(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】画像形成システム、画像形成方法及び画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20220328BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20220328BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20220328BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G06F3/12 338
H04N1/00 127Z
G06F3/12 322
G06F3/12 336
B41J29/38 104
B41J29/00 Z
B41J29/00 E
B41J29/38 201
G06F3/12 367
G06F3/12 392
B41J29/38 401
(21)【出願番号】P 2018013524
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-12-23
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】小坂 直彦
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203735(JP,A)
【文献】特開2015-084126(JP,A)
【文献】特開2015-201094(JP,A)
【文献】特開2015-174281(JP,A)
【文献】特開2008-158965(JP,A)
【文献】特開2006-293933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
H04N 1/00
B41J 29/38
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサと、
メモリと、
前記メモリに格納されたプログラム命令であって、前記少なくとも1つのプロセッサによる実行の際に、複数の画像形成装置と、前記複数の画像形成装置に接続されているサーバとを含む画像形成システムに、
ユーザーIDデータを含む印刷ジョブチケットと、画像データとを含む印刷ジョブを端末装置から前記複数の画像形成装置のいずれか1台に送信するとともに前記印刷ジョブチケットを前記端末装置から携帯端末に送信する送信工程と、
前記印刷ジョブ及び前記印刷ジョブチケットを前記少なくとも1台の画像形成装置で受信する受信工程と、
前記複数の画像形成装置からの各指定範囲の中における無線通信を用い、前記携帯端末内に前記送信された印刷ジョブチケットの前記ユーザーIDデータを有する前記携帯端末からのアクセスを待機する待機工程と、
前記携帯端末の前記ユーザーIDデータを用いる前記印刷ジョブチケットのアクセスを前記印刷ジョブが送信された画像形成装置によって認証する認証工程と、
前記認証に応じて、前記印刷ジョブが送信された画像形成装置の前にいるユーザーの顔画像を取得する取得工程と、
前記印刷ジョブが送信された画像形成装置に前記画像データを印刷させるために、前記取得した顔画像における前記印刷ジョブチケットの所有者の顔を認識する認識工程と、
前記顔画像が認識されている間、前記画像データを印刷する印刷工程と、
を含む工程を実施させるプログラム命令を備え、
前記印刷工程は、
前記認識工程が前記所有者の顔認識を喪失した場合、前記画像データの前記印刷を中断して時間の計測を開始する工程と、
前記中断された画像形成装置が前記顔認識の前記喪失から所定時間以内に再び前記所有者の顔を認識した場合、前記画像データの前記印刷を再開し、前記所定時間以内に再び前記所有者の顔を認識しなかった場合、前記中断された画像形成装置において印刷したページ数を含む印刷状態情報とともに前記印刷ジョブを前記サーバにアップロードする再開工程と、
を含み、
前記再開工程は、
前記中断された画像形成装置以外の複数の画像形成装置のうちの他の1台の画像形成装置
が再び前記所有者の顔を認識した場合、前記端末装置から送信された印刷ジョブチケットと前記再び所有者の顔を認識した画像形成装置を介して前記携帯端末から送信された印刷ジョブチケットとを前記サーバが比較する工程と、
前記印刷ジョブチケットが一致している場合には、前記サーバから前記他の1台の画像形成装置に、前記印刷状態情報とともに前記印刷ジョブをダウンロードする工程と、
前記他の1台の画像形成装置において、前記印刷状態情報を用いて判定されたページから始まる前記画像データの前記印刷を再開する工程とを含む、画像形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成システムであって、
