共に省エネルギーが図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る射出装置の要部を示す側面図である。
図2】発熱体の斜視図である。
図3図1の3-3線断面図であって加熱部の断面図である。
図4図3の4-4線断面の分解図である。
図5図1の5-5線断面図であって予熱部の断面図である。
図6図5の6-6線断面の分解図である。
図7図1の7-7線断面図であって保温部の断面図である。
図8図7の8-8線断面の分解図である。
図9】(a)は保温部の作用説明図、(b)は加熱部の作用説明図、(c)は予熱部の作用説明図である。
図10】(a)はバンドの変形例の断面図、(b)は(a)のb矢視図である。
図11】(a)~(c)は発熱体の変更例を説明する図である。
図12】(a)は発熱体のさらなる変更例を説明する斜視図、(b)は(a)のb―b線断面図、(c)は比較例を説明する断面図である。
図13】(a)は保温部の割りの好ましい位置を示す図、(b)は加熱部の割りの好ましい位置を示す図、(c)は予熱部の割りの好ましい位置を示す図である。
図14】従来の射出装置の構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0028】
図1に示されるように、射出装置10は、先端にノズル11を有する加熱筒12と、この加熱筒12に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリュー13と、加熱筒12に巻き付けられる加熱機構20と、加熱筒12に接続される落下口ブロック15と、この落下口ブロック15に取付けられるホッパ17とを備える。ペレット状の樹脂材料は、ッパ17から落下口16を介して加熱筒12内へ落とされる。
【0029】
加熱機構20は、加熱筒12の基部側に配置される予熱部21と、この予熱部21よりも加熱筒12の先端寄りに配置される加熱部22と、この加熱部22よりも加熱筒12の先端寄りに配置される保温部23とからなる。加熱機構20の主要部品の一つである発熱体の構造を図2で説明する。
【0030】
図2に示されるように、発熱体25は、絶縁板26に電熱線27をつるまき状に巻いてなる。電熱線27は、裸線である。そのため、発熱体25は、後述する電気絶縁材で上と下から被われる。
【0031】
予熱部21と加熱部22と保温部23のうち、先ず、加熱部22の構成を、図3に基づいて説明する。
図3に示されるように、加熱部22は、加熱筒(図1、符号12)に巻く内ケース31と、内ケース31の外周面に被せる内側電気絶縁材32と、この内側電気絶縁材32の外周面に被せる発熱体25と、この発熱体25の外周面に被せる外側電気絶縁材34と、この外側電気絶縁材34の外周面に被せる外ケース35と、この外ケース35の外周面に被せるバンド36とからなる。
【0032】
バンド36は、割りが1箇所であるワンピースバンドが好ましいが、割りが2箇所であるツーピースバンドであってもよい。ワンピースバンドやツーピースバンドであれば、バンド36は、ボルト37を締めることで内径を小さくすることができる。
【0033】
内ケース31の割り位置と、内側電気絶縁材32の割り位置と、発熱体25の割り位置と、外側電気絶縁材34の割り位置と、外ケース35の割り位置と、バンド36の割り位置を合わせる。すると、ボルト37を締めることで、加熱筒12に内ケース31を密着させ、内ケース31に内側電気絶縁材32を密着させ、内側電気絶縁材32に発熱体25を密着させ、発熱体25に外側電気絶縁材34を密着させ、外側電気絶縁材34に外ケース35を密着させ、外ケース35にバンド36を密着させることができる。
【0034】
図4図3の4-4線断面の分解図である。
図4に示されるように、加熱部22は、内ケース31と、内側電気絶縁材32と、発熱体25と、外側電気絶縁材34と、外ケース35と、バンド36とを重ねてなる。
内ケース31、外ケース35及びバンド36は、錆びにくいステンレス鋼(例えば、SUS304)の薄板が好適である。
内側電気絶縁材32及び外側電気絶縁材34は、例えば0.4mm厚さのマイカ(雲母)である。0.2mm厚さのマイカを2枚重ねてもよい。
【0035】
なお、内ケース31の内側に、想像線で示す冷却ジャケット38を追加することは差し支えない。冷却ジャケット38は、冷媒(水、空気など)が適宜流される。
【0036】
