(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】レーザ積層造形方法及びレーザ積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20220325BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220325BHJP
B23K 26/04 20140101ALI20220325BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20220325BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220325BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220325BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220325BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220325BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220325BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20220325BHJP
B29C 64/141 20170101ALI20220325BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K26/04
B23K26/082
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/393
B29C64/268
B29C64/209
B29C64/141
(21)【出願番号】P 2021117978
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2021-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昌樹
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174420(JP,A)
【文献】特開2017-19018(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250464(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B33Y 10/00 - 50/02
B29C 64/393
B29C 64/268
B29C 64/209
B29C 64/141
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ノズルから被積層体の積層予定面に向けて粉末材料を供給して一箇所に収束させる処理を、前記供給ノズルを前記積層予定面に沿って所定の向きに相対移動させつつ連続的に実行する粉末材料供給工程と、該粉末材料の収束領域に対する所定位置にレーザ光を照射するとともに、前記粉末材料の収束領域が供給ノズルと共に前記所定の向きに相対移動するのに伴ってレーザ光を該所定の向きに移動させるレーザ照射工程とを備え、該レーザ光によって粉末材料を溶融固化して前記積層予定面に硬化層を形成するレーザ積層造形方法であって、
前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を変更可能にしておき、
前記レーザ照射工程では、レーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御
し、
前記粉末材料供給工程の実行前に前記供給ノズルの位置調整を行う位置調整工程をさらに備え、
前記位置調整工程では、前記積層予定面において前記粉末材料の収束領域が、重力の影響により、目標収束領域よりも下側にずれるずれ量を予測して、このずれ量を補正するように前記供給ノズルの位置を制御することを特徴とするレーザ積層造形方法。
【請求項2】
前記レーザ照射工程では、前記供給ノズルを移動させる向きの変化に拘わらず、前記レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする請求項1記載のレーザ積層造形方法。
【請求項3】
前記レーザ照射工程では、前記供給ノズルの軸線に対する前記粉末材料の収束領域の位置関係の変化に拘わらずに、レーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ積層造形方法。
【請求項4】
前記レーザ照射工程では、光源からレーザ光を出射し、出射したレーザ光を、揺動軸線回りに揺動可能な反射ミラーに反射させることで前記積層予定面に照射し、前記反射ミラーの前記揺動軸線回りの揺動角度を変更してレーザ光の反射方向を調整することで、前記粉末材料の収束領域に対する前記レーザ光の照射位置を制御することを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載のレーザ積層造形方法。
【請求項5】
被積層体の積層予定面に向けて粉末材料を供給して一箇所に収束させる供給ノズルを含む粉末材料供給部、及び粉末材料の収束領域に対する所定位置にレーザ光を照射する光照射部を搭載した加工ヘッドと、該加工ヘッドを前記被積層体の積層予定面に沿って所定の向きに移動させる移動機構部とを備えたレーザ積層造形装置であって、
前記粉末材料の収束領域に対する前記レーザ光の照射位置を変更可能なレーザ可変機構部と、
前記レーザ可変機構部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が前記粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記レーザ可変機構部によって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御する
