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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/10 20060101AFI20220328BHJP
【FI】
E03D9/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018013758
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019132002
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】藤野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 元太
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-275885(JP,A)
【文献】特開2017-014697(JP,A)
【文献】特開2015-151694(JP,A)
【文献】特開2012-036684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を粉砕して排出する便器装置であって、
貯留された溜水の溜水面が形成され且つ汚物を受ける汚物受け面を備えるボウル部と、
上記ボウル部内で汚物を粉砕する粉砕装置と、
水道の給水圧を利用して上記ボウル部に洗浄水を供給する水道直圧式の給水装置と、
上記ボウル部内の洗浄水を下流側に排出させる排出装置と、
上記粉砕装置及び上記排出装置を制御する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記粉砕装置を駆動して上記ボウル部内で汚物を粉砕する粉砕モードと、
上記排出装置を駆動して上記粉砕モードにより粉砕された汚物を上記ボウル部内の洗浄水とともに排出する第1排出モードと、
上記給水装置により供給された洗浄水により上記ボウル部を洗浄する排出後洗浄モードと、を実行可能に構成され、
上記制御部は、上記粉砕モードにおいて、洗浄動作開始前の待機状態の溜水面の水位よりも低い溜水面の水位の状態で上記ボウル部内において汚物を粉砕させ、
上記制御部は、上記第1排出モードの開始より後に、上記排出後洗浄モードを開始させ且つ、上記第1排出モードの終了より後に、上記排出後洗浄モードを終了させることを特徴とする、便器装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記排出後洗浄モードの開始より後に上記排出装置を駆動して上記粉砕モードにより粉砕された汚物を上記ボウル部内の洗浄水とともに排出する第2排出モードを開始させる、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記粉砕モードの開始以前に上記給水装置により供給された洗浄水により上記ボウル部を洗浄する粉砕前洗浄モードを開始させる、請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項4】
さらに、ボウル部内の水位を検知する水位検知手段を備え、
上記制御部は、上記第1排出モードの開始より後に、上記水位検知手段により所定水位以下の水位が検知された場合に、上記排出後洗浄モードを開始させる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の便器装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記排出装置の駆動停止後に上記排出後洗浄モードを開始させる、請求項4に記載の便器装置。
【請求項6】
上記排出装置は排出ポンプであり、上記排出ポンプは上記ボウル部の底部と連通され、上記水位検知手段は、上記排出ポンプがエアロックとなる場合に、上記ボウル部内の水位が所定水位以下の水位となることを検知する、請求項5に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に係り、特に、汚物を粉砕して排出する便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、介護用のトイレ装置として、便器本体内の底部に撹拌機構を設けたものが知られている。このトイレ装置においては、先ず、撹拌機構が便器本体内の底部で回転して、汚物と排出用水を撹拌し、汚物及び排出用水を全体として均一な流動状態とする。次に、水道管に連結された加圧流体供給部が、水道圧力を利用して汚物等の排出を行う。より具体的には、密閉状態の便器内に水道圧力を有する水道水を供給することにより、便器内の圧力が高まり、汚物等が排出管から排出される。水道圧力が低い場合や、排出用水の水量を少なくしたい場合には、加圧流体供給部に高圧空気源を使用し、汚物等をエアー圧力で排出することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-8442号
【文献】特開2001-275885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1に示すトイレ装置においては、水道直圧により給水がなされるため給水流量が安定しないことが考えられる。また、排出管が細く長くなる場合には便器からの排水流量が低減されることが考えられる。そのため、水道直圧の給水を行うと共に汚物の排出のための排水も行う場合に、給水流量が大きく且つ排水流量が小さくなるような便器装置の設置環境においては、給水流量と排水流量との差が非常に小さくなる。よって、給水と排水とが継続されたままとなり、汚物等の排出に要する時間が長くなる懸念がある。このように、汚物等の排出に要する時間が長くなると、排水動作に伴う洗浄音が長く続き、使用者に不快感や不安感を与える懸念がある。
一方、汚物等の排出に要する時間を短くするために、給水を行わないことも考えられるが、その場合、攪拌時や汚物の排出時に便器本体内面に付着して残る汚物や汚物の排出時に排出しきれなかった汚物が便器本体内に残り、洗浄性が低下してしまう懸念がある。
【0005】
