(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】整圧装置
(51)【国際特許分類】
G05D 16/16 20060101AFI20220325BHJP
F16K 17/28 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
G05D16/16 J
F16K17/28
(21)【出願番号】P 2021075422
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2021-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智大
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 良一
(72)【発明者】
【氏名】島田 広夫
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-166866(JP,A)
【文献】特開平02-211506(JP,A)
【文献】特開2012-149833(JP,A)
【文献】特開2009-245112(JP,A)
【文献】特開2016-003800(JP,A)
【文献】実開昭49-118132(JP,U)
【文献】実開平04-008112(JP,U)
【文献】特開2012-099019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/16
F16K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流れるメイン配管と、
前記メイン配管に設けられたメインガバナと、
前記メインガバナより上流側の前記メイン配管から分岐するパイロットラインと、
前記パイロットラインに設けられたパイロットガバナと、
前記パイロットガバナに接続されたブリードラインと、
前記ブリードラインとは別に前記パイロットガバナに接続され前記ブリードラインと合流する圧力検知ラインと、
前記ブリードラインと前記圧力検知ラインとの合流部と、前記メインガバナより下流側の前記メイン配管との間を接続する共通配管と、
前記共通配管に設けられ流体の流通を遮断する開閉装置と、
を備え
、
前記圧力検知ラインの前記パイロットガバナとの接続部には、絞りが設けられ、
前記絞りの径は、前記圧力検知ラインの配管の内径より小さい、
整圧装置。
【請求項2】
前記圧力検知ライン、前記ブリードライン及び前記合流部のうち少なくともいずれかにボリュームタンクが設けられている、
請求項
1に記載の整圧装置。
【請求項3】
前記開閉装置は、遠隔操作される、
請求項1
又は2に記載の整圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、例えば都市ガスが内側を流れる流体導管としてのメイン配管(パイプライン)等に、需給の変動に応じて圧力を調整する整圧装置(整圧器)を設ける技術が知られている。特許文献1の整圧装置には、メイン配管を開閉可能なメインガバナが設けられていると共に、メインガバナよりガスの流れの上流側の位置でメイン配管から分岐するパイロットラインが設けられている。また、パイロットラインには、内部を流れるガスの流量に応じてメインガバナの開度を調整するパイロットガバナが設けられている。
【0003】
また、特許文献1には、災害時等の所定の場合にガス供給の安定性を確保するため、整圧装置から離れた場所から整圧装置を遠隔操作することによってメイン配管を流れるガスの流通を遮断するガス遠隔遮断装置が開示されている。特許文献1のガス遠隔遮断装置用の電磁弁は、パイロットラインにおけるパイロットガバナの下流側に設置されている。
【0004】
特許文献1のガス遠隔遮断装置では、外部から受信した信号に基づく遠隔操作によって電磁弁が閉弁されることで、メインガバナの動作を停止し、下流側のメイン配管へのガス供給を停止することができる。また、メイン配管内のガス圧力が所定圧力になっていることを確認した後、電磁弁が開弁されることによって、ガス供給を開始することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の整圧装置では、パイロットガバナとメインガバナの下流配管との間は、1本の配管によって接続されている。すなわち、特許文献1の整圧装置のパイロットガバナと下流側のメイン配管との間の配管の構成は1系統であり、この1系統の配管に、ガス遠隔遮断装置用の電磁弁が開閉装置として設けられている。