ように構成され、
前記制御部はさらに、前記粉末材料供給部による粉末材料の供給を開始する前に、前記供給ノズルの位置調整制御を実行するように構成されており、
前記位置調整制御では、前記積層予定面において前記粉末材料の収束領域が、重力の影響により目標収束領域よりも下側にずれるずれ量を予測して、このずれ量を補正するように、前記移動機構部により前記加工ヘッドの位置を制御することを特徴とするレーザ積層造形装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記供給ノズルが移動する向きの変化に拘わらず、前記レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように、前記レーザ可変機構部によって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする請求項
5記載のレーザ積層造形装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記供給ノズルの軸線に対する前記粉末材料の収束領域の位置関係の変化に拘わらずに、レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が前記粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記レーザ可変機構部によって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする請求項
5又は6記載のレーザ積層造形装置。
【請求項8】
レーザ光を出射する光源をさらに備え、
前記光照射部は、前記光源から出射させたレーザ光を反射して前記被積層体の積層予定面に照射する反射ミラーを有し、
前記レーザ可変機構部は、前記反射ミラーを揺動軸線回りに駆動する駆動アクチュエータを有し、
前記制御部は、前記レーザ可変機構部の前記駆動アクチュエータによって、前記反射ミラーの前記揺動軸線回りの揺動角度を変更してレーザ光の反射方向を調整することで、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射領域を制御するように構成されていることを特徴とする請求項
5から
7のいずれか一項に記載のレーザ積層造形装置。
【請求項9】
被積層体の積層予定面に向けて粉末材料を供給して一箇所に収束させる供給ノズルを含む粉末材料供給部、及び粉末材料の収束領域に対する所定位置にレーザ光を照射する光照射部を搭載した加工ヘッドと、該加工ヘッドを前記被積層体の積層予定面に沿って所定の向きに移動させるとともに、当該加工ヘッドを水平方向に延びる所定軸線回りに揺動駆動可能な移動機構部とを備えたレーザ積層造形装置であって、
前記粉末材料の収束領域に対する前記レーザ光の照射位置を変更可能なレーザ可変機構部と、
前記レーザ可変機構部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記加工ヘッドの前記所定軸線回りの揺動角度を基に、前記供給ノズルの軸線の鉛直方向に対する傾斜角を算出して、算出した傾斜角を基に、前記供給ノズルから噴射される粉末材料の前記積層予定面における収束領域が、重力の影響により目標収束領域よりも下側にずれるずれ量を予測し、予測したずれ量を基に、
前記レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が前記粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記レーザ可変機構部によって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御するように構成されていることを特徴とするレーザ積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光によって粉末材料を溶融固化して積層予定面に硬化層を形成するレーザ積層造形方法及びレーザ積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なレーザ積層造形装置は、粉末材料を供給する供給ノズル及びレーザ光を照射するレーザ照射装置を搭載した加工ヘッドと、加工ヘッドを移動させる移動機構部とを備えている。このレーザ積層造形装置では、移動機構部により加工ヘッドを所定経路に沿って移動させつつ、該加工ヘッドに搭載された供給ノズルから被積層体の積層予定面に向けて粉末材料を供給するとともに、レーザ照射装置から粉末材料の収束領域に向けてレーザ光を照射することで粉末材料を溶融固化して積層予定面に所望の形状の硬化層を形成する。
【0003】
例えば特開2019-055484号公報(下記特許文献1)には、レーザ積層造形装置の一例が開示されている。このレーザ積層造形装置では、供給ノズルの吐出開口がレーザ光出射路の軸線(レーザ光の光軸)を囲むように円環状に形成されている。供給ノズルの他の形態として、例えば特開2018-086667号公報(下記特許文献2)に示すように、供給ノズルをレーザ出射路の側方に斜めに配置する場合もある。いずれの場合にも、レーザ光は通常、粉末材料の収束領域に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-055484号公報
【文献】特開2018-086667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に示すレーザ積層造形装置では、レーザ光を粉末材料の収束領域に照射するようにしているが、レーザ光による粉末材料の溶融効率(積層効率)を向上させる観点から、例えば、レーザ光の照射位置を粉末材料の収束領域からオフセットさせることが考えられる。