前記再開工程は、前記複数の画像形成装置からの各指定範囲の中において、前記サーバが前記携帯端末からの受信信号強度インジケータの値を用いて前記複数の画像形成装置の中で最も近い画像形成装置であると判定して前記所有者の顔を認識させる工程を含む、画像形成システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、通常動作モードと、前記通常動作モードより消費する電力が少ない省電力動作モードとを有し、
前記認証工程は、前記ユーザーIDデータを用いた前記認証に応じて前記省電力動作モードから通常動作モードに切り替える工程を含む画像形成システム。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成システムであって、前記プログラム命令は、さらに、
前記携帯端末において、前記複数の画像形成装置の利用可能性が更新されたことを示すプッシュ通知によって前記所有者に通知する工程を備え、
前記取得工程を開始させるために前記携帯端末のユーザーインターフェース画面に表示することを含む画像形成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成システムであって、
前記送信工程は、
前記画像データにおける機密性に関連した所定の文言を表す文字列を認識する工程と、
前記所定の文言が認識された場合、前記画像データに前記ユーザーIDデータを自動的に含める工程とを含む画像形成システム。
【請求項6】
画像形成方法であって、
ユーザーIDデータを含む印刷ジョブチケットと、画像データとを含む印刷ジョブを端末装置から複数の画像形成装置のいずれか1台に送信するとともに前記印刷ジョブチケットを前記端末装置から携帯端末に送信する送信工程と、
前記印刷ジョブ及び前記印刷ジョブチケットを前記少なくとも1台の画像形成装置で受信する受信工程と、
前記複数の画像形成装置からの各指定範囲の中における無線通信を用い、前記携帯端末内に前記送信された印刷ジョブチケットの前記ユーザーIDデータを有する前記携帯端末からのアクセスを待機する待機工程と、
前記携帯端末の前記ユーザーIDデータを用いる前記印刷ジョブチケットのアクセスを前記印刷ジョブが送信された画像形成装置によって認証する認証工程と、
前記認証に応じて、前記印刷ジョブが送信された画像形成装置の前にいるユーザーの顔画像を取得する取得工程と、
前記印刷ジョブが送信された画像形成装置に前記画像データを印刷させるために、前記取得した顔画像における前記印刷ジョブチケットの所有者の顔を認識する認識工程と、
前記顔画像が認識されている間、前記画像データを印刷する印刷工程と、
を含む工程を実施させるプログラム命令を備え、
前記印刷工程は、
前記認識工程が前記所有者の顔認識を喪失した場合、前記画像データの前記印刷を中断して時間の計測を開始する工程と、
前記中断された画像形成装置が前記顔認識の前記喪失から所定時間以内に再び前記所有者の顔を認識した場合、前記画像データの前記印刷を再開し、前記所定時間以内に再び前記所有者の顔を認識しなかった場合、前記中断された画像形成装置において印刷したページ数を含む印刷状態情報とともに前記印刷ジョブをサーバにアップロードする再開工程と、
を含み、
前記再開工程は、
前記中断された画像形成装置以外の複数の画像形成装置のうちの他の1台の画像形成装置
が再び前記所有者の顔を認識した場合、前記端末装置から送信された印刷ジョブチケットと前記再び所有者の顔を認識した画像形成装置を介して前記携帯端末から送信された印刷ジョブチケットとを前記サーバが比較する工程と、
前記印刷ジョブチケットが一致している場合には、前記サーバから前記他の1台の画像形成装置に、前記印刷状態情報とともに前記印刷ジョブをダウンロードする工程と、
前記他の1台の画像形成装置において、前記印刷状態情報を用いて判定されたページから始まる前記画像データの前記印刷を再開する工程とを含む、画像形成方法。
【請求項7】
複数の画像形成装置と、前記複数の画像形成装置に接続されているサーバとを含む画像形成システムを制御するための画像形成プログラムであって、
メモリに格納されたプログラム命令であって、少なくとも1つのプロセッサによる実行の際に、前記画像形成システムに、
ユーザーIDデータを含む印刷ジョブチケットと、画像データとを含む印刷ジョブを端末装置から前記複数の画像形成装置のいずれか1台に送信するとともに前記印刷ジョブチケットを前記端末装置から携帯端末に送信する送信工程と、
前記印刷ジョブ及び前記印刷ジョブチケットを前記少なくとも1台の画像形成装置で受信する受信工程と、
前記複数の画像形成装置からの各指定範囲の中における無線通信を用い、前記携帯端末内に前記送信された印刷ジョブチケットの前記ユーザーIDデータを有する前記携帯端末からのアクセスを待機する待機工程と、