【0007】
一方、パイロットガバナと下流側のメイン配管との間の配管の構成が、ブリードラインと圧力検知ラインとを別々の配管に分けることによって整圧性能を向上させる、2系統の整圧装置も知られている。ブリードラインと圧力検知ラインとが別々である2系統の整圧装置の場合、圧力検知ラインにおけるガス圧力の検知精度が高まると共にガス流量を制御し易くなるので、整圧装置の整圧性能を向上させることができる。
【0008】
ここで、2系統の整圧装置に、特許文献1のようなガス遠隔遮断装置を設ける場合、ブリードラインにガス遠隔遮断装置用の開閉装置を設置すること自体は、可能である。しかし、2系統の整圧装置では、パイロットガバナからそれぞれ延びるブリードラインと圧力検知ラインとが、下流側のメイン配管に別々に合流する。このためブリードラインに設置された開閉装置にかかる差圧は、1系統の場合の開閉装置にかかる差圧より大きくなる。
【0009】
このため、開閉装置の1次側圧力が、メインガバナの上流側の圧力と同等となるため、2系統の整圧装置にガス遠隔遮断装置を設置する場合には、メインガバナと同等の差圧が締め切れる程度の高い締切性能を備えた開閉装置が求められる。このため、ガス遠隔遮断装置の設置コストが嵩むという問題が生じる。
【0010】
本発明は上記した問題に着目して為されたものであって、パイロットガバナと下流側のメイン配管との間の配管の構成がブリードラインと圧力検知ラインとに分かれている2系統の整圧装置のパイロットラインにガス遮断用の開閉装置を設置する場合に、メインガバナと同等の差圧が締め切れる程度の高い締切性能を備えた開閉装置を必要とせず、設置コストを抑えることができると共に、2系統の配管構成から得られる整圧性能の向上効果を確保することが可能な整圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様に係る整圧装置は、内部に流体が流れるメイン配管と、メイン配管に設けられたメインガバナと、メインガバナより上流側のメイン配管から分岐するパイロットラインと、パイロットラインに設けられたパイロットガバナと、パイロットガバナに接続されたブリードラインと、ブリードラインとは別にパイロットガバナに接続されブリードラインと合流する圧力検知ラインと、ブリードラインと圧力検知ラインとの合流部と、メインガバナより下流側のメイン配管との間を接続する共通配管と、共通配管に設けられ流体の流通を遮断する開閉装置と、を備え、圧力検知ラインのパイロットガバナとの接続部には、絞りが設けられ、絞りの径は、圧力検知ラインの配管の内径より小さい。
【0012】
上記ある態様では、開閉装置は、1系統の配管構成部分である共通配管の位置に設けられている。このため、流体の流通を遮断する開閉装置にかかる差圧を2系統の場合より抑えることができるので、メインガバナと同等の差圧が締め切れる程度の高い締切性能を開閉装置が備えていなくても、パイロットガバナを閉止可能である。
【0013】
また、パイロットガバナと合流部との間には、ブリードラインと圧力検知ラインとが別々に分かれて設けられた2系統の配管構成部分が形成されているため、整圧装置の整圧性能を向上させることができる。
【0015】
また、圧力検知ラインの絞りの径が圧力検知ラインの配管の内径より小さいため、圧力検知ラインの配管内の圧力のパイロットガバナへの伝播が敏感になり過ぎることを防止できる。このため、メインガバナのバイブレーションを抑制できると共に、整圧性能の安定性を向上できる。
【0016】
また、上記ある態様では、圧力検知ライン、ブリードライン及び合流部のうち少なくともいずれかにボリュームタンクが設けられてよい。
【0017】
ボリュームタンクが設けられることによって、ブリードラインの圧力変動がパイロットガバナに伝播し難くなるので、メインガバナのバイブレーションを抑制できると共に、整圧性能の安定性を向上できる。