【0006】
しかし、レーザ光の照射位置をオフセットさせると、加工ヘッドの移動方向が変化した場合に、レーザ光の照射領域と粉末材料の収束領域との相対的な位置関係が変化するため、粉末材料の溶融効率が加工ヘッドの移動方向によってばらつくという問題がある。
【0007】
また、レーザ光の照射領域を粉末材料の収束領域からオフセットしていない場合であっても、例えば積層予定面が鉛直面である場合に、加工ヘッド全体を水平に保持した状態で鉛直面上の目標位置に向けて供給ノズルから粉末材料を略水平に又はやや斜めに噴射すると、供給ノズルから噴射された粉末材料が重力の影響を受けて目標位置よりも下側に収束してしまう。この結果、レーザ光の照射領域と粉末材料の収束領域との相対的な位置関係が重力の影響で変化してしまう。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであって、供給ノズルから供給される粉末材料の溶融効率を可及的に向上させつつ、該粉末材料の収束領域とレーザ光の照射領域との相対的な位置関係を一定に維持可能なレーザ積層造形方法及びレーザ積層造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、供給ノズルから被積層体の積層予定面に向けて粉末材料を供給して一箇所に収束させる処理を、前記供給ノズルを前記積層予定面に沿って所定の向きに相対移動させつつ連続的に実行する粉末材料供給工程と、該粉末材料の収束領域に対する所定位置にレーザ光を照射するとともに、前記粉末材料の収束領域が供給ノズルと共に前記所定の向きに相対移動するのに伴ってレーザ光を該所定の向きに移動させるレーザ照射工程とを備え、該レーザ光によって粉末材料を溶融固化して前記積層予定面に硬化層を形成するレーザ積層造形方法であって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を変更可能にしておき、前記レーザ照射工程では、レーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする。
【0010】
第1の発明では、粉末材料供給工程において、供給ノズルから積層予定面に向けて粉末材料を供給して一箇所に収束させる処理が供給ノズルの移動と共に連続的に実行され、レーザ照射工程において、粉末材料の収束領域に対する所定位置に向けてレーザ光が照射される。これにより、積層予定面に供給された粉末材料がレーザ光によって溶融固化されることで積層予定面に硬化層が形成される。
【0011】
そして、このレーザ積層造形方法においては、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を変更可能になっており、レーザ照射工程では、レーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が粉末材料の収束領域の中心位置に位置するように、粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置が制御される。これによれば、供給ノズルから供給される粉末材料の収束領域とレーザ光の照射位置との相対的な位置関係が常に一定に維持されるので、粉末材料の溶融効率のばらつきを抑えて積層効率を向上させることができる。また、レーザ光は粉末材料の収束領域よりも後側又は粉末材料の収束領域の中心位置に照射されるので、粉末材料の溶融効率を可及的に高めることができる。すなわち、粉末材料の収束領域の中心位置にレーザ光を照射する場合には粉末材料を偏りなく確実に溶融させることができる。また、レーザ光を粉末材料の収束領域よりも供給ノズルの移動方向の後側に照射する場合には、積層予定面上に供給された粉末材料をレーザ光によって漏れなく加熱して溶融させることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記レーザ照射工程では、前記供給ノズルを移動させる向きの変化に拘わらず、前記レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、レーザ照射工程において、供給ノズルを移動させる向きに拘わらず、レーザ光の照射領域を、粉末材料の収束領域よりも供給ノズルの相対移動方向の後側に位置させることができる。よって、供給ノズルの相対移動方向によって粉末材料の収束領域とレーザ光の照射位置との相対的な位置関係が変化するのを防止し、延いては粉末材料の溶融効率を向上させることができる。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記レーザ照射工程では、前記供給ノズルの軸線に対する前記粉末材料の収束領域の位置関係の変化に拘わらずに、レーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、レーザ照射工程において、供給ノズルの軸線に対する前記粉末材料の収束領域の位置関係の変化に拘わらずに、粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射領域の位置関係を一定に維持することができる。ここで、供給ノズルの軸線に対する前記粉末材料の収束領域の位置関係が変化する場合とは、例えば、積層予定面が鉛直面であるために、供給ノズルから噴射された粉末材料の収束領域が重力の影響で供給ノズルの軸線の延長上よりも下側にずれるような状況が挙げられる。
【0016】
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれか1つにおいて、前記粉末材料供給工程の実行前に前記供給ノズルの位置調整を行う位置調整工程をさらに備え、前記位置調整工程では、前記積層予定面において前記粉末材料の収束領域が、重力の影響により、目標収束領域よりも下側にずれるずれ量を予測して、このずれ量を補正するように前記供給ノズルの位置を制御することを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、粉末材料供給工程の実行前に位置調整工程が実行されることで供給ノズルの位置調整が行われる。この位置調整工程では、供給ノズルから噴射される粉末材料の収束領域が重力の影響で下側にずれるずれ量を予測し、このずれ量を補正するように供給ノズルの位置が制御される。これにより、供給ノズルから噴射される粉末材料を目標収束領域に精度良く収束させることができる。