前記携帯端末の前記ユーザーIDデータを用いる前記印刷ジョブチケットのアクセスを前記印刷ジョブが送信された画像形成装置によって認証する認証工程と、
前記認証に応じて、前記印刷ジョブが送信された画像形成装置の前にいるユーザーの顔画像を取得する取得工程と、
前記印刷ジョブが送信された画像形成装置に前記画像データを印刷させるために、前記取得した顔画像における前記印刷ジョブチケットの所有者の顔を認識する認識工程と、
前記顔画像が認識されている間、前記画像データを印刷する印刷工程と、
を含む工程を実施させるプログラム命令を備え、
前記印刷工程は、
前記認識工程が前記所有者の顔認識を喪失した場合、前記画像データの前記印刷を中断して時間の計測を開始する工程と、
前記中断された画像形成装置が前記顔認識の前記喪失から所定時間以内に再び前記所有者の顔を認識した場合、前記画像データの前記印刷を再開し、前記所定時間以内に再び前記所有者の顔を認識しなかった場合、前記中断された画像形成装置において印刷したページ数を含む印刷状態情報とともに前記印刷ジョブをサーバにアップロードする再開工程と、
を含み、
前記再開工程は、
前記中断された画像形成装置以外の複数の画像形成装置のうちの他の1台の画像形成装置
が再び前記所有者の顔を認識した場合、前記端末装置から送信された印刷ジョブチケットと前記再び所有者の顔を認識した画像形成装置を介して前記携帯端末から送信された印刷ジョブチケットとを前記サーバが比較する工程と、
前記印刷ジョブチケットが一致している場合には、前記サーバから前記他の1台の画像形成装置に、前記印刷状態情報とともに前記印刷ジョブをダウンロードする工程と、
前記他の1台の画像形成装置において、前記印刷状態情報を用いて判定されたページから始まる前記画像データの前記印刷を再開する工程とを含む、画像形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プライベート印刷と呼ばれるプライベート(秘匿状態)で印刷物を出力する画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、プライベートに印刷物を出力するための様々な技術が提案されている。典型的な技術として、画像形成装置にパスワードの入力を必要とする印刷方法がある。しかしながら,パスワードを入力するのはユーザーにとって煩雑であり、パスワード入力後ユーザーは画像形成装置から離れることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況において、ユーザーの利便性を高めつつ印刷物の秘匿性を高めることが期待されている。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザーの利便性を高めつつ印刷物の秘匿性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成システムは、少なくとも1つのプロセッサと、メモリと、前記メモリに格納されたプログラム命令であって、前記少なくとも1つのプロセッサによる実行の際に、画像形成システムに、ユーザーIDデータを含む印刷ジョブチケットと、画像データとを含む印刷ジョブを端末装置から複数の画像形成装置のうち少なくとも1台に送信するとともに前記印刷ジョブチケットを前記端末装置から携帯端末に送信する送信工程と、前記印刷ジョブ及び前記印刷ジョブチケットを前記少なくとも1台の画像形成装置で受信する受信工程と、前記複数の画像形成装置からの各指定範囲の中における無線通信を用い、前記携帯端末内に前記送信された印刷ジョブチケットの前記ユーザーIDデータを有する前記携帯端末からのアクセスを待機する待機工程と、前記携帯端末の前記ユーザーIDデータを用いる前記印刷ジョブチケットのアクセスを前記携帯端末に最も近いと判定された前記画像形成装置によって認証する認証工程と、前記最も近い画像形成装置が前記少なくとも1台の画像形成装置のいずれかと異なる場合、前記携帯端末から前記最も近い画像形成装置へのアクセスに応じて、前記少なくとも1台の画像形成装置の1台から前記最も近い画像形成装置に対して前記印刷ジョブチケットを転送する転送工程と、前記認証に応じて、前記最も近い画像形成装置の前にいるユーザーの顔画像を取得する取得工程と、前記最も近い画像形成装置に前記画像データを印刷させるために、前記取得した顔画像における前記印刷ジョブチケットの所有者の顔を認識する認識工程と、前記顔画像が認識されている間、前記画像データを印刷する印刷工程とを含む工程を実施させるプログラム命令を備える。
【0007】