【0018】
また、上記ある態様では、開閉装置は遠隔操作されてもよい。開閉装置が遠隔操作されることによって、ガスの流通を遠隔で遮断可能な整圧装置を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パイロットガバナの下流側の配管の構成がブリードラインと圧力検知ラインとに分かれている2系統の整圧装置のパイロットラインにガス遮断用の開閉装置を設置する場合に、メインガバナと同等の差圧が締め切れる程度の高い締切性能を備えた開閉装置を必要とせず、設置コストを抑えることができると共に、2系統の配管構成から得られる整圧性能の向上効果を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る整圧装置の構成を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る整圧装置の制御装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0022】
<整圧装置の構造>
本実施形態に係る整圧装置10は、メイン配管Lと、メインガバナ12と、パイロットライン14と、パイロットガバナ16と、ブリードライン18と、圧力検知ライン20と、共通配管22と、開閉装置24とを備える。
【0023】
整圧装置10は、メインガバナ(メインバルブ)12に対して上流側のメイン配管L1における流体圧(1次圧力P1)を、設定圧力(2次圧力P2)に減圧して、メインガバナ12に対して下流側のメイン配管L2に供給する。整圧装置10では、上流側のメイン配管L1の負荷変動や下流側のメイン配管L2の需要変動に対して、下流側のメイン配管L2の2次圧力P2が設定された圧力になるように、圧力調整が行われる。
【0024】
(メイン配管、メインガバナ)
本実施形態では、メイン配管Lの内部には例えば都市ガス等の流体が流れる。なお、本発明では、これに限定されず、流体は、例えばプロパンガス等の他の流体であってよい。メイン配管Lは、メインガバナ12より流体の流れの上流側(
図1中の左側)のメイン配管L1と下流側(
図1中の右側)のメイン配管L2とに分けられる。
【0025】
メインガバナ12は、メイン配管Lに設けられている。具体的には、メインガバナ12は、上流側のメイン配管L1と下流側のメイン配管L2との間に配置されている。本実施形態では、メインガバナ12としてアキシャルフロー型バルブが採用されている。なお、本発明では、メインガバナ12は、アキシャルフロー型に限定されず、適宜変更できる。
【0026】
メインガバナ12は、一対のクロージャ12Xと、スリーブ12Yと、バルブボディ12Zと、を備えている。クロージャ12Xには、複数のスリットが形成されている。スリーブ12Yは、例えばゴム製であり、クロージャ12Xのスリットを段階的に塞ぐ。バルブボディ12Zは、クロージャ12X及びスリーブ12Yを収容する。駆動部12Aは、
図1中の上側のスリーブ12Yとバルブボディ12Zの内側の空間とによって形成されている。
【0027】
メインガバナ12の駆動部12Aには、パイロットライン14から分岐した制御圧力供給流路15が連通し、制御圧力供給流路15によって、制御圧力(駆動圧)PCが供給される。すなわち、制御圧力PCは、パイロットガバナ16によって調整される。制御圧力PCによって、メインガバナ12の開閉状態が制御される。
【0028】
(パイロットライン)
パイロットライン14は、上流側のメイン配管L1から分岐して設けられ、下流側のメイン配管L2に連通する。パイロットライン14にはパイロットガバナ(パイロットバルブ)16が設けられている。また、制御圧力供給流路15は、パイロットライン14におけるパイロットガバナ16の上流側流路14Xから分岐して設けられている。
【0029】
上流側流路14Xにおける制御圧力供給流路15の分岐部より上流側のパイロットライン14には、抵抗部11が設けられている。抵抗部11によって、上流側のメイン配管L1における1次圧力P1が減圧され、メインガバナ12を駆動する制御圧力PCを得ることができる。
【0030】