【0018】
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれか1つにおいて、前記レーザ照射工程では、光源からレーザ光を出射し、出射したレーザ光を、揺動軸線回りに揺動可能な反射ミラーに反射させることで前記積層予定面に照射し、前記反射ミラーの前記揺動軸線回りの揺動角度を変更してレーザ光の反射方向を調整することで、前記粉末材料の収束領域に対する前記レーザ光の照射位置を制御することを特徴とする。
【0019】
第5の発明では、レーザ照射工程においてレーザ光の照射位置を制御する際には、レーザ光を反射する反射ミラーを使用して、当該反射ミラーを揺動軸線回りに揺動させることでレーザ光の反射方向が調整される。これによれば、反射ミラーを揺動させるという簡単な方法によりレーザ光の照射位置を容易に制御することができる。
【0020】
第6の発明は、被積層体の積層予定面に向けて粉末材料を供給して一箇所に収束させる供給ノズルを含む粉末材料供給部、及び粉末材料の収束領域に対する所定位置にレーザ光を照射する光照射部を搭載した加工ヘッドと、該加工ヘッドを前記被積層体の積層予定面に沿って所定の向きに移動させる移動機構部とを備えたレーザ積層造形装置であって、前記粉末材料の収束領域に対する前記レーザ光の照射位置を変更可能なレーザ可変機構部と、前記レーザ可変機構部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が前記粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記レーザ可変機構部によって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする。
【0021】
第6の発明では、制御部によりレーザ可変機構部を駆動制御することで、レーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が粉末材料の収束領域の中心位置に一致するようにレーザ光の照射位置が制御される。したがって、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
第7の発明は、第6の発明において、前記制御部は、前記供給ノズルが移動する向きの変化に拘わらず、前記レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように、前記レーザ可変機構部によって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする。
【0023】
第7の発明では、供給ノズルが移動する向きの変化に拘わらず、レーザ光の照射位置が粉末材料の収束領域よりも供給ノズル移動方向の後側に位置するように制御部によるレーザ可変機構部の駆動制御が実行される。これにより、第2の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記制御部は、前記供給ノズルの軸線に対する前記粉末材料の収束領域の位置関係の変化に拘わらずに、レーザ光の照射領域が前記粉末材料の収束領域よりも前記供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が前記粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、前記レーザ可変機構部によって、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御することを特徴とする。
【0025】
第8の発明では、供給ノズルの軸線に対する前記粉末材料の収束領域の位置関係の変化に拘わらずレーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも供給ノズルの相対移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が該粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように制御部によるレーザ可変機構部の駆動制御が実行される。これにより、第3の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
第9の発明は、第8の発明において、前記制御部は、前記粉末材料供給部による粉末材料の供給を開始する前に、前記供給ノズルの位置調整制御を実行するように構成されており、前記位置調整制御では、前記積層予定面において前記粉末材料の収束領域が、重力の影響により目標収束領域よりも下側にずれるずれ量を予測して、このずれ量を補正するように、前記移動機構部により前記加工ヘッドの位置を制御することを特徴とする。
【0027】
第9の発明では、制御部において、前記粉末材料の収束領域が重力の影響により目標収束領域よりも下側にずれるずれ量を予測して、このずれ量を補正するように加工ヘッドの位置が移動機構部を介して制御される。したがって、第4の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