図5図1の5-5線断面図であって予熱部21の断面図であり、図6図5の6-6線断面の分解図である。
図6において、予熱部21では、外側電気絶縁材34Bが図4と異なるが、その他の内ケース31、内側電気絶縁材32、発熱体25、外ケース35及びバンド36は、形態、材質とも図4と同じである。
【0037】
外側電気絶縁材34Bは、図4に示す外側電気絶縁材34の5倍~10倍の厚さ(2mm~4mm)とする。好ましくは、外側電気絶縁材34Bは、5枚~10枚の図4の外側電気絶縁材34を重ねて得る。
【0038】
図7図1の7-7線断面図であって保温部23の断面図であり、図8図7の8-8線断面の分解図である。
図8において、保温部23では、外ケース35Bの材質が図4と異なるが、その他の内ケース31、内側電気絶縁材32、発熱体25、外側電気絶縁材34及びバンド36は、形態、材質とも図4と同じである。
外ケース35Bは、アルミニウムをめっきした炭素鋼板(アルミニウムめっき鋼板)が好適である。
【0039】
以上に述べた材質及びこの材質に対応する熱伝導率λ(W/m・K)を、加熱部、予熱部、保温部に付記したものを、表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
マイカの熱伝導率λは0.5(W/m・K)であり、SUS304の熱伝導率λ16.3(W/m・K)より格段に小さい。すなわち、マイカは電気絶縁性能に加えて、断熱性能をも有する。
【0042】
加熱部に対して予熱部では、外側電気絶縁材の厚さを5倍~10倍にした。厚さが5倍になると伝熱量は1/5になり、厚さが10倍になると伝熱量は1/10になる。すなわち、予熱部では、外側電気絶縁材で断熱される。
【0043】
また、保温部では、外ケースにアルミニウムめっき鋼板を採用した。SUS304の熱伝導率λが16.3(W/m・K)であるのに対して、炭素鋼の熱伝導率λは54(W/m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率λが204(W/m・K)であるため、アルミニウムめっき鋼板の熱伝導率λは十分に大きくなる。結果、外ケースからバンドへの伝熱量が増大し、バンドから大気への放熱量が増加する。
【0044】
好ましくは、保温部変更例に示されるように、SUS304であったバンドをアルミニウムめっき鋼板に変更する。
又は、外ケースとバンドを共にアルミニウムめっき鋼板にすることは差し支えない。バンドから大気への放熱量がさらに増加する。
【0045】
表1で説明した作用を、図面に基づいて再度説明する。
図9(a)で保温部23の作用が示され、図9(b)で加熱部22の作用が示され、図9(c)で予熱部21の作用が示される。
図9(b)に示される加熱部22では、発熱体25の発生熱は、約半分の伝熱量q1が加熱筒12に伝わり、残りの約半分のq2が大気へ放熱される。
【0046】
対して、図9(c)に示される予熱部21では、外側電気絶縁材34Bの断熱作用により、大気への放熱q3は小さくなり、発熱体25の発生熱の大部分の熱(伝熱量)q4が加熱筒12に伝わる。
【0047】
また、図9(a)に示される保温部23では、外ケース35Bとバンド36の少なくとも一方がアルミニウムめっき鋼板で構成されているため、大気への放熱q5が大きくなり、その分だけ加熱筒12への伝熱量q6は小さくなる。
保温部23の温度が所定温度を超えた場合、放熱q5が大きいため、速やかに温度を所定温度に下げることができる。よって、保温部23での温度制御性能は、加熱部22や予熱部21より格段に良くなる。
【0048】
加熱部22を基準にすると、伝熱量q1より伝熱量q4が大きくなるように予熱部21は構成され、伝熱量q1より伝熱量q6が小さくなるように保温部23が構成されている。
すなわち、予熱部21は、加熱部22より加熱筒12への加熱性能が高く構成され、保温部23は、加熱部22より加熱筒12への加熱性能が低く構成されている。
【0049】
バンド36の変形例を、図10に基づいて説明する。
図10(a)にバンド36Bの断面図が示され、図10(b)に図10(a)のb矢視図が示される。
図10(b)に示されるように、バンド36Bに適当な大きさの冷却窓39が開けられている。
【0050】
図9(a)に示されるバンド36を、図10(b)に示されるバンド36Bに置き換えると、放熱q5は、バンド36Bを介さないで、外ケース35から直接大気へ放熱されるため、さらに増加する。