本実施形態では、抵抗部11は、流体の流速を変化させる可変レストリクタである。すなわち、本実施形態に係る整圧装置10は、可変レストリクタ制御式である。なお、本発明の抵抗部は、可変レストリクタに限定されず、流体の流速を変化させる装置である限り、任意の装置を採用できる。
【0031】
(パイロットガバナ)
パイロットガバナ16の内部には、複数のダイヤフラム16A,16Bが設けられ、ダイヤフラム16A,16Bによって、パイロットガバナ16の内部に複数の圧力室16X,16Y,16Zが区画されている。
【0032】
図1中の上側の圧力室16Xは、大気に連通すると共に、圧力室16Xには開閉圧を設定するパイロットスプリング16Sが設けられている。
図1中の中央の圧力室16Yは、ダイヤフラム16A,16Bの間に位置し、圧力室16Yには、上流側流路14Xのメインガバナ12と反対側の開閉端部16Vと、下流側のメイン配管L2と反対側のブリードライン18の端部とが連通している。
図1中の下側の圧力室(検知室)16Zには、圧力検知ライン(2次圧力検知流路)20が連通している。
【0033】
パイロットガバナ16は、圧力検知ライン20を介して検知された2次圧力P2に応じて開閉し、パイロットライン14を流れる流体の通過流量を調整する。具体的には、下流側のメイン配管L2の2次圧力P2が変化すると、2次圧力P2の変化は、圧力検知ライン20を通ってパイロットガバナ16の圧力室16Zに伝達される。伝達された2次圧力P2の変化に応じて、パイロットガバナ16のパイロットスプリング16Sが変位し、結果、パイロットガバナ16の開度は変化する。
【0034】
パイロットガバナ16の開度が変化することによって、パイロットライン14における流体の通過流量が調整される。パイロットライン14における通過流量の調整によって、抵抗部11での圧力損失が変化する。圧力損失の変化によって、制御圧力供給流路15を介して駆動部12Aに供給される制御圧力PCが変化するため、メインガバナ12の開閉動作が制御される。
【0035】
(ブリードライン)
ブリードライン18は、パイロットライン14におけるパイロットガバナ16の下流側に接続されている。また、ブリードライン18のパイロットガバナ16と反対側の端部は、合流部28で圧力検知ライン20と合流する。ブリードライン18のパイロットガバナ16との接続部には、流体の流量を調整する絞り26Aが設けられている。
【0036】
本実施形態では、ブリードライン18の絞り26Aは、ガスの流れ方向に沿ってほぼ同径の貫通孔を有し、貫通孔の断面形状は、円形である。絞り26Aの貫通孔の内側を流れる流体の流量は、絞り26Aの貫通孔の径とガスの流れ方向に沿った長さとに応じて調整される。なお、本発明では、ブリードライン18の絞り26Aの断面形状は、円形状に限定されず他の任意の幾何学形状であってよい。
【0037】
(圧力検知ライン)
圧力検知ライン20は、ブリードライン18とは別の配管であり、パイロットガバナ16と下流側のメイン配管L2との間に、ブリードライン18とは別々に接続されている。また、圧力検知ライン20のパイロットガバナ16と反対側の端部は、合流部28の位置でブリードライン18と合流する。また、圧力検知ライン20のパイロットガバナ16との接続部には、絞り26Bが設けられている。
【0038】
本実施形態では、圧力検知ライン20の絞り26Bは、ガスの流れ方向に沿ってほぼ同径の貫通孔を有し、貫通孔の断面形状は、円形である。なお、本発明では、圧力検知ライン20の絞り26Bの断面形状は、円形状に限定されず他の幾何学形状であってよい。
【0039】
また、本実施形態では、圧力検知ライン20に設けられた絞り26Bの径は、圧力検知ライン20の配管の内径Dより小さく設定されている。
【0040】
(共通配管)
共通配管22は、合流部28と、メインガバナ12より下流側のメイン配管L2との間を接続する。合流部28では、ブリードライン18のパイロットガバナ16と反対側の端部と、圧力検知ライン20のパイロットガバナ16と反対側の端部とが合流している。すなわち、ブリードライン18及び圧力検知ライン20はそれぞれ、共通配管22を介して下流側のメイン配管L2に連通している。また、共通配管22には、開閉装置24が設けられている。
【0041】
(ボリュームタンク)