第10の発明は、第6から第9の発明のいずれか1つにおいて、レーザ光を出射する光源をさらに備え、前記光照射部は、前記光源から出射させたレーザ光を反射して前記被積層体の積層予定面に照射する反射ミラーを有し、前記レーザ可変機構部は、前記反射ミラーを揺動軸線回りに駆動する駆動アクチュエータを有し、前記制御部は、前記レーザ可変機構部の前記駆動アクチュエータによって、前記反射ミラーの前記揺動軸線回りの揺動角度を変更してレーザ光の反射方向を調整することで、前記粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射領域を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0029】
第10の発明では、制御部によって、反射ミラーの揺動軸線回りの揺動角度を変更することでレーザ光の照射位置が制御される。これにより、第5の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係るレーザ積層造形方法及びレーザ積層造形装置によれば、粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を変更可能にしておき、レーザ光の照射領域が粉末材料の収束領域よりも供給ノズル移動方向の後側に位置するように又はレーザ光の照射領域の中心位置が粉末材料の収束領域の中心位置に一致するように、該粉末材料の収束領域に対するレーザ光の照射位置を制御するようにしたことで、供給ノズルから供給される粉末材料の溶融効率を可及的に向上させつつ、該粉末材料の収束領域とレーザ光の照射領域との相対的な位置関係を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態1に係るレーザ積層造形装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1のA部に相当する拡大図であって、加工ヘッドがX軸方向の一方側から他方側に移動する際のレーザ照射処理の内容を説明するための説明図である。
【
図3】
図2における粉末材料の収束領域とレーザ光の照射領域との位置関係を示す平面図である。
【
図4】
図1のA部に相当する拡大図であって、加工ヘッドがX軸方向の他方側から一方側に移動する際のレーザ照射処理の内容を説明するための説明図である。
【
図5】
図4における粉末材料の収束領域とレーザ光の照射領域との位置関係を示す平面図である。
【
図6】実施形態2に係るレーザ積層造形装置において、加工ヘッドのチルト角が90°に設定され且つ加工ヘッドがZ軸方向の下側から上側に移動しながらレーザ積層造形を行う場合のレーザ照射処理の内容を説明するための説明図である。
【
図7】実施形態2に係るレーザ積層造形装置において、加工ヘッドのチルト角が90°に設定され且つ加工ヘッドがY軸方向に移動しながらレーザ積層造形を行う場合のレーザ照射処理の内容を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
[実施形態1]
図1に示すように、本例のレーザ積層造形装置1は、加工ヘッド2、移動機構部3及び制御装置30を備えていて、制御装置30による制御の下、移動機構部3により加工ヘッド2を積層予定面Sに沿って移動させながらレーザ積層造形を行う。尚、
図1の例では、積層予定面SはワークW(被積層体の一例)の表面とされているが、これに限ったものではなく、例えば既に積層された硬化層の表面や装置の基台であってもよい。
【0034】
前記移動機構部3は、加工ヘッド2をX軸、Y軸、及びZ軸方向に直線移動させるためのボールネジ機構や、所定軸回り(本例では例えばY軸回り)に加工ヘッド2を揺動させるためのチルト機構などから構成され、ワークWに対する加工ヘッド2の3次元の相対位置を変更可能に構成されている。
【0035】
前記加工ヘッド2は、積層予定面Sに粉末材料を供給する粉末材料供給部10と、積層予定面Sに向けてレーザ光を照射するレーザ照射部20(光照射部の一例)とを有している。粉末材料供給部10及びレーザ照射部20は、筐体等を介してユニット化されていて前記移動機構部3により一体で駆動される。
【0036】
レーザ照射部20は、レーザ発振器21、コリメータレンズ22、反射ミラー23、ミラー揺動機構部24(レーザ可変機構部の一例)、照射ハウジング25、及び集光レンズ26を有している。
【0037】
レーザ発振器21は、レーザ光を出力する発振器で、一般的には、CO
2レーザ発振器が採用されるが、これに限られるものではない。
図1の例では、レーザ発振器21は、加工ヘッド2に搭載されているが、これに限ったものではなく、加工ヘッド2とは別の場所に固定しておき、レーザ発振器21から出射されるレーザ光を光ファイバー等の光学伝送路を介して加工ヘッド2に導くようにしてもよい。
【0038】
レーザ発振器21の光出射口の下流側には、前記コリメータレンズ22と反射ミラー23とがこの順に並んで配置されており、前記照射ハウジング25は反射ミラー23の下側に配置され、前記集光レンズ26は、照射ハウジング25内の光学路25aに配置されている。
【0039】
反射ミラー23は、ミラー揺動機構部24によって互いに直交する2軸回りに揺動可能に支持されている。具体的には、ミラー揺動機構部24は、反射ミラー23を支持する枠状のミラーホルダ24aを有している。ミラーホルダ24aは、Y軸方向(
図1の紙面垂直方向)から見て水平方向に対し傾斜するように配置されている。反射ミラー23は、例えば円板状に形成されていており、そのY軸方向の両端部には、Y軸方向の外側に延びる一対の第1揺動軸24bが突設されている。この一対の第1揺動軸24bはミラーホルダ24aに揺動可能に支持され、一方の第1揺動軸24bはミラーホルダ24aに固定された第1揺動アクチュエータ24dに連結されている。また、ミラーホルダ24aにおけるY軸方向に直交する直交方向の両端部には、該直交方向の外側に突出する一対の第2揺動軸24cが突設されている。一対の第2揺動軸24cは、不図示の支持部材に揺動可能に支持され、一方の第2揺動軸24cは第2揺動アクチュエータ24eに連結されている。第1揺動アクチュエータ24d及び第2揺動アクチュエータ24eは、例えば小型のステッピングモータにより構成されている。各揺動アクチュエータ24d,24e(駆動アクチュエータに相当)を制御することで、第1揺動軸24b及び第2揺動軸24c回りの反射ミラー23の揺動角度を調整可能になっている。各揺動アクチュエータ24d,24eの駆動制御は、後述する制御部32によって実行される。