本発明の画像形成方法は、ユーザーIDデータを含む印刷ジョブチケットと、画像データとを含む印刷ジョブを端末装置から複数の画像形成装置のうち少なくとも1台に送信するとともに前記印刷ジョブチケットを前記端末装置から携帯端末に送信し、前記印刷ジョブ及び前記印刷ジョブチケットを前記少なくとも1台の画像形成装置で受信し、前記複数の画像形成装置からの各指定範囲の中における無線通信を用い、前記携帯端末内に前記送信された印刷ジョブチケットの前記ユーザーIDデータを有する前記携帯端末からのアクセスを待機し、前記携帯端末の前記ユーザーIDデータを用いる前記印刷ジョブチケットのアクセスを前記携帯端末に最も近いと判定された前記画像形成装置によって認証し、前記最も近い画像形成装置が前記少なくとも1台の画像形成装置のいずれかと異なる場合、前記携帯端末から前記最も近い画像形成装置へのアクセスに応じて、前記少なくとも1台の画像形成装置の1台から前記最も近い画像形成装置に対して前記印刷ジョブチケットを転送し、前記認証に応じて、前記最も近い画像形成装置の前にいるユーザーの顔画像を取得し、前記最も近い画像形成装置に前記画像データを印刷させるために、前記取得した顔画像における前記印刷ジョブチケットの所有者の顔を認識し、前記顔画像が認識されている間、前記画像データを印刷することを含む。
【0008】
本発明は、画像形成システムを制御するための画像形成プログラムを提供する。前記画像形成プログラムは、メモリに格納されたプログラム命令であって、前記少なくとも1つのプロセッサによる実行の際に、前記画像形成システムに、ユーザーIDデータを含む印刷ジョブチケットと、画像データとを含む印刷ジョブを端末装置から複数の画像形成装置のうち少なくとも1台に送信するとともに前記印刷ジョブチケットを前記端末装置から携帯端末に送信する送信工程と、前記印刷ジョブ及び前記印刷ジョブチケットを前記少なくとも1台の画像形成装置で受信する受信工程と、前記複数の画像形成装置からの各指定範囲の中における無線通信を用い、前記携帯端末内に前記送信された印刷ジョブチケットの前記ユーザーIDデータを有する前記携帯端末からのアクセスを待機する待機工程と、前記携帯端末の前記ユーザーIDデータを用いる前記印刷ジョブチケットのアクセスを前記携帯端末に最も近いと判定された前記画像形成装置によって認証する認証工程と、前記最も近い画像形成装置が前記少なくとも1台の画像形成装置のいずれかと異なる場合、前記携帯端末から前記最も近い画像形成装置へのアクセスに応じて、前記少なくとも1台の画像形成装置の1台から前記最も近い画像形成装置に対して前記印刷ジョブチケットを転送する転送工程と、前記認証に応じて、前記最も近い画像形成装置の前にいるユーザーの顔画像を取得する取得工程と、前記最も近い画像形成装置に前記画像データを印刷させるために、前記取得した顔画像における前記印刷ジョブチケットの所有者の顔を認識する認識工程と、前記顔画像が認識されている間、前記画像データを印刷する印刷工程とを含む工程を実施させるプログラム命令を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザーの利便性を高めつつ印刷物の秘匿性を高めることができる。
【0010】
他の態様、有利な点及び代替案と同様、これらのことは、必要に応じて添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによって当業者にとって明白になるであろう。さらに、本明細書における当該概要及び他のセクションで提供されている説明は、請求されている主題を限定のためでなく例として示すことを意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る画像形成システムの機能的構成を表すブロック図を示す。
【
図2】第1実施形態に係る画像形成方法を表すフローチャートを示す。
【
図3】第1実施形態に係る操作表示部上のユーザーインターフェース画面を示す。
【
図4】第1実施形態に係る印刷工程を表すフローチャートを示す。
【
図5】第2実施形態に係る印刷工程を表すフローチャートを示す。
【
図6】第2実施形態に係る再開印刷工程を表すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態(以下、「本実施形態」と呼ぶ)を図面を参照して説明する。
【0013】
A.第1実施形態
図1は、本開示の一実施形態に係る画像形成システム10の機能的構成を表すブロック図を示す。画像形成システム10は、画像形成装置100(101、102及び103)、スマートフォン200(201、202及び203)、パーソナルコンピュータ300(301、302及び303)及びサーバ400を備える。パーソナルコンピュータ300及びサーバ400は、ネットワーク(本例ではLAN)を介して画像形成装置100に接続されている。スマートフォン200は、WiーFi Direct及びBLUETOOTH(登録商標)を含むIEEE 802.11a/b/g/n/acに準拠したWi-Fi等の無線通信を介して画像形成装置100に接続されている。