そのため、図10の構造であれば、バンド36Bの材質は、SUS304が採用可能となり、材料の選択枝が増える。
【0051】
次に、発熱体25の変更例を、図11に基づいて説明する。
図11(b)に加熱部で使用する発熱体25が示される。
図11(c)に予熱部で使用する発熱体25が示される。この発熱体25は、加熱部での発熱体25に比較して、電熱線27を密に巻くことで、単位面積当たりの出力が増される。
図11(a)に保温部で使用する発熱体25が示される。この発熱体25は、加熱部での発熱体25に比較して、電熱線27を粗に巻くことで、単位面積当たりの出力が減らされる。
【0052】
このような発熱体25を、加熱部、予熱部及び保温部に適用した例が、表2に示される。
【0053】
【表2】
【0054】
加熱部、予熱部及び保温部において、内ケース、内側電気絶縁材、外側電気絶縁材、外ケース及びバンドは、共通であって、熱伝導率は共通である。
加熱部の発熱体を基準にすると、予熱部の発熱体の出力が大きく、保温部の発熱体の出力が小さい。
すなわち、予熱部21は、加熱部22より加熱筒12への加熱性能が高く構成され、保温部23は、加熱部22より加熱筒12への加熱性能が低く構成されている。
【0055】
表2に示されるように、加熱部、予熱部、保温部において、内ケース、内側電気絶縁材、外側電気絶縁材、外ケース及びバンドが共通化でき、部品調達が楽になる。
【0056】
発熱体25のさらなる変更例を、図12に基づいて説明する。
図12(a)に示されるように、絶縁板26は、貫通穴41を有する。この貫通穴41は千鳥状に設けられている。貫通穴41を通過するようにして、電熱線27が巻かれる。絶縁板26の下面が加熱筒側の面である。
図12(b)に示されるように、長さL1で示す部分が加熱筒に臨む。残りの長さL2は長さL1に比較して格段に短い。L1が概ね70%でL2が概ね30%となる。
【0057】
図12(c)は比較例を示し、図2の断面図に相当する。この比較例では長さL3が加熱筒に臨む。この長さL3は残りの長さL4とほぼ等しくなる。L3とL4が共に50%となる。
L1とL3が、加熱筒の加熱に大きく寄与すると考えると、図12(a)、(b)に示す発熱体25の方が、図2に示す発熱体25より、望ましいといえる。
【0058】
図3で、ボルト37近傍の割りを説明した。この割りは、熱的考察により、好ましい位置が決まる。好ましい位置を図13に基づいて説明する。
対流現象により、物を加熱すると、物の上面から上方へ熱が逃げ、物の下面からは熱がほとんど逃げないことが知られている。
別の観点から、物の上面の熱伝達係数は、物の側面の熱伝達係数より格段に大きい。物の下面の熱伝達係数は、物の側面の熱伝達係数より格段に小さい。
【0059】
図13(a)に示されるように、保温部23では、割りの位置を加熱筒12の真上にすると、上方への放熱q7が大きくなり、温度制御性能が高まる。
図13(c)に示されるように、予熱部21では、割りの位置を加熱筒12の真下にすると、下方への放熱q9が小さくなり、加熱性能が高まる。
【0060】
図13(b)に示されるように、加熱部22では、割りの位置を加熱筒12の真横にする。ある程度の温度制御性能を維持しつつある程度の加熱性能が得られる。
【0061】
尚、本発明は、加熱筒12に1個又は2個のバンドヒータのみを備える射出装置には適用されないが、3個又は4個以上のバンドヒータを備える射出装置に適用される。4個以上の場合は、4個以上のバンドヒータに、予熱部21と、加熱部22と、保温部23とが含まれていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、加熱筒に、予熱部と加熱部と保温部とを備える射出装置に好適である。
【符号の説明】
【0063】
10…射出装置、11…ノズル、12…加熱筒、13…スクリュー、20…加熱機構、21…予熱部、22…加熱部、23…保温部、25…発熱体、31…内ケース、32…内側電気絶縁材、34…外側電気絶縁材、34B…厚くした外側電気絶縁材、35…外ケース、35B…熱伝導率を高めた外ケース、36、36Bバンド、q1…加熱部における加熱筒への伝熱量、q4…予熱部における加熱筒への伝 熱量、q6…保温部における加熱筒への伝熱量。
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