【0040】
照射ハウジング25は、
図1に示すように、上下方向において相互に嵌合状態で連結される第1ハウジング25b、第2ハウジング25c、第3ハウジング25d及び光出射ガイド25eなどから構成される。照射ハウジング25は、その中心部に上下に貫通した空間である光学路25aを備えており、その上端部に形成された開口である導入口(図示せず)に反射ミラー23からの反射光が導入されるようになっている。光学路25aの導入口の直下には集光レンズ26が配置されている。集光レンズ26は、円筒状の押さえ部材27を介して第2ハウジング25cの段差面と第1ハウジング25bの下面との間に挟まれて保持されている。集光レンズ26としては、例えばfθレンズなどが用いられる。
【0041】
以上のように構成された加工ヘッド2によれば、前記レーザ発振器21から出力されたレーザ光はコリメータレンズ22を通過して平行光に変換された後、反射ミラー23より反射されて照射ハウジング25の導入口(図示せず)から光学路25a内に入射し、入射したレーザ光は前記集光レンズ26によって集光され、光出射ガイド25eの下端に形成された開口25fから照射される。尚、集光レンズ26は前記開口25fから所定距離離れた点で焦点が合うように前記レーザ光を集光する。
【0042】
前記粉末材料供給部10は、前記光出射ガイド25eの開口25fの周囲に配設された供給ノズル11を有し、積層予定面S上における硬化層を形成する領域に、粉末材料(具体的には、金属粉末)をアルゴン等の不活性ガスからなるキャリアガスとともに供給する。前記レーザ光はこの粉末材料の収束箇所よりもヘッド移動方向の後側に照射される。キャリアガスとともに積層予定面に供給された金属粉末は、レーザ光のエネルギによって加熱、溶融されて溶融池が形成され、加工ヘッド2の移動によりレーザ光が照射されなくなった溶融池の溶融金属が凝固することにより所望の形状の硬化層が積層される(このような加工現象を「レーザ積層造形」という)。尚、本例では、レーザ光により加熱、溶融される金属の酸化及び飛散を防止するべく、図示しない供給ガス部より光出射ガイド25eの光路内にシールドガス(例えばアルゴン等の不活性ガス)を供給して開口25fから吐出させるようにしている。
【0043】
前記制御装置30は、加工プログラムを記憶する加工プログラム記憶部31と、この加工プログラム記憶部31に記憶された加工プログラムを基に、移動機構部3、粉末材料供給部10、及び、レーザ照射部20(具体的には、レーザ発振器21、ミラー揺動機構部24の各揺動アクチュエータ24d,24e)を制御する制御部32とを備えている。
【0044】
前記加工プログラムは、レーザ発振器21のON,OFFなどの動作、前記加工ヘッド2を位置制御する前記移動機構部3の動作などをコードによって指令したものであり、この加工プログラムにより、ワークWに対する加工ヘッド2の移動軌跡が画定される。
【0045】
制御部32は、不図示の操作盤より加工サイクルの実行指令を受け付けると、前記加工プログラムを実行、即ち、加工プログラム中に指令されたコードを解釈してこれに応じた制御信号を出力することでレーザ積層造形制御を実行する。レーザ積層造形制御では、移動機構部3、粉末材料供給部10、及びレーザ照射部20を動作させて積層予定面Sに所望の形状の硬化層を形成する。
【0046】
具体的には、制御部32は、レーザ積層造形制御の実行に際して粉末供給処理とレーザ照射処理とを並行して実行する。
【0047】
粉末供給処理では、制御部32による制御の下、粉末材料供給部10の供給ノズル11から積層予定面Sに向けて粉末材料を供給して一箇所に収束させる処理を、移動機構部3により加工ヘッド2を所定の向きに移動させつつ(換言すると供給ノズル11を所定の向きに移動させつつ)連続的に実行する。
【0048】
レーザ照射処理では、制御部32による制御の下、粉末材料の収束領域r1よりも加工ヘッド2の移動方向(以下、ヘッド移動方向という)の後側にレーザ光が照射されるようにレーザ発振器21及びミラー揺動機構部24を制御する。ここで、照射ハウジング25と供給ノズル11とは1つの加工ヘッド2に搭載されて一体で移動するので、レーザ光の照射領域r2は、粉末材料の収束領域r1の移動に追従して同方向に移動する。
【0049】
制御部32は、レーザ照射処理の実行に際し、ミラー揺動機構部24(第1揺動アクチュエータ24d及び第2揺動アクチュエータ24e)を介して反射ミラー23の揺動角度を制御することで、積層予定面Sにおける粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向の後側にレーザ光を照射する。本例では、制御部32は、収束領域r1の中心位置C1を通り且つヘッド移動方向に延びる直線上にレーザ光の照射領域r2の中心位置C2が位置するようにミラー揺動機構部24を制御する。収束領域r1と照射領域r2との離間距離dは、例えばレーザ光の照射領域r2の直径の1~1.5倍に設定されるが、これに限ったものではない
図2~
図4を参照して、制御部32により実行されるレーザ照射処理の具体例を説明する。
図2は、加工ヘッド2をX軸方向の一方側から他方側(
図1の右側から左側)に移動させる場合のA部拡大図であり、
図3は、
図2における粉末材料の収束領域r1とレーザ光の照射領域r2との位置関係を示す平面図である。
図4及び
図5は、これとは逆に、加工ヘッド2をX軸方向の他方側から一方側(
図1の左側から右側)に移動させる場合の
図2及び
図3相当図である。
【0050】
図2に示すように、加工ヘッド2をX軸方向の一方側から他方側に移動させる場合には、レーザ光の照射領域r2の中心位置C2が粉末材料の収束領域r1の中心位置C1に一致する基準状態(