【0014】
画像形成装置100は、制御部110、画像形成部120、操作表示部130、記憶部140、通信インターフェース部150及び画像取得部170を備える。スマートフォン200は、制御部210、操作表示部230、記憶部240及び通信インターフェース部250を備える。パーソナルコンピュータ300は、端末装置とも呼ばれ、制御部310及び操作表示部330を備える。
【0015】
通信インターフェース部150と通信インターフェース部250は、例えば、伝送制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)スイートを用いて通信する。
【0016】
画像形成部120は、画像スキャニング部121、画像処理部122及び定着装置123aを備えた画像出力部123を備える。画像スキャニング部121は、原稿から画像を読み取ってスキャンデータを生成する。画像処理部122は、印刷設定に従ってスキャンデータを処理する。画像出力部123は、処理されたスキャンデータに基づいて印刷媒体に印刷する。
【0017】
画像形成装置100の操作表示部130は、表示部131と操作処理部132を備える。スマートフォン200の操作表示部230は、表示部231と操作処理部232を備える。表示部131は、タッチパネルとして機能するが、受信画面として様々なメニューを表示する。操作処理部132及び232は、タッチパネルとして機能する表示部131及び各種のボタンやスイッチ(図示省略)からのユーザーの入力操作を受け付ける。
【0018】
制御部110及び210は、RAMやROM等の主記憶部及びマイクロプロセッサユニット(MPU)や中央処理装置(CPU)等の制御部を備える。制御部110及び210は、また、各種のI/O、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)、バス及びその他のハードウェア等のインターフェースに関連した制御部機能を有するとともに、それぞれ画像形成装置100全体及びスマートフォン200全体を制御する。
【0019】
記憶部140及び240は、非一時的な記憶媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリ等から成る記憶装置であり、それぞれ制御部110及び210により実行される処理の制御プログラム及びデータを記憶する。画像形成システム10は、少なくとも1つのプロセッサとメモリとをハードウェアリソースとして有し、メモリに格納されたプログラム命令を備えている。
【0020】
記憶部140は、さらにアドレス帳141、ボックス記憶領域142及びユーザー情報記憶領域143を備える。画像形成装置100の各ユーザーが利用可能な記憶領域はボックス記憶領域142に割り当てられている。ユーザー情報記憶領域143は、アドレス帳141に記録されているユーザーに関連して、認証用のパスワードや各ユーザーの顔画像等の複数の個人情報を記憶している。画像取得部170は、画像形成装置100の前にいるユーザーの顔画像を取得するカメラである。
【0021】
図2は、第1実施形態に係る画像形成方法を表すフローチャートを示す。ステップS100では、ユーザーAは、ユーザーがユーザーAであるパーソナルコンピュータ301の操作表示部330上の原稿を印刷するよう指示する。具体的には、ユーザーAは、画像形成装置101乃至103のうちの1台の選択及びプライベート印刷すなわちセキュア印刷の出力方法を含めた印刷オプションを設定する。プライベート印刷では、そのジョブの所有者のために印刷物の出力をプライベート(秘匿)にできる。
【0022】
この場合、ユーザーAは、画像形成装置101乃至103のうちの1台とプライベート印刷のオプションを選択する。パーソナルコンピュータ301の制御部310は、プライベート印刷のオプション及び画像形成装置100の選択を含む設定に基づき、画像データを含む印刷ジョブを準備する。制御部310は、プライベート印刷のオプションに基づいて、プライベート印刷ジョブを行うためのデータファイルをとしてのチケットであり、また単にジョブチケットとも呼ばれる印刷ジョブチケットを作成する。
【0023】
印刷ジョブチケットは、例えば、シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル(SOAP)メッセージ又は拡張マークアップ言語(XML)ファイルとして構成されてもよい。印刷ジョブチケットのSOAPメッセージは、SOAP本体を含むSOAPエンベロープを有するデータファイルである。SOAP本体は、選択された画像形成装置101及びユーザー情報、すなわちユーザーのログイン情報を含むユーザーIDデータを含む。ユーザー情報は、画像形成装置100のそれぞれの中のアドレス帳141に記録されている情報である。