一方、特許文献2に示すポータブルトイレにおいては、洗浄水生成装置内の給水ポンプにより便容器に給水するため、水道直圧の給水環境と比べて、給水流量が安定しやすい。このような給水ポンプによる給水の構成を採用せず、水道直圧により給水がなされるため給水流量が安定しない場合に、ボウル部から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部の洗浄性との両立をさせることが課題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ボウル部から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部の洗浄性との両立を可能とすることができる便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、汚物を粉砕して排出する便器装置であって、貯留された溜水の溜水面が形成され且つ汚物を受ける汚物受け面を備えるボウル部と、上記ボウル部内で汚物を粉砕する粉砕装置と、水道の給水圧を利用して上記ボウル部に洗浄水を供給する水道直圧式の給水装置と、上記ボウル部内の洗浄水を下流側に排出させる排出装置と、上記粉砕装置及び上記排出装置を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、上記粉砕装置を駆動して上記ボウル部内で汚物を粉砕する粉砕モードと、上記排出装置を駆動して上記粉砕モードにより粉砕された汚物を上記ボウル部内の洗浄水とともに排出する第1排出モードと、上記給水装置により供給された洗浄水により上記ボウル部を洗浄する排出後洗浄モードと、を実行可能に構成され、上記制御部は、上記粉砕モードにおいて、洗浄動作開始前の待機状態の溜水面の水位よりも低い溜水面の水位の状態で上記ボウル部内において汚物を粉砕させ、上記制御部は、上記第1排出モードの開始より後に、上記排出後洗浄モードを開始させ且つ、上記第1排出モードの終了より後に、上記排出後洗浄モードを終了させることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、制御部は、第1排出モードの実行後にボウル部に汚物や汚水が付着して残ることを抑制するように、第1排出モードの開始より後に、排出後洗浄モードを開始させる。このように構成された本発明は、第1排出モードと排出後洗浄モードとが同時に開始される場合に比べて、ボウル部から洗浄水を排出するために要する時間が長くなることを抑制することができる。さらに、第1排出モードの終了後に排出後洗浄モードが終了するので、ボウル部に汚物や汚水が付着して残ることを抑制することができる。従って、本発明によれば、ボウル部から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部の洗浄性の低下の抑制との両立を可能とすることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記排出後洗浄モードの開始より後に上記排出装置を駆動して上記粉砕モードにより粉砕された汚物を上記ボウル部内の洗浄水とともに排出する第2排出モードを開始させる。
このように構成された本発明においては、制御部は、排出後洗浄モードの開始より後に、第2排出モードを開始させる。これにより、排出後洗浄モードにより洗い流された汚物及び汚水を第2排出モードにより効率的に排出することができる。従って、本発明によれば、ボウル部から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部の洗浄性のさらなる向上との両立を可能とすることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記粉砕モードの開始以前に上記給水装置により供給された洗浄水により上記ボウル部を洗浄する粉砕前洗浄モードを開始させる。
このように構成された本発明においては、粉砕モードの開始以前に開始される粉砕前洗浄モードにより、粉砕モードの開始以前にボウル部の汚物受け面に付着した汚物を溜水中に流下させることができ、汚物を効率よく粉砕することができる。従って、ボウル部から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部の洗浄性のさらなる向上との両立を可能とすることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、ボウル部内の水位を検知する水位検知手段を備え、上記制御部は、上記第1排出モードの開始より後に、上記水位検知手段により所定水位以下の水位が検知された場合に、上記排出後洗浄モードを開始させる。
このように構成された本発明においては、制御部は、第1排出モードの開始より後に、ボウル部内の水水位が所定水位以下となった場合により確実に排出後洗浄モードを開始できる。よって、ボウル部から洗浄水を排出するために要する時間が長くなることをより確実に抑制すると共に、第1排出モードの排出後にボウル部に汚物や汚水が付着して残ることをより確実に抑制することができる。さらに、仮に制御部が第1排出モードの開始時からの時間経過により排出後洗浄モードを開始させる場合には、水道の給水圧等の条件により、ボウル部内の水位が所定水位以下となる前の第1排出モードの排出が十分に完了していない状態で、時間経過により排出後洗浄モードが開始されてしまう懸念がある。この懸念をより確実に抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記排出装置の駆動停止後に上記排出後洗浄モードを開始させる。
このように構成された本発明においては、制御部は、第1排出モードの完了後に、排出後洗浄モードを開始させるので、第1排出モードの実行と排出後洗浄モードの実行とが重ならないようにすることができる。よって、ボウル部から洗浄水を排出するために要する時間が長くなることをより確実に抑制すると共に、第1排出モードの排出後にボウル部に汚物や汚水が付着して残ることをより確実に抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記排出装置は排出ポンプであり、上記排出ポンプは上記ボウル部の底部と連通され、上記水位検知手段は、上記排出ポンプがエアロックとなる場合に、ボウル部内の水位が所定水位以下の水位となることを検知する。
このように構成された本発明においては、他に追加のセンサを備えなくとも、排出ポンプのエアロックにより、ボウル部内の水位が所定水位以下の水位、例えば底部の水位まで低下したことを検知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の便器装置によれば、ボウル部から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部の洗浄性との両立を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による便器装置を後方斜め上方から見た全体斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による便器装置を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による便器装置の給水装置、粉砕装置、排出ポンプの動作、及びボウル部内の水位の変化を示すタイムチャートである。
図4図2に示す便器装置において、使用者が便器本体を使用すると共に制御部が待機モードを実行している状態を示す図である。