圧力検知ライン20には、流体を一時的に貯留するボリュームタンク30が接続されている。なお、本発明では、ボリュームタンク30は、圧力検知ライン20、ブリードライン18及び合流部28のうち少なくともいずれかに接続されればよい。
【0042】
また、
図1中に例示した整圧装置10では、圧力検知ライン20に絞り26Bとボリュームタンク30とが両方配置された場合が例示されたが、本発明では、絞り26Bとボリュームタンク30のうち一方のみが配置されてよい。
【0043】
(遠隔遮断装置)
図2に示すように、開閉装置24、電動モータM、主制御装置101及び遠隔制御装置102は、本実施形態のガス遠隔遮断装置を構成する。
【0044】
(開閉装置)
本実施形態の開閉装置24は、ガス遠隔遮断装置用であり、例えば、共通配管22の開度を無段階で変化させることが可能な電磁弁である。なお、本発明では、開閉装置は、電磁弁に限定されず、共通配管22の内側の流路を開閉できる部材であればよい。
【0045】
また、本実施形態の開閉装置24は、主制御装置101及び遠隔制御装置102を介して遠隔操作される。なお、本発明では、開閉装置は、遠隔制御装置102が用いられることなく制御されてもよいし、或いは、主制御装置101を介することなく作業員によって手動で直接操作されてもよい。すなわち、本発明の開閉装置は、ガス遠隔遮断装置用に限定されない。
【0046】
(電動モータ)
開閉装置24には、駆動源としての電動モータMが接続されている。電動モータMによって開閉装置24が駆動されることで、開閉装置24の開弁動作及び閉弁動作が実行される。開閉装置24の閉弁動作によって、整圧装置10の下流側のメイン配管L2における流体の流通が遮断される。また、開閉装置24の開弁動作によってメイン配管L2で流体が流れる。
【0047】
電動モータMは、主制御装置101の出力側に接続されている。また、主制御装置101の入力側には遠隔制御装置102が接続されている。換言すると、電動モータMは、主制御装置101を介して遠隔制御装置102に接続されている。
【0048】
(主制御装置)
主制御装置101は、電動モータMを介して開閉装置24の開閉動作を制御する。主制御装置101は、各種のプログラムを読み出して各種の演算処理を実行するCPU101Aと、各種のプログラムが記憶されたROM101Bと、演算処理を実行する際にデータの処理領域として機能するRAM101Cとを備えるコンピュータである。
【0049】
なお、
図2中での図示を省略するが、主制御装置101の入力側には、メインガバナ12に接続された開度計測装置、上流側のメイン配管L1に接続された1次圧力計、及び下流側のメイン配管L2に接続された2次圧力計が接続されてよい。主制御装置101は、1次圧力計から出力される圧力信号に基づいてガスの1次圧力P1を検知できると共に、2次圧力計から出力される圧力信号に基づいて2次圧力P2を検知できる。
【0050】
(遠隔制御装置)
遠隔制御装置102は、主制御装置101に通信ケーブル(不図示)を介して接続されている。遠隔制御装置102は、例えばガスの供給状況を監視する監視センターに配置されている。遠隔制御装置102によって、整圧装置10の稼働状態が監視されると共に、主制御装置101が遠隔操作で制御され、結果、開閉装置24が遠隔操作される。
【0051】
遠隔制御装置102には、人為的に操作が可能な起動操作スイッチ40及び停止操作スイッチ41が設けられている。起動操作スイッチ40の操作によって、主制御装置101に対し開閉装置24を開弁する操作信号が出力される。また、停止操作スイッチ41の操作によって、主制御装置101に対し開閉装置24を閉弁する操作信号が出力される。
【0052】
<整圧装置の動作>
次に、本実施形態に係る整圧装置10の動作を、遠隔遮断装置用の開閉装置24の動作を中心に説明する。例えば、整圧装置10の稼働中、監視センターにおいて、遠隔遮断によって整圧装置10の下流側のメイン配管L2へのガスの供給を停止する必要があると判断された場合、停止操作スイッチ41を操作する。具体的には、開閉装置24を閉弁する操作信号を主制御装置101に対して出力する。
【0053】