図2の細二点鎖線の状態)に対して、反射ミラー23をミラー揺動機構部24の第1揺動アクチュエータ24dによって、第1揺動軸24bを支点に反時計回り方向に回転させる。これにより、
図3に示すように、レーザ光の照射領域r2の中心位置C2が、粉末材料の収束領域r1の中心位置C1よりもヘッド移動方向の後側(X軸方向の一方側)に所定距離dだけオフセットされる。
【0051】
これとは逆に、
図4に示すように、加工ヘッド2をX軸方向の他方側から一方側に移動させる場合には、前記基準状態(
図4の細二点鎖線の状態)に対して、反射ミラー23をミラー揺動機構部24の第1揺動アクチュエータ24dによって、第1揺動軸24bを支点に時計回り方向に回転させる。これにより、
図5に示すように、レーザ光の照射領域r2の中心位置C2が、粉末材料の収束領域r1の中心位置C1よりもヘッド移動方向の後側(X軸方向の他方側)に所定距離dだけオフセットされる。
【0052】
ここで、
図2~
図4では、加工ヘッド2の移動方向がX軸方向である例を説明したが、加工ヘッド2の移動方向がY軸方向である場合にも同様に、レーザ光の照射領域r2が粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向の後側に位置するように制御部32によるレーザ照射処理が実行される。この場合、制御部32は、反射ミラー23を、ミラー揺動機構部24の第2揺動アクチュエータ24eにより第2揺動軸23c回りに揺動させることでレーザ光のY軸方向の照射位置を制御する。
【0053】
以上のように構成されたレーザ積層造形装置1によれば、前記加工プログラム記憶部31に格納された加工プログラムに基づいて制御部32によりレーザ積層造形制御が実行される。このレーザ積層造形制御では、制御部32による制御の下、レーザ光の照射領域r2が粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向(供給ノズル移動方向と同方向)の後側に位置するようにミラー揺動機構部24を介してレーザ光の照射位置を制御する。
【0054】
これによれば、積層予定面Sに粉末材料が供給された後にレーザ光のエネルギによって該粉末材料を溶融させることができる。したがって、レーザ光を照射した箇所に後から粉末材料を供給する場合(つまりレーザ光の照射領域r2が粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向の前側に位置する場合)に比べて、レーザ光のエネルギを効率良く粉末材料の加熱に利用することができる。よって、粉末材料の溶融効率を可及的に向上させることができる。また、加工ヘッド2の移動方向に拘わらず(換言すると供給ノズル11の移動方向に拘わらず)、粉末材料の収束領域r1とレーザ光の照射領域r2との相対的な位置関係を一定に維持することができるので、加工ヘッド2の移動方向によって粉末材料の溶融効率がばらつくのを防止することができる。
【0055】
また、本例では、制御部32による制御の下、ミラー揺動機構部24により反射ミラー23の各揺動軸24b,24c回りの揺動角度を制御してレーザ光の反射方向を調整することで、粉末材料の収束領域r1に対するレーザ光の照射位置を制御するようにしている。
【0056】
これにより、反射ミラー23を揺動させるという簡単な方法によりレーザ光の照射位置を容易に変更することができる。
【0057】
[実施形態2]
図6は実施形態2の一例を示している。この実施形態は、供給ノズル11から噴射される粉末材料が受ける重力の影響を考慮してレーザ光の照射位置を制御する点で実施形態1とは異なる。尚、
図6において、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
すなわち、本例のレーザ積層造形装置1では、制御部32は、レーザ積層造形制御を実行する際に、加工ヘッド2のY軸回りの揺動角(チルト角)を基に、供給ノズル11の軸線の鉛直方向に対する傾斜角を算出する。そして、制御部32は、算出した傾斜角を基に、供給ノズル11から噴射される粉末材料の収束領域r1の目標収束領域(供給ノズル11の軸線の延長位置)に対するずれ量δを予測し、予測したずれ量δを基に、粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向の後側にレーザ光の照射領域r2が位置するようにミラー揺動機構部24を制御する。前記ずれ量δの算出式は、例えば、前記供給ノズル11の先端から積層予定面Sまでの距離と、供給ノズル11の軸線の傾斜角とを基に算出することができる。このずれ量δの算出式は、理論式であってもよいし、予め実験等にも基づいて算出した近似式であってもよい。
【0059】
図6を基に、制御部32により実行されるレーザ光照射処理の一例を説明する。
図6では、
図1の状態(照射ハウジング25の軸線が鉛直になる状態)を基準として、加工ヘッド2を移動機構部3によりY軸回りに回動させてチルト角90°に設定した状態を示している。このように加工ヘッド2のチルト角を90°に設定することで鉛直な積層予定面Sに対してもレーザ積層造形を行うことができる。
【0060】