図5図2に示す便器装置において、制御部が粉砕前洗浄モード及び水位低下モードを実行している状態を示す図である。
図6図2に示す便器装置において、制御部が粉砕モードを実行している状態を示す図である。
図7図2に示す便器装置において、制御部が第1排出モードを実行している状態を示す図である。
図8図2に示す便器装置において、制御部が排出後洗浄モードを実行している状態を示す図である。
図9図2に示す便器装置において、制御部が第2排出モードを実行している状態を示す図である。
図10図2に示す便器装置において、制御部がクリーニング溜水形成モードを実行している状態を示す図である。
図11図2に示す便器装置において、制御部がクリーニングモードを実行している状態を示す図である。
図12図2に示す便器装置において、制御部が第3排出モードを実行している状態を示す図である。
図13図2に示す便器装置において、制御部が再洗浄モードを実行している状態を示す図である。
図14図2に示す便器装置において、制御部が第4排出モードを実行している状態を示す図である。
図15図2に示す便器装置において、制御部が溜水形成モードを実行している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による便器装置について説明する。最初に、図1及び図2により、本発明の一実施形態による便器装置の全体構造を説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態による便器装置であるポータブルトイレ装置1は、汚物を粉砕して排出する水洗式の便器装置であり、通常のトイレ空間以外の場所、例えば、使用者の居室、寝室内のベッドサイド等に配置されることができる。ポータブルトイレ装置1は、介護用として使用でき、また、高齢者や病気の人などで、トイレまで歩いていくことが困難又は比較的負担に感じる人にも、自分で居室において使用することができる便器装置である。なお、以下、本発明の一実施形態における説明において、ポータブルトイレ装置1を使用する使用者側(ポータブルトイレ装置1を使用するためにポータブルトイレ装置1の正面に立っている使用者側)から見てポータブルトイレ装置1の手前側を前方側とし、使用者から見て奥側を後方側とし、ポータブルトイレ装置1を前方から見て右側を右側とし、前方から見て左側を左側として説明している。
【0017】
ポータブルトイレ装置1は、便器本体2と、便器本体2に洗浄水を供給する給水装置である給水装置4と、便器本体2を支持するフレーム6と、を備えている。
【0018】
また、ポータブルトイレ装置1は、移動可能な非据え付け型の装置である。ポータブルトイレ装置1は、フレーム6のフレーム基部6aが便器本体2等が設置される床面Fに固定されておらず、使用者又は事業者等によって車輪1a等を利用して移動可能に形成されている。
【0019】
図2に示すように、給水装置4は、建物側の水道等の給水設備と可撓性の給水管8を介して接続されている。給水装置4は、便器本体2の後方上部に設けられ、ボウル部10に形成された吐水口10aからボウル部10に洗浄水を供給する。給水装置4は、水道の給水圧を利用してボウル部10に洗浄水を供給する水道直圧式の給水装置である。給水管8は給水ホース等により形成される。
【0020】
便器本体2は、便器本体2の前方側に設けられた汚物を受けるボウル部10と、ボウル部10の底部と連通するように設けられて汚物を洗浄水と共に排出する排出路である排水トラップ管路12と、を備えている。
【0021】
ボウル部10は、汚物を受ける汚物受け面10bと、ボウル部10の上縁部に沿って形成されたリム部10eと、汚物受け面10bの上方且つリム部10eの下部に形成された吐水口10aと、汚物受け面10bの下部から上下方向に延びる筒状部分10cと、筒状部分10cの下端から外側に延びる粉砕室10dとを備えている。
【0022】
汚物受け面10bはすり鉢状に形成されている。汚物受け面10bには、一連の洗浄動作の開始前の待機状態において、貯留された溜水の溜水面W0(待機状態の溜水面)が形成される。このとき、汚物受け面10bの下部、筒状部分10c及び粉砕室10dに溜水が貯留された状態となっている。筒状部分10cは上面視における流路径(断面積径)がほぼ一定になるように形成されている。筒状部分10cは鉛直方向に延びる比較的短い流路を形成する。粉砕室10dは、後方側に広がる小室を形成する。粉砕室10dは、汚物を粉砕する時点において、洗浄水を貯溜している状態となっている。粉砕室10dは、回転体26の下方の底面を、後方側に向けて上昇させた傾斜面10fを形成している。
【0023】
排水トラップ管路12は、ボウル部10の底面に接続する接続部12aと、排水トラップを形成するように接続部12aから立ち上がる上昇部12bと、排水トラップの頂点の直線流路を形成する頂部12dと、頂部12dから下降する流路を形成する下降部12fと、下降部12fから床面Fのわずかに上方且つ床面Fとほぼ平行に延びる横向部12gとを備えている。
【0024】
排水トラップ管路12の接続部12aは、後述するフィルタ38の孔48の下方から後述する排出ポンプ20まで横向きに延びている。排水トラップ管路12は、少なくとも上昇部12bと、頂部12dとにより凸形状の排水トラップ構造を形成する。頂部12dは、頂部12dの底面が平坦面として形成されるような折り返し部分を形成している。頂部12dの底面の高さがボウル部10の初期水位の溜水面W0の高さとなっている。
【0025】
排水トラップ管路12の下流側の横向部12gには、排水管路16が接続される。排水トラップ管路12及び排水管路16は、ポータブルトイレ装置1を移動可能にするため比較的細い配管により形成される。排水トラップ管路12の内径は好ましくは10mm~50mmの範囲であり、より好ましくは20mmである。排水管路16は、排水ホース等の可撓性部材により形成される可撓性の管路部分16aを有する。可撓性の管路部分16aは、排水トラップ管路12の下流側の横向部12gに接続される。排水管路16は、建物側に設けられた排水用の配管(図示せず)も含み、横向部12g又は可撓性の管路部分16aから連続して延び且つ可撓性の管路部分16aとほぼ同様の配管の内径が続く部分の配管が含まれる。例えば、排水管路16は、排水トラップ管路12の横向部12gから建物側の汚水桝(図示せず)まで延びる。排水管路16の内径は、好ましくは10mm~50mmの範囲であり、より好ましくは20mmである。後述する排出ポンプ20の排出能力(例えば出力)を一定とすると、排水管路16の長さが長くなる場合洗浄水の排出流量が比較的低減される。一方、排出ポンプ20の排出能力一定で、排水管路16の長さが短くなる場合には、洗浄水の排出流量が比較的増大される。このように、排水管路16の長さが長くなるようなポータブルトイレ装置1の設置環境においては、ポータブルトイレ装置1からの洗浄水の単位時間あたりの排出流量が低減されることとなる。
【0026】