開閉装置24を閉弁する操作信号が入力された主制御装置101は、電動モータMを介して開閉装置24を駆動し、開閉装置24を閉弁する。開閉装置24の閉弁によって共通配管22におけるガスの流通が遮断されるため、上流側のメイン配管L1からパイロットライン14を経由して下流側のメイン配管L2へと流れるガスの流通は停止する。このため、パイロットライン14から分岐する制御圧力供給流路15を介した制御圧力PCが形成されない。そして、メインガバナ12が閉弁することによって、メインガバナ12におけるガスの流通が遮断される。
【0054】
一方、監視センターにおいて、整圧装置10を起動して下流側のメイン配管L2へのガスの供給を開始する必要があると判断された場合、起動操作スイッチ40を操作して、開閉装置24を開弁する操作信号を主制御装置101に対して出力する。
【0055】
開閉装置24を開弁する操作信号が入力された主制御装置101は、電動モータMを介して開閉装置24を駆動し、開閉装置24を開弁する。開閉装置24の開弁によって共通配管22でのガスの流通の遮断が解除されるため、上流側のメイン配管L1からパイロットライン14を経由して下流側のメイン配管L2へと流れるガスの流通が始まる。
【0056】
このため、パイロットガバナ16が動作し、2次圧力P2が設定圧に調整されるように、制御圧力供給流路15を介した制御圧力PCが形成される。そして、メインガバナ12が開弁することによって、メインガバナ12におけるガスの遮断状態が解除されると共にガスの流通が始まる。
【0057】
(作用効果)
本実施形態に係る整圧装置10では、開閉装置24は、1系統の配管構成部分である共通配管22の位置に設けられている。このため、流体の流通を遮断する開閉装置24にかかる差圧を2系統の場合より抑えることができるので、メインガバナ12と同等の差圧が締め切れる程度の高い締切性能を開閉装置24が備えていなくても、パイロットガバナ16を閉止可能である。
【0058】
また、本実施形態では、パイロットガバナ16と合流部28との間には、ブリードライン18と圧力検知ライン20とが別々に分かれて設けられた2系統の配管構成部分が形成されている。このため、整圧装置10の整圧性能を向上させることができる。
【0059】
よって、本実施形態によれば、メインガバナ12と同等の差圧が締め切れる程度の高い締切性能を備えた開閉装置を必要とせず、設置コストを抑えることができると共に、2系統の配管構成から得られる整圧性能の向上効果を確保できる。
【0060】
また、2系統の整圧装置では、パイロットガバナ16によるメインガバナ12の開閉動作の制御のためにパイロットガバナ16の開度が変化すると、パイロットガバナ16の開度の変化によって、ブリードライン18の圧力変動が発生する場合がある。発生したブリードライン18の圧力変動は、合流部28を介して圧力検知ライン20に伝播し、更に、圧力検知ライン20を通じてパイロットガバナ16の圧力室16Zに伝播する。
【0061】
すなわち、メインガバナ12の制御のためには不必要な圧力変動が、圧力検知ライン20を経由してパイロットガバナ16へ伝播されてしまう。このため、パイロットガバナ16では、下流側のメイン配管L2の2次圧力P2の検知に基づいて生じる通常の開度の変化とは別に、ブリードライン18の圧力変動に起因する開度の変化が発生する。
【0062】
換言すると、パイロットガバナ16が、圧力検知ライン20の配管内から伝播される圧力変動に対し、敏感に反応し過ぎてしまう。結果、メインガバナ12の制御圧力PCが変動し過ぎるため、メインガバナ12にバイブレーションが生じ易い。また、整圧装置10における下流側のメイン配管L2での設定圧力(2次圧力P2)を安定制御することが難しくなるため、整圧性能の安定性が低くなる。
【0063】
ここで、本実施形態では、圧力検知ライン20のパイロットガバナ16との接続部には、絞り26Bが設けられ、絞り26Bの径は、圧力検知ライン20の配管の内径Dより小さい。よって、圧力検知ライン20の配管内の圧力のパイロットガバナ16への伝播が敏感になり過ぎることが防止できる。このため、メインガバナ12のバイブレーションを抑制できると共に、整圧性能の安定性を向上できる。なお、絞り26Bの寸法は、圧力検知のために必要な最低の値が確保されるように設定されている。