【0024】
ステップS200では、パーソナルコンピュータ301は、無線通信を介してユーザーAのスマートフォン201に対して印刷ジョブチケットを送信する。スマートフォン201は、印刷ジョブチケットを受信する。パーソナルコンピュータ301は、スマートフォン201から印刷ジョブチケットの受信の確認応答を受信する。
【0025】
ステップS300では、パーソナルコンピュータ301は、LANを介して、印刷ジョブ及び印刷ジョブチケット(印刷ジョブチケットが埋め込まれた印刷ジョブの構成であってもよい)を画像形成装置101(単にMFP101もしくはMFP_Aとも呼ばれる。)に送信する。パーソナルコンピュータ301は、画像形成装置101から印刷ジョブの受信の確認応答を受信する。あるいは、パーソナルコンピュータ301は、印刷ジョブとは別個に印刷ジョブチケットを送信してもよい。
【0026】
本実施形態においては、二つの印刷ジョブチケットがパーソナルコンピュータ301から送信され、印刷ジョブとともにもしくは印刷ジョブとは別個に、二つの印刷ジョブチケットのうちの一方はユーザーAのスマートフォン201に送信され、一方、二つの印刷ジョブチケットのうちの他方は選択された画像形成装置101に送信される。
【0027】
パーソナルコンピュータ301は、無線通信を介したスマートフォン201からのアクセスの待機を開始する。あるいは、印刷ジョブがハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)を用いて別個に送信されると同時に、印刷ジョブチケットは、例えば、xmlファイルを用いて送信されてもよい。
【0028】
ステップS400では、スマートフォン201を所持するユーザーAは画像形成装置101の方へ移動する。ユーザーAが画像形成装置101からの指定範囲の中に移動すると、スマートフォン201は自動的に画像形成装置101にログインし、続いてパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットを画像形成装置101に送信する。この指定範囲は、無線通信を介してスマートフォン201が画像形成装置101に接続可能な範囲としてもよい。画像形成装置101は、スマートフォン201から印刷ジョブチケットを受信する。
【0029】
ステップS500では、画像形成装置101は、スマートフォン201からの印刷ジョブチケットをパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットと比較する。スマートフォン201からの印刷ジョブチケットがパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットと一致する場合、制御部110は、処理をステップS700に進める(ステップS600)。スマートフォン201からの印刷ジョブチケットがパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットと一致しない場合、制御部110は、処理を終了する(ステップS600)。
【0030】
ステップS700では、画像形成装置101は、顔認識のために、画像取得部170に画像形成装置101の前にいるユーザーの顔画像の取得を開始させる。制御部110は、ユーザー情報記憶領域143に記憶されているユーザーAの顔画像からの顔の特徴を用いて顔認識の実行を試みる。その一方では、画像処理部122は、ラスター画像処理(RIP)の実行を開始してビットマップとしても知られているラスター画像を生成する。ステップS750では、スマートフォン201を所持するユーザーAが画像形成装置101の前に来る。
【0031】
ステップS800では、制御部110は、動作モードを省電力動作モードから通常の動作モードに切り替え、続いてステップS700の処理が行われている間、ステップS600での一致後速やかに始動する。あるいは、正確な省電力のために、制御部110が動作モードを切り替えるタイミングを制御するために、RSSI(後述する)の値を使用してもよい。省電力動作モードは、定着装置123aが通電されて印刷物を出力する準備ができている通常の動作モードより電力消費が少ない動作モードである。
【0032】
図3は、第1実施形態に係る操作表示部230に表示されたユーザーインターフェース画面231aを示す。
図3に示すように、制御部110は、スマートフォン201にバイブレーション及びスマートフォン201の表示部231へのユーザーインターフェース画面の表示によるプッシュ通知を行って印刷可能であることを所有者に通知する。あるいは、制御部110は、電子メールあるいはメッセージ送信プロトコル(MSP)を用いてメッセージを送信してもよい。
【0033】