ポータブルトイレ装置1は、さらに、ボウル部10内で汚物を粉砕する粉砕装置18と、ボウル部10内の洗浄水を下流側に排出させる排出装置である排出ポンプ20と、使用者がポータブルトイレ装置1の一連の洗浄動作の開始を操作する操作部(図示せず)と、ポータブルトイレ装置1の一連の洗浄動作等を制御する制御部24と、ボウル部10内の水位を検知する水位検知装置32と、排水トラップ管路12に接続された通気弁管路34と、通気弁管路34に設けられた通気弁36と、ボウル部10と排出ポンプ20との間に設けられるフィルタ38と、を備えている。
【0027】
粉砕装置18は、粉砕室10dの後部側の上方に設けられる。粉砕装置18は、粉砕室10d内に配置されると共に汚物を粉砕するようにボウル部10の溜水内に回転流を形成する回転体26と、回転体26の回転軸28と、回転体26及び回転軸28を駆動させる電動モーター30とを備えている。粉砕装置18の回転体26は、自身の回転によりボウル部10の溜水内に旋回流(回転流)を発生させ、汚物を粉砕する。回転体26は、円盤状に形成されている。回転体26は、粉砕室10dの天井面のわずかに下方においてほぼ水平に取付けられている。電動モーター30は、制御部24と電気的に接続され、制御部24により制御されるようになっている。
【0028】
排出ポンプ20は、溜水面を規定する排水トラップ管路12の排水トラップ構造より上流側に配置される。排出ポンプ20は、高揚程が実現可能な遠心式ポンプを形成している。排出ポンプ20は、ボウル部10内で粉砕した汚物を洗浄水とともに圧送して排水トラップ管路12及び排水管路16を介し排出させる。排出ポンプ20は、ポンプ室40と、ポンプ室40の内側で回転されるインペラ42と、インペラ42の回転軸44と、インペラ42及び回転軸44を駆動させる電動モーター46とを備えている。
【0029】
ポンプ室40の中央部の入口には、フィルタ38の下部から延びる接続部12aが接続され、ポンプ室40の上部の外周部には、上昇部12bが接続される。インペラ42の回転によって発生する遠心力により、汚物及び洗浄水がポンプ室40から排水トラップ管路12に向かって押し出され、且つ圧送される。
【0030】
排出ポンプ20は、ボウル部10内の水位を検知する水位検知手段としても機能している。排出ポンプ20はボウル部10の底部と接続部12aを介して連通されている。ボウル部10内の水位がボウル部10の底面近傍の所定水位W3以下の水位となる場合に、排出ポンプ20が粉砕室10d内の空気を孔48から吸引する。排出ポンプ20のインペラ42が空気を吸引した状態で回転するとき、電動モーター46の負荷が下がり電流値が低下する。制御部24は、電動モーター46の電流値の変動により排出ポンプ20内に空気を噛む込んだエアロック状態を判断することができる。制御部24は、エアロック状態と判断すると電動モーター46の駆動を停止させる。このように、排出ポンプ20が空気を吸引してエアロックとなる場合に、排出ポンプ20はボウル部10内の水位が所定水位W3以下の水位となることを検知することができる。所定水位W3は、最も高い位置にある孔48の高さである。所定水位W3がボウル部10の底面近傍の比較的低い高さに設定されるので、所定水位W3以下の残水量が低減され、当初の溜水面W0の際の溜水量が、残水量以外の給水された洗浄水に置換される割合を示す置換率が上昇する。所定水位W3は、置換率が好ましくは95%以上となる水位に設定されている。
【0031】
制御部24は、使用者による操作部の操作又は自己の設定により、給水装置4、粉砕装置18及び排出ポンプ20を制御する。制御部24は、これらの制御を行うためのCPU、メモリ等を内蔵している。制御部24は、給水装置4、粉砕装置18、排出ポンプ20及び水位検知装置32等と電気的に接続されている。
【0032】
制御部24は、給水装置4、粉砕装置18、排出ポンプ20を待機状態とする待機モードと、給水装置4により供給された洗浄水によりボウル部10を洗浄する粉砕前洗浄モードと、ボウル部10内の溜水面を低下させる水位低下モードと、粉砕装置18を駆動してボウル部10内で汚物を粉砕する粉砕モードと、粉砕モードにより粉砕された汚物をボウル部10内の洗浄水とともに排出する第1排出モードと、給水装置4により供給された洗浄水によりボウル部10を洗浄する排出後洗浄モードと、上記排出後洗浄モードの開始より後に開始され排出ポンプ20を駆動して粉砕モードにより粉砕された汚物をボウル部10内の洗浄水とともに排出する第2排出モードとを実行可能な制御プログラムを備えている。
【0033】
制御部24は、さらに、クリーニングに必要な溜水を形成するクリーニング溜水形成モードと、ボウル部10内を再洗浄するクリーニングモードと、クリーニングモードにより使用された洗浄水を排出する第3排出モードと、第3排出モード後にボウル部10を再洗浄する再洗浄モードと、再洗浄モードにより使用された洗浄水を排出する第4排出モードと、ボウル部10内に溜水を形成する溜水形成モードと、を実行可能な制御プログラムを備えている。制御部24は、さらに、他の後述された動作を実行可能な制御プログラムも備えている。
【0034】
水位検知装置32は、ボウル部10の筒状部分10cの外側に設けられている。水位検知装置32は、制御部24と電気的に接続され、制御部24に水位情報を伝達する。例えば、水位検知装置32は、溜水面の水位が筒状部分10cに相当する所定の水位W1以下に低下したことを検知できる。水位検知装置32は、非接触式の静電容量式のセンサであるがこれに限らず、例えば非接触式のマイクロ波センサであってもよい。
【0035】
通気弁管路34の一端は、排水トラップ管路12の排出ポンプ20より下流側の頂部12dに接続されている。また、通気弁管路34の他端は、ボウル部10の汚物受け面10bの吐水口10aより上部に接続されている。通気弁管路34は、ボウル部10と排水トラップ管路12とを後述する通気弁36を介して連通する。
【0036】
通気弁36は、排水トラップ管路12にボウル部10側の外部空気を取り入れる機能を有する。通気弁36は、所定圧力以下の負圧により開弁する。通気弁36は、排出ポンプ20が洗浄水を下流側に排出することにより、排水トラップ管路12又は排水管路16においてサイホン現象が発生した場合には、このサイホン現象による所定圧力以下の負圧により開弁する弁機構を有する。通気弁36の弁機構は、排水トラップ管路側の圧力が大気圧より低く且つ開弁圧力以下の負圧となる場合に開弁する弁機構を有する。通気弁36は、例えばアンブレラバルブが適用可能である。通気弁36は、サイホン現象が発生した場合にサイホン現象を早期に強制的に終了させることができる。
【0037】