図6は、一例として鉛直な積層予定面Sに対して加工ヘッド2をZ軸方向に沿って下側から上側に移動させた場合を示している。図中の細二点鎖線は、重力の影響を考慮しない場合のレーザ光の照射状態を示している。この図から分かるように、重力の影響を考慮しない場合、レーザ光の照射領域が、粉末材料の収束領域r1よりも上側、つまりヘッド移動方向の前側に位置してしまい、レーザ光を粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向の後側に位置させるという制御目標を達成することができない。これに対して、本例では、制御部32による制御の下、レーザ光の照射領域r2を、図中の太二点鎖線で示すように、粉末材料の収束領域r1のずれ量δと同じ量だけ下側に補正するようにしている。これにより、加工ヘッド2のチルト角に拘わらず、レーザ光の照射領域r2を粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向の後側に位置させることができる。換言すると、本例のレーザ積層造形装置1では、加工ヘッド2のチルト角が変化する等して、供給ノズル11の軸線の延長位置(目標収束位置)に対する粉末材料の収束領域r1の位置が変化したとしても、レーザ光の照射位置を粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向(供給ノズル移動方向と同方向)の後側に位置させることができる。したがって、実施形態1と同様の作用効果をより一層確実に得ることができる。
【0061】
尚、鉛直方向に対する供給ノズル11の傾斜角度が所定角度(例えば45°)以下の場合には、上述した重力の影響は無視し得るので、前記ずれ量δに基づく補正制御を実行しないようにしもよい。これにより、制御部32における演算負担を低減することができる。
【0062】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0063】
前記各実施形態及び変形例では、制御部32は、レーザ光の照射領域r2が粉末材料の収束領域r1よりもヘッド移動方向(供給ノズル移動方向)の後側に位置するようにレーザ照射処理を実行するように構成されているが、これに限ったものではなく、レーザ光の照射領域r2の中心位置C2が粉末材料の収束領域r1の中心位置C1に一致するようにレーザ照射処理を実行するように構成されていてもよい。このように、粉末材料の収束領域r1の中心位置C1とレーザ光の照射領域r2の中心位置C2とを一致させることで粉末材料を偏りなく確実に溶融させることができる。
【0064】
前記実施形態2では、供給ノズル11から噴射される粉末材料に作用する重力の影響を考慮して、収束領域r1に対するレーザ光の照射位置を補正するようにしているが、この補正に加えて、粉末材料の収束領域r1のずれ量δを補正するべく、移動機構部3により加工ヘッド2の位置(延いては供給ノズル11の位置)を補正するようにしてもよい。具体例を説明すると、例えば
図7に示すように、加工ヘッド2をY軸方向に沿って移動させる場合に、移動機構部3により加工ヘッド2を上側に距離δだけ移動させることで、供給ノズル11が加工ヘッド2と共に上側に距離δだけ移動して、粉末材料の収束領域r1を当初の目標収束位置に制御することができる。これにより、レーザ積層造形により生成される造形物の形状精度を向上させることができる。尚、
図7に示すように加工ヘッド2をY軸方向に移動させる場合、制御部32によってレーザ光の照射領域r2が粉末材料の収束領域r1と同じ高さに制御される(図中の太二点鎖線参照)。
【0065】
また、前記実施形態では、粉末材料の収束領域r1が円形状として説明したが、供給ノズル11の傾斜を考慮してX軸方向に長い楕円形状としてレーザ積層造形制御を実行してもよい。この場合のレーザ照射処理では、例えば、収束領域r1の楕円中心位置と、レーザ光の照射領域r2の中心位置C2との距離を一定に維持するか、又は、粉末材料の収束領域r1におけるヘッド移動方向の後側の端縁からレーザ光の照射領域r2の中心位置C2までの距離を一定に維持するなどすればよい。
【0066】
また、前記各実施形態では、移動機構部3は、加工ヘッド2を移動させることでワークWと加工ヘッド2との相対位置を変更可能に構成されているが、これに限ったものではない。すなわち、移動機構部3は、加工ヘッド2及びワークWの双方を移動させるか、又は、固定された加工ヘッド2に対してワークWを移動させることで両者の相対位置を変更するように構成されていてもよい。また、ワークWと加工ヘッド2との相対位置の変更は三次元空間内に限らず、二次元平面内で行うものであってもよい。
【0067】
また、前記各実施形態では、供給ノズル11は、光出射ガイド25eの側方に1つだけ配置されているが、これに限ったものではなく、例えば複数の供給ノズル11を光出射ガイド25eの開口25fを囲むように周方向に等間隔に配置してもよい。この他にも、例えば、開口25fを囲む環状の吐出口を有する環状供給ノズルを採用してもよい。
【0068】
前記各実施形態では、ミラー揺動機構部24を構成する第1揺動アクチュエータ24d及び第2揺動アクチュエータ24eによって反射ミラー23を直交二軸回りに揺動させるようにしているが、これに限ったものでない。すなわち、反射ミラー23を揺動させるアクチュエータは揺動式のアクチュエータに限らず、例えば、伸縮可能な圧電素子により反射ミラー23の厚さ方向の一方側面を押し引きすることで反射ミラー23の揺動動作を実現するようにしてもよい。
【0069】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 レーザ積層造形装置
2 加工ヘッド
3 移動機構部
10 粉末材料供給部
11 供給ノズル
20 レーザ照射部(光照射部)
23 反射ミラー
24 ミラー揺動機構部(レーザ可変機構部)
24d 第1揺動アクチュエータ(駆動アクチュエータ)
24e 第2揺動アクチュエータ(駆動アクチュエータ)
32 制御部
C1 中心位置
C2 中心位置
S 積層予定面
W ワーク(被積層体)
r1 粉末材料の収束領域
r2 レーザ光の照射領域
δ ずれ量
【要約】
【課題】粉末材料の溶融効率を可及的に向上させつつ、供給ノズルから供給される粉末材料の収束領域とレーザ光の照射領域との相対的な位置関係を一定に維持可能なレーザ積層造形方法及びレーザ積層造形装置を提供する。
【解決手段】レーザ光の照射領域r2が粉末材料の収束領域r1よりも供給ノズル移動方向の後側に位置するように又は該照射領域r2の中心位置が粉末材料の収束領域r1の中心位置に一致するように、前記粉末材料の収束領域r1に対する前記レーザ光の照射位置を制御する。
【選択図】
図3