【0064】
また、本実施形態では、圧力検知ライン20にボリュームタンク30が設けられているので、圧力検知ライン20を介して伝播されるブリードライン18の圧力変動がパイロットガバナ16の圧力室16Zに伝播し難くなる。すなわち、圧力変動のゲインが小さくなる。このため、絞り26Bが設けられた場合と同様、ブリードライン18の圧力変動に起因する開度の変化を低減できるので、メインガバナ12のバイブレーションを抑制できると共に、整圧性能の安定性を向上できる。
【0065】
なお、ボリュームタンク30は、ブリードライン18、合流部28及び圧力検知ライン20の3箇所のうちのいずれかに1個以上設けることができる。ただし、設置スペースの確保が難しい等、1基の整圧装置10に対し1個のボリュームタンク30のみ配置可能である場合には、圧力検知ライン20にボリュームタンク30を設けることが好ましい。ボリュームタンク30の仕様が同じであれば、圧力検知ライン20にボリュームタンク30を設けることによって、ブリードライン18の圧力変動に起因する開度の変化を効率的に低減できる。
【0066】
また、1個のボリュームタンク30の配置位置として圧力検知ライン20が使用不可能である場合には、ブリードライン18を使用すること方が、合流部28を使用する場合より、ブリードライン18の圧力変動に起因する開度の変化を効率的に低減できる。
【0067】
また、本実施形態では、開閉装置24は遠隔操作されるため、ガスの流通を遠隔で遮断可能な整圧装置10を実現できる。
【0068】
特に、例えば、既存の2系統の整圧装置に、ガス遠隔遮断装置を後付けで設置する改修工事を行うことによって、本実施形態に係る整圧装置10を構成する場合を考える。ここで、既存の2系統の整圧装置に対し、1系統の整圧装置に用いられる電磁弁と同じ締切性能を備える電磁弁をガス遠隔遮断装置用の開閉装置として用いて電磁弁の閉弁動作を行っても、そのままではパイロットガバナ16を十分に閉止できない懸念がある。
【0069】
このため、まず、既存の2系統の整圧装置におけるブリードライン18の下流側のメイン配管L2側の端部と、圧力検知ライン20の下流側のメイン配管L2側の端部とを合流させて、合流部28を形成する。そして、形成された合流部28と下流側のメイン配管L2とを共通配管22で接続する。すなわち、パイロットガバナ16と下流側のメイン配管L2との間の2系統の配管を1系統に部分的に集約し、集約した部分に1系統の整圧装置に用いられる電磁弁と同程度の締切性能を備える開閉装置を設置する。
【0070】
よって、既存の2系統の整圧装置に対し、パイロットガバナ16及びメインガバナ12を含め整圧装置10に含まれる多くの部品を交換するような全体的な改修作業が不要になり、部分的な改修作業を行うだけで、ガス遠隔遮断装置を簡易に後付けできる。また、1系統の整圧装置に用いられる開閉装置と同程度の締切性能を備える開閉装置であっても、ガスの流通を遮断できるので、コストが嵩む比較的高性能の開閉装置を必要としない。このため、既存の2系統の整圧装置にガス遠隔遮断装置を後付けで設置する際の改修コストを抑えることができる。
【0071】
なお、本発明では、既存の整圧装置にガス遠隔遮断装置を後付けで設置する改修工事を行う際、共通配管22に開閉装置24を設けた後、開閉装置24が設けられた共通配管22を合流部28と下流側のメイン配管L2との間に接続してもよい。すなわち、合流部28と下流側のメイン配管L2との間を1本の共通配管22で接続する工程と、共通配管22にガス遠隔遮断装置用の開閉装置24を設ける工程との順序の前後は、任意に変更できる。
【0072】
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0073】
10 整圧装置
12 メインガバナ
14 パイロットライン
16 パイロットガバナ
18 ブリードライン
20 圧力検知ライン
22 共通配管
24 開閉装置
26A 絞り(ブリードライン側)
26B 絞り(圧力検知ライン側)
28 合流部
30 ボリュームタンク
101 主制御装置
102 遠隔制御装置
D 圧力検知ラインの配管の内径
L メイン配管
L1 上流側のメイン配管
L2 下流側のメイン配管