フィルタ38は、ボウル部10の底面に配置される。フィルタ38は、ボウル部10と接続部12aとの接続部に設けられている。フィルタ38には、複数の孔48が形成されている。フィルタ38は、複数の孔48により所定以下の大きさに粉砕された汚物を通過させる機能を有する。フィルタ38は、孔48を通過できないような汚物を粉砕室10d内にとどめる機能も有し、通過できない汚物を粉砕室10d内でさらに粉砕させる。フィルタ38の孔48は、ボウル部10内の水位が所定水位W3以下になるまでは排出ポンプ20がエアロックすることを抑制するように配置されている。
【0038】
次に、図3乃至図15により、上述した本発明の一実施形態による便器装置の動作(作用)を説明する。図4乃至図15において、洗浄水等が存在している部分を点線により図示している。
図3は本発明の一実施形態による便器装置の給水装置、粉砕装置、排出ポンプの動作、及びボウル部内の水位の変化を示すタイムチャートであり、図4図2に示す便器装置において、使用者が便器本体を使用すると共に制御部が待機モードを実行している状態を示す図であり、図5図2に示す便器装置において、制御部が粉砕前洗浄モード及び水位低下モードを実行している状態を示す図であり、図6図2に示す便器装置において、制御部が粉砕モードを実行している状態を示す図であり、図7図2に示す便器装置において、制御部が第1排出モードを実行している状態を示す図であり、図8図2に示す便器装置において、制御部が排出後洗浄モードを実行している状態を示す図であり、図9図2に示す便器装置において、制御部が第2排出モードを実行している状態を示す図であり、図10図2に示す便器装置において、制御部がクリーニング溜水形成モードを実行している状態を示す図であり、図11図2に示す便器装置において、制御部がクリーニングモードを実行している状態を示す図であり、図12図2に示す便器装置において、制御部が第3排出モードを実行している状態を示す図であり、図13図2に示す便器装置において、制御部が再洗浄モードを実行している状態を示す図であり、図14図2に示す便器装置において、制御部が第4排出モードを実行している状態を示す図であり、図15図2に示す便器装置において、制御部が溜水形成モードを実行している状態を示す図である。
図3においては、縦軸において給水装置4のON状態とOFF状態との切替え、粉砕装置18のON状態とOFF状態との切替え、排出ポンプ20のインペラ42のON状態の第2出力とON状態の第1出力とOFF状態との切替え、ボウル部10の底部からの水位の高さの変化を示し、横軸において時間経過及び各モードの変化を示している。
なお、図4乃至図15においては、説明の簡略化のため、通気弁管路34及び通気弁36を省略した構成図により一連の洗浄動作を説明している。
【0039】
図2は、使用者が便器本体2を使用する前の待機状態を示している。この待機状態においては、給水装置4は停止された状態(OFF状態)であり、粉砕装置18及び排出ポンプ20も停止された状態(OFF状態)である。
図3において、時刻t0は、使用者が便器本体2の使用を開始する時刻である。制御部24は、時刻t0以前の時刻において、給水装置4、粉砕装置18、排出ポンプ20を動作させていない待機状態とする待機モードを実行させる。図2に示すように、時刻t0以前の時刻及び時刻t0においては、ボウル部10内の水位は初期水位(待機状態の溜水面W0)となっている。
【0040】
図3及び図4に示すように、時刻t0~t1において、使用者が便器本体2を使用し、汚物(大便、小便、トイレットペーパー等)Aがボウル部10内に入った状態となる。制御部24は、時刻t0~t1において、給水装置4、粉砕装置18、排出ポンプ20を待機状態とする待機モードを引き続き実行する。
時刻t0~t1において、ボウル部10内の水位は初期水位でありほぼ一定であるが、使用者の尿や大便、便器本体2上に配置されて使用者の局部等を洗浄する衛生洗浄装置(図示せず)から吐出される水等により水位がわずかに上昇する場合もある。使用者による排泄時にはボウル部10内の溜水面W0を初期水位まで比較的高く且つ広く形成して、ボウル部10内の溜水面以外の乾燥している部分への汚物付着を抑制する。
【0041】
図3及び図5に示すように、時刻t1において、使用者が操作部の操作スイッチ等を操作すると、一連の洗浄動作が開始される。操作部の操作スイッチ等が操作されると、その操作指令が制御部24に送信され、制御部24が給水装置4により供給された洗浄水によりボウル部10を洗浄する粉砕前洗浄モードを開始させる。また、制御部24が排出ポンプ20を駆動してボウル部10内の溜水面を低下させる水位低下モードも開始させる。時刻t1から時刻t3までにおいて、粉砕前洗浄モードと水位低下モードとが並行して行われる時間がある。粉砕前洗浄モードは、汚物受け面10b上の汚物を溜水中に落とすように汚物受け面10bの洗浄を行う。
【0042】
粉砕前洗浄モードにおいては、制御部24が、給水装置4に給水指令を送り、給水装置4からボウル部10への給水動作を開始させ、ボウル部10を洗浄水によって洗浄される。給水装置4から給水される洗浄水の流量は水道の給水圧により決まる。矢印A1に示すように、汚物Aは、洗浄水により溜水中に移動された状態となる。具体的には、制御部24は、給水装置4を時刻t1から時刻t2まで数秒程度の設定時間にわたって駆動させる。制御部24は、給水装置4を時刻t2から時刻t3まで停止させるOFF状態とさせる。制御部24は、給水装置4を時刻t2から時刻t3まで給水させてもよい。このように時刻t1から時刻t3まで継続して給水する場合の給水の瞬間流量は、時刻t1から時刻t2まで給水する場合の給水の瞬間流量よりも低減される。時刻t2において、制御部24は、給水装置4を停止させ、粉砕前洗浄モードを終了させる。
【0043】
制御部24は、後述する粉砕モードの開始以前に粉砕前洗浄モードを開始させる。すなわち、粉砕前洗浄モードと粉砕モードとを同時に開始させてもよい。よって、粉砕モードの開始以前にボウル部の汚物受け面に付着した汚物Aを溜水中に流下させることができ、汚物を効率よく粉砕することができる。
【0044】
図3に示すように、水位低下モードにおいては、制御部24は、排出ポンプ20のインペラ42を時刻t1から時刻t3まで第1出力で駆動(ON状態)させる。排出ポンプ20の第1出力は、インペラ42を比較的低い回転数で回転させる。インペラ42の第1回転数は、後述する第2回転数よりも低い回転数である。水位低下モードにおいて、洗浄水を、溜水面W0の水位を溜水面W1の位置まで下げるような所定流量だけ排水させる。矢印A1により示すように、洗浄水を排水トラップ管路12を介して排水管路16に排出する。ボウル部10内の洗浄水量が減少され、溜水面が溜水面W1の位置まで低下する。これにより、水位低下モードの実行後に実行される粉砕モードにおいて、汚物粉砕時にボウル部10内の溜水面を低下させて、粉砕中の汚物の溜水面からボウル部10外への飛び跳ねを抑制することができる。
【0045】
粉砕前洗浄モード及び水位低下モードが並行して実行され、給水装置4が時刻t1から給水するのに対し、後述するように排出ポンプ20が時刻t1から洗浄水を排出するので、ボウル部10内の水位は時刻t1から時刻t2まではほぼ同様に保たれ、時刻t2から時刻t3まで徐々に低下する。