ユーザーインターフェース画面231aは、出力リスト、MFPの状態及びユーザーAに対する指示を示す。この場合、以下のいくつかの情報が表示される。出力リストは、印刷ジョブの所有者、データファイル、コピー数及び状態を示し、印刷されたページ数/全ページ数を含めてもよい。MFPの状態は、MFP_Aが待ち行列に印刷ジョブがあり、MFP_B及びMFP_Cで印刷ジョブが利用可能であることを示している。指示には、「顔認識のためにMFP_Aの前に立ち続けてください。」という指示が含まれる。
【0034】
ユーザーインターフェース画面231aはまた、OKアイコン231b及びキャンセルアイコン231cを表示する。ユーザーAが、キャンセルアイコン231cに触れた場合、スマートフォン201は、画像形成装置101に印刷ジョブを取り消させる指示を画像形成装置101に対して送信する。ユーザーAが、OKアイコン231bに触れた場合、スマートフォン201は、画像形成装置101に印刷ジョブの出力を開始させる指示を画像形成装置101に対して送信する(ステップS810)。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る印刷工程を表すフローチャートを示す。制御部110は、画像取得部170を用いて顔認識を行っている。
【0036】
ステップS820では、制御部110は、顔認識が保持されているかどうか判定する。顔認識が保持されている間、制御部110は処理をステップS830に進める。顔認識が保持されていない場合もしくは失敗した場合、すなわち顔認識を喪失した場合には、制御部110は処理をステップS840に進める。
【0037】
ステップS830では、制御部110は、全てのページが印刷されるまで印刷ジョブを行う。ステップS840では、制御部110は、処理を中断し、続いて処理をステップS850に進める。
【0038】
ステップS850では、制御部110は、時間の計測を開始して再び顔認識を試行し、ユーザーAが画像形成装置101の前に戻るプッシュ通知をスマートフォン201に実行させる。制御部110が、所定時間以内に、この場合は30秒であるが、顔認識に成功した場合、制御部110は印刷を再開する(ステップS860)。制御部110が、所定時間以内での顔認識に失敗した場合、制御部110は印刷ジョブを取り消す(ステップS870)。
【0039】
所定時間は、セキュリティレベルによって変更しても良い。セキュリティレベルが高ければ高いほど所定時間は短くなる。セキュリティレベルは、印刷ジョブの内容に基づいて調整してもよい。印刷する原稿が、健康診断の結果、銀行口座番号やクレジットカード番号等の財務情報及び/又は署名等の個人情報といった機密性に関連した所定の文言を含む場合、たとえば画像データにユーザーIDデータを自動的に含めるとともに画像形成装置はセキュリティレベルを高いレベルに調整してもよい。原稿の内容は、光学式文字認識(OCR)及びサーバ400内のセキュリティデータベースを用いて所定の文言を表す文字列を分析してもよい。
【0040】
上述してきたように,第1実施形態に係る画像形成システム10は、顔認識が保持されている間、ジョブの所有者のためにプライベートに印刷物を出力することができる。画像形成システム10は、また、印刷ジョブチケットの一致に呼応して動作モードを省電力動作モードから通常動作モードに切り替えること、スマートフォン201によるプッシュ通知及び顔認識に呼応した印刷の自動開始を含めた手順を合理化することができる。これにより、ジョブの所有者のためにプライベート(秘匿状態で)に印刷物を出力することができるとともに、ユーザーの作業量を低減することができる。
【0041】
B.第2実施形態
図5は、第2実施形態に係る印刷工程を表すフローチャートを示す。第2実施形態に係る印刷工程は、ユーザーが印刷ジョブ処理の最中に画像形成装置100を変更することができる点で第1実施形態に係る印刷工程と異なる。ステップS850の後に、ステップS853、ステップS855及びステップS860aが追加されている。
【0042】
制御部110が所定時間以内に顔認識に失敗した場合、第1実施形態では印刷ジョブが取り消されるが、第2実施形態に係る制御部110は、印刷ジョブを取り消す代わりに処理をステップS853に進める。
【0043】
ステップS853では、制御部110は、LANを介してサーバ400に印刷ジョブを印刷したページ数を含む印刷状態情報とともにアップロードする。そして、印刷ジョブは、MFP_Aに対してのみでなくMFP_B及びMFP_Cに対しても利用可能になる。MFP_Aは画像形成装置101であり、MFP_Bは画像形成装置102であり、さらにMFP_Cは画像形成装置103である。
【0044】