【0046】
水位低下モードにおいては、ボウル部10内の水位は筒状部分10cの溜水面W1まで低下される。これにより、溜水面W1が高さ方向において流路径がほぼ変わらない筒状部分10cに位置する状態で、溜水中で汚物の粉砕を行うことができる。汚物の粉砕により溜水面W1が揺動したり波打ったりしたとしても上面視において溜水面W1の半径方向の変動が少なくでき、粉砕中の汚物を含む溜水面W1が広がって見えることにより使用者へ嫌悪感を与える可能性を抑制することができる。
【0047】
図3に示すように、制御部24は、粉砕装置18を時刻t1から時刻t3まで駆動させる。すなわち、粉砕前洗浄モード及び/又は水位低下モードの実行中に粉砕装置18が駆動される。これにより、溜水に旋回流が形成され、溜水中の汚物をボウル部10から剥離させ、旋回流にのせるような状態としながら下方に導き、汚物をボウル部10に沿って残り難くすることができる。よって、ボウル部10に汚物が残されることを抑制し、ボウル部10内の洗浄性能を向上させると共に効率的にボウル部10内の汚物を粉砕することができる。このときの回転体26の回転数は、粉砕モードにおける回転体26の回転数と異なっていてもよい。また、水位低下モードにおいて水位が低下するときに回転体26が回転されるので、回転体26が洗浄水を撹拌することによる洗浄水中の汚物の飛び跳ねを抑制することができる。
【0048】
また、水位低下モードにより、ボウル部10内に貯留している洗浄水の体積が減少される。粉砕モードにおいて回転体26の回転により投入される回転エネルギーが一定であるとすれば、ボウル部10内の洗浄水の体積が大きい場合の旋回流の流速と比べて、ボウル部10内の洗浄水の体積が小さい場合の旋回流の流速が比較的高くなる。よって、水位低下モードの実行により、粉砕モードにおいて比較的高速の旋回流を形成し、より確実に汚物の粉砕を行うことができる。
【0049】
時刻t3において、制御部24は、水位低下モードの開始以後、水位検知装置32が溜水面W1までのボウル部10内の水位の低下を検知した場合に、水位低下モードの実行を終了させる。このように、水位検知装置32により水位低下モードにおいてボウル部10内の水位を所定の水位まで確実に低下させることができる。
【0050】
図3及び図6に示すように、時刻t3において、制御部24は、粉砕装置18を駆動してボウル部10内で汚物を粉砕する粉砕モードを実行させる。制御部24が、粉砕装置18を駆動させ、回転体26の回転Eによりボウル部10内に旋回流(矢印A2参照)を形成し、汚物の粉砕動作を行う。ボウル部10内で汚物が回転流により粉砕される。汚物Aは粉砕され、所定の大きさ以下の汚物aとなる。水位低下モードの実行によりボウル部内の溜水面を低下させた後に、汚物粉砕モードが実行されるので、汚物粉砕時には汚物の溜水面W1からボウル部10外への洗浄水及び汚物の飛び跳ねを抑制することができると共に、比較的高速の回転流により汚物を確実に粉砕することができる。制御部24は、時刻t3から時刻t4までの設定時間において粉砕モードを実行させ、時刻t4において、粉砕装置18を停止させる。粉砕モードにおいては、制御部24は、給水装置4及び排出ポンプ20を停止させている。粉砕モードにおいては、ボウル部10内の水位は概ね溜水面W1の水位に維持されている。
【0051】
図3及び図7に示すように、時刻t4において、制御部24は、排出ポンプ20を駆動して粉砕モードにより粉砕された汚物をボウル部10内の洗浄水とともに排出する第1排出モードを実行させる。第1排出モードは、時刻t4から開始される。第1排出モードにおいては、粉砕モードの終了後、制御部24は、粉砕装置18を停止させ、排出ポンプ20を第2出力により駆動させる。排出ポンプ20の第2出力は、インペラ42を比較的高い回転数で回転させる。排出ポンプ20は、矢印A3により示すように、洗浄水及び汚物aを排水トラップ管路12を介して排水管路16に圧送(排出)する。汚物aは、フィルタ38の孔48を通過することができる。このようにして、ボウル部10内から汚物aが排出される。第1排出モードにおいては、制御部24は、給水装置4及び粉砕装置18を停止している。
【0052】
第1排出モードにおいては、排出ポンプ20によりボウル部10内のほぼすべての洗浄水及び汚物aが下流側に排出される。よって、ボウル部10内の水位は、溜水面W1から、ボウル部10の底部まで低下する。より詳細には、ボウル部10内の水位は、ボウル部10の底部まで低下し、フィルタ38の孔48よりさらに低下し、接続部12a内の水位となる。このとき、ボウル部10の底部には、洗浄水がほぼなくなっている状態となる。
【0053】
ボウル部10内の水位がボウル部10の底部近傍の所定水位W3以下の水位となる場合に、排出ポンプ20が粉砕室10d内の空気を孔48から吸引し、エアロック状態となり、制御部24は、電動モーター46の駆動を停止させる。このように排出ポンプ20がエアロックとなる場合、排出ポンプ20が水位検知手段としてボウル部10内の水位が所定水位W3以下の水位となったことを検知することとなる。制御部24は、第1排出モードの開始より後に、水位検知手段である排出ポンプ20により所定水位W3以下の水位が検知された場合に、後述する排出後洗浄モードを開始させる。時刻t5において、制御部24は、排出ポンプ20がエアロックとなる場合に、排出ポンプ20を駆動停止させ、第1排出モードを終了させる。
【0054】
図3及び図8に示すように、時刻t5において、制御部24は、給水装置4により供給された洗浄水によりボウル部10を洗浄する排出後洗浄モードを開始させる。制御部24は、排出後洗浄モードを時刻t5から時刻t6までの設定時間にわたって実行させる。制御部24は、給水装置4を時刻t5から時刻t6までの設定時間にわたって駆動させる。矢印A4に示すように、給水された洗浄水が、汚物受け面10b、筒状部分10c及び粉砕室10dの壁面に沿って旋回流を形成し、ボウル部10に付着している汚物や汚水を洗い流すように洗浄する。制御部24は、粉砕装置18及び排出ポンプ20を時刻t5から時刻t6まで停止させている。矢印A5に示すように、ボウル部10内の水位は、時刻t5から時刻t6まで徐々に上昇し、所定水位W4程度まで上昇される。ボウル部10内の水位が所定水位W3より上昇する際に、排出ポンプ20のポンプ室40から空気が抜けて排出ポンプ20は空気を噛まずに再び駆動できる状態となる。
【0055】
このような排出後洗浄モードは、第1排出モードの途中で開始されてもよく且つ第1排出モードが終了した後に終了するので、制御部24は、第1排出モードの開始より後に、排出後洗浄モードを開始させ且つ、第1排出モードの終了より後に、排出後洗浄モードを終了させている。このように、制御部24は、第1排出モードの開始より後に、所定量の洗浄水が排出される所定タイミングで、排出後洗浄モードを開始させてもよい。よって、第1排出モードと排出後洗浄モードとが同時に開始される場合に比べて、給水及び排水環境等によりボウル部10から洗浄水を排出するために要する時間が長くなることを抑制すると共に、第1排出モードの排出後にボウル部10に汚物や汚水が付着して残ることを抑制することができる。なお、第1排出モードの完了後に、排出後洗浄モードが開始される場合には、第1排出モードの実行と排出後洗浄モードの実行とが重ならないようにすることもできる。
【0056】
図3及び図9に示すように、時刻t6において、制御部24は、排出後洗浄モードの開始より後且つ第1排出モードの終了より後に開始する第2排出モードを開始させる。第2排出モードは、排出後洗浄モードの終了以前に開始することができる。第2排出モードにより、排出後洗浄モードにより洗い流された汚物及び汚水を排出することができる。制御部24は、排出ポンプ20を時刻t6から時刻t7まで第2出力により駆動させる。矢印A6に示すように、排出ポンプ20の駆動に伴って、洗浄水が排水トラップ管路12に排出され、水位が所定水位W4から低下される。制御部24は、給水装置4を時刻t6から時刻t7まで駆動させたままである。よって、第2排出モードにおいては、矢印A6に示すように、給水装置4による給水を行いながら洗浄水の排出も行う。すなわち、ボウル部10の汚物や汚水等の洗浄を継続しながら排出も行うので、ボウル部10の汚物の残りをより確実に抑制することができる。時刻t7において、制御部24は、排出ポンプ20がエアロックとなり、水位検知手段である排出ポンプ20により所定水位W3以下の水位が検知された場合に、排出ポンプ20を駆動停止させ、第2排出モードを終了させる。排出ポンプ20が所定水位W3を検知することができるので、第2排出モードを終了する場合の残水量を所定水位W3以下の比較的少ない残水量とすることができる。よって、排出後洗浄モードにより洗浄された汚水及び汚物を効率よく排出させることができる。制御部24は、粉砕装置18を時刻t6から時刻t7まで停止させている。
【0057】
図3及び図10に示すように、時刻t7において、制御部24は、クリーニングモードに必要な溜水を形成するクリーニング溜水形成モードを開始させる。制御部24は、給水装置4を時刻t7から時刻t8まで駆動させ、時刻t8において給水装置4を停止させる。制御部24は、粉砕装置18及び排出ポンプ20を時刻t7から時刻t8まで停止させている。矢印A7に示すように、給水装置4の給水に伴って、ボウル部10内の洗浄水の水位が溜水面W1の位置まで上昇される。時刻t8において水位検知装置32が溜水面W1の水位を検知することにより制御部24が給水装置4を停止させる。ボウル部10内の水位を粉砕モードを実行した溜水面W1とし、汚物を粉砕するため汚れが付着しやすい粉砕室10dを含むボウル部10内を洗浄水で満たした状態とすることができる。
【0058】
図3及び図11に示すように、時刻t8において、制御部24は、ボウル部10内を再洗浄するクリーニングモードを開始させる。粉砕モードを実行した際に汚物及び洗浄水が貯留していた領域を再度洗浄する。制御部24は、粉砕装置18を時刻t8から駆動開始させ、時刻t8から時刻t9まで設定時間にわたり駆動させる。制御部24は、給水装置4を時刻t8から時刻t9まで停止させている。制御部24は、排出ポンプ20を時刻t8から時刻t9まで停止させている。矢印A8に示すように、制御部24は、粉砕装置18を駆動させ、ボウル部10内に旋回流を形成させる。ボウル部10内の旋回流が筒状部分10c、粉砕室10d及び回転体26等を洗浄するので、これらに付着している汚水や汚物をより確実に洗浄することができる。制御部24は、設定時間が経過し、時刻t9となると粉砕装置18を停止させる。クリーニング溜水形成モード及びクリーニングモードにより、筒状部分10c、粉砕室10d及び回転体26等を洗浄し、これらに付着している汚水や汚物をより確実に洗浄することができる。また、仮に第1排出モード及び第2排出モードにおいて排出ポンプ20空気の噛み込みによるエアロックを生じたとしても、クリーニング溜水形成モードにより給水を行い、クリーニングモードによりボウル部10内を再洗浄するので、洗浄を確実に行うことができる。
【0059】
図3及び図12に示すように、時刻t9において、制御部24は、排出ポンプ20を駆動してクリーニングモードにより使用された洗浄水を排出する第3排出モードを開始させる。第3排出モードにより、クリーニングモードにより洗い流された汚物及び汚水を排出することができる。制御部24は、排出ポンプ20を時刻t9から時刻t10まで第2出力により駆動させる。矢印A9に示すように、排出ポンプ20の駆動に伴って、洗浄水が排水トラップ管路12に排出され、水位が所定水位W1から低下される。時刻t10において、制御部24は、排出ポンプ20がエアロックとなり、水位検知手段である排出ポンプ20により所定水位W3以下の水位が検知された場合に、排出ポンプ20を駆動停止させ、第3排出モードを終了させる。排出ポンプ20が所定水位W3を検知することができるので、第3排出モードを終了する場合の残水量を所定水位W3以下の比較的少ない残水量とすることができる。よって、クリーニングモードにより洗浄された汚水及び汚物を効率よく排出させることができる。制御部24は、給水装置4及び粉砕装置18を時刻t9から時刻t10まで停止させている。
【0060】
図3及び図13に示すように、時刻t10において、制御部24は、第3排出モード後にボウル部10を再洗浄する再洗浄モードを開始させる。制御部24は、再洗浄モードを時刻t10から時刻t11までの設定時間にわたって実行させる。制御部24は、給水装置4を時刻t10から時刻t11までの設定時間にわたって駆動させる。矢印A10に示すように、給水された洗浄水が、汚物受け面10b、筒状部分10c及び粉砕室10dの壁面に沿って旋回流を形成し、ボウル部10に付着している汚物や汚水を洗い流すように洗浄する。ポータブルトイレ装置1は、居室等に配置されるため、汚物のわずかな洗い残しがあるだけでも臭気を発生し、或いは不快感を生じさせることとなる。よって、汚物や汚水の洗浄残りを抑制するようにさらに再洗浄を行う。制御部24は、粉砕装置18及び排出ポンプ20を時刻t10から時刻t11まで停止させている。矢印A11に示すように、ボウル部10内の水位は、徐々に上昇し、所定水位W4程度まで上昇される。ボウル部10内の水位が所定水位W3より上昇する際に、排出ポンプ20のポンプ室40から空気が抜けて排出ポンプ20は空気を噛まずに再び駆動できる状態となる。
【0061】