ステップS855では、スマートフォン201を所持したユーザーAは、画像形成装置101乃至103のいずれかの方へ移動する。ユーザーAが画像形成装置102からの指定範囲の中に移動し、画像形成装置102がスマートフォン201に対して最も近いと判定された場合、スマートフォン201は自動的に画像形成装置102にログインし、続いてパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットを画像形成装置102に送信する。
【0045】
画像形成装置102は、画像形成装置101乃至103の受信信号強度インジケータ(RSSI)の値を用いて最も近いとサーバ400によって判定される。この場合、画像形成装置102のRSSIの値が画像形成装置101のRSSIの値より大きい一方、画像形成装置103のRSSIの値は入手できないものとする。サーバ400は、画像形成装置102が最も近い画像形成装置であると判定する。RSSIの値もまた、セキュリティレベルによって変わる所定時間の代わりに、制御部110が動作モードを切り替えるタイミングを制御するために使用してもよい。
【0046】
指定範囲とは、無線通信を介してスマートフォン201が画像形成装置102に接続可能な範囲である。サーバ400は、画像形成装置102及びLANを介してスマートフォン201から印刷ジョブチケットを受信する。
【0047】
図6は、第2実施形態に係る再開印刷工程を表すフローチャートを示す。ステップS861では、サーバ400は、スマートフォン201からの印刷ジョブチケットをパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットと比較する。スマートフォン201からの印刷ジョブチケットがパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットと一致する場合、サーバ400は、処理をステップS863に進める(ステップS862)。スマートフォン201からの印刷ジョブチケットがパーソナルコンピュータ301から送信された印刷ジョブチケットと一致しない場合、サーバ400は処理をステップS855に戻す(ステップS862)。
【0048】
ステップS863では、サーバ400は、画像形成装置102にサーバ400から印刷ジョブと印刷状態情報とをダウンロード(転送)させる。画像形成装置102は、待ち行列に印刷ジョブを有することとなる。ステップS864では、画像形成装置102(中断された画像形成装置以外の複数の画像形成装置のうちの1台)は、再び顔認識を試行する。画像形成装置102の制御部110が所定時間以内に(この場合5分である。)顔認識に成功した場合、制御部110は処理をステップ800a(
図5参照)に進め、ダウンロードされた印刷ジョブと印刷状態情報とを用いて印刷状態情報を用いて判定されたページから印刷を再開する(ステップS865)。画像形成装置102の制御部110が所定時間以内での顔認識に失敗した場合、制御部110は処理をステップS855に戻す。所定時間は、セキュリティレベルによって変動させても良い。
【0049】
上述してきたように、第2実施形態に係る画像形成システム10において、ユーザーは、印刷ジョブ処理の最中に印刷する画像形成装置100を変更することができる。これにより、画像形成装置100を柔軟に使用することができる。サーバ400は、第2実施形態におけるプッシュ通知をスマートフォン201に行わせ、印刷ジョブ及び画像形成装置101乃至103の利用可能性が更新されたことを示してもよい。
【0050】
C.変形例:本開示は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、以下の変形例もまた可能である。
【0051】
変形例1:上述した実施形態において、顔認識は、印刷ジョブの所有者の有無を確認してプライベートに印刷物を出力できるように用いられているが、これに限定されるものではない。受信信号強度インジケータ(RSSI)の値を用いて画像形成装置とジョブの所有者との間の距離を測定することもまた利用可能である。具体的には、ユーザーが画像形成装置から1メートル以内にいることを判定するために、スマートフォンはRSSIの値を読み、1メートルの距離で受信した平均のRSSIを実際のRSSIと比較する。顔認識は、この判定に相当する。
【0052】
変形例2:RSSIは、また、顔認識の開始のために用いられてもよい。具体的には、スマートフォンがRSSIの値を読み、数メートルの距離で受信した平均のRSSIを実際のRSSIと比較して顔認識を開始するべきと判定した場合に顔認識を開始してもよい。
変形例3
【0053】
上述した実施形態において、スマートフォンは携帯端末として用いられているが、これに限定されるものではない。いずれの携帯端末も、その携帯端末が無線通信で接続可能である限りにおいて、スマートフォンの代わりに用いられる。
【符号の説明】
【0054】
100 画像形成装置
200 スマートフォン
300 パーソナルコンピュー
400 サーバ