図3及び図14に示すように、時刻t11において、制御部24は、排出ポンプ20を駆動して再洗浄モードにより使用された洗浄水を排出する第4排出モードを開始させる。第4排出モードにより、再洗浄モードにより洗い流された汚物及び汚水を排出することができる。制御部24は、排出ポンプ20を時刻t11から時刻t12まで第2出力により駆動させる。矢印A12に示すように、排出ポンプ20の駆動に伴って、洗浄水が排水トラップ管路12に排出され、水位が所定水位W4から低下される。制御部24は、給水装置4を時刻t11から時刻t12まで駆動させたままである。よって、第4排出モードにおいては、矢印A12に示すように、給水装置4による給水を行いながら洗浄水の排出も行う。すなわち、ボウル部10の汚物や汚水等の洗浄を継続しながら排出も行うので、ボウル部10の汚物の残りをより効率よく抑制することができる。時刻t12において、制御部24は、排出ポンプ20がエアロックとなり、水位検知手段である排出ポンプ20により所定水位W3以下の水位が検知された場合に、排出ポンプ20を駆動停止させ、第4排出モードを終了させる。排出ポンプ20が所定水位W3を検知することができるので、第4排出モードを終了する場合の残水量を所定水位W3以下の比較的少ない残水量とすることができる。よって、排出後洗浄モードにより洗浄された汚水及び汚物を効率よく排出させることができる。制御部24は、粉砕装置18を時刻t11から時刻t12まで停止させている。
【0062】
図3及び図15に示すように、時刻t12において、制御部24は、ボウル部10内に溜水を形成する溜水形成モードを開始させる。制御部24は、給水装置4を時刻t12から時刻t13まで駆動させる。制御部24は、粉砕装置18及び排出ポンプ20を時刻t12から時刻t13まで停止させている。矢印A13に示すように、給水装置4の給水に伴って、ボウル部10内の洗浄水の水位が溜水面W0の位置まで上昇される。制御部24は、設定時間が経過し、時刻t13となると、給水装置4を停止させ給水を終了させる。ボウル部10内の水位が溜水面W0まで上昇されるので、汚物受け面10b内の溜水面W0を比較的大きく形成することができ、汚物受け面10bの乾燥面を減少させ、汚物が汚物受け面10bの乾燥面に付着して取れにくくなることを抑制することができる。制御部24は、給水装置4を停止させると、一連の洗浄動作が終了され、待機モードに戻る。
【0063】
次に、上述した第1実施形態によるポータブルトイレ装置1による作用効果を説明する。
本発明の一実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24は、第1排出モードの実行後にボウル部10に汚物や汚水が付着して残ることを抑制するように、第1排出モードの開始より後に、排出後洗浄モードを開始させる。このように構成された本実施形態は、第1排出モードと排出後洗浄モードとが同時に開始される場合に比べて、ボウル部10から洗浄水を排出するために要する時間が長くなることを抑制することができる。さらに、第1排出モードの終了後に排出後洗浄モードが終了するので、ボウル部10に汚物や汚水が付着して残ることを抑制することができる。従って、本実施形態によれば、ボウル部10から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部10の洗浄性の低下の抑制との両立を可能とすることができる。
【0064】
また、本発明の一実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24は、排出後洗浄モードの開始より後に、第2排出モードを開始させる。これにより、排出後洗浄モードにより洗い流された汚物及び汚水を第2排出モードにより効率的に排出することができる。従って、本実施形態によれば、ボウル部10から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部10の洗浄性のさらなる向上との両立を可能とすることができる。
【0065】
さらに、本発明の一実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、粉砕モードの開始以前に開始される粉砕前洗浄モードにより、粉砕モードの開始以前にボウル部10の汚物受け面10bに付着した汚物を溜水中に流下させることができ、汚物を効率よく粉砕することができる。従って、本実施形態によれば、ボウル部10から洗浄水を排出する排出時間の短縮とボウル部10の洗浄性のさらなる向上との両立を可能とすることができる。
【0066】
さらに、本発明の一実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24は、第1排出モードの開始より後に、ボウル部10内の水位が所定水位W3以下となった場合により確実に排出後洗浄モードを開始できる。よって、ボウル部10から洗浄水を排出するために要する時間が長くなることをより確実に抑制すると共に、第1排出モードの排出後にボウル部10に汚物や汚水が付着して残ることをより確実に抑制することができる。
さらに、仮に制御部24が第1排出モードの開始時からの時間経過により排出後洗浄モードを開始させる場合には、水道の給水圧等の条件により、ボウル部10内の水位が所定水位W3以下となる前の第1排出モードの排出が十分に完了していない状態で、時間経過により排出後洗浄モードが開始されてしまう懸念がある。本実施形態によればこの懸念をより確実に抑制することができる。
【0067】
さらに、本発明の一実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、制御部24は、第1排出モードの完了後に、排出後洗浄モードを開始させるので、第1排出モードの実行と排出後洗浄モードの実行とが重ならないようにすることができる。よって、ボウル部10から洗浄水を排出するために要する時間が長くなることをより確実に抑制すると共に、第1排出モードの排出後にボウル部10に汚物や汚水が付着して残ることをより確実に抑制することができる。
【0068】
さらに、本発明の一実施形態によるポータブルトイレ装置1によれば、他に追加のセンサを備えなくとも、排出ポンプ20のエアロックにより、ボウル部10内の水位が所定水位W3以下の水位、例えば底部の水位まで低下したことを検知することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ポータブルトイレ装置
1a 車輪
2 便器本体
4 給水装置
6 フレーム
6a フレーム基部
8 給水管
10 ボウル部
10a 吐水口
10b 汚物受け面
10c 筒状部分
10d 粉砕室
10e リム部
10f 傾斜面
12 排水トラップ管路
12a 接続部
12b 上昇部
12d 頂部
12f 下降部
12g 横向部
16 排水管路
16a 管路部分
18 粉砕装置
20 排出ポンプ
24 制御部
26 回転体
28 回転軸
30 電動モーター
32 水位検知装置
34 通気弁管路
36 通気弁
38 フィルタ
40 ポンプ室
42 インペラ
44 回転軸
46 電動モーター
